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対象表面の処理方法
説明

対象表面の処理方法

【課題】対象表面に抗菌性を付与できるだけでなく、一旦付与された抗菌性を除去したり、あるいは除去後再度抗菌性を付与することができる対象表面の処理方法を提供する。
【解決手段】対象表面1に無機粒子(シラノール基3を露出するシリカ粒子2)を結合させる工程と、無機粒子に、抗菌性を有するタンパク(プロタミン)又はタンパクから誘導される塩基性ペプチドを結合させる工程と、対象表面1を酸性溶液5により酸性環境とし、タンパク又は塩基性ペプチドを無機粒子から除去する工程とを含む。さらに、タンパク又は塩基性ペプチドを除去した対象表面1を中性又はアルカリ性環境とし、タンパク又は塩基性ペプチドを無機粒子に再度結合させる工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属、セラミックス等の耐熱性を有する対象表面に抗菌性を持たせたり、あるいは抗菌性を有する対象表面の抗菌性を一旦除去し再度抗菌性を持たせるための対象表面の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、歯ブラシのような日用品を代表として、さまざまな物品の表面に抗菌性を付与する技術が開示されている。
【0003】
ここで、金属、セラミックス等の耐熱性を有する素材は、そのままでは抗菌性を付与することが困難である。そこで、特許文献1(米国公開2004/74568号公報)は、まず対象表面(チタン、チタン合金等)にアンカーモジュールを固定し、さらに、このアンカーモジュールを介して、バンコマイシン等の抗生物質を結合させる技術を開示する。
【0004】
このようにすれば、通常では抗菌性を付与しにくい対象表面に、抗菌性を付与することは可能であろう。
【0005】
ところが、従来技術では、いずれも抗菌性を付与することのみに終始しており、一旦付与した抗菌性を取り除いたり、再度付与し直して抗菌作用を再度活性化するための技術は知られていない。このように、一旦抗菌性を取り除いたり、再付与することは、例えば、歯科インプラントに使用される金属部品をメンテナンスする場合や、使用によりやや古くなり抗菌性が弱くなった台所用品、流し台の部品、あるいは冷蔵庫の内面等の技術分野では、高い有用性が見込まれるが、現状では未だ対応ができていない。
【特許文献1】米国公開2004/74568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、対象表面に抗菌性を付与できるだけでなく、一旦付与された抗菌性を除去したり、あるいは除去後再度抗菌性を付与することができる対象表面の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る対象表面の抗菌処理方法は、対象表面に無機粒子を結合させる工程と、無機粒子に、抗菌性を有するタンパク又はタンパクから誘導される塩基性ペプチドを結合させる工程と、対象表面を酸性環境とし、タンパク又は塩基性ペプチドを無機粒子から除去する工程とを含む。
【0008】
第2の発明に係る対象表面の抗菌処理方法では、第1の発明に加え、タンパク又は塩基性ペプチドを除去した対象表面を中性又はアルカリ性環境とし、タンパク又は塩基性ペプチドを無機粒子に結合させる工程とをさらに含む。
【0009】
第3の発明に係る対象表面の抗菌処理方法では、第1の発明に加え、無機粒子は、シラノール基が露出するシリカ粒子である。
【0010】
第4の発明に係る対象表面の抗菌処理方法では、第1の発明に加え、タンパクは、魚類の白子由来のタンパクである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、対象表面に抗菌性を付与するだけでなく、一旦付与された抗菌性を除去したり、除去後再度抗菌性を付与することができる。その結果、歯科インプラント用の金属部品、台所用品、流し台の部品、あるいは冷蔵庫の内面等の技術分野において、高い有用性を発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
本形態では、無機粒子は、シラノール基が露出するシリカ粒子とし、タンパクは、サケの白子由来のプロタミンを主とするが、プルタミンに属するサルミン及びクルペインも同様に使用できるし、作用効果も同等である。
【0014】
対象表面は、歯科領域で良く使用されるチタン表面とするが、他の金属あるいはセラミックスにおいても、同様に適用できる。対象表面は、シラコート処理されるものであるが、20〜30℃程度の低温で処理できる場合には、金属あるいはセラミックスでなくとも、樹脂等の比較的熱に弱い材料も対象とすることができる。
【0015】
図1は、本発明の一実施の形態における対象表面の拡大写真であり、無加工状態を示す。無加工のチタン表面に欠陥があると、欠陥部分が鋭利にえぐれているのが観察できる。
【0016】
図2は、本発明の一実施の形態における対象表面の拡大写真であり、シリカ粒子蒸着加工後の状態を示す。図1の状態から、シリカ粒子を対象表面に蒸着加工により固定する。なお、シリカ粒子を対象表面に固定できさえすれば、蒸着加工ではない他の常法を使用しても良い。例えば、サンドブラスト法によりシリカ粒子を対象表面に固定しても良い。このようにすると、蒸着加工によるよりも多少効率が低下するが、操作がより簡便となるという利点がある。
【0017】
図1と比べると明らかなように、対象表面には全体的に細かなシリカ粒子が付着している状態が観察できる。一方、図1と同様に、欠陥部分は鋭利にえぐれている点が観察できる。
【0018】
図3は、本発明の一実施の形態における対象表面の拡大写真であり、プロタミン付加後の状態を示す。プロタミンは、シリカ粒子のシラノール基と結合し、シリカ粒子が塩基性ペプチドに包囲されることになるため、欠陥部分の鋭利さがほとんどなくなっている点が観察できる。
【0019】
