説明

対象物にエネルギーを印加する装置、方法及びコンピュータプログラム

本発明は対象物2にエネルギーを印加する装置1に関する。上記装置1は、エネルギー放出要素、温度センサ及び管6を有する。管には、上記エネルギー放出要素及び上記温度センサが配置可能である。エネルギー放出要素は、上記対象物2にエネルギーを印加するよう構成され、上記温度センサは、上記対象物2の温度を検出するよう構成される。上記エネルギー放出要素及び上記温度センサは共に、上記エネルギーが印加されることになる上記対象物2の位置まで誘導されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物にエネルギーを印加する装置、方法及びコンピュータプログラムに関する。本発明は更に、対象物にエネルギーを印加する装置で使用する組合せ要素に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物にエネルギーを印加する装置及び方法は、例えば、心房細動の介入的な処置の分野において使用される。この処置の間、無線周波数、光又は超音波エネルギーがカテーテルを用いて心臓組織に印加される。この場合、組織におけるエネルギーの吸収が原因で、心筋は加熱され、生成された熱エネルギーは心臓組織を変性させる。
【0003】
異なるカテーテルが、同時に心臓のチャンバに配置されなければならない。これらのカテーテルは、組み込みガイド手段又はカテーテルを心臓に受動的に誘導するためのガイドワイヤを用いて、心臓のチャンバに対して進められ、及びナビゲートされる。異なるカテーテルは、組織切除のためエネルギーを印加するエネルギー印加カテーテル、及びエネルギーの印加の間、心臓のチャンバの温度を検出する温度検出カテーテルである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした量のカテーテルの使用は、多くの空間を必要とし、扱うのが困難である。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記エネルギー印加及び上記温度検出に必要な空間が減らされ、取扱いが容易になるような、対象物にエネルギーを印加する装置、方法及びコンピュータプログラムを提供することである。本発明の更なる目的は、上記対象物にエネルギーを印加する装置で使用する対応する組合せ要素を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面によれば、対象物にエネルギーを印加する装置が与えられる。この装置は、
上記対象物にエネルギーを印加するエネルギー放出要素と、
上記対象物の温度を検出する温度センサと、
上記エネルギーが印加されることになる上記対象物の位置まで上記エネルギー放出要素及び上記温度センサを誘導するための管であって、上記エネルギー放出要素及び上記温度センサが配置可能な管とを有する。
【0007】
本発明は、上記エネルギー放出要素及び上記温度センサが上記管内で配置可能であるので、上記エネルギーが印加されることになる上記対象物の位置まで、これらが一緒に誘導されることができるというアイデアに基づかれる。本発明は、1つの管が、上記エネルギー放出要素を誘導するために上記エネルギー放出要素を含み、別の管が、上記温度センサを誘導するために上記温度センサを含む構成を必ずしも取る必要がない。エネルギーの印加及び温度検出には1つの管だけが必要とされるので、エネルギーの印加及び温度検出に必要とされる空間は減らされる。更に、1つの管だけが誘導されなければならないので、エネルギー印加及び温度検出の処理は容易になる。エネルギー放出要素及び温度センサは、上記管内を、上記エネルギーが印加されることになる上記対象物の位置まで誘導されることができ、この位置に達すると、上記エネルギー放出要素及び上記温度センサは、上記対象物にエネルギーを印加するため、及び上記対象物の温度を検出するため、上記管から出ることができる。
【0008】
好ましくは、この装置は更に、特に心臓チャンバといった対象物の内部空間内を、上記エネルギーが印加されなければならない位置まで、上記エネルギー放出要素及び上記温度センサを含む上記管を進めて及び/又はナビゲートするためのガイド手段を有する。
【0009】
管は好ましくはカテーテルである。即ち、例えば、上記装置が心臓チャンバ内の切除手順に関して使用される場合、切除及び検出温度のために1つのカテーテルだけが必要とされる。管は複数のルーメンを有することができる。このルーメンには、少なくとも上記エネルギー放出要素及び上記温度センサが配置される。
【0010】
エネルギー放出要素は、ワイヤ及び電気エネルギーを印加するため上記ワイヤに接続される電気エネルギー源を有することができるか、又は、光学繊維及び光学エネルギーを印加するため上記光学繊維に接続されるレーザーデバイスといった光学エネルギー源を有することができる。
【0011】
好ましくは、上記装置は、異なる位置で上記対象物にエネルギーを印加する複数のエネルギー放出要素と、上記異なる位置での上記温度を検出する複数の温度センサとを有する。これは、異なる位置でのエネルギーの印加と、特に上記エネルギーの印加と同時に、これらの位置での上記温度の検出とを可能にする。
【0012】
更に好ましくは、上記装置は、
異なる位置で上記対象物にエネルギーを印加する複数のエネルギー放出要素と、
上記異なる位置で上記温度を検出する複数の温度センサとを有し、
上記複数のエネルギー放出要素におけるエネルギー放出要素が、個別に制御可能であり、上記複数の温度センサにおける温度センサは、互いに独立して上記異なる位置で上記温度を検出し、上記複数のエネルギー放出要素のあるエネルギー放出要素によりエネルギーが印加されることになる各位置に対して、上記温度が独立に検出可能、即ち測定可能であるよう、上記複数の温度センサの各温度センサが、上記複数のエネルギー放出要素におけるエネルギー放出要素に割り当てられる。
【0013】
これは、エネルギーが印加される対象物の異なる位置の温度を特にエネルギーの印加と同時に測定することを可能にし、従って、上記エネルギーの印加は、上記異なる位置で上記温度を測定することにより制御されることができる。好ましくは、上記装置は更に、上記異なる位置での上記検出温度に基づき、好ましくは上記異なる位置での上記温度が所定の閾値を超えないよう、上記異なる位置での上記エネルギーの印加を制御する制御ユニットを有する。
【0014】
上記複数のエネルギー放出要素及び上記複数の温度センサに加えて、上記装置は更に、各温度センサが、エネルギー放出要素に割り当てられるようには構成されないエネルギー放出要素及び/又は温度センサを有することができる。即ち、例えば、1つの温度センサは、中間位置で上記温度を測定することもできる。この中間位置は、少なくとも2つの位置の間に配置され、エネルギーが印加されることになる位置である。
【0015】
更に好ましくは、上記エネルギー放出要素が、上記対象物の組織に、特に人間の心臓の組織に印加される切除手順のために構成される。
【0016】
