説明

対象の筋肉が適切に活動しているときの非侵襲脳刺激のための方法、装置、およびコンピュータ・プログラム

少なくとも1つの対象についての望ましい生体信号値または値の範囲が決定される磁気刺激方法。刺激があると、短期間の磁場パルスが脳に印加され、筋肉等のような各対象の筋電計(EMG)等のような生体信号の値(S)が、各TMSパルスの前に測定される。TMSパルスのファイヤリングは、対応する測定された生体信号値(S)が所定の限界の範囲外である場合、自動的に阻止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療目的で生体組織を刺激することに関する。特に、本発明は、脳に対する磁場パルスの刺激を生成するための方法および装置に関する。正確には、本発明は、独立請求項のプリアンブル部分の記載に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の脳のような生体組織は、診断または治療に役立つ情報を提供する目的、あるいは治療効果を与える目的で、非侵襲的に刺激されうる。従来の技術を使用して、生体組織に電場を誘導することによって生体組織を刺激することが可能である。磁気刺激の技術は、磁場を変化させることによってこれを達成する。生体組織に磁気刺激を与えるための様々な装置および方法が開示されており、例えば、以下の公報に開示されている。
・米国特許第4,940,453号
・米国特許第5,766,124号
・米国特許第6,132,361号
・米国特許第6,086,525号
【0003】
これらの方法では、通常、正弦波的に変動し減衰する電流パルスが、刺激されることになるニューロンにわたり配置される刺激コイルに選択的に印加される。脳を刺激することが目的のとき、その方法は、経頭蓋磁気刺激(TMS)と呼ばれており、人間の脳を刺激する無リスクかつ無痛の方法を提供する。従来、TMSは、動きを制御する脳の領域について対象とされている。脳のこの部位は、運動皮質と呼ばれる。運動皮質の刺激は、刺激された皮質から錐体細胞の繊維および周辺繊維を経由して筋肉上に移動する神経信号をトリガする。神経信号の伝達に成功すると、可視的なけいれんとして見られる筋肉の収縮が起きる。筋活動はまた、筋電計(EMG)を使用して、筋肉または皮膚の表面から電気信号として検出することもできる。誘発反応およびTMS測定を組み合わせるための従来技術が、米国特許4,940,453号公報に開示されている。用途および技術は、広くいくつかの書籍で扱われており、例えば、E Wassermannら編「the Oxford Handbook of Transcranial Stimulation」、2008年、および、Hallett M、Chokrovery S編「the Magnetic Stimulation in Clinical Neurophysiology」、2005年、Elsevierで扱われている。
【0004】
TMS刺激は、筋肉から測定されるEMG信号に加えて、人体(すなわち、生体信号)の他の箇所で他の測定可能な変化を生じさせる。最も顕著な検知可能な変化は、脳の代謝活動、およびニューロン間の電気信号伝達におけるものである。代謝性変化は、例えば、機能MRI、または陽電子放出断層撮影もしくは単一光子放射断層撮影(fMRI、PETおよびSPECT)を使用して検出することができる。電気的変化は、脳波記録(EEG)を使用して検出することができる。人体の他の場所では、TMS刺激の効果は、一般に、間接的であり、例えば、ECG(心電図記録)における変化として検出される。
【0005】
一般的に言えば、TMS刺激は、人体における様々な検出可能な生体信号をもたらす。しばしば、TMS実験は、刺激された脳領域と生体信号の検出された変化との関連を研究するために行われる。そのような実験はいずれでも、脳の状態、および実験下の生体信号の「ジェネレータ(generator)」の状態を安定させることが基本的に重要である。これは、生体信号フィードバックによって行うことができる。例えば、TMSにより脳を刺激するとき、EEG信号が引き起こされ、刺激された脳領域と、ニューロンを介してその刺激された脳領域に電気的に接続された他の脳領域との両方で計測されうる。観測されたEEGの変化は、刺激された脳領域および接続された領域の状態に依存することが多い。したがって、フィードバックEEGは、実験結果を安定させるための手段を提供することになる。他の適切な生体信号として、肢または指運動センサや筋力測定もある。この文脈では、EMG測定が最もありうる適用例であるため、任意の測定可能な生体信号観測が本発明の範囲を補完することに留意しつつも、EMG測定に議論を集中する。
【0006】
運動皮質を刺激するための多くの現行の適用例では、TMSとEMGの両方の同時使用を必要とする。いくつかの適用例では、異なる場所の刺激コイルを動かし、誘発されたEMG反応を同時に観測することによって、脳の一次運動野を突き止める必要がある(例えば、Thickbroom GW、Mastaglia FL、「Mapping Studies」、Handbook of Transcranial Magnetic Stimulation、127〜140頁、2002年、Arnold Publishersを参照)。最も強いEMGを生じる場所が、所定の筋肉に関する一次運動野の場所を反映する。また、正確なマッピングは、定位コイル(stereotactic coil)の位置特定を必要とする(Krings Tら、「Introducing navigated transcranial magnetic stimulation as a refined brain mapping methodology」、Neurosurg Rev.、2001年、171〜9頁、Ruohonen J、「Background physics for magnetic stimulation」、Transcranial Magnetic Stimulation and Transcranial Direct Current Stimulation、1〜14頁、2003年、Elsevier)。さらに、EMG反応を引き起こすのに必要な適切な刺激強度を決定する必要がある。ほとんどの適用例では、これは、与えられた刺激の50パーセントに対するEMG反応を引き起こす強度を探索しながら刺激強度を変化させることによって行われる。(Rossini PMら、「Non−invasive electrical and magnetic stimulation of brain, spinal cord and roots: Basic principles and procedures for routine clinical application」、Report of an IFCN committee、Electroencephalography and Neurophysiology、1994年、91:79〜92頁)。例えば、うつ病治療の刺激強度は、一般には運動閾値強度の80%である。運動閾値刺激強度の探索のための先進アルゴリズムが、文献(例えば、Awiszus F、「TMS and threshold hunting」、Suppl Clin Neurophysiol、2003年、13〜23頁)で提案されている。
【0007】
刺激された脳領域の状態、ならびに対象の筋肉の状態は、運動皮質刺激効果の効果の判断結果に影響を及ぼす。例えば、運動閾値強度は、TMSパルス時の運動皮質における既存の活動および筋肉の既存の収縮によって大きく異なる。既存の筋緊張は、閾値を低下させ、それにより、治療試験または診断検査で必要な刺激強度が不完全にまたは誤って推定されるおそれがある。他の適用例では、TMS誘発されたEMG反応を使用して、下降運動神経路の機能を評価する。遅延または他の異常な誘発されたEMGは、疾患または外傷の兆候である。他の適用例は、脳の様々な部位にわたる訓練、すなわち、前頭前野にわたるうつ病の治療、および運動野にわたる痛みの治療においてTMSが適用される治療的使用を含む。
【0008】
文献は、対象の筋肉上でEMGを使用すること、および、対象の筋肉が安静であるときにTMSが行われることを視覚的に観測することをユーザに教示する。米国特許第4,940,453号公報は、電気的および磁気的な刺激装置(stimulator)を誘発電位記録装置および解析装置と一緒に接続するための方法を開示している。この方法によれば、TMSパルスによってトリガされた誘発反応が記録されるが、その誘発反応は解析されない。
【0009】
いくつかの適用例では、より好ましくは、筋肉が既に活動中であるときにパルスが与えられ、かつこの活動化が予め定義された限界内にあるように、TMS検査が適用される。TMS誘発された反応の大きさおよび特性は、既存の筋緊張のレベルによって異なることになり、したがって、既存の筋緊張が予め定義された限界内で安定化された時点でTMSパルスが与えられたとき、より良い結果が得られる。このような適用例では、いわゆる活動運動閾値を測定する。活動運動閾値とは、予め活動化した筋肉において反応を引き起こすために必要とされるTMSパルスの強度である。いくつかの用途では、いわゆる沈黙時間の測定を含み、沈黙時間とは、予め活動化した筋肉の活動における50から300msのEMGの沈黙の期間であり、その後に同じ筋肉の皮質再現領域を対象とするTMSパルスが続く(E Wassermannら編、「Oxford Handbook of Transcranial Stimulation」、2008年)。オペレータが必要とし指示するレベルで筋肉が活動しているかどうかの決定は、現在のところ聴覚補助具を用いて行われる。例えば、EMG信号は、増幅器を介してスピーカおよび受信者の耳に送られる。他の解決策として、オペレータに示される視覚的な指標または数値がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,940,453号
【特許文献2】米国特許第5,766,124号
【特許文献3】米国特許第6,132,361号
【特許文献4】米国特許第6,086,525号
【特許文献5】米国特許第6,8273,681号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】E Wassermannら編「the Oxford Handbook of Transcranial Stimulation」、2008年
