説明

封止用エポキシ樹脂成形材料および電子部品装置

【課題】 高温における金属との接着性が高く、耐リフロー性に優れる封止用エポキシ樹脂成形材料、およびこれにより封止した素子を備えた電子部品装置を提供する。
【解決手段】 (A)1分子中にエポキシ基を2個以上含有するエポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)1分子中にフェノール性水酸基を1個以上有するベンゾフェノン誘導体を含有する封止用エポキシ樹脂成形材料。前記(C)1分子中にフェノール性水酸基を1個以上有するベンゾフェノン誘導体の割合が、0.1質量%以上、1.0質量%未満であると好ましく、さらに、(D)シラン化合物、(F)無機充てん剤を含有すると好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用エポキシ樹脂成形材料及びこの成形材料で封止した素子を備えた電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トランジスタ、IC等の電子部品封止の分野ではエポキシ樹脂成形材料が広く用いられている。この理由としては、エポキシ樹脂が電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性等のバランスがとれているためである。特に、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂とノボラック型フェノール硬化剤の組合せはこれらのバランスに優れており、封止用成形材料のベース樹脂の主流になっている。
近年の電子機器の小型化、軽量化、高性能化に伴い、実装の高密度化が進み、電子部品装置は従来のピン挿入型から、表面実装型のパッケージがなされるようになってきている。半導体装置を配線板に取り付ける場合、従来のピン挿入型パッケージはピンを配線板に挿入した後、配線板裏面から半田付けを行うため、パッケージが直接高温にさらされることはなかった。しかし、表面実装型パッケージでは半導体装置全体が半田バスやリフロー装置などで処理されるため、直接半田付け温度にさらされる。この結果、パッケージが吸湿した場合、半田付け時に吸湿水分が急激に膨張し、接着界面の剥離やパッケージクラックが発生し、実装時のパッケージの信頼性を低下させるという問題があった。
上記の問題を解決する対策として、半導体装置内部の吸湿水分を低減するためにICの防湿梱包や、配線板へ実装する前に予めICを十分乾燥して使用するなどの方法もとられている(例えば、非特許文献1参照。)が、これらの方法は手間がかかり、コストも高くなる。別の対策としては充てん剤の含有量を増加する方法が挙げられるが、この方法では半導体装置内部の吸湿水分は低減するものの、大幅な流動性の低下を引き起こしてしまう問題があった。封止用エポキシ樹脂成形材料の流動性が低いと成形時に金線流れ、ボイド、ピンホール等の発生といった問題が生じる(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−224328号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】株式会社日立製作所半導体事業部編「表面実装形LSIパッケージの実装技術とその信頼性向上」、応用技術出版1、988年11月16日、254−256頁
【非特許文献2】株式会社技術情報協会編「半導体封止樹脂の高信頼性化」、技術情報協会、1990年1月31日、172−176頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はかかる状況に鑑みなされたもので、高温における金属との接着性が高く、耐リフロー性に優れる封止用エポキシ樹脂成形材料、及びこれにより封止した素子を備えた電子部品装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、次のものに関する。
(1)(A)1分子中にエポキシ基を2個以上含有するエポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)1分子中にフェノール性水酸基を1個以上有するベンゾフェノン誘導体を含有する封止用エポキシ樹脂成形材料。
(2)封止用エポキシ樹脂成形材料中の(C)1分子中にフェノール性水酸基を1個以上有するベンゾフェノン誘導体の割合が、0.1質量%以上、1.0質量%未満である項(1)に記載の封止用エポキシ樹脂成形材料。
(3)(D)さらに、シラン化合物を含有する項(1)または項(2)に記載の封止用エポキシ樹脂成形材料。
(4)(E)さらに、硬化促進剤を含有する項(1)〜(3)のいずれかに記載の封止用エポキシ樹脂成形材料。
(5)(F)さらに、無機充てん剤を含有する項(1)〜(4)のいずれかに記載の封止用エポキシ樹脂成形材料。
(6)項(1)〜(5)のいずれかに記載の封止用エポキシ樹脂成形材料により封止された素子を備える電子部品装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によって得られる封止用エポキシ樹脂成形材料を用いることによって、高温における金属との接着性が向上するため、耐リフロー性に優れる信頼性の高い電子部品装置を得ることができ、その工業的価値は大である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において用いられる(A)1分子中にエポキシ基を2個以上含有するエポキシ樹脂は、封止用エポキシ樹脂成形材料に一般に使用されているもので特に制限ないが、たとえばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン骨格を有するエポキシ樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、α‐ナフトール、β‐ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のフェノール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したもの、アルキル置換、芳香環置換又は非置換のビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビフェノール、チオジフェノール等のジグリシジルエーテル、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンとフェノール類の共縮合樹脂のエポキシ化物、ナフタレン環を有するエポキシ樹脂、フェノール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、テルペン変性エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂などが挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、流動性と硬化性の両立の観点からはアルキル置換、芳香環置換又は非置換のビフェノールのジグリシジルエーテルであるビフェニル型エポキシ樹脂を含有していることが好ましく、硬化性の観点からはノボラック型エポキシ樹脂を含有していることが好ましく、耐熱性及び低反り性の観点からはナフタレン型エポキシ樹脂及び/又はトリフェニルメタン型エポキシ樹脂を含有していることが好ましく、流動性と難燃性の両立の観点からはアルキル置換、芳香環置換又は非置換のビスフェノールFのジグリシジルエーテルであるビスフェノールF型エポキシ樹脂を含有していることが好ましく、流動性とリフロー性の両立の観点からはアルキル置換、芳香環置換又は非置換のチオジフェノールのジグリシジルエーテルであるチオジフェノール型エポキシ樹脂を含有していることが好ましく、硬化性と難燃性の両立の観点からはアルキル置換、芳香環置換又は非置換のフェノールとビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノール・アラルキル樹脂のエポキシ化物を含有していることが好ましく、保存安定性と難燃性の両立の観点からはアルキル置換、芳香環置換又は非置換のナフトール類とジメトキシパラキシレンから合成されるナフトール・アラルキル樹脂のエポキシ化物を含有していることが好ましい。
ビフェニル型エポキシ樹脂としては、たとえば下記一般式(I)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0009】
【化1】

