説明

封止材ならびにそれを用いた成形品、光学部材及び発光ダイオード

【課題】優れた耐熱性、耐熱変色性、及び透明性を有し、かつ、比較的低温環境下であっても硬化性に優れた封止材を提供する。
【解決手段】本発明の封止材は、下記一般式(I)で示される構造を有する(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)とラジカル重合性不飽和単量体(B)とを含有することを特徴とする。一般式(I)中、Zは、分子量65〜265の脂肪族環式構造含有アルキレン基を表し、Tは、脂肪族環式構造含有アルキレン基又は鎖状アルキレン基を表し、前記Mは、(メタ)アクリロイル基を含む原子団を表す。
[化1]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジカル重合性の封止材およびそれを用いた成形品に関する。本発明は、特に、低温での硬化性に優れ、熱による封止材硬化物の変色が極めて少なく、臭気の少ない封止材に関し、透明電気注型用、LED封止用等の透明性を有する光学分野を含め幅広く使用される。
【背景技術】
【0002】
不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ(メタ)クリレート系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂等に代表されるラジカル重合性組成物は、ラジカル重合性に起因する優れた速硬化性を活かし、モーター等の電気封止部材等の製造場面で幅広く使用されている。
一方、封止材は、近年、前記技術分野以外にも、LEDやレンズ、ディスプレイ等の光学部材を製造する場面で使用することが検討されており、かかる分野で使用される光学部材用の封止材には、透明性と耐熱変色性に優れることが求められる場合が多い。
しかし、前記したようなラジカル重合性組成物は、速硬化性に優れるものの、耐熱変色性の点で十分でないため、特に光学部材の製造場面で使用されるには至っていないのが実情である。
前記透明性や耐熱変色性の良好な封止材としては、例えば脂環式エポキシ樹脂と、硬化剤としての酸無水物を含む組成物が知られている。
しかし、前記脂環式エポキシ樹脂と硬化剤との組み合わせでは、それらを完全硬化するために高い温度で長時間反応を継続する必要がある等、ラジカル重合性樹脂に比較し硬化性に劣り、また耐熱変色性も未だ十分といえるものではなかった。
【0003】
このような問題を解決するために、脂環式構造とエチレン性不飽和基を有する樹脂を含むLED封止用硬化性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1)。
また、芳香族多価イソシアネートを使用したウレタン(メタ)アクリレート化合物から構成される硬化性樹脂組成物の経時による黄変、及び成形物の保護層としての性能劣化を抑制しうる硬化性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−332262号公報
【特許文献2】特開2001−288230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の硬化性樹脂組成物においては、ラジカル重合性に起因して優れた硬化性を有するものの、耐熱変色性においては、十分なものではなかった。
また、特許文献2に記載の硬化性樹脂組成物においては、比較的良好な耐光変色性と機械的強度とを考慮した成形品を形成できるものの、かかる成形品は耐熱変色性の点で十分でない場合があった
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、優れた耐熱性、耐熱変色性、及び透明性を有し、かつ、比較的低温環境下であっても硬化性に優れた封止材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の封止材は、下記一般式(I)で示される構造を有する(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)とラジカル重合性不飽和単量体(B)とを含有することを特徴とする。
【0008】
【化1】

(一般式(I)中、Zは、分子量65〜265の脂肪族環式構造含有アルキレン基を表し、Tは、脂肪族環式構造含有アルキレン基又は鎖状アルキレン基を表し、前記Mは、(メタ)アクリロイル基を含む原子団を表す。)
【0009】
(2)本発明の封止材は、熱硬化剤又は光硬化剤(C)を更に含むことが好ましい。
【0010】
(3)本発明の封止材は、前記(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)が、分子量100〜300の脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)と、脂環式ポリイソシアネート又は脂肪族ポリイソシアネート(a2)と、活性水素原子含有(メタ)アクリレート(a3)とを反応させて得られるものであり、前記ラジカル重合性不飽和単量体(B)が、脂肪族環式構造、脂肪族鎖状構造又はイソシアヌル酸構造を有するものであることが好ましい。
【0011】
(4)本発明の封止材は、前記脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)がシクロヘキサンジメタノールであり、かつ前記脂環式ポリイソシアネート又は脂肪族ポリイソシアネート(a2)がイソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びノルボルネンジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0012】
(5)本発明の封止材は、前記ラジカル重合性不飽和単量体(B)が、イソボルニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、及びイソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0013】
(6)本発明の封止材は、前記活性水素原子含有(メタ)アクリレート(a3)が2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又はイソシアヌル酸構造を有する水酸基含有(メタ)アクリレートであることが好ましい。
(7)本発明の成形品は、前記封止材を用い封止して得られたことを特徴とする。
