説明

封止リング、封止リングの劣化検知システム及び減圧処理装置

【課題】封止リングの劣化を検知する。
【解決手段】封止リング11は、環状の本体部15と、本体部15に埋設された導線13と、を有し、導線13の両端部13a、13bがそれぞれ本体部15外に引き出されている。導線13の導通状態を検出し、この検出結果を判定することにより、封止リングの劣化を検知することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止リング、封止リングの劣化検知システム及び減圧処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
チャンバ内を減圧した状態で所定の処理が行われる減圧処理装置の一例として、イオン注入装置がある。
【0003】
イオン注入装置は、例えば、チャンバと、チャンバ内において半導体基板を保持するディスクと、イオンビームを生成するイオンソースと、イオンソースからチャンバへ照射されるイオンビームの通路となるビーム通路と、チャンバ内及びビーム通路内を減圧する減圧ポンプと、を有する。
【0004】
このようなイオン注入装置によれば、減圧ポンプにより減圧することによってチャンバ内及びビーム通路内を高真空とした状態で、イオンソースにて所望のイオンビームを生成し、ビーム通路を通じてディスク上の半導体基板へイオンビームを注入することができる。
【0005】
また、イオンビームを半導体基板上に均一に注入できるように、イオンビームの進行方向に対して直交する方向へ、チャンバをビーム通路に対して相対的に移動させるイオン注入装置も提案されている(特許文献1)。
【0006】
このようにチャンバをビーム通路に対して相対移動させる際にも、チャンバ内及びビーム通路内を高真空に維持する必要がある。このため、チャンバとビーム通路との接続部は、例えば、Oリングとテフロンリング(テフロンは登録商標)とを重ねてなる2重リングにより気密が保たれるようになっている。すなわち、チャンバに形成されたリング収容溝内に、Oリングとテフロンリングとをこの順に挿入する。そして、ビーム通路と一体化されたプレートをテフロンリングに密着させる。ここで、Oリングは密着性が高く、テフロンリングは滑りが良い。このため、このような気密構造によって、ビーム通路に対するチャンバの相対移動と、チャンバとビーム通路との接続部における気密の維持と、を両立させることができる(特許文献1)。
【0007】
なお、封止リングに関するその他の技術として、特許文献2、3に記載の技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平06−162988号公報
【特許文献2】特開2005−106137号公報
【特許文献3】特開2007−078514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、本発明者が検討した結果、上述のような気密構造には、以下のような課題があることが分かった。
【0010】
すなわち、上述のような気密構造では、プレートとの摩擦等によりテフロンリングが劣化(断裂等)することがある。例えばテフロンリングが断裂した場合、テフロンリングの下側のOリングが、テフロンリングが断裂することにより生じた隙間へと浮き上がり、該Oリングがチャンバとプレートとの間に挟まれる。すると、次第にOリングが摩擦により削られ、Oリングの削れカスがチャンバ内部にまき散らされ、削れカスが半導体基板に付着する可能性がある。更に、Oリングの損耗が進行すると、チャンバ内の真空を維持することが困難となる場合がある。
【0011】
このため、テフロンリング等の封止リングの劣化を検知できることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
環状の本体部と、
前記本体部に埋設された導線と、
を有し、
前記導線の両端部がそれぞれ前記本体部外に引き出されていることを特徴とする封止リングを提供する。
【0013】
この封止リングによれば、環状の本体部と、本体部に埋設された導線と、を有し、導線の両端部がそれぞれ本体部外に引き出されているので、導線の導通状態を検出し、この検出結果を判定することにより、封止リングの劣化を検知することができる。
