説明

対象物、特に車体を、コーティング、特に塗装するためのシステム

本発明は、コーティングブース(2)と、静電気的に動作する堆積ユニット(14)を備える、対象物をコーティングするためのシステム(1)に関する。供給装置(80)は、堆積ユニット(14)の各堆積電極(25)と関連付けられており、供給装置(80)によって、堆積面の上方領域に、堆積液を供給可能である。供給装置は、供給チャネル(81、181)を有し、該供給チャネル(81、181)は、堆積液によって満たされており、その下方領域が、2つの鉄製板バネ(84、85、184、185)によって形成されている。2つのスライドプレート(99、100)が、堆積電極(25)の堆積面の一方側および他方側に対して当接している。スライドプレート(99、100)は、その下端部が、鉄製板バネ(84、85)の下端部の上方に配置される位置と、その下端部が、鉄製板バネ(84、85)の下端部の下方に配置される位置との間で、往復動可能に移動することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物、特に車体を、コーティング、特に塗装するためのシステムであって、
a)対象物がコーティング材料によって作用されるとともに、コーティング材料のオーバースプレー粒子を捕捉して運ぶ気流が通過可能である、コーティングブースと、
b)そのハウジングが、オーバースプレー粒子を運ぶ気体のための流入口と、浄化された気体のための流出口とを有し、分離面を有する少なくとも1つの分離電極と、対電極装置とが、ハウジング内に配置された、静電気的に動作する分離装置と、
c)そのポールが、分離電極または対電極装置に連結される、高電圧源と、
d)コーティングブースのベース部から、分離装置の流入口まで延びる、オーバースプレー粒子を運ぶ気体のための気流路とを備える、システムに関する。
【背景技術】
【0002】
塗装が、手動で、または自動的に対象物に塗布されるとき、塗装の副流(substream)は、概して固体と溶媒の双方、および/または接着剤を含み、対象物にまで達することはない。この副流は、専門家の間では「オーバースプレー(overspray)」として知られている。オーバースプレーは、コーティングブースにおいて気流によって捕捉され、分離のために供給される。これにより、求められた場合、気体は、適当な調整を加えた後に、コーティングブースへと導かれて戻される。
【0003】
特に、比較的に塗料の使用量が多いシステム、例えば、車体を塗装するためのシステムにおいては、湿式分離システムが、好ましくは用いられている。商業的に知られている湿式分離器においては、上方から、気流を加速させるノズルへと流れるブース排気とともに、水が流れる。内部を水とともに流れるブース排気の渦流が、このノズルにて発生する。この手順の間に、オーバースプレーの粒子は、その多くが水の中へと流れる。これにより、湿式分離器から流出した気体は、実質的に洗浄され、オーバースプレー塗料の粒子は、水の中に配置される。これらは、ここから復元され、または処分され得る。公知の湿式分離器においては、必要となる非常に大量の水を循環させ、ブースと、ノズルと、処分領域との間の圧力差を乗り越えるために、比較的に大きなエネルギーが必要となる。塗料接着、非粘着化化学物質、および塗料スラッジの処理を高次に使用することから、すすぎ水の処理には、コストが掛かってしまう。さらに、すすぎ水と集中的に接触することにより、気体は、大量の蒸気を吸収する。この蒸気は、再循環気モードにおいて、気体を処理するために多くのエネルギーを消費することに繋がる。または、この蒸気は、高濃度の蒸気または溶媒含有を伴いつつ、排気が排出される必要があることを意味する。
【0004】
これとは対照的に、上述したタイプの商業的に公知である装置において、乾式分離プロセスが用いられる。ここでは、通過したブース気体に包含されるオーバースプレー塗料の粒子は、電気的に操作される分離装置の対電極装置によって、イオン化される。そして、オーバースプレー塗料の粒子は、分離電極と対電極装置との間に形成される電界によって、分離電極の分離面へと移動し、該分離面上にて、分離される。
【0005】
上述したタイプの公知のシステムにおいては、分離面に付着しているオーバースプレー粒子は、機械的に剥離され、他方へと運ばれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述したタイプのシステムを、以下のような方法で構築することである。すなわち、このシステムにおいては、静電式の分離装置の動作に関して、より課題が少なくなり、特に、オーバースプレー粒子を、分離面からより容易に取り除くことが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本目的は、本発明によれば、以下の構成によって達成される。すなわち、
e)供給装置が、それぞれの分離電極と関連付けられており、該供給装置は、分離電極のそれぞれの分離面の上方領域に、分離液を供給可能であり、分離液は、分離電極のそれぞれの分離面上を広範囲に亘って流れるように供給される。