(8)本発明の光学部材は、前記封止材を用い封止して得られたことを特徴とする。
(9)本発明の発光ダイオードは、前記封止材を用い封止して得られたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、優れた耐熱性、耐熱変色性、及び透明性を有し、かつ、比較的低温環境下であっても硬化性に優れた封止材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1で得られたポリウレタン(I)のIRスペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の封止材に用いられる(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)(以下、(A)成分という。)は、下記一般式(I)で示される構造を有するものである。
【0017】
【化2】

(一般式(I)中、Zは、分子量65〜265の脂肪族環式構造含有アルキレン基を表し、Tは、脂肪族環式構造含有アルキレン基又は鎖状アルキレン基を表し、前記Mは、(メタ)アクリロイル基を含む原子団を表す。)
【0018】
前記一般式(I)中のZは、脂肪族環式構造含有アルキレン基であり、脂肪族環式基と鎖状アルキレン基とから構成される。
脂肪族環式構造含有アルキレン基としては、脂肪族環式基(脂肪族炭化水素環から水素原子を2個除いた基)、該脂肪族環式基が鎖状アルキレン基の末端に結合するか又は鎖状アルキレン基の途中に介在する基などが挙げられる。
鎖状アルキレン基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。
ここで、Zにおけるアルキレン基が、脂肪族環式基を有さず、鎖状アルキレン基や、芳香族環を有する炭化水素基である場合、(A)成分を含有する封止材の耐熱性が十分でないため、該封止材は、封止材硬化物の変形等を引き起こしやすく、また、熱や光の影響によって変色する場合がある。
【0019】
Zにおける前記脂肪族環式構造含有アルキレン基の分子量は、65〜265であり、比較的小さいことが好ましい。
例えば、前記脂肪族環式構造含有アルキレン基は、後述する脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)と、後述する脂肪族環式構造含有アルキレン基含有ポリイソシアネート(以下、脂環式ポリイソシアネート)又は鎖状アルキレン基含有ポリイソシアネート(以下、脂肪族ポリイソシアネート)(a2)とを反応させることによって式(I)中に導入される(a1)に由来する構造であることが好ましく、その分子量は後述する(a1)から2つの水酸基を除いた分子量に相当する。
例えば前記脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)として分子量100〜300の範囲のものを使用した場合、前記脂肪族環式構造含有アルキレン基の分子量は、前記100〜300の範囲と、2つの水酸基の式量34.016との差分となる。
なお、Zにおける脂肪族環式構造含有アルキレン基の分子量は、脂肪族環式基を含むアルキレン基を構成する元素の式量に基づいて算出した値を示す。
【0020】
前記一般式(I)中のTは、脂肪族環式構造含有アルキレン基又は鎖状アルキレン基であり、例えば、後述する脂環式ポリイソシアネート又は脂肪族ポリイソシアネート(a2)由来の構造が挙げられる。
前記一般式(I)中のZが脂肪族環式構造含有アルキレン基であっても、前記Tが脂肪族環式構造含有アルキレン基又は鎖状アルキレン基でなく、例えば芳香族環を有する炭化水素基である場合には、封止材の耐熱変色性が低下する場合がある。
【0021】
前記一般式(I)中のMは、(メタ)アクリロイル基を含む原子団である。例えば、後述する活性水素原子含有(メタ)アクリレート(a3)由来の構造が挙げられ、該構造は前記(A)成分の分子中に(メタ)アクリロイル基を付与する。前記(メタ)アクリロイル基は、前記(A)成分の分子末端にそれぞれ1〜10個存在することが好ましく、1〜3個存在することがより好ましい。
【0022】
前記(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)としては、500〜1500の分子量を有するものを使用することが好ましく、500〜1200のものを使用することがより好ましい。なお、その分子量は、(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)を構成する原子の式量に基づき、その合計量から求められる値を指す。
【0023】
前記(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)は、例えば、脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)と、脂環式ポリイソシアネート又は脂肪族ポリイソシアネート(a2)と、活性水素原子含有(メタ)アクリレート(a3)とを用いて製造することができる。
より具体的には、例えば脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)と、脂環式ポリイソシアネート又は脂肪族ポリイソシアネート(a2)とを反応させることによって分子末端にイソシアネート基を有するポリウレタン(A−1)を得、次いで前記ポリウレタン(A−1)と活性水素原子含有(メタ)アクリレート(a3)とを反応させることによって容易に製造することができる。
【0024】
脂肪族環式構造含有ポリオールとは、分子内に脂肪族環式基(脂肪族炭化水素環から水素原子を2個除いた基)を含有するポリオールをいう。
脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)としては、例えば1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン等の脂環式ジオール等を使用することができる。
中でも分子量が100〜300の範囲である脂肪族環式構造含有ポリオールが好ましく、シクロヘキサンジメタノールがより好ましく、1,4−シクロヘキサンジメタノールが特に好ましい。
1,4−シクロヘキサンジメタノールは、後述するラジカル重合性組成物を製造する際の、(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)のラジカル重合性不飽和単量体(B)に対する溶解性をより向上させるとともに、封止材を硬化して得られる成形物に、より一層優れた機械的強度を付与でき、かつ、封止材の硬化物の耐熱変色性を一層向上できる。
