対象検出装置および対象検出方法
【課題】より広範囲かつ高速に対象を検出することが可能な対象検出装置および対象検出方法を提供する。
【解決手段】対象検出装置101は、検出対象の物性に応じて予め選択された複数の波長帯について、2次元画像を撮像するための撮像部11と、2次元画像の各画素における物質を検出するための検出部12とを備え、撮像部11は、撮像素子部32と、波長フィルタ部31とを含み、波長フィルタ部31は、波長選択フィルタを選択するための可動機構を有する。
【解決手段】対象検出装置101は、検出対象の物性に応じて予め選択された複数の波長帯について、2次元画像を撮像するための撮像部11と、2次元画像の各画素における物質を検出するための検出部12とを備え、撮像部11は、撮像素子部32と、波長フィルタ部31とを含み、波長フィルタ部31は、波長選択フィルタを選択するための可動機構を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象検出装置および対象検出方法に関し、特に、2次元画像を用いて対象を検出する対象検出装置および対象検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
“イメージング分光器”、[online]、[平成23年4月27日検索]、インターネット〈URL:http://www.ryoden.co.jp/fa/system/fa28_4.html〉(非特許文献1)には、工業および研究の分光分析の分野で用いられる機器が開示されている。すなわち、イメージング分光器では、特殊なプリズム、およびグレーティング構造により、ライン状のエリアにおける各点の光を分光する。そして、通常のレンズおよび白黒の2次元カメラとイメージング分光器とを組み合わせることにより、ライン状のエリアの波長分布を検知できるイメージング方式の分光計を実現する。ライン状のエリアの各点において、256個〜1024個の波長について光の強度データが得られる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“イメージング分光器”、[online]、[平成23年4月27日検索]、インターネット〈URL:http://www.ryoden.co.jp/fa/system/fa28_4.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に記載のイメージング分光器を用いて面状のエリアを解析しようとした場合には、解析対象またはイメージング分光器を移動させ、測定対象となるライン状のエリアの位置を変えて繰り返し分光スペクトルを取得する。このため、非特許文献1に記載のイメージング分光器は、広いエリアを解析する用途、および面状のエリアの解析を高速に行なう必要がある用途には適していない。
【0005】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、より広範囲かつ高速に対象を検出することが可能な対象検出装置および対象検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる対象検出装置は、検出対象の物性に応じて予め選択された複数の波長帯について、2次元画像を撮像するための撮像部と、上記2次元画像の各画素における物質を検出するための検出部とを備え、上記撮像部は、受けた光の強度を示す電気信号を出力するための複数の撮像素子を有する撮像素子部と、受けた光のうち、上記複数の波長帯の光をそれぞれ透過して上記撮像素子部へ照射するための複数の波長選択フィルタを有する波長フィルタ部とを含み、上記波長フィルタ部は、上記複数の波長選択フィルタを移動させるための可動機構を有し、上記可動機構を用いて上記波長選択フィルタを選択することにより、受けた光の中から、上記複数の波長帯のうちのいずれか1つの上記波長帯の光を透過して上記撮像素子部へ照射する。
【0007】
人のような検出対象をその形状で認識する場合、その形状を表現するのに例えば数十画素のデータが必要になる。2次元画像の各画素における物質を検出する場合、その検出に用いる波長帯を適切に選択することによって、1画素または数画素程度の物質の検出結果があれば、2次元画像の背景から検出対象およびその位置を抽出し得ることを本願発明者らは見出した。言い換えると、撮像範囲が広くても、検出対象およびその位置の特定精度を確保することができる。形状によらないため、対象の全部を検出できない場合でも、当該対象を特定することも可能である。検出対象を認識するのに利用する画素数を多くするために焦点距離を変更する必要も少なく、検出対象の移動を追跡することも容易となる。しかも、検出対象の物性に応じて波長帯を選択することで、多数の波長帯それぞれの画像を解析する必要がなくなるため、面状のエリアを高速に解析することができる。また、撮像素子部における全撮像素子を同一波長帯に割り当てることができるため、高い解像度を得ることができる。また、たとえば波長フィルタ部において撮像素子別の波長選択フィルタを設ける構成と比べて、波長フィルタ部の構成の簡易化を図ることができる。
【0008】
好ましくは、上記検出部は、一つの画素における上記複数の波長帯についての強度値の一部または全部を組み合わせて算出した評価値に基づいて、当該画素における物質の検出を行なう。
【0009】
このような構成により、多数の波長帯の画像を得なくても、検出対象等について、波長に対する特性を適切に評価することができ、対象検出処理をより正確に行なうことができる。注目画素における物質の検出には、注目画素自体の評価値に加えて、周辺画素の強度値、評価値、物質判別結果も用いることができる。
【0010】
好ましくは、上記複数の波長帯の少なくとも一部は赤外域に含まれる。
【0011】
このような構成により、検出対象またはその背景に含まれる物質の評価をより適切に行なうことができる。
【0012】
一実施態様として、上記画素は、上記複数の波長帯にそれぞれ対応する複数のサブ画素を含み、各上記サブ画素は、対応の波長帯を選択するための波長選択フィルタと、上記波長選択フィルタからの透過光を受光するための撮像素子とを有することができる。
【0013】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる対象検出方法は、検出対象の物性に応じて予め選択された複数の波長帯について、2次元画像を撮像するステップと、上記2次元画像の各画素における物質を検出するステップとを含み、上記2次元画像を撮像するステップにおいては、複数の波長選択フィルタを移動させて上記複数の波長選択フィルタのうちのいずれか1つを選択することにより、受けた光の中から、上記複数の波長帯のうちのいずれか1つの上記波長帯の光を透過して撮像素子へ照射する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、より広範囲かつ高速に対象を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る対象検出装置の機能ブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る対象検出装置による検出対象の撮影を概念的に示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る対象検出装置における受光部の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る対象検出装置における受光部による画像処理を概念的に示す図である。
【図5】対象検出装置の受光部における波長フィルタ部の透過波長帯の参考例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る対象検出装置による対象検出動作を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る対象検出装置による対象検出動作を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る対象検出装置における受光部の構成の例を示す図である。
【図9】対象検出装置の他の構成例を示す図である。
【図10】他の構成例に係る対象検出装置が対象検出処理を行なう際の動作手順を定めたフローチャートである。
【図11】他の構成例に係る対象検出装置における検出部の機能ブロック図である。
【図12】他の構成例に係る対象検出装置の検出部における判定部が物質判定処理を行なう際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態に係る対象検出装置の機能ブロック図である。この対象検出装置101は、監視装置、さらには監視エリアにおける侵入者を検知し、当該侵入者の画像を撮影する用途に用いることができる。
【0018】
図1を参照して、対象検出装置101は、撮像部11と、検出部12とを備える。撮像部11は、光学系21と、受光部22とを含む。
【0019】
撮像部11は、検出対象の物性に応じて予め選択された複数の波長帯について、2次元画像を撮像する。この撮像にはハイパースペクトル(HS)カメラを用いることができる。本実施の形態において、HSカメラは、少なくとも近赤外域を含む対象波長域における電磁波を撮影する。対象波長域は、たとえば、900nm〜1800nmであり、予め選択される上述の複数の波長帯を含む。これらの波長帯は、たとえば、最大10波長帯選択される。