f)供給装置は、供給チャネルを有し、該供給チャネルは、所定のレベルまで分離液によって満たされ、その下方領域において、2つの鋼製板バネによって形成され、該鋼製板バネは、少なくともある場合において、少なくとも部分的に、該鋼製板バネの下端部が、分離電極の動作面の一方側および他方側に対して当接するように設けられる。
g)分離電極の分離面の一方側および他方側に対して変位可能に設けられた、2つのスライドプレートを備える。
h)作動装置を備え、該作動装置によって、スライドプレートは、該スライドプレートの下端部が、鋼製板バネの下端部の上方に配置される位置と、該スライドプレートの下端部が、鋼製板バネの下端部の下方に配置される位置との間で、往復動可能に移動することができる。
【0008】
したがって、本発明によれば、オーバースプレー粒子は、分離面において分離液によって捕捉され、該分離液を用いて他方へと運ばれ得る。このために必要となる分離液の量は、比較的小さくなり、これにより、湿式分離器に係る上述した課題は、重大ではなくなる。言うまでもなく、分離液は、オーバースプレー粒子に適応させる必要があり、該分離液からオーバースプレー粒子を取り除くことを補助する添加物を含んでもよい。
【0009】
下方領域において2つの鋼製板バネから形成された供給チャネルを含む、分離液用の供給装置に係る本発明の構成は、分離電極の分離面に、分離液を供給する簡単な方法を複数示すことができる。分離液は、漏れを防止する程に密に閉鎖されていない、鋼製板バネと分離電極の分離面との間のギャップを通して、単に「漏出する」。
【0010】
2つのスライドプレートは、これらの往復動の結果、分離液が供給チャネルから排出されることに積極的に寄与し、より粘性の高い分離液であっても、供給チャネルから、適切に、連続的に、且つ広範囲に流れることを保証するように、設けられている。さらに、分離電極と鋼製板バネとの間のギャップにおいては、含まれる可能性のある塗料の粒子によって閉鎖されてしまうことが確実に防止される。
【0011】
本発明に係るシステムの好ましい実施形態においては、鋼製板バネの下端部は、ギザギザの刻み目の形状を有し、または、粗い櫛状である。この構成は、分離液が、供給チャネルから分離プレート上に、適正な量、且つ適正な分配で流出することにも、寄与する。「ギザギザの刻み目」の幾何学的形状、または櫛歯間の間隔は、特定の要求に従って選択されてもよい。
【0012】
また、好ましくは、本発明に係るシステムは、装置を備え、該装置によって、鋼製板バネの下端部は、供給チャネルの内容物が外部に流出可能となる程度に、分離電極の分離面においてシステムから離れるように移動可能である。したがって、時折、供給チャネルを洗浄することが可能となる。ここで、供給チャネルを洗浄する場合は、供給チャネルを完全に空にする必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】車体を塗装するための塗装システムを通過する部分立面図である。
【図2】図1に示す塗装システムにおいて用いられる、オーバースプレー塗装用の静電分離装置の斜視図である。
【図3】図2に示す分離装置を構成する、第1のタイプの分離ユニットの斜視図である。
【図4】分離液と、関連付けられた分離電極のための供給装置の端面図であり、それぞれ異なる動作位置に配置された状態を示す。
【図5】分離液と、関連付けられた分離電極のための供給装置の端面図であり、それぞれ異なる動作位置に配置された状態を示す。
【図6】分離液と、関連付けられた分離電極のための供給装置の端面図でありそれぞれ異なる動作位置に配置された状態を示す。
【図7】分離液用の供給装置の代替的な例示的実施形態の斜視図である。
【図8】図7に示す供給装置の端面図であり、作動装置とともにそれぞれ異なる動作位置に配置された状態を示す。
【図9】図7に示す供給装置の端面図であり、作動装置とともにそれぞれ異なる動作位置に配置された状態を示す。
【図10】図7に示す供給装置の端面図であり、作動装置とともにそれぞれ異なる動作位置に配置された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の例示的な実施形態について、図面を参照して以下に詳細に説明する。
【0015】
最初に図1を参照して、ここでは、車体塗装用の塗装システムが示されている。この塗装システムは、全体として参照符号1によって示されている。上半部において、塗装ブース2の一部が示されており、該塗装ブース2は、公知の方法で構成されている。したがって、塗装ブース2に関しては、詳細な説明を省略する。塗装される車体は、運搬システム(図示せず)の補助を受けつつ、図1の紙面に対して直交する方向に、連続的または間欠的に運ばれる。そして、この間に、塗装される車体は、塗布装置(同様に図示せず)から塗布される塗料によって作用される。
【0016】
また、塗装ブース2の上方に配置された気体プレナムは、特に図示されていない。
【0017】
