説明

対象物識別装置および対象物識別方法

【課題】画像データからより確実に移動対象物を検出し識別する。
【解決手段】画像データ取得部(100)にて対象物を撮影した画像データを規定のレートで順次取得し、画素間位置検出部(102)にて順次取得される複数の画像データ間の相対位置を検出し、候補領域抽出部(103)にて前記相対位置から前記複数の画像データ間の差分を検出しその差分を前記対象物の候補領域として1つもしくは複数抽出し、移動量検出部(104)にて前記複数の画像データにわたって前記候補領域の移動量を検出し、解像度向上部(105)にて前記移動量を基に前記候補領域の解像度を向上させる。一方、予め対象物のモデルパターンをモデル記憶部(107)に記憶しておき、対象物識別部(106)にて、解像度を向上させた候補領域と記憶されたモデルパターンとを比較して対象物を識別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば誘導飛翔体の発射装置もしくは誘導飛翔体自身に搭載され、対象物を識別し追尾するために用いられる対象物識別装置に係り、特に移動する対象物を識別する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
飛来する対象物(以下、移動対象物)に向けて地上側から発射される誘導飛翔体を誘導する誘導システムにあっては、赤外線カメラ等の撮像機器を利用する方法が知られている。この方法は、撮像機器で移動対象物の方向を撮影し、撮影によって取得された赤外線等による画像データを画像処理することにより輝度領域分布による画像を生成する。そして、画像中の高輝度領域を移動対象物として抽出し、抽出された各領域の輝度最大値、最小値、平均輝度、大きさなどの画像特徴量を演算し、これらの画像特徴量を基に、予め用意される影像パターンに最も近い領域を移動対象物と識別し追尾誘導する。
【0003】
ところで、実際には、地表や雲のような対象物と紛らわしい物体が画像内に入り込んで、移動対象物の背景にその移動対象物と同様な輝度を示す領域が存在することが多々ある。この場合、画像特微量だけでは移動対象物を背景と区別して的確に認識することが困難である。そこで、従来では、このような状態においても的確に移動対象物を識別するために、連続的に得られる各画像データから関連領域を抽出し、各領域の動きを反映する特微量を抽出し、これを基に移動対象物を背景と区別する技術が存在する。
【0004】
但し、既存の技術の多くは、赤外線画像のうち輝度の高い領域を抽出し、抽出された領域の重心の座標をその領域の位置として定義し、各領域の位置(重心座標)の移動により、移動する対象物として検出するようにしている。
【0005】
しかしながら、上記の手法では、コントラストの変化やノイズの影響によって領域の形状が変化するので、重心の座標も容易に変化してしまうことになる。このため、領域が静止している状態でもコントラストの変化やノイズの影響により重心位置が変化し、誤った領域の動きが検出されることがある。このような誤検出は、目標とする移動対象物が近くに存在し、その見かけ上の動きが大きければあまり影響しないが、目標が遠方に存在し見かけ上の動きの大きさが微小であれば深刻な影響を及ぼすことになる。
【0006】
例えば、特許文献1にある目標検出装置は、ガウス分布形状で作成したテンプレートと赤外線画像データ上の像をマッチングさせることで、遠方にある見かけ上小さい対象物を検出することを可能としているが、対象物の元々の像が小さいために同程度の大きさを持った像が同じ画像内に存在する場合、誤識別を起こしてしまう可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−69019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のように、既存の対象物識別技術では、コントラストの変化やノイズの影響により重心位置が変化し、誤った領域の動きが検出されることがあり、移動対象物が遠方に存在して見かけ上の像の動きが微小な場合には、同じ画像内に存在する同程度の像を誤識別してしまうおそれがある等、深刻な影響を及ぼすことになる。
【0009】