【0014】
また、本発明は、
本発明の封止リングと、
前記導線の両端部がそれぞれ接続され、該導線の導通状態を検出する検出部と、
前記検出部による検出結果に基づいて前記封止リングの劣化を判定する判定部と、
を有することを特徴とする封止リングの劣化検知システムを提供する。
【0015】
また、本発明は、
所定の処理が行われるチャンバと、
前記チャンバと連通する内部空間を有する連通部と、
前記チャンバと前記連通部とを減圧する減圧装置と、
前記チャンバと前記連通部とを相対的に移動させる相対移動機構と、
前記チャンバと前記連通部とを、これらが相互に連通し、且つ、これらの間の気密を維持した状態で接続する接続部と、
を有し、
前記接続部は、
前記接続部を封止する、請求項1乃至4の何れか一項に記載の封止リングと、
前記チャンバと前記連通部とのうちの何れか一方に形成され、前記封止リングを収容する環状の収容溝と、
前記チャンバと前記連通部とのうちの何れか他方と一体的に設けられた平坦部材であって、前記チャンバと前記連通部とのうちの何れか一方の方向を向く平坦面を有し、該平坦面が前記封止リングの全周に亘って接触される平坦部材と、
を有し、
更に、
前記導線の両端部がそれぞれ接続され、該導線の導通状態を検出する検出部と、
前記検出部による検出結果に基づいて前記封止リングの劣化を判定する判定部と、
を有することを特徴とする減圧処理装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、封止リングの劣化を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係る封止リングを示す平面図である。
【図2】実施形態に係る封止リングの劣化検知システムを示す模式図である。
【図3】実施形態に係る減圧処理装置の好適な一例としてのイオン注入装置を示す模式的な断面図である。
【図4】収容溝への封止リング及びOリング(第2のリング)の配置の仕方を説明するための斜視図である。
【図5】図3の要部を拡大した模式的な断面図である。
【図6】イオン注入装置のブロック図である。
【図7】比較例に係るイオン注入装置の要部を拡大した模式的な断面図である。
【図8】比較例に係るイオン注入装置の課題を説明するための模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0019】
図1は実施形態に係る封止リング11を示す平面図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る封止リング11は、環状の本体部15と、本体部15に埋設された導線13と、を有し、導線13の両端部13a、13bがそれぞれ本体部15外に引き出されている。
【0021】
導線13は、導電性の材質により構成された配線(電気導線)である。導線13は、本体部15の長手方向(周回方向)における所定の長さ範囲に亘って延在している。より具体的には、導線13は、例えば、本体部15の全周の90%以上の範囲に亘ってループ状に延在している。
【0022】
本体部15は、後述するOリング10よりも、表面の滑りがよく、且つ、弾性変形しにくい材質により構成されている(つまり、本体部15はOリング10よりも弾性率が大きい)。本体部15は、絶縁性の樹脂により構成されていることが好ましい。具体的には、例えば、テフロン(登録商標)等のフッ素樹脂により構成されていることが好ましい一例であるが、その他の樹脂成型品により構成されていても良い。また、本体部15の平面形状は、例えば、長円形状(或いは楕円形状)であることが好ましい。
【0023】
図2は実施形態に係る封止リングの劣化検知システム50を示す模式図である。
【0024】
図2に示すように、本実施形態に係る封止リングの劣化検知システム50は、本実施形態に係る封止リング11と、導線13の両端部13a、13bがそれぞれ接続され、該導線13の導通状態を検出する検出部31と、検出部31による検出結果に基づいて封止リング11の劣化を判定する判定部32と、を有する。
【0025】
検出部31と判定部32とにより、封止リング11の劣化を検知する検知ユニット30が構成されている。
【0026】
