説明

封入されたグラファイト加熱器および方法

B、Al、Si、Ga、耐火性硬化金属、遷移金属、および、希土類金属、またはそれらの錯体および/または組み合わせからなる群から選択される要素の窒化物、炭化物、炭窒化物もしくは酸窒化物の少なくとも一つを含有する連続の保護被膜層で封入されるグラファイトを通って少なくとも一つの加熱区域のための電気加熱回路を形成するように構成され、ここで電気加熱回線経路を形成するように構成される前にグラファイト体がB、Al、Si、Ga、耐火性硬化金属、遷移金属、および、希土類金属、またはそれらの錯体および/または組み合わせからなる群から選択される要素の窒化物、炭化物、炭窒化物もしくは酸窒化物の少なくとも一つを含有する層によって被覆される、グラファイト体を含有するグラファイト加熱器およびグラファイト加熱器を作成する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この特許出願は2007年1月21日出願の米国特許出願連続番号11/625,329に対して優先権を主張し、そして特許出願は出願日が2002年10月21日の米国特許出願連続番号10/277,786、および出願日が2003年10月16日の米国特許出願連続番号10/687,212に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、主に半導体ウエハー加工機器において使用するための加熱装置に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体装置もしくは半導体物質の製造において、半導体ウエハーは1000℃を超える比較的高い温度において反応チャンバを画定する筺体内で加工され、ここでウエハーは、動力源と連結する抵抗加熱器の近くに、もしくは接触して配置されている。このプロセスにおいて、半導体ウエハーの温度は、約1℃から10℃の範囲で変化しながら、実質的に一定で均一に保たれている。
【0004】
米国特許5,343,022号は、半導体ウエハー加工プロセスにおいて用いるための、熱分解窒化ホウ素の上に多層化した熱分解グラファイト(「PG」)の加熱要素を含む加熱ユニットを開示する。グラファイト層は、加熱される領域を画定するうずまき構造もしくは蛇行構造に機械加工され、両端を外部動力源と接続されている。それゆえすべての加熱の部品は、熱分解窒化ホウ素(「pBN」)の層で覆われている。米国特許2002−06−25は、加熱要素、ウエハー担体、もしくはpBN基体上に載せられたPG要素を含む静電チャックを開示し、後に、すべての部品が、化学的な浸食から部品を防御するために、AlNの外部コーティングによってCVD被膜されている。
【0005】
グラファイトは経済的で耐温性の耐熱材料であるが、ウェハー加工の化学的環境のいくつかによって腐食され、粒子およびちりを生成しがちである。従来の機械加工されたグラファイト加熱器の不連続な表面のために、加熱されるべき領域のいたるところで、出力密度が劇的に変化する。さらに、グラファイト体は、特に蛇行形状に機械加工されたあとに、もろく、機械的完全性に乏しい。従って、例えば半導体グラファイト加熱器用途に典型的であるような2.54ミリメートル(0.1インチ)のような比較的大きい断面厚を伴ってさえ、加熱器はなおも極端に弱く、注意して扱わねばならない。さらに、グラファイト加熱器は、胴曲がりもしくはずれを誘発する焼きなましのため時間とともに容積を変え、電気的ショートという結果になる。さらに、導電性となり得る半導体上にフィルムを堆積することもまた、半導体ウエハー加工において標準的であり、そのようなフィルムは、電気的ショート、電気的性能における変化、またはさらなる胴曲がりもしくはずれを誘発するのに寄与する可能性を持つ加熱器上の、一時的なコーティングとして堆積する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
出願者は、グラファイト特有の耐熱性をなおも残す一方で、従来技術の加熱器の特有のもろさと弱さを克服する、固形グラファイト体から作成される改善された加熱器を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、封入された固形のグラファイト体を含有する抵抗加熱器に関し、ここで、封入体はグラファイト体を被膜した実質的に連続的な表面を形成し、ここで封入体は、B、Al、Si、Ga、耐火性硬化金属、遷移金属、および、希土類金属、またはそれらの錯体および/もしくは組み合わせからなる群から選択される要素の窒化物、炭化物、炭窒化物もしくは酸窒化物から選択される。一実施態様において、封入体は、化学気相成長(CVD)した熱分解窒化ホウ素(pBN)もしくは熱分解窒化アルミニウム(AlN)のような物質の、薄い殻である。