(一般式(I)中、R1〜R8は水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。nは0又は1〜3の整数を示す。)
上記一般式(I)で示されるビフェニル型エポキシ樹脂は、ビフェノール化合物にエピクロルヒドリンを公知の方法で反応させることによって得られる。一般式(I)中のR1〜R8としては、たとえば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基等の炭素数1〜10のアルケニル基などが挙げられ、なかでも水素原子又はメチル基が好ましい。このようなエポキシ樹脂としては、たとえば、4,4’‐ビス(2,3‐エポキシプロポキシ)ビフェニル又は4,4’‐ビス(2,3‐エポキシプロポキシ)‐3,3’,5,5’‐テトラメチルビフェニルを主成分とするエポキシ樹脂、エピクロルヒドリンと4,4’‐ビフェノール又は4,4’‐(3,3’,5,5’‐テトラメチル)ビフェノールとを反応させて得られるエポキシ樹脂等が挙げられる。なかでも4,4’‐ビス(2,3‐エポキシプロポキシ)‐3,3’,5,5’‐テトラメチルビフェニルを主成分とするエポキシ樹脂が好ましい。そのようなエポキシ樹脂としては、市販品としてジャパンエポキシレジン株式会社製商品名YX‐4000が入手可能である。上記ビフェニル型エポキシ樹脂の配合量は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量中20質量%以上とすることが好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。
【0010】
チオジフェノール型エポキシ樹脂としては、たとえば下記一般式(II)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0011】
【化2】