【0025】
脂環式ポリイソシアネートとは、分子内に脂肪族環式構造含有アルキレン基を含有するポリイソシアネートをいう。
脂肪族ポリイソシアネートとは、分子内に鎖状アルキレン基を含有するポリイソシアネートをいう。
本発明で使用する脂環式ポリイソシアネート又は脂肪族ポリイソシアネート(a2)としては、例えば1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチルシクロヘキサン)、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;これらのヌレートを、単独又は併用して使用することができる。
中でも、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネートが好ましい。
イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネートを使用することにより、ラジカル重合性組成物を製造する際の、(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)のラジカル重合性不飽和単量体(B)に対する溶解性を一層向上するとともに、封止材を硬化して得られる成形物により一層優れた機械的強度や耐熱変色性を付与でき、各種部材に対する密着性にも優れる。
また、本発明の封止材は、前記一般式(I)における脂肪族環式構造を芳香族構造に置換した化合物を、本発明の性能を損なわない程度に、任意成分として、含有していてもよい。
【0026】
本発明で使用する活性水素原子含有(メタ)アクリレート(a3)としては、例えば、
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。その他に、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基を2個有するアルコールのモノ(メタ)アクリレート類;α−オレフィンエポキシドと(メタ)アクリル酸の付加物;カルボン酸グリシジルエステルと(メタ)アクリル酸の付加物;トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート;イソシアヌル酸エチレンオキシド変性モノ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート等のイソシアヌル酸構造を有する水酸基含有(メタ)アクリレート;アミノメチル(メタ)アクリレート、2−アミノエチル(メタ)アクリレート、3−アミノプロピル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸のエチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフランを含むブチレンオキシド付加物;上記水酸基含有(メタ)アクリレートの酸無水物付加物等が挙げられる。これらは単独で使用しても、発明の効果を妨げない範囲で併用して使用しても良い。
中でも、水酸基含有(メタ)アクリレートを使用することが好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又はイソシアヌル酸構造を有する水酸基含有(メタ)アクリレートを使用することがより好ましい。
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを使用することにより、前記封止材を用いて封止された成形品により優れた耐熱性と強度と付与でき、また、該封止材に一層の低温硬化性を付与することができる。
また、イソシアヌル酸構造を有する水酸基含有(メタ)アクリレートを使用することにより、前記封止材を用いて封止された成形品により優れた耐熱変色性を付与することができる。
【0027】
前記脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)と前記脂環式ポリイソシアネート又は脂肪族ポリイソシアネート(a2)との反応は、例えば前記脂環式ポリイソシアネート又は脂肪族ポリイソシアネート(a2)のイソシアネート基と、前記脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)の水酸基との当量比[(a2)のイソシアネート基/(a1)の水酸基]が1.3/1〜2.5/1の範囲になるような条件で行うことが好ましく、1.5/1〜2/1の範囲になるような条件で行うことがより好ましい。これにより、分子末端にイソシアネート基を有するポリウレタン(A−1)を容易に製造することができる。
【0028】
前記脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)と前記脂環式ポリイソシアネート又は脂肪族ポリイソシアネート(a2)との反応は、50〜110℃の温度範囲で行うことが好ましく、60〜90℃の温度範囲で行うことがより好ましい。
また、分子末端にイソシアネート基を有するポリウレタン(A−1)の数平均分子量は、400〜1300であることが好ましく、400〜1000であることがより好ましい。上記範囲内の数平均分子量とするための反応条件は適宜決定することができる。反応条件としては、例えば、上記反応温度範囲にて行い、必要に応じ反応触媒を併用することが好ましい。
また、前記分子末端にイソシアネート基を有するポリウレタン(A−1)を製造する際には、重合禁止剤を用いることができる。重合禁止剤としては、後述するものが挙げられ、例えば、ポリウレタン(A−1)に対して10〜1500ppmで用いることができる。
【0029】
また、(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)の製造方法としては、前記分子末端にイソシアネート基を有するポリウレタン(A−1)と活性水素原子含有(メタ)アクリレート(a3)とを反応させる方法が好ましく挙げられる。
かかる反応は、前記活性水素原子含有(メタ)アクリレート(a3)が有する水酸基、アミノ基、又はカルボキシル基と、前記ポリウレタン(A−1)中に残存するイソシアネート基との当量割合が、活性水素当量/イソシアネート当量=1/1〜1.3/1となる条件で行うことが好ましい。
前記分子末端にイソシアネート基を有するポリウレタン(A−1)と活性水素原子含有(メタ)アクリレート(a3)との反応は、50〜100℃の温度範囲で行うことが好ましい。