本実施形態は上記の問題を解決するためになされたもので、取得した画像のコントラストの変化やノイズの影響を受けることなく、その画像からより確実に移動対象物を検出し識別することのできる対象物識別装置および対象物識別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本実施形態によれば、画像データ取得手段にて対象物を撮影した画像データを規定のレートで順次取得し、画素間位置検出手段にて順次取得される複数の画像データ間の相対位置を検出し、候補領域抽出手段にて前記相対位置から前記複数の画像データ間の差分を検出しその差分を前記対象物の候補領域として1つもしくは複数抽出し、移動量検出手段にて前記複数の画像データにわたって前記候補領域の移動量を検出し、解像度向上手段にて前記移動量を基に前記候補領域の解像度を向上させる。一方、予め対象物のモデルパターンをモデル記憶手段に記憶しておき、対象物識別手段にて、解像度を向上させた候補領域と記憶されたモデルパターンとを比較して対象物を識別する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態1における対象物識別装置の構成を示すブロック図。
【図2】図1に示す対象物識別装置内の画像データ取得部の動作を説明するための概念図。
【図3】図1に示す対象物識別装置内の画像間位置検出部の動作を説明するための概念図。
【図4】図1に示す対象物識別装置内の候補領域抽出部の動作を説明するための概念図。
【図5】図1に示す対象物識別装置内の移動量検出部の動作を説明するための概念図。
【図6】図1に示す対象物識別装置内の移動量検出部の動作を説明するための概念図。
【図7】図1に示す対象物識別装置内の解像度向上部の動作を説明するための概念図。
【図8】図1に示す対象物識別装置の処理の流れを示すフローチャート。
【図9】実施形態2における対象物識別装置の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本実施形態に係る対象物位置検出装置を説明する。
【0013】
(実施形態1)
まず、図1から図7を用いて実施形態1を説明する。
【0014】
図1は、実施形態1における対象物識別装置の構成及び機能を示すブロック図である。この対象物識別装置は、画像データ取得部100を備える。この画像データ取得部100は赤外線撮像カメラ等で構成され、移動対象物に向けて撮影することで移動対象物を含む電磁波画像データを取得するもので、取得された電磁波画像データは高輝度領域抽出部101に送られる。
【0015】
この高輝度領域抽出部101は、取得された電磁波画像データの輝度情報に対して輝度閾値を超える領域を高輝度領域として抽出するもので、抽出された高輝度領域の情報は画像間位置検出部102に送られる。この画像間位置検出部102は、抽出された高輝度領域から構成される画像データのうち複数の画像データ間の相対位置関係を検出するもので、検出された相対位置関係は候補領域抽出部103に送られる。
【0016】
上記候補領域抽出部103は、検出された画像データ間の相対位置関係より画像データ間の差分を抽出し、その差分を対象物の候補領域とするもので、ここで候補領域として抽出される画像データ間の差分の情報は移動量検出部104に送られる。この移動量検出部104は、抽出された複数の画像データにわたる候補領域について、それぞれの移動量を検出するもので、検出された候補領域の移動量の情報は解像度向上部105に送られる。
【0017】
上記解像度向上部105は、検出された候補領域の移動量の情報から複数の画像データにわたる候補領域を重ね合わせることで候補領域の解像度を向上させるもので、これによって高解像度化された候補領域の情報は対象物識別部106に送られる。この対象物識別部106は、予め移動対象物のモデルパターンが記憶させたモデル記憶部107からモデルパターンを読み出し、このモデルパターンを基に高解像度化された候補領域が対象物か否か識別する。
【0018】
以下に、本実施形態1の対象物識別装置の動作について詳述する。
【0019】
本実施形態1の対象物識別装置は、電磁波画像データから対象物を抽出し識別する。まず、画像データ取得部100により、電磁波画像データ300が取得される。例えば、この画像データ取得部100には赤外線カメラが利用される。この場合、電磁波画像データ300は赤外線画像である。この画像データ取得部100で取得された画像データは一定のレートで高輝度領域抽出部101に出力される。
【0020】