調整済みの気体は、この気体プレナムからの均一な流れとして、フィルタカバーを用いて、塗装ブース2の内部に導入される。そこで、調整済みの気体は、下方へと流れて、車体に接着していないオーバースプレー塗料を捕捉する。そして、この気体は、大きな寸法の下方開口3を通って、塗装ブース2から流出する。なお、下方開口3は、アクセス可能な格子4によって覆われている。
【0018】
塗装ブース2の全体は、公知の鉄構造5上に設置されている。
【0019】
塗装ブース2の下方に、システム領域6が配置されており、該システム領域6においては、開口3により塗装ブース2から流出した、オーバースプレー粒子を運ぶ気体が、再度浄化される。システム領域6は、分離チャンバ9を有し、該分離チャンバ9は、上方開口3、および、気体が通過するために機能するさらなる開口は別として、壁8によって全ての側部を閉鎖されている。2つの偏向板10および11は、分離チャンバ9内に配置されている。図1中の左側の偏向板11は、より大きな部分11aを含み、該部分11aは、外側から内側へ向けて比較的になだらかに傾斜している。また、偏向板11は、より鋭く傾斜している部分11bを含み、該部分11bは、部分11aに接している。同様の方法で、偏向板10は、図1中では右側に示されており、外側の部分10aを含む。この部分10aは、外側から内側へ向けて比較的になだらかに傾斜している。また、偏向板10は、部分10bを含み、該部分10bは、上記部分10aと接しており、図示された例示的実施形態においては、垂直下方に延びている。部分10aは、実線で示されている動作位置から、点線で示されているメンテナンス位置まで回動可能に枢支されている。同様の方法で、部分10bは、垂直の動作位置から、メンテナンス位置まで回動可能に枢支されている。
【0020】
側方に向けて設置された分配チャネル62から、偏向板10および11上へと、該偏向板の上面上の略粘着性の層において、分離液は、下方へと流れ得る。
【0021】
移行チャンバ12は、2枚の偏向板10および11によって対向する側に画定されたチャンバの下方に配置されている。偏向板65は、壁8aと、移行チャンバ12のベース部8bとの間において、湾曲して延在しており、移行チャンバ内へ、気体の流れを促進させつつ移行することを保証する。
【0022】
電気的に操作する分離装置(全体として、参照符号14により示されている)のための受容チャンバ13が、図1中の移行チャンバ12の右側領域の上方、偏向板10の垂直に延びる部分10bの右側に、設けられている。受容チャンバ13は、下方開口15を介して、移行チャンバ12と連通している。また、受容チャンバ13は、上方開口16を介して、偏向板10の部分10aの下側のチャンバと連通しており、該チャンバから、水平方向に配置されたチャネル17を介して、気体収集チャネル18と連通している。この気体収集チャネル18は、気体調整装置(図示せず)に接続しており、該気体調整装置によって、浄化された気体は、正確な温度および湿度に戻される。これにより、浄化された気体を、塗装ブース2の上方の気体プレナムに、再度導くことができる。公知の方法で、再循環された気体の体積は、取り除き不可能な物質に従って選択される。
【0023】
次に、図2〜図6を参照して、分離装置14について説明する。図2における分離装置14の斜視図に示されているように、分離装置14は、ハウジング19を有し、該ハウジング19は、底部、前部、および頂部において開口している。複数の分離ユニット21および22は、スライド挿入式要素として構成され、それぞれ異なる幅を有している。また、分離ユニット21および22は、互いに隣り合うように、ハウジング19内に配置されている。
【0024】
より幅の大きいユニット21の本質的構造が、図3に示されている。分離ユニット21の各々は、前端部プレート23と、後端部プレート24とを含む。2枚の端部プレート23および24の間にて延在し、且つ、これらプレートに中央部において連結される、プレート状の分離電極25が、設けられており、該分離電極25は、動作状態において、垂直に配列されている。対電極装置26が、それぞれ、分離電極25の両側に設けられている。図3において、これら対電極装置26の一方のみが図示されており、第2の対電極装置26(同一の形状を有する)は、分離電極25の背面側に配置され、図3においては、これにより覆い隠されている。
【0025】
対電極装置26は、下側にコロナ領域26aを有し、該コロナ領域26aにおいて、図示された例示的実施形態においては5本のコロナワイヤ27が設けられている。このコロナワイヤ27は、互いに平行に、且つ、分離電極25から離隔して、前端部プレート23に当接する保持ロッド(図3においては隠れている)と、後端部プレート24に当接する、対応する保持ロッド70との間において、延在している。そして、コロナワイヤ27は、これら保持ロッド70に電気的に接続されている。
【0026】
