説明

封入体付き綴じ込み頁部材と中綴じ製本物

【課題】封入体を綴じ込むために用いる綴じ込み頁部材に、(1) 荷重を受ける構造体として部材の剛性と、同時に、(2) 自動鞍掛機を通過するための可撓性を備える。
【解決手段】内容物を入れ周囲を封じた封入体40であって、上面シートと下面シートが貼り付いた額縁部43と内容物が存在する内容部44を有する封入体を中綴じ製本物に綴じ込む封入体付き綴じ込み頁部材である。中間紙20、台紙23と封入体40からなり、中間紙は別頁紙21と保持頁紙22が背部24を挟んで連続している。台紙は貫通窓部35と窓縁部39を有し、保持頁紙に台紙を貼り付けている。貫通窓部に内容部を位置付け、封入体と台紙を固定している。台紙の表面に、背部と平行な方向に、複数のVカット切り込み32を形成し、裏面にVカット切り込み34を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、液体シャンプー試供品のような2枚のシートの間に液体や粉体を入れ周囲を封じた封入体を中綴じ製本物に付属させるための封入体付き綴じ込み頁部材と同様な中綴じ製本物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体や粉体の試供品を配布するために、2枚のシートの間に液体や粉体を入れ周囲を封じた封入体が使用されている。このような封入体を製本物に綴じ込むためには、製本物が多数積み上げられた場合に、荷重を受ける構造体が必要である。
【0003】
従来、2つ折りにより本の閉じサイズと略同形同大をなすように断裁された比較的肉厚の紙板の内面に、上記2つ折りにより対向する凹所を設け、該凹所内に偏平状の付録物を収容せしめてこの付録物を上記2つ折りにより重合される紙板同志の接着により封入保持せしめて台紙を構成し、この台紙の一側縁を常法により本に綴じ込むことを特徴とする本への付録の綴じ込み方法が提案されている。
【0004】
しかし、雑誌などに多用される中綴じ製本物の製本過程は、ステッチャー止工程の準備段階で、折丁を開いて丁合を行う自動鞍掛機を使用する。図5は中綴じ製本装置における自動鞍掛機の説明図である。自動鞍掛機50は第一ドラム52、ラップくわえ爪57を有する左ドラム56、爪59を有する右ドラム58を備える。第一ドラム52、左ドラム56と右ドラム58はそれぞれ図示した矢印方向に回転する。
【0005】
スタッカー61の中に折丁が積まれている。吸着口54によって、積まれた折丁の下一枚(51a)が第一ドラム52に巻きつけられる。第一ドラム52が回転して、折丁の背が上端位置55に達するまで、折丁(51b)が持ち上げられる。そして、ラップくわえ爪57により折丁(51c)のラップをくわえ下方に引っ張る。同時に爪59は折丁の前部をくわえて開き剣60に落とされる。このようにして、折丁が開かれ、ステッチャー止工程に進む。
【0006】
折丁が上端位置に持ち上げられる過程で、折丁(51b)は第一ドラム52の外周とドラムカバー53の間隙に入る。第一ドラム52の外周とドラムカバー53の間隙は、ラップくわえ爪57や爪59の動作などに規制されていて、20mm程度である。従って、機械化された中綴じ製本を行うためには、中綴じ製本体を構成する中間紙や表紙は、当該ドラム外周空間に進入可能でなければならない。
【0007】
封入体を綴じ込むためには、綴じ込み頁部材は、
(1) 荷重を受ける構造体として部材の剛性が必要であり、かつ、
(2) 自動鞍掛機を通過するために、可撓性が必要
である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−316187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする問題点は封入体を綴じ込むために用いる綴じ込み頁部材に、
(1) 荷重を受ける構造体として部材の剛性と、同時に、
(2) 自動鞍掛機を通過するための可撓性
を備えることである。
【0010】
本発明のその他の課題は、本発明の説明により明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下に課題を解決するための手段を述べる。理解を容易にするために、本発明の実施態様に対応する符号を付けて説明するが、本発明は当該実施態様に限定されるものではない。また、符号である数字は部品などを集合的に示す場合があり、後に説明する実施例において個別の部品などを示す場合に、当該数字のあとにアルファベットの添字を付けているものがある。