上記装置が、複数の組合せ要素を有し、各組合せ要素は、複数のエネルギー放出要素及び複数の温度センサを有し、上記複数のエネルギー放出要素のエネルギー放出要素が、保持要素の周りに巻かれることも好ましい。上記エネルギー放出要素が上記保持要素の周りに巻かれるので、上記エネルギー放出要素は、上記保持要素に対して、即ち上記巻かれたエネルギー放出要素により形成される螺旋に対して、長手方向に近くに一緒に配置される。これは、特に同時にエネルギーが印加されることができる位置の間の距離が減らされることをもたらす。
【0017】
保持要素は、好ましくはワイヤである。例えば、強制される形状でない場合、所定の形状を持つよう、上記保持要素が、形状記憶効果を持つことも好ましい。なぜなら、上記保持要素が、上記管の内部にあり、上記保持要素を特定の形状に、例えば直線形状に保つからである。これは、上記組合せ要素が上記管内で直線形状でありつつ、上記エネルギー放出要素をエネルギーが印加されることになる上記位置まで誘導することを可能にする。この場合、上記組合せ要素が、エネルギーが印加されることになる位置で上記管を出た後、上記保持要素は、エネルギーの印加のための所定の形状を上記組合せ要素に与えることができる。この保持要素は、好ましくは形状記憶合金ワイヤ、特にニチノールワイヤである。
【0018】
上記複数の組み合わせ要素が、バスケット構造のような構成を形成することも好ましい。このバスケット構造は、複数の組み合わせ要素が、互いに並行である折り畳み状態と、複数の組み合わせ要素が、互いに並行ではない開いた状態との間で変化可能である。特に、開いた状態では、組み合わせ要素が、折り畳み状態より多くの空間を必要とし、この状態において、上記エネルギー放出要素及び上記温度センサは、上記組合せ要素により定められる、特に球状又は楕円形のボリュームの表面に配置される。これは、上記組合せ要素が上記折り畳まれた状態にある間、上記組合せ要素を上記管内でエネルギーが印加されることになる位置まで誘導することを可能にする。エネルギーが印加されることになる上記位置に達した後、上記組合せ要素は上記管を出て、上記開いた状態へと変形されることができる。好ましくは、上記開いた状態において、エネルギーを印加し、上記温度を検出するため、上記組合せ要素は上記対象物の表面と接触状態にある。
【0019】
上記組合せ要素が、ケースを有することが更に好ましい。このケースには、複数のエネルギー放出要素、複数の温度センサ及び上記保持要素が配置される。特に上記保持要素がメモリ効果を持つ場合、上記組合せ要素が上記保持要素の形状に基づき成形されることができるよう、このケースは好ましくは弾性である。ケースは好ましくは、生体親和性物質で作られる。エネルギーを印加するため上記エネルギー放出要素が上記対象物に結合されるよう、及び上記温度センサが上記対象物に熱的に結合されるよう、上記ケースが構成されることが更に好ましい。上記エネルギー放出要素が、例えば光学エネルギーを印加する場合、及びそれらが光学繊維を有する場合、上記光学繊維は、上記保持要素の周りに巻かれ、上記ケースは、少なくとも部分的に光学的に透明である。特に、上記ケースは、光学窓を有する。この窓は好ましくは、熱エネルギーを通過させることを可能にする、即ち好ましくは熱伝導的である。更に、クラッディング及び上記光学繊維の可能な追加的なコーティングが、上記光学エネルギーが上記組合せ要素を出るべきである上記位置で、特に上記ケース内の上記窓で除去される。好ましくは、光を集束及び/又は光を操縦するマイクロレンズが上記窓に加えられることができる。上記窓が、TiOといった好ましくは光を吸収しない拡散粒子を有することが更に好ましい。上記光学的に透明な窓が、心臓といった上記対象物からの電気信号を伝達しないよう、電気的に非導電性であることも好ましい。更に好ましくは、上記光学的に透明な窓を介して各光学繊維により上記対象物にエネルギーを印加することを可能にするため、上記窓は長手方向において十分に大きい。窓は、光学的に透明な物質及び熱伝導性物質といった少なくとも2種類の物質を有することもできる。この場合、上記光学的に透明な物質は、上記光学エネルギーが上記ケースを出なければならない位置に配置され、上記熱伝導性物質は、上記温度センサが配置される位置に配置される。
【0020】
好ましい実施形態において、上記温度センサのうちの少なくとも1つは、異なるタイプの金属を有し互いに接触される、少なくとも第1の金属要素及び第2の金属要素を有する熱電対である。金属要素は、例えば、ワイヤ、金属箔及び/又は金属コーティングである。斯かる熱電対を使用することにより、上記第1及び第2の金属要素の間の上記接点での温度は、上記第1及び第2の金属要素の間の電圧を測定することにより、容易に測定されることができる。上記接点位置でない位置では、上記第1及び第2の金属要素は、絶縁層といった絶縁手段により互いから絶縁される。
【0021】
上記エネルギー放出要素が、光学繊維を有し、上記第1の金属要素及び/又は上記第2の金属要素は、上記光学繊維上の金属コーティングであることが更に好ましい。これは、上記温度センサ及び上記エネルギー放出要素のより大規模な一体化を可能にする。
【0022】
上記第1及び/又は第2の金属要素が、上記エネルギー放出要素と共に上記保持要素の周りに巻かれることも好ましい。これは、上記温度センサ及びエネルギー放出要素を更に一体化し、上記エネルギー放出要素及び上記温度センサに関して必要な空間の削減及び上記エネルギー放出要素及び上記温度センサの間の距離の削減をもたらす。この場合、エネルギーが印加されることになる位置での温度が、改良された精度で決定されることができる。
【0023】
この保持要素は、好ましくは金属であり、上記保持要素は、好ましくは上記第1及び第2の金属要素の1つである。上記保持要素が好ましくは、要素の保持及び温度センサの一部であることという2つの機能を持つので、一体化の度合いは更に改良される。保持要素は、例えば金属ワイヤであるので、及び/又は金属コーティングを有するので、保持要素は金属とすることができる。この場合、上記金属コーティングは好ましくは、上記第1及び第2の金属要素のうちの少なくとも1つとして機能する。
【0024】
上記第1及び上記第2の金属要素が、上記装置の要素上のコーティングであることが更に好ましい。特に、上記第1及び第2の要素を形成する上記コーティングは、上記装置の同じ要素上に配置される。この実施形態において、ワイヤといった更なる金属要素が、上記温度センサにより必要とされることはない。従って、上記温度センサに関して必要な空間が更に減らされる。上記コーティングが存在する上記装置の要素は、例えば、光学繊維又は上記保持要素である。上記第1の金属要素を形成するコーティング及び上記第2の要素を形成する上記コーティングは、好ましくは、上記温度が測定されるべきであるある位置で接触し、他の位置では絶縁層により互いに分離される。
【0025】
別の好ましい実施形態では、異なる熱電対が、上記同一の第1及び第2の金属要素を持つ。これは、更に一体化の度合いを増加させる。
【0026】
本発明の更なる側面では、請求項1に記載の装置において使用する組合せ要素が与えられる。この組み合わせ要素は、複数のエネルギー放出要素及び複数の温度センサを有し、上記複数のエネルギー放出要素におけるエネルギー放出要素が、保持要素の周りに巻かれる。
