説明

対象物を変位させるローラを有するコンベヤベルト

一実施例では、コンベヤベルトが、複数のローラセットを有しており、各ローラセットが第1のローラ及び第2のローラを有しており、第1及び第2のローラが、第1の角度方向への一方のローラの駆動により、第2の反対の角度方向に他方のローラが回転するように、互いに接触するよう配置されている。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
コンベヤベルトは、多くの場合、選択された横方向にベルトから対象物を進路変更させるよう使用されるローラを有している。いくつかのシステムでは、ローラが、ローラが横方向に回転し得るようにそれらの回転軸がベルトの移動方向と一致するように配置されている。他のシステムでは、ローラが、ベルトの移動方向に対して角度を成して配置されている。しかしながら、いずれのケースにおいても、コンベヤから対象物を進路変更させ得る角度が限られている。
【図面の簡単な説明】
【0002】
開示されたコンベヤベルトは、以下の図面を参照して理解し得る。図面中の部品は、必ずしも等尺ではない。
【0003】
【図1】図1は、コンベヤの一部の第1の実施例の上部斜視図である。
【図2】図2は、図1のコンベヤに使用されているコンベヤベルトモジュールの実施例の平面図である。
【図3】図3は、図2のコンベヤベルトモジュールの側面図である。
【図4】図4は、コンベヤによって運ばれる対象物の進路変更を示す図1のコンベヤベルトの概略的な端面図である。
【図5】図5は、コンベヤによる対象物の進路変更をさらに示す図1のコンベヤの上部斜視図である。
【図6】図6A乃至6Dは、図1のコンベヤを用いた対象物の進路変更を順に示す概略図である。
【図7】図7は、コンベヤの一部の第2の実施例の上部斜視図である。
【図8】図8は、図7のコンベヤで使用されるコンベヤベルトモジュールの実施例の平面図である。
【図9】図9は、図8のコンベヤベルトモジュールの側面図である。
【図10】図10は、コンベヤによって運ばれる対象物の変位を示す図7のコンベヤの側面図である。
【図11】図11は、コンベヤによる対象物の変位をさらに示す図7のコンベヤの上部斜視図である。
【図12】図12A乃至12Cは、第3のコンベヤの一部の実施例の概略的な側面図であり、コンベヤベルトの長さ方向に沿って対象物の位置を制御することを順に示す。
【図13】図13は、コンベヤベルトで使用し得るローラの第1の代替的な実施例の側面図である。
【図14】図14は、図13のローラの端面図である。
【図15】図15は、コンベヤベルトで使用し得るローラの第2の代替的な実施例の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0004】
ベルトによって運ばれる対象物を変位させるよう使用し得るローラを有するコンベヤベルトが、以下に説明されている。いくつかの実施例では、コンベヤベルトが、上部ローラ及び下部ローラを有するローラセットを具えており、下部ローラがベルトの下面の下方に延びており、上部ローラがベルトの上面の上方に延びている。上部ローラ及び下部ローラは、下部ローラが第1の角度方向に駆動されるときに、上部ローラが第2の逆方向の角度方向に回転するように、互いに接触する。ローラがベルトの長手方向に対いて角度を成す方向に回転するケースでは、上部ローラを使用して、対象物が比較的高い進路変更角度で進路変更することができるように、横方向且つ後方に対象物を変位させ得る。ローラがベルトの長手方向と平行な方向に回転するケースでは、対象物をベルトの移動方向とは逆方向に変位させ得る。
【0005】
以下において、コンベヤベルトの様々な実施例が開示されている。特定の実施例が与えられているが、これらの実施例は開示されたベルトの単なる具体例であり、他の実施例が可能であることに留意されたい。これらの実施例全ては、本開示の範囲内にあることを目的とするものである。
【0006】
同じ符号がいくつかの視点にわたって対応するパーツを示す図面を参照すると、図1は、対象物を進路変更させるよう使用し得るコンベヤ10の実施例を示す。図1に示すように、コンベヤ10は、コンベヤベルト12及びベルトが作用し得る駆動機構14を具えている。図1の実施例では、コンベヤベルト12が、互いに連結されてベルトを形成する複数のコンベヤベルトモジュール16を具えている。モジュール16は、ベルト12の幅に及ぶ横列18が並んでおり、矢印22で示すベルトの移動方向に一致してベルトの長手方向に沿って延びる縦列20が並んでいる。例として、モジュール16が、ベルト12の長手方向に沿って隣接するモジュールに、横軸24によって回動可能に結合されている。モジュール16は、モジュールの内部空間30の中で垂直方向に積み重なって配置された第1又は下部ローラ26及び第2又は上部ローラ28を具えたローラセットを有している。