高輝度領域抽出部101では、入力画像データから設定された閾値より高い輝度を示す画素を抽出し、それ以外の画素の情報を除外する。識別する対象物は画像データの中で相対的に高い輝度で撮像されることが前提にあり、この段階で輝度値が低い画素を除外することで後段の処理を軽減することができる。尚、この処理を飛ばして次の処理へまわすことも可能である。
【0021】
画像間位置検出部102では、画像データ取得部100で得られた複数の画像データ、もしくは高輝度領域抽出部101により低輝度領域を除外された画像データから、画像データ間の相対位置関係を算出する。例えば本装置が誘導飛翔体に搭載された場合には、撮影位置が時々刻々と変化するため、画像データ間で背景の位置が異なる。
【0022】
図2は対象物識別装置の移動に伴い、背景が移動する様子を示している。図2に示すように、連続する画像データ300aおよび300bそれぞれの画像間では背景の位置が異なる。この場合、画像内で背景が移動することから、その中で移動する対象物を検出することは困難である。そこで、画像間位置検出部102により画像データ間での背景の相対位置を算出する。
【0023】
図3は、画像間位置検出部102により実施される処理の様子を示している。画像間位置検出部102では、画像データ300aの画像に対して画像データ300bの画像と比較するための比較領域400を設定する。この比較領域400を画像データ300bの画像に対して1画素ずつずらしながら比較走査401を実施し、各位置で輝度の相関値を計算するマッチング処理を実施する。そして、それら相関値を並べた評価画像を作成する。
【0024】
次に、画像間位置検出部102は、評価画像の中で最も相関値の高い位置を検索し、最大評価位置を求め、その位置に基づいて画像データ間の相対位置を算出する。これにより、2枚の画像データ間の画素単位での相対位置を検出することができる。さらに、2次曲面を用いたマッチングにより、1画素以下の微小なサブピクセルオーダーでの相対位置検出も可能である。
【0025】
評価画像における相対値は、2次曲面に沿って変化すると仮定すると、画素レベルで求めた最大評価位置を中心とする、左右1画素の座標配列3点と、上下1画素の座標配列3点を用いて、それぞれ2次多項式を解くことで、2次曲面の頂点位置を求めることができる。その分解能は1画素以下になる。例えば、画素レベルで求めた最大評価位置の座標を(w,s)とすると、それを中心とする(w−1,s)、(w,s)、(w+1,s)の3点と、(w,s−1)、(w,s)、(w,s+1)の3点によりそれぞれ2次多項式を解くことで、1画素以下の分解能で2次曲面の頂点位置を求めることができる。したがって、相対位置の検出の精度を高くすることができる。
【0026】
候補領域抽出部103では、前記画像間位置検出部102により求められた相対位置を基に重ね合わせ、差分として残る領域を対象物が存在する可能性のある領域、候補領域として抽出する。図4(a)は、図3における画像データ300aの画像と画像データ300bの画像との差分を取った結果の例であり、それぞれの差分画像データ500aと500bに対応する。ここでは、候補領域は501aと501bとなる。
【0027】
ただし、実際には、図4(b)(図上の候補領域のそれぞれ形状は説明しやすく模式的に示したもので、実際のものとは異なる)に示すように差分として残存する領域が複数存在することが多く、これら残存領域から真の対象物を抽出する必要がある。本実施形態はこれを解決するものであり、以降の処理部において残存領域の識別が実行される。
【0028】
移動量検出部104では、まず、画像データにおける候補領域内の各画素とその近傍画素との、輝度差と輝度差の方向とを示す微分画像が生成される。微分画像の算出にあたっては、次式(1)が用いられる。式(1)において大文字のIは画素ごとの輝度値であり、i,jは画素を区別するためのインデックスである。
【数1】

【0029】
各画素においてこの値が算出される。この値を輝度差方向の情報と称しており、より一般的に(Rx,Ry)で示される。
【0030】
次に、移動量検出部104では、候補領域抽出部103で抽出された各領域の位置を以下のようにして算出する。図5は、抽出された領域の位置を算出する処理に用いられるテンプレートの一例を示す図である。移動量検出部104は、候補領域抽出部103で抽出された領域の画素ごとに、その輝度を、例えばガウス分布などの釣鐘型の2次元輝度分布を仮定して類似値に換算する。そして、この類似値の集合として得られる類似値画像を生成し、この類似値画像をもとに各候補領域の位置を算出する。