(一般式(II)中、R1〜R8は水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。nは0又は1〜3の整数を示す。)
上記一般式(II)で示されるチオジフェノール型エポキシ樹脂は、チオジフェノール化合物にエピクロルヒドリンを公知の方法で反応させることによって得られる。一般式(II)中のR1〜R8としては、たとえば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基等の炭素数1〜10のアルケニル基などが挙げられ、なかでも水素原子、メチル基又はtert−ブチル基が好ましい。このようなエポキシ樹脂としては、たとえば、4,4’‐ジヒドロキシジフェニルスルフィドのジグリシジルエーテルを主成分とするエポキシ樹脂、2,2’,5,5’‐テトラメチル‐4,4’‐ジヒドロキシジフェニルスルフィドのジグリシジルエーテルを主成分とするエポキシ樹脂、2,2’‐ジメチル‐4,4’‐ジヒドロキシ‐5,5’‐ジ‐tert‐ブチルジフェニルスルフィドのジグリシジルエーテルを主成分とするエポキシ樹脂等が挙げられ、なかでも2,2’‐ジメチル‐4,4’‐ジヒドロキシ‐5,5’‐ジ‐tert‐ブチルジフェニルスルフィドのジグリシジルエーテルを主成分とするエポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂が好ましい。そのようなエポキシ樹脂としては、市販品として新日鐵化学株式会社製商品名YSLV‐120TEが入手可能である。上記チオジフェノール型エポキシ樹脂の配合量は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量中20質量%以上とすることが好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。
【0012】
ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、たとえば下記一般式(III)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0013】
【化3】

(一般式(III)中、R1〜R8は水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。nは0又は1〜3の整数を示す。)
上記一般式(III)で示されるビスフェノールF型エポキシ樹脂は、ビスフェノールF化合物にエピクロルヒドリンを公知の方法で反応させることによって得られる。一般式(III)中のR1〜R8としては、たとえば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基等の炭素数1〜10のアルケニル基などが挙げられ、なかでも水素原子又はメチル基が好ましい。このようなエポキシ樹脂としては、たとえば、4,4’‐メチレンビス(2,6‐ジメチルフェノール)のジグリシジルエーテルを主成分とするエポキシ樹脂、4,4’‐メチレンビス(2,3,6‐トリメチルフェノール)のジグリシジルエーテルを主成分とするエポキシ樹脂、4,4’‐メチレンビスフェノールのジグリシジルエーテルを主成分とするエポキシ樹脂等が挙げられ、なかでも4,4’‐メチレンビス(2,6‐ジメチルフェノール)のジグリシジルエーテルを主成分とするエポキシ樹脂が好ましい。そのようなエポキシ樹脂としては、市販品として新日鐵化学株式会社製商品名YSLV‐80XYが入手可能である。上記ビスフェノールF型エポキシ樹脂の配合量は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量中20質量%以上とすることが好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。
【0014】
ノボラック型エポキシ樹脂としては、たとえば下記一般式(IV)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0015】
【化4】

(一般式(IV)中、Rは水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、nは0〜10の整数を示す。)
上記一般式(IV)で示されるノボラック型エポキシ樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂にエピクロルヒドリンを反応させることによって容易に得られる。なかでも、上記一般式(IV)中のRとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましい。nは0〜3の整数が好ましい。上記一般式(IV)で示されるノボラック型エポキシ樹脂のなかでも、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。ノボラック型エポキシ樹脂を使用する場合、その配合量は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量中20質量%以上とすることが好ましく、30質量%以上がより好ましい。
【0016】
ナフタレン型エポキシ樹脂としてはたとえば下記一般式(V)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられ、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂としてはたとえば下記一般式(VI)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
下記一般式(V)で示されるナフタレン型エポキシ樹脂としては、m個の構成単位及びn個の構成単位をランダムに含むランダム共重合体、交互に含む交互共重合体、規則的に含む共重合体、ブロック状に含むブロック共重合体が挙げられ、これらのいずれか1種を単独で用いても、2種以上を組合せて用いてもよい。
また、下記一般式(VI)で示されるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂としては特に制限はないが、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂が好ましい。
【0017】
【化5】

(一般式(V)中、R〜Rは、水素原子及び炭素数1〜12の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、これらは全てが同一でも異なっていてもよい。pは1又は0で、m、nはそれぞれ0〜11の整数であって、(m+n)が1〜11の整数でかつ(m+p)が1〜12の整数となるよう選ばれる。iは0〜3の整数、jは0〜2の整数、kは0〜4の整数を示す。)
【0018】
【化6】

(一般式(VI)中、Rは水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、nは1〜10の整数を示す。)
これらナフタレン型エポキシ樹脂及びトリフェニルメタン型エポキシ樹脂はいずれか1種を単独で用いても両者を組合せて用いてもよいが、その配合量は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量中、合わせて20質量%以上とすることが好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上とすることがさらに好ましい。
【0019】
フェノール・アラルキル樹脂のエポキシ化物としては、たとえば下記一般式(VII)で示されