説明

対話システム、対話方法およびプログラム

【課題】明示的な対象を持たない対話行為を行うことで、ソーシャルネットワークに適合したコミュニケーションを行う。
【解決手段】ソーシャルネットワーク上での対話情報を収集し、収集した対話情報に対して応答するか否かを判定する。そして、応答判定がなされた対話情報の中から特定の対話情報のみをとりだし、言語の理解、対話の制御、発話文の作成等を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーシャルネットワークにおける対話システム、対話方法およびプログラムに関し、特に、明示的な対象を持たない対話行為を行うことで、ソーシャルネットワークに適合したコミュニケーションを行う対話システム、対話方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ソーシャルネットワークのコミュニティが発達してきており、特に、Twitter(登録商標)は日本でのユーザ数が1000万人に迫る急激な成長を遂げている(2010年4月Nielsen Online調べ)。そのため、Twitter等のソーシャルネットワーク上のコミュニティで、自然言語を用いてユーザと対話し宣伝活動やユーザサポートを行う対話システム(bot)に対する期待が高まってきている。
【0003】
そのため、最近では、非特許文献1に示すように、Twitterに対応した対話システムは既に商品検索システムとの組み合せで商用化されている(例えば、非特許文献1参照)。このシステムは、ユーザ発言に対して、キーワードのマッチングと検索とを行うことで、商品の提示を行っている。
【0004】
また、非特許文献1に記載のシステムでは、単純なキーワードマッチを用いているため、一対一の応答しか行うことが出来ないが、非特許文献2に記載のシステムでは、システムが持つ知識と、ユーザ発言を構造化することで、ユーザの不十分な入力に対してシステムが聞き返し行いながらインタラクティブに情報提示を行うことが可能である(例えば、非特許文献2参照)。また、非特許文献3に記載のシステムでは、非特許文献2に記載のシステムを音声対話に適用し、音声認識誤りに対する聞き返しも含めたインタラクションを可能とする対話システムを構築している(例えば、非特許文献3参照)。
【0005】
これら非特許文献1から3のシステムは、実世界での人間同士の対話を再現する対話制御技術であり、入力に対して、必ず応答を行うシステムとなっている。しかし、人間は、ソーシャルネットワーク上で全ての入力に対して必ずしも応答するわけではなく、実世界にはない独特のコミュニケーションを行っている。
【0006】
ここで、Twitter上で構築される人間同士のコミュニケーションの構造は、大きく分けて図5の3つに分類される。つまり、(a)は、2者間の対話を示す。Twitterではこれらの二者間の会話を第三者が閲覧することが可能となっている。また、(b)のようにTwitterは、不特定多数のユーザが会話に参加できるため、会議や授業に類する聴衆全体に呼びかけるような対話を行う機能を持つ。Twitter上では、(a)や(b)のように実世界上での人間の会話を模したコミュニケーションが行われているが、Twitterは実世界には無い(c)に示した新たな形態を持ったコミュニケーションがソーシャルネットワーク上で行われている。
【0007】
Twitter上で各ユーザは、それぞれ自分が気に入った他のユーザをフォローすることでネットワークを構築している。図6は、あるユーザのフォローリストを示す。Twitterは、フォローリストに含まれるユーザの発言を、図7に示されるように、時系列順に提示する。Twitterでは、この画面をタイムライン(TL)と呼ぶ。基本的にTwitter上では、誰が自分をフォローするかは制御できないため、(c)に示すように、対象を特定せずに、応答を期待しない独り言に似た発言を行うことが多い。ユーザは自分のTL上に気に入った発言を見つけると、その発言に関して対象を特定せずに独り言を行う。
【0008】
以上のように、Twitter上に構築されるソーシャルネットワークの最大の特徴は、自分の発言に対する応答を他の別のユーザに義務付けないことであり、その暗黙の了解が発言の敷居を下げ、多数のアクティブユーザを獲得する要因の一つとなっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】コレカモ http://korekamo.net/
【非特許文献2】清田 陽司, 黒橋 禎夫, 木戸 冬子:大規模テキスト知識ベースに基づく自動質問応答 −ダイアログナビ−,自然言語処理, Vol.10,No.4,pp.145――175,July,2003.