前記(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)を製造する際には、後述するようなオクチル錫系化合物などの公知の触媒を使用することができる。
また、前記(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)を製造する際には、重合禁止剤を用いることができる。重合禁止剤としては、後述するものが挙げられ、例えば、(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)に対して10〜1500ppmで用いることができる。
【0030】
前記触媒としては、例えば、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラエチルチタネート等の有機チタン化合物;オクチル酸錫、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ジバーサテート等の有機錫化合物;ジルコニウム系化合物;鉄系化合物;さらには、塩化第一錫、臭化第一錫、ヨウ化第一錫等の酸やアルカリ等が挙げられる。これらの触媒の添加量は、全仕込み量に対して5〜10000ppmであることが好ましい。
【0031】
本発明の封止材は、前記(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)とともに、ラジカル重合性不飽和単量体(B)等を含有するものである。
【0032】
前記ラジカル重合性不飽和単量体(B)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ジビニルベンゼン、tert−ブチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル;ジアリールフタレート;トリアリール(イソ)シアヌレート;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸モノエステル;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)のジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル〕プロパン、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド(EO)変性(n=2)ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸のエチレンオキシド(EO)変性(n=1〜3の単体又は混合物)ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ジエステル;イソシアヌル酸のエチレンオキシド(EO)変性(n=1〜3の単体又は混合物)トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸トリエステル;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ペンタエステル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸のエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物等、樹脂と架橋可能な重合性不飽和化合物を使用することができる。
中でも、脂肪族環式構造、脂肪族鎖状構造又はイソシアヌル酸構造を含有するラジカル重合性不飽和単量体であることが好ましく、更には、イソボルニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレート、或いは、これら単量体の混合物からなるラジカル重合性不飽和単量体を用いることが、封止材の耐熱変色性および低臭気に於いてより好ましい。
前記ラジカル重合性不飽和単量体(B)は、前記(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)と前記ラジカル重合性不飽和単量体(B)との質量割合[(A)/(B)]が80/20〜20/80となる範囲で使用することが好ましい。
【0033】
本発明の封止材においては、加熱等によって(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)が有する(メタ)アクリロイル基と、前記ラジカル重合性不飽和単量体(B)が有する不飽和基とのラジカル重合を進行させ、機械的強度や耐熱性等に優れた成形品を得るうえで、熱又は光によって硬化反応を進行させる熱硬化剤又は光硬化剤(C)を使用することが好ましい。
熱硬化剤は、熱により硬化反応に必要なラジカルを発生し、封止材を硬化させることができる。該熱硬化剤としては、各種分解温度の異なる過酸化物が市販されており、硬化温度条件と最適熱硬化剤を選択することにより、低温環境下であっても封止材を硬化させることができる。
【0034】
前記熱硬化剤としては、例えばジアシルパーオキシド系、パーオキシエステル系、ハイドロパーオキシド系、ジアルキルパーオキシド系、ケトンパーオキシド系、パーオキシケタール系、アルキルパーエステル系、パーカーボネート系等の公知のものを使用することができる。
前記熱硬化剤は、前記ラジカル重合性組成物を構成する(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)と前記ラジカル重合性不飽和単量体(B)との合計100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲で使用することが好ましく、0.3〜3質量部の範囲で使用することがより好ましい。
前記光硬化剤としては、紫外線硬化剤が挙げられ、例えば、アシルホスフィンオキシド系、ベンゾインエーテル系、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系、チオキサントン系化合物等を使用することができる。また、電子線硬化剤としては、例えば、ハロゲン化アルキルベンゼン、ジスルファイド系化合物等を使用することができる。
なお、光硬化剤として、電子線硬化剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で併用してもよい。
【0035】
本発明の封止材は、例えば前記した方法で(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)を製造し、次いで、該(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)と前記ラジカル重合性不飽和単量体(B)とを混合、攪拌することによって製造することができる。前記熱硬化剤又は光硬化剤(C)は、前記(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)と前記ラジカル重合性不飽和単量体(B)とを混合する際に使用してもよいが、予め(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)と前記ラジカル重合性不飽和単量体(B)とを混合して得られたラジカル重合性組成物に対して、混合し使用することが好ましい。前記混合は、例えば攪拌機、ニーダー、ロールミル、スクリュー押出式混練機等の装置を使用して行ってもよい。
【0036】
本発明の封止材の粘度は、2.0〜800dPa・sの範囲にあることが好ましい。最適な粘度は、成形方法、用途によって異なる。即ち、ポッティング等による成形方法では、一定の粘度が必要で、粘度が低すぎる場合は、樹脂が成形とともに流れ出してしまい、所望の形状が得ることができない場合もあり、成形法に応じた最適な粘度に調整する必要がある。粘度を下げる場合、樹脂を予め加温し、最適な粘度に調整後、成形することができる。また、本発明の性能を損なわない範囲で、ラジカル重合性不飽和単量体を添加することにより、最適粘度を調整することが可能である。封止材の粘度は、JIS−K−6901に準じて、公知の装置等を用いて測定することができる。
【0037】
本発明の封止材には、必要に応じて重合禁止剤や硬化促進剤等を使用することができる。
前記重合禁止剤としては、例えば、トルハイドロキノン、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、1,4−ナフトキノン、パラベンゾキノン、トルハイドロノン、p−tert−ブチルカテコール、2,6−tert−ブチル−4−メチルフェノール等を使用することができる。重合禁止剤の使用量は、封止材中10〜1500ppmが好ましい。
【0038】
前記硬化促進剤としては、例えば、ナフテン酸コバルト、オクテン酸コバルト、オクテン酸バナジル、ナフテン酸銅、ナフテン酸バリウム等の金属石鹸類;バナジルアセチルアセテート、コバルトアセチルアセテート、鉄アセチルアセトネート等の金属キレート化合物;N,N−ジメチルアミノ−p−ベンズアルデヒド、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒド、4−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノベンズアルデヒド、4−メチルヒドロキシエチルアミノベンズアルデヒド、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン、N−エチル−m−トルイジン、トリエタノールアミン、m−トルイジン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェニルモルホリン、ピペリジン、ジエタノールアニリン等の化合物が挙げられる。本発明の封止材においては、これらを少量添加して用いることも可能である。
【0039】
また、本発明の封止材には、必要に応じて従来から一般的に知られている不飽和ポリエステル樹脂、ビニルウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイソシアネート、ポリエポキシド、アクリル樹脂類、アルキッド樹脂類、尿素樹脂類、メラミン樹脂類、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル系共重合体、ポリジエン系エラストマー、飽和ポリエステル類、飽和ポリエーテル類;ニトロセルローズ、セルローズアセテートブチレートなどのセルローズ誘導体;アマニ油、桐油、大豆油、ヒマシ油、エポキシ化油等の油脂類等、他の慣用の天然および合成高分子化合物を添加できる。
また、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、テトロン繊維等の有機繊維;金属繊維;ジュートやマニラ麻等の天然植物繊維;炭酸カルシウム、タルク、マイカ、クレー、シリカパウダー、コロイダルシリカ、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、ガラス粉、ガラスビーズ、砕砂等の充填剤を配合して用いることもできる。さらにステアリン酸亜鉛、チタン白、亜鉛華、その他各種顔料安定剤;難燃剤;消泡剤;内部離型剤;熱可塑性樹脂等の低収縮剤;低収縮剤がラジカル重合性樹脂と非相溶の場合は相溶化剤;老化防止剤、可塑剤、骨材、難燃剤、光安定剤、熱安定剤等の他の添加剤を使用することができる。
本発明の封止剤は、希釈溶媒としての有機溶媒を含んでもよく、これら有機溶剤は、前記封止剤を硬化せしめる前に、加熱により揮発除去されるものであり、用いる熱硬化剤に依存する硬化温度を考慮し用いることができる。例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ミネラルスピリットなどの脂肪族系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アニソール、フェネトールなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールジアセテートなどのエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエーテルエステル系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、また混合して用いてもよい。
【0040】
本発明の封止材を透明性の求められる光学部材の封止に使用する場合は、透明性を損なわない封止材を使用する必要があるため、前記添加剤としても透明性の低下を引き起こしにくいものを使用することが好ましい。具体的には、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、石英ガラス等を用いることができる。また、金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化ボロン等の熱伝導性フィラーも用いることができる。
