説明

封口用マスク及びこれを用いたハニカム構造体の封口方法

【課題】小さな断面積の貫通孔に対しても十分に封口材を供給可能なハニカム構造体の封口用マスク及びこれを用いた封口方法を提供すること。
【解決手段】ハニカム構造体の貫通孔に封口材を供給するための封口用マスクであって、第一の断面積をそれぞれ有する多数の第一開口と、多数の第一開口を取り囲むように配置され、第一の断面積よりも大きな断面積をそれぞれ有する複数の第二開口とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体の封口に用いるマスク及びこれを用いた封口方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハニカムフィルタが、DPF(Diesel particulate filter)用等として広く知られている。このハニカムフィルタは、多数の貫通孔を有するハニカム構造体の一端面から一部の貫通孔を封口材で封じると共に、ハニカム構造体の他端面から残りの貫通孔を封口材で封じることにより製造される。
【0003】
ハニカム構造体の端面の所望の貫通孔のみを封口材により封じる際に、封口すべき貫通孔に対応する箇所に開口が設けられたマスクを使用する。下記特許文献1,2には、マスクを用いてハニカム構造体を封口する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−290766号公報
【特許文献2】特開2008−132749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ハニカム構造体が有する多数の貫通孔の内、ハニカム構造体の側壁の近傍の貫通孔の形状はハニカム構造体の側壁の影響を受ける。したがって、ハニカム構造体の側壁の近傍の貫通孔は、ハニカム構造体の中央部に形成される貫通孔よりも開口の断面積が小さくなる場合がある。
【0006】
このような小さな断面積の貫通孔を封口する際には、このような小さな断面積の貫通孔に合わせ、対向するマスクの開口を小さくする。しかし、小さな断面積の貫通孔に対して十分に封口材を供給することが困難な場合がある。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、小さな断面積の貫通孔に対しても十分に封口材を供給可能なハニカム構造体の封口用マスク及びこれを用いた封口方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る封口用マスクは、ハニカム構造体の貫通孔に封口材を供給するための封口用マスクであって、
第一の断面積をそれぞれ有する多数の第一開口と、
前記多数の第一開口を取り囲むように配置され、前記第一の断面積よりも大きな断面積をそれぞれ有する複数の第二開口と、を備える。
【0009】
本発明によれば、第一開口の断面積よりも大きな断面積を有する第二開口が、多数の第一開口を取り囲むように配置されている。このため、ハニカム構造体の側壁の近傍に位置する、ハニカム構造体の側壁により形成された貫通孔を含む複数の貫通孔を、この第二開口と対向させることができる。これにより、側壁の近傍の貫通孔の断面積が小さい場合でも、封口材を供給しやすい。
【0010】
ここで、前記第二開口の輪郭のアスペクト比は、前記第一開口の輪郭のアスペクト比よりも大きいことが好ましい。これにより、第二開口により、複数の貫通孔と対向し易い。
【0011】
本発明は上記マスクを用いてハニカム構造体の所定の貫通孔を封じる方法を提供する。すなわち、本発明はハニカム構造体の貫通孔の封口方法であって、
(a)前記ハニカム構造体の一方の端面上にマスクを配置する工程と、
(b)前記ハニカム構造体の前記一方の端面における封口すべき貫通孔に前記マスクが有する複数の第一開口及び複数の第二開口を通じて封口材を供給する工程とを備え、
前記マスクは、第一の断面積をそれぞれ有する前記複数の第一開口と、前記複数の第一開口を取り囲むように配置され、前記第一の断面積よりも大きな断面積をそれぞれ有する前記複数の第二開口と、を有する方法を提供する。
【0012】
上記封口方法によれば、小貫通孔に対しても十分に封口材を供給できる。なお、上記封口方法は、ハニカム構造体の一方の端面を封口処理する工程の後、他方の端面についても封口処理する工程を更に備えてもよい。ハニカム構造体の両方の端面を封口処理した後、必要に応じて乾燥や焼成等の工程を経ることで、ハニカムフィルタ構造体を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、小貫通孔に対しても十分に封口材を供給可能なハニカム構造体の封口用マスク及びこれを用いた封口方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1の(a)は、本発明の実施形態にかかるハニカム構造体70の斜視図、図1の(b)は、図1の(a)の端面のAの部分の拡大図である。