【0012】
本発明の一の態様にかかる封入体付き綴じ込み頁部材は、
上面シートと下面シートの間に内容物を入れ周囲を封じた封入体(40)であって、上面シートと下面シートが貼り付いた額縁部(43)と内容物が存在する内容部(44)を有する前記封入体を中綴じ製本物に綴じ込む封入体付き綴じ込み頁部材であって、
中間紙(20)、台紙(23)と封入体(40)からなり、
前記中間紙は別頁紙(21)と保持頁紙(22)が背部(24)を挟んで連続していて、
前記台紙は貫通窓部(35)と前記貫通窓部の周縁部である窓縁部(39)を有し、
前記保持頁紙に前記台紙を貼り付けていて、
前記貫通窓部に前記内容部を位置付け、前記窓縁部と前記額縁部を付着して前記封入体と前記台紙を固定し、
前記台紙の表面に、背部(24)と平行な方向に、複数のVカット切り込み(32)を形成してあり、同時に前記表面のVカット切り込みに合わせた裏面にVカット切り込み(34)を形成している。
【0013】
本発明の好ましい実施態様にかかる封入体付き綴じ込み頁部材にあって、
前記台紙は表台紙と裏台紙の2枚からなり、これらを貼り付けたものであり、
前記窓縁部であって、前記表台紙裏面と前記裏台紙表面間に前記額縁部を挟み込んで固定していて、
前記台紙表面のVカット切り込みは表台紙に形成され、裏面のVカット切り込みは裏台紙に形成されているものであってもよい。
【0014】
この好ましい実施態様によれば、2枚の台紙を重ねて耐圧構造体を形成するので、内容部の厚さが厚い封入体であっても、綴じ込みが可能となる。
【0015】
本発明の他の好ましい実施態様にかかる封入体付き綴じ込み頁部材は、
前記封入体の内容物が液体であってもよい。
【0016】
本発明の他の態様にかかる中綴じ製本物は、
本発明にかかる封入体付き綴じ込み頁部材と中間紙を中綴じ製本して製造した中綴じ製本物である。
【0017】
本発明にかかる中綴じ製本物の好ましい実施態様にかかる中綴じ製本物にあっては、
前記台紙の上辺は中綴じ製本物の天と一致し、前記台紙の下辺は中綴じ製本物の地と一致し、前記台紙の小口は中綴じ製本物の小口と一致し、かつ、前記貫通窓部を含んだ前記台紙の面積が、中綴じ製本物の表紙面積の2/3以上9/10以下であってもよい。
【0018】
この好ましい実施態様によれば、厚さが厚い台紙の領域が、製本物の平面領域にほぼ行き渡り、平積みで重ね合わせることが出来るからである。
【0019】
本発明のその他の態様にかかる中綴じ製本物の製造方法は、
本発明にかかる封入体付き綴じ込み頁部材を、自動鞍掛機を使用して丁合し、背をステッチャーで綴じることを特徴とする。
【0020】
以上説明した本発明、本発明の好ましい実施態様、これらに含まれる構成要素は可能な限り組み合わせて実施することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一の態様にかかる封入体付き綴じ込み頁部材は、その他の特徴と共に、台紙に貫通窓部を備え当該貫通窓部に内容部を位置付け、また、台紙の表面と裏面に背部と平行なVカット切り込みを形成している。中綴じ製本体に負荷される加重は台紙の厚さで受け止める。同時に、Vカット切り込み部分が関節のように作用して自動鞍掛機のドラム外周間隙に入ることができる。
【0022】
本発明の他の態様にかかる中綴じ製本物は、自動製本装置を使って製本できるので、手軽かつ安価で、封入体を製本物に綴じ込むことができる。
【0023】
本発明のその他の態様にかかる中綴じ製本物の製造方法は、封入体の綴じ込みを自動化、機械化できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は中綴じ製本物の斜視図である。
【図2】図2は封入体付き綴じ込み頁部材の平面図である。
【図3】図3は台紙の断面図であり、図2中にAB線で示した部分の断面図である。
【図4】図4は封入体の斜視図である。