【0041】
また、本発明の封止材を、例えばLED等の封止部材に使用する場合には、その回路パターン等を形成する金属材料等の無機材料に対する密着性を向上させる観点から、シランカップリング材を用いることが好ましい。例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等を用いることができる。
【0042】
本発明の封止材においては、熱硬化剤の種類を選択することにより、その硬化温度を調整することができる。しかし、本発明の封止材を比較的熱に弱い部材の封止に使用する場合には、本発明の封止材を硬化させるために高温加熱することができないため、概ね50〜100℃の範囲で加熱することが好ましく、比較的低温の50℃〜80℃の範囲で加熱硬化することで封止された成形品を得ることがより好ましい。
【0043】
本発明の封止材は、例えばLED、レンズ、ディスプレー等の光学部材を製造する際の封止材として用いることができる。
前記LEDとしては、ランプ砲弾型、SMD型、チップ型等のいずれの種類に適用できる。封止硬化方法は、通常、エポキシ樹脂において用いられる手法が適用でき、発光素子が配置された部材に、型を用いた流し込み注型成形、ディスペンサーを用いた注型、型の中に樹脂を流し込み、発光素子をディップさせた後硬化させる等、で成形することが可能である。また、スクリーン印刷等による薄膜塗工後、硬化させ、薄膜耐熱変色性を有する特徴を活かした適用も可能である。
【0044】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りがない限り「部」は「質量部」、「%」は「質量%」である。
【0045】
(実施例1)
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口、及び還流冷却器を備えた2リットルの四つ口フラスコに、1,4−シクロヘキサンジメタノール202部、イソホロンジイソシアネートを622部、トルハイドロキノンを50ppm仕込み、90℃で約2時間加熱攪拌して分子末端にイソシアネート基を有するポリウレタンを得た。その後、2−ヒドロキシエチルメタクリレート382部と錫系触媒50ppmを添加し、90℃で約7時間反応させることで、分子量848の(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(以下、ポリウレタン(I))を得た(NCO%:0.3以下)。尚、前記分子量は、前記ポリウレタン(I)を構成する原子の式量に基づき計算して求めた値である。
次いで、得られた該ポリウレタン(I)とラジカル重合性不飽和単量体として2−ヒドロキシエチルメタクリレートとを混合することによって、下記表1記載の配合割合からなるラジカル重合性組成物を得た。得られた該ラジカル重合性組成物300部にラジカル硬化剤パーキュアーHO(N)(日油株式会社製;熱硬化剤)3部を添加して均一になる様混合し、実施例1の封止材を得た。
また、前記封止材を用い下記注型板作成法に従うことによって注型板を得た。
【0046】
また、下記条件におけるIRスペクトルの測定により、実施例1にて得られたポリウレタン(I)を同定した。IRスペクトルを図1に示す。尚、図1中、横軸は波長(cm−1)を表し、スペクトル中のピークの帰属はそれぞれ以下のとおりである。
(IRスペクトル測定条件)
測定機器:赤外分光光度計FT/IR−460(日本分光(株)製)。
測定法:KBrプレート使用による透過法。
積算回数:16回。
【0047】
(ピークの帰属)
[シクロヘキサンジメタノール由来のピーク]
2920cm−1、2860cm−1、1450cm−1:C−H振動。
1030cm−1:C−O吸収。
[ウレタン結合生成確認のピーク]
1710cm−1:C=O基
1530cm−1:〜N(H)−C=O〜。
[イソシアネート基が消失していることを確認するピーク]
2260〜2270cm−1:NCO基。
【0048】
(実施例2)
実施例1でポリウレタン(I)を希釈する際に使用した2−ヒドロキシエチルメタクリレートの代わりに、ラジカル重合性不飽和単量体として、イソボルニルメタアクリレートを使用すること以外は、実施例1と同様の方法によって、下記表1記載の配合割合からなる封止材を得た。また、実施例1で得た封止材の代わりに実施例2で得た封止材を使用すること以外は実施例1と同様の方法で注型板を作製した。
【0049】
(実施例3)
実施例1でポリウレタン(I)を希釈する際に使用した2−ヒドロキシエチルメタクリレートの代わりに、ラジカル重合性不飽和単量体として、ジシクロペンタニルメタアクリレートを使用すること以外は、実施例1と同様の方法によって、下記表1記載の配合割合からなる封止材を得た。また、また、実施例1で得た封止材の代わりに実施例3で得た封止材を使用すること以外は実施例1と同様の方法で注型板を作製した。
【0050】
(実施例4)
実施例1でポリウレタン(I)を希釈する際に使用した2−ヒドロキシエチルメタクリレートの代わりに、ラジカル重合性不飽和単量体として、2−ヒドロキシエチルメタクリレートとイソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジアクリレートとイソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリアクリレートとを使用すること以外は、実施例1と同様の方法によって、下記表1記載の配合割合からなる封止材を得た。また、実施例1で得た封止材の代わりに実施例4で得た封止材を使用すること以外は実施例1と同様の方法で注型板を作製した。
【0051】
(実施例5)
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口、及び還流冷却器を備えた2リットルの四つ口フラスコに、1,4−シクロヘキサンジメタノール202部、イソホロンジイソシアネートを622部、トルハイドロキノンを50ppm仕込み、90℃で約2時間加熱攪拌して分子末端にイソシアネート基を有するポリウレタンを得た。その後、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジアクリレート1567部とイソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリアクリレート930部と錫系触媒50ppmを添加し、90℃で約7時間反応させることで、分子量1326の(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(以下、ポリウレタン(II))と、未反応のイソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジアクリレートとイソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリアクリレートとの混合物を得た(NCO%:0.3以下)。なお、前記分子量は、前記ポリウレタン(II)を構成する原子の式量に基づき計算して求めた値である。