劣化検知システム50は、更に、判定部32により封止リング11が劣化していると判定された場合にその旨を報知する報知部40を有する。
【0027】
検出部31は、例えば、導線13の両端部13a、13b間に電圧を印加し、これら両端部13a、13b間に流れる電流値を検出し、その検出結果を判定部32へ出力する。
【0028】
判定部32は、検出部31による検出結果に基づいて、例えば、導線13が断線しているか否かを判定する。すなわち、検出部31による検出結果が、導線13の両端部13a、13b間に電流が流れていないことを示している場合には、判定部32は、導線13が断線しており、従って、封止リング11が劣化(例えば断裂等)していると判定する。
なお、判定部32は、検出部31による検出値が、所定の閾値よりも小さい場合に、導線13が断線しかかっており、従って、封止リング11が劣化している(例えば断裂しかかっている)と判定するようにしても良い。
【0029】
判定部32は、封止リング11が劣化していると判定した場合には、その旨を示す信号を報知部40へ出力する。
【0030】
報知部40は、所定の報知動作を行うために、例えば、発音部(スピーカ)、発光部(ランプ)或いは表示部(ディスプレイ)の少なくとも何れか1つを有している。報知部40は、判定部32より、封止リング11が劣化している旨の信号を受けると、所定の報知動作(例えば、発音、発光或いは表示のうちの少なくとも何れか1つ動作)を行う。
【0031】
図3は実施形態に係る減圧処理装置の好適な一例としてのイオン注入装置100を示す模式的な断面図である。
【0032】
図3に示すように、本実施形態に係る減圧処理装置(例えば、イオン注入装置100)は、所定の処理(例えばイオン注入)が行われるチャンバ4と、チャンバ4と連通する内部空間を有する連通部19(例えばビーム通路2及びイオンソース配置部17を含む)と、チャンバ4と連通部19とを減圧する減圧装置(真空ポンプ5、3)と、チャンバ4と連通部19とを相対的に移動させる相対移動機構(例えば、ボールスクリュー9及びスクリュー駆動源61(図6))と、チャンバ4と連通部19とを、これらが相互に連通し、且つ、これらの間の気密を維持した状態で接続する接続部20と、を有する。接続部20は、接続部20を封止する封止リング11と、チャンバ4と連通部とのうちの何れか一方に形成され、封止リング11を収容する環状の収容溝21と、チャンバ4と連通部19とのうちの何れか他方と一体的に設けられた平坦部材(プレート12)であって、チャンバ4と連通部とのうちの何れか一方の方向を向く平坦面12aを有し、該平坦面12aが封止リング11の全周に亘って接触される平坦部材と、を有し、、更に、導線13の両端部がそれぞれ接続され、該導線13の導通状態を検出する検出部31と、検出部31による検出結果に基づいて封止リング11の劣化を判定する判定部32と、を有する。
【0033】
イオン注入装置100は、半導体製造装置の1種であり、高真空中においてイオンビームを生成し、該イオンビームを半導体基板8に打ち込むものである。
【0034】
チャンバ4内には、処理対象物としての半導体基板8を保持するディスク7が配置されている。ディスク7は、例えば、円盤状に形成され、該ディスク7には、例えば、複数枚の半導体基板8を同一円周上に配置できるようになっている。なお、ディスク7は、その板面がイオンビームの進行方向に対して交差(例えば、直交)するように配置され、半導体基板8もその板面がディスク7と同じ方向を向くようにディスク7上に配置される。
【0035】
連通部19は、イオンソース配置部17と、ビーム通路2と、を有し、イオンソース配置部17とビーム通路2とは相互に連通している。
【0036】
ビーム通路2とチャンバ4内とは、連通部19とチャンバ4との接続部20を介して相互に連通している。すなわち、チャンバ4には、該チャンバ4内をビーム通路2と連通させる開口部4aが形成され、連通部19には、該連通部19内をチャンバ4内と連通させる開口部19aが形成されている。
【0037】
真空ポンプ5は、チャンバ4に接続された配管16を通じて、該チャンバ4内を高真空に減圧させる。同様に、真空ポンプ3は、ビーム通路2に接続された配管18を通じて、該ビーム通路2内を高真空に減圧させる。