【非特許文献3】翠輝久, 河原達也, 正司哲朗, 美濃導彦: 質問応答・情報推薦機能を備えた音声による情報案内システム. 情報処理学会論文誌,Vol.48,No.12,pp.3602――3611,2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述の非特許文献1から3に記載のシステムは、実世界での人間同士の対話に近い(a)や(b)に属する対話を可能とする対話制御技術であり、ユーザ入力に対して必ず応答を行うシステムとなっている。そのため(a)と(b)に属するコミュニケーションを取ることが可能である一方で、これらのシステムでは、Twitter上の着目すべきユーザをフォローし、TLから着目すべき発言を抽出することが出来ないため(c)に示すコミュニケーションを取ることができないという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、明示的な対象を持たない対話行為を行うことで、ソーシャルネットワークに適合したコミュニケーションを行う対話システム、対話方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上述の課題を解決するために、以下の事項を提案している。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0013】
(1)本発明は、ソーシャルネットワーク上で対話を行う対話システムであって、ソーシャルネットワーク上での対話情報を収集する対話情報収集装置(例えば、図1の対話情報収集装置100に相当)と、該収集した対話情報に対して応答するか否かを判定する応答判定装置(例えば、図1の応答判定装置200に相当)と、該応答判定がなされた対話情報の中から特定の対話情報のみをとりだす応答フィルタ(例えば、図1の応答フィルタ300に相当)と、言語の理解、対話の制御、発話文の作成等を行う発話文生成装置(例えば、図1の発話文生成装置400に相当)と、を備えたことを特徴とする対話システムを提案している。
【0014】
本発明によれば、対話情報収集装置は、ソーシャルネットワーク上での対話情報を収集する。応答判定装置は、収集した対話情報に対して応答するか否かを判定する。応答フィルタは、応答判定がなされた対話情報の中から特定の対話情報のみをとりだす。発話文生成装置は、言語の理解、対話の制御、発話文の作成等を行う。したがって、明示的な対象を持たない対話行為を行うことで、ソーシャルネットワークに適合したコミュニケーションを行うことができる。
【0015】
(2)本発明は、(1)の対話システムについて、前記対話情報収集装置が、どの範囲の集団に影響を持った人物を抽出するかを決定する抽出人物決定手段(例えば、図2の抽出人物決定部110に相当)と、該決定手段の決定結果に応じて検索キーワードを定める検索キーワード決定手段(例えば、図2の検索キーワード決定部150に相当)と、該決定したキーワードを用いてソーシャルネットワーク上の対話情報を検索収集する対話情報収集手段(例えば、図2の対話情報収集部160に相当)と、を備えたことを特徴とする対話システムを提案している。
【0016】
本発明によれば、抽出人物決定手段は、どの範囲の集団に影響を持った人物を抽出するかを決定する。検索キーワード決定手段は、決定手段の決定結果に応じて検索キーワードを定める。対話情報収集手段は、決定したキーワードを用いてソーシャルネットワーク上の対話情報を検索収集する。したがって、効率的に、対話情報の影響度を収集することができる。
【0017】
(3)本発明は、(1)の対話システムについて、前記対話情報収集装置が、どの範囲の集団に影響を持った対話情報を抽出するかを決定する抽出対話情報決定手段(例えば、図2の抽出対話情報決定部120に相当)と、該決定手段の決定結果に応じて検索キーワードを定める検索キーワード決定手段(例えば、図2の検索キーワード決定部150に相当)と、該決定したキーワードを用いてソーシャルネットワーク上の対話情報を検索収集する対話情報収集手段(例えば、図2の対話情報収集部160に相当)と、を備えたことを特徴とする対話システムを提案している。
【0018】
本発明によれば、抽出対話情報決定手段は、どの範囲の集団に影響を持った対話情報を抽出するかを決定する。検索キーワード決定手段は、決定手段の決定結果に応じて検索キーワードを定める。対話情報収集手段は、決定したキーワードを用いてソーシャルネットワーク上の対話情報を検索収集する。したがって、効率的に、対話情報の影響度を収集することができる。
【0019】
(4)本発明は、(1)の対話システムについて、前記対話情報収集装置が、取得したソーシャルネットワーク内の返信先情報を参照する返信先情報参照手段(例えば、図2の送信先情報参照部130に相当)を備えたことを特徴とする対話システムを提案している。
【0020】