【非特許文献2】Hallett M、Chokrovery S編「the Magnetic Stimulation in Clinical Neurophysiology」、2005年、Elsevier
【非特許文献3】Thickbroom GW、Mastaglia FL、「Mapping Studies」、Handbook of Transcranial Magnetic Stimulation、127〜140頁、2002年、Arnold Publishers
【非特許文献4】Krings Tら、「Introducing navigated transcranial magnetic stimulation as a refined brain mapping methodology」、Neurosurg Rev.、2001年、171〜9頁
【非特許文献5】Ruohonen J、「Background physics for magnetic stimulation」、Transcranial Magnetic Stimulation and Transcranial Direct Current Stimulation、1〜14頁、2003年、Elsevier
【非特許文献6】Rossini PMら、「Non−invasive electrical and magnetic stimulation of brain, spinal cord and roots: Basic principles and procedures for routine clinical application」、Report of an IFCN committee、Electroencephalography and Neurophysiology、1994年、91:79〜92頁
【非特許文献7】Awiszus F、「TMS and threshold hunting」、Suppl Clin Neurophysiol、2003年、13〜23頁
【非特許文献8】E Wassermannら編、「Oxford Handbook of Transcranial Stimulation」、2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来技術の欠点
しかし、筋肉の適正な活動レベルを決定するための聴覚的補助具と視覚的補助具は双方とも、TMSが一般的に適用される環境に理想的に適しているわけではない。EMG値を示す画面を観察するかまたは音響的合図を待つ必要があることは、オペレータにとって負担になると考えられる。さらに、TMSパルス時ちょうどのEMG活動レベルのずれは、数百マイクロ秒しか続かず、10から40ミリ秒間に筋肉反応を引き起こすものであり、このずれを観測するためにオペレータの人間反応時間の速さは充分なものではない。これは、各検査の期間を不当に長くする傾向があり、検査が望ましくないレベルのTMS前の筋収縮を含んだ試行を除外するために、検査後の過度の解析時間を招くことになる。他の差し迫った欠点は、必要な刺激パルスの数が増加し、検査の期間も長くなることである。これらの短い遅延が合計されると、例えば、TMS装置の寿命にわたって相当な量の費用のかかるオペレータ時間となる。これらの理由から、実際の被験者の検査は、様々な被験者の状態で記録される試行を含むことが多く、それにより、こうした検査の結果の有用性が低下する。全体として、既知のTMS装置の主な欠点は、それらの使い勝手の悪さと、人間の集中力への依存である。
【0013】
発明の目的
本発明の目的は、従来技術の欠点の少なくともいくつかを解消するとともに、対象の1つまたは複数の筋肉が適切に活動しているときのみにTMSパルスが印加されることを保証する改良された新規の方法を提供することである。本発明の目的は、EMG装置とTMS装置の間のリンクを接続することによって達成され、そのリンクは、筋肉が予め定義された活動の限界内にないことをEMG信号が示す場合にTMSパルスのファイヤリングを電子的に防止するEMG信号のオンライン解析を含む。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、磁気刺激のための新しいタイプの磁気刺激方法および装置に基づく。新規の方法は、最初に、筋肉等の少なくとも1つの対象についての望ましい生体信号の値または値の範囲を決定するステップと、短期間の磁場パルスを脳に印加するステップと、各磁場パルスの前に各対象の引き起こされた生体信号の値を測定するステップとを含む。方法はまた、対応する測定された生体信号の値が、所定の限界の範囲外である場合、磁場パルスのファイヤリングを自動的に防止するステップを含む。
【0015】
より詳細には、本発明による方法は、独立請求項1の特徴部分の記載によって特徴づけられる。
【0016】
他方で、本発明は、少なくとも1つのコイルとそれを作動させるためのTMS装置に接続されたトリガ・スイッチ(trigger switch)とを含むTMS装置を備える、新しいタイプの磁気刺激用装置に基づく。この装置はまた、筋肉のEMGの値等のような対象の活動値を監視するようになされた筋電図(EMG)装置等のような生体信号装置と、生体信号装置に接続されTMS装置にリンクされたデータ・プロセッサとを備える。この装置はさらに、測定された生体信号値を処理して、解析された数値にするための手段と、解析された数値が所定の限界の範囲内でない場合に、TMS装置のファイヤリングを防止するための手段とを備える。