【0008】
本発明はまた、CVDで堆積された物質によって封入された固形のグラファイト体を含有する抵抗加熱要素に関し、グラファイト体はうずまき構造もしくは蛇行の幾何学的形状に構成され、少なくともグラファイト体を通って加熱区域へと電気路を提供するための対向する端を有している電気的加熱回路の少なくとも一つの区域を画定する。
【0009】
本発明は、さらに、グラファイトの固形物からグラファイト加熱器を作成する方法に関し、ここで方法は、a)B、Al、Si、Ga、耐火性硬化金属、遷移金属、および、希土類金属、またはそれらの錯体および/もしくは組み合わせからなる群から選択される要素の窒化物、炭化物、炭窒化物もしくは酸窒化物の保護被膜層でグラファイト体を覆うステップ;b)外部動力源へと接続のために適合した対向する端を持つ、グラファイト体内に形成される電気的回路を形成するステップ;c)パターン化したグラファイト体を、少なくとも、B、Al、Si、Ga、耐火性硬化金属、遷移金属、および、希土類金属からなる群から選択される要素の窒化物、炭窒化物もしくは酸窒化物の外部被膜層で封入し、加熱器部品の周りの電気的に遮断する薄膜殻を形成するステップを含有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1a】図1(a)は、本発明のプロセスの一実施態様である、固形グラファイト体を有する加熱器を製造するためのステップの進行の段階を図示する。
【図1b】図1(b)は、本発明のプロセスの一実施態様である、固形グラファイト体を有する加熱器を製造するためのステップの進行の段階を図示する。
【図1c】図1(c)は、本発明のプロセスの一実施態様である、固形グラファイト体を有する加熱器を製造するためのステップの進行の段階を図示する。
【図1d】図1(d)は、本発明のプロセスの一実施態様である、固形グラファイト体を有する加熱器を製造するためのステップの進行の段階を図示する。
【図1e】図1(e)は、本発明のプロセスの一実施態様である、固形グラファイト体を有する加熱器を製造するためのステップの進行の段階を図示する。
【図2a】図2(a)は、本発明のプロセスの一実施態様を示し、ここでグラファイト体は図1(a)〜1(e)のように完全に封入されていない。
【図2b】図2(b)は、本発明のプロセスの一実施態様を示し、ここでグラファイト体は図1(a)〜1(e)のように完全に封入されていない。
【図2c】図2(c)は、本発明のプロセスの一実施態様を示し、ここでグラファイト体は図1(a)〜1(e)のように完全に封入されていない。
【図2d】図2(d)は、本発明のプロセスの一実施態様を示し、ここでグラファイト体は図1(a)〜1(e)のように完全に封入されていない。
【図2e】図2(e)は、本発明のプロセスの一実施態様を示し、ここでグラファイト体は図1(a)〜1(e)のように完全に封入されていない。
【図3a】図3(a)は、本発明の加熱器の一実施態様の、固形グラファイトディスクから製造される加熱器の下側から眺めた平面図である。
【図3b】図3(b)は、本発明の加熱器の一実施態様の、固形グラファイトディスクから製造される加熱器の上側から眺めた平面図である。
【図4A】図4(a)は、本発明の他の実施態様の、グラファイトシリンダーから形成される加熱器の平面図である。
【図4B】図4(b)は、本発明の他の実施態様の、グラファイトシリンダーから形成される加熱器の平面図である。
【図4C】図4(c)は、本発明の他の実施態様の、グラファイトシリンダーから形成される加熱器の平面図である。
【図5A】図5(a)は、本発明の他の実施態様の、コイル形状を有する加熱器の上面図である。
【図5B】図5(b)は、該加熱器の断面図である。
【図6A】図6(a)は、コイル形状を有する加熱器の上面図である。
【図6B】図6(b)は、該加熱器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、一つの構造的に一体のユニットを形成するために窒化物、炭化物、炭窒化物、もしくは酸窒化物からなる、実質的に連続な保護被膜層または複数の保護被膜層によって被膜された、加熱器およびパターン化されたグラファイト体を含む加熱器を製造するプロセスに関し、それは従来技術の加熱器よりもより安定である。本発明の抵抗加熱器を製造するプロセスのさまざまな実施態様をここに記載する。