【0031】
ガウス分布は中央に頂点を持ち、中央から周辺に向かって傾斜していくような値を持つ。これを図示すると、図5に示すように、輝度差方向は周辺から頂点に向かって指向するように分布する。図5に示す矢印は、2次元の画像中において、「輝度値は対象物を頂点としてその周囲にガウス分布で分布する」と仮定した場合の輝度差方向を示す。図5では5×5の画素領域において中央の画素が最大の画素値を持つとする。
【0032】
移動量検出部104では、図5に示すガウス分布の輝度差方向をテンプレートとして、候補領域抽出部103で抽出された画素に対応する微分画像の画素を順次走査し、各画素で次式(2)を用いて類似値を算出する。この類似値を配列することで類似値画像が得られる。
【数2】

【0033】
式(2)においてKが類似値であり、θは輝度値方向とテンプレートとのなす角である。式(2)の最下段の式では、図6に示す微分画像の輝度差方向(Rθ)とテンプレートの輝度差方向(Tθ)との差、すなわちDθ(=|Rθ−Tθ|)を180度で正規化した値を1から減算している。これにより輝度差方向が一致すると類似値は1になり、正反対であれば類似値は0になる。その値に寄与率(α)を考慮する。つまり、輝度差方向の一致率に応じた係数を作成し、その係数に基づいた輝度差を累積加算することで、類似値Kを算出する。この類似値Kを評価することで画像フレームにおける輝度差方向の分布をガウス分布にマッチングさせることができ、各候補領域の位置を算出することができる。
【0034】
尚、加算すべきデータに判断条件を設けてもよい。具体的には、ガウス分布の各画素の輝度差方向は点対称であることを利用する。図5から分かるようにAFの画素(左上)の輝度差方向とEJの画素の輝度差方向とは正反対である。また、EFとAJの画素の輝度差方向は、それぞれAFとEJの画素の輝度差方向に直交する。このことを利用して、例えばAF、EF、AJ、EJの4画素の輝度差方向の一致率がそれぞれ90度以内であれば、輝度差を加算するという判断条件とする。
【0035】
式(2)では画素ごとに値の加算を決定しているので、一致率が部分的に高い場合にも類似値が高くなる可能性があるが、上記の判断条件を設けることにより、周方向を加味して周方向の一致率が共に高い場合に類似値を高い値として算出することが可能になる。つまり、周囲から頂点に向かって盛り上がるような輝度分布に高い得点を与えることができ、より的確に対象物の位置を捕らえられるようになる。
【0036】
また、移動量検出部104では、候補領域抽出部103により抽出された候補領域ごとに類似値の値を探索し、最も値の高い座標(w,s)を各候補領域の位置と定義する。これにより、対象物の輝度分布をガウス分布と仮定した場合に、対象物の位置である可能性が最も高い位置を画素レベルで定義することができる。この段階で、図4(c)に示すように、各候補領域における最大類似値がユーザによって任意に設定される閾値を下回る場合は除外し、閾値を上回る領域501a,501bのみを候補領域として抽出することも可能である。
【0037】
さらに、移動量検出部104では、画像間位置検出部101と同様に、サブピクセルでの位置検出を行うことが可能である。すなわち、類似値画像における類似値は2次曲面に沿って変化すると仮定する。そこで、例えば画素レベルで求めた(w,s)を中心とする(w−1,s)、(w,s)、(w+1,s)の3点と、(w,s−1)、(w,s)、(w,s+1)の3点によりそれぞれ2次多項式を解くことで、1画素以下の精度で2次曲面の頂点位置を求めることができる。したがって、位置検出の精度をさらに高くすることができる。
【0038】
以上の処理により、各画像データにおける各候補領域の位置が抽出され、これらの位置情報および画像データ間の相対位置関係を加味することで各候補領域の画像データ間における移動量がサブピクセル単位で算出される。
【0039】
解像度向上部105においては、複数の画像データ上にある候補領域の像を重ね合わせることで解像度を向上させる。元の画像データの画素よりも小さい単位、サブピクセルの分解能で画像を重ね合わせることができれば、元の画像よりも小さい画素を生成することができる。図7では、2枚の画像を重ね合わせることで、2倍の解像度を持つ画像が生成される様子を描いている。重ね合わせた際、高解像度画像の画素502上には2つの値が存在している。例えば、高解像度画像の画素502の値を一意に決める方法としては、それらの平均を取る方法が最も簡単である。
