説明

対象物を支持構造に固定するためのロック装置及び同装置を有するスキッド

本発明は、解放位置とロック位置との間で移動可能な固定部材72と、カウンター部材28とを有する、対象物12、特に車両ボディを支持構造14、特にスキッド、に取外し可能に固定する装置に関する。対象物12を、それに対応づけられた保持構成部分34を介してロック位置内の固定部材72とカウンター部材28との間でロック可能である。固定部材72が、ロック位置において、カウンター部材28上に近づき、かつそれから離れるように移動可能である。固定部材72が、ロック位置において、付勢装置136によって付勢を受けながら対象物12の保持構成部分34に対してカウンター部材28の方向に押圧可能である。本発明は、さらに、上記の固定装置を有しているスキッドに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物、特に車両ボディ、を支持構造、特にスキッド、に取り外し可能に固定するための装置に関するものであって、
a)解放位置とロック位置との間で移動可能な、固定部材、
b)カウンター部材、を有し、
c)対象物が、それに対応づけられた保持構成部分を介して、ロック位置内の固定部材とカウンター部材との間でロック可能である。
【0002】
さらに、本発明は、対象物、特に車両ボディ、を移送するためのスキッドに関する。
【背景技術】
【0003】
この種のスキッドは、特に自動車工業において、移送設備の内部で車両ボディを加工ステーション又は処理ステーションの間で、そして部分的には個々の加工ステーション又は処理ステーション内でも、移送するために使用される。通常、スキッドの支持ブレードが、例えばチェーンコンベア、ベルトコンベア又はローラコンベアのような、移送手段と協働する。
【0004】
スキッドに車両ボディをロックすることは、特に、スキッド上で移送される車両ボディが移送の間、水平外にある方向にも移送又は移動され、あるいは水平に対して傾斜した位置を占める可能性がある場合に、必要である。特に車両ボディの逆立ち走行も、それに数えられる。
【0005】
そのために、処理すべき車両ボディは、冒頭で挙げた種類の固定装置によって、スキッドに固定されて、車両ボディの処理が終了した場合に、再びそのスキッドから取り外される。
【0006】
冒頭で挙げた種類の固定装置は、例えば特許文献1から知られている。この固定装置は、手動又は機械的に案内することができるねじまわしを用いて、そのロック位置と解放位置の間で移動される。そこでは、固定後も、車両ボディと固定部材との間にわずかな遊びが残る。
【0007】
例えば車両ボディを電気泳動浸漬塗装設備内で塗料によって塗装するために、車両ボディを接触させなければならない場合に、通常、車両ボディに電圧を供給するために、固定装置が同時に接触装置として用いられる。しかし、コンポーネント間の上述した遊びによって、望ましくない焼き減りがもたらされることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国実用新案公報第202006011130号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の課題は、上述した考えを考慮する、冒頭で挙げた種類の固定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、冒頭で挙げた種類の固定装置において、
d)固定部材が、ロック位置においてカウンター部材へ、かつそこから離れるように移動可能であり、
e)固定部材がロック位置において、付勢装置によって付勢されて、カウンター部材の方向へ対象物の保持構成部分に対して押圧可能である、ことによって、解決される。
【0011】
従って本発明によれば、固定部材がそのロック位置をとった場合でも、カウンター部材に近づく方向及びそれから離れる方向への固定部材の移動可能性は維持される。車両ボディの確実な固定は、付勢装置によって保証され、その付勢装置によって固定部材が車両ボディの保持構成部分に圧接して保持される。
【0012】
存在する製造許容誤差は、このようにして補償される。ノーマルな状態においては、固定部材と車両ボディとの間に遊び空間は残らず、それによって、場合によっては必要なコンポーネントの電気的接触が常に保証されている。
【0013】
ロック位置において固定部材に作用する付勢が調節可能であると、効果的である。
【0014】
固定装置においても、固定すべき種々の車両ボディにおいても、製造許容誤差があることに基づいて、固定部材が次のように、すなわち解放位置からロック位置へ移動する場合に、カウンター部材へ近づく方向に移動され、ロック位置と解放位置の間で移動する場合に、カウンター部材から離れる方向に移動されるように案内されていると、効果的であり得る。