【0027】
本発明の更なる側面では、対象物にエネルギーを印加する方法が与えられる。この方法は、
エネルギー放出要素及び温度センサが配置される管を使用することにより、上記エネルギーが印加されることになる上記対象物の位置まで上記エネルギー放出要素及び上記温度センサを誘導するステップと、
上記エネルギー放出要素を用いて上記対象物にエネルギーを印加するステップと、
上記温度センサを用いて上記対象物の温度を検出するステップとを有する。
【0028】
本発明の更なる側面では、対象物にエネルギーを印加するためのコンピュータプログラムであって、請求項1に記載の装置を制御するコンピュータで実行されるとき、請求項11に記載の方法のステップをコンピュータに実行させるプログラムコード手段を有する、コンピュータプログラムが与えられる。
【0029】
請求項1の装置、請求項10の組合せ要素、請求項11の方法及び請求項12のコンピュータプログラムが、特に従属項において規定される、類似する及び/又は同一の好ましい実施形態を持つ点を理解されたい。
【0030】
本発明の好ましい実施形態は、個別の独立項と従属項との任意の組合せとすることもできる点を理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】対象物にエネルギーを印加する本発明による装置の実施形態を概略的かつ例示的に示す図である。
【図2】開いた状態にあるエネルギー放出要素及び温度センサの構成を概略的かつ例示的に示す図である。
【図3】折り畳まれた状態にあるエネルギー放出要素及び温度センサの構成を概略的かつ例示的に示す図である。
【図4】組合せ要素を概略的かつ例示的に示す図である。
【図5】組合せ要素を通る断面を概略的かつ例示的に示す図である。
【図6】温度センサの構造を概略的かつ例示的に示す図である。
【図7】更なる組合せ要素を概略的かつ例示的に示す図である。
【図8】更なる組合せ要素を概略的かつ例示的に示す図である。
【図9】更なる組合せ要素を概略的かつ例示的に示す図である。
【図10】更なる組合せ要素を概略的かつ例示的に示す図である。
【図11】対象物の表面と接触する、エネルギー放出要素及び温度センサの構成を概略的かつ例示的に示す図である。
【図12】対象物の3次元モデル上に配置される、エネルギー放出要素及び温度センサの構成の当接面のモデルを概略的かつ例示的に示す図である。
【図13】対象物にエネルギーを印加する装置の制御ユニットを概略的かつ例示的に示す図である。
【図14】対象物にエネルギーを印加する本発明による方法を説明するフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明のこれらの及び他の側面が、以下に説明される実施形態より明らとなり、これらの実施形態を参照して説明されることになる。
【0033】
図1は、対象物にエネルギーを印加する装置1を示す。装置1は、管、本実施形態ではカテーテル6と、エネルギー放出要素及び温度センサの構成7とを有する。エネルギー放出要素及び温度センサの構成7は、カテーテル6を介して制御ユニット5に接続される。エネルギー放出要素の構成7を備えるカテーテル6が、対象物2に誘導されることができる。この対象物は、本実施形態では、患者テーブル4に配置される患者3の心臓である。この場合、カテーテル6は、組み込みガイド手段(図示省略)により心臓のチャンバに対して進められ、ナビゲートされる。別の実施形態では、カテーテルは、例えば、心臓へと受動的にカテーテルを誘導するための導入器を用いて進められ、ナビゲートされることができる。
【0034】
構成7及びカテーテル6の対象物2への導入の間、本実施形態では蛍光透視デバイスである撮像デバイス12が、対象物2及び構成7の画像を生成する。構成7が対象物2内に既に配置される場合であっても、この撮像デバイス12は好ましくは、対象物2及び構成7の画像を生成する。
【0035】
他の実施形態では、この対象物は、内側表面がエネルギーで処理されなければならない、例えば患者の別の中空器官、又は技術的な対象物、特に中空の技術的対象物とすることができる。
【0036】
撮像デバイス12、即ち本実施形態では蛍光透視デバイス12は、蛍光透視制御ユニット11により制御されるX線源9及び検出ユニット10を有する。蛍光透視デバイス12は、対象物2及び構成7のX線投影画像を既知の態様で生成する。X線源9のX線は、矢印35により概略的に示される。
【0037】
別の実施形態では、対象物2及び構成7を有する画像を生成するために、蛍光透視デバイスの代わりに、別の撮像デバイスが使用されることができる。例えば、磁気共鳴撮像デバイス、超音波撮像デバイス又はコンピュータ断層撮影撮像デバイスが、対象物2及び構成7の画像を生成するために使用されることができる。
【0038】
構成7及びカテーテル6の実施形態は、図2に更に詳細に概略が示される。構成7は、開いた状態と、折り畳み状態との間で変えられる。開いた状態では、構成7のエネルギー放出要素の放出位置19及び温度センサの温度検出位置17が、対象物の表面に当接する当接面36上に配置される。折り畳み状態では、対象物2に構成7を誘導することを可能にするよう、構成7はより小さな空間を占める。図2において、構成7は、その開いた状態で示される。構成7は、エネルギー放出要素(正方形により示される)の放出位置19及び温度センサ(三角形により示される)の温度検出位置17を有する組合せ要素16である複数のスプラインから作られるバスケットを有する。図2におけるエネルギー放出要素の放出位置19及び温度センサの温度検出位置17の分布は、概略的かつ例示的なものにすぎず、本発明を特定の分布に限定するものではない。好ましくは、エネルギー放出要素の各放出位置19に対して、温度センサの温度検出位置17が割り当てられる。これは、エネルギーが対象物に印加される位置での温度を測定するため、エネルギー放出要素の対応する放出位置19のできるだけ近くに配置される。本実施形態において、構成7は、例えば電気的な検出のための更なる検出要素18(円により示される)を有する。他の実施態様では、更なる検出要素18は、省略されることができる。
【0039】
好ましくは、エネルギー放出要素の放出位置19は、組合せ要素16に沿って及び当接面36に沿って均一に分散される。
【0040】
図2に示される開いた状態において、構成7の組合せ要素16は、実質的に楕円体又は球体を形成する。従って、開いた状態において、当接面36は、好ましくは楕円体又は球体の表面である。対象物2にエネルギーを印加するため、好ましくは、エネルギー放出要素の放出位置19、温度センサ及び可能性として追加的な検出要素18の温度検出位置といった位置が、対象物2へのエネルギーの印加の間及び対象物2の表面に当接する間、対象物2の表面に対して変化しないままであるという態様で、当接面36は対象物2の表面に当接する。エネルギー放出要素の放出位置19、温度センサ及び可能性として追加的な検出要素18の温度検出位置17といった、対象物表面に対して固定される位置は好ましくは、組合せ要素16の、従って構成7の弾性特性により実現される。組合せ要素16のこの弾性は、弾性力を生じさせる。この力は、エネルギー放出要素の放出位置19、温度センサ及び可能性として追加的な検出要素18の温度検出位置17を対象物の表面に対して押す。組合せ要素16の弾性は、当接面36が対象物の表面に従うこと、及び対象物2の運動に追従することも可能にする。一方、エネルギー放出要素の放出位置19及び検出要素17、18は、連続して対象物の表面と接触状態にあるか、又は、他の実施形態では、対象物2が移動する場合であっても、エネルギー放出要素の放出位置19と検出要素との間の対象物の表面に対する距離が、連続して一定のままである。