【図2】図2の(a)は、本発明の実施形態にかかるマスク170の斜視図、図2の(b)は、図2の(a)の端面のAの部分の拡大図である。
【図3】図3の(a)は、本発明の実施形態にかかるハニカム構造体70の斜視図、図1の(b)は、図1の(a)の端面のAの部分の拡大図である。
【図4】図4は、図3のCの部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。まず、ハニカム構造体について説明する。
【0016】
図1の(a)に示すように、ハニカム構造体70は、Z方向に伸びる多数の貫通孔71が略平行に配置された円柱体である。ハニカム構造体70は、側面を形成する側壁70cの形状が円筒状であり、図1の(b)に示すように、径方向中央部には断面形状が正方形の多数の(例えば、100個以上の)標準形状貫通孔71a(以下、「完全なセル71a」又は単に「セル71a」という。)と、径方向最外周部に、断面形状が正方形ではない複数の特殊形状貫通孔71b(以下、「不完全なセル71b」又は単に「セル71b」という。)とを有する。
【0017】
完全なセル71aは、ハニカム構造体70において、Z軸方向の端面70eから見て、正方形配置、すなわち、完全なセル71aの中心軸が、正方形の頂点にそれぞれ位置しかつ隣接する辺同士が平行となるようにハニカム構造体70の端面70eにおける中央部にマトリクス状に多数配置されている。セル71aの断面の正方形のサイズは、例えば、一辺0.8〜2.5mmとすることができる。本実施形態では、完全なセル71aの正方形のサイズ及び断面積は互いに略同一とされている。
【0018】
不完全なセル71bは、ハニカム構造体の側壁70cに沿って複数配置されており、多数の完全なセル71aを取り囲むように配置されている。不完全なセル71bは、その一部が側壁70cにより形成されているため、その断面形状は、正方形でないことに加え、側壁70cの形状や位置に依存して互いに一定ではなく、場所によって異なっている。しかしながら、通常は、いずれの不完全なセル71bも、その断面積は完全なセル71aの断面積よりも小さい。
【0019】
セル71a間、セル71b間、及び、セル71aとセル71bとの間の隔壁70wの厚みは、例えば、0.05〜0.5mmとすることができる。また、側壁70cの厚みは、隔壁70wの厚みよりも厚いことが好ましく、0.1〜3.0mmとすることができる。
【0020】
図1の(a)において、ハニカム構造体70の貫通孔71が延びるZ方向の長さは特に限定されないが、例えば、40〜350mmとすることができる。また、ハニカム構造体70の外径も特に限定されないが、例えば、100〜320mmとすることできる。
【0021】
ハニカム構造体70の材料は特に限定されないが、高温耐性の観点から、セラミクス材料が好ましい。例えば、アルミナ、シリカ、ムライト、コーディエライト、ガラス、チタン酸アルミニウム等の酸化物、シリコンカーバイド、窒化珪素、金属等が挙げられる。なお、チタン酸アルミニウムは、さらに、マグネシウム及び/又はケイ素を含むことができる。このようなハニカム構造体70は通常多孔質である。
【0022】
また、ハニカム構造体70は、後で焼成することにより上述のようなセラミック材料となるグリーン成形体(未焼成成形体)であってもよい。グリーン成形体は、セラミクス原料である無機化合物源粉末、及び、メチルセルロース等の有機バインダ、及び、必要に応じて添加される添加剤を含む。
【0023】
例えば、チタン酸アルミニウムのグリーン成形体の場合、無機化合物源粉末は、αアルミナ粉等のアルミニウム源粉末、及び、アナターゼ型やルチル型のチタニア粉末等のチタニウム源粉末を含み、必要に応じて、さらに、マグネシア粉末やマグネシアスピネル粉末等のマグネシウム源粉末及び/又は、酸化ケイ素粉末やガラスフリット等のケイ素源粉末を含むことができる。
【0024】
有機バインダとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩を例示できる。
【0025】
添加物としては、例えば、造孔剤、潤滑剤及び可塑剤、分散剤、溶媒が挙げられる。
【0026】
造孔剤としては、グラファイト等の炭素材;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類;でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーンなどの植物材料;氷;及びドライアイス等などが挙げられる。