【0012】
被膜された熱分解グラファイト基部の提供
本発明の加熱器の基部は、従来型のグラファイトか熱分解グラファイトのいずれかである固形グラファイト体である。熱分解グラファイトは、基本的に高配向の多結晶グラファイトであり、メタン、エタン、エチレン、天然ガス、アセチレンおよびプロパンのような炭化水素ガスの高温度熱分解によって作成される。
【0013】
本発明の一実施態様において、固形のグラファイト体は基部10に機械加工される。基部は、長方形もしくは丸いディスクの形状を含む任意の一般的な加熱器の形状(図1Aに見られるように)であってよく、少なくとも連続した表面を伴う。
【0014】
本発明の他の実施態様において、固形グラファイト体は図4A−4Cに見られるようなシリンダー形のものであり、内径、外径、および長さを伴い、シリンダーの壁厚は予め決められた経路、すなわち蛇行もしくはらせんのパターンへと機械加工される。図4Aは、シリンダー形を有する加熱器の上面図を表す。図4Bは図4AのA−A線に沿って得られる断面でシリンダー型加熱器を示し、図4Cは図4Bに見られる囲まれた領域の分解図を表す。基体もしくは基部10は、半導体加工用途に適した任意の所望の厚さ(d)であり得る。
【0015】
グラファイト形状の厚さは、完成部分における電気計算から決定され得る。完成加熱器の電気抵抗に対する基本的な計算は当分野に既知であり、すなわち長さ、幅、および蛇行電気路の厚さに基づいており、電気路の厚さはグラファイト基部10に対して設計される。半導体ウエハー加工におけり使用のための一実施態様において、グラファイト基部10は少なくとも1.27ミリメートル(0.05インチ)の厚さを有する。第二の実施態様において、グラファイト基部10は少なくとも約2.54ミリメートル(0.10インチ)の厚さを有するディスクの形状である。
【0016】
次のステップにおいて、グラファイト基部10は、望ましい耐食性ならびに機械工作ステップにおける構造的完全性および強さを提供するのに充分な厚さの少なくとも実質的に連続の被膜層12を伴って提供される。図1Bに図示されるような一実施態様において、被膜層12はグラファイト体基部10の頂部と底部の両方を封入する。図2Bに図示されるような本発明のプロセスの他の実施態様において、被膜層12は、耐食性および構造的支持のために、単にグラファイト体基部10の頂部表面のみを覆う。
【0017】
一実施態様において、被膜層は1.27から2.54ミリメートル(0.005から0.10インチ)の厚さを有する。第二の実施態様において、この被膜層は、約0.254から1.27ミリメートル(約0.01から0.05インチ)である。第三の実施態様において、被膜層は、約0.508ミリメートル(約0.02インチ)より薄い厚さを有する。第四の実施態様において、被膜層は、約0.254〜0.762ミリメートル(約.01-.03インチ)の範囲の厚さを有するpBNの平らで固形の実質的に連続な表面層である。
【0018】
グラファイト体の被膜層は、B、Al、Si、Ga、耐火性硬化金属、遷移金属、および、希土類金属、またはそれらの錯体および/もしくは組み合わせからなる群から選択される要素の窒化物、炭化物、炭窒化物もしくは酸窒化物の少なくとも一つを含有する。例は、熱分解窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタンアルミニウム、窒化チタン、炭窒化チタンアルミニウム、炭化チタン、炭化ケイ素、および窒化ケイ素を含む。
【0019】
一実施態様において、被膜層はpBNを含有する。第二の実施態様において、その層はAlNを含有する。第三の実施態様において、それはAlNとBNの錯体である。第四の実施態様において、被膜層は、熱分解窒化ホウ素(PBN)と電気抵抗性を1012Ωm(1014Ωcm)より小さくするための3重量%より少ない量の炭素ドーパントとの組成物を含有する。さらに第五の実施態様において、被膜層は窒化アルミニウムを含有し、ここで、少量の、例えば100重量%の窒化アルミニウムに対して5重量%の量の、Yが添加される。pBNとAlNの両方は、優れた絶縁性能および誘電性能を有しており、ガス相から容易に堆積し得る。それらはまた、高温安定性を有している。さらに、それらは熱分解グラファイト体(黒)と異なった色(白)を有しており、電気パターン形成ステップにおいて、被膜層がそのパターンと視覚的に容易に区別し得る。
【0020】
グラファイト体/基体上に被膜層もしくは複数の被膜層を堆積するために、別の方法を使用し得る。一実施態様において、層の少なくとも一つは物理気相成長(PVC)によって塗布されても良く、たとえば、窒化ホウ素および/もしくは窒化アルミニウムは純粋に物理的方法によって真空中でガス相へと移され、被膜すべき表面上に堆積する。数々の方法の変法が用いられ得る。一実施態様において、被膜物質は高真空下において表面上に堆積し、ここで、それは固形からガス相へ液体を介してか、もしくは電気抵抗加熱器、電子もしくはレーザー衝撃、電気アーク蒸発などを用いて固形からガス相へ直接的に加熱されて移される。スパッタリングもまた用いられ得、ここで、それぞれの被膜物質からなる固形の標的は真空中で、例えば不活性ガスプラズマのようなイオン源を伴う高エネルギーイオン、例えば特にアルゴンイオンのような不活性ガスイオン、によって原子化される。最後に、それぞれの被膜物質からなる標的はまた、真空下でイオンビームの衝撃を与えられ得、ガス相へと移され、被膜されるべき表面上に堆積する。
【0021】
上述のPVD法はまた、組み合わせることもでき、層の少なくとも一つは、例えば、プラズマサポートの気相成長法によって堆積され得る。
【0022】
代替的に、本発明の一実施態様において、もしくはさらなる被膜層として、一つの層が化学気相成長法(CVD)によって堆積され得る。PVD法と異なり、CVD法は関連した化学反応を有する。熱、プラズマ、光、もしくはレーザで活性化される化学気相成長法によって約200から2000℃の温度で産生されるガス成分は、通常、減圧下において、例えばアルゴンのような不活性の担体ガスと共に、化学反応が起こる反応チャンバへと移される。それゆえ形成した固形成分は被膜されるべきグラファイト体上へと堆積する。揮発性の反応産物は担体ガスと共に排出される。
【0023】
一実施態様において、グラファイト体10は、参照によりその開示をここに組み入れる、米国特許第3,182,006号に記載されるようなCVD法によって、熱分解窒化ホウ素の層で被膜される。その方法において、望ましい比率のアンモニアと三塩化ホウ素(BCL)のようなガス化したハロゲン化ホウ素の蒸気は、グラファイト体10の表面上の窒化ホウ素の堆積を形成するのに用いられる。
【0024】
さらに他の実施態様において、層の少なくとも一つは、たとえばプラズマ入射法のような熱入射法を用いて堆積され得る。ここで、固定された標的は加熱され、高周波電磁波の適用および例えば、大気、酸素、窒素、水素、不活性ガスなどのガスの関連したイオン化を介するプラズマバーナーによってガス相へと移される。標的は、たとえば、窒化ホウ素もしくは窒化アルミニウムからなり得、純粋に物理的な方法によってガス相へと移され被膜されるべきグラファイト体上に堆積する。標的はまたホウ素からなっても良く、例えば窒素のようなイオン化ガスとの反応を介して、窒化ホウ素として被膜されるべき表面上に堆積する。
【0025】
他の実施態様において、溶射法、すなわちフレーム溶射技術が用いられ、ここで粉状の被膜原料は通常酸素と他のガスの混合ガスの燃焼を介する、燃焼炎によって溶解される。アークプラズマスプレーと呼ばれる他の溶射法において、DC電気アークがイオン化ガス(プラズマ)をつくり、それが、スプレー塗装と同じような方法で、溶解された粉状の被膜物質をスプレーするのに用いられる。さらに別の実施態様において、被膜物質は、グラファイト体上に、塗装/スプレーのように塗布され、空気噴霧器を用いてスプレーされる。
【0026】
比較的厚い被膜層、すなわち0.762ミリメートル(0.03インチ)もしくはそれより厚い被膜層のための他の実施態様において、被膜物質は液体塗装のように単純に塗布され、そして被膜が乾ききるのに充分に高い温度で乾燥する。BNが被膜に用いられる一実施態様において、BNで保護被膜されたグラファイト構造は、少なくとも75℃において、一実施態様において少なくとも100℃において、乾燥され、被膜が乾ききる。
【0027】
上に記載されるような被膜方法のあとの一実施態様において、被膜されたグラファイト構造は、窒化物被膜をグラファイト体へとさらに結合するために少なくとも500℃の温度まで加熱される。
【0028】
被膜されたグラファイト体上への電気パターンの形成
固形のグラファイト体における電気パターン、すなわち、電気的に隔離された抵抗加熱器経路の形成は、マイクロ機械加工、マイクロブレーディング(micro brading)、レーザー切断、化学エッチング、イー−ビーム(e−Beam)エッチングを含むが、それらに限定されない、当分野に既知の技術で行われる。パターンは、例えば除去可能なマスクもしくはテープによって画定される。他のマスク技術は、例えばフォトレジストのような溶解性の保護被膜の使用を含む。パターンの適用は、グラファイト体の局在化した領域における制御された加熱を可能にさせる。
【0029】
図1Cもしくは図2Cに図解される一実施態様において、被膜グラファイト基部10は反対側の実質的に連続的な被膜表面12から抵抗加熱に望ましい電気パターンへと機械加工される。一実施態様においてパターン12は、図3Bに見られるようなうずまき構造もしくは蛇行構造のものであり、外部動力源へと接続に適した開口端を持つ。
【0030】
図1Dおよび2Dに図解されるように、電気パターンの形成/機械加工操作は、グラファイト基部10の断面体を通り抜け、連続的な被膜表面12まで実施される。見てとれるように、機械加工は被膜層12を取り除くことなしに行われ、それゆえ、被膜は実質的に完全なまま残される。また見てとれるように、図1Dおよび2Dにおける機械加工はグラファイト基部の厚さを貫通すること無しに行われ、そのため、被膜層12は実質的に連続的なまま残る。
【0031】
図5Aおよび図6Aに図解されるような(固形形態のようではない)コイル構造を有する加熱器の、本発明の他の実施態様において、機械加工操作は、グラファイト基部の特定の部分で、グラファイト基部10を通り抜け、連続的な被膜表面まで(そして被膜部分を貫通しないで)行われる。しかしグラファイト基部の他の部分いおいては、被膜グラファイトは通り抜けて機械加工される。図5Bは、図Aの加熱器のA−A’線を通る断面図である。見てとれるように、機械加工はクロスバーを形成する被膜層へ向けて、連続的な被膜表面まで行われ、それゆえに、加熱器の構造的完全性は保たれる。図6Aの加熱器のB−B’線を通る断面図を示す図6Bに図解されるような他のセクションにおいて、機械加工はグラファイト体10を通り抜ける。機械加工は被膜されたグラファイト体を通り抜けるが、パターン化されたグラファイト体を一体のユニットへと接続する被膜された(表面層)の部分がまだある。
【0032】
一実施態様において、(通り抜けて機械加工されていない)残りの部分は、図5A、5B、6Aおよび6Bに見られるようにクロスバーの形状である。他の実施態様において、残りの部分は単一のバー形状にある(図示されない)。さらに他の実施態様において、残りの部分は複数の平行のもしくはジグザクの形のバーであり、パターン化されたグラファイト体と結合し、構造的支持を提供する。
【0033】
実質的に連続的な保護被膜によるパターン化されたグラファイト体の被膜
このステップでは、パターン化されたグラファイト体が、ウエハー加工の化学的環境に対する耐食性の向上のために、少なくとも他の層で被覆される。図1Dに図解されるように、保護的保護被膜層14はパターン化されたグラファイト体の上面表面と底部表面の両方を被膜でき、あるいは、図2D、5Bおよび6Bに図解されるように、保護被膜層は任意の露出したグラファイトを覆う保護層を単に提供する。
【0034】
外部被膜は同じ物質でも、または、上のセクションに記載されるような第一の被膜層と異なる物質でも良い。第一の被膜層のように、パターン化されたグラファイト体をおおう外部被膜層は、B、Al、Si、Ga、耐火性硬化金属、遷移金属、および、希土類金属、またはそれらの錯体および/もしくは組み合わせからなる群から選択される要素の窒化物、炭化物、炭窒化物もしくは酸窒化物の少なくとも一つを含有し得る。一実施態様において、外部被膜層はpBN、AlN、SiCもしくはSiNを含有する。
【0035】
保護被膜層14は第一の被膜層12と同じ技術を用いて塗布され得るか、もしくはPVD、CVD、熱入射法、溶射、アーク溶射、塗装、スプレー噴霧を含むが、それらの限定されない、上のセクションに記載されるもの以外の当分野に既知の任意の他の技術を用いて塗布され得る。
【0036】
一実施態様において、保護被膜層は1.27から5.08ミリメートル(0.005から0.20インチ)の厚さを有する。他の実施態様において、それは、約0.254から2.54ミリメートル(約0.01から0.10インチ)である。第三の実施態様において、保護被膜層は、約1.27ミリメートル(約0.05インチ)より薄い厚さを有する。さらに第四の実施態様において、保護被膜層は、約0.254〜0.762ミリメートル(約.01−.03インチ)の範囲の厚さを有するpBNの平らで固形の実質的に連続な表面層である。
【0037】
一実施態様において、pBNが保護被膜層に持ちられ、層の厚さは、熱の均一性を促進するように最適化され、pBNに本来備わる高度の熱伝導度異方性という利点を得る。さらに他の実施態様において、熱分解グラファイトならびにpBNの多重保護被膜層が熱均一性を促進するために採用される。
【0038】
電気接点の形成
この最後のステップにおいて、図1Eもしくは2Eに図解されるように、外部動力源への接続のための接触位置において、電気接点15は頂部被膜層と通り抜けて機械加工されグラファイト10を露出する。代替的に、電気接点は、最後の被膜プロセスにおいて最初にグラファイト基部10へと機械加工されても良く、または、保護被膜操作に先立って付加されても良い。
【0039】
本発明の一実施態様において、製造プロセスの中間ステップにおいて、グラファイト電気延長ポストは蛇行電気路13へと接続され、保護被膜物質で被膜される。図3Aおよび3Bは、被膜されたグラファイト体から延長したタブ16を伴う加熱要素20の一実施態様の平面図であり、ここで、ポスト接続子は、タブ16の孔17を介して加熱要素20と接続されても良い。
【0040】
本発明の加熱器
本発明の加熱器は、特にウエハー担体としての半導体加工用途の他の用途に用いても良い。本発明の加熱器の機械的強度は、従来のグラファイト加熱器の強さに比べて劇的に向上したことが見出された。
【0041】
半導体用途において、異なったサイズおよび/もしくは形のウエハーは典型的に加工される。それゆえ、幅広い実践における本発明の加熱器が、特定の使用もしくは企図される用途で要求される任意の適切なサイズおよび形状/構造であり得ることは認められよう。加熱器はシリンダー形、平らなディスク、プラテン(platen)などであり得る。それは最長寸法(例えば径、長さなど)で約5.08から50.8センチメートル(約2から20インチ)と1.27ミリメートルから1.27センチメートル(0.05インチから.50インチ)の厚さの寸法を有していて良い。一実施態様において、それは5.08センチ(2インチ)長さ、5.08センチ(2インチ)幅、0.254ミリメートル(0.01インチ)厚さの寸法を有するディスクである。一実施態様において、加熱器は5.08センチメートルから50.8センチメートル(2インチから20インチ)の内径、2.54ミリメートルから1.27センチメートル(0.10インチから0.50インチ)の壁、および5.08センチメートルから1.01600メートル(2インチから40インチ)の長さの寸法を有するディスクであり得る。
【0042】
グラファイト体によって画定される電気パターンは、電気的加熱回路の少なくとも一つの区域のための電気流路を画定するためのさまざまなサイズおよび形状であり得る。一実施態様において、流路はうずまきもしくは蛇行形状パターンである。第二の実施態様において、流路はらせんパターンである。第三の実施態様において、経路はうずまき状に巻かれたパターンである。第四の実施態様において、経路はジグザグパターンである。第五の実施態様において、流路は連続的な迷宮パターンである。他の実施態様において、流路は不規則な渦巻きパターンである。さらに他の実施態様において、経路は旋回パターンである。
【0043】
本発明の加熱器の表面は実質的に連続であって、パターン化された熱発生のグラファイト抵抗体を密封して封入するために、電気接続に必要なそれらの表面以外が、保護被膜層もしくは露出したグラファイト体のまったく無い層によって被膜され、それゆえ、ショートおよび発生からの電気的な変化を防ぎ、実質的に連続な表面をグラファイトのちりや粒子から無縁にするのを確実にする。しかしながら、特定の孔もしくは表面特徴15が加熱器の被膜された表面14の頂部に存在しするが、もっとも実用的なウエハー加工用途において、これらの特徴が図1Eおよび2Eに図解されるようにつり上げ装置もしくは取り付け位置のためにに要求されるという理由のためである。
【0044】
好ましい実施態様を参照して本発明が記載されるが、当業者なら本発明の範囲から外れること無しに、さまざまな変更がなされたり、その要素を等価のものへと代替しても良いと理解するであろう。さらに、特定の状況もしくは物質を本発明の教示へと適応させるために、その本質的な範囲から離れることなしに多くの修正がなされ得る。
【0045】
ここに参照されるすべての引用は参照によりここに明確に組み込まれる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱器であって、
グラファイトの固形の自立体から少なくとも一つの電気加熱回路の区域を画定する電気流路のパターンへと構成されるグラファイト体であって、前記電気回路が末端を前記電気流路へと電気的に接続している端末側終端を含み、前記グラファイト体が少なくとも一つの加熱表面を有している、グラファイト体、
前記パターン化されたグラファイト体を封入している被膜層であって、前記被膜層がB、Al、Si、Ga、耐火性硬化金属、遷移金属、および、希土類金属、またはそれらの錯体および/もしくは組み合わせからなる群から選択される要素の窒化物、炭化物、炭窒化物もしくは酸窒化物の少なくとも一つを含有する、被膜層;ならびに
前記加熱表面に配置される表面層であって、前記表面層がB、Al、Si、Ga、耐火性硬化金属、遷移金属、および、希土類金属、またはそれらの錯体および/もしくは組み合わせからなる群から選択される要素の窒化物、炭化物、炭窒化物もしくは酸窒化物の少なくとも一つを含有し、ここで前記表面層が前記パターン化されたグラファイト体を一つの一体のユニットへと接続する、表面層
を含有する、加熱器。
【請求項2】
加熱器であって、
グラファイトの固形の自立体から少なくとも一つの電気加熱回路の区域を画定する電気流路のパターンへと構成されるグラファイト体であって、前記電気回路が末端を前記電気流路へと電気的に接続している端末側終端を含み、ここで第一の被膜層が、前記グラファイト体が電気流路パターンを形成するよう構成される前に、前記グラファイト体の少なくとも一つの表面へと塗布され、前記第一の被膜層がB、Al、Si、Ga、耐火性硬化金属、遷移金属、および、希土類金属、またはそれらの錯体および/もしくは組み合わせからなる群から選択される要素の窒化物、炭化物、炭窒化物もしくは酸窒化物の少なくとも一つを含有する、グラファイト体と、
前記パターン化されたグラファイト体上に配置された第二の被膜層であって、前記第二の被膜層がB、Al、Si、Ga、耐火性硬化金属、遷移金属、および、希土類金属、またはそれらの錯体および/もしくは組み合わせからなる群から選択される要素の窒化物、炭化物、炭窒化物もしくは酸窒化物の少なくとも一つを含有し、ここで前記被膜層が前記パターン化されたグラファイト体を一つの一体のユニットへと接続する、第二の被膜層と、
を含有する、加熱器。
【請求項3】
前記パターン化されたグラファイト体を一つの一体のユニットへと接続する表面層が、クロスバー形状である、請求項2に記載の加熱器。
【請求項4】
前記第二の被膜層が、第一の被膜層で被膜されていないパターン化されたグラファイト体の表面上へと連続した加熱表面のために塗布される、請求項2に記載の加熱器。
【請求項5】
前記電気流路が、うずまきパターン、蛇行パターン、らせんパターン、ジグザグパターン、連続的迷宮パターン、うずまき状に巻かれたパターン、旋回パターン、不規則な渦巻きパターン、およびそれらの組み合わせのうちの少なくとも一つを有する、請求項2に記載の加熱器。
【請求項6】
前記第一の被膜層と前記第二の被膜層とが、B、Al、Si、Ga、耐火性硬化金属、遷移金属、および、希土類金属、またはそれらの錯体および組み合わせからなる群から選択される要素の窒化物、炭化物、炭窒化物もしくは酸窒化物から選択される、同一の物質である、請求項2に記載の加熱器。
【請求項7】
前記第一の被膜層が、熱分解窒化ホウ素、窒化アルミニウム、およびそれらの錯体の少なくとも一つを含有する、請求項2に記載の加熱器。
【請求項8】
前記第二の被膜層が、熱分解窒化ホウ素、窒化アルミニウム、およびそれらの錯体の少なくとも一つを含有する、請求項2に記載の加熱器。
【請求項9】
前記第一の被膜層および前記第二の被膜層が、物理気相成長法、化学気相成長法、空気噴霧器を用いるスプレー噴射プロセス、ローラーを用いる塗装プロセス、溶射プロセス、熱入射プロセス、およびそれらの組み合わせから選択される技術により形成される、請求項2に記載の加熱器。
【請求項10】
前記第一の被膜層および前記第二の被膜層が、同じ技術を用いて配置される、請求項2に記載の加熱器。
【請求項11】
前記第一の被膜層および前記第二の被膜層が、化学気相成長法によって堆積される、請求項10に記載の加熱器。
【請求項12】
前記グラファイト体のパターンが、マイクロ機械加工、マイクロブレーディング、レーザー切断、化学エッチング、およびイー−ビームエッチングの一つから選択される技術を用いて構成される、請求項1に記載の加熱器。
【請求項13】
前記グラファイト体が、ディスク、プラテン、およびシリンダーのうちの一つである、請求項2に記載の加熱器。