次いで、前記で得たポリウレタン(II)を含む上記混合物と、イソボルニルメタアクリレートとを混合することによって、下記表1記載の配合割合からなるラジカル重合性組成物を得た。
得られた該ラジカル重合性組成物300部にラジカル硬化剤パーキュアーHO(N)(日油株式会社製;熱硬化剤)3部を添加して均一になるよう混合することによって、実施例5の封止材を得た。また、実施例1で得た封止材の代わりに実施例5で得た封止材を使用すること以外は実施例1と同様の方法で注型板を作製した。
【0052】
(比較例1)
適当な大きさの容器に、脂環式エポキシ樹脂YX8000(ジャパンエポキシレジン株式会社製)を160部、脂環式酸無水物リカシッドMH−700G(新日本理化株式会社製)を140部、硬化触媒ニッサンカチオンM2−100R(日油株式会社製)を2.4部添加して混合し、比較例1の封止材(エポキシ樹脂混合物)を得た。得られた該エポキシ樹脂を30cm×30cm大の2枚のガラス板に離型剤を塗布し、合成ゴム製チューブをガラス板の間に挟み、スペーサーを用い隙間3mmとなる様調整した型に流し込み、80℃で3時間加熱した。
前記加熱後、封止材は未だ十分に硬化していなかったため、更に、100℃で2時間加熱し、更に120℃で5時間加熱させることで注型板を得た。
【0053】
(比較例2)
実施例1と全く同一の反応装置に、ビスフェノールA系エポキシ樹脂(エポキシ当量187)830部、メタクリル酸365部、ジブチルヒドロキシトルエン350ppm、2−メチルイミダゾールを1000ppm添加し、110℃で約5時間反応させ、酸価が4に達したところで反応を終了し、エポキシメタクリレート樹脂を得た。更に、得られた該樹脂とスチレンモノマーとを混合することによって、下記表2に記載の配合割合からなる比較例2の封止材を得た。また、実施例1で得た封止材の代わりに比較例2で得た封止材を使用すること以外は実施例1と同様の方法で注型板を作製した。
【0054】
(比較例3)
実施例1と全く同一の反応装置に、脂環式系エポキシ樹脂(デナコールEX−252、エポキシ当量215、ナガセケムテック(株)社製)946部、メタクリル酸360部、2−メチルイミダゾールを1000ppm添加し、110℃で約10時間反応させ、酸価が10以下に達したところで反応を終了し、脂環式系エポキシメタクリレート樹脂を得た。更に、得られた該樹脂とイソボルニルメタアクリレートとを混合することによって、下記表2に記載の配合割合からなる比較例3の封止材を得た。また、実施例1で得た封止材の代わりに比較例3で得た封止材を使用すること以外は実施例1と同様の方法で注型板を作製した。
【0055】
(比較例4)
実施例1と全く同一の反応装置に、ポリプロピレングリコール(数平均分子量700)を701部、トリレンジイソシアネートを296部、イソホロンジイソシアネートを67部仕込み、80℃で約5時間後加熱攪拌して分子末端にイソシアネート基を有するポリウレタン(イソシアネート当量532)を得た。その後、2−ヒドロキシエチルメタクリレート273部を仕込み、80℃で約4時間反応し、(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(以下、ポリウレタン(III))を得た(NCO%:0.3以下)。更に、得られた該ポリウレタン(III)とラジカル重合性不飽和単量体としてメチルメタクリレートとを混合することによって、下記表2に記載の配合割合からなる比較例4の封止材を得た。また、実施例1で得た封止材の代わりに比較例4で得た封止材を使用すること以外は実施例1と同様の方法で注型板を作製した。
【0056】
(比較例5)
比較例4でポリウレタン(III)を希釈する際に使用したメチルメタクリレートの代わりに、ラジカル重合性不飽和単量体として、イソボルニルメタアクリレートを使用すること以外は、実施例1と同様の方法によって、下記表1記載の配合割合からなる封止材を得た。また、実施例1で得た封止材の代わりに比較例5で得た封止材を使用すること以外は実施例1と同様の方法で注型板を作製した。
【0057】
(注型板作成法)
実施例1〜5及び比較例2〜5の封止材から得られた注型板の作製は以下のように行った。
すなわち、30cm×30cm大の2枚のガラス板に離型剤を塗布し、合成ゴム製チューブをガラス板の間に挟み、スペーサーを用い隙間3mmとなる様調整し、実施例1〜5及び比較例2〜5で示された各樹脂組成物を流し込み、湯浴にて常温から80℃まで4時間掛けて昇温、硬化させ、硬化後、ガラス板ごと乾燥機に入れ、120℃、1時間で完全硬化を行い、冷却後、ガラス板を外して、平滑な厚さ3mmの注型板を得た。
【0058】
(評価方法1.粘度)
上記実施例1〜5及び比較例1〜5における封止材の硬化前の粘度を、JIS−K−6901に順じて測定した。
【0059】
(評価方法2.硬化性評価)
上記実施例1〜5及び比較例1〜5における封止材において、80℃での、JIS−K−6901に順じ、ゲル化時間を測定し、30分以内にゲル化したものを良好(○)と判定し、それ以上の時間がかかるものを不良(×)と判定した。
【0060】
(評価方法3.臭気)
上記実施例1〜5及び比較例1〜5における封止材の臭気について、官能試験により、臭気が強い(×)、臭気がやや強い(△)、臭気が少ない(○)として評価した。
【0061】
(評価方法4.注型板外観)
実施例1〜5及び比較例1〜5の封止材から得られた該注型板の外観を目視にて評価した。
【0062】
(評価方法5.熱変形温度)
実施例1〜5及び比較例1〜5の封止材から得られた注型板の熱変形温度を、JIS−K−7207に順じて測定した。100℃以上の値を有するものを耐熱性が優れ、良好(○)と判断した。100℃以下のものを、不良(×)として評価した。
【0063】
(評価方法6.透明性評価)
実施例1〜5及び比較例1〜5の封止材から得られた注型板から約4cm×4cmの試験片を切削した。測定機器として紫外可視分光光度計試験機器を用い、該試験片の光線透過率(%)(589nm波長)を測定し、透明性の評価を行った。85%以上有するものを優(○)、それ以下のものを不良(×)として評価した。
【0064】
(評価方法7.耐熱変色性評価:色差および透明性の評価)
実施例1〜5及び比較例1〜5の封止材から得られた該注型板から約4cm×4cmの試験片を切削した。試験機器として高温恒温機(エスペック株式会社製)を使用し、180℃にて試験片を加熱し、100時間経過後の試験片の着色の度合いを紫外可視分光光度計を使用して評価した。初期値との色変化の指標として色差:ΔEを下記により算出した。
【0065】
【数1】

【0066】
判定評価基準: 優 (○):ΔE=40未満
不良 (×):ΔE=40以上

上記、180℃、100時間熱処理後の該試験片の光線透過率(589nm波長)を紫外可視分光光度計試験機器を用い、測定した。80%以上有するものを優(○)、それ以下のものを不良(×)として、熱処理後の透明性の評価をした。
【0067】
【表1】

【0068】
表1中、HEMAは、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを示し、IBXMAは、イソボルニルメタアクリレートを示す。IBXAは、イソボルニルアクリレートを示す。イソシアヌル酸EO変性ジアクリレートはイソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジアクリレートを示す。イソシアヌル酸EO変性トリアクリレートはイソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリアクリレートを示す。
【0069】
【表2】

【0070】
表2中、SMは、スチレンを示し、IBXMAは、イソボルニルメタアクリレートを示し、MMAは、メチルメタクリレートを示す。
【0071】
表1に示されるように、実施例1〜5の封止材は、優れた耐熱性、耐熱変色性、透明性を有し、80℃といった低温環境下であっても硬化性に優れていることが確認された。また、実施例1〜5の封止材は、臭気が少ないものであることが確認された。
一方、比較例1〜3の封止材は、(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタンを含まないものであるため、耐熱変色性に劣っていた。また、脂環式エポキシを含有する比較例1の封止材は、硬化性の点でも劣っていた。
比較例4〜5の封止材は、芳香族イソシアネートを用いたものであるため、耐熱性、耐熱変色性の点で劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、ラジカル重合性組成物からなる封止材およびそれを用いた成形品として、特に低温での硬化性、透明性、耐熱変色性に優れる封止材およびそれからなる成形品が要求される医療分野、電気電子分野、機械分野、土木建築等幅広い分野で利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で示される構造を有する(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)とラジカル重合性不飽和単量体(B)とを含有することを特徴とする封止材。
【化1】

(一般式(I)中、Zは、分子量65〜265の脂肪族環式構造含有アルキレン基を表し、Tは、脂肪族環式構造含有アルキレン基又は鎖状アルキレン基を表し、前記Mは、(メタ)アクリロイル基を含む原子団を表す。)
【請求項2】
熱硬化剤又は光硬化剤(C)を更に含む請求項1に記載の封止材。
【請求項3】
前記(メタ)アクリロイル基含有ポリウレタン(A)が、分子量100〜300の脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)と、脂環式ポリイソシアネート又は脂肪族ポリイソシアネート(a2)と、活性水素原子含有(メタ)アクリレート(a3)とを反応させて得られるものであり、前記ラジカル重合性不飽和単量体(B)が、脂肪族環式構造、脂肪族鎖状構造又はイソシアヌル酸構造を有するものである請求項1又は2に記載の封止材。
【請求項4】
前記脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)がシクロヘキサンジメタノールであり、かつ前記脂環式ポリイソシアネート又は脂肪族ポリイソシアネート(a2)がイソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びノルボルネンジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上である請求項3に記載の封止材。
【請求項5】
前記ラジカル重合性不飽和単量体(B)が、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、及びイソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の封止材。
【請求項6】
前記活性水素原子含有(メタ)アクリレート(a3)が2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又はイソシアヌル酸構造を有する水酸基含有(メタ)アクリレートである請求項3〜5のいずれか1項に記載の封止材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の封止材を用い封止して得られたことを特徴とする成形品。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の封止材を用い封止して得られたことを特徴とする光学部材。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の封止材を用い封止して得られたことを特徴とする発光ダイオード。


【図1】
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【公開番号】特開2012−236938(P2012−236938A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107593(P2011−107593)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(505273017)ディーエイチ・マテリアル株式会社 (17)
【Fターム(参考)】