【0017】
より詳細には、本発明による装置は、独立請求項12の特徴部分の記載によって特徴づけられる。
【0018】
本発明はまた、請求項26の特徴部分の記載によって特徴づけられる、刺激システム用のコンピュータ・プログラム製品を導入する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の支援により相当な効果が得られる。直接的効果は、TMSとEMGの両方を使用することが必要な任意の検査が、人間反応時間の遅延なしに、より速く実施できることである。また、自動化されたTMSトリガ制御のおかげで、TMSパルスを対象に向け送りながら、オペレータがEMG画面を視覚的に検査する必要がないため、より良いエルゴノミクス(ergonomics)が達成される。さらなる利点は、筋肉の活動の状態を制御し再現できるため、結果がより信頼可能かつ再現可能であることである。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、さらなる効果は、オペレータがTMS装置のトリガ・スイッチを押すだけでよく、対象の筋肉が適切に活動するとすぐに、システムがTMSパルスを自動的に直ちにトリガすることである。これにより、使いやすさ、およびユーザ・エルゴノミクスが向上するとともに、TMS検査の時間が短縮される。
【0021】
本発明の他の実施形態によれば、3D定位ツール(3D localization tool)をシステムに設けることによってさらなる効果が得られ、その数値データが、TMSコイルが正しい位置にあるときのみにTMSパルスが与えられることを保証するために使用される。
【0022】
1つの利点は、本発明により、コンピュータ・システムによってTMSパルスのトリガを制御することにより、EMGからのフィードバックを自動的に使用できるため、オペレータへの視覚的、聴覚的または他のフィードバックの必要がなくなることである。もう1つの利点は、正常に引き起こされたEMG反応を必要な数だけ収集するために必要なTMSパルスの数が削減されることである。さらに他の利点は、各TMS刺激パルスの前の活動レベルを確認するためにオペレータがすべてのEMG反応に目を通す必要がないため、時間が要求されるTMS試験の後処理および解析が大幅に軽減されることである。
【0023】
以下では、本発明を添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】TMS治療が適用される環境の概略図である。
【図2】従来技術によるTMS構成のブロック図である。
【図3】本発明の実施形態によるTMS構成のブロック図である。
【図4】本発明の他の実施形態によるTMS構成のブロック図である。
【図5】TMSとEMGの間の接続、および接続コンピュータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に示されるように、本発明による、脳を刺激しEMG反応等のような生体信号を測定するための必要とされる装備は、TMS装置15、EMG装置、データ・プロセッサ7、例えば、統合コンピュータ7、ならびに、ケーブルおよび変圧器9等のような補助装置を含む。EMG装置は、EMG増幅器6、電源機構10、および電極14を備える。EMG増幅器6の電極14は、患者の対象の部位に付着されるものであり、患者は、EMG増幅器6の電極14を、典型的には1つまたは複数の筋肉からなる腹部上に装着する。EMG電極14は、筋肉の活動に関係する電位を記録する。信号の記録は、TMS誘発された筋肉反応を記録するために関係するTMSパルスに時間的にロックされうる。EMG増幅器6は、患者用椅子4に隣接して配置され、EMG電極14の信号を増幅する。次いで、生体信号は、デジタル化され、表示および解析のためにプロセッサまたはコンピュータに供給される。この装備は、EMG測定が最もありうる用途であるが、EEG信号や筋力反応等のような他のタイプの生体信号を検出することもできる。EMG増幅器6は、EMG電源機構10によって電力供給される。短いTMSパルスが、約50マイクロ秒から2ミリ秒、好適には100から500マイクロ秒の期間、TMSコイル1を用いて与えられる。短いパルスは、組織を刺激する際により効果的であるが、一般的に、電子部品およびそれらのコストと実現されるパルス幅との間にトレードオフがある。TMSコイル1は、所定のパルスをトリガする足踏スイッチ5、例えば、トリガ・スイッチで操作される。足踏スイッチ5は、TMSコイル1を介してパルスをファイヤリングさせるTMS装置15に接続される。この装備はさらに、ここでは制御コンピュータ7として参照する統合コンピュータ7を含み、その構成要素および動作原理については後で説明する。
【0026】
従来技術の構成を図2にブロック図として示す。図から明らかなように、TMS検査システムの主な構成要素は、全体としてシステムの動作が、対象の筋肉の活動レベルにかかわらずTMS装置15のファイヤリングによってトリガされるように、別々のエンティティとして設置される。このように、オペレータは、対象の筋肉が適切な活動レベルであるときパルスがファイヤリングされることを確認しなければならない。しかし、本発明は、EMG装置およびTMS装置15とTMS装置15に接続されたTMSコイル1との間の新規の電気的フィードバックに基づく。ここで図5を参照すると、EMG信号が、EMG増幅器6からUSBケーブルを介して信号処理部(典型的には、制御コンピュータ7)に供給され、選択された1または複数のチャネルが直ちに解析される。また、図5から明らかなように、EMG受信部10、制御コンピュータ7、およびTMS装置15は、互いにリンクされている。このリンクは、例えば、USB線、無線通信、またはTTLレベル同期信号を使用して提供することができる。オペレータが足踏ペダルを押すか他のやり方で刺激パルスをトリガすると、制御コンピュータ7が、トリガ信号をTMS装置15に送る。EMG信号をTMSパルスのタイミングと関係付けることができるように、同期信号が、EMG装置へコンピュータにより直接渡されるかまたはTMS装置15から渡される。これにより、EMGをTMSパルスに同期することができる。
【0027】
TMS装置15は、MRイメージングを用いて得られた個々の脳の解剖学的構造に対するコイルの定位のための手段を装備することができる。この実施形態では、TMSコイルは、コイル・トラッカ(coil tracker)13を装備する。コイル・トラッカ13は、TMSコイル1の場所および位置合わせに関する位置情報を提供する。位置センサ12は、トラッカ3、13が制限なく見えるように配置され、ヘッドおよびコイル・トラッカ3、13の位置情報を収集し、位置センサ電源ユニット8によって電力供給される。位置センサ12の好ましい場所は、天井である。デジタイザ・ペン2は、生体頭部を同頭部のMR画像と共に記録するために使用される。そして、コンピュータはすべての場所情報を収集し、頭部上のコイルの正確な位置および脳内の刺激分布をMR画像上に重ね合わせてユーザにリアルタイムで表示することができる。
【0028】
3D定位システムが使用されるとき、頭部に対するコイルの場所を制御するTMSのトリガの制御への追加の信号がありうる。より高い精度および再現性が要求される研究では、すべてのTMS刺激を通して同じ位置にコイルを有することが有利である。3D定位システムからの情報は、コイルが望ましい場所および方向にあるかどうかを決定することによって、パルスが与えられたかどうかを決めるために使用される。限界は、用途によって異なる。典型的な限界は、コイルの場所では2〜5mmより小さい差異であり、コイルの方向では5〜10度より小さい差異である。
【0029】
次に図1および4を参照すると、TMS装備の3D定位システムは、本発明の他の形態によれば、TMSパルスの供給を制御するための追加の情報を提供するために使用される。位置情報は、比較可能な数値データであることが好ましい。図4に示すように、プロセスは、3D定位システムの位置情報に基づく追加の判断段階によって補強されている。TMS治療を準備するとき、患者の筋肉の活動に対する限界の設定の他に、TMSコイル1の位置に対しても限界が設定される。足踏スイッチ5が作動されると、所定の位置限界が、3D定位システムによって提供されるリアルタイム位置情報と比較される。この比較は、例えば、制御コンピュータ7、または別個の計算部で実行することができる。コイル1が正しい位置にある場合、すなわち、位置データが所定の限界の範囲内である場合、プロセスが、計算された値Mが適切な限界の範囲内であるかどうかを確認することにより、従来の様式で進行することができる。ただし、位置情報が正しくない場合、すなわち、TMSコイル1が間違って配置されている場合、TMSパルスが供給されない39。このような自動化された再確認段階は、TMSコイル1が正しく位置付けられた場合のみ、かつ、患者の筋肉活動が所望の限界の範囲内であるときのみ、パルスが与えられることを保証する。
【0030】
図3に示されるように、また図1に関して、プロセスは、複数の動作と、自動的に行われる1つの意思決定段階とを含む。最初に、オペレータが、足踏スイッチ5を押すことによってTMSコイル1のスイッチをオンにし35、それにより、解析手順が開始する31。この手順において、EMG信号Sが、EMG装置の電極1〜nよりチャネル1〜nで受信される32。次に、信号Sは、リアルタイムで解析される33。解析プロセス33の遅延は、できるだけ短くして、システム全体の応答性を損なわないようにすることが極めて重要である。EMG信号Sの解析33は、例えば、信号の整流およびピーク信号の発見、または、例えば100msの短い期間に取得されたEMG信号曲線下の動領域を継続的に計算することを含むことができる。解析の結果34、単一の数値Mが得られる。次に、単一の数値Mは、所定の値または値の範囲と比較される38。数値Mが予め定義された閾値の範囲内である場合、信号が、TMS刺激装置1を制御するソフトウェアに送信されるか、またはTMS刺激装置のハードウェアに直接送信されて、TMSパルスの送達が可能にされる36。そうでなければ、値の比較38の結果、ブロック信号(block signal)が生じる。一般的に言えば、ブロック信号は、数値Mが予め設定された限界の範囲内にない場合に送信される。すると、その信号は、EMG活動が閾値レベル未満に減少するまで、TMSパルス37のファイヤリングを阻止する。マッピングの用途では、1からnのいくつかのチャネルでいくつかの筋肉について同時に評価を行うことも有利である。
【0031】
本発明の他の形態では、同じ解析が、筋肉の活動レベルに応じてファイヤリング命令を決定するために使用される。従来技術では、数値Mは、患者が所定の筋肉活動レベルに到達し維持するのを助ける患者に対する音響的または視覚的合図を生成するために使用することができる。しかし、本発明の他の実施形態によれば、TMS刺激装置を制御するソフトウェアは、活動レベルが所定の限界の範囲外であるときファイヤリングを阻止するのに加えて、適正な活動レベルに達したときにTMSパルスを自動的にファイヤリングするように設定されることが有利でありうる。このように、オペレータは、足踏スイッチ5を押し下げ続けるだけでよく、システムは、適正な予め設定されたEMG値に達すると直ちにTMSパルスをファイヤリングする。
【0032】
EMG活動Mのオンライン評価は、異なる測定に基づくことが可能である。一般的に言えば、Mは、S(i)の任意の関数とすることができる。ただし、S(i)は、時点iでの検出信号であり、時点iは、オペレータがTMSパルスをファイヤリングさせたいと望む時点より前である。計算窓の長さTにわたるN個の時点が含まれうる。
【0033】
1つの可能な測定法は、まず、測定された信号Mを整流し、次いで、選択された記録の長さにわたり整流曲線(rectified curve)下の表面積を計算することである。このような測定法は、例えば、以下の式に従う。
【0034】
【数1】

ただし、
i=−T,T+1,…,−1,0は、取得されたEMGデータのサンプルを示し、
i=0は、最も最近のデータ点であり、
ΔTは、2つのデータ・サンプルの間の時間であり、
Tは、計算窓の時間の長さであり、
S(i)は、時点iにおける検出信号である。表面EMG信号の場合は、時点iにおける表面電位である。
【0035】
この式は、Tの時間窓における平均信号値Mを与える。明らかな拡張は、フィルタリングによる、または自乗信号、平方根、対数等のような数学的関数による操作等のように、S(i)が、実際の記録された信号から得られた操作信号によって置き換えられることである。用途に応じて解析窓の長さを調整できることは有利である。また、より多くの記録された信号を解析式に追加できることも有利である。
【0036】
他の可能な解析式として、例えば、時間窓Tを考慮に入れない軽量化されたバージョンがある。以下に、2つの例示的な式を、代替的解析ツールとして挙げる。
【0037】
【数2】

【0038】
【数3】

ここで、Nは、解析期間中のサンプルの数である。
【0039】
したがって、解析結果が、所定の値と比較するのが容易な数値を生成することが重要である。これは、しばしば、ノイズを除去するために、測定された信号Sの絶対値を取ることを必要とする。したがって、式の構造は、その結果の使用が容易である限りにおいてかなり任意である。
【0040】
TMS刺激装置へのトリガ信号は、1つまたは複数の筋肉における計算された筋緊張がユーザの定義した値を超えたときに阻止されうる。トリガ信号は、筋緊張が所定値の間にある場合に生成されうる。トリガ信号を生成すべきかどうかを評価するとき、例えば、以下の条件で挙げるような前提条件を使用することができる。
1. 安静時にのみパルスを送り、
M>5mvの場合→TMSへのトリガ信号を阻止する。
2. ユーザが定義した活動レベルでのみパルスを送り、
M<4mVの場合またはM>5mVの場合→TMSへのトリガ信号を阻止する。
【0041】
上述の解析は、いかなる実質的な遅延もなしに解析信号数値Mを生成する能力がある任意の適切な装置で行うことができる。本発明の一実施形態では、この解析は、データ処理ユニット、すなわち、EMG装置に接続されTMS装置15にリンクされた制御コンピュータ7で実行される。言い換えれば、EMG値Sを解析して解析された数値Mを得るための手段、および、解析された数値Mが所定の限界の範囲内でない場合にTMSコイル1のファイヤリングを防止するための手段は、制御コンピュータ7のソフトウェアに統合される。他の実施形態によれば、解析は、EMGおよびTMS装置15に接続された別個の論理回路で実行してもよい。また、解析は、EMG装置のハードウェアの一部分としてもよい。
【0042】
筋肉の安静状態は、筋肉の腹部を覆う皮膚上の電極を用いて記録をするとき、本質的にゼロのEMG活動として決定されうる。記録され増幅されたEMG信号およびそのデジタル化の後に実験的および電気的ノイズがあり、したがって、筋肉が完全に安静であるが信号がゼロではないことがある。そのような場合、筋肉が安静であることを判断するための値の限定が、増幅器の内部ノイズ、装置のフィルタ設定に基づいて、また、被験者および電子機器と対になる記録室に存在する外部電磁ノイズに基づいて行われるべきである。典型的には、ノイズは、およそ5〜10μV(rms)である。閾値レベルを決定するとき、対象の筋肉に隣接した筋肉の活動を考慮に入れる必要がある場合もある。しかし、通常は、筋肉での前活動(pre-activity)は、少なくとも最大活動の5%よりも低いことが目標である。オペレータが閾値レベルを都合よく調整できることは有利である。