本発明によれば、返信先情報参照手段は、取得したソーシャルネットワーク内の返信先情報を参照する。したがって、どの対話情報に対する応答であるか推定し、一定数以上、応答数が多い対話情報を影響度が高い対話情報とすることができる。
【0021】
(5)本発明は、(1)の対話システムについて、前記対話情報収集装置が、発言中に含まれるユーザ名を参照するユーザ名参照手段(例えば、図2のユーザ名参照部140に相当)を備えたことを特徴とする対話システムを提案している。
【0022】
本発明によれば、ユーザ名参照手段は、発言中に含まれるユーザ名を参照する。したがって、どの対話情報に対する応答であるか推定し、一定数以上、応答数が多い対話情報を影響度が高い対話情報とすることができる。
【0023】
(6)本発明は、(1)の対話システムについて、前記応答判定装置が、各ユーザのソーシャルネットワーク上における影響度を集計し、ユーザ影響度を算出するユーザ影響度算出手段(例えば、図3のユーザ影響度算出部210に相当)と、該算出したユーザ影響度が所定の閾値を越えているか否かで、応答判定を行う応答判定手段(例えば、図3の応答判定部230に相当)と、を備えたことを特徴とする対話システムを提案している。
【0024】
本発明によれば、ユーザ影響度算出手段は、各ユーザのソーシャルネットワーク上における影響度を集計し、ユーザ影響度を算出する。応答判定手段は、算出したユーザ影響度が所定の閾値を越えているか否かで、応答判定を行う。したがって、ソーシャルネットワーク上で着目すべきユーザを発見し、応答することができる。
【0025】
(7)本発明は、(1)の対話システムについて、前記応答判定装置が、定期的に更新される重要語を用いて影響度を予想する影響度予測手段(例えば、図3の影響度予測部220に相当)と、該算出したユーザ影響度が所定の閾値を越えているか否かで、応答判定を行う応答判定手段(例えば、図3の応答判定部230に相当)と、を備えたことを特徴とする対話システムを提案している。
【0026】
本発明によれば、影響度予測手段は、定期的に更新される重要語を用いて影響度を予想する。応答判定手段は、算出したユーザ影響度が所定の閾値を越えているか否かで、応答判定を行う。これにより、TLに対しリアルタイムに応答することができる。なお、重要語の影響度の予想方法としては、例えば、語句の重要度を数値化し、これに、任意の係数を掛けた値を算出して、語句が複数ある場合には、算出した値が最大となるものを抽出し、これにより、重要語の影響度を予想する。また、重要語の影響度を計算した対話情報とそれが入っている重要語との組み合わせはデータベースに格納されているため、この情報に基づいて、所定の重要語がある場合に、どのくらいの影響度があるかを学習制御することにより予測を行ってもよい。
【0027】
(8)本発明は、(1)の対話システムについて、前記応答判定装置が、高頻度に1対1の応答を行ったユーザに対して、応答することを特徴とする対話システムを提案している。
【0028】
本発明によれば、高頻度に1対1の応答を行ったユーザに対して、応答する。これにより、ユーザに対する親和性を高めることができる。
【0029】
(9)本発明は、(1)の対話システムについて、前記応答フィルタが、影響度の強い対話情報のみ選択することを特徴とする対話システムを提案している。
【0030】
本発明によれば、応答フィルタが、影響度の強い対話情報のみ選択する。これにより、TLから着目すべき発言を抽出することができる。
【0031】
(10)本発明は、(1)から(9)の対話システムについて、前記ソーシャルネットワークがツイッターであることを特徴とする対話システムを提案している。
【0032】
本発明によれば、ソーシャルネットワークがツイッターである。
【0033】
(11)本発明は、(10)の対話システムについて、前記対話情報収集装置が、タイムラインの中から対話情報を収集することを特徴とする対話システムを提案している。
【0034】
本発明によれば、対話情報収集装置が、タイムラインの中から対話情報を収集する。これにより、TLから着目すべき発言を抽出することができる。
【0035】
(12)本発明は、ソーシャルネットワーク上で対話を行う対話システムにおける対話方法であって、ソーシャルネットワーク上での対話情報を収集する第1のステップ(例えば、図4のステップS101に相当)と、該収集した対話情報に対して応答するか否かを判定する第2のステップ(例えば、図4のステップS102に相当)と、該応答判定がなされた対話情報の中から特定の対話情報のみをとりだす第3のステップ(例えば、図4のステップS103に相当)と、言語の理解、対話の制御、発話文の作成等を行う第4のステップ(例えば、図4のステップS104に相当)と、を備えたことを特徴とする対話方法を提案している。
【0036】
本発明によれば、ソーシャルネットワーク上での対話情報を収集し、収集した対話情報に対して応答するか否かを判定する。そして、応答判定がなされた対話情報の中から特定の対話情報のみをとりだし、言語の理解、対話の制御、発話文の作成等を行う。したがって、明示的な対象を持たない対話行為を行うことで、ソーシャルネットワークに適合したコミュニケーションを行うことができる。
【0037】
(13)本発明は、ソーシャルネットワーク上で対話を行う対話システムにおける対話方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、ソーシャルネットワーク上での対話情報を収集する第1のステップ(例えば、図4のステップS101に相当)と、該収集した対話情報に対して応答するか否かを判定する第2のステップ(例えば、図4のステップS102に相当)と、該応答判定がなされた対話情報の中から特定の対話情報のみをとりだす第3のステップ(例えば、図4のステップS103に相当)と、言語の理解、対話の制御、発話文の作成等を行う第4のステップ(例えば、図4のステップS104に相当)と、をコンピュータに実行させるプログラムを提案している。
【0038】
本発明によれば、ソーシャルネットワーク上での対話情報を収集し、収集した対話情報に対して応答するか否かを判定する。そして、応答判定がなされた対話情報の中から特定の対話情報のみをとりだし、言語の理解、対話の制御、発話文の作成等を行う。したがって、明示的な対象を持たない対話行為を行うことで、ソーシャルネットワークに適合したコミュニケーションを行うことができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、対話システムが、常に影響度の高い対話情報に関する発言を行うことで、他のユーザの注目を集める効果がある。そのため、本対話システムは、宣伝用途において特に有効である。
【0040】
また、ソーシャルネットワーク上で構築されるユーザ―ユーザ間と同様の関係性を対話システム―ユーザ間で構築する機能を具備することにより、ソーシャルネットワーク内で人間に近い社会性を対話システムが持たせることが可能となるという効果がある。本発明では、ソーシャルネットワークに適応した関係性を構築するため、ソーシャルネットワーク内で暗黙の了解とされている「自分の発言に対する応答を他の別のユーザに義務付けない」という社会的なルールが対話システムにも適用される可能性がある。つまり、既存の対話システムは、実世界における対話の関係性をモデル化してきたため、ユーザに対し「自分の発言に必ず応えてくれる」といった高いレスポンシビリティを期待させるシステムとなっていた。しかし、自然言語による入力を用いる場合、ユーザの多様な入力をあらかじめ完全にモデル化しておくことは不可能であるため、従来技術の手法では、システムが予めルールとして記述した入力パターンと外れた入力をユーザが行うと、システムはユーザの期待と外れた回答を行い、ユーザの評価を大きく下げる結果となる。しかし、本発明により上記の社会的なルールが対話システムにも適応されることで、ユーザの注目を集めつつもユーザの不満を予め抑制するシステムが構築可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の対話システムに係る構成を示す図である。
【図2】本発明の対話情報収集装置の構成を示す図である。
【図3】本発明の応答判定装置の構成を示す図である。
【図4】本発明の対話システムに係る処理を示す図である。
【図5】従来例に係るソーシャルネットワークにおける対話形式を例示する図である。
【図6】従来のTwitterにおけるユーザのフォローリストを例示する図である。
【図7】従来のTwitterにおけるフォローリストに含まれるユーザの発言を時系列順に提示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて、詳細に説明する。
なお、本実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、本実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0043】
以下、図1から図4を用いて、本発明の対話システムに係る実施形態について説明する。なお、本実施形態においては、ソーシャルネットワークとして、Twitterを例示して説明する。
【0044】
<対話システムの構成>
本実施形態に係る対話システムは、図1に示すように、主に、対話情報収集装置100と、応答判定装置200と、応答フィルタ300と、発話文生成装置400とから構成されている。
【0045】
対話情報収集装置100は、ソーシャルネットワーク(Twitter)上での対話情報(ツイット)を収集する。応答判定装置200は、収集した対話情報(ツイット)に対して応答するか否かを判定する。応答フィルタ300は、応答判定がなされた対話情報(ツイット)の中から特定の対話情報のみをとりだす。発話文生成装置400は、言語の理解、対話の制御、発話文の作成等を行う。
【0046】