【0041】
組合せ要素16は、保持要素を有する。これは好ましくは、メモリ合金でできているワイヤである。本実施形態において、保持要素は、ニチノールでできている。構成7を展開するため、即ちバスケットの展開のため、ニチノールのメモリ効果が使用される。ニチノールワイヤは、ばねとして事前成形され、弾性的である。図3に概略的に示され、構成7がより小さな空間を占める折り畳まれた状態において、構成7の組合せ要素16は、カテーテル軸37内に配置され、特にカテーテル軸37内の小さなパイプに配置される。構成7を展開するため、即ち折り畳み状態から開いた状態へと変化させるため、組合せ要素16は、カテーテル軸37の外へ移動される。この場合、ニチノールワイヤのメモリ効果のため、構成7は当接面36を形成する。
【0042】
図3は、概略的な表示に過ぎない。折り畳み状態の明確さを強調するため、構成7のいくつかの組合せ要素だけが図示され、エネルギー放出要素の放出位置及び温度センサは、存在するにも関わらず図示されていない。
【0043】
ある実施形態では、当接面36の末梢部に、エネルギー放出要素の放出位置20が配置される。即ち、エネルギー放出要素の放出位置20は、構成7の先端に配置される。組合せ要素16がカテーテル軸37内に少なくともほぼ完全に配置される場合、これは対象物2の特定の位置に対してエネルギーを印加することを可能にする。この場合、組合せ要素16の小さな部分、即ち少なくともエネルギー放出要素の放出位置20だけが、カテーテル軸37の外側に配置される。こうして、構成7が折り畳み状態にある場合であっても、エネルギーが対象物2の特定の位置に印加されることができる。
【0044】
エネルギー放出要素の少なくともいくつかの放出位置19、20が、互いに独立して対象物2にエネルギーを印加することができるよう、エネルギー放出要素の放出位置19、20は、線30を介して1つ又は複数のエネルギー源に接続される。エネルギー放出要素の各放出位置19、20が、別々にアドレス指定されることができるよう、即ち、エネルギー放出要素の各放出位置19、20が、エネルギー放出要素の他の放出位置19、20によりもたらされるエネルギーの可能な印加と独立して対象物にエネルギーを印加することができるよう、エネルギー放出要素の放出位置19、20が、線30を介して1つ又は複数のエネルギー源に接続されることが好ましい。
【0045】
光学エネルギーが光学繊維から出て、対象物に印加されることができるよう、光学繊維30における放出位置で、クラッディング及び可能な更なるコーティングが除去される。これらの放出位置は、本実施形態では光学繊維である線30を介して1つ又は複数の光源に接続される。光源は、好ましくはレーザーである。本実施形態において、各放出位置19は、各放出位置19を別々にアドレス指定するため、1つ又は複数の別々のレーザーデバイスに光学繊維30を介して接続される。他の実施形態では、追加的に又は代替的に、放出エネルギー要素は、電気エネルギーを印加する電極とすることができる。
【0046】
レーザーデバイスのレーザービームが、例えばビームスプリッタにより分けられたあと、各放出位置が個別のレーザービームに接続されるよう、放出位置19は、1つ又は複数のレーザーデバイスに接続されることができる。この場合、各放出位置19を別々にアドレス指定するため、各個別のレーザービームの強度が修正されることができる。代替的に、各放出位置19に対して複数のレーザーデバイスの1つが割り当てられるよう、各放出位置19が、個別のレーザーデバイスに接続されることができる。
【0047】
エネルギー放出要素の光学繊維30は、対応する組合せ要素16のニチノールワイヤの周りに巻かれる。
【0048】
各組合せ要素16は、弾性ケースを有する。このケースは、生体親和性材料でできている。斯かる弾性ケース38を持つ組合せ要素16が、図4に概略的に示される。
【0049】
図4において、複数の光学繊維30が保持要素51の周りに巻かれる。更に、温度センサの一部である複数のワイヤ50が、保持要素51の周りに巻かれる。ワイヤ50は好ましくは、繊維30と同じ又は類似する直径を持つ。保持要素51の周りで一緒に巻かれる光学繊維30及びワイヤ50が、弾性ケース38内に配置される。ケース38は、窓39を有する。この窓を介して、光がケース38から出ることができる。窓39は、各繊維30及びワイヤ51にアクセスすることが可能であるよう十分長くあるべきである(各繊維及び各ワイヤは、好ましくは1度だけアクセスされる。)。本実施形態では温度センサである熱電対を備えるため、各ワイヤ50と、本実施形態ではニチノールワイヤである保持要素51との間の電気接点が作られる。他の実施形態では、ニチノールワイヤは適切な(appropriated)金属コーティングで被覆されることができる。この場合、各ワイヤは、熱電対を形成するため金属コーティングとの電気接点を持つ。
【0050】
エネルギー放出位置19において、光が光学繊維30から出ることを可能にするため、光学繊維30のクラッディング及び光学繊維30の可能な更なるコーティングが除去される。これは、図5に概略的かつ例示的に示される。
【0051】
図5は、組合せ要素16を通る断面を概略的かつ例示的に示す。ここでは、光が光学繊維30のファイバコア63を出て、窓39を通り伝達する位置において、クラッディング62及び可能な更なるコーティング、特に電気絶縁物質60及び導電性コーティング61が、例えば研磨により除去される。
【0052】
組合せ要素は、ケースにおいて単一の窓又は複数の窓を有することができる。これは、光学及び熱エネルギーの透過を可能にし、例えば電気検出要素がケース内に存在する場合には電気エネルギーの透過も可能にする。他の実施形態では、エネルギー放出位置19及び温度検出位置17及び可能な更なる検出要素18は、図2に概略的かつ例示的に示されるような構成7全体にわたり分散されるのではなく、この構成を成す組合せ要素の一部内にのみ分散される。
【0053】
ワイヤ50とニチノールワイヤ51との間のあらゆる接点、又は別の実施形態ではワイヤ50とニチノールワイヤ上の金属コーティングとの間のあらゆる接点は、温度センサの温度検出位置を形成する。1つの共通モードワイヤ51に接続されるワイヤ50の概略的な表現、又は熱電対を形成する共通モードワイヤのコーティングが、図6に示される。図6において、3つの熱電対は、組合せ要素16内の保持要素51に対して異なる温度検出位置52で3つのワイヤ50を接触させることにより製造される。制御ユニット5において、温度検出位置52での温度を決定するため、ワイヤ50と保持要素51との間の電圧が測定される。別の実施形態では、ニチノールワイヤの代わりに、又はそれに加えて、ニチノール管が使用されることができる。ニチノール管は、例えば洗浄又は冷却するためルーメンを通して、例えば食塩液といった流体をポンプ輸送するのに使用されることができる。
【0054】
ケース38の窓39は好ましくは、熱伝導性があり、光に対して光学的に透明である。好ましくは光拡散をサポートするよう、窓39は構成される。他の実施形態では、窓は少なくとも2つの異なる物質を有することができる。1つは、温度検出位置の近くに配置される熱伝導性のものであり、もう1つは、エネルギー放出位置の近くに配置される光学的に透明なものである。2つの異なる物質は、長手方向に交互に配置されることができる。
【0055】
図7は、組合せ要素116の更なる実施形態を例示的かつ概略的に示す。図4及び図7において類似する要素は、類似する参照符号により示される。図7に示される組合せ要素116は、光学繊維30の直径に対するワイヤ150の直径の点で組合せ要素16と異なる。図7に示される実施形態では、ワイヤ150の直径は、光学繊維30の直径より小さい。これは、ケース38内に配置可能なエネルギー放出要素及び温度センサの数を増加させることを可能にする。好ましくはケースは、束状のエネルギー放出要素及び温度センサをコーティングすることにより作られる。
【0056】
ニチノール・ワイヤは好ましくは、直径が200μmより小さく、更に好ましくは、150μmより小さく、更に好ましくは100μmより小さく、好ましくは、50又は100μmの直径を持つ。電気ワイヤは好ましくは、直径が100μmより小さく、更に好ましくは50μmより小さく、好ましくは20μmの直径を持つ。単一の繊維の直径は好ましくは、300μmより小さく、好ましくは250μmより小さく、更に好ましくは200μmより小さく、好ましくは125μmより小さく、更に好ましくは100μmより小さく、好ましくは60μmである。特に、束状で製造されるとき、繊維の直径は3μmとすることもできる。
【0057】
上記実施形態において、ワイヤ50、150は、熱電対の第1の金属要素であり、保持要素51又は保持要素51上の金属コーティングは、熱電対の第2の金属要素として機能する。図8において、組合せ要素216が、例示的かつ概略的に示される。ここでは、2つの金属箔が、熱電対の第1及び第2の金属要素を形成する。図4、7及び8において類似する要素は、類似する参照符号により示される。
【0058】
ワイヤ50、150の代わりに、2つの金属箔254、255が、保持要素51の周りに巻かれる。本書では、熱電対の第1及び第2のすべての金属要素が使用されるので、2つの金属箔254、255は、互いに絶縁され(insulted)、単一の点で接続される。これは、温度検出位置を形成する。第1及び第2の金属要素間の絶縁は、明確さのため図示省略されている。
【0059】
箔を用いることにより、複数トラック接続/熱電対が、リソグラフィ処理により作られることができる。箔厚は、厚さ0.5〜5μmの金属層を備える25μmの薄さとすることができる。
【0060】
組合せ要素316の更なる実施形態が、図9に概略的かつ例示的に示される。この場合も、図4、7、8及び9において類似する要素は、類似する参照符号により示される。
【0061】
組合せ要素316は、光学繊維80、82を有する。これは、金属コーティング42、43を有する。窓39の位置において、電気接点は、金属コーティング43と保持要素51との間、又は金属コーティング43と熱電対を形成する温度検出位置33での保持要素51上の金属コーティングとの間に作られる。電気検出位置70において、光学繊維82の金属コーティング42を用いて対象物の電気信号が受信される。管状保持要素51に対する洗浄開口が、洗浄位置61に配置される。温度検出位置62が、エネルギー放出位置の近くに配置される。この場所で、光は光学繊維から出る。
【0062】
図10は、組合せ要素の更なる実施形態416を概略的かつ例示的に示す。組合せ要素416は、エネルギー印加要素として複数の光学繊維81を有する。これは、金属コーティング42で被覆される。少なくともいくつかの光学繊維81に対する、特に光学繊維の各々に対する検出要素又は検出要素の一部として、金属箔41aが加えられる。この場合、金属コーティング42は、金属箔41aに対して電気的に絶縁される。温度検出位置62において、金属箔41aと金属コーティング42との間に電気接点が作られる。電気接点は、温度を測定するための熱電対を生成する。別の実施形態では、温度検出位置において、光学繊維のそれぞれ又は少なくともいくつかを、間に電気的絶縁コーティング層を備える少なくとも2つの金属コーティングで覆うことにより、熱電対が作られる。温度検出位置において、熱電対を作るためのこの2つの金属コーティング層の間に電気接点が作られる。更に、対象物、特に人間の心臓の電位を検出するための電気導体を形成するのに、光学繊維上又は保持要素上の金属コーティングが使用されることができる。図10に示される実施形態416では、洗浄開口部61が、光学エネルギーが印加される位置を洗浄するため、特に病変位置を洗浄するため、管状保持要素51に存在する。
【0063】
電気検出位置、温度検出位置及び/又は洗浄位置は、図4、7及び8に示される組合せ要素の窓に配置されることもでき、明確さのため図示は省略される。
【0064】
図4、7〜10では、特定の数のエネルギー放出要素及び温度センサが示される。しかし、他の実施形態では、他の数のエネルギー放出要素及び温度センサが存在することもできる。更に、図示省略されていても、追加的な検出要素、例えば電気を検出するための検出要素が存在することができる。
【0065】
ケース38は好ましくは、光学的に透明な窓39を有する。これは、エネルギーがケース38を出ることを可能にするため、エネルギー放出位置に配置される。代替的に、完全に光学的に透明なケースが使用されることができる。
【0066】
好ましくは、エネルギーの印加の間、温度、及び可能であれば電位といった対象物の更なる特性を監視するために検出要素が使用される。
【0067】
上述した実施形態において、温度センサは、熱電対である。他の実施形態では、他の温度センサが使用されることができる。例えば、温度は光学的に測定されることができる。
【0068】
これらの温度測定は、エネルギー放出要素による光学エネルギーの印加に干渉しないので、対象物2の検出及びエネルギーの印加は同時に実行されることができる。これは、エネルギーが対象物に印加される間、対象物の特性、特に、対象物の表面の特性を監視することを可能にする。例えば、切除手順を実行するためエネルギーが印加される場合、切除手順の間この手順の進行が監視されることができる。
【0069】
別の実施形態では、時間多重方法が使用されることができる。この方法では、エネルギーの印加と対象物の温度の検出とが交互に実行される。
【0070】
このセンサ要素は、対象物から後方散乱される、及び/又は反射される光を検出する分光センサを有することもできる。後方散乱及び/又は反射された光は、対象物の分光検査のため、光学繊維を介して分光器に伝達される。
【0071】
検出要素は、個別にアドレス指定可能である。例えば、電位センサといった電気センサ又は温度センサが、ワイヤにより個別に接触され、光学センサが光学繊維を介して個別に接触される。これは、各検出位置が別々の線を介して好ましく接触されることを意味する。
【0072】
図4、7〜10に示される組合せ要素は、組合せ要素の左側がオープンであるように図示される。左のオープンサイドは、光学繊維内かつ組合せ要素内の要素の構成を説明するためにだけ示される。しかし、実際には、図4、7〜10に示される左側は、好ましくはすべての光エネルギーが反射され、電気絶縁物質で覆われるよう、閉じている。図4、7〜10に示される右側は好ましくは接続され、特にエネルギーを印加及び/又は検出する光学デバイス及び電気デバイスにプラグインされる。
【0073】
図4、7〜10に示されるケースは、コーティングとすることができる。更に、エネルギー印加要素及び好ましくは検出要素は、好ましくはこれらの要素が外側の絶縁コーティングを有する場合、又はこれらの要素が電気導電的でないか又は保持要素に対して距離を持つ場合、保持要素の周りに直接巻かれることができる。後者の場合、スペーサが間に配置されることができるか、又は、ケースはルーメンを有することができる。このルーメンは、通常互いに分離され、ルーメン内には、エネルギー印加要素及び好ましくは検出要素が配置される。ルーメンは、エネルギー放出及び/又は検出位置を形成することが必要とされる場所と接続状態にある。
【0074】
図11は、患者の心臓内に配置され、開いた状態にある構成7を概略的に示す。この状態において、当接面36は、肺静脈31の心門の周りで対象物の表面40に当接する。即ち、この実施形態では、当接面36の一部が、対象物の表面40に当接する。心門又は肺静脈31の周りの心臓組織を変性させるため、エネルギー放出要素は、エネルギー放出位置19を介して、特に対象物の表面40と接触するエネルギー放出要素19を介して、エネルギーを、特にこの実施形態では光エネルギーを、互いに独立に対象物の表面40に印加することができる。
【0075】
図11は、説明目的のためケースなし及び温度センサなしの構成7の2つの組合せ要素だけを概略的に示す。にもかかわらず、図11に示される状況においても、構成7は、複数の組合せ要素を有する。この場合、上述したように、例えば、図4及び7〜10において概略的に示したように、各組合せ要素は、ケース内で囲まれる複数のエネルギー放出要素及び温度センサを含む。
【0076】
この実施形態において、対象物にエネルギーを印加する装置1は、対象物2の3次元モデルを具備する。この3次元モデルは、コンピュータ断層撮影デバイス、磁気共鳴撮像デバイス又は超音波撮像デバイスといった撮像デバイスにより対象物2の画像を生成し、対象物2を分割し、及び、例えばこの分割された対象物2をレンダリングすることにより、生成されることができる。更に、対象物にエネルギーを印加する装置1は、当接面36のモデルを具備する。このモデルは、本実施形態では、当接面36上のエネルギー放出要素19、20の大きさ及び位置を有する。対象物2の3次元モデル21及び当接面36のモデル22が、図12に概略的に示される。
【0077】
当接面36のモデル22は、蛍光透視デバイス12により生成される画像を用いて、対象物の3次元モデル21と位置合わせされる。この位置合わせは、装置1の位置合わせユニット8により実行される。
【0078】
位置合わせユニット8は、撮像デバイス12により生成される画像に対して対象物2の3次元モデル21を位置合わせするよう構成される。上記生成される画像は、本実施形態では2次元投影画像である。2次元投影画像を対象物の3次元モデルに位置合わせするためには、既知の2D3D位置合わせ方法が使用されることができる。
【0079】
更に、位置合わせユニット8は、撮像デバイス12により生成される画像に対して当接面36のモデル22を位置合わせするよう構成される。また、この位置合わせのため、既知の2D3D位置合わせ方法が使用されることができる。両方のモデル21、22が2次元投影画像に対して位置合わせされるので、これらの2つのモデル21、22は、互いに位置合わせされる。
【0080】
対象物にエネルギーを印加する装置1は更に、視覚化デバイスを有する。これは、本実施形態はモニタ13である。この視覚化デバイスは、対象物2の3次元モデル21及び当接面36のモデル22を表示するよう構成される。対象物にエネルギーを印加する装置1は更に、ユーザが対象物の3次元モデル21上で経路23を引くことを可能にするマウス又はキーボードといった入力デバイス15を有する。この経路に沿って、エネルギーが対象物2に印加されるべきである。この経路23に基づき、エネルギー放出要素の決定ユニット41は、この経路23上に配置される、又はこの経路のできるだけ近くに配置される当接面36のモデル22のエネルギー放出要素を決定する。図12において、これらの決定されたエネルギー放出要素24は×印で示される。
【0081】
図12に示される例では、3次元モデル21は、肺静脈の心門25を示す心臓の3次元モデルである。心門25の周りの心臓組織は、変性されるべきである。従って、ユーザは、肺静脈の心門25を囲む経路23を入力する。×印の付いたエネルギー放出要素24が、経路23上又はこの経路の近くに配置され、続く切除手順の間、エネルギーが×印の付いたエネルギー放出要素24を介して対象物2に印加されることになる。
【0082】
エネルギーが対象物に印加されるべき他の経路が、本発明に基づき提供されることができる。例えば、線形切除手順に関して、実質的に線形で、肺静脈の2つの小孔を接続するオープンな経路が、この経路に沿ってエネルギーを印加するために使用されることができる。
【0083】
エネルギーが空間的に連続的な態様で対象物に印加されるよう、即ち、エネルギーが印加されないすきまを持つことなしに個別の経路に沿ってエネルギーが連続して印加されるよう、エネルギー放出要素24が決定される。
【0084】
図1を再度参照すると、オプションで、対象物にエネルギーを印加する装置1は更に、対象物の3次元モデル21上の経路23を自動的に決定する経路決定ユニット14を有する。この場合、経路決定ユニット14は、対象物の特性を決定するため、対象物の3次元モデル21及び/又は検出要素の検出値を受信し、経路決定ユニット14は、対象物の所望の処置に基づき、モデル21及び/又は対象物の決定された特性から経路23を決定する。例えば対象物が心臓であり、経路が肺静脈の心門を囲まなければならない場合、心門の端に対して所与の距離を持って、肺静脈の心門を囲むよう、経路が決定される。この経路は、モデル21及び/又は検出値から決定されることができ、例えば検出電極を用いて生成される心臓の電位画像から決定されることができる。この所与の距離は、医師のようなユーザにより予め決定されることができる。決定された経路は、視覚化デバイス13上に表示される。
【0085】
ユーザが対象物の3次元モデル21上で経路23及び/又は追加的な経路を修正することができるよう、入力デバイス15は構成される。更に、入力デバイス15は、エネルギーを印加すべき決定された放出要素24を修正するよう構成される。更に、対象物にエネルギーを印加する装置1は、経路23を直接示すことの有無にかかわらず、エネルギーを印加すべきエネルギー放出要素24をユーザが選択することを可能にするよう構成されることができる。
【0086】
図13は、対象物にエネルギーを印加する装置1の制御ユニット5を概略的に示す。本実施形態において、制御ユニット5は、複数の光源、特にレーザーデバイス26...26を有する。ここで、これらのレーザーデバイスの数Nは、構成7のエネルギー放出要素の別々の光学繊維30の数に対応する。各レーザーデバイス26...26は、別々のエネルギー放出要素に結合される。制御ユニット5は更に、温度検出位置17にある温度センサから温度値を受信する特性決定部27を有する。この装置が更なる種類の検出要素を有する場合、特性決定ユニット27は、追加的な検出要素から更なる種類の検出値を受信することができる。特性決定ユニット27は、これらの検出値から、少なくとも温度から、及び電気検出が実行される場合には電位から、対象物2の特性を決定する。これらの特性は、決定された特性が所与の動作範囲に含まれるかを決定する偏差決定ユニット28に送られる。決定された特性が所与の動作範囲に含まれない場合、アラーム信号ユニット29は、決定された特性が範囲外にあることを示す音響又は光学信号を出力する。好ましくは、対象物の少なくとも1つの決定された特性が範囲外にあると偏差決定ユニット28が決定する場合、制御ユニット5は、対象物に印加されるエネルギーの強度を自動的に減らす。例えば、エネルギーの印加を止める。
【0087】
上述の構成7は、肺静脈の1つの心門を覆うものとして図11及び図12では示されるが、肺静脈の2つの心門を覆うよう、切除面が必要な大きさにされることもできる。
【0088】
以下、本発明に基づき対象物にエネルギーを印加する方法が、図14のフローチャートを参照して更に詳細に説明されることになる。
【0089】
ステップ101において、対象物2の3次元モデル21が、対象物にエネルギーを印加する装置1に提供される。更に、当接面36のモデル22が、対象物にエネルギーを印加する装置1に提供される。
【0090】
ステップ102において、エネルギー放出要素の構成7を折り畳まれた状態から開いた状態へと移すため、対象物2に誘導されたエネルギー放出要素の構成7が展開される。開いた状態では、好ましくは、対象物の内側表面に対するエネルギー放出要素の位置が以下の手順の間一定であるよう、当接面36が対象物2の内側表面に当接する。
【0091】
ステップ103において、撮像デバイス12は、対象物2及び当接面36の画像を生成し、この画像は、位置合わせユニット8に送られる。
【0092】
対象物2の3次元モデル21及び当接面36のモデル22は、画像生成デバイス12の画像を使用することにより、互いに対して位置合わせされる。
【0093】
位置合わせされたモデル21、22は、視覚化デバイス13上に視覚化され、対象物2の3次元モデル21上の経路は、対象物にエネルギーを印加する装置1に入力デバイス15を介して入力されることができる。デフォルトとして、経路決定ユニット14は、デフォルト経路を決定することができる。この経路も、視覚化デバイス13上に視覚化され、入力デバイス15を用いるユーザにより修正されることができる。
【0094】
エネルギー放出要素のエネルギー放出位置24が、ステップ106において決定される。この位置は、エネルギー放出要素の決定ユニット41により、所与の経路を当接面36にできるだけ良好にマッピングするため、所与の経路上に配置されるか又は所与の経路の近くに配置される。対象物にエネルギーを印加すべきこれらのエネルギー放出位置は、入力デバイス15を介してユーザにより修正されることができる。
【0095】
ステップ107において、エネルギーは、ステップ106においてユーザにより決定され、可能であれば修正されるエネルギー放出位置を有するエネルギー放出要素により対象物に印加される。対象物にエネルギーを印加する間、対象物の特性は、温度センサ並びに可能な更なる検出要素、特性決定ユニット27及び偏差決定ユニット28により監視される。
【0096】
対象物にエネルギーを印加する装置1に対応する停止信号をユーザが入力デバイス15により入力する場合、特性決定ユニット27が、対象物の必要な修正を示す所定の特性に対応する対象物の特性を決定する場合、又は、対象物の特性のうちの少なくとも1つが範囲外にあると偏差決定ユニット28が決定する場合、特に温度が範囲外にある場合、即ち所定の閾値を超える場合、エネルギーの印加がステップ108で止められる。
【0097】
対象物にエネルギーを印加する装置1を用いる上述の方法は、エネルギー放出要素の構成7を対象物に対して大雑把に配置することを可能にする。なぜなら、エネルギーが対象物に対して印加されることになる正確な経路は、切除面36の位置により決定されるのではなく、ステップ106におけるエネルギー放出位置の決定及び可能であれば修正により決定されるからである。従って、エネルギー放出要素の時間消費の多い位置決めが省略されることができる。
【0098】
対象物の3次元モデル、特に、心臓の3次元モデルは、純粋な生体構造モデル、又は検出電極により測定される電位を用いた電気生体構造モデルとすることができる。
【0099】
エネルギー放出要素のエネルギーは、時間調整された態様で同時に又は自動的に印加されることができる。更に、エネルギーの成功した印加、特に成功した切除は、対象物の温度を測定することにより確認されることができる。エネルギー放出位置及び温度検出位置が互いに近くに配置されるので、エネルギーが印加される位置での温度が高い精度で監視されることができる。
【0100】
電位を測定する電気検出要素が存在する場合、対象物の、特に心臓組織の電気生体構造マッピングが提供されることができる。このマッピングは、肺静脈の心門といった関連する構造体を検出するのに使用されることができる。この電気生体構造マッピングは、対象物のモデルを決定し、放出要素の構成の当接面のモデルと対象物のモデルとを位置合わせするのに用いられることもできる。
【0101】
対象物において、特に、心臓組織においてあまりに高い温度が回避されるよう、ステップ107において、対象物に印加されるエネルギーが制御されることができる。こうして、温度があまりに高くなる場合、制御ユニット5は好ましくは、対象物に印加されるエネルギーを減らす。心臓組織の場合、80°以上の温度は一般的に、あまりに高い。
【0102】
本発明は、例えば、心臓の4つのチャンバにおける切除に、肺静脈の電気隔離に、及び基板修正に使用されることができる。
【0103】
光源26...26は好ましくは、960nm〜1100nmの範囲の波長を持つ赤外線レーザーデバイスである。
【0104】
更に、注目する構造体の位置、例えば肺静脈の心門の位置は、対象物の表面での電位を電気検出要素により検出することにより位置決めされることができる。注目する構造体の位置は幾何学マップにマッピングされることができ、肺静脈の心門の位置及びサイズのこの幾何学的な情報は、対象物の、特に患者の心臓の3次元モデルへとマッピングされることができる。心門のサイズ及び位置は、エネルギーが印加されなければならない経路をユーザが入力することを可能にするため、又は斯かる経路を自動的に決定することを可能にするため、視覚化デバイス13により対象物の3次元モデル上に表示されることになる。
【0105】
蛍光透視デバイスが撮像デバイスとして上で説明されたが、例えば、磁気共鳴デバイス又は超音波撮像デバイスといった別の撮像デバイスが、対象物及びエネルギー放出要素の構成を特にリアルタイムに視覚化するのに使用されることができる。
【0106】
対象物にエネルギーを印加する装置1は、例えば、線形円周切除、及び/又は分節切除、及び/又はシングルポイント切除のために使用されることができる。
【0107】
特に、対象物にエネルギーを印加するためのコンピュータプログラムは、請求項1に記載の装置の温度センサにより検出される検出温度に基づき、この装置のエネルギー放出要素による対象物に対するエネルギーの印加をコンピュータに制御させるためのプログラムコード手段を有することができる。
【0108】
本発明が図面及び前述の説明において詳細に図示され及び説明されたが、斯かる図示及び説明は、説明的又は例示的であると考えられ、本発明を限定するものではない。本発明は、開示された実施形態に限定されるものではない。図面、開示及び添付の特許請求の範囲の研究から、開示された実施形態に対する他の変形が、請求項に記載された発明を実施する当業者により理解され及び遂行されることができる。
【0109】
請求項において、単語「有する」は他の要素又はステップを除外するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数性を除外するものではない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、請求項に記載される複数のアイテムの機能を満たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属項に記載されるという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。
【0110】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に又はその一部として供給される光学的記憶媒体又は固体媒体といった適切な媒体に格納/配布されることができるが、インターネット又は他の有線若しくは無線通信システムを介してといった他の形式で配布されることもできる。
【0111】
請求項における任意の参照符号は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物にエネルギーを印加する装置であって、
前記対象物にエネルギーを印加するエネルギー放出要素と、
前記対象物の温度を検出する温度センサと、
前記エネルギーが印加されることになる前記対象物の位置まで前記エネルギー放出要素及び前記温度センサを誘導するための管であって、前記エネルギー放出要素及び前記温度センサが配置可能な管とを有する、装置。
【請求項2】
異なる位置で前記対象物にエネルギーを印加する複数のエネルギー放出要素と、
前記異なる位置で前記温度を検出する複数の温度センサとを有し、
前記複数のエネルギー放出要素におけるエネルギー放出要素が、個別に制御可能であり、前記複数の温度センサにおける温度センサは、互いに独立して前記異なる位置で前記温度を検出し、前記複数のエネルギー放出要素におけるあるエネルギー放出要素によりエネルギーが印加されることになる各位置に対して、前記温度が独立に検出可能であるよう、前記複数の温度センサにおける各温度センサが、前記複数のエネルギー放出要素におけるエネルギー放出要素に割り当てられる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置が、複数の組合せ要素を有し、各組合せ要素は、複数のエネルギー放出要素及び複数の温度センサを有し、前記複数のエネルギー放出要素におけるエネルギー放出要素が、保持要素の周りに巻かれる、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記温度センサの少なくとも1つが、異なるタイプの金属を有し互いに接触される、少なくとも第1の金属要素及び第2の金属要素を有する熱電対である、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記エネルギー放出要素が、光学繊維を有し、前記第1の金属要素及び/又は前記第2の金属要素は、前記光学繊維の金属コーティングである、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記第1及び/又は第2の金属要素が、前記エネルギー放出要素と共に前記保持要素の周りに巻かれる、請求項3又は4に記載の装置。
【請求項7】
前記保持要素が、金属であり、前記保持要素は、前記第1及び第2の金属要素の1つである、請求項3又は4に記載の装置。
【請求項8】
前記第1及び第2の金属要素が、前記装置の要素におけるコーティングである、請求項4に記載の装置。
【請求項9】
異なる熱電対が、前記同一の前記第1又は第2の金属要素を持つ、請求項4に記載の装置。
【請求項10】
請求項1に記載の装置において使用する組合せ要素であって、前記組合せ要素が、複数のエネルギー放出要素及び複数の温度センサを有し、前記複数のエネルギー放出要素におけるエネルギー放出要素は、保持要素の周りに巻かれる、組み合わせ要素。
【請求項11】
対象物にエネルギーを印加する方法において、
エネルギー放出要素及び温度センサが配置される管を使用することにより、前記エネルギーが印加されることになる前記対象物の位置まで前記エネルギー放出要素及び前記温度センサを誘導するステップと、
前記エネルギー放出要素を用いて前記対象物にエネルギーを印加するステップと、
前記温度センサを用いて前記対象物の温度を検出するステップとを有する、方法。
【請求項12】
対象物にエネルギーを印加するためのコンピュータプログラムであって、
請求項1に記載の装置を制御するコンピュータで実行されるとき、請求項11に記載の方法のステップをコンピュータに実行させるプログラムコード手段を有する、コンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2011−505892(P2011−505892A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536557(P2010−536557)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【国際出願番号】PCT/IB2008/054965
【国際公開番号】WO2009/072035
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】