【0043】
本発明の他の実施形態によれば、制御コンピュータ7は、TMSコイルの位置および方向に関する情報を収集し表示するシステムを備えることができる。これらのシステムは、定位装置であり、一般に、位置センサ12によって赤外線を放射し、トラッカ3、13から反射されたその放射線を受け取ることに基づく。放射され受け取られた放射パターンに基づいて、システムは、ツールの位置および方向を決定する。この解析は制御コンピュータ7に組み込むことができることが好ましい。
【0044】
以上の例に基づいて、本発明の範囲内で、上述の実施形態とは異なる数多くの解決策が実施されうることは明らかである。さらに、それを、例えば、米国特許第6,8273,681号公報に開示されたナビゲートされたTMS刺激(navigated TMS stimulation)と組み合わせることによって、本発明の好ましい実施形態を得ることが可能である。したがって、本発明は、上記の例のみに適用されるように限定されるものではなく、特許権保護は、添付の特許請求の範囲の及ぶ最大限まで検討されるべきである。
【0045】
表1 参照番号の一覧
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
短期間の磁場パルスを脳に印加すること、および、
各TMSパルスの前に、筋肉等のような各対象の筋電計(EMG)等のような生体信号の値(S)を計測することを含む、磁気刺激方法であって、
少なくとも1つの対象についての望ましい限界の生体信号値または値の範囲を最初に決定すること、および、
対応する測定された生体信号値(S)が所定の限界の範囲外である場合に、TMSパルスのファイヤリングを自動的に防止することを特徴とする、磁気刺激方法。
【請求項2】
単一の数値(M)を形成するために、前記測定された生体信号値(S)を自動的かつ数学的に処理することを特徴とする、請求項1に記載の磁気刺激方法。
【請求項3】
複数の時点(i)で測定された生体信号値(S)の系列(−T…0)から、時点(S(i))での各測定された生体信号値の絶対値を作成すること、
時点(S(i))での各測定された生体信号値の各絶対値を、2つの連続した生体信号サンプル間の経過時間(ΔT)で乗じること、
前記積の系列(−T…0)を合計すること、
結果の値(M)を所定の限界値と比較すること、および、
前記比較の結果に基づいて磁場刺激を制御することを特徴とする、請求項2に記載の磁気刺激方法。
【請求項4】
前記単一の数(M)と前記所定の限界値との比較の前に、前記系列(−T…0)の前記合計を計算時間窓の長さ(T)で割って前記単一の数(M)を得ることを特徴とする、請求項3に記載の磁気刺激方法。
【請求項5】
前記生体信号値(S,M)が本質的にゼロでない場合に、TMSパルスのファイヤリングを自動的に防止することを特徴とする、請求項1または2に記載の磁気刺激方法。
【請求項6】
前記生体信号値(S,M)が所定の値50mVより大きい場合、TMSパルスのファイヤリングを自動的に防止することを特徴とする、請求項1または2に記載の磁気刺激方法。
【請求項7】
前記生体信号値(S,M)が4mVより低い所定の下限値である場合、または、
前記生体信号値(S,M)が5mVより高い所定の上限値である場合、
TMSパルスのファイヤリングを自動的に防止することを特徴とする、請求項1または2に記載の磁気刺激方法。
【請求項8】
前記生体信号値(S,M)が所定の限界の範囲内である場合に、自動トリガ信号をTMS装置(15)に送信することを特徴とする、請求項1または2に記載の磁気刺激方法。
【請求項9】
前記TMSデバイス(15)のTMSトリガ・スイッチ(5)がオンにされた場合に、TMSパルスを自動的にファイヤリングさせることを特徴とする、請求項8に記載の磁気刺激方法。
【請求項10】
TMSコイル(1)に関する望ましい限界位置の値または値の範囲を最初に決定すること、
3D定位システムによって前記TMSコイル(1)の前記位置の値を監視すること、および、
前記TMSコイル(1)の対応する測定された位置の値が、所定の限界の範囲外である場合に、TMSパルスのファイヤリングを自動的に防止すること(39)を特徴とする、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の磁気刺激方法。
【請求項11】
複数のチャネル上で同時に生体信号値の記録を監視すること、および、
前記複数のチャネルからの前記監視された値を単一の数値(S)に集約することを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の磁気刺激方法。
【請求項12】
少なくとも1つのコイル(1)およびその作動のためのトリガ・スイッチ(5)を含むTMS装置(15)と、
筋肉等のような対象の活動値(S)を監視するようになされた、筋電計(EMG)装置等のような生体信号装置(6)と、
前記生体信号装置(6)に接続されたデータ・プロセッサ(7)とを備えた磁気刺激用の装置であって、
前記データ・プロセッサ(7)は、前記TMS装置にリンクされ、