【0038】
イオンソース配置部17には、イオンビームを生成するイオンソース1が配置されている。イオンソース1は、ビーム通路2を介して、ディスク7により保持された半導体基板8にイオンビームを照射する。図3の例では、イオンソース1は、イオンビームを水平に照射する。
【0039】
イオン注入装置100は、半導体基板8に対してイオンビームを均一に打ち込むことができるように、ディスク7をその板面方向において回転させるモータ6と、相対移動機構としてのボールスクリュー9及びスクリュー駆動源61(図6)と、を有している。
【0040】
ボールスクリュー9は、チャンバ4に接続されている。ボールスクリュー9がスクリュー駆動源61により正回転されることにより、チャンバ4が図3の上方に移動する一方で、ボールスクリュー9がスクリュー駆動源61により逆回転されることにより、チャンバ4が図3の下方に移動するようになっている。すなわち、チャンバ4は、連通部19に対して相対的に、例えば上下に移動する。換言すれば、チャンバ4は、イオンビームの進行方向に対して交差(具体的には例えば直交)する方向へ、連通部19に対して相対的に移動する。これにより、半導体基板8に対するイオンビームの打ち込み量が該半導体基板8の面内で均一化される。
【0041】
ここで、チャンバ4と連通部19とを接続する接続部20について説明する。
【0042】
接続部20は、例えば、封止リング11と、Oリング10(第2のリング:後述)と、これら封止リング11及びOリング10が収容される収容溝21と、連通部19と一体的に設けられたプレート12と、を有する。
【0043】
収容溝21は、チャンバ4における連通部19側の外面に形成されている。この収容溝21は、開口部4aの周囲(開口部4aの縁部)に位置している。収容溝21は、封止リング11の本体部15と同様に、例えば、長円形状(或いは楕円形状)に形成されている。
【0044】
Oリング10は、封止リング11の本体部15よりも表面の摩擦力が大きいとともに、該本体部15よりも弾性変形しやすい材質により構成されている(Oリング10の弾性率が本体部15の弾性率よりも小さい)。Oリング10は、例えば、ゴム、樹脂、エラストマーなどにより構成されている。
【0045】
Oリング10の平面形状は、封止リング11の本体部15と同様であり、Oリング10と本体部15とは収容溝21内において重ねて配置される。
【0046】
図4は収容溝21への封止リング11及びOリング10の配置の仕方を説明するための斜視図である。なお、図4においては、封止リング11の導線13の図示は省略している。図5は図3の要部を拡大した模式的な断面図である。
【0047】
図3乃至図5に示すように、収容溝21には、Oリング10と、封止リング11とが、この順に嵌め込まれている。
【0048】
なお、Oリング10は、その全体が収容溝21内に嵌め込まれているのに対し、封止リング11は、所定の厚み(第1の厚み)分だけ収容溝21から(連通部19側に)突出している。
【0049】
また、連通部19のチャンバ4側の端面は、開口部19aの周囲に向けて広がるフランジ状の部分(以下、フランジ部19b)となっている。このフランジ部19bにおけるチャンバ4側の面には、平坦なプレート12が固定されている。プレート12には、開口部19aと同様の寸法及び形状の開口部12bが形成され、これら開口部19aと開口部12bとが一致するように、プレート12がフランジ部19bに固定されている。
【0050】
そして、プレート12の平坦面12aに真空グリスを塗布した上で、該平坦面12a(チャンバ4側を向く面)が封止リング11の全周に亘って圧接されるように、プレート12とチャンバ4とが相互に押圧されている。ここで、チャンバ4内を高真空状態とすることにより、プレート12とチャンバ4とは相互に押し付けられて(吸着されて)いる。
【0051】
ここで、プレート12とチャンバ4とが相互に押し付けられることによって、封止リング11及びOリング10は収容溝21とプレート12との間で圧縮状態となるが、このように圧縮された状態でも、所定の厚み(上記第1の厚みよりも小さい第2の厚み)分だけ収容溝21から(連通部19側に)突出している。このため、プレート12とチャンバ4との間にはクリアランスが存在している。そして、このクリアランスを介して、導線13の両端部13a、13bが外部に引き出されている。
【0052】
図6はイオン注入装置100のブロック図である。
【0053】
図6に示すようにイオン注入装置100は、上述の検知ユニット30、報知部40、真空ポンプ3、5、イオンソース1及びモータ6の他に、制御部60と、スクリュー駆動源61と、を有している。
【0054】
スクリュー駆動源61は、例えば、モータ等により構成され、ボールスクリュー9を正回転及び逆回転させる。
【0055】
制御部60は、スクリュー駆動源61、真空ポンプ3、5、イオンソース1及びモータ6の動作を統括的に制御する。
【0056】
ここで、判定部32は、封止リング11が劣化していると判定した場合には、その旨を示す信号を制御部60にも出力する。
【0057】
制御部60は、この信号を受けると、スクリュー駆動源61の動作を停止させることにより、ボールスクリュー9によるチャンバ4と連通部19との相対的な移動を停止させる。すなわち、イオン注入装置100は、判定部32により封止リング11が劣化していると判定された場合に、相対移動機構によるチャンバ4と連通部19との相対的な移動を停止させる停止制御部(制御部60)を有する。
【0058】
次に、動作を説明する。
【0059】
半導体基板8に対するイオン注入処理を行うには、先ず、ディスク7により複数枚の半導体基板8を保持させ、真空ポンプ3、5によりチャンバ4内及び連通部19内を高真空にする。そして、モータ6によりディスク7を高速回転させるとともに、ボールスクリュー9により連通部19に対して相対的にチャンバ4を上下に移動させながら、イオンソース1にて生成されたイオンビームをビーム通路2を介してチャンバ4内の半導体基板8に注入する。これにより複数枚の半導体基板8に対して一度の処理で、イオンを均一に注入することができる。
【0060】
ここで、接続部20は上述した構造となっているため、チャンバ4が連通部19に対して相対的に上下動する際には、封止リング11がプレート12の平坦面12aに対して上下に摺動する。この摺動の際にも、プレート12の平坦面12aと封止リング11とが密着し、接続部20における気密が保たれるので、チャンバ4内及び連通部19内は高真空に維持される。
【0061】
なお、封止リング11の本体部15及びOリング10は、何れも、チャンバ4の移動方向に長尺な長円形となっている。これにより、チャンバ4の移動による本体部15及びOリング10への負荷が抑制される。
【0062】
ここで、図7及び図8を参照して、比較例に係るイオン注入装置200について説明する。図7はイオン注入装置200の要部を拡大した模式的な断面図、図8はイオン注入装置200の課題を説明するための模式的な断面図である。
【0063】
図7に示すように、イオン注入装置200は、劣化検知システム50を有しておらず、封止リング11の代わりに封止リング211を有している点でのみ、イオン注入装置100と相違する。その他の点では、イオン注入装置200はイオン注入装置100と同様に構成されている。
【0064】
封止リング211は、導線13を有していない点でのみ封止リング11と相違し、その他の点では封止リング11と同様に構成されている。
【0065】
イオン注入装置200を用いて半導体基板8に対してイオン注入を行う場合、グリス切れ(真空グリスの不足)による封止リング211とプレート12との摩擦力の増大、プレート12のキズ、封止リング211の傷、或いはその他の影響により、長円形の封止リング211のカーブ部分に過大な力が掛かり、封止リング211が劣化(断裂等)することがある。
【0066】
封止リング211が断裂した場合、収容溝21内において元々は封止リング211の奥に配置されていたOリング10が、図8に示すように封止リング211が断裂することによって生じた隙間へ浮き上がってきて、チャンバ4とプレート12との間に挟まれる。そして、チャンバ4が上下に移動するにつれてOリング10が削れ、Oリング10の削れカスがチャンバ4内部にまき散らされ、削れカスが半導体基板8に付着する可能性がある。
或いは、Oリング10の削れ具合が進行し、Oリング10が断裂してしまうと、チャンバ4の内部の真空を維持できない可能性がある。