【0040】
上記移動量検出部104では、各候補領域の移動量をサブピクセル単位で算出されているため、上記の原理により、この移動量を基に重ね合わせることで解像度を高めることができる。上記では2枚の画像を重ね合わせる例を示したが、2枚に限らずさらに多くの画像を重ね合わせることで、より候補領域の像の解像度を高めることが可能となる。
【0041】
対象物識別部106においては、上記解像度向上部105において解像度を向上させた候補領域の像を用いて、その候補領域が対象物を示しているものか否かを識別する。この識別処理の際には、予め、モデル記憶部107に識別・追尾対象物のモデルパターンを記憶させておき、その記憶されているモデルパターンとの類似度が高いものを対象物として識別する。このモデル記憶部107においては、対象物のモデルパターンを電磁波画像データとして記憶しておくことも可能であり、ガウス分布のような釣鐘型分布としてパラメトリックに記憶しておくことも可能である。この類似度を算出する方法としては、輝度情報同士をマッチングさせてもよいし、前述のような分布形状を基にした類似度算出によってもよい。
【0042】
図8は、実施形態1における対象物識別装置の処理の流れを示すフローチャートである。すなわち、この対象物識別装置では、移動対象物を含む赤外線画像データを取得すると(ステップS1)、取得された赤外線画像データの輝度情報に対して輝度閾値を超える領域を高輝度領域として抽出し(ステップS2)、抽出された高輝度領域から構成される画像データのうち複数の画像データ間の相対位置関係を算出し(ステップS3)、検出された画像データ間の相対位置関係より画像データ間の差分を対象物の候補領域として抽出する(ステップS4)。続いて、候補領域として抽出される画像データ間の差分の情報から候補領域の移動量をサブピクセル単位で検出し(ステップS5)、検出された候補領域の移動量の情報から複数の画像データにわたる候補領域を重ね合わせることで候補領域の解像度を向上させ(ステップS6)、これによって高解像度化された候補領域を移動対象物のモデルパターンと比較し、その比較結果から高解像度化された候補領域が対象物か否か識別する(ステップS7)。
【0043】
以上説明したようにこの実施形態1による対象物識別装置では、目標の周囲の輝度分布がガウス分布のような釣鐘型状に分布すると仮定し、候補領域から目標位置を特定する際にも釣鐘型分布とのマッチングを取り、ガウス曲線の頂点の座標を目標位置と定義することで、サブピクセルでの位置検出を行うようにしている。さらに、サブピクセル単位での移動量を利用することにより、画像データの解像度を向上させることが可能となり、対象物の大きさが微小な場合においても識別可能なレベルまで識別性能を高めることができる。
【0044】
(実施形態2)
図9を用いて実施形態2を説明する。
【0045】
図9は、実施形態2における対象物識別装置の構成を示すブロック図である。但し、図9において、図1と同一部分には同一符号を付して示し、ここでは異なる部分を中心に説明する。
【0046】
この対象物識別装置は、実施形態1における対象物識別装置の構成において、取得高度情報取得部108と姿勢情報取得部109を追加した構成となっている。高度情報取得部108は、本対象物識別装置が存在する高度の情報を取得するもので、例えば、高度情報取得部108はGPSから位置情報を取得するものや、圧力計による気圧の変化により高度を測定するものが考えられる。また、姿勢情報取得部109は、画像データ取得部100が指向している方向・姿勢情報を取得するもので、例えばジャイロセンサなどが考えられる。
【0047】
上記構成において、以下にその動作を説明する。
【0048】
まず、実施形態1と同様に画像データ取得部100で画像データが取得されるが、それと同時に高度情報取得部108により本対象物識別装置が存在する高度が取得され、姿勢情報取得部109により画像データ取得部100が指向している方向・姿勢情報が取得される。これらの高度および姿勢情報が候補領域抽出部103に入力され、飛行ルートにおいて存在しえない候補領域を除外することができる。例えば、水面上空を対象物が飛行する場合、水面に像が反射し、候補領域として抽出される可能性がある。しかしながら、候補領域抽出部103の除外機能の働きにより、地表上に観察される候補領域を除外することができ、後段の対象物識別部106における識別処理における誤識別を防ぐことができる。