さらに、前記測定された生体信号値(S)を処理して、解析された数値(M)にするための手段と、前記解析された数値(M)が所定の限界の範囲内でない場合に、前記TMS装置(15)のファイヤリングを防止するための手段とを備えることを特徴とする、磁気刺激用の装置。
【請求項13】
前記データ・プロセッサ(7)は、
解析された数値(M)として与えられる前記生体信号値(S)を処理するための手段と、
前記解析された数値(M)が所定の限界の範囲内でない場合に、前記TMS装置(15)のファイヤリングを防止するための手段と
からなるグループのうちのいずれかの要素を有することを特徴とする、請求項12に記載の磁気刺激用の装置。
【請求項14】
前記データ・プロセッサ(7)は、
前記生体信号値(S)を解析して解析された数値(M)にするための手段と、
前記解析された数値(M)が所定の限界の範囲内でない場合に、前記TMS装置(15)のファイヤリングを防止するための手段と
からなるグループのうちのいずれの要素も有することを特徴とする、請求項12に記載の磁気刺激用の装置。
【請求項15】
前記TMS装置(15)のファイヤリングを防止するための前記手段は、前記TMS装置(15)を制御するソフトウェアに防止信号を供給するようになされたことを特徴とする、請求項12乃至14のいずれか1項に記載の磁気刺激用の装置。
【請求項16】
前記TMS装置(15)のファイヤリングを防止するための前記手段は、前記TMS装置(15)のハードウェアに前記防止信号を直接供給するようになされたことを特徴とする、請求項12乃至14のいずれか1項に記載の磁気刺激用の装置。
【請求項17】
前記生体信号値(S)を解析するための前記手段は、2つのデータ・サンプルの間の経過時間(ΔT)と各時点(i)での検出信号(S(i))の絶対値との積の合計を、計算窓の長さ(T)で割って、数値(M)を得るようになされたことを特徴とする、請求項12乃至16のいずれか1項に記載の磁気刺激用の装置。
【請求項18】
前記生体信号値(S)を解析するための前記手段は、各時点での前記検出信号(S(i))の絶対値の合計を、解析期間中の信号の数(N)で割るようになされたことを特徴とする、請求項12乃至16のいずれか1項に記載の磁気刺激用の装置。
【請求項19】
前記生体信号値(S)を解析するための前記手段は、各時点での検出信号(S(i))の二乗値の合計の平方根を、解析期間中のサンプル数(N)で割るようになされたことを特徴とする、請求項12乃至16のいずれか1項に記載の磁気刺激用の装置。
【請求項20】
前記生体信号値(S)を解析するための前記手段は、各時点での前記測定された値(S(i))の絶対値を取ることによって、前記解析された数値(M)を生成するようになされたことを特徴とする、請求項12乃至16のいずれか1項に記載の磁気刺激用の装置。
【請求項21】
前記解析された数値(M)が所定の限界の範囲内である場合に、ファイヤリング信号を前記TMS装置(15)に送信するための手段をさらに有することを特徴とする、請求項12乃至20のいずれか1項に記載の磁気刺激用の装置。
【請求項22】
前記データ・プロセッサ(7)が、前記解析された数値(M)が所定の限界の範囲内である場合に、ファイヤリング信号を前記TMS装置(15)に送信するための前記手段を有することを特徴とする、請求項21に記載の磁気刺激用の装置。
【請求項23】
前記TMS装置(15)は、
それがファイヤリング信号を受信した場合、および、
前記トリガ・スイッチ(5)がオンにされた場合に、
TMSパルスをファイヤリングするようになされたことを特徴とする、請求項21または22に記載の磁気刺激用の装置。
【請求項24】
前記TMSコイル(1)の位置を監視し、数値位置データを提供するようになされた3D定位部(2,12,13)と、
前記位置が所定の限界の範囲内でない場合に、前記TMS装置(15)のファイヤリングを防止するための手段とをさらに備えることを特徴とする、請求項12乃至23のいずれか1項に記載の磁気刺激用の装置。
【請求項25】
前記TMS装置(15)のファイヤリングを防止するための前記手段は、制御コンピュータ(7)におけるソフトウェアであることを特徴とする、請求項24に記載の磁気刺激用の装置。
【請求項26】
刺激システム用のコンピュータ・プログラム製品であって、
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の方法を前記刺激システムに実行させるようになされたことを特徴とする、刺激システム用のコンピュータ・プログラム製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−506746(P2012−506746A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533778(P2011−533778)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【国際出願番号】PCT/FI2008/050620
【国際公開番号】WO2010/049575
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(505141853)
【Fターム(参考)】