【図5】図5は中綴じ製本装置における自動鞍掛機の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施例にかかる封入体付き綴込み頁部材、中綴じ製本物と中綴じ製本物の製造方法をさらに説明する。本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするため、一部の構成要素を誇張して表すなど模式的に表しているものがある。このため、構成要素間の寸法や比率などは実物と異なっている場合がある。また、本発明の実施例に記載した部材や部分の寸法、材質、形状、その相対位置などは、とくに特定的な記載のない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例にすぎない。
【0026】
図1は本発明にかかる中綴じ製本物10の斜視図である。中間紙の一枚であり厚めの紙である台紙23が、中綴じ製本物10の天13と小口14から見えている。中綴じ製本物10は、背11の2箇所がステッチャーで綴じられている。
【0027】
図2は封入体付き綴じ込み頁部材の平面図である。封入体付き綴込み頁部材は、中間紙20、台紙23と封入体40を含んでいる。中間紙20は別頁紙21と保持頁紙22が背部24を挟んで連続した紙である。背部24は中間紙を折った折線である。
【0028】
保持頁紙22に、台紙23が貼り付けられている。
【0029】
本実施例において、台紙23は、表台紙31と裏台紙33からなる。表台紙31と裏台紙33は切抜き部があり、当該切抜き部が貫通窓部35である。本実施例にあって、単一の台紙23中に、貫通窓部35は3箇所ある。貫通窓部の外周部を窓縁部39と名付けている。
【0030】
図4を参照して封入体40は上面シートと下面シートの間に内容物を入れ周囲を封じた封入体である。封入体40は上面シートと下面シートが貼り付いた額縁部43と内容物が存在する内容部44を有する。
【0031】
上面シートと下面シートは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、不織布、ポリエチレンを内側にラミネートした複合フィルム(紙、ナイロン、ポリエステル、アルミニウム蒸着膜など)である。これらを合せて、圧熱を負荷してシールしている。
【0032】
内容物は、液体であったり、粉体であったり、ペーストであったりする。
【0033】
額縁部43は扁平である。また、額縁部43は、加重が負荷されても、通常、なんら影響がない。
【0034】
内容部44は厚みを有する部分である。また、内容部44に加重が負荷されると、封入体の上面シート及び/または下面シートが破れたり、当該加重が額縁部に伝達し、額縁部が破れたりする。
【0035】
封入体付き綴じ込み頁部材の説明に戻る。台紙23と封入体40の配置は、貫通窓部35に内容部44を位置付け、窓縁部39に額縁部43を付着して、封入体と台紙を固定している。
【0036】
本実施例においては、台紙23を表台紙31と裏台紙33の2枚で構成しているので、表台紙の窓縁部と裏台紙の窓縁部の両方に接着剤を塗布し、額縁部43を挟みこんで接着している。
【0037】
もっとも、接着は必ずしも必要ではなく、接着剤なしで、単に挟み込むだけであってもよい。また、台紙が一枚の紙から構成される場合には、例えば、額縁部の一面だけを台紙の窓縁部と接着してもよい。さらには、ビニールテープなどを使用して、台紙と封入体の配置を固定してもよい。
【0038】
このように、台紙の厚みで加重を受ける構造にして、封入体の内容部に加重がかからないようにしている。
【0039】
台紙の表面に、背部と平行な方向に、複数のVカット切り込み32を形成している。同時に台紙の裏面にVカット切り込み34を形成している。表面に形成されたVカット切り込み32と裏面に形成されたVカット切り込み34は表裏の同一位置に形成されている。
【0040】
Vカット切り込みは、当該切込み線で台紙が折れ曲がるために形成する。すなわちVカット切り込み部分が関節のような作用をし、台紙が曲面に追随するようになる。複数のVカット切り込み32、34が背部と平行な方向に形成されている理由は、自動鞍掛機の第一ドラム外周空間が曲がっている方向と、台紙が曲面に追随する方向を一致させるためである。
【0041】
Vカット切り込み間の間隔は、15mm以上30mm以下にすればよい。自動鞍掛機の第一ドラムは、通常直径220mmであり、その外周に追随するためである。
【0042】
図3を参照して、表台紙31に形成されたVカット切り込み32と裏台紙33に形成されたVカット切り込み34は表裏の関係にある同一位置にある。
【0043】