【0067】
一方、本実施形態の場合も、グリス切れによる封止リング11の本体部15とプレート12との摩擦力の増大、プレート12のキズ、本体部15の傷、或いはその他の影響により、長円形の本体部15のカーブ部分に過大な力が掛かり、本体部15が劣化(断裂等)することがある。
【0068】
ただし、本実施形態の場合は、封止リング11の本体部15が劣化(断裂等)した際に、本体部15内の導線13も断線するか又は断線に近い状態となる。よって、検出部31による電流値の検出値が0となるないしは低下するので、判定部32は封止リング11の劣化を判定する。すると、封止リング11が劣化した旨を示す信号が判定部32から報知部40及び制御部60へ出力される。このため、報知部40からは、封止リング11が劣化した旨の報知がなされる一方で、制御部60はスクリュー駆動源61の動作を停止させ、ボールスクリュー9によるチャンバ4と連通部19との相対的な移動を停止させる。よって、本実施形態の場合には、比較例の場合とは異なり、Oリング10の削れが抑制されるので、その削れカスによる半導体基板8の汚染が抑制されるとともに、チャンバ4内が真空状態に維持される。
【0069】
以上のような実施形態に係る封止リング11によれば、環状の本体部15と、本体部15に埋設された導線13と、を有し、導線13の両端部13a、13bがそれぞれ本体部15外に引き出されている。よって、導線13の導通状態を検出し、この検出結果を判定することにより、封止リング11の劣化を検知することができる。
【0070】
より具体的には、導線13は、本体部15の長手方向における所定の長さ範囲に亘って延在しているので、導線13が埋設された範囲における本体部15の劣化を検知することができる。より具体的には、導線13は、本体部15の全周の90%以上の範囲に亘って延在しているので、本体部15のほぼ全周に亘って、その劣化を検知することができる。
【0071】
また、本実施形態に係る封止リングの劣化検知システム50によれば、封止リング11と、導線13の両端部13a、13bがそれぞれ接続され、該導線13の導通状態を検出する検出部31と、検出部31による検出結果に基づいて封止リング11の劣化を判定する判定部32と、を有する。よって、導線13の導通状態を検出し、この検出結果に基づいて封止リング11の劣化を検知することができる。
【0072】
また、判定部32により封止リング11が劣化していると判定された場合にその旨を報知する報知部40を有するので、例えばイオン注入装置100のオペレータは、その旨を認識することができるので、例えばイオン注入装置100の運転停止後、封止リング11の交換等の適切な処置を実行することができる。
【0073】
また、本実施形態に係るイオン注入装置100によれば、本実施形態に係る劣化検知システム50と同様の効果が得られる。
【0074】
また、イオン注入装置100は、判定部32により封止リング11が劣化していると判定された場合に、相対移動機構によるチャンバ4と連通部19との相対的な移動を停止させる停止制御部としての制御部60を有する。よって、封止リング11が劣化した場合に、このチャンバ4と連通部19との相対移動を自動的に停止させることができ、Oリング10の劣化の進行(削れ)、或いは、封止リング11の更なる劣化の進行を抑制することができる。
【0075】
上記の実施形態では、減圧処理装置がイオン注入装置100である例を説明したが、本発明は、その他の減圧処理装置にも適用することができる。
【0076】
また、上記の実施形態では、相対移動機構がチャンバ4を上下に移動させる例を説明したが、相対移動機構はチャンバ4を水平方向(例えば図3の手前の方向び奥の方向)に移動させるのであっても良い。
【0077】
また、上記の実施形態では、収容溝21がチャンバ4に形成され、プレート12が連通部19に固定されている例を説明したが、収容溝21が連通部19(のフランジ部19b)に形成され、プレート12がチャンバ4に固定されていても良い。
【符号の説明】
【0078】
1 イオンソース
2 ビーム通路
4 チャンバ
4a 開口部
3、5 真空ポンプ
6 モータ
7 ディスク
8 半導体基板
9 ボールスクリュー
10 Oリング
11 封止リング