【0020】
ここで、選択する波長帯の数を10以下にするのは、それより大きくすると、一定の解像度で高速(ほぼリアルタイム)に物質を判別することが難しくなり、特に監視用途には適さなくなるためであり、また、選択する波長帯の数が10以下であっても、物質の識別数および精度を十分に確保できるためである。監視装置等の実用性を考慮すると、2〜6波長帯を選択するのが好ましく、3〜5波長帯を選択するのがより好ましい。
【0021】
HSカメラは、対象エリアを撮影可能な場所、たとえば対象エリア付近の柱の頭頂部に下斜め方向に向けて設置される。対象エリアが監視エリア全体をカバーできないときまたは死角が生じるときには、HSカメラを複数設置することができる。
【0022】
撮像部11において、受光部22は、複数の画素Pを含む。これら複数の画素Pは、各選択波長帯の電磁波の受信強度を示す電気信号をそれぞれ出力する。
【0023】
受光部22は、複数の画素Pが出力する電気信号により対象エリアの2次元画像を撮像する。
【0024】
検出部12は、本実施の形態において、受光部22によって撮像された2次元画像に基づいて画素Pごとに物質を判別する。検出部12は、対象検出装置101の検出対象に応じた物質を判別できればよく、対象検出装置101を監視装置として用いる場合、たとえば人肌とそれ以外の物質を判別できればよい。物質の判別は、画素Pごとに限らず、画素群ごとに行なってもよく、さらに一部領域で画素ごとに、残りの領域で画素群ごとに行なってもよい。
【0025】
図2は、本発明の実施の形態に係る対象検出装置による検出対象の撮影を概念的に示す図である。
【0026】
図2を参照して、光学系21は、監視エリアからの光を受光し、受光部22へ照射する。
【0027】
受光部22は、光学系21から受けた光(ここでは赤外線)に基づいて2次元画像を作成する。この2次元画像に基づいて対象TG、ここでは人が検出され、監視エリアにおける対象TGの画像が撮影される。
【0028】
図3は、本発明の実施の形態に係る対象検出装置における受光部の構成を示す図である。
【0029】
図3を参照して、受光部22は、波長フィルタ部31と、撮像素子部32とを含む。
【0030】
撮像素子部32は、行列状に配置された複数の撮像素子Rを含む。撮像素子Rは、たとえばInGaAsを用いた受光素子である。撮像素子Rは、受けた光の強度を示す電気信号を出力する。
【0031】
波長フィルタ部31は、格子状に配置された複数の波長選択フィルタFを含む。波長選択フィルタFは、撮像素子Rに対応して設けられ、物質判別用の複数の波長帯のうち、対応の波長帯の光を透過して対応の撮像素子Rへ照射する。
【0032】
具体的には、撮像素子部32における各撮像素子Rに位置を合わせた波長フィルタ部31を撮像素子部32の直上に配置する。波長フィルタ部31は、たとえば撮像素子部32と一体化される。波長フィルタ部31の受光面の縦横サイズは、撮像素子部32の受光面と略一致する。各撮像素子Rは、対応の波長選択フィルタFが透過する波長帯の光の強度を示す電気信号を出力する。
【0033】
図4は、本発明の実施の形態に係る対象検出装置における受光部による画像処理を概念的に示す図である。
【0034】
図5は、対象検出装置の受光部における波長フィルタ部の透過波長帯の参考例を示す図である。
【0035】
図5を参照して、波長フィルタ部31において、物質判別用の複数の波長帯の光をそれぞれ透過し、互いに隣接する複数の波長選択フィルタFが設けられている。本実施の形態においては、これら6つの波長選択フィルタの1セットによって、一つの画素に対する波長選択フィルタ部が構成される。各波長選択フィルタは、一つのサブ画素に対する波長選択フィルタ部を構成する。
【0036】
複数の波長帯の少なくとも一部は赤外域、さらには近赤外域に含まれるのが好ましい。より詳細には、波長フィルタ部31は、たとえば940nm帯、1100nm帯、1200nm帯、1300nm帯、1500nm帯および1600nm帯の波長を有する光をそれぞれ透過する波長選択フィルタのセットを複数有する。各波長帯は、たとえば中心波長に対して±数10nmの幅を有することができる。
【0037】
ここで、モザイク状に透過特性が異なる波長フィルタ部31は、たとえばフォトニック結晶を応用することにより作成可能である。このフィルタ板を撮像素子に合わせて配置する。また、撮像素子Rごとに波長選択フィルタFを設ける方法としては、たとえばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)またはCCD(Charge Coupled Device)用のRGBフィルタと同様の方法が考えられる。
【0038】
画素Pは、複数の波長にそれぞれ対応する複数のサブ画素SPを含む。図4および図5に示す例では、上述のように6つのサブ画素SPで1つの画素Pを構成し、画素Pごとに演算を行なって当該画素Pにおける像の物質判別を行なう。そして、人肌であると判断された画素Pを他の画素Pと区別して表示することにより、たとえば人型のスペクトル画像を得ることができる。
【0039】
検出部12は、一つの画素Pにおける複数の波長帯についての強度値の一部または全部を組み合わせて算出した評価値に基づいて、当該画素Pにおける物質の検出を行なう。より詳細には、検出部12は、2次元画像において画素Pにおける複数の選択光の強度を比較し、比較結果に基づいて当該画素Pにおける物質を判別する。検出部12は、画素Pに対応する複数の受光素子Rが出力する電気信号に基づいて、画素Pごとに物質を判別する。
【0040】
図6および図7は、本発明の実施の形態に係る対象検出装置による対象検出動作を示す図である。
【0041】
図6および図7を参照して、パターンマッチング等、形状から人間であるとの判定を行なうためには、その形状を画像上で表現するために少なくとも数十画素が必要であり、カメラのある方向への移動も判別するとなると、さらに多くの画素が必要となる。これは、カメラに侵入者が近づく場合、対象がかなり移動しないと、形状の差となって画像に表れないためである。図6において、ARは、可視画像の一般的な認識処理で人間を検出するために必要となる画素の領域である。図6の可視画像の例では、人間の画像上のサイズが領域ARと同等であるため、画像処理によって人間であると認識できる。一方、図7の可視画像の例では、人間の画像上のサイズが領域ARより小さくなっているため、形状から人間であると認識するのが難しく、その認識精度は低下する。この距離で人間を精度よく認識しようとすると、対象候補へのズームを行なって、当該候補の画像上のサイズを大きくする必要がある。
【0042】
これに対して、対象検出装置101では、2次元スペクトル画像を用いる。このスペクトル画像では、人を認識するのに形状による必要がない。このため、図7に示すように、光学系21と監視エリアとの距離が100mの場合においても、1画素から数画素の対象の像IMGがあれば、その対象を背景から選択的に抽出することができる。形状によらないため、対象全体が画像含まれる必要もなく、対象の一部に対する判別結果から、当該対象の存在を特定することができる。このため、可視画像と同等の解像度であれば、より遠くの対象の存在を検出することができ、対象認識のためにズームアップする必要性が低くなる。
【0043】
このように、対象検出装置101では、少数の画素における検出結果から対象の存在を認識することが可能であることから、広範囲にわたってより正確に対象検出を行なうことができる。
【0044】
さらにカメラ方向への移動も、その移動に伴う画素数の僅かな増大で検出できる。図6では、簡単のため像IMGは3画素で例示されているが、実際にはより多くの画素で構成されており、100mから25mに人が近づくよりも前に、その移動を検出することができる。対象のカメラ方向への移動に伴い、数画素程度、像IMGに対応する画素が増えれば、その移動を検出し、対象を追跡することが可能である。
【0045】
可視画像に対する一般的な認識処理では、検出対象の移動量を検知するために、前後のフレーム間での差分を算出する。このとき、フレーム間で検出対象の大きさの相違を認識するためには、同一の形状物が大きくなったと認識できる程度の情報量が必要であり、可視画像では、相違部分としてたとえば数十画素以上の相違が必要である。このため、通常の広角カメラを用いる構成では、検出対象が徐々に近づいてくる場合、当該検出対象の移動量を検知することが困難である。
【0046】
これに対して、対象検出装置101では、形状によらないため、少数の画素の増減でフレーム間における検出対象の大きさの相違を認識することができる。これにより、検出対象が徐々に近づいてくる場合でも、検出対象を正確に検出することができる。
【0047】
また、通常の画像処理において、検出対象の移動量を検知するための情報量を確保するためにズームカメラを用いると、視野が狭くなるため、侵入者を追跡することが困難となる。
【0048】
これに対して、対象検出装置101では、少数の画素でフレーム間における検出対象の大きさの相違を認識することができるため、広角撮影を行なうことができる。これにより、カメラのレンズを動かすことなく、侵入者を容易に追跡することができる。
【0049】
さらに、本発明の実施の形態に係る対象検出装置では、撮像部11は、上述のように、検出対象の物性に応じて予め選択された複数帯の波長について、2次元画像を撮像する。多数の波長の2次元画像それぞれに対して解析処理を行なう必要がないため、広範囲にわたってより高速に対象検出を行なうことができる。
【0050】
さらに、本発明の実施の形態に係る対象検出装置では、検出部12は、一つの画素Pにおける複数の波長についての強度値の一部または全部を組み合わせて算出した評価値に基づいて、当該画素Pにおける物質の検出を行なう。
【0051】
このような構成により、検出対象およびその背景に含まれる物質の評価をより適切に行なうことができる。一つの画素における物質の検出には、当該画素自体の評価値に加えて、周辺画素の強度値、評価値、および物質判別結果も用いることができる。たとえば複数画素の強度値を平均し、その平均値から評価値を計算するようにしてもよい。
【0052】
また、本発明の実施の形態に係る対象検出装置では、上記複数の波長帯の少なくとも一部は赤外域に含まれる。
【0053】
このような構成により、選択光として適切な波長帯を選択し、物質判別をより正確に行なうことができる。
【0054】
対象検出装置では、上述のように、画素Pは、複数の波長帯にそれぞれ対応する複数のサブ画素SPを含むことができる。しかしながら、本発明の実施の形態に係る対象検出装置では、異なるフィルタ構成を採用する。
【0055】
図8は、本発明の実施の形態に係る対象検出装置における受光部の構成の例を示す図である。
【0056】
図8を参照して、受光部22は、波長フィルタ部31と、撮像素子部32とを含む。
【0057】
撮像素子部32は、受けた光の強度を示す電気信号を出力するための複数の撮像素子を有する。
【0058】
波長フィルタ部31は、光学系21から受けた光のうち、物質判別用の複数の波長帯の光をそれぞれ透過して撮像素子部32へ照射するための波長選択フィルタFL1〜FL4を有する。
【0059】
波長フィルタ部31は、光学系21から受けた光のうち、選択した波長帯の光を透過して撮像素子部32に照射する。より詳細には、波長フィルタ部31は、波長選択フィルタFL1〜FL4を移動させるための可動機構を有し、可動機構を用いて波長選択フィルタFL1〜FL4のうちのいずれか1つを選択することにより、監視エリアから受けた光の中から、物質判別用の複数の波長帯のうちのいずれか1つの波長帯の光を透過して撮像素子部32へ照射する。
【0060】
具体的には、波長フィルタ部31は、光学系21と撮像素子部32との間に設けられ、たとえば回転式であり1回転で4波長帯を切り替え可能なバンド変更機構を備える。受光部22は、バンド変更機構の選択波長帯と2次元画像とを対応付ける。このように、波長フィルタ部31のバンド変更機構を回転させる構成により、所望の波長帯の強度分布を得ることができる。
【0061】
このような構成により、撮像素子部32における全撮像素子を同一波長帯に割り当てることができるため、高い解像度を得ることができる。
【0062】
また、たとえば波長フィルタ部において撮像素子別の波長選択フィルタを設ける構成と比べて、波長フィルタ部の構成の簡易化を図ることができる。
【0063】
上述の実施の形態では、対象検出装置を監視装置として単独で用いたが、これに限られるものではなく、たとえば可視の望遠カメラと組み合わせることも可能である。
【0064】
図9は、対象検出装置の他の構成例を示す図である。
【0065】
図9を参照して、本実施の形態に係る対象検出装置101は、HSカメラ51と、望遠カメラ52と、制御装置53とを備える。
【0066】
制御装置53は、HSカメラ51によって撮影されたスペクトル画像に基づいて侵入者を検知して利用者に自動的に通知したり、望遠カメラ52を制御し当該侵入者の拡大可視画像を撮影したりすることができる。
【0067】
より詳細には、望遠カメラ52は、たとえば、パンチルト機能およびズーム機能を搭載したPTZカメラである。HSカメラ51および望遠カメラ52は、監視エリアからの太陽光の反射光を受光することにより撮影を行なう。
【0068】
この例において、望遠カメラ52は、利用者が即時にまたは事後に侵入者を視覚的に確認するために設けられており、侵入者を検知するという目的には必要ない。また、望遠カメラ52によって侵入者を自動追跡することは必須ではなく、利用者が手動で望遠カメラ52を操作するようにしてもよい。
【0069】
なお、対象検出装置101は、夜間における撮影を可能とするために、ハロゲン光または赤外光を監視エリアに向けて照射する光照射器をさらに備える構成であってもよい。
【0070】
図10は、図9の例に係る対象検出装置が対象検出処理を行なう際の動作手順を定めたフローチャートである。以下では、5つの波長帯を用いる例を説明する。
【0071】
図10を参照して、まず、HSカメラ51は、監視エリア全体を撮影する。この撮影は、連続または間欠的に行われる(ステップS1)。
【0072】
次に、受光部22は、1100nm帯、1200nm帯、1300nm帯、1500nm帯、および1600nm帯の各波長帯の2次元画像を作成する。たとえば、受光部22は、複数の波長選択フィルタを移動させて当該複数の波長選択フィルタのうちのいずれか1つを選択することにより、受けた光の中から、複数の波長帯のうちのいずれか1つの波長帯の光を透過して撮像素子へ照射する(ステップS2)。
【0073】
次に、検出部12は、受光部22によって撮像された2次元画像に基づいて、2次元画像の各画素Pにおける物質を判別する(ステップS3)。
【0074】
自動的に対象検出を利用者に通知する場合、次に、検出部12は、判別結果に基づいて、監視エリアにおける検出対象、ここでは侵入者およびその位置を特定する(ステップS4)。この特定は、各画素における物質の判別結果に、たとえば「人肌」が含まれているか否かによって行なうことができる。ある画素に対する物質の判別結果に「人肌」が含まれていれば、その画素位置を侵入者の位置として特定してもよいし、複数の画素に対する物質の判別結果の組合せから、侵入者を特定してもよい。たとえば物質の判別結果が「人肌」の画素と「繊維」の画素とが隣接している場合には、その画素群の位置を侵入者の位置と特定してもよい。画素群の位置は構成画素の重心によって定めることができる。侵入者の体全体が検出されていなくても、「人肌」の1画素または数画素あれば、それによって侵入者が存在すると判定してもよい。
【0075】
また、検出部12は、監視エリアにおける検出対象を個々に特定することもできる。たとえば、侵入者Aが覆面を着用しており、侵入者Bが覆面を着用していない場合には、侵入者Aの顔部分の物質は繊維となる一方、侵入者Bの顔部分の物質は人肌となる。また、侵入者Aと侵入者Bとで着用している衣服の材質が異なる場合には、侵入者A,Bの体部分の物質が互いに異なる。検出部12は、物質の相違に基づいて、侵入者A,Bを個々に区別することもできる。
【0076】
検出部12によって侵入者が検出された場合には(ステップS4でYES)、望遠カメラ52を制御することにより、当該侵入者の拡大画像を撮影する(ステップS5)。
【0077】
より詳細には、検出部12によって特定された侵入者の位置、すなわち侵入者の検出された画素Pを視野の中心として、望遠カメラ12による撮影を行なう。HSカメラの取付け角度を定めていれば、対象物までの大凡の距離を推定することができ、それに応じて焦点距離を調整することができる。撮影された拡大画像は、たとえば、対象検出装置101において記録され、また、遠隔地の監視センタ内に設置された液晶ディスプレイ等の表示部に表示される。また、対象検出装置101は、望遠カメラ12による侵入者の撮影と並行して、侵入者に対して音または光等による警告を行なうことも可能である。
【0078】
一方、検出部12によって侵入者が検出されなかった場合には(ステップS4でNO)、監視エリアの撮影、スペクトル画像の作成、物質判別および侵入者の検出処理が再び行われ、監視が継続される(ステップS1〜S4)。
【0079】
図11は、図9の例に係る対象検出装置における検出部の機能ブロック図である。
【0080】
図11を参照して、この例において、検出部12は、反射率算出部91と、正規化指標算出部92と、二次微分値算出部93と、判定部94とを含む。
【0081】
検出部12は、2次元画像の画素Pにおける複数の選択光の反射率をそれぞれ算出し、算出した複数の選択光の反射率に基づいて2次元画像の画素Pにおける物質を判別することができる。
【0082】
より詳細には、反射率算出部91は、受光部22から受けた2次元画像に基づいて、2次元画像の画素Pにおける1100nm帯,1200nm帯,1300nm帯,1500nm帯,1600nm帯の波長成分の反射率R1100,R1200,R1300,R1500,R1600をそれぞれ算出する。反射率は、赤外光を照射する場合、当該赤外光の光源の発光輝度と、各画素の強度値とから計算することができる。自然光を利用する場合、別途、その照度を測定し反射率を計算するようにしてもよい。
【0083】
正規化指標算出部92は、反射率算出部91によって算出された反射率R1100,R1200,R1300,R1500,R1600を用いて、以下に示す式により定義される正規化指標ND1〜ND5を算出する。
ND1=(R1500−R1200)/(R1500+R1200)
ND2=(R1300−R1200)/(R1300+R1200)
ND3=(R1600−R1300)/(R1600+R1300)
ND4=(R1300−R1100)/(R1300+R1100)
ND5=(R1500−R1300)/(R1500+R1300)
【0084】
二次微分値算出部93は、上記反射率および波長の関数の二次微分値を算出する。具体的には、二次微分値算出部93は、反射率算出部91によって算出された反射率R1100,R1200,R1300,R1500,R1600を用いて、以下に示す式により定義される近似的な二次微分値der1,der2を算出する。der1は、R1200,R1300,R1500による二次差分である。また、der2は、R1100,R1200,R1500による二次差分である。der1およびder2は、以下の式で表される。
der1=[{(R1500−R1300)/(R1500+R1300)}/200]−[{(R1300−R1200)/(R1300+R1200)}/100]
der2=[{(R1500−R1200)/(R1500+R1200)}/300]−[{(R1200−R1100)/(R1200+R1100)}/100]
【0085】
判定部94は、反射率R1100,R1200,R1300,R1500,R1600、正規化指標ND1〜ND4、および二次微分値der1,der2に基づき、2次元画像の画素Pにおける物質を判定する。
【0086】
図12は、本発明の実施の形態に係る対象検出装置の検出部における判定部が物質判定処理を行なう際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【0087】
図12を参照して、まず、判定部94は、反射率R1100,R1200,R1300,R1500,R1600の値が近似的に0であるか否かを判定する。たとえば、反射率の値が所定値(例えば0.02)未満である場合には、当該反射率は近似的に0であると判定し、また、反射率の値が当該所定値以上である場合には、当該反射率は近似的に0でないと判定する。判定部94は、反射率R1100,R1200,R1300,R1500,R1600の値がすべて近似的に0である場合には(ステップS11でNO)、ガラスが存在すると判定する。
【0088】
一方、判定部94は、反射率R1100,R1200,R1300,R1500,R1600のいずれかが近似的に0でない場合には(ステップS11でYES)、二次微分値der1に正規化指標ND5,ND3の和を乗じた値「der1×(ND5+ND3)」が0より大きいか否かを判定する(ステップS12)。
【0089】
判定部94は、「der1×(ND5+ND3)」が0より大きい場合には(ステップS12でYES)、正規化指標ND1の値が0より大きいか否かを判定する(ステップS13)。
【0090】
判定部94は、正規化指標ND1の値が0より大きい場合には(ステップS13でYES)、動物または布地が存在すると判定する。
【0091】
一方、判定部94は、正規化指標ND1の値が0以下である場合には(ステップS13でNO)、二次微分値der2の値が0より大きいか否かを判定する(ステップS14)。
【0092】
判定部94は、二次微分値der2の値が0より大きい場合には(ステップS14でYES)、人肌が存在すると判定する。
【0093】
一方、判定部94は、二次微分値der2の値が0以下である場合には(ステップS14でNO)、植物が存在すると判定する。
【0094】
また、判定部94は、「der1×(ND5+ND3)」の値が0以下である場合には(ステップS12でNO)、正規化指標ND3の値が0より大きいか否かを判定する(ステップS15)。
【0095】
判定部94は、正規化指標ND3の値が0より大きい場合には(ステップS15でYES)、正規化指標ND2の値が0より大きいか否かを判定する(ステップS16)。
【0096】
判定部94は、正規化指標ND2の値が0以下である場合には(ステップS16でNO)、アスファルトが存在すると判定する。
【0097】
一方、判定部94は、正規化指標ND2の値が0より大きい場合には(ステップS16でYES)、コンクリートが存在すると判定する。
【0098】
また、判定部94は、正規化指標ND3の値が0以下である場合には(ステップS15でNO)、正規化指標ND4の値が0より大きいか否かを判定する(ステップS17)。
【0099】
判定部94は、正規化指標ND4の値が0より大きい場合には(ステップS17でYES)、コンクリートが存在すると判定する。
【0100】
一方、判定部94は、正規化指標ND4の値が0以下である場合には(ステップS17でNO)、ガラスが存在すると判定する。
【0101】
なお、0より大きいか否かを判断する上記各ステップにおいては、判定対象物質の物性に応じて0以外の閾値を設定してもよい。
【0102】
そして、検出部12は、判定部94によって人肌が存在すると判定された場合には、監視エリアにおいて侵入者が存在すると判断することができる。また、検出部12は、たとえば、判定部94によってガラスが存在すると判定された場合には、監視エリアにおいて自動車が存在すると判断することができる。
【0103】
なお、監視エリアへの侵入者が覆面および手袋等を着用しているために人肌が露出していない状況も想定される。このような場合を想定して、たとえば、対象検出装置101において、人間のみが着用する化学繊維等の物質を検出可能となるように閾値および波長を設定する。これにより、判定部94によって当該化学繊維が存在すると判定された場合に、検出部12が、監視エリアにおいて侵入者が存在すると判断することができる。
【0104】
また、ウール、綿、ナイロン(登録商標)およびポリエステル等の繊維の種別を検出可能な閾値および波長を設定することにより、人間が着用している衣服の材質を検出することも可能である。
【0105】
なお、対象検出装置101が人間を検出することのみを想定すれば、人に関係する物質の分別だけを行なう構成であってもよい。
【0106】
なお、本発明の実施の形態に係る対象検出装置は、監視エリアにおける侵入者を検知する目的で用いられるとしたが、このような目的に限定されるものではなく、何らかの対象を検出する目的で広く応用可能である。
【0107】
たとえば、検出対象としては、一般道および高速道路を走行する自転車、ならびに杖を持った盲人等も考えられる。また、一定地域における農作物の育成状態を検出する用途にも適用可能である。
【0108】
また、本発明の実施の形態に係る対象検出装置は、侵入検知の目的に加えて、侵入検知以外の目的で人または物を監視する監視装置としても使用可能である。たとえば、交差点の交通状況を監視する監視装置、または自動車のナンバープレートを検出して撮影する監視装置として使用することが考えられる。
【0109】
また、本発明の実施の形態に係る対象検出装置において、前述のようにハロゲン光または赤外光を照射する光照射器を設ける構成により、暗闇および夜間において、人に気づかれずに対象検出を行なう目的で使用することも可能となる。
【0110】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0111】
11 撮像部
12 検出部
13 対象画像取得部
21 光学系
22 受光部
31 波長フィルタ部
32 撮像素子部
51 HSカメラ
52 望遠カメラ
53 制御装置
91 反射率算出部
92 正規化指標算出部
93 二次微分値算出部
94 判定部
101 対象検出装置
P 画素
SP サブ画素
R 撮像素子
F,FL1〜FL4 波長選択フィルタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象検出装置および対象検出方法に関し、特に、2次元画像を用いて対象を検出する対象検出装置および対象検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
“イメージング分光器”、[online]、[平成23年4月27日検索]、インターネット〈URL:http://www.ryoden.co.jp/fa/system/fa28_4.html〉(非特許文献1)には、工業および研究の分光分析の分野で用いられる機器が開示されている。すなわち、イメージング分光器では、特殊なプリズム、およびグレーティング構造により、ライン状のエリアにおける各点の光を分光する。そして、通常のレンズおよび白黒の2次元カメラとイメージング分光器とを組み合わせることにより、ライン状のエリアの波長分布を検知できるイメージング方式の分光計を実現する。ライン状のエリアの各点において、256個〜1024個の波長について光の強度データが得られる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“イメージング分光器”、[online]、[平成23年4月27日検索]、インターネット〈URL:http://www.ryoden.co.jp/fa/system/fa28_4.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に記載のイメージング分光器を用いて面状のエリアを解析しようとした場合には、解析対象またはイメージング分光器を移動させ、測定対象となるライン状のエリアの位置を変えて繰り返し分光スペクトルを取得する。このため、非特許文献1に記載のイメージング分光器は、広いエリアを解析する用途、および面状のエリアの解析を高速に行なう必要がある用途には適していない。
【0005】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、より広範囲かつ高速に対象を検出することが可能な対象検出装置および対象検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる対象検出装置は、検出対象の物性に応じて予め選択された複数の波長帯について、2次元画像を撮像するための撮像部と、上記2次元画像の各画素における物質を検出するための検出部とを備え、上記撮像部は、受けた光の強度を示す電気信号を出力するための複数の撮像素子を有する撮像素子部と、受けた光のうち、上記複数の波長帯の光をそれぞれ透過して上記撮像素子部へ照射するための複数の波長選択フィルタを有する波長フィルタ部とを含み、上記波長フィルタ部は、上記複数の波長選択フィルタを移動させるための可動機構を有し、上記可動機構を用いて上記波長選択フィルタを選択することにより、受けた光の中から、上記複数の波長帯のうちのいずれか1つの上記波長帯の光を透過して上記撮像素子部へ照射する。
【0007】
人のような検出対象をその形状で認識する場合、その形状を表現するのに例えば数十画素のデータが必要になる。2次元画像の各画素における物質を検出する場合、その検出に用いる波長帯を適切に選択することによって、1画素または数画素程度の物質の検出結果があれば、2次元画像の背景から検出対象およびその位置を抽出し得ることを本願発明者らは見出した。言い換えると、撮像範囲が広くても、検出対象およびその位置の特定精度を確保することができる。形状によらないため、対象の全部を検出できない場合でも、当該対象を特定することも可能である。検出対象を認識するのに利用する画素数を多くするために焦点距離を変更する必要も少なく、検出対象の移動を追跡することも容易となる。しかも、検出対象の物性に応じて波長帯を選択することで、多数の波長帯それぞれの画像を解析する必要がなくなるため、面状のエリアを高速に解析することができる。また、撮像素子部における全撮像素子を同一波長帯に割り当てることができるため、高い解像度を得ることができる。また、たとえば波長フィルタ部において撮像素子別の波長選択フィルタを設ける構成と比べて、波長フィルタ部の構成の簡易化を図ることができる。
【0008】
好ましくは、上記検出部は、一つの画素における上記複数の波長帯についての強度値の一部または全部を組み合わせて算出した評価値に基づいて、当該画素における物質の検出を行なう。
【0009】
このような構成により、多数の波長帯の画像を得なくても、検出対象等について、波長に対する特性を適切に評価することができ、対象検出処理をより正確に行なうことができる。注目画素における物質の検出には、注目画素自体の評価値に加えて、周辺画素の強度値、評価値、物質判別結果も用いることができる。
【0010】
好ましくは、上記複数の波長帯の少なくとも一部は赤外域に含まれる。
【0011】
このような構成により、検出対象またはその背景に含まれる物質の評価をより適切に行なうことができる。
【0012】
一実施態様として、上記画素は、上記複数の波長帯にそれぞれ対応する複数のサブ画素を含み、各上記サブ画素は、対応の波長帯を選択するための波長選択フィルタと、上記波長選択フィルタからの透過光を受光するための撮像素子とを有することができる。
【0013】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる対象検出方法は、検出対象の物性に応じて予め選択された複数の波長帯について、2次元画像を撮像するステップと、上記2次元画像の各画素における物質を検出するステップとを含み、上記2次元画像を撮像するステップにおいては、複数の波長選択フィルタを移動させて上記複数の波長選択フィルタのうちのいずれか1つを選択することにより、受けた光の中から、上記複数の波長帯のうちのいずれか1つの上記波長帯の光を透過して撮像素子へ照射する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、より広範囲かつ高速に対象を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る対象検出装置の機能ブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る対象検出装置による検出対象の撮影を概念的に示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る対象検出装置における受光部の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る対象検出装置における受光部による画像処理を概念的に示す図である。
【図5】対象検出装置の受光部における波長フィルタ部の透過波長帯の参考例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る対象検出装置による対象検出動作を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る対象検出装置による対象検出動作を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る対象検出装置における受光部の構成の例を示す図である。
【図9】対象検出装置の他の構成例を示す図である。
【図10】他の構成例に係る対象検出装置が対象検出処理を行なう際の動作手順を定めたフローチャートである。
【図11】他の構成例に係る対象検出装置における検出部の機能ブロック図である。
【図12】他の構成例に係る対象検出装置の検出部における判定部が物質判定処理を行なう際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態に係る対象検出装置の機能ブロック図である。この対象検出装置101は、監視装置、さらには監視エリアにおける侵入者を検知し、当該侵入者の画像を撮影する用途に用いることができる。
【0018】
図1を参照して、対象検出装置101は、撮像部11と、検出部12とを備える。撮像部11は、光学系21と、受光部22とを含む。
【0019】
撮像部11は、検出対象の物性に応じて予め選択された複数の波長帯について、2次元画像を撮像する。この撮像にはハイパースペクトル(HS)カメラを用いることができる。本実施の形態において、HSカメラは、少なくとも近赤外域を含む対象波長域における電磁波を撮影する。対象波長域は、たとえば、900nm〜1800nmであり、予め選択される上述の複数の波長帯を含む。これらの波長帯は、たとえば、最大10波長帯選択される。
【0020】
ここで、選択する波長帯の数を10以下にするのは、それより大きくすると、一定の解像度で高速(ほぼリアルタイム)に物質を判別することが難しくなり、特に監視用途には適さなくなるためであり、また、選択する波長帯の数が10以下であっても、物質の識別数および精度を十分に確保できるためである。監視装置等の実用性を考慮すると、2〜6波長帯を選択するのが好ましく、3〜5波長帯を選択するのがより好ましい。
【0021】
HSカメラは、対象エリアを撮影可能な場所、たとえば対象エリア付近の柱の頭頂部に下斜め方向に向けて設置される。対象エリアが監視エリア全体をカバーできないときまたは死角が生じるときには、HSカメラを複数設置することができる。
【0022】
撮像部11において、受光部22は、複数の画素Pを含む。これら複数の画素Pは、各選択波長帯の電磁波の受信強度を示す電気信号をそれぞれ出力する。
【0023】
受光部22は、複数の画素Pが出力する電気信号により対象エリアの2次元画像を撮像する。
【0024】
検出部12は、本実施の形態において、受光部22によって撮像された2次元画像に基づいて画素Pごとに物質を判別する。検出部12は、対象検出装置101の検出対象に応じた物質を判別できればよく、対象検出装置101を監視装置として用いる場合、たとえば人肌とそれ以外の物質を判別できればよい。物質の判別は、画素Pごとに限らず、画素群ごとに行なってもよく、さらに一部領域で画素ごとに、残りの領域で画素群ごとに行なってもよい。
【0025】
図2は、本発明の実施の形態に係る対象検出装置による検出対象の撮影を概念的に示す図である。
【0026】
図2を参照して、光学系21は、監視エリアからの光を受光し、受光部22へ照射する。
【0027】
受光部22は、光学系21から受けた光(ここでは赤外線)に基づいて2次元画像を作成する。この2次元画像に基づいて対象TG、ここでは人が検出され、監視エリアにおける対象TGの画像が撮影される。
【0028】
図3は、本発明の実施の形態に係る対象検出装置における受光部の構成を示す図である。
【0029】
図3を参照して、受光部22は、波長フィルタ部31と、撮像素子部32とを含む。
【0030】
撮像素子部32は、行列状に配置された複数の撮像素子Rを含む。撮像素子Rは、たとえばInGaAsを用いた受光素子である。撮像素子Rは、受けた光の強度を示す電気信号を出力する。
【0031】
波長フィルタ部31は、格子状に配置された複数の波長選択フィルタFを含む。波長選択フィルタFは、撮像素子Rに対応して設けられ、物質判別用の複数の波長帯のうち、対応の波長帯の光を透過して対応の撮像素子Rへ照射する。
【0032】
具体的には、撮像素子部32における各撮像素子Rに位置を合わせた波長フィルタ部31を撮像素子部32の直上に配置する。波長フィルタ部31は、たとえば撮像素子部32と一体化される。波長フィルタ部31の受光面の縦横サイズは、撮像素子部32の受光面と略一致する。各撮像素子Rは、対応の波長選択フィルタFが透過する波長帯の光の強度を示す電気信号を出力する。
【0033】
図4は、本発明の実施の形態に係る対象検出装置における受光部による画像処理を概念的に示す図である。
【0034】
図5は、対象検出装置の受光部における波長フィルタ部の透過波長帯の参考例を示す図である。
【0035】
図5を参照して、波長フィルタ部31において、物質判別用の複数の波長帯の光をそれぞれ透過し、互いに隣接する複数の波長選択フィルタFが設けられている。本実施の形態においては、これら6つの波長選択フィルタの1セットによって、一つの画素に対する波長選択フィルタ部が構成される。各波長選択フィルタは、一つのサブ画素に対する波長選択フィルタ部を構成する。
【0036】
複数の波長帯の少なくとも一部は赤外域、さらには近赤外域に含まれるのが好ましい。より詳細には、波長フィルタ部31は、たとえば940nm帯、1100nm帯、1200nm帯、1300nm帯、1500nm帯および1600nm帯の波長を有する光をそれぞれ透過する波長選択フィルタのセットを複数有する。各波長帯は、たとえば中心波長に対して±数10nmの幅を有することができる。
【0037】
ここで、モザイク状に透過特性が異なる波長フィルタ部31は、たとえばフォトニック結晶を応用することにより作成可能である。このフィルタ板を撮像素子に合わせて配置する。また、撮像素子Rごとに波長選択フィルタFを設ける方法としては、たとえばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)またはCCD(Charge Coupled Device)用のRGBフィルタと同様の方法が考えられる。
【0038】
画素Pは、複数の波長にそれぞれ対応する複数のサブ画素SPを含む。図4および図5に示す例では、上述のように6つのサブ画素SPで1つの画素Pを構成し、画素Pごとに演算を行なって当該画素Pにおける像の物質判別を行なう。そして、人肌であると判断された画素Pを他の画素Pと区別して表示することにより、たとえば人型のスペクトル画像を得ることができる。
【0039】
検出部12は、一つの画素Pにおける複数の波長帯についての強度値の一部または全部を組み合わせて算出した評価値に基づいて、当該画素Pにおける物質の検出を行なう。より詳細には、検出部12は、2次元画像において画素Pにおける複数の選択光の強度を比較し、比較結果に基づいて当該画素Pにおける物質を判別する。検出部12は、画素Pに対応する複数の受光素子Rが出力する電気信号に基づいて、画素Pごとに物質を判別する。
【0040】
図6および図7は、本発明の実施の形態に係る対象検出装置による対象検出動作を示す図である。
【0041】
図6および図7を参照して、パターンマッチング等、形状から人間であるとの判定を行なうためには、その形状を画像上で表現するために少なくとも数十画素が必要であり、カメラのある方向への移動も判別するとなると、さらに多くの画素が必要となる。これは、カメラに侵入者が近づく場合、対象がかなり移動しないと、形状の差となって画像に表れないためである。図6において、ARは、可視画像の一般的な認識処理で人間を検出するために必要となる画素の領域である。図6の可視画像の例では、人間の画像上のサイズが領域ARと同等であるため、画像処理によって人間であると認識できる。一方、図7の可視画像の例では、人間の画像上のサイズが領域ARより小さくなっているため、形状から人間であると認識するのが難しく、その認識精度は低下する。この距離で人間を精度よく認識しようとすると、対象候補へのズームを行なって、当該候補の画像上のサイズを大きくする必要がある。
【0042】
これに対して、対象検出装置101では、2次元スペクトル画像を用いる。このスペクトル画像では、人を認識するのに形状による必要がない。このため、図7に示すように、光学系21と監視エリアとの距離が100mの場合においても、1画素から数画素の対象の像IMGがあれば、その対象を背景から選択的に抽出することができる。形状によらないため、対象全体が画像含まれる必要もなく、対象の一部に対する判別結果から、当該対象の存在を特定することができる。このため、可視画像と同等の解像度であれば、より遠くの対象の存在を検出することができ、対象認識のためにズームアップする必要性が低くなる。
【0043】
このように、対象検出装置101では、少数の画素における検出結果から対象の存在を認識することが可能であることから、広範囲にわたってより正確に対象検出を行なうことができる。
【0044】
さらにカメラ方向への移動も、その移動に伴う画素数の僅かな増大で検出できる。図6では、簡単のため像IMGは3画素で例示されているが、実際にはより多くの画素で構成されており、100mから25mに人が近づくよりも前に、その移動を検出することができる。対象のカメラ方向への移動に伴い、数画素程度、像IMGに対応する画素が増えれば、その移動を検出し、対象を追跡することが可能である。
【0045】
可視画像に対する一般的な認識処理では、検出対象の移動量を検知するために、前後のフレーム間での差分を算出する。このとき、フレーム間で検出対象の大きさの相違を認識するためには、同一の形状物が大きくなったと認識できる程度の情報量が必要であり、可視画像では、相違部分としてたとえば数十画素以上の相違が必要である。このため、通常の広角カメラを用いる構成では、検出対象が徐々に近づいてくる場合、当該検出対象の移動量を検知することが困難である。
【0046】
これに対して、対象検出装置101では、形状によらないため、少数の画素の増減でフレーム間における検出対象の大きさの相違を認識することができる。これにより、検出対象が徐々に近づいてくる場合でも、検出対象を正確に検出することができる。
【0047】
また、通常の画像処理において、検出対象の移動量を検知するための情報量を確保するためにズームカメラを用いると、視野が狭くなるため、侵入者を追跡することが困難となる。
【0048】
これに対して、対象検出装置101では、少数の画素でフレーム間における検出対象の大きさの相違を認識することができるため、広角撮影を行なうことができる。これにより、カメラのレンズを動かすことなく、侵入者を容易に追跡することができる。
【0049】
さらに、本発明の実施の形態に係る対象検出装置では、撮像部11は、上述のように、検出対象の物性に応じて予め選択された複数帯の波長について、2次元画像を撮像する。多数の波長の2次元画像それぞれに対して解析処理を行なう必要がないため、広範囲にわたってより高速に対象検出を行なうことができる。
【0050】
さらに、本発明の実施の形態に係る対象検出装置では、検出部12は、一つの画素Pにおける複数の波長についての強度値の一部または全部を組み合わせて算出した評価値に基づいて、当該画素Pにおける物質の検出を行なう。
【0051】
このような構成により、検出対象およびその背景に含まれる物質の評価をより適切に行なうことができる。一つの画素における物質の検出には、当該画素自体の評価値に加えて、周辺画素の強度値、評価値、および物質判別結果も用いることができる。たとえば複数画素の強度値を平均し、その平均値から評価値を計算するようにしてもよい。
【0052】
また、本発明の実施の形態に係る対象検出装置では、上記複数の波長帯の少なくとも一部は赤外域に含まれる。
【0053】
このような構成により、選択光として適切な波長帯を選択し、物質判別をより正確に行なうことができる。
【0054】
対象検出装置では、上述のように、画素Pは、複数の波長帯にそれぞれ対応する複数のサブ画素SPを含むことができる。しかしながら、本発明の実施の形態に係る対象検出装置では、異なるフィルタ構成を採用する。
【0055】
図8は、本発明の実施の形態に係る対象検出装置における受光部の構成の例を示す図である。
【0056】
図8を参照して、受光部22は、波長フィルタ部31と、撮像素子部32とを含む。
【0057】
撮像素子部32は、受けた光の強度を示す電気信号を出力するための複数の撮像素子を有する。
【0058】
波長フィルタ部31は、光学系21から受けた光のうち、物質判別用の複数の波長帯の光をそれぞれ透過して撮像素子部32へ照射するための波長選択フィルタFL1〜FL4を有する。
【0059】
波長フィルタ部31は、光学系21から受けた光のうち、選択した波長帯の光を透過して撮像素子部32に照射する。より詳細には、波長フィルタ部31は、波長選択フィルタFL1〜FL4を移動させるための可動機構を有し、可動機構を用いて波長選択フィルタFL1〜FL4のうちのいずれか1つを選択することにより、監視エリアから受けた光の中から、物質判別用の複数の波長帯のうちのいずれか1つの波長帯の光を透過して撮像素子部32へ照射する。
【0060】
具体的には、波長フィルタ部31は、光学系21と撮像素子部32との間に設けられ、たとえば回転式であり1回転で4波長帯を切り替え可能なバンド変更機構を備える。受光部22は、バンド変更機構の選択波長帯と2次元画像とを対応付ける。このように、波長フィルタ部31のバンド変更機構を回転させる構成により、所望の波長帯の強度分布を得ることができる。
【0061】
このような構成により、撮像素子部32における全撮像素子を同一波長帯に割り当てることができるため、高い解像度を得ることができる。
【0062】
また、たとえば波長フィルタ部において撮像素子別の波長選択フィルタを設ける構成と比べて、波長フィルタ部の構成の簡易化を図ることができる。
【0063】
上述の実施の形態では、対象検出装置を監視装置として単独で用いたが、これに限られるものではなく、たとえば可視の望遠カメラと組み合わせることも可能である。
【0064】
図9は、対象検出装置の他の構成例を示す図である。
【0065】
図9を参照して、本実施の形態に係る対象検出装置101は、HSカメラ51と、望遠カメラ52と、制御装置53とを備える。
【0066】
制御装置53は、HSカメラ51によって撮影されたスペクトル画像に基づいて侵入者を検知して利用者に自動的に通知したり、望遠カメラ52を制御し当該侵入者の拡大可視画像を撮影したりすることができる。
【0067】
より詳細には、望遠カメラ52は、たとえば、パンチルト機能およびズーム機能を搭載したPTZカメラである。HSカメラ51および望遠カメラ52は、監視エリアからの太陽光の反射光を受光することにより撮影を行なう。
【0068】
この例において、望遠カメラ52は、利用者が即時にまたは事後に侵入者を視覚的に確認するために設けられており、侵入者を検知するという目的には必要ない。また、望遠カメラ52によって侵入者を自動追跡することは必須ではなく、利用者が手動で望遠カメラ52を操作するようにしてもよい。
【0069】
なお、対象検出装置101は、夜間における撮影を可能とするために、ハロゲン光または赤外光を監視エリアに向けて照射する光照射器をさらに備える構成であってもよい。
【0070】
図10は、図9の例に係る対象検出装置が対象検出処理を行なう際の動作手順を定めたフローチャートである。以下では、5つの波長帯を用いる例を説明する。
【0071】
図10を参照して、まず、HSカメラ51は、監視エリア全体を撮影する。この撮影は、連続または間欠的に行われる(ステップS1)。
【0072】
次に、受光部22は、1100nm帯、1200nm帯、1300nm帯、1500nm帯、および1600nm帯の各波長帯の2次元画像を作成する。たとえば、受光部22は、複数の波長選択フィルタを移動させて当該複数の波長選択フィルタのうちのいずれか1つを選択することにより、受けた光の中から、複数の波長帯のうちのいずれか1つの波長帯の光を透過して撮像素子へ照射する(ステップS2)。
【0073】
次に、検出部12は、受光部22によって撮像された2次元画像に基づいて、2次元画像の各画素Pにおける物質を判別する(ステップS3)。
【0074】
自動的に対象検出を利用者に通知する場合、次に、検出部12は、判別結果に基づいて、監視エリアにおける検出対象、ここでは侵入者およびその位置を特定する(ステップS4)。この特定は、各画素における物質の判別結果に、たとえば「人肌」が含まれているか否かによって行なうことができる。ある画素に対する物質の判別結果に「人肌」が含まれていれば、その画素位置を侵入者の位置として特定してもよいし、複数の画素に対する物質の判別結果の組合せから、侵入者を特定してもよい。たとえば物質の判別結果が「人肌」の画素と「繊維」の画素とが隣接している場合には、その画素群の位置を侵入者の位置と特定してもよい。画素群の位置は構成画素の重心によって定めることができる。侵入者の体全体が検出されていなくても、「人肌」の1画素または数画素あれば、それによって侵入者が存在すると判定してもよい。
【0075】
また、検出部12は、監視エリアにおける検出対象を個々に特定することもできる。たとえば、侵入者Aが覆面を着用しており、侵入者Bが覆面を着用していない場合には、侵入者Aの顔部分の物質は繊維となる一方、侵入者Bの顔部分の物質は人肌となる。また、侵入者Aと侵入者Bとで着用している衣服の材質が異なる場合には、侵入者A,Bの体部分の物質が互いに異なる。検出部12は、物質の相違に基づいて、侵入者A,Bを個々に区別することもできる。
【0076】
検出部12によって侵入者が検出された場合には(ステップS4でYES)、望遠カメラ52を制御することにより、当該侵入者の拡大画像を撮影する(ステップS5)。
【0077】
より詳細には、検出部12によって特定された侵入者の位置、すなわち侵入者の検出された画素Pを視野の中心として、望遠カメラ12による撮影を行なう。HSカメラの取付け角度を定めていれば、対象物までの大凡の距離を推定することができ、それに応じて焦点距離を調整することができる。撮影された拡大画像は、たとえば、対象検出装置101において記録され、また、遠隔地の監視センタ内に設置された液晶ディスプレイ等の表示部に表示される。また、対象検出装置101は、望遠カメラ12による侵入者の撮影と並行して、侵入者に対して音または光等による警告を行なうことも可能である。
【0078】
一方、検出部12によって侵入者が検出されなかった場合には(ステップS4でNO)、監視エリアの撮影、スペクトル画像の作成、物質判別および侵入者の検出処理が再び行われ、監視が継続される(ステップS1〜S4)。
【0079】
図11は、図9の例に係る対象検出装置における検出部の機能ブロック図である。
【0080】
図11を参照して、この例において、検出部12は、反射率算出部91と、正規化指標算出部92と、二次微分値算出部93と、判定部94とを含む。
【0081】
検出部12は、2次元画像の画素Pにおける複数の選択光の反射率をそれぞれ算出し、算出した複数の選択光の反射率に基づいて2次元画像の画素Pにおける物質を判別することができる。
【0082】
より詳細には、反射率算出部91は、受光部22から受けた2次元画像に基づいて、2次元画像の画素Pにおける1100nm帯,1200nm帯,1300nm帯,1500nm帯,1600nm帯の波長成分の反射率R1100,R1200,R1300,R1500,R1600をそれぞれ算出する。反射率は、赤外光を照射する場合、当該赤外光の光源の発光輝度と、各画素の強度値とから計算することができる。自然光を利用する場合、別途、その照度を測定し反射率を計算するようにしてもよい。
【0083】
正規化指標算出部92は、反射率算出部91によって算出された反射率R1100,R1200,R1300,R1500,R1600を用いて、以下に示す式により定義される正規化指標ND1〜ND5を算出する。
ND1=(R1500−R1200)/(R1500+R1200)
ND2=(R1300−R1200)/(R1300+R1200)
ND3=(R1600−R1300)/(R1600+R1300)
ND4=(R1300−R1100)/(R1300+R1100)
ND5=(R1500−R1300)/(R1500+R1300)
【0084】
二次微分値算出部93は、上記反射率および波長の関数の二次微分値を算出する。具体的には、二次微分値算出部93は、反射率算出部91によって算出された反射率R1100,R1200,R1300,R1500,R1600を用いて、以下に示す式により定義される近似的な二次微分値der1,der2を算出する。der1は、R1200,R1300,R1500による二次差分である。また、der2は、R1100,R1200,R1500による二次差分である。der1およびder2は、以下の式で表される。
der1=[{(R1500−R1300)/(R1500+R1300)}/200]−[{(R1300−R1200)/(R1300+R1200)}/100]
der2=[{(R1500−R1200)/(R1500+R1200)}/300]−[{(R1200−R1100)/(R1200+R1100)}/100]
【0085】
判定部94は、反射率R1100,R1200,R1300,R1500,R1600、正規化指標ND1〜ND4、および二次微分値der1,der2に基づき、2次元画像の画素Pにおける物質を判定する。
【0086】
図12は、本発明の実施の形態に係る対象検出装置の検出部における判定部が物質判定処理を行なう際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【0087】
図12を参照して、まず、判定部94は、反射率R1100,R1200,R1300,R1500,R1600の値が近似的に0であるか否かを判定する。たとえば、反射率の値が所定値(例えば0.02)未満である場合には、当該反射率は近似的に0であると判定し、また、反射率の値が当該所定値以上である場合には、当該反射率は近似的に0でないと判定する。判定部94は、反射率R1100,R1200,R1300,R1500,R1600の値がすべて近似的に0である場合には(ステップS11でNO)、ガラスが存在すると判定する。
【0088】
一方、判定部94は、反射率R1100,R1200,R1300,R1500,R1600のいずれかが近似的に0でない場合には(ステップS11でYES)、二次微分値der1に正規化指標ND5,ND3の和を乗じた値「der1×(ND5+ND3)」が0より大きいか否かを判定する(ステップS12)。
【0089】
判定部94は、「der1×(ND5+ND3)」が0より大きい場合には(ステップS12でYES)、正規化指標ND1の値が0より大きいか否かを判定する(ステップS13)。
【0090】
判定部94は、正規化指標ND1の値が0より大きい場合には(ステップS13でYES)、動物または布地が存在すると判定する。
【0091】
一方、判定部94は、正規化指標ND1の値が0以下である場合には(ステップS13でNO)、二次微分値der2の値が0より大きいか否かを判定する(ステップS14)。
【0092】
判定部94は、二次微分値der2の値が0より大きい場合には(ステップS14でYES)、人肌が存在すると判定する。
【0093】
一方、判定部94は、二次微分値der2の値が0以下である場合には(ステップS14でNO)、植物が存在すると判定する。
【0094】
また、判定部94は、「der1×(ND5+ND3)」の値が0以下である場合には(ステップS12でNO)、正規化指標ND3の値が0より大きいか否かを判定する(ステップS15)。
【0095】
判定部94は、正規化指標ND3の値が0より大きい場合には(ステップS15でYES)、正規化指標ND2の値が0より大きいか否かを判定する(ステップS16)。
【0096】
判定部94は、正規化指標ND2の値が0以下である場合には(ステップS16でNO)、アスファルトが存在すると判定する。
【0097】
一方、判定部94は、正規化指標ND2の値が0より大きい場合には(ステップS16でYES)、コンクリートが存在すると判定する。
【0098】
また、判定部94は、正規化指標ND3の値が0以下である場合には(ステップS15でNO)、正規化指標ND4の値が0より大きいか否かを判定する(ステップS17)。
【0099】
判定部94は、正規化指標ND4の値が0より大きい場合には(ステップS17でYES)、コンクリートが存在すると判定する。
【0100】
一方、判定部94は、正規化指標ND4の値が0以下である場合には(ステップS17でNO)、ガラスが存在すると判定する。
【0101】
なお、0より大きいか否かを判断する上記各ステップにおいては、判定対象物質の物性に応じて0以外の閾値を設定してもよい。
【0102】
そして、検出部12は、判定部94によって人肌が存在すると判定された場合には、監視エリアにおいて侵入者が存在すると判断することができる。また、検出部12は、たとえば、判定部94によってガラスが存在すると判定された場合には、監視エリアにおいて自動車が存在すると判断することができる。
【0103】
なお、監視エリアへの侵入者が覆面および手袋等を着用しているために人肌が露出していない状況も想定される。このような場合を想定して、たとえば、対象検出装置101において、人間のみが着用する化学繊維等の物質を検出可能となるように閾値および波長を設定する。これにより、判定部94によって当該化学繊維が存在すると判定された場合に、検出部12が、監視エリアにおいて侵入者が存在すると判断することができる。
【0104】
また、ウール、綿、ナイロン(登録商標)およびポリエステル等の繊維の種別を検出可能な閾値および波長を設定することにより、人間が着用している衣服の材質を検出することも可能である。
【0105】
なお、対象検出装置101が人間を検出することのみを想定すれば、人に関係する物質の分別だけを行なう構成であってもよい。
【0106】
なお、本発明の実施の形態に係る対象検出装置は、監視エリアにおける侵入者を検知する目的で用いられるとしたが、このような目的に限定されるものではなく、何らかの対象を検出する目的で広く応用可能である。
【0107】
たとえば、検出対象としては、一般道および高速道路を走行する自転車、ならびに杖を持った盲人等も考えられる。また、一定地域における農作物の育成状態を検出する用途にも適用可能である。
【0108】
また、本発明の実施の形態に係る対象検出装置は、侵入検知の目的に加えて、侵入検知以外の目的で人または物を監視する監視装置としても使用可能である。たとえば、交差点の交通状況を監視する監視装置、または自動車のナンバープレートを検出して撮影する監視装置として使用することが考えられる。
【0109】
また、本発明の実施の形態に係る対象検出装置において、前述のようにハロゲン光または赤外光を照射する光照射器を設ける構成により、暗闇および夜間において、人に気づかれずに対象検出を行なう目的で使用することも可能となる。
【0110】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0111】
11 撮像部
12 検出部
13 対象画像取得部
21 光学系
22 受光部
31 波長フィルタ部
32 撮像素子部
51 HSカメラ
52 望遠カメラ
53 制御装置
91 反射率算出部
92 正規化指標算出部
93 二次微分値算出部
94 判定部
101 対象検出装置
P 画素
SP サブ画素
R 撮像素子
F,FL1〜FL4 波長選択フィルタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の物性に応じて予め選択された複数の波長帯について、2次元画像を撮像するための撮像部と、
前記2次元画像の各画素における物質を検出するための検出部とを備え、
前記撮像部は、
受けた光の強度を示す電気信号を出力するための複数の撮像素子を有する撮像素子部と、
受けた光のうち、前記複数の波長帯の光をそれぞれ透過して前記撮像素子部へ照射するための複数の波長選択フィルタを有する波長フィルタ部とを含み、
前記波長フィルタ部は、前記複数の波長選択フィルタを移動させるための可動機構を有し、前記可動機構を用いて前記波長選択フィルタを選択することにより、受けた光の中から、前記複数の波長帯のうちのいずれか1つの前記波長帯の光を透過して前記撮像素子部へ照射する、対象検出装置。
【請求項2】
前記検出部は、一つの画素における前記複数の波長帯についての強度値の一部または全部を組み合わせて算出した評価値に基づいて、当該画素における物質の検出を行なう、請求項1に記載の対象検出装置。
【請求項3】
前記複数の波長帯の少なくとも一部は赤外域に含まれる、請求項1または請求項2に記載の対象検出装置。
【請求項4】
検出対象の物性に応じて予め選択された複数の波長帯について、2次元画像を撮像するステップと、
前記2次元画像の各画素における物質を検出するステップとを含み、
前記2次元画像を撮像するステップにおいては、複数の波長選択フィルタを移動させて前記複数の波長選択フィルタのうちのいずれか1つを選択することにより、受けた光の中から、前記複数の波長帯のうちのいずれか1つの前記波長帯の光を透過して撮像素子へ照射する、対象検出方法。
【請求項1】
検出対象の物性に応じて予め選択された複数の波長帯について、2次元画像を撮像するための撮像部と、
前記2次元画像の各画素における物質を検出するための検出部とを備え、
前記撮像部は、
受けた光の強度を示す電気信号を出力するための複数の撮像素子を有する撮像素子部と、
受けた光のうち、前記複数の波長帯の光をそれぞれ透過して前記撮像素子部へ照射するための複数の波長選択フィルタを有する波長フィルタ部とを含み、
前記波長フィルタ部は、前記複数の波長選択フィルタを移動させるための可動機構を有し、前記可動機構を用いて前記波長選択フィルタを選択することにより、受けた光の中から、前記複数の波長帯のうちのいずれか1つの前記波長帯の光を透過して前記撮像素子部へ照射する、対象検出装置。
【請求項2】
前記検出部は、一つの画素における前記複数の波長帯についての強度値の一部または全部を組み合わせて算出した評価値に基づいて、当該画素における物質の検出を行なう、請求項1に記載の対象検出装置。
【請求項3】
前記複数の波長帯の少なくとも一部は赤外域に含まれる、請求項1または請求項2に記載の対象検出装置。
【請求項4】
検出対象の物性に応じて予め選択された複数の波長帯について、2次元画像を撮像するステップと、
前記2次元画像の各画素における物質を検出するステップとを含み、
前記2次元画像を撮像するステップにおいては、複数の波長選択フィルタを移動させて前記複数の波長選択フィルタのうちのいずれか1つを選択することにより、受けた光の中から、前記複数の波長帯のうちのいずれか1つの前記波長帯の光を透過して撮像素子へ照射する、対象検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−113802(P2013−113802A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262621(P2011−262621)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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