つまり、ソーシャルネットワーク(Twitter)上から対話情報(ツイット)の集合を収集し、影響力のある対話情報(ツイット)を応答フィルタ300に出力する。一方、応答フィルタ300は、ソーシャルネットワーク(Twitter)上からソーシャルネットワーク(Twitter)のタイムライン(TL)を取得したクライアントから対話情報(ツイット)をも入力し、影響力のある対話情報(ツイット)のみを抽出して発話文生成装置400に出力する。なお、タイムライン(TL)を取得したクライアントは、Twitter APIを用いて、対話システム(BOT)のタイムライン(TL)をリアルタイムに取得する。
【0047】
他方、対話情報収集装置100は、影響力のあるユーザ情報を応答判定装置200に出力し、応答判定装置200は、入力した影響力のあるユーザ情報に基づいて、応答するユーザを出力クライアントに出力する。さらに、出力クライアントは、Twitter APIを用いて、発話文生成装置400から発話文を入力し、システムに対して、発言(ツイット)を送信するとともに、フォロー要求を出力する。
【0048】
<対話情報収集装置の構成>
本実施形態に係る対話情報収集装置100は、図2に示すように、抽出人物決定部110と、抽出対話情報決定部120と、送信先情報参照部130と、ユーザ名参照部140と、検索キーワード決定部150と、対話情報収集部160とから構成されている。
【0049】
抽出人物決定部110は、どの範囲の集団に影響を持った人物を抽出するかを決定する。抽出対話情報決定部120は、どの範囲の集団に影響を持った対話情報(ツイット)を抽出するかを決定する。
【0050】
送信先情報参照部130は、取得したソーシャルネットワーク(Twitter)内の返信先情報を参照する。ユーザ名参照部140は、発言中に含まれるユーザ名を参照する。
【0051】
検索キーワード決定部150は、抽出人物決定部110あるいは/および抽出対話情報決定部120の決定結果に応じて検索キーワードを定める。対話情報収集部160は、検索キーワード決定部150が決定したキーワードを用いてソーシャルネットワーク(Twitter)上の対話情報(ツイット)を検索収集する。
【0052】
つまり、対話情報収集装置100は、どの範囲の集団に影響を持った人物あるいは/および発言を抽出するかに応じて検索キーワードを定め、キーワードを用いてソーシャルネットワーク(Twitter)上の発言を検索収集する。また、取得した対話情報(ツイット)内の返信先情報in_reply_to_status_idを参照したり発言中に含まれるユーザ名を参照したりすることで、どのツイートに対する応答であるか推定し、一定数以上応答数が多い対話情報(ツイット)を影響度が高い対話情報(ツイット)として応答フィルタ300に出力する。したがって、抽出人物決定部110、送信先情報参照部130、ユーザ名参照部140については、そのすべてを備えてもよいし、これらのうち少なくとも1つを備えるようにしてもよい。
【0053】
<応答判定装置の構成>
本実施形態に係る応答判定装置200は、図3に示すように、ユーザ影響度算出部210と、影響度予測部220と、応答判定部230とから構成されている。
【0054】
ユーザ影響度算出部210は、各ユーザのソーシャルネットワーク(Twitter)上における影響度を集計し、ユーザ影響度を算出する。影響度予測部220は、定期的に更新される重要語を用いて影響度を予想する。応答判定部230は、算出したユーザ影響度が所定の閾値を越えているか否かで、応答判定を行う。なお、影響度予測部220における重要語の影響度の予想方法としては、例えば、語句の重要度を数値化し、これに、任意の係数を掛けた値を算出して、語句が複数ある場合には、算出した値が最大となるものを抽出し、これにより、重要語の影響度を予想する。また、重要語の影響度を計算した対話情報とそれが入っている重要語との組み合わせはデータベースに格納されているため、この情報に基づいて、所定の重要語がある場合に、どのくらいの影響度があるかを学習制御することにより予測を行ってもよい。
【0055】
つまり、各ユーザの対話情報(ツイット)の影響度を集計し、ユーザ影響度を算出する。あるいは、定期的に更新される重要語を用いて影響度を予想する。また、ユーザ影響度がしきい値以上のユーザをフォローすることで、ソーシャルネットワーク(Twitter)上で着目すべきユーザを発見しフォローする。
【0056】
<対話システムの処理>
図4を用いて、本実施形態に係る対話システムの処理について説明する。
【0057】
まず、対話情報収集装置100が、ソーシャルネットワーク(Twitter)上での対話情報(ツイット)を収集し(ステップS101)、応答判定装置200が、収集した対話情報(ツイット)に対して応答するか否かを判定する(ステップS102)。
【0058】