台紙23及び/または表台紙31、裏台紙33は、例えば、厚さ1.5mm程度のチップボールなどの厚みのある板紙を使用できる。Vカット切り込みは、例えば、V形状の先端部分、すなわち切り込み最深部分で0.1mm〜0.2mm紙を残すように形成すればよい。
【0044】
以上説明した封入体付き綴じ込み頁部材は、これを背部で折り曲げて、折丁にして自動鞍掛機を使用して丁合、ステッチャー止めすればよい。こうして、封入体付きの中綴じ製本物の製造に、自動製本機を使用することができる。
【0045】
台紙の上辺36は中綴じ製本物の天13と一致し、台紙の下辺37は中綴じ製本物の地13と一致し、前記台紙の小口38は中綴じ製本物の小口14と一致し、かつ、貫通窓部を含んだ台紙の面積が、中綴じ製本物の表紙面積の2/3以上9/10以下である中綴じ製本物が好ましい。厚さの厚い台紙の領域が、製本物の平面領域にほぼ行き渡り、平積みで重ね合わせることが出来るからである。
【0046】
ここで、台紙の背と製本物の背を一致させるとステッチャー止めが困難になるので、背部の近傍は台紙領域から除くことが好ましいので、上記面積範囲となる。
【0047】
中綴じ製本物の天、地と小口が、台紙の上辺、下辺と小口と一致する製本物とは、すなわち、製本後に、三方断裁仕上げをした結果製造される製本物である。
【符号の説明】
【0048】
10 中綴じ製本物
20 中間紙
21 別頁紙
22 保持頁紙
23 台紙
24 背部
31 表台紙
32 Vカット切り込み
33 裏台紙
34 Vカット切り込み
35 貫通窓部
39 窓縁部
40 封入体
43 額縁部
44 内容部
50 中綴じ製本装置における自動鞍掛機
51、51A、51b、51c 折丁
52 第一ドラム
53 ドラムカバー
55 上端位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面シートと下面シートの間に内容物を入れ周囲を封じた封入体であって、上面シートと下面シートが貼り付いた額縁部と内容物が存在する内容部を有する前記封入体を中綴じ製本物に綴じ込む封入体付き綴じ込み頁部材であって、
中間紙、台紙と封入体からなり、
前記中間紙は別頁紙と保持頁紙が背部を挟んで連続していて、
前記台紙は貫通窓部と前記貫通窓部の周縁部である窓縁部を有し、
前記保持頁紙に前記台紙を貼り付けていて、
前記貫通窓部に前記内容部を位置付け、前記窓縁部と前記額縁部を付着して前記封入体と前記台紙を固定し、
前記台紙の表面に、背部と平行な方向に、複数のVカット切り込みを形成してあり、同時に前記表面のVカット切り込みに合わせた裏面にVカット切り込みを形成してある封入体付き綴じ込み頁部材。
【請求項2】
前記台紙は表台紙と裏台紙の2枚からなり、これらを貼り付けたものであり、
前記窓縁部であって、前記表台紙裏面と前記裏台紙表面間に前記額縁部を挟み込んで固定していて、
前記台紙表面のVカット切り込みは表台紙に形成され、裏面のVカット切り込みは裏台紙に形成されていることを特徴とする請求項1に記載した封入体付き綴じ込み頁部材。
【請求項3】
前記封入体の内容物が液体であることを特徴とする請求項1乃至2いずれかに記載した封入体付き綴じ込み頁部材。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかに記載した封入体付き綴じ込み頁部材と中間紙を中綴じ製本して製造された中綴じ製本物。
【請求項5】
前記台紙の上辺は中綴じ製本物の天と一致し、前記台紙の下辺は中綴じ製本物の地と一致し、前記台紙の小口は中綴じ製本物の小口と一致し、かつ、前記貫通窓部を含んだ前記台紙の面積が、中綴じ製本物の表紙面積の2/3以上9/10以下である請求項4に記載した中綴じ製本物。
【請求項6】
請求項1乃至3いずれかに記載した封入体付き綴じ込み頁部材を自動鞍掛機を使用して丁合し、背をステッチャーで綴じることを特徴とする封入体が綴じ込まれた中綴じ製本物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−161658(P2011−161658A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23640(P2010−23640)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】