説明

対象物の表面に材料を堆積する方法

【課題】湿潤破壊または階段問題を有することなく対象物表面の状態に実質的に依存しない対象物の表面に堆積する方法を提案する。
【解決手段】本発明は、第1の液体である材料の溶液の層(16)の堆積と、前記材料の層(18)を形成するための、それに続く前記第1の液体の蒸発と、を含むタイプの、前記材料の層(18)を対象物(12)の表面に堆積する方法に関連する。本発明によれば、前記方法は、前記対象物(12)と前記溶液の層(16)との間に置かれる第2の液体の層(14)の形成を含み、前記第1の液体の蒸発温度より高い蒸発温度を有する、前記第1の液体の密度より高い密度の前記第2の液体が、前記第1の液体と混和しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子工学の分野、より詳しくは、例えば基板等の対象物の表面に対する材料の堆積、特に湿式堆積の分野に関連する。本発明は、最も具体的には有機材料の湿式堆積に使用されることができるが、それは、無機材料の堆積にも適用され得る。
【背景技術】
【0002】
マイクロエレクトロニクスは、シリコン(Si)またはガリウム砒素(GaAs)などの無機材料に関して一般的に発展した。他のルートは、大規模な製造における適合性、有機材料の機械的強度、有機材料の弾力性のある構造または場合によっては再処理における有機材料の適合性のために高分子などの有機材料に関して現在調査されている。従って、スクリーンは、有機ダイオード(OLED)または有機薄膜トランジスタ(OTFT)に基づいて設計されている。さらに、例えばスピンコーティング、インクジェット、スクリーン印刷による層堆積技術の使用は、可溶性高分子の使用を介して可能になっている。
【0003】
しかしながら、有機材料の堆積は、特定の数の困難性を与える。より具体的には、基板表面上に良質な導電性有機層を得ることは困難である。実際、導電性有機層は、有機結晶材料を用いて得られる。これらは、それによって困難な電子伝導及び従って乏しい電気伝導を伴うランダムな分子組織を有する非晶質材料と異なって、信頼性のある制御された電子伝導を提供する周期的な分子構造を有する。
【0004】
しかしながら、例えば基板の表面に湿式堆積される結晶性の高分子の薄層の電気的特性を研究することによって、一般的に言えば、それが予期しない良好な電導性を与える代わりに、無秩序状態の及び予測不可能な電流伝導が見られる。
【0005】
実際、有機材料の層を形成する通常の技術(通常、溶剤中に薄められた前記材料を含む溶液の堆積、幾何学的に結晶化された材料の層の形成をもたらす、それに続くその溶剤の蒸発)は、一般的に、基板表面の不均一性のために結晶ネットワークの均一な成長を可能にしない。例えば、基板表面は、粗いパッチ、不均一性の表面エネルギー、階段または例えば再び金属接続部などの機能的な要素を有する。
【0006】
さらに、非結晶性有機材料は、それらが基板表面の不均一性のために堆積される場合に、湿潤破壊または階段問題などの問題も有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、有機物であるか又はそうではない材料の層を、その品質が対象物表面の状態に実質的に依存しない対象物、特に基板の表面に堆積する方法を提案することによって上述の問題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このために、本発明の対象は、第1の液体である前記材料の溶液の層の堆積と、材料の層を形成するための、それに続く前記第1の液体の蒸発と、を含むタイプの、対象物の表面に対する材料の層の堆積である。
【0009】
本発明によれば、前記方法は、前記対象物と前記溶液の層との間に置かれる第2の液体の層の形成を含み、前記第1の液体の蒸発温度より高い蒸発温度を有する、前記第1の液体の密度より高い密度の前記第2の液体が、前記第1の液体と混和しない。
【0010】
溶液とは、特に、溶剤中における材料の溶解液、または、分散剤中のナノスケールの対象物(ナノオブジェクト)の分散剤を意味すると解する。
【0011】
言い換えると、前記材料及び前記第1の液体によって構成される溶液は、前記第2の液体の“カーペット”の表面に形成され、前記カーペットは、前記対象物の表面にその一部が堆積される。前記第1及び第2の液体の非混和性を前提として、2つの液体間の界面は、均一な表面を有し、前記均一性は、前記対象物の表面の状態から独立している。しかしながら、前記表面が完全に均一性でない場合、その不均一性が、実際は、現在の技術を用いて利用することができない分子であることに留意すべきである。従って、基板の表面が、結晶化がある場合に対象物の表面に形成される結晶の品質、又は簡単に言えば、行われる堆積の品質における直接的な効果をこれが有することなく、エネルギー(例えば様々な材料の存在によって引き起こされる)または幾何学的(粗いパッチ、階段、埃など)に大きな差異を有することに留意すべきである。
【0012】
このような均一性は、第1の液体が蒸発される場合に、結晶性有機材料の結晶の均一的な成長にさらに相応しい。従って、良好な均一性の結晶ネットワークは、第2の液体の蒸発後に対象物の表面上に得られる。
【0013】
本発明の幾つかの実施形態によれば、本方法は、1つ又はそれ以上の以下の特徴を有する。
【0014】
従って、堆積されることが望まれるこの材料は、第2の液体に溶解できない。
【0015】
第2の液体の層は、溶液の層の堆積の前に対象物にそれを堆積することによって形成される。
【0016】
前記材料並びに第1及び第2の液体を含む混合物は、前記対象物の表面に堆積され、前記第2の液体の層は、偏析及び相分離によって形成される。
【0017】
前記第2の液体は、少なくとも0.2mg/lほど前記第1の液体より密度が高い。
【0018】
前記第2の液体の蒸発温度は、少なくとも20度ほど前記第1の液体の蒸発温度より高い。
【0019】
前記溶液は、溶剤に溶解された前記材料を含む。より具体的には、前記溶剤はトルエンであり、前記第2の液体はフッ素化液体である、又は、前記溶剤はトルエンであり、前記第2の液体は水である。
【0020】
前記溶液は、分散剤に分散されたナノスケールの対象物の形態の材料である。特に、前記ナノスケールの対象物はナノワイヤまたはナノチューブであり、前記分散剤はアルコールであり、前記第2の液体はフッ素化液体である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による平坦表面全体上に堆積する方法の工程を示す概略断面図である。
【図2】本発明による平坦表面全体上に堆積する方法の工程を示す概略断面図である。
【図3】本発明による平坦表面全体上に堆積する方法の工程を示す概略断面図である。
【図4】本発明による平坦表面全体上に堆積する方法の工程を示す概略断面図である。
【図5】従来技術の階段欠陥を示す図である。
【図6】本発明がこのような階段欠陥を解消する方法を示す図である。
【図7】本発明がこのような階段欠陥を解消する方法を示す図である。
【図8】表面欠陥の存在によって生成される従来技術の湿潤欠陥を示す図である。
【図9】本発明がこのような湿潤欠陥を解消する方法を示す図である。
【図10】本発明がこのような湿潤欠陥を解消する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、単に例示として与えられ、添付の図面に関連して作成された以下の説明を読むことによってより理解されるだろう。
【0023】
本発明による材料の層を堆積する方法が図1から図4の補助を用いて記載されるだろう。
【0024】
第1工程中、第1及び第2の液体並びに堆積用の材料を含む混合物10は、基板12の表面に湿性沈着によって堆積される(図1)。
【0025】
混合物10は、例えば、第1の液体に溶解可能にされた材料を含む第1の溶液と、その材料を溶解可能にしない第2の溶液と、を混合することによって調製される。
【0026】
さらに、偏析または相分離が起こるように、第2の液体は、第1の液体と混和せず、それより密度が高いように選択される。次いで、第2の液体は、基板12の表面において層14の形態を取り、その材料を有する第1の液体は、その一部において、第2の液体の層14の表面において層16の形態を取る(図2)。
【0027】
さらに、第1の液体が蒸発する場合、第2の液体が蒸発しないように、第1の液体は、第1の液体の蒸発温度より高い蒸発温度を有すように選択される。
【0028】
同様に、混合物10は、例えば、第1の分散剤を有するナノスケールの対象物と、第1の分散剤を用いて単一相を生成しない第2の液体と、を混合することによって調製される。
【0029】
従って、偏析または相分離の工程が完了すると、本発明の方法は、基板12並びに層14及び16によって構成される組立体を、第1の液体の蒸発温度以上であって第2の液体の蒸発温度より低い温度まで加熱することが続けられる。この蒸発中に、層16に含まれる材料は堆積され、それによって、材料の層18は、最終的に第2の液体の層14の表面に得られる(図3)。この材料が結晶化に対して伝導性である場合、従って結晶化された材料の層が得られる。
【0030】
層18が得られると、基板12並びに層14及び18によって構成される組立体を、第2の液体の蒸発温度以上の温度までもっていく第2の加熱段階が行われる。次いで、材料の層18が基板12の表面に堆積されるように、第2の液体の層14は、蒸発し、必要であれば、乾燥を完了する(図4)。
【0031】
代替案として、その材料並びに第1及び第2の液体の両方を含む混合物10を堆積するよりはむしろ、第2の液体の層は、基板12の表面に堆積され、次いで、有機材料を含む溶液の層及び第1の基板は、第2の液体の液体層上に堆積される。
【0032】
図5は、その表面に突出部を形成する要素24、26を含む基板22に結晶質又は非晶質である材料の溶液の層20を堆積する際に従来技術で遭遇する頻繁に起こるケースを示す。通常、溶液から溶剤を蒸発することによって、堆積破砕が階段28、30に現れる。
【0033】
本発明によれば、既に記載されているように、第1の液体より密度が高く混和しない第2の液体の層32は、堆積され、要素24、26(図6)を取り囲むように基板22と層20との間の空間を満たす。次に、第1の液体、及び、第1の液体の蒸発温度より高い蒸発温度を有する第2の液体を連続して蒸発することによって、階段28、30で破砕を有しない材料の層20が得られる。実際、有機材料の層20が第2の液体の層24の蒸発のために下がる場合、それは、既に実質的に乾いており、その結果、それは破壊しない。
【0034】
図8は、基板42の表面における溶剤内の材料の溶液40の直接堆積中に従来技術で遭遇する他の頻繁に起こるケースを示す。前記表面が、例えば埃又は粗いパッチなどの欠陥44、46を含む場合、溶液の層40は、その上で脱湿潤(de-wet)する。このタイプの欠陥は、その結果が漏れ電流の増加及び一般的に電気性能の低下であるので、材料の層が電気絶縁機能を発揮する場合、特に敏感である。
【0035】
基板42と層40との間に第2の液体の層47を形成し(図9)、次いで、第1及び第2の液体を連続して蒸発するために処理することによって、表面欠陥44、46が埋められた材料の層が得られる(図10)。
【0036】
本発明によれば、第2の液体は、第1の液体と混和せず、第1の液体より密度が高く、より高い蒸発温度を有する。
【0037】
好ましくは、第2の液体は、少なくとも0.2mg/lほど第1の液体より密度が高く、少なくとも20℃ほど前記第1の液体より高い蒸発温度を有する。これらの値以下で、本発明者は、基板の表面に対する材料の堆積の品質が実質的に低下することを観察した。
【0038】
好ましくは、第1の液体はトルエンであり、第2の液体はフッ素化液体、好ましくはペルフルオロポリマーであり、又は、第1の液体はトルエンであり、第2の液体は水である。本発明者は、これらの組み合わせが、堆積用の材料に対する質の良い“カーペット”の形成、及び、特にこれが半導体タイプである場合、材料の質の良い層の形成を可能にすることに実際に注目している。
【0039】
しかしながら、第1及び第2の液体は、目的とする使用に応じて選択され得る:
−例えば、ドーピングされたポリアニリン、ポリエチレンジオキシチオフェン−ドーピングされたポリスチレンスルホン酸(PDOT−PSS)、インジウム及びスズ酸化物(ITO)などの導電性溶剤、または、インク、すなわちエチレングリコールなどの溶剤中における、例えば銀などの金属のナノ粒子;
−例えばポリアニリン、PDOT−PSS、修正されたペンタセン(TIPS)、ポリチオフェン(例えば、ポリ−3−ヘキシルチオフェン(P3HT))またはポリアセチレンなどの半導体溶剤;
−例えばポリビニルフェノール(PVP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メチルシルセスキオキサン(PMMSQ)、ポリイミド、フルオロポリマー(PVDF)またはペルフルオロポリマー(PTFE)などの誘電性溶剤;
−例えばヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、クロロホルムまたは酢酸エチルなどの極性溶剤;
−例えば1−4ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン(DCM)またはアセトンなどの極性非プロトン性溶剤;
−水またはアルコールなどの、ナノスケールの対象物(例えば、シリコンナノワイヤ、カーボンナノチューブまたはナノ粒子)用の分散剤。
【0040】
従って、本発明を用いて以下の利点が特に得られる:
−それが堆積される表面に対する材料の層の形成の独立性。従って、例えば金属またはプラスチック基板などのあらゆる対象物に属する前記表面は、エネルギーの変化、粗いパッチ、埃、又は、突出部を形成する要素などの不均一性を与え得る;
−材料が良好な電気品質の結晶層を得る目的において結晶化される場合、混和しない液体間の界面によって形成される均質な結晶表面。
【符号の説明】
【0041】
10 混合物
12 基板
14 第2の液体の層
16 第1の液体の層
18 材料の層
20 層
22 基板
24 要素
26 要素
28 階段
30 階段
32 層
40 層
42 基板
44 表面欠陥
46 表面欠陥
47 層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の液体である材料の溶液の層(16)の堆積と、前記材料の層(18)を形成するための、それに続く前記第1の液体の蒸発と、を含むタイプの、前記材料の層(18)を対象物(12)の表面に堆積する方法であって、
前記対象物(12)と前記溶液の層(16)との間に置かれる第2の液体の層(14)の形成を含み、
前記第1の液体の蒸発温度より高い蒸発温度を有する、前記第1の液体の密度より高い密度の前記第2の液体が、前記第1の液体と混和しない方法。
【請求項2】
前記材料(18)が、前記第2の液体に溶解しない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の液体の層(14)が、前記溶液の層(16)の堆積の前に前記対象物(12)にその堆積によって形成される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記有機材料並びに第1及び第2の液体を含む混合物(10)が、前記対象物(12)の表面に堆積され、前記第2の液体の層(14)が、偏析または相分離によって形成される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の液体が、少なくとも0.2mg/lだけ前記第1の液体より密度が大きい、請求項1から4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の液体の蒸発温度が、少なくとも20度だけ前記第1の液体の蒸発温度より高い、請求項1から5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記溶液が、溶剤に溶解された前記材料を含む、請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記溶剤がトルエンであり、前記第2の液体がフッ素化液体である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記溶剤がトルエンであり、前記第2の液体が水である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記溶液が、分散剤に分散されたナノスケールの対象物の形態の材料を含む、請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ナノスケールの対象物がナノワイヤまたはナノチューブであり、前記分散剤がアルコールであり、前記第2の液体がフッ素化液体である、請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−162531(P2010−162531A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−280884(P2009−280884)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(502124444)コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ (383)
【Fターム(参考)】