【0015】
固定部材の必要な移動距離は、車両ボディから車両ボディへ、異なる長さであり得る。固定部材を付勢することによって、ロックプロセスが自動的に行なわれる。というのは、車両ボディへの個別の適合を行なう必要がないからである。固定部材は、各ロックプロセスにおいて、容易に「目標を超えて」カウンター部材へ近づくように移動される。しかし、固定部材と車両ボディとの間に接触が存在するとすぐに、付勢と結びついて残留している移動可能性によって、固定部材のそれ以上の移動が阻止される。
【0016】
それに対してカウンター部材に対する固定部材の付勢なしでは、固定部材はそれぞれできる限り正確に、車両ボディの保持構成部分が固定部材とカウンター部材との間に挟持されるまでの間、カウンター部材に近づく方向に移動されなければならなくなる。
【0017】
このように、付勢なしでは、ロックプロセスが各車両ボディに個別に適合されなければならないことによって、車両ボディの移送は、それをスキッドに取り付け、あるいはそれから取り外す場合に中断されなければならず、従って固定装置を有するスキッドは静止してしまう。しかしそれは、連続移送に比較して、処理設備又は加工設備の可能な移送量を低下させる。さらに、様々な車両ボディに手動で適合させることは、自動化されたプロセスに比較してかなり時間がかかる。
【0018】
固定部材が軸の端部に偏心して支持されていると、効果的である。この場合においては、軸の回動は、軸の軸線に対して垂直の固定部材の移動をもたらす。
【0019】
軸が径方向外側に固定部材を支持し、その固定部材が付勢装置のばね部材と協働する場合に、固定部材の付勢を準備するための良好な解決であることが、明らかにされる。
【0020】
好ましくは、ばね部材は、ばね薄板である。
【0021】
ばね部材が少なくとも1つのガイド部分と押圧部分とを有しているので、固定部材が、ガイド部分を介して押圧部分へ移動することによって案内可能であって、固定部材がロック位置をとった場合に、固定部材が押圧部分に添接すると、特に効果的である。このようにして付勢を連続して構築することができる。
【0022】
軸の固定部材は、それがさらに解放装置のガイド部材と協働する場合に、付加的に利用することができる。
【0023】
ロック装置のばね薄板に倣って、ガイド部材がガイドプレートであると、効果的である。これは、弾性的特性を持つ必要がない。
【0024】
ガイド部材が少なくとも1つのガイド部分と保持部分とを有しているので、操作部材がガイド部分を介して保持部分へ移動することによって案内可能であって、固定部材が開放位置をとった場合に、固定部材がその保持部分に添接すると、効果的である。この構造においては、軸の長手方向に案内される固定部材の運動を強制することができる。
【0025】
軸の自動化された回動を可能にするために、軸がその第2の端部に連動ユニットを支持しており、その連動ユニットによって軸が機械的に切替え部材を用いて回動可能であると、効果的である。好ましくは切替え部材は、スキッドの走行路に沿って設けられた切替えボルトと協働する、回転スターである。
【0026】
上で挙げた課題は、冒頭で挙げた種類のスキッドにおいて、それが請求項1から11のいずれか1項に記載の固定装置を有していることによって、解決される。
【0027】
利点は、固定部材について上で説明した利点に相当する。
【0028】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】固定装置を第1の視線方向から示す斜視図である。
【図2】固定装置を第2の視線方向から示す斜視図である。
【図3】固定装置の上面図である。
【図4】固定装置を、図3の切断線IV−IVに沿って示す断面図である。
【図5】付勢装置のばね薄板の端部を拡大した縮尺で示す斜視図である。
【図6】解放装置のガイドプレートの端部を示す斜視図である。
【図7】固定装置を、図3の切断線VII−VIIに沿って示す断面図である。
【図8】固定装置を、図3の切断線VIII−VIIIに沿って示す断面図である。
【図9】固定装置を第3の視線方向から示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1には、固定装置が全体を符号10で示されており、それを用いて、図には図式的にのみ、かつ部分的にのみ示唆される車両ボディ12は、スキッド14に取り外し可能に固定することができ、そのスキッドのフレーム部分16のみが、図1において認識される。車両ボディを移送するために利用されるようなスキッドは、知られており、従ってそれについての詳しい説明は、省くことができる。
【0031】
図1から4及び9に示す参照座標システムは、固定装置10と固定的に結びつくものであるので、同システムは、固定装置10と共に空間内で移動する。座標システムに関して、以下で使用される方向記載は、右が正のx方向、前が正のy方向、そして上が正のz方向を意味している。従って方向記載左、後ろ及び下は、それぞれ逆の方向を表す。
【0032】
固定装置10は、フランジプレート18を有しており、そのフランジプレートを用いて固定装置はスキッド14のフレーム部分16にねじ止めすることができ、然るべきねじは、図1には示されていない。
【0033】
フランジプレート18は、xz平面内に延びる2つの対向する側壁20a、20bとそれに対して垂直に、従ってyz平面内に延びる長手壁20cとを備えた、断面がU字状のハウジングプロフィール20を有している。ハウジングプロフィール20の開放した側は、フランジプレート18へ向って右を向いている。
【0034】
ハウジングプロフィール20は、第1の上の前側22に、第1のコンタクトプレート24を支持しており、そのコンタクトプレートは、xy平面内に延びている。コンタクトプレート24は、例えばハウジングプロフィール20と溶接することができる。
【0035】
第1のコンタクトプレート24の、ハウジングプロフィール20から離れた側に、この第1のコンタクトプレートに対して平行な第2のコンタクトプレート26が配置されており、それが第1のコンタクトプレートとねじ止めされている。第1と第2のコンタクトプレート24、26は、コンタクト部材28の部分である。車両ボディ12を、例えば電気泳動浸漬塗装設備内で塗料によってコーティングするために、このコンタクト部材を介して、車両ボディ12を電気的に接触させることができる。
【0036】
特に図4において認識されるように、コンタクト部材28は、さらに嵌め合い部分30を有しており、それが、外側に位置する第2のコンタクトプレート26の断面が円形の透孔32内へ溶接されている。嵌め合い部分30の、ハウジングプロフィール20から離れた上側における表面輪郭は、固定すべき車両ボディ12のカップリング薄板34の推移に対して相補的であって、そのカップリング薄板は、特に、円形の透孔36を有し、その透孔36の端縁に上方へ張り出す一周するカラー38が設けられており、そのカラー内へ嵌め合い部分30が、対応する突出部39をもって正確な嵌め合いで嵌入することができる。
【0037】
さらに、嵌め合い部分30は、断面が円形の透孔40を有しており、その長手軸42は、図4に示すように、車両ボディのカップリング薄板34が嵌め合い部分30に添接した場合に、その車両ボディの透孔36の長手軸に対して変位している。
【0038】
第1のカップリングプレート24は、嵌め合い部分30内の透孔40に対して同軸に透孔44を有しており、2つの透孔40、44は、同一の横断面も有している。
【0039】
ハウジングプロフィール20の、コンタクト部材28とは逆の第2の下方の前側46に、軸受プレート48が溶接されており、その軸受プレートはコンタクトプレート24及び26に対して平行に延びている。軸受プレート48は、左の外端縁においては、ハウジングプロフィール20の長手壁20cの外側面とほぼ一緒に終わっているが、その他においては右及び前と後ろへ向ってハウジングプロフィール20を越えて延びている。
【0040】
軸受プレート48は、ハウジングプロフィール20の側壁20a、20bの隣りの領域内に、それぞれ2つの互いに対して平行かつハウジングプロフィール20の側壁20a、20bに対して垂直に延びる長穴52a、52bないし54a、54bを有している。
【0041】
ハウジングプロフィール20の側壁20a、20bと長手壁20cは、軸受プレート48の断面が円環形状の透孔56を包囲しており、その透孔の直径は、図4と8において認識されるように、ハウジングプロフィール20の内径にほぼ相当する。
【0042】
固定装置10は、さらに、軸58を有しており、その軸はz方向に延びており、かつカップリング部材28の透孔40、44と軸受プレート48の透孔56を通って外側へ突出している。
【0043】
軸58は、四稜角の立体として形成された回転ブロック60を有しており、その回転ブロック自体は、ハウジングプロフィール20の内部に配置されている、保持部分62と駆動部分64を有しており、その駆動部分は軸受プレート48を通して外側へ突出している。回転ブロック60の長手端縁が、軸受プレート48の透孔56の内表面と接触している。軸58の回転ブロック60の実質的に方形の横断面によって、軸受プレート48内に軸58が、例えばコーティング媒体によって接着されることは、ほぼ回避することができる。
【0044】
回転ブロック60の保持部分62の自由な上方の端縁と、円形の断面を有する中央の軸部分66が結合されている。この軸部分は、回転ブロック60から離れた上方の端部において、軸58のカップリング部分68へ移行している。カップリング部分68は、ほぼ三角形の横断面を有する、三稜角の立体として形成されており(図7も参照)、その内法の外側輪郭は、中央の軸部分66のそれと一致する。軸58のカップリング部分68は、コンタクト部材28の透孔40、44を通って延びており、それらの透孔は、中央の軸部分66の直径に相当する直径を有している。
【0045】
軸58の回転ブロック60におけるように、軸58のカップリング部分68の三角形の横断面によって、それがコンタクト部材28の透孔40、44内に、例えばコーティング媒体によって接着されることは、ほぼ回避することができる。
【0046】
軸58は、そのカップリング部分68の上方の自由端部70に、本来の固定部材として、クランプ円錐72を支持しており、そのクランプ円錐は、軸58から長手方向に離れる方向に細くなっており、その最大の直径は、嵌め合い部分30の突出部39の直径と、それに伴って車両ボディ12内の透孔36の直径にも適合されているので、それは該当する透孔をほぼ正確な嵌め合いで通り抜けることができる。
【0047】
回転ブロック60、中央の軸部分66及び軸58のカップリング部分68は、互いに対して同軸に配置されており、かつ軸58の長手軸ないし回転軸74を定める。しかし、クランプ円錐72は軸58に次のように、すなわちその長手軸76が軸58の回転軸74に対して偏心し、かつ軸58の回転ブロック60の1つの長手面の方向に変位して配置されるように、取り付けられている。回転ブロック60のこの長手面は、参照符号78aを有しており、図4において右に認識され、そこにおいてx方向に右へ向ってフランジプレート18に向いている。軸58の回転ブロック60の他の3つの長手面は、クランプ円錐72の方向から下方へ向って考えて、長手面78aから始まって時計方向に参照符号78b、78c及び78dで示されている(例えば図8を参照)。
【0048】
軸58の回転ブロック60の保持部分62は、支援装置80と協働し、その支援装置によって軸58が不用意に捻れないように固定されている。そのために、支援装置80は2対のばねウェブ82ないし84を有しており、各対82、84のばねウェブは、軸58のz方向に互いに重なり合って配置されており、かつ対向する2つの側において、軸58の回転ブロック60の保持部分62に添接する。
【0049】
ばねウェブの対82、84は、軸受プレート48上の保持ブロック86に固定されて、ハウジングプロフィール20の開放した側を通ってこのハウジングプロフィール内へ突出している。
【0050】
軸58の回転ブロック60の駆動部分64は、その下方の自由端部に、軸58から径方向外側かつ軸の軸線74に対して垂直に延びる4つの連動舌片90a、90b、90c、90dを有する回転スター88を支持しており、それらの連動舌片は、軸58から離れる方向に対称に広がっている。連動舌片90aの、それ自体として示されない中心軸は、軸58の回転ブロック60の長手面78aに対して垂直に延びている。同様にそれ自体として示されない、連動舌片90b、90c及び90dの中心軸も、回転ブロック60の長手面78b、78cないし78dに対して同様に垂直に延びている。
【0051】
連動舌片90cは、位置検出舌片として形成されており、そのためにその外端縁に中央の切欠き92を有しており、かつその、軸58から離れる側に位置ブロック94を支持している。その位置は、それ自体知られたやり方で光学的又は機械的に検出することができ、それに基づいて軸58の回転位置とそれに伴ってクランプ円錐72の位置を導き出すことができる。
【0052】
回転スター88と軸受プレート48の間の領域内で、軸58の回転ブロック60の長手面78bは、固定ピン96の形式の固定部材を支持しており、その固定ピンは長手面78bに対して垂直に延びている。
【0053】
この固定ピン96は、ロック装置98及び解放装置100と協働し、それらは軸受プレート48の、ハウジングプロフィール20から離れた下側において、その長穴52ないし54内に保持されている。
【0054】