【請求項14】
加熱器を作成する方法であって、前記方法が、
a)グラファイトの固形の自立体から構成され、B、Al、Si、Ga、耐火性硬化金属、遷移金属、および、希土類金属、またはそれらの錯体および/もしくは組み合わせからなる群から選択される要素の窒化物、炭化物、炭窒化物もしくは酸窒化物の少なくとも一つを含有する第一の被膜層で被膜される少なくとも一つの表面を持つ、グラファイト体を提供するステップと、
b)前記被膜されたグラファイト加熱器において、被膜されたグラファイト加熱器の特定の部分を通り抜ける機械加工によって前記部分を被膜されないようにし、一方で、前記部分と少なくとも別の部分における前記第一の被膜層を被膜されたままにし、その被膜された部分が、被膜されていないパターン化されていないグラファイト体を、一つの一体のユニットへと接続する、電気加熱回路の少なくとも一区域を画定する電気流路のパターンを構成するステップと、
c)前記パターン化されたグラファイト加熱器を、B、Al、Si、Ga、耐火性硬化金属、遷移金属、および、希土類金属、またはそれらの錯体および/もしくは組み合わせからなる群から選択される要素の窒化物、炭化物、炭窒化物もしくは酸窒化物の少なくとも一つを含有する第二の被膜層で被膜するステップと、
を含有する、方法。
【請求項15】
前記電気回路パターンが、末端を電気流路を形成するために電気的に接続するための端末側終端を含有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第一の被膜層と前記第二の被膜層が、B、Al、Si、Ga、耐火性硬化金属、遷移金属、および、希土類金属、またはそれらの錯体および/または組み合わせからなる群から選択される要素の窒化物、炭化物、炭窒化物もしくは酸窒化物の少なくとも一つを含有する同一の物質である、請求項14の方法。
【請求項17】
前記電気流路が、うずまきパターン、蛇行パターン、らせんパターン、ジグザグパターン、連続的迷宮パターン、うずまき状に巻かれたパターン、旋回パターン、不規則な渦巻きパターン、およびそれらの組み合わせの少なくとも一つを有する、請求項14の方法。
【請求項18】
前記第一の被膜層および前記第二の被膜層が、物理気相成長法、化学気相成長法、空気噴霧器を用いるスプレー噴射プロセス、ローラーを用いる塗装プロセス、溶射プロセス、熱入射プロセス、およびそれらの組み合わせから選択される技術により形成される、請求項14の方法。
【請求項19】
前記第一の被膜層および前記第二の被膜層が、化学気相成長法によって形成される、請求項18の方法。
【請求項20】
前記グラファイト体におけるパターンが、マイクロ機械加工、マイクロブレーディング、レーザー切断、化学エッチング、およびイー−ビームエッチングの一つから選択される技術を用いて構成される、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記グラファイト体が、ディスク、プラテン、およびシリンダーのうちの一つである、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
末端が前記電気流路へと電気的に接続されている端末側終端をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
請求項1に記載の加熱器を用いて加工されたシリコンウエハー。
【請求項24】
請求項2に記載の加熱器を用いて加工されたシリコンウエハー。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図1e】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【公表番号】特表2010−517224(P2010−517224A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546442(P2009−546442)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/000751
【国際公開番号】WO2008/088907
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(508229301)モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド (120)
【Fターム(参考)】