そして、応答フィルタ300が、応答判定がなされた対話情報の中から特定の対話情報のみをとりだし(ステップS103)、発話文生成装置400が、言語の理解、対話の制御、発話文の作成等を行う(ステップS104)。なお、ユーザに対する親和性を高めるため、対話システムに対して高頻度に1対1の応答を行ったユーザをフォローする。
【0059】
以上、説明したように、本実施形態によれば、明示的な対象を持たない対話行為を行うことで、ソーシャルネットワークに適合したコミュニケーションを行うことができる。また、どの範囲の集団に影響を持った人物あるいは/および対話情報(ツイット)を抽出するかを決定し、決定結果に応じて検索キーワードを定め、そのキーワードを用いてソーシャルネットワーク(Twitter)上の対話情報(ツイット)を検索収集するため、効率的に、対話情報(ツイット)の影響度を収集することができる。さらに、各ユーザのソーシャルネットワーク上における影響度を集計し、ユーザ影響度を算出して、算出したユーザ影響度が所定の閾値を越えているか否かで、応答判定を行うため、ソーシャルネットワーク(Twitter)上で着目すべきユーザを発見し、応答することができる。
【0060】
<実施例>
具体的な実施例として、Twitter社が公開しているAPIを用いて映画の映像配信サービスの販売促進を行うBotを実装するケースについて説明する。
【0061】
この場合、まず販売したい映画に関係する単語を映画の宣伝文から抽出しキーワードとする。TwitterのSearch APIを用い、以上のキーワードでツイートを収集する。Twitter社が公開しているAPIでは、その契約形態に応じて得られるデータ量が異なるため、契約の範囲内で可能な限り漏れ無くデータを収集できるよう、定期的にSearch APIを利用しそのキーワードを含む呟きを収集する。
【0062】
対話情報収集装置100は、前述した方法で、あるツイート何件リツイートされているか算出する。本実施例ではある閾値の回数以上リツイートされていれば影響度が高いものとし、そのツイートを一意に識別する値(STATUS_ID)を応答フィルタ300に送信する。ただし、影響度の詳細な計算方法は幾つか存在し、発言したユーザのフォロワー数で正規化する、発言したユーザの過去の影響度を集計するといったように、用途に応じて適切に選択する。
【0063】
応答フィルタ300は、TwitterのAPIを用いて得られたBotのTLから、対話情報収集装置100が出力したSTATUS_IDと一致するツイートを選択し、発話文生成装置400に送信し、TL上のそれ以外のツイートは捨てる。しかし、ユーザからの明示的な要求に全く応答しないBotは宣伝用としては問題があるため、in_reply_to_user_idがBotを指すTweetをTL中から検出した場合も同様に対話制御部に送信することで、図5の(a)、(b)の応答も実現する。
【0064】
次に、発話文生成装置400の実施例としては、非特許文献1に記載の技術と同じ手法について説明する。先ず、前もって宣伝したい映画についてマッチさせるキーワードとキーワードに応じたテンプレートを用意しておく。応答フィルタを経由して入力されたツイートに対して最長マッチするキーワードを抽出し、そのキーワードに対応したテンプレートを選択することで、ユーザに対して宣伝情報を発言することが可能となる。このときTL上の全ての発言について応答していると、ユーザから飽きられてしまい、Botの発言がユーザに無視されるようになってしまう。しかし、多くのユーザが着目する話題出た際にのみ発言することで、効果的に宣伝文の露出を行うことが可能となる。
【0065】
以下は、発言用テンプレートの例である。
出演者は、「[映画タイトル]のような映画にもでているよ[宣伝用URL]」、監督名は、「[映画タイトル]も作っているよ[宣伝用URL]」、その他キーワードとしては、「こんな[映画タイトル]もあるよ[宣伝用URL]」等が例示できる。
【0066】
なお、対話システムの処理をコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを対話システムに読み込ませ、実行することによって本発明の対話システムを実現することができる。ここでいうコンピュータシステムとは、OSや周辺装置等のハードウェアを含む。
【0067】
また、「コンピュータシステム」は、WWW(World Wide Web)システムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
【0068】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組合せで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0069】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0070】
100;対話情報収集装置
110:抽出人物決定部
120;抽出対話情報決定部
130;送信先情報参照部
140;ユーザ名参照部
150;検索キーワード決定部