ロック装置98は、固定端部104とロック端部106とを備えたばね薄板102を有している。ばね薄板102は、固定端部104に2つの平行に延びる長穴108a、108bを有しており、そられは軸受プレート48の長穴52a、52bと相補的である。ばね薄板102は、その長穴108a、108bが軸受プレート48の長穴52a、52bとほぼぴったりと重なり合うように、配置されている。ばね薄板102と軸受プレート48の間に配置されたスペーサ片110を介して、ばね薄板102が、それ自体参照符号を持たないねじを用いて軸受プレート48と結合されている。
【0055】
ばね薄板102は、軸58の固定ブロック60の方向へ、固定ピン96がばね薄板102のロック端部106と接触することができる距離で延びている。
【0056】
ばね薄板102のロック端部106は、軸受プレート48に対して平行に延びる中央の押圧部分112と、2つのガイドコーナー部分114、116とを有しており、そのガイドコーナー部分は軸受プレート48へ近づくように上方へ向う方向に傾斜している。ばね薄板102のロック端部106は、図5に再度、拡大した縮尺で示されている。従ってガイドコーナー部分114、116は、後述するように、操作ピン96の移動方向に押圧部分112の側面を形成する。
【0057】
解放装置100は、堅固なガイドプレート118を有しており、そのガイドプレートは構造においてロック装置98のばね薄板102に相当する。ガイドプレートは、固定端部120と解放端部122を有している。ガイドプレート118の固定端部120に設けられた2つの互いに平行に延びる長穴124a、124bは、軸受プレート48の長穴54a、54bに対して相補的である。ガイドプレート118は、その長穴124a、124bが、軸受プレート48の長穴54a、54bにほぼぴったりと重なるように、配置されている。ガイドプレート118は、軸受プレート48と、それ自体参照符号を持たないねじを用いて結合されており、ガイドプレート118と軸受プレート48の間に、スペーサ片126が配置されている。
【0058】
ガイドプレート118は、軸58の回転ブロック60の方向に、操作ピン96がガイドプレート118の解放端部122と接触することができるような距離で延びている。
【0059】
ガイドプレート118の解放端部122は、軸受プレート48に対して平行に延びる中央の保持部分128と、2つのガイドコーナー部分130、132を有しており、そのガイドコーナー部分は軸受プレート48から離れる方向に下方へ向って傾斜している。ガイドプレート102の解放端部122は、図6に再度、拡大した縮尺で示されている。従ってガイドコーナー部分130、132は、操作ピン96の移動方向に従って押圧部分112の側面を形成する。
【0060】
上述した固定装置10は、以下のように機能する。
【0061】
スキッド14は、4つの位置に固定装置10を支持しており、スキッド14における車両ボディ12の固定プロセスと取外しプロセスは、1つの固定装置10のみに関して説明される。
【0062】
積載されていないスキッド12から始まって、軸58が第1の軸位置において回転位置をとり、その中で回転スター88の位置決め舌片90cがy方向に前方を向く。従って図に示す軸58の回転位置に比較して、軸はその第1の軸位置においては180°回動されている。
【0063】
軸58のこの第1の回転位置において、クランプ円錐78は解放位置をとる。この解放位置において、クランプ円錐はコンタクト部材28の嵌め合い部分30の突出部39と径方向に整合し、かつそれに対して同軸に配置されている。
【0064】
固定ピン96は、軸受プレート48と解放装置100のガイドプレート118の解放端部122との間に配置されており、その保持部分128上の中央に支持されている。解放装置100のスペーサ片126は、次のように、すなわち軸58がその第1の軸位置において、クランプ円錐72とコンタクト部材28の嵌め合い部分30との間に間隔が残るような、軸方向の位置をとるように、寸法設計されており、そのことが同様にクランプ円錐72の解放位置も定める。
【0065】
車両ボディ12がスキッド14上に載せられて、クランプ円錐72が車両ボディ12のカップリング薄板34内の透孔36を通して案内される。クランプ円錐72の円錐状の形成が、車両ボディ12の透孔36内へそれを導入することを容易にする。
【0066】
その後、車両ボディ12がカップリング薄板34によってコンタクト部材28の嵌め合い部分30上に支持され、図4において認識されるように、嵌め合い部分30の突出部39が、カップリング薄板34のカラー36によって包囲される。
【0067】
クランプ円錐72の解放位置において、クランプ円錐と車両ボディ12のカップリング薄板34のカラー38との間にも間隔が残っている。
【0068】
スキッド14が、まだ固定されていない車両ボディ12と共に、例えばローラコンベアのような、それ自体知られた移送装置を用いて移送方向134(図1から4及び9を参照)に並進運動で前へ移送される。この種の移送装置は、スキッドの走行路に沿って、予め定められた位置に、ここではそれとして示されていない切替えボルトを有しており、固定装置10の回転クロス88がその切替えボルトと協働することができる。
【0069】
回転クロス88は、スキッド14が移動する場合に、軸58の第1の軸位置において移送方向135に対して垂直となる、その連動舌片90aにおいて、この種のボルトに当接する。スキッド14がさらに前へ移動した場合に、それによって軸58がその第1の軸位置から第2の軸位置へ90°回動される。図において認識されるように、スキッド14の移送方向134は、例えばy方向に前方を向いているので、軸58はクランプ円錐72の方向から考えて、時計方向に回動される。
【0070】
軸58がさらに回動される場合には、支援装置80のばねウェブ82と84の拘束力が克服されなければならない。これらのばねウェブは、軸58の第1の軸位置において、回転ブロック60の長手面78dないし78bに添接しており、回転ブロック60の横断面が実質的に方形であることに基づいて、軸58がさらに回転する場合に、まず互いに離れるように彎曲され、それが軸58の回転運動にある程度の抵抗を提供する。軸58がその第2の軸位置をとった場合に、ばねウェブ82、84は回転ブロック60の長手面78cないし78aに添接し、それによって軸58はその第2の軸位置において、意図されない回動に対して安定化されている。
【0071】
支援装置80のばねウェブ82、84の拘束力は、どの方向であろうと、軸58が90°回動する毎に、克服されなければならない。しかしそれについては、以下でこれ以上詳しく触れない。
【0072】
軸58が第1の軸位置から第2の軸位置へ回動する場合に、操作ピン96は、ガイドプレート118の保持部分128からガイドコーナー部分132を介して下方へ走行するので、クランプ円錐72はもはやその解放位置に保持されない。操作ピン96は、軸58の第2の軸位置において、右、従ってx方向を向いている。
【0073】
軸58の第2の軸位置において、クランプ円錐72は第1の中間位置をとり、その中でその長手軸76は移送方向134において、ないしはy方向に、軸の軸線74に対して変位されている。この中間位置において、クランプ円錐は、もはやコンタクト部材28の嵌め合い部分30の突出部39と整合してはおらず、その突出部及び車両ボディ12のカップリング薄板34のカラー38を越えて側方へ張り出している。
【0074】
車両ボディ12は、クランプ円錐72によってその第1の中間位置内においてすでに軸の軸線74の方向に固定装置10から外れることに対して固定はされている。しかし、軸58は、その長手軸74の方向になおある程度の移動の遊び空間を有しており、それによって車両ボディ12は場合によっては嵌め合い部分30から少し外れることがあり、それは特に、車両ボディ12とコンタクト部材28の間に望ましくない比較的悪い接触をもたらす。大まかに言って、車両ボディ12は固定装置10においてぐらつく。
【0075】
車両ボディ12を最終的に固定装置10に固定するために、クランプ円錐72がロック位置へ移動される。そのために、第2の切替えボルトがスキッド14の走行路内に設けられており、それによって、回転クロス88とそれに伴って軸58は、スキッド14が移送方向134にさらに移動する場合に、その第2の軸位置から第3の軸位置へさらに90°時計方向に回動され、その第3の軸位置においてクランプ円錐72がそのロック位置をとる。
【0076】
ロック装置98のスペーサ片110は次のように、すなわち軸58がこのようにその第2の軸位置から第3の軸位置へ回動する場合に、操作ピン96がまず、ばね薄板102のガイドコーナー部分114の、軸受プレート48から離れた下方の面に対して当接するように、寸法設計されている。そのために、特に図3において良好に認識されるように、ロック装置98のスペーサ片110は、解放装置100のスペーサ片126よりも薄い。
【0077】
軸58がさらに回動する場合に、軸58がその第3の軸位置を占めた場合に、操作ピンが最終的に軸受プレート48から離れた側においてばね薄板102の押圧部分112に添接するまで、その操作ピン96はばね薄板102のばね力に抗して作動しなければならない。操作ピン96は、軸58の第3の軸位置において後方を、従ってy方向ないし移送方向134とは逆の方向を、向いている。これが、図に示される位置である。
【0078】
ばね薄板102は、今や、少し上方へ屈曲されており、かつ、軸58とそれに伴ってクランプ円錐72も車両ボディ12から離れる方向に付勢されるように、操作ピン96を押圧する。従って軸58は、ばね薄板102によってz方向とは逆の方向に下方へ向って押圧される。
【0079】
表現を変えると、ばね薄板102はスペーサ片110と組み合わされて付勢装置136を形成し、その付勢装置がクランプ円錐72をロック位置において付勢しながら、車両ボディ12のカップリング薄板34に対して、コンタクト部材28の方向へ押圧する。従って嵌め合い部分30を有するコンタクト部材28は、クランプ円錐72のためのカウンター部材として用いられる。車両ボディ12の保持構成部分として用いられるカップリング薄板34は、クランプ円錐72とコンタクト部材28の間でロックされている。
【0080】
ばね薄板102に基づいて、軸58とそれに伴ってクランプ円錐72がz方向に移動することは、まだ常に可能である、しかし、そのためには、ばね薄板102のばね力が克服されなければならない。上方へ向うz方向の移動遊び空間は、スペーサ片110が所定の距離移動した後に下から軸受プレート48に対して当接するので、上方へ向う軸58のそれ以上の運動が中断されることによって、制限されている。スペーサ片110は、コンタクト部材28に対する車両ボディ12の必要な接触が失われることなしに、逆立ち走行も可能であるように、寸法設計されている。
【0081】
ばね薄板102の有効なばね力とそれに伴って付勢の強さは、ロック装置98のスペーサ片110を適切に位置決めすることによって調節することができる。スペーサ片110が軸58に近づく方向に位置決めされるほど、ばね薄板102の有効なばね力がそれだけ強くなる。
【0082】
車両ボディ12を再びスキッド14から取り外そうとする場合に、スキッド14が再び、スキッド14の走行路内に相前後して設けられている2つの切替えボルトを介して案内され、それらの切替えボルトが回転クロス88をクランプ円錐72の方向から見て時計方向にそれぞれ90°回動させる。
【0083】
操作ピン96は、まず、ばね薄板102の押圧部分112からその、図5において右に認識されるガイドコーナー部分116へ移動されて、それを越えて案内される。コンタクト部材28に対するクランプ円錐72の付勢が無効にされて、スキッド14における車両ボディ12の固定が、緩められる。
【0084】
軸は、90°の回動を行なった後に、第4の軸位置をとり、クランプ円錐72が第2の中間位置をとって、その中で操作ピン965は左を向いている。
【0085】
しかし、クランプ円錐72はまだ車両ボディ12のカップリング薄板34のカラー38を越えて張り出して、それを固定しているので、車両ボディ12はまだ固定装置10から、そしてそれに伴ってスキッド14から分離することはできない。
【0086】
そのために、まずクランプ円錐72がその解放位置へ移動されなければならず、そのために軸58はもう一度、クランプ円錐72の方向から考えて、時計方向に回動される。
【0087】
操作ピン96はまず、ガイドプレート118のガイドコーナー部分130の、軸受プレート48へ向いた面に対して当接し、軸58がさらに回転する場合に、ガイドプレート118の解放端部122の表面推移に従わなければならない。軸58は、操作ピン96が軸受プレート48とガイドプレート118の間でその保持部分128上に位置するまで、z方向に上へ向って移動される。90°の回転を行なった後に、軸58は再びその上述した第1の軸位置をとり、クランプ円錐72がその解放位置をとる。
【0088】
今や、車両ボディ12は、固定装置10から、そしてそれに伴ってスキッド14から、z方向に取り出すことができる。
【0089】
軸58は、クランプ円錐72がその解放位置を占める、その第1の軸位置と、クランプ円錐72がそのロック位置を占める、その第3の位置との間で、その長手方向に約3mmから7mm移動する。実際においては、約5mmの軸ストロークが実証されている。
【0090】
車両ボディ12をスキッド14上に乗せて、それを固定し、かつスキッド14から車両ボディを取り外して降ろすことは、固定装置10の上述した形成に基づいて、スキッド14の移動の間に行なうことができる。付勢装置136によって、固定装置10の関与する構成部分と車両ボディとの間の結合及びその材料接触は、種々の車両ボディ12において製造許容誤差が異なる場合でも、確実に形成されて、維持され、そのために手動の調整又は再調整が必要になることはない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物(12)、特に車両ボディ、を支持構造(14)、特にスキッド、に取外し可能に固定する装置であって、
a)解放位置とロック位置との間で移動可能な、固定部材(72)、
b)カウンター部材(28)を有し、
c)対象物(12)がそれに対応づけられた保持構成部分(34)を介してロック位置内の固定部材(72)とカウンター部材(28)との間でロック可能である、前記装置において、
d)固定部材(72)がロック位置において、カウンター部材(28)上に近づき、かつそれから離れるように移動可能であって、
e)固定部材(72)がロック位置において、付勢装置(136)によって付勢を受けながら対象物(12)の保持構成部分(34)に対してカウンター部材(28)の方向に押圧可能である、ことを特徴とする、支持構造に対象物を取外し可能に固定する装置。
【請求項2】
ロック位置において固定部材(72)に作用する付勢が、調節可能である、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
固定部材(72)が次のように、すなわち解放位置からロック位置へ移動する場合に、カウンター部材(28)へ近づく方向に移動され、ロック位置と解放位置の間で移動する場合に、カウンター部材(28)から離れる方向に移動されるように、案内されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
固定部材(72)が、軸(58)の端部(70)に偏心して支持されている、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
軸(58)が、径方向外側に固定部材(96)を支持しており、前記固定部材が付勢装置(136)のばね部材(102)と協働する、ことを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
ばね部材(102)が、ばね薄板(102)である、ことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
ばね部材(102)が,少なくとも1つのガイド部分(114、116)と押圧部分(112)とを有しているので、操作部材(96)はガイド部分(114、116)を介して押圧部分(112)へ移動することによって案内可能であり、固定部材(72)がロック位置をとる場合に、操作部材が前記押圧部分に添接する、ことを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
軸(58)の操作部材(96)が、解放装置(100)のガイド部材(118)と協働する、ことを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
ガイド部材(118)が、ガイドプレート(118)である、ことを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
ガイド部材(118)が、少なくとも1つのガイド部分(130、132)と保持部分(128)とを有しているので、操作部材(96)はガイド部分(130、132)を介して保持部分(128)へ移動することによって案内可能であって、固定部材(72)が解放位置をとる場合に、操作部材が前記保持部分に添接する、ことを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
軸(58)がその第2の端部に、連動ユニット(88)を支持しており、その連動ユニットによって軸(58)が切替え部材を用いて機械的に回動可能である、ことを特徴とする請求項4〜10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
対象物、特に車両ボディ(12)、を移送するためのスキッドにおいて、
スキッド(14)が、請求項1〜11のいずれか1項に記載の固定装置(10)を有している、ことを特徴とするスキッド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2013−517179(P2013−517179A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549278(P2012−549278)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際出願番号】PCT/EP2011/000116
【国際公開番号】WO2011/088967
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(511056714)アイゼンマン アクチェンゲゼルシャフト (15)
【Fターム(参考)】