【0007】
駆動機構14を使用して、コンベヤベルトモジュール16の下部及び上部ローラ26、28を駆動させる。図1に示すように、駆動機構14は、1つの長手ローラを各ベルトコラムに設けるように、コンベヤベルト12の長手方向に対して平行でコンベヤベルトモジュール16の列20と揃っている回転軸を有する複数の長手ローラ32を具えている。以下に詳細に説明するように、ベルト12が移動する際に長手ローラ32が下部ローラ26に接触するよう位置するときに、長手ローラ及び下部ローラ間の摩擦力により下部ローラが回転し、これにより上部ローラ28が反対方向に回転する。少なくともいくつかの実施例では、長手ローラ32が、長手ローラ32及び下部ローラ26間の滑りを減らす高摩擦力の外面を有している。代替的な実施例では、駆動機構が、下部ローラ26を回転させるよう使用される摩擦板を具えている。このような摩擦板の例を図7に示す。
【0008】
図2及び図3は、コンベヤベルトモジュール16の実施例を示す。これらの図面に示すように、モジュール16は、前端部42、後端部44、及び対向する側面46を有する本体40を具えている。さらに、本体40は、上面48及び下面50を有している。「前」及び「後」といった空間に関する特定の用語を使用するが、これらの用語を本書で使用して図1に示す方向のモジュール16を説明する。このため、空間に関する用語は絶対的なものではなく、このように解釈すべきではない。
【0009】
ある実施例では、モジュールの本体40が、高分子材料といった1片の材料で一体に構成されている。他の実施例では、本体40が、別体の部品、例えば組み立てて一体化した本体を形成する別々の半体を具えている。このような実施例では、本体40を高分子及び/又は金属材料で形成し得る。
【0010】
図2に最も明りょうに示すように、コンベヤベルトモジュール16は、さらに、本体40から延びる結合部を有している。図2及び図3の実施例では、モジュール16が本体40の前端部42から延びる1つの結合部52及び隙間56によって隔てられて本体40の後端部44から延びる2つの結合部54を具えている。このような構成では、モジュール16が、ベルトの長手方向に沿って互いに結合されるよう構成されている。特に、1つのモジュール16の結合部52を、隣接するモジュールの隙間56で受容することができ、この隣接するモジュール16の結合部52を、図1などで示すように、次に隣接するモジュール16の隙間56によって受容することができる。図3に最も明りょうに示すように、各結合部52、54が、丸い外面58及び図1に示すシャフト24といった横軸を受容するよう構成された横方向の開口部60を有している。横軸の直径が開口部60よりも小さい場合、モジュール16がシャフトに対して回動可能に回転することが可能で、逆もまた可能である。
【0011】
モジュール本体40は、さらに、図1で最初に確認される内部空間30を規定する。図2に示すように、内部空間30は、いくつかの実施例では、上方又は下方から視た場合に、対向する側壁62及び対向する端壁64によって規定される略矩形状の断面を具えている。さらに図2に示すように、側壁62は、モジュール本体40の側面46に対して、すなわちモジュール16の長手軸に対して角度を成すよう構成されている。
【0012】
図2及び図3から明らかなように、上部及び下部ローラ26、28は、モジュール本体40によって規定される内部空間30の中に少なくとも部分的に収容されている。図3に示すように、ローラ26、28の外面66が、第1の方向への一方のローラの回転により他方のローラが逆回転するように、互いに接触する。下部ローラ26の一部が本体40の下面50の下方に延びており、上部ローラ28の一部が本体の上面48の上方に延びている。このような構成により、図1に関して記載された駆動機構が回転するよう下部ローラ26に接触することができ、モジュール16を使用するコンベヤベルトによって支持される対象物を上部ローラ28によって動かすことが可能となる。
【0013】
各ローラは、ローラに骨格を提供する高分子又は金属材料で構成されたローラ本体70、ローラ本体の外面の周りに設けられ外面66を形成する外側層72を有している。ある実施例では、各ローラ26、28の外側層72が、それが接触する機構及び/又は対象物との滑りを減らす高摩擦材料から成っている。他の実施例では、上部ローラ28とそれが支持する対象物との間に所望の滑りを可能にするように、下部ローラ26の外側層72のみが高摩擦材料である。図2及び図3に示すように、各ローラ26、28が、内部空間30の中でモジュール本体40によって支持されるローラシャフト74に取り付けられている。ある実施例では、シャフト74が本体40に形成された開口部(図示せず)によって支持されている。他の実施例では、シャフト74が、内部空間30の中に設けられたブラケット(図示せず)によって支持されている。シャフト74は、それらに関連するローラ26、28が互いにしっかりと接触して一方のローラ(例えば、下部ローラ)の回転により他方のローラ(例えば、上部ローラ)が確実に逆回転するように支持されている。
【0014】
さらに、図2及び図3に示すように、シャフト74、及びそれらに関連するローラ26、28が、モジュール16の長手軸及びコンベヤベルトに対して角度θで支持されている。ある実施例では、シャフト74がモジュール16の長手軸に対して略垂直のケースの角度θが約1度から、シャフトがモジュールの長手軸と略平行のケースの約89度まで可能である。以下に詳細に説明するように、選択された角度は、対象物がコンベヤベルトから進路変更する速度に影響を及ぼす。
【0015】
図4及び図5は、コンベヤ10を用いて対象物Oを進路変更させることを示している。図5に示すように、コンベヤベルト12が、矢印22の方向に長手ローラ32に沿って移動する。図4に示すように、下部ローラ26と長手ローラ32との間の接触により、下部ローラが下流方向に矢印76で示す方向に回転する。さらに、このような接触により、長手ローラ32が(下流方向から視た場合に)矢印78で示すように反時計方向に回転する。下部ローラ26の回転により、上部ローラ28が矢印80で示すように、逆方向の上流方向に回転する。図5で最も明りょうに示すように、上部ローラ28の回転が対象物Oを、矢印82で示すように横方向及び後方に変位させる。上記のように、「後」という用語は、対象物Oがコンベヤベルト12に対して後方に変位することを示す関連用語である。しかしながら、ベルト12が矢印22の方向に移動するため、対象物Oは実際には絶対的な意味において後方に移動しない。代わりに、下部ローラ26及び長手ローラ32間で滑りがないと仮定して、さらに上部ローラ28及び対象物O間で滑りがないと仮定して、下流方向の移動が上流方向に移動によって相殺されることで、対象物の長手方向の位置は実質的に変化しない。このようなケースでは、対象物Oは、コンベヤ10によって単に横方向に変位する。
【0016】
図4及び図5に関連して上述した横方向への進路変更を、図6A−6Dで示す。これらの図では、コンベヤベルト12が矢印22で示すように上方から下方に移動する。アウトフィードコンベヤ84が、コンベヤベルト12の一方の側に位置している。ある実施例では、アウトフィードコンベヤ84が、コンベヤベルト12が移動する以外の方向に進路変更した対象物を運ぶよう構成されるように、それ自身の従動コンベヤベルトを具えている。他の実施例では、アウトフィードコンベヤ84が、非従動コンベヤ、例えば、対象物が例えば重力の下で沿うように移動し得る複数の自由に回転するホイールを具えている。何であれ、アウトフィードコンベヤ84は、コンベヤベルト12によって進路変更された対象物を受け取るよう構成されている。
【0017】
図6Aに示すように、対象物Oは、矢印86によって示される方向にコンベヤベルト12に沿って移動し進路変更領域88に近づく。図6Bを参照すると、対象物Oが進路変更領域88に入ると、対象物が上流ローラ28に作用される。ある実施例では、上部ローラ28が、進路変更領域のみでベルトの下部ローラ26に接触する駆動機構(図示せず)によって進路変更領域88で動作する。このようなケースでは、下部ローラ26、及び上部ローラ28が、進路変更領域88に入ると回転を開始する。図6Bに示すように、上部ローラ28の回転により、対象物Oが矢印90で示すような横方向且つ後方に変位する。上述のように、対象物Oのベルト12に対する後方移動は、ベルトの運動による対象物の前方移動と実質的に等しい。このようなケースでは、対象物Oは、絶対的な意味において前後に顕著に移動しない。したがって、図6Cに示すように、対象物Oはコンベヤ84に向けて主に横方向に移動する。換言すれば、対象物Oは、約90度の進路変更角度でコンベヤベルト12から進路変更する。特に、このような進路変更角度は、一つのローラを具えているが積層構造ではない他のコンベヤベルトが実現可能な進路変更角度よりも実質的に大きい。図6Dを続けて参照すると、コンベヤベルト12から完全に進路変更した対象物Oを示しており、対象物が矢印92で示す方向にコンベヤ84によって運ばれる。
【0018】
上述のような約90度の進路変更動作は、1度乃至89度までの間(図2参照)で選択されるいかなる角度θでも起こる。このため、(以下で説明するように)滑り及びギヤ効果がないと仮定すると、対象物は、選択された上部ローラ28の角度に拘わらず、約90度の角度でコンベヤベルト12から進路変更する。しかしながら、選択された角度は、対象物が進路変更するスピードに影響を及ぼす。特に、角度θが大きくなると対象物が速くそれる。特に、上部ローラ28がベルトの長手方向に対して45度に位置する場合、滑り及びギヤ効果がないと仮定すると、対象物がベルトの移動スピードにほぼ等しいスピードでベルトから逸れる。
【0019】
図7は、運ばれる対象物の位置を制御するよう使用し得るコンベヤ100の実施例を示す。図7に示すように、コンベヤ100は、コンベヤベルト102及びベルトと相互に作用し得る駆動機構104を具えている。図7に示す実施例では、コンベヤベルト102は、ベルトを形成するよう結合されている複数のコンベヤベルトモジュール106を具えている。モジュール106は、ベルト102の幅に及ぶ横列108が並んでおり、矢印112で示すベルトの移動方向に一致するベルトの長手方向に沿って延びる縦列110が並んでいる。例として、モジュール106が、ベルト102の長手方向に沿って隣接するモジュールに、横軸114によって回動可能に結合されている。図1に示すモジュール16と同じように、モジュール106は、モジュールの内部空間120の中で垂直方向に積み重なって配置された第1又は下部ローラ116及び第2又は上部ローラ118を具えたローラセットを有している。
【0020】
駆動機構104を使用して、コンベヤベルトモジュール106の下部及び上部ローラ116、118を駆動させる。図7に示すように、駆動機構104は、下部ローラ116を回転するよう使用される摩擦板を具えている。少なくともいくつかの実施例では、摩擦板が、板と下部ローラ116との間の滑りを減らす高摩擦の上面を有している。
【0021】
図8及び図9は、コンベヤベルトモジュール106の一実施例を示す。モジュール106は、図2及び図3に示すモジュール16と色々な意味で同様である。このため、図8及び図9に示すように、モジュール106は、前端部124、後端部126、及び対向する側面部128を有する本体122を具えている。さらに、本体122は、上面130及び下面132を有している。さらに、空間的な専門用語を使用して、図7に示すモジュール106の方向を反映させるが絶対的なことを意図するものではない。
【0022】
図8に最も明りょうに示すように、コンベヤベルトモジュール106は、さらに、本体122から延びる結合部を有している。図8及び図9の実施例では、モジュール106が、本体122の前端部124から延びる1つの結合部134と、隙間135によって隔てられ本体の後端部126から延びる2つの結合部136とを具えている。図3に最も明りょうに示すように、各結合部134、136は、丸い外面138及び図7に示すシャフト114といった横軸を受容するよう構成された横方向の開口部140を有している。横軸の直径が開口部140よりも小さい場合、モジュール106はシャフトに対して回動可能に回転するが、その逆も同様である。
【0023】
モジュールの本体122は、さらに、図7で最初に確認される内部空間120を規定する。図8に示すように、内部空間120は、ある実施例では、上部又は下部から視た場合に、対向する側壁142及び対向する側壁144によって規定される略矩形の断面を具えている。さらに図8に示すように、モジュール106の側壁142は、モジュール本体122の側面128に対して略平行であり、これにより、モジュールの長手軸に対して略平行である。
【0024】
図8及び図9から明らかなように、下部及び上部ローラ116、118は、モジュール本体122によって規定される内部空間120の中に少なくとも部分的に含まれている。図9に示すように、ローラ116、118の外面146が、第1の方向への一方のローラの回転により他方のローラが逆回転するように、互いに接触する。下部ローラ116の一部が下面132の下方に延びており、上部ローラ118の一部が本体122の上面130の上方に延びている。このような構成では、図7を参照して説明する駆動機構が下部ローラ116に接触し得るため、ローラが回転し、モジュール116を使用するコンベヤベルトによって支持されている対象物を上部ローラ118によって動かすことが可能である。
【0025】
各ローラ116、118は、ローラに骨格を提供する高分子又は金属材料から成るローラ本体148、及びローラ本体の外面の周りに設けられ外面146を形成する外側層150を具えている。ある実施例では、各ローラ116、118の外側層150が、それが接触する機構及び/又は対象物との滑りを減らす高摩擦材料から成っている。
【0026】
図8及び図9の双方で示すように、各ローラ116、118が、内部空間120の中でモジュール本体122によって支持されているローラシャフト152に取り付けられている。ある実施例では、シャフト152が本体122に形成された開口部(図示せず)によって支持されている。他の実施例では、シャフト152が、内部空間120の中に設けられたブラケット(図示せず)によって支持されている。何であれ、シャフト152は、それらに関連するローラ116、118が互いに密着して位置し、一方のローラ(例えば、下部ローラ)の回転により他方のローラ(例えば、上部ローラ)が確実に逆回転するよう支持されている。さらに、図8及び図9の双方に示すように、シャフト152は、モジュール106の長手軸及びシャフトを使用するコンベヤベルトに対して略垂直になるよう向いている。
【0027】
図10及び図11は、コンベヤ100上の対象物Oの変位を示す。図11に示すように、コンベヤベルト102は、矢印112の方向に駆動機構104に沿って移動する。図10に示すように、下部ローラ116と駆動機構104との間の接触により、下部ローラが矢印154で示す下流方向に回転する。下部ローラ116の回転により、上部ローラ118が矢印156で示す反対の上流方向に回転する。図10及び図11の双方で示すように、上部ローラ118の回転が、ベルト102に対して後方に矢印158で示すように対象物Oを変位させる。下部ローラ116と駆動機構114との間の滑りを仮定せず、さらに、上部ローラ118と対象物Oとの間の滑りを仮定しない場合、対象物の絶対位置は、その上流方向の運動によるその下流方向の運動の相殺により、実質的に変化しない。このようなケースでは、対象物Oが、絶対的な意味で所定に位置に保持される。このような機能とともに、ベルト102によって提供される対象物の輸送を、駆動機構104を対象物が停止する位置でベルトの下部ローラ116に係合させることによって、選択的に止めることができる。
【0028】
図12A乃至図12Cは、コンベヤベルトに対する対象物の動きを止めるよう使用し得るコンベヤベルト172を有するコンベヤ170の第3の実施例を概略的に示す。これにより、対象物が接触する物理的な止め具を使用せずに、対象物をベルト172の長さ方向に沿って所望の位置に選択的に止めることができる。図12A乃至図12Cに示すように、コンベヤベルト172は、複数の比較的大きなローラ174、及び第1又は下部ローラ176及び第2又は上部ローラ178を有する、複数の比較的小さな垂直方向に積み重なったローラを具えている。少なくともいくつかの実施例では、各ローラが上記と同じようなコンベヤベルトモジュールに設けられている。何であれ、大きなローラ174が、ベルト172の上面及び下面180及び182を超えて延びており、下部ローラ176がベルトの下面の下方に延びており、上部ローラ178がベルトの上面の上方に延びている。
【0029】
図12Aに示すように、コンベヤベルト172が、矢印184で示す方向に移動する。大きなローラ174及び下部ローラ176の例えば摩擦板といった駆動機構186との接触により、これらのローラが矢印188及び200で示す下流方向にそれぞれ回転する。下部ローラ176の回転により、矢印202で示す上流方向に上部ローラ178が回転する。
【0030】
さらに、図12Aを参照すると、対象物Oが、矢印204で示す方向に大きなローラ174によってベルト172に沿って前方に駆動される。図12Bを参照すると、対象物Oが、止め領域206に向けてベルト176に沿って下流方向に変位する。図12Cで示すように、対象物Oが止め領域206に達すると、対象物が大きなローラ174及び上部ローラ178の双方によって動く。このため、対象物Oは、大きなローラ176によって下流方向に、上部ローラ178によって上流方向に同時に押される。最終的には、対象物Oが、下流方向に駆動する力が上流方向に駆動する力に等しくなる平衡状態に達し、駆動機構186がローラ174及び176に係合する限り、ベルト172に沿った対象物の運動が停止する。
【0031】
図13及び図14は、上述のベルト10又はベルト100といった、コンベヤベルトで使用し得る第1又は上部ローラ210及び第2又は下部ローラ212の代替的な実施例を示す。図14に示すように、上部ローラ212は、異なる直径を有する少なくとも2つの部分を具えている。図14の実施例では、上部ローラ212が、2つの第2又は外側部分216間に配置されている第1又は内側部分214を有している。内側部分214は、外側部分216の直径よりも小さい小径を有している。したがって、内側部分214の高摩擦の外面218が、外側部分216の外面220よりもローラの回転軸222に近接して位置している。ローラ212が周りを回転し得るローラシャフトを受容するよう構成された横方向の開口部224が、回転軸222と一致している。以下で説明するように、内側部分214が小さくなっている程度は、所望のギヤ効果の程度に依存する。しかしながら、内側部分214は、図14に示すように、下部ローラ210を受容するのに少なくとも十分幅が広い。
【0032】
下部ローラ210は、それ自身の高摩擦外面226、回転軸228、及び横方向の開口部230を有している。下部ローラ210の直径は、上部ローラの内側部分214の直径よりも大きい。ある実施例では、下部ローラ210は、上部ローラの外側部分216の直径とほぼ等しい直径を有している。
【0033】
使用中に、下部ローラ210の外面226は、前述のようにローラ210、212が垂直方向の自然の向きに積み重なった状態で、上部ローラの内側部分214の外面218にしっかりと接触するよう位置する。例として、モジュール16又はモジュール116といったコンベヤベルトモジュールを用いてこのような方向を確立し得る。図13に示すように、下部ローラ210の回転により、上部ローラ212が回転する。下部ローラ210の直径が上部ローラの内側部分214の直径よりも大きく、内側部分の直径が外側部分216の直径よりも小さい場合、ギヤ効果により上部ローラの外側部分の外面220が下部ローラの外面226よりも速いスピード(接線速度)で動き、ベルトの移動スピードよりも速い速度で対象物を変位させ得る。
【0034】
様々な適用例で上述のギヤ効果を使用し得る。コンベヤベルトが図1のコンベヤベルト10と同じような方法で向けられる適用例では、ギヤ効果を使用して、さらに進路変更角度を増加し得る。例えば、滑りが90を下回る角度に進路変更角度を減らす場合、ギヤ効果を使用して滑りを相殺し、正確に90度の進路変更を提供し得る。ギヤ効果の存在量に依存して、対象物を90度よりも大きな角度で進路変更させることさえも可能であり、このようなケースでは対象物がベルトの移動の方向と逆の成分を有する方向に進路変更する。コンベヤベルトが図7のコンベヤベルト100と同じような方法で向く適用例では、ベルトのローラがベルトの方向と略垂直な回転軸を有しており、ギヤ効果を使用して、コンベヤベルトに対してだけではなく絶対的な意味で下流方向に選択した対象物を変位させ得る。このため、例えば対象物をコンベヤベルトが移動するのと逆方向に移動させて、対象物を所定の位置に配置させ得る。必要に応じて、ローラを循環的な方法で選択的に動作させて、対象物をコンベヤの所定の位置から上流方向に移動させることができ、対象物を所定の場所に戻すことができ、再び対象物を上流方向に移動させることなども可能である。内側部分214の直径の程度が、わずかに、例えば外側部分216の直径よりも数パーセント小さい状況では、ベルトの移動により下流方向に変位するよりも対象物を上流方向にわずかに大きい程度に変位させ得る。このような正味の上流方向への変位は、上部ローラ212に対する対象物の滑りを相殺するのに十分であり、対象物が、コンベヤの長さ方向に沿った特定の位置に確実に保持される。当業者によって明らかなように、上述のギヤ効果の多くの他の適用例が存在する。
【0035】
特に、図13及び図14に図示され上述されているのは、単なる具体例である。このため、直径の多くの様々な組み合わせを、所望の結果に応じて、上部ローラの内側部分、上部ローラの外側部分、及び下部ローラに選択してもよい。さらに、上部ローラの小径部分を2つの「外側部分」の間の「内側部分」として説明したが、上部ローラは、1つの比較的大径の部分及び1つの比較的小径の部分のみを必要とし、これによってギヤ効果が可能となる。さらに、2つの異なる直径部分を具えているとして上部ローラを上述したが、必要に応じて、下部ローラが2つの異なる直径部分を有するように、上部ローラ及び下部ローラの構成を逆にすることが可能である。実際には、いくつかの実施例では、上部ローラ及び下部ローラが、様々な直径を有する部分を具え得る。さらに、ローラの特定の構成は所望の結果に依存する。
【0036】
さらに、図15は、上述のようなベルト10又はベルト100といったコンベヤベルトで使用し得る第1又は下部ローラ240及び第2又は上部ローラ242の代替的な実施例を示す。図15に示すように、ローラ240、242が、骨格を与えるローラ本体244及びローラ本体の外面248の周りに設けられるローラ層246を具えている。各ローラ本体244は、周囲をローラが回転し得るローラシャフトを受容するよう構成された横方向の開口部250を規定する。例として、ローラ本体244が、高分子又は金属材料から成っている。
【0037】
さらに、図15に示すように、各ローラ242、240の外側層246が、他のローラの対応する歯部に噛合するよう構成された複数の歯部254を有する外面252を具えている。このような構成により、ローラ242、240間の滑りを実質的に除去し得る。少なくともいくつかの実施例では、外側層246が、弾性材料又は少なくとも柔軟な材料から成っている。このようなケースでは、下部ローラ240及び駆動機構(例えば、長手方向のローラ又は摩擦板)間の滑りを、ローラを使用するベルトによって運ばれる上部ローラ242及び対象物間で滑るように防止し得る。
【0038】
具体例として特定の実施例を上記の説明及び図面で詳細に説明したが、本開示の範囲から逸脱せずにそれらのバリエーション及び変更を行い得ることを、当業者は理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のローラセットであって、各ローラセットが第1のローラ及び第2のローラを有するローラセットを具えるコンベヤベルトにおいて、
前記第1及び第2のローラが、一方の前記ローラの第1の角度方向の駆動により反対方向の第2の角度方向に他方の前記ローラが回転するように、互いに接触するよう配置されていることを特徴とするコンベヤベルト。
【請求項2】
前記第1及び第2のローラが垂直方向に積み重なって配置されており、前記第1のローラが下部ローラであり、前記第2のローラが前記下部ローラの上方に配置された上部ローラであることを特徴とする請求項1に記載のコンベヤベルト。
【請求項3】
前記第1及び第2のローラが、前記コンベヤベルトの長手方向に対して略垂直な回転軸を有していることを特徴とする請求項1に記載のコンベヤベルト。
【請求項4】
前記第1及び第2のローラが、前記コンベヤベルトの長手方向に対して角度を成すよう配置された回転軸を有していることを特徴とする請求項1に記載のコンベヤベルト。
【請求項5】
さらに、前記ローラセットを支持するコンベヤベルトモジュールを具えていることを特徴とする請求項1に記載のコンベヤベルト。
【請求項6】
前記コンベヤベルトモジュールが、前記ローラセットが中に配置された内部空間を有していることを特徴とする請求項5に記載のコンベヤベルト。
【請求項7】
前記コンベヤベルトモジュールが、上面及び下面を具えており、
前記第1のローラの一部が、前記下面を超えて延びており、
前記第2のローラの一部が、前記上面を超えて延びていることを特徴とする請求項5に記載のコンベヤベルト。
【請求項8】
前記第1及び第2のローラの少なくともいくつかが、一方のローラの外面が他方のローラの外面よりも速いスピードで反対方向の第2の角度方向に動くように、ギヤ効果を形成するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載のコンベヤベルト。
【請求項9】
コンベヤベルトであって、
前記コンベヤベルトの幅にわたって列を成し、前記ベルトの長手方向に沿って列を成して配置され、前記コンベヤベルトの少なくとも一部を形成する複数のコンベヤベルトモジュールを具えており、
各モジュールが、上面、下面、及び前記上面から前記下面に延びる内部開口を有する本体を具えており、
さらに、各モジュールが、垂直方向に積み重なって前記開口の中に配置された上部ローラ及び下部ローラを有するローラセットを具え、前記上部ローラが前記下部ローラの上方に位置する状態で、前記上部及び下部ローラが互いに接触するよう配置されており、
各上部ローラの一部が、関連するモジュール本体の前記上面を超えて延びており、各下部ローラの一部が、関連するモジュール本体の前記下面を超えて延びており、
前記下部ローラを、前記コンベヤベルトの下方に配置された駆動機構との接触を介して前記コンベヤベルトの作動中に駆動させることができ、
前記下部ローラ及び前記駆動機構間の接触により、前記下部ローラが下流方向に回転し、前記下部ローラ及び前記上部ローラ間の接触により、前記上部ローラが上流方向に回転することを特徴とするコンベヤベルト。
【請求項10】
各ローラが、コンベヤベルトモジュールの中のローラシャフトで支持されていることを特徴とする請求項9に記載のコンベヤベルト。
【請求項11】
各ローラシャフトが、前記ローラが前記コンベヤベルトの前記長手方向に一致する方向に回転するように、前記コンベヤベルトの長手方向に対して略垂直であることを特徴とする請求項10に記載のコンベヤベルト。
【請求項12】
各ローラシャフトが、前記コンベヤベルトの長手方向に対して角度を成すよう配置されていることを特徴とする請求項10に記載のコンベヤベルト。
【請求項13】
前記角度が、前記長手方向に対して約1度乃至約89度の範囲にあることを特徴とする請求項12に記載のコンベヤベルト。
【請求項14】
各ローラシャフトが、約90度の進路変更角度で前記コンベヤベルトから対象物を進路変更させるような角度を成すよう配置されていることを特徴とする請求項12に記載のコンベヤベルト。
【請求項15】
前記上部ローラの少なくともいくつかが、下部ローラに接触する第1の部分と、前記コンベヤベルトによって運ばれる対象物に接触するよう構成された第2の部分と、を具えており、
前記第1の部分が、前記第2の部分よりも小さな直径を有していることを特徴とする請求項9に記載のコンベヤベルト。
【請求項16】
前記第1の部分が、前記上部ローラの2つの外側部分間に位置する内側部分であることを特徴とする請求項15に記載のコンベヤベルト。
【請求項17】
前記上部及び下部ローラが、互いに噛合してローラの滑りを減らすよう構成された歯部を有していることを特徴とする請求項9に記載のコンベヤベルト。
【請求項18】
前記歯部が、曲げ易い材料で構成されていることを特徴とする請求項17に記載のコンベヤベルト。
【請求項19】
コンベヤベルトから対象物を進路変更させるための方法であって、当該方法が:
前記ベルトの上面を超えて延びる前記ベルトに設けられた複数の上部ローラを用いて、前記コンベヤベルトから対象物を横方向に変位させるステップを具えており、
前記上部ローラが、前記ベルトの中で前記上部ローラの下方に配置された下部ローラによって駆動され、
前記下部ローラが、前記ベルトの下面を超えて延びており、前記ベルトの下方に配置された駆動機構によって駆動されることを特徴とする方法。
【請求項20】
コンベヤベルト上の対象物を変位させるための方法であって、当該方法が:
前記対象物が前記ベルトによって下流方向に運ばれるスピードを少なくとも減らすように、前記コンベヤベルトに対して上流方向に対象物を変位させるステップを具えており、
当該対象物を変位させるステップが、前記ベルトの上面を超えて延びる複数の上部ローラを用いて、前記上流方向に前記対象物を駆動させるステップを具えており、
前記上部ローラが、前記ベルトの中で前記上部ローラの下方に配置された下部ローラによって駆動され、前記下部ローラが、前記ベルトの下面を超えて延びており、前記ベルトの下方に配置された駆動機構によって駆動されることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2010−523444(P2010−523444A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503108(P2010−503108)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際出願番号】PCT/US2008/056017
【国際公開番号】WO2008/127805
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(508181663)レイトラム,エル.エル.シー. (43)
【Fターム(参考)】