160;対話情報収集部
200;応答判定装置
210;ユーザ影響度算出部
220;影響度予測部
230;応答判定部
300;応答フィルタ
400;発話文生成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソーシャルネットワーク上で対話を行う対話システムであって、
ソーシャルネットワーク上での対話情報を収集する対話情報収集装置と、
該収集した対話情報に対して応答するか否かを判定する応答判定装置と、
該応答判定がなされた対話情報の中から特定の対話情報のみをとりだす応答フィルタと、
言語の理解、対話の制御、発話文の作成等を行う発話文生成装置と、
を備えたことを特徴とする対話システム。
【請求項2】
前記対話情報収集装置が、
どの範囲の集団に影響を持った人物を抽出するかを決定する抽出人物決定手段と、
該決定手段の決定結果に応じて検索キーワードを定める検索キーワード決定手段と、
該決定したキーワードを用いてソーシャルネットワーク上の対話情報を検索収集する対話情報収集手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の対話システム。
【請求項3】
前記対話情報収集装置が、
どの範囲の集団に影響を持った対話情報を抽出するかを決定する抽出対話情報決定手段と、
該決定手段の決定結果に応じて検索キーワードを定める検索キーワード決定手段と、
該決定したキーワードを用いてソーシャルネットワーク上の対話情報を検索収集する対話情報収集手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の対話システム。
【請求項4】
前記対話情報収集装置が、
取得したソーシャルネットワーク内の返信先情報を参照する返信先情報参照手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の対話システム。
【請求項5】
前記対話情報収集装置が、
発言中に含まれるユーザ名を参照するユーザ名参照手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の対話システム。
【請求項6】
前記応答判定装置が、
各ユーザのソーシャルネットワーク上における影響度を集計し、ユーザ影響度を算出するユーザ影響度算出手段と、
該算出したユーザ影響度が所定の閾値を越えているか否かで、応答判定を行う応答判定手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の対話システム。
【請求項7】
前記応答判定装置が、
定期的に更新される重要語を用いて影響度を予想する影響度予測手段と、
該算出したユーザ影響度が所定の閾値を越えているか否かで、応答判定を行う応答判定手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の対話システム。
【請求項8】
前記応答判定装置が、高頻度に1対1の応答を行ったユーザに対して、応答することを特徴とする請求項1に記載の対話システム。
【請求項9】
前記応答フィルタが、影響度の強い対話情報のみ選択することを特徴とする請求項1に記載の対話システム。
【請求項10】
前記ソーシャルネットワークがツイッターであることを特徴とする請求項1から請求項9に記載の対話システム。
【請求項11】
前記対話情報収集装置が、タイムラインの中から対話情報を収集することを特徴とする請求項10に記載の対話システム。
【請求項12】
ソーシャルネットワーク上で対話を行う対話システムにおける対話方法であって、
ソーシャルネットワーク上での対話情報を収集する第1のステップと、
該収集した対話情報に対して応答するか否かを判定する第2のステップと、
該応答判定がなされた対話情報の中から特定の対話情報のみをとりだす第3のステップと、
言語の理解、対話の制御、発話文の作成等を行う第4のステップと、
を備えたことを特徴とする対話方法。
【請求項13】
ソーシャルネットワーク上で対話を行う対話システムにおける対話方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、
ソーシャルネットワーク上での対話情報を収集する第1のステップと、
該収集した対話情報に対して応答するか否かを判定する第2のステップと、
該応答判定がなされた対話情報の中から特定の対話情報のみをとりだす第3のステップと、
言語の理解、対話の制御、発話文の作成等を行う第4のステップと、
をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−77156(P2013−77156A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216481(P2011−216481)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】