対電極装置26のフィールド領域26bは、コロナ領域26aの上方に配置されている。このフィールド領域26bは、グリッド状のフィールド電極29によって、物理的に構成されており、該フィールド電極29は、分離電極25から離隔して、分離電極25に対して平行となるように、金属フレーム71に設置されている。フィールド電極29は、金属フレーム71に電気的に接続され、該金属フレーム71は、保持ロッド70に電気的に接続されている。これにより、フィールド電極29およびコロナワイヤ27は、実質同じ電位(ポテンシャル)となる。
【0027】
保持手段30は、フレーム71を固定するように機能し、それ故に、前端部プレート23および後端部プレート24上にて、対電極装置26全体を固定するように機能する。全ての保持手段30は、絶縁体として構成され、前端部プレート23上の2つの保持手段30は、追加的に高電圧ターミナルを含む。
【0028】
上述したように、分離ユニット21は、スライド挿入式要素として構成されている。このことは、分離ユニット21を、ユニットとしてハウジング19から引き出すことができることを意味している。
【0029】
分離ユニット21の各々は、中空プロファイル36によってハウジング内部に保持される。この中空プロファイル36は、レールを形成し、該レールの下側に、連続的なギャップ38が形成されている。これは、図4〜図6に特に示されている。
【0030】
分離電極25は、ギャップ38を通って、その上端領域が、レール36内に達する。複数のローラ対39a、39bは、図4〜図6においては、紙面に対して直交するように、互いに離隔して配置されており、ギャップ38を越えて上方に突出する分離電極25の領域に設置されている。この構成により、明らかに、分離ユニット21をハウジング19から引き出すことが可能となる。ここでは、ローラ39a、39bは、レール36において、ギャップ38の両側に配置された下側フランジ上を走行する。したがって、分離電極25は、最終的にレール36から開放されるまで、ギャップ38内を移動する。このような方法で取り出される分離ユニット21は、必要なときに、メンテナンスを受けることができる。分離ユニット21は、上記と反対の方法で、同様に挿入される。
【0031】
図2に示されているように、幅の大きなユニット21が、常にハウジング21の外側端に配置されつつ、より幅の小さい分離ユニット22は、幅の大きなユニット21と交互に挿入されている。分離ユニット22のより小さな幅は、これら分離ユニット22が対電極装置を有していないことによる。
【0032】
上記した交互の配置と、分離装置14内の2つのタイプの分離ユニット21、22とによって、対電極装置26が、いずれの場合においても、各分離電極25の両方の分離面に関連付けられることを保証する。外側端に配置された幅の大きな分離ユニット21における最外の対電極装置26を除いて、全ての対電極装置26は、このように、2つの分離電極25と協働し、該分離電極25の一方は、幅の大きな分離ユニット21に関連付けられており、分離電極25の他方は、幅の小さな分離ユニット22に関連付けられている。上記した最外の対電極装置26は、いずれの場合においても、ハウジング19の隣接する側壁の内面と、追加的に協働することになる。ここで、該側壁の内面は、分離面として同様に機能し、したがって、ポテンシャルの点で、連結される。
【0033】
分離装置14のハウジング19の上側部は、供給装置80の装置44によって覆われている。供給装置80は、分離ユニット21、22の分離電極25に、上方から分離液を供給可能とするものである。
【0034】
これら供給手段80の1つを、より詳細に説明するために、図4〜図6を再度参照する。
【0035】
供給装置80の主コンポーネントは、供給チャネル81であり、該供給チャネル81は、ガイドレール36と分離電極25の上方領域を環囲し、且つ、前端部プレート23から後端部プレート24まで、同様に延在している。供給チャネル81は、角度が設けられた2つの対称的なプロファイル82、83を有する。ここで、図4および図5に示すように、該プロファイル82、83の、水平に延在する上側のリム82a、83eが、通常の状態において、これらの端部にて互いに当接している。2つのプロファイル82、83の下側のリム82a、83bは、互いに向かって近づくように下方に延びているが、これらの端部間には、共通の隙間を維持している。
【0036】
これら下側のリム82b、83bに、2つの鋼製板バネ84、85がネジ止めされており、該板バネ84、85は、通常の動作の間、その下端部が分離電極25のそれぞれの側に対して、弾性的に当接している。これは、図4に示されている状態であるが、ここでは、説明の目的のために、鋼製板バネ84、85の下端部と、隣接する分離電極25の面との間に、小さな隙間が図示されている。
【0037】
プロファイル82、83と、鋼製板バネ84、85とによって画定されている供給チャネル81は、適当なポイント(図示せず)で、分離液源に連結されている。
【0038】
2つのプロファイルは、それぞれ、これらの端部領域において、2つの角度ブラケット86、87の補助の下、端部プレート23、24に近接して保持される。ここで、角度ブラケット86、87の、実質水平な上側のリム86a、86bは、供給装置80の中心面の方向に向かって延びる。これらの上側部は、後述するように、作動面を形成する。角度ブラケット86、87は、軸88、89を基準として回動可能に枢支され得る。これら軸88、89は、前端部プレート23と後端部プレート24との間にて延在し、これら端部プレート23、24に固定されている。
【0039】
さらなる軸90は、同様に2つの端部プレート23、24に固定されており、カム91に、回動不能な取り付けで、偏心して連結される。軸90を回転させることによって、カムディスク91は、図4に記載の位置と、図6に記載の位置との間で、回動可能となる。ここで、図4に記載の位置においては、カムディスク91は、実質的に上方を向いており、角度ブラケット86、87と接触していない。一方、図6に記載の位置においては、カムディスク91は、角度ブラケット86、87のリム86a、86bを下方に押し下げ、プロファイル82、83が離隔している。この構造の目的は、以下の説明により明確となるであろう。
【0040】
2つのガイドブロック92、93は、レール36の2つの垂直リムの外側部上に取り付けられている。作動ボルト94、95は、これらガイドブロック92、93内のガイド孔を通って、垂直方向に延在している。作動ボルト94、95は、供給装置80の中心面に対して反対側にそれぞれ設けられており、作動プレート96によって、これらの上端領域において互いに連結されている。作動プレート96は、作動メカニズムによって下方へ押し下げられ、このとき作動ボルト94、95は、下方へ移動する。
【0041】
作動ボルト94、95の下端部は、それぞれ、角度プロファイル97、98の水平リムに連結され、角度プロファイル97、98の垂直リムは、それぞれ、スライドプレート99、100を支持する。スライドプレート99、100は、内方を向くそれらの内面が、分離電極25の一方側および他方側にそれぞれ面するように、設けられている。スライドプレート99、100の下端部は、作動プレート96および作動ボルト94、95とともに、図4に示されている上方位置と、図5に示されている下方位置との間で、移動可能である。図4の上方位置においては、スライドプレート99、100の下端部は、鋼製板バネ84、85の下端部の上方に配置されている一方、図5の下方位置においては、スライドプレート99、100は、鋼製板バネ84、85をやや離隔させるように屈曲させ、スライドプレート99、100の下端部が、鋼製板バネ84、85を越えて下方へ突出している。
【0042】
それぞれの引張バネ101、102は、作動プレート96、作動ボルト94、95、角度バスケット97、98、およびスライドプレート99、100の構成全体を上方に引こうとするものであり、ガイドブロック92、93と、角度プロファイル97、98の水平リムとの間に作用する。
【0043】
上述した塗装ブース1と、特に、その気体を浄化するように機能するシステム領域6は、以下のように動作する。
【0044】
塗装ブース2内で車体を塗装するときに生成されるオーバースプレーは、塗装ブース2を頂部から底部まで通って流れる気流によって、捕捉されて運ばれる。気流は、格子4を通過し、その後に分離チャンバ9に到達する。気流は、そこで、偏向板10、11に衝突し、または、偏向板10、11に沿って均一に流れる分離液と合流する。多くの割合のオーバースプレー粒子は、このポイントで、既に分離液によって捕捉される。分離液は、偏向板10、11に沿って下方へと流れ、移行チャンバ12の下方領域における廃液槽61に集まる。
【0045】
依然としてオーバースプレー粒子を包含する気体は、移行チャンバ12内に漏斗状に案内され、まず、そこで90°の角度で屈折される。次いで、この気体は、移行チャンバ12から流れ、次の90°の角度の屈折を経て、底部から、分離装置14のハウジング19の下方流入開口15内に導入される。このように、分離チャンバ9と移行チャンバ12は、塗装ブース2の流出口3と、分離装置14の流入口15との間の気流路を形成している。
【0046】
この前の段階で、分離装置は、動作のための準備がなされる。一方では、このことは、所望の高電圧が対電極装置26に対して負荷されることを意味する。また、他方では、異なる供給装置80の供給チャネル81が、分離液によって満たされる。ここで、少なくとも鋼製板バネ84、85の間に位置するチャンバが、スライドプレート99、100、または分離電極25の一方側および他方側において分離液で満たされる程度まで、供給チャネル81は、分離液によって満たされる。ここで、供給チャネル81におけるこの分離液のレベルが、一定のレベルを維持することを確実とするために、注意を要する。
【0047】
分離液の粘着層は、鋼製板バネ84、85の下端部の間を下方へと流れ、その結果、分離電極25のそれぞれの側の分離面に到達する。分離液は、分離電極25上の均一層として、さらに下方へと流れ、次いで、分離電極25の下端部から移行チャンバ12の廃液槽61内へと落ちる。
【0048】
分離液は、連続的または間欠的に、廃液槽61から排出され、例えば濾過のような適当なプロセスを用いて、オーバースプレー粒子が取り除かれる。そして、それは、再利用のために、塗装ブース1に戻される。
【0049】
上述したように、オーバースプレー粒子を運ぶ気体は、分離装置14のハウジング19に流入する。この気体と、特に、この気体内に包含されるオーバースプレー粒子とは、異なる対電極装置26のコロナワイヤ27の領域においてイオン化され、対電極装置26のフィールド電極29の領域において、グランド電位である、関連する分離電極の方向へ、引かれることになる。ここでオーバースプレー粒子は、分離面上を上方から流れる分離液によって補足される。
【0050】
このように、気体と分離液とは、逆方向に流れる。その結果、分離されたオーバースプレー粒子を多く包含する分離液は、分離電極25の下方領域に流れる。ここで、分離電極25の下方領域においては、オーバースプレー粒子による気体の汚染が、最大となっている。気体がより上方に移動するにつれて、気体はよりクリーンになる。したがって、分離電極上を流れる分離液は、上方に向かうにつれてよりクリーンになり、これにより、頂部において分離装置14から流出する気体は、最もクリーンとなる。そして、この気体は、再調整のために、気体チャネル17と気体収集チャネル18とによって、塗装ブース2へ迅速に供給され、戻される。
【0051】
分離液は、略粘性であってもよい。スライドプレート99、100は、供給チャネル81から鋼製板バネ84、85の下端部を通過する分離液の流れを促進するために、設けられている。作動プレート96上を押すことによって、これらのスライドプレートは、図4に示す上方位置から、図5に示す下方位置へと、相当する間隔にて変位することになる。このタイプのそれぞれのストロークによって、特定の量の分離液が、積極的に外方へ押され、下方に押し下げられた分離電極25の分離面の領域上に至る。
【0052】
上記動作を行うことを可能とする作動メカニズムは、図2に概略的に図示されており、全体として参照符号103により示されている。作動メカニズムは、ギア付モータ104を有し、該ギア付モータ104は、ハウジング19の外側に配置されている。そして、ギア付モータ104は、2つのシャフト107、108を、2つの連結杆105、106を用いて、所定の角度だけ、双方向に回転させることができる。シャフト107、108は、ハウジング19の上方領域において、互いに平行となるように延び、レール36および供給チャネル81に直交している。シャフト107、108は、各分離ユニット21、22のための作動要素109を、回動不能な取り付けで支持しており、該作動要素109は、ここでは特に重要とならない方法で、供給装置80の作動プレート96と協働する。明らかに、作動装置103によって、全てのスライドプレート84、85を、分離装置14において、該スライドプレートの2つの位置の間で、往復動可能に移動させることが可能となる。
【0053】
供給チャネル81の内部を洗浄することが、時折必要となる。そのとき、カムディスク91は、図4に示す位置から、図6に示す位置まで回転され、この結果、鋼製板バネ84、85が、分離電極25の分離面から離れるように、持ち上げられる。このように、ガイドチャネル81に内包された分離液は、外部へと容易に流出可能となり、さらには、ガイドチャネル81の内部が、洗浄のためにアクセス可能となる。軸90と、それ故にカムディスク91とが回動可能となるメカニズムは、図示されていない。
【0054】
図7〜図10は、供給装置の第2の例示的実施形態を示しており、この供給装置は、分離液を、分離電極の分離面に供給するために用いられる。図7〜図10に示す実施形態は、図1〜図6に示すものと比べて、その性能は実質的に同じであるが、構造的により簡易となっている。第2の実施形態のコンポーネントにおいて、第1の実施形態に相当するものは、同じ参照符号に100を加算して示す。
【0055】
図8〜図10において、下側部にギャップ138を含むレールを形成する、中空のプロファイル136は、上記と実質同一である。上記と同様に、分離電極125の上方領域は、上方に向けて延び、ギャップ138を通って、レール136の内部へ至る。ローラ対139a、139bは、ここでは分離電極125上に取り付けられており、レール136の2つの下側フランジに沿って走行する。上記と同様に、供給装置180は、供給チャネル181を有し、該供給チャネル181は、分離液源に所定の方法で連結されている。供給チャネル181は、2つのプロファイルプレート182、183と、該プロファイルプレート182、183の下側リムに固定された2つの鋼製板バネ184、185とによって、画定されている。鋼製板バネ184、185は、本実施例においてはネジ止めではなく、接着によって固定されている。
【0056】
図1〜図6に示す例示的実施形態とは対照的に、プロファイルプレート182、183は、固定されており、反対側の端部の双方において、対応する分離ユニットの端部壁に連結されている。
【0057】
鋼製板バネ184、185の下端部は、通常の状態においては、分離電極125の側方の分離面に対して当接している。
【0058】
図7〜図10の例示的実施形態は、2つのスライドプレート199、200も有しており、該スライドプレート199、200は、分離電極125に対して、分離電極125のそれぞれの側に、変位可能に当接している。そして、スライドプレート199、200は、図8〜図10に示す異なる位置の間において、変位することができる。
【0059】
それぞれの角度スペーサプレート210および211は、2つのスライドプレート199、200の外面上に配置されており、その下方領域において、矩形状に下方へと突出する突出部210aおよび211aを含む。この突出部210aおよび211aは、プレートの厚みの約2倍に相当する厚みを有する端部領域を形成するために、プレート自身を折り返して屈曲されている。突出部210a、211aは、互いに異なる、または互いに同一の距離だけ離隔してもよい。窓230は、分離電極125の両側に位置する分離液のレベルを均等化させることを可能とするものであって、スライドプレート199、200に設けられている。また、窓230は、図7に示す位置において、近接する突出部210a、211aの間のスペースと整列するように、分離電極125にも設けられている。
【0060】
水平方向に屈曲する、スペーサプレート210、211の上側リムは、水平方向に延びる、スライドプレート199、200の上側リムとともに、ブロック212、213上に、固定されている。このブロック212、213の間において、分離電極125は、スライド方式で内部を移動することができる。取り込み開口214は、図8〜図10に示されているように、右側のブロック213に形成されている。なお、取り込み開口214の目的については、後述する。
【0061】
スライドプレート199、200は、作動装置203によって往復動可能に移動される。この作動装置203は、エネルギー源として、油圧式または空気圧式の短ストローク複動シリンダ215を含む。短ストローク複動シリンダ215は、2つの短ストロークシリンダ215a、215bから構成され、該短ストロークシリンダ215a、215bは、互いに逆向きに配置され、これらのハウジングによって互いに固定されている。下側の短ストロークシリンダ215bのピストンロッド215baは、部分216に固定され、該部分216は、分離装置のハウジングに固定連結されている。
【0062】
垂直に延在するガイドレール217は、同様に、ハウジング上に、強固に取り付けられる。なお、ガイドレール217上において、可動の移動体218がガイドされる。移動体218は、角度プレート219を用いて、移動不能な取り付けで、上側の短ストロークシリンダ215aのピストンロッド215aaに連結されている。
【0063】
ロッド220は、移動体218と、分離装置の反対側に設けられた、対応する移動体(図示せず)との間において延在している。なお、このロッド220上に、下方に突出する複数のキャリアアーム221が、取り付けられている。このタイプのキャリアアーム221は、それぞれの分離ユニットのために設けられている。キャリアアーム221は、水平に延びるキャリアピン222とともに、対応する分離ユニットのブロック213の取り込み開口214内に達している。以下に詳細に述べるように、全てのスライドプレート199、200は、明らかに、短ストローク複動シリンダ215を作動した結果、全てのスペーサプレート210、211とともに、往復動可能に移動される。
【0064】
図8は、「通常」の動作状態を示す。この状態においては、鋼製板バネ184、185の下端部は、分離電極125のそれぞれの側に対して当接している。鋼製板バネ184、185は、分離液を含み、この分離液は、結果として、第1の例示的実施形態と同様に、供給チャネル181内において、およそ一定のレベルを維持するために、要求に応じて供給される。スライドプレート199、200の下端部は、鋼製板バネ184、185の下端部の上方に配置されており、スペーサプレート210、211の下端部は、さらに高い位置にある。
【0065】
要求に応じて、供給チャネル181から流出する分離液の流れを促進するために、スライドプレート199、200は、対応する上側の短ストロークシリンダ215aの作動によって、下方へ押し下げられる。このとき短ストロークシリンダ215aの作動は、スライドプレート199、200の下端部が、図9に示されているように、鋼製板バネ184、185の下端部の内側をスライドする程度に、行われる。このストローク移動時に、所定の量の分離液が、供給チャネル181から流出して下方へと流れ、分離電極125の分離面のそれぞれの側上に至る。しかしながら、スペーサプレート210、211の下端部は、これらが、鋼製板バネ184、185の位置および形状に対して如何なる影響をも持たない高さに留まっている。スライドプレート199、200、および(これに合わせて)スペーサプレート210、211は、図8および図9に示されている2つの位置の間を、交互に往復動する。
【0066】