図4は、本発明の一実施の形態における対象表面の拡大写真であり、プロタミン除去後の状態を示す。図3の状態から、次亜塩素酸溶液を付着させる処理を行うと、塩基性ペプチドが溶解し除去される。その結果、シリカ粒子は塩基性ペプチドに包囲される前の状態に戻り、欠陥部分の輪郭が再度鋭利になっている点が観察できる。言い換えれば、この処理により、付与されていた対象表面の抗菌性が除去されたことが分かる。
【0020】
図5は、本発明の一実施の形態における対象表面の拡大写真であり、プロタミン再付加後の状態を示す。図4の状態では、対象表面に結合するシリカ粒子は、図2の状態に戻ったことになり、シリカ粒子は、対象表面に結合したまま除去されない状態にある。
【0021】
そして、適当な処理液を使用して、対象表面を中性あるいはアルカリ性の環境とした上で、再度プロタミンを付加すると、図5の状態となる。図5を図2と比べると共通性が理解されよう。即ち、塩基性ペプチドによりシリカ粒子が再び包囲され、欠陥部分の鋭利さが図2と同様になくなっている。
【0022】
以上の実験例により、本願発明が実施可能であることが理解されよう。ここで、歯科領域における本発明の意義を考慮すると、次のようになる。即ち、半埋め込み式医療材料、歯科金属は一度設置した場合除去は容易ではない。素材そのものに抗菌性を与えた場合、抗菌剤によるアレルギーの疑いにより再手術して除去せざるをえないが、本法によれば表面の抗菌成分を一度除去して確認した後、問題なければ再度抗菌性を与えることができ、実益大である。
【0023】
以下、図6を参照しながら、本形態の対象表面の処理方法の各工程を説明する。
【0024】
まず図6(a)に示すように、対象表面1を中性又はアルカリ性の状態として、外部に露呈させる。
【0025】
次に、対象表面1にシラコート処理を施し、シリカ粒子3を対象表面1に固定する。また、各シリカ粒子1の表面には、シラノール基3が現れる。
【0026】
図6(b)の状態となったら、対象表面1にプロタミン4を塗布すると、図6(c)に示すように、シラノール基4にプロタミン4が結合し、シリカ粒子2は、プロタミン4に包囲させる。この後、口腔内等に対象表面1を有する部材を入れて使用しても、通常の状態では、プロタミン4は、シラノール基3と結合したままの状態を継続し、プロタミン4による抗菌作用が継続的に奏される。
【0027】
次に、長期使用により、対象表面1を有する部材のメンテナンスが必要となる場合のように、対象表面1を再処理すべき事態となったならば、対象表面1を有する部材を口腔から取り出し、酸性溶液5に漬ける。そのようにすると、図6(d)に示す状態となる。酸性溶液5としては、上述したリン酸溶液のように強酸のものが好ましく用いられる。
【0028】
酸性環境では、塩基性ペプチドが溶解し除去されることになるから、古いプロタミン4はシラノール基3と結合しない状態となり、図6(e)に示すように、洗い流される。
【0029】
その後、図6(f)に示すように、対象表面1を中性又はアルカリ性の状態として、再度プロタミン4を塗布すれば、新しいプロタミン4がシラノール基3と結合し、抗菌作用を再度活性化することができる。
【0030】
本発明者が、JIS Z2801に定義された抗菌性試験を実施したところ、本願発明による抗菌処理方法は、少なくとも大腸菌、ブドウ球菌及びカンジタ菌に対して有効であることが確認された。また、本願発明の抗菌処理方法は、歯科領域に限らず、広く一般の医療領域にも同様に適用できる。例えば、手術あるいは処置により、体内に存置させる部材等(骨盤に打ち込まれて支点として利用される部材、義足の固定具等)にも適用できる。従来、このような部材は、体内に存知させると、感染症の温床となる危険性があったが、本願発明の抗菌処理方法を適用すると、かかる懸念を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施の形態における対象表面の拡大写真(無加工状態)
【図2】本発明の一実施の形態における対象表面の拡大写真(シリカ粒子蒸着加工後)
【図3】本発明の一実施の形態における対象表面の拡大写真(プロタミン付加後)
【図4】本発明の一実施の形態における対象表面の拡大写真(プロタミン除去後)
【図5】本発明の一実施の形態における対象表面の拡大写真(プロタミン再付加後)
【図6】(a)〜(f)本発明の一実施の形態における対象表面の処理方法の各工程を示す模式図
【符号の説明】
【0032】
1 対象表面
2 シリカ粒子
3 シラノール基
4 プロタミン
5 酸性溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象表面に無機粒子を結合させる工程と、
前記無機粒子に、抗菌性を有するタンパク又は前記タンパクから誘導される塩基性ペプチドを結合させる工程と、
前記対象表面を酸性環境とし、前記タンパク又は前記塩基性ペプチドを前記無機粒子から除去する工程とを含む対象表面の抗菌処理方法。
【請求項2】
前記タンパク又は前記塩基性ペプチドを除去した前記対象表面を中性又はアルカリ性環境とし、前記タンパク又は前記塩基性ペプチドを前記無機粒子に結合させる工程とをさらに含む請求項1記載の対象表面の抗菌処理方法。
【請求項3】
前記無機粒子は、シラノール基が露出するシリカ粒子である請求項1又は2記載の対象表面の抗菌処理方法。
【請求項4】
前記タンパクは、魚類の白子由来のタンパクである請求項1から3のいずれかに記載の対象表面の抗菌処理方法。
【請求項5】
前記無機粒子を結合させる工程は、蒸着加工により実施される請求項1又は2記載の対象表面の抗菌処理方法。
【請求項6】
前記無機粒子を結合させる工程は、サンドブラスト法により実施される請求項1又は2記載の対象表面の処理方法。

【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−100263(P2013−100263A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−221159(P2012−221159)
【出願日】平成24年10月3日(2012.10.3)
【出願人】(507278742)医療法人メディカル・ライフクォリティ (1)
【Fターム(参考)】