【0027】
潤滑剤及び可塑剤としては、グリセリンなどのアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸Alなどのステアリン酸金属塩などが挙げられる。
【0028】
分散剤としては、たとえば、硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸;シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;ポリカルボン酸アンモニウム、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどの界面活性剤などが挙げられる。
【0029】
溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類;及び水などを用いることができる。
【0030】
(封口用マスク)
図2の(a)及び(b)に示すマスク170は、図1に示すハニカム構造体70の所望の貫通孔71を封口するのに使用されるものである。マスク170は、円形の板状部材であり、厚さ方向に貫通する第一開口171a及び第二開口171bをそれぞれ複数有する。なお、マスク170の材料は特に限定されず、例えば、金属や樹脂が挙げられる。マスクの厚みは特に限定されないが、例えば、0.1〜3.0mmが好ましい。
【0031】
第一開口171aはハニカム構造体70の各完全なセル71aのみに対して封口材を供給するためのものである。第一開口171aの形状は、ハニカム構造体70のセル71aに対応する正方形である。これらの第一開口171aは、千鳥配置されており、図3に示すように、マスク170がハニカム構造体70の端面上に位置決めして配置された状態で、正方形配置された複数のセル71aのうち、互いに上下左右に隣接しない関係にある複数のセル71aのみに対向して配置される。なお、第一開口171aの形状は、正方形に限定されるものではないが、ペースト状の封口材の充填性の観点から、セル71aの形状と相似でかつ、これよりも小さい形状であることが好ましい。
【0032】
第一開口171aは、開口面積が0.03mm以上であり且つ第一開口171aによって封口すべきセル71aの開口面積の90%未満であることが好ましい。第一開口171aの開口面積が0.03mm未満であると、封口材が第一開口171aを通過しにくくなり、所定量の封口材をセル71a内に供給できない場合がある。第一開口171aの開口面積は、0.05mm以上であることが好ましく、0.07mm以上であることがより好ましく、0.2mm以上又は0.25mm以上であってもよい。
【0033】
他方、第一開口171aの開口面積がセル71aの開口面積の90%以上であると、第一開口171aの位置とセル71aの開口の位置が少しずれただけで、封口材を所定のセル71a内に供給できず、封口すべきでない近傍のセル71aに供給する場合がある。第一開口171aの開口面積は、セル71aの開口面積の80%未満であることが好ましく、60%未満であることがより好ましい。
【0034】
なお、第一開口171aの開口径がマスク170の厚さ方向に変化する場合、例えば、開口径がハニカム構造体70の端面に近づくほど徐々に小さくなるテーパ形状の場合等には、ここでいう開口面積とはハニカム構造体70の端面と当接する側のマスク170の表面における第一開口171aの開口面積を意味する。
【0035】
第一開口171aの輪郭のアスペクト比は1.5以下であることが好ましく、1.2以下であることが好ましい。輪郭のアスペクト比とは、開口の輪郭を、外接する最小面積の長方形(正方形含む)で囲んだ場合の、長辺長さ/短辺長さで定義される。
【0036】
図2の(b)の第二開口171bは、図1の(b)のハニカム構造体70の不完全なセル71bに封口材を供給するためのものである。
【0037】
本実施形態では、図2の(b)の第二開口171bは、第一開口171aよりも断面積(開口面積)が大きくされている。第二開口171bの開口面積は、第一開口171aの開口面積の1.2〜5倍であることが好ましく、1.5〜3.5倍であることがより好ましい。また、第二開口171bの形状は、第一開口171aに比べて細長い形状を有し、第二開口171bの輪郭のアスペクト比は、第一開口171aの輪郭のアスペクト比よりも大きいことが好ましい。第二開口171bの輪郭のアスペクト比はより好ましくは2以上であり、より好ましくは3以上である。なお、第二開口171bの輪郭のアスペクト比の上限は6程度とすることができる。
【0038】
より詳しくは、図3に示すように、マスク170がハニカム構造体70の端面上に位置決めして配置された状態で、第二開口171bは、ハニカム構造体70の複数の貫通孔71と対向するようになっている。例えば、図3の矢印Aに示すように、一つの第二開口171bは、2つの不完全なセル71bに対向してもよいし、図3の矢印Bに示すように、一つの第二開口171bは、一つの不完全なセル71b及び一つの完全なセル71aに対向してもよい。いずれにしろ、一つの第二開口171bは、少なくとも一つの不完全なセル71bと、他の任意の数の完全なセル71a及び/又は不完全なセル71bとに対して対向して配置されていればよく、3つ以上の貫通孔に対して対向していてもよい。したがって、第二開口171bからは、ハニカム構造体70の複数の貫通孔71を隔てる隔壁70wが露出する。
【0039】
第二開口171bは、この第二開口171bと対向する複数の貫通孔71のそれぞれすべてと対向する面積を有する必要はなく、少なくともそれぞれ一部と対向していればよい。
【0040】
また、図4に例示するように(図3のCの拡大図)、第二開口171b1は、この第二開口171b1と対向する複数の貫通孔71b1、71b1と、この第二開口171b1と対向しない貫通孔71cとの境界を形成する隔壁70wsからは距離D、例えば、50〜500μm離して輪郭が形成されることが好ましい。ただし、側壁70cとの距離はこれよりも短くてもよく(例えば、D=0)、図4にVで示すように、第二開口171bの輪郭が側壁70cの上に入り込んでいてもよい。通常、側壁70cは、隔壁70wよりも数倍程度厚いので、このようにすることにより、第二開口171と対向する貫通孔71b1に対して封口材が入りやすくしつつ、不可避な位置ずれによる意図しない貫通孔71cへの封口材の誤供給を抑制できる。
【0041】
なお、第二開口171bの開口径がマスク170の厚さ方向に変化する、例えば、開口径がハニカム構造体70の端面に近づくほど徐々に小さくなるテーパ形状をとってもよい。ここでいう開口面積や輪郭とはハニカム構造体70の端面と当接する側のマスク5の表面側における開口171bの開口面積や輪郭を意味する。
【0042】
なお、ハニカム構造体70に対する、マスク170の位置決め方法は特に限定されず、例えば、マスク170の開口から目視等によりハニカム構造体70の隔壁、貫通孔、側壁等を見ながら行えばよい。
また、このようにして位置決めがなされた状態で、開口171a,171bを介して、封口材を貫通孔71に供給する方法も特に限定されない。例えば、マスク上に供給した封口剤を、スキージを用いて開口を介して貫通孔内に押し込んでもよいし、ピストンにより押し込んでもよい。
【0043】
封口材は、ハニカム構造体70の貫通孔71の端部を閉鎖できるものであれば特に限定されないが、液状であることが好ましい。例えば、封口材として、セラミクス材料又はセラミクス原料と、バインダと、潤滑剤と、溶媒とを含むスラリーが例示できる。
セラミクス材料としては、上述のハニカム構造体の構成材料や、その原料が挙げられる。
【0044】
バインダとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩等の有機バインダを例示できる。バインダの使用量は、封口材を100質量%とした時、例えば、0.1〜10質量%とすることができる。
【0045】
潤滑剤としては、グリセリンなどのアルコール類、カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラギン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸、ステアリン酸Al等のステアリン酸金属塩などが挙げられる。潤滑剤の添加量は、封口材の100質量%に対して、通常、0〜10質量%であり、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%である。
【0046】
溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類;及び水などを用いることができる。なかでも、水が好ましく、不純物が少ない点で、より好ましくはイオン交換水が用いられる。溶媒の使用量は、封口材を100質量%とした時、例えば、15〜40質量%とすることができる。
【0047】
(ハニカム構造体の封口方法)
本実施形態に係る封口方法は、マスク170を用いてハニカム構造体70の所定の貫通孔(セル)の開口を封口するためのものである。具体的には、この封口方法は以下の工程を備える:
(a)ハニカム構造体70の一方の端面上にマスク170を配置する工程;及び
(b)ハニカム構造体70の一方の端面における封口すべきセル71a及びセル71bに、マスク5の第一開口171a及び第二開口171bを通じて封口材をそれぞれ供給する工程。
【0048】