供給チャネル181の洗浄が必要である場合、スライドプレート199、200は、スペーサプレート210、211とともに、下側の短ストロークシリンダ215bの補助により、下方へと押し下げられる。このとき、スライドプレート199、200は、スペーサプレート210、211の、厚みのある下端領域が、鋼製板バネ184、185の下端部を屈曲させて離隔させるまで、下方へと押し下げられる。そして、供給チャネル181内に位置する分離液は、突出部210a、211aの間の隙間を通って、容易に流出可能となる。
【0067】
図7に示された、供給装置180の斜視図は、図1〜図6に示す例示的実施形態においても実現可能である、特定の特徴を示している。すなわち、鋼製板バネ184、185の下端部は、直線的ではなく、ギザギザの刻み目を有するように構成されている。したがって、鋼製板バネ184、185は、下方を向いた刻み目の突起の下端部のみによって、分離電極125に対して当接している。この方法は、特に、分離液が比較的粘性を有する場合に、供給チャネル181からの分離液の流れを促進するようにも機能する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物、特に車体をコーティング、特に塗装するためのシステムであって、
a)コーティングブースを備え、該コーティングブースの内部で、前記対象物がコーティング材料によって作用され、且つ、該コーティングブースの内部を、前記コーティング材料のオーバースプレー粒子を捕捉して運ぶ気流が通過可能であり、
b)静電気的に動作する分離装置を備え、該分離装置のハウジングが、オーバースプレー粒子を運ぶ気体のための流入口と、クリーンな気体のための流出口とを有し、分離面を有する少なくとも1つの分離電極と、対電極装置とが、前記ハウジング内に配置され、
c)高電圧源を備え、該高電圧源のポールが、前記分離電極または前記対電極装置に連結され、
d)前記コーティングブースのベース部から、前記分離装置の流入口まで延びる、前記オーバースプレー粒子を運ぶ気体のための気流路を備える、システムにおいて、
e)供給装置(80、180)が、それぞれの前記分離電極(25、125)と関連付けられており、該供給装置(80、180)は、前記分離電極(25、125)のそれぞれの分離面の上方領域に、分離液を供給可能であり、前記分離液は、前記分離電極(25、125)のそれぞれの分離面上を広範囲に亘って流れるように供給され、
f)前記供給装置(80、180)は、供給チャネル(81、181)を有し、該供給チャネル(81、181)は、所定のレベルまで前記分離液によって満たされ、その下方領域において、2つの鋼製板バネ(84、85、184、185)によって形成され、該鋼製板バネ(84、85、184、185)は、少なくともある場合において、少なくとも部分的に、該鋼製板バネ(84、85、184、185)の下端部が、前記分離電極(25、125)の動作面の一方側および他方側に対して当接するように設けられ、
g)前記分離電極(25、125)の分離面の一方側および他方側に対して変位可能に設けられた、2つのスライドプレート(99、100、199、200)と、
h)作動装置(103、203)と、を備え、該作動装置(103、203)によって、前記スライドプレート(99、100、199、200)は、該スライドプレート(99、100、199、200)の下端部が、前記鋼製板バネ(84、85、184、185)の下端部の上方に配置される位置と、該スライドプレート(99、100、199、200)の下端部が、前記鋼製板バネ(84、85、184、185)の下端部の下方に配置される位置との間で、往復動可能に移動することができることを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記鋼製板バネ(184、185)の下端部は、ギザギザの刻み目の形状を有し、または、粗い櫛状であることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記システムは、装置(91、94、210)を備え、該装置(91、94、210)によって、前記鋼製板バネ(84、85、184、185)の下端部は、前記供給チャネル(81、181)の内容物が外部に流出可能となる程度に、前記分離電極(25、125)の分離面において前記システムから離れるように移動可能であることを特徴とする、請求項1または2に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−518719(P2013−518719A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552292(P2012−552292)
【出願日】平成23年1月29日(2011.1.29)
【国際出願番号】PCT/EP2011/000414
【国際公開番号】WO2011/098222
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(511056714)アイゼンマン アクチェンゲゼルシャフト (15)
【Fターム(参考)】