12 プレート
12a 平坦面
12b 開口部
13 導線
13a、13b 両端部
15 本体部
16 配管
17 イオンソース配置部
18 配管
19 連通部
19a 開口部
19b フランジ部
20 接続部
21 収容溝
30 検知ユニット
31 検出部
32 判定部
40 報知部
50 劣化検知システム
60 制御部
61 スクリュー駆動源
100 イオン注入装置
200 イオン注入装置
211 封止リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の本体部と、
前記本体部に埋設された導線と、
を有し、
前記導線の両端部がそれぞれ前記本体部外に引き出されていることを特徴とする封止リング。
【請求項2】
前記導線は、前記本体部の長手方向における所定の長さ範囲に延在していることを特徴とする請求項1に記載の封止リング。
【請求項3】
前記導線は、前記本体部の全周の90%以上の範囲に亘って延在していることを特徴とする請求項1又は2に記載の封止リング。
【請求項4】
前記本体部はフッ素樹脂により構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の封止リング。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の封止リングと、
前記導線の両端部がそれぞれ接続され、該導線の導通状態を検出する検出部と、
前記検出部による検出結果に基づいて前記封止リングの劣化を判定する判定部と、
を有することを特徴とする封止リングの劣化検知システム。
【請求項6】
前記判定部により前記封止リングが劣化していると判定された場合にその旨を報知する報知部を更に有することを特徴とする請求項5に記載の封止リングの劣化検知システム。
【請求項7】
所定の処理が行われるチャンバと、
前記チャンバと連通する内部空間を有する連通部と、
前記チャンバと前記連通部とを減圧する減圧装置と、
前記チャンバと前記連通部とを相対的に移動させる相対移動機構と、
前記チャンバと前記連通部とを、これらが相互に連通し、且つ、これらの間の気密を維持した状態で接続する接続部と、
を有し、
前記接続部は、
前記接続部を封止する、請求項1乃至4の何れか一項に記載の封止リングと、
前記チャンバと前記連通部とのうちの何れか一方に形成され、前記封止リングを収容する環状の収容溝と、
前記チャンバと前記連通部とのうちの何れか他方と一体的に設けられた平坦部材であって、前記チャンバと前記連通部とのうちの何れか一方の方向を向く平坦面を有し、該平坦面が前記封止リングの全周に亘って接触される平坦部材と、
を有し、
更に、
前記導線の両端部がそれぞれ接続され、該導線の導通状態を検出する検出部と、
前記検出部による検出結果に基づいて前記封止リングの劣化を判定する判定部と、
を有することを特徴とする減圧処理装置。
【請求項8】
前記判定部により前記封止リングが劣化していると判定された場合に、前記相対移動機構による前記チャンバと前記連通部との相対的な移動を停止させる停止制御部を更に有することを特徴とする請求項7に記載の減圧処理装置。
【請求項9】
前記接続部は、前記封止リングよりも表面の摩擦力が大きい第2のリングを有し、
前記収容溝には、前記第2のリングと、前記封止リングとが、この順に嵌め込まれていることを特徴とする請求項7又は8に記載の減圧処理装置。
【請求項10】
前記チャンバ内において処理対象物を保持するディスクと、
前記連通部に配置され、イオンビームを生成するイオンソースと、
を有し、
前記イオンソースは、前記連通部を介して、前記ディスクにより保持された前記処理対象物にイオンビームを照射し、
当該減圧処理装置はイオン注入装置であることを特徴とする請求項7乃至9の何れか一項に記載の減圧処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−31882(P2012−31882A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169531(P2010−169531)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】