この封口方法によれば、開口面積が小さいセル71bに対しても十分に封口材を供給できる。ハニカムフィルタ構造体を作製するには、ハニカム構造体70の一方の端面について封口処理を施した後、他方の端面に対しても同様の封口処理を施す。なお、他方の端面の封口処理に使用するマスクは開口の配置がマスク170の開口の配置と正反対の千鳥配置であることの他は、マスク170と同様の構成である。
【0049】
本実施形態によれば、第一開口171aの断面積よりも大きな断面積を有する第二開口171bが、多数の第一開口171aを取り囲むように配置されている。このため、ハニカム構造体70の側壁70cの近傍に位置する、ハニカム構造体70の側壁70cにより形成された不完全なセル71bを含む複数の貫通孔を、この断面積の大きな第二開口171bと対向させることができる。これにより、側壁70cの近傍の不完全なセル71bの断面積が中央部の完全なセル71aの断面積よりも小さい場合でも、封口材を供給しやすい。
【0050】
特に、第二開口171bの輪郭のアスペクト比が、第一開口171aの輪郭のアスペクト比よりも大きい場合には、第二開口171bによって、封口することを望まない貫通孔と対向させることなく所望の複数の貫通孔と対向させやすく好適である。
【0051】
本発明は、上記実施形態に限定されず、さまざまな変形態様が可能である。例えば、ハニカム構造体70の完全なセル71aの配置も、正方形配置でなくてもよく、例えば、3角配置、千鳥配置等でも構わない。この場合、完全なセル71a、及び、これを取り囲む不完全なセル71bの配置に合わせて、マスク170の開口171b、171bの数や位置も変更することができる。
【0052】
また、ハニカム構造体70の完全なセル71aの断面形状は、正方形でなくてもよく、例えば、長方形、三角形、多角形、円形等でもよい。また、これらが混在していても構わない。例えば、ハニカム構造体70のセル71aが円形であり、これらが正三角形配列されている、すなわち、セル71aの中心が仮想的な正三角形の頂点にそれぞれ配置されていてもよい。また、セル71aに、面積が異なるものが混在していてもよい。
【0053】
また、ハニカム構造体70の外形形状も円柱でなくてもよく、例えば、四角柱等の角柱でもよい。
【0054】
また、マスク170の外形形状は、円に限定されず、任意の形状が可能である。例えば、楕円や、矩形、三角形、六角形等の多角形を取ることができる。特に、正方形、正三角形、正六角形等の正多角形も好ましい。
【0055】
また、すべての不完全なセル71bに対して、第二開口171bを配置する必要は無く、完全なセル71aと同程度の断面積を有する不完全なセル71bに対しては、第一開口171bを配置することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、小貫通孔に対しても十分に封口材を供給可能なハニカム構造体の封口用マスク及びこれを用いた封口方法を提供できる。
【符号の説明】
【0057】
70…ハニカム構造体、71…貫通孔、71a…標準形状貫通孔(完全なセル)、71b…特殊形状貫通孔(不完全なセル)、70c…側壁、70w…隔壁、170…マスク、171a…第一開口、171b…第二開口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカム構造体の貫通孔に封口材を供給するための封口用マスクであって、
第一の断面積をそれぞれ有する複数の第一開口と、
前記複数の第一開口を取り囲むように配置され、前記第一の断面積よりも大きな断面積をそれぞれ有する複数の第二開口と、を備える封口用マスク。
【請求項2】
前記第二開口の輪郭のアスペクト比は、前記第一開口の輪郭のアスペクト比よりも大きい請求項1記載の封口用マスク。
【請求項3】
ハニカム構造体の貫通孔の封口方法であって、
(a)前記ハニカム構造体の一方の端面上にマスクを配置する工程と、
(b)前記ハニカム構造体の前記一方の端面における封口すべき貫通孔に前記マスクが有する複数の第一開口及び複数の第二開口を通じて封口材を供給する工程と、を備え、
前記マスクは、第一の断面積をそれぞれ有する前記複数の第一開口と、前記複数の第一開口を取り囲むように配置され、前記第一の断面積よりも大きな断面積をそれぞれ有する前記複数の第二開口とを有する封口方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−51369(P2012−51369A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169435(P2011−169435)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】