【0049】
この実施形態2の対象物識別装置によれば、対象物の反射像が画像データ中に存在する場合においても、それを除外することができ、誤識別を防ぐことができる。
【0050】
尚、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0051】
100…画像データ取得部、101…高輝度領域抽出部、102…画像間位置検出部、103…候補領域抽出部、104…移動量検出部、105…解像度向上部、106…対象物識別部、107…モデル記憶部、108…高度情報取得部、109…姿勢情報取得部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を撮影した画像データを規定のレートで順次取得する画像データ取得手段と、
前記画像データ取得手段で順次取得される複数の画像データ間の相対位置を検出する画像間位置検出手段と、
前記相対位置から前記複数の画像データ間の差分を検出しその差分を前記対象物の候補領域として1つもしくは複数抽出する候補領域抽出手段と、
前記複数の画像データにわたって前記候補領域の移動量を検出する移動量検出手段と、
前記移動量を基に前記候補領域の解像度を向上させる解像度向上手段と、
予め前記対象物のモデルパターンを記憶する記憶手段と、
前記解像度を向上させた候補領域と前記モデルパターンとを比較して対象物を識別する識別手段と
を具備することを特徴とする対象物識別装置。
【請求項2】
前記移動量検出手段は、前記候補領域を形成する画素ごとに、当該画素の輝度値と当該画素を囲む画素の輝度値との差から輝度差方向を算出し、この輝度差方向の分布から算出される輝度値の極大点の座標を候補領域の位置とし、前記複数の画像データにわたる前記候補領域の位置の差異を移動量として算出する機能を有することを特徴とする請求項1記載の対象物識別装置。
【請求項3】
前記移動量検出手段は、前記輝度差方向の分布が規定の分布関数に一致する度合いが規定のしきい値を超える領域における前記分布関数の頂点に対応する座標を候補領域の位置とし、複数の画像データにわたる前記候補領域の位置の差異を移動量として算出する機能を有することを特徴とする請求項1記載の対象物識別装置。
【請求項4】
前記移動量検出手段は、釣鐘型関数を前記分布関数とすることを特徴とする請求項3記載の対象物識別装置。
【請求項5】
前記記憶手段は、前記モデルパターンを釣鐘型関数として記憶することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の対象物識別装置。
【請求項6】
さらに、画像データの輝度情報に対して輝度閾値を越える高輝度領域のみを抽出する高輝度領域抽出手段を備え、前記画像間位置検出手段は前記複数の画像データにわたる前記高輝度領域の相対位置を画像データ間の相対位置として算出することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の対象物識別装置。
【請求項7】
さらに、高度情報を取得する高度情報取得手段と、姿勢情報を取得する姿勢情報取得手段とを備え、前記候補領域抽出手段は前記高度情報と前記姿勢情報を基に前記複数の候補領域を絞り込むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか記載の対象物識別装置。
【請求項8】
対象物を撮影した画像データを規定のレートで順次取得し、
順次取得される複数の画像データ間の相対位置を検出し、
前記相対位置から前記複数の画像データ間の差分を検出してその差分を前記対象物の候補領域として1つもしくは複数抽出し、
前記複数の画像データにわたって前記候補領域の移動量を検出し、
前記移動量を基に前記候補領域の解像度を向上させ、
予め記憶される前記対象物のモデルパターンと前記解像度を向上させた候補領域と前記モデルパターンとを比較して対象物を識別することを特徴とする対象物識別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−114381(P2013−114381A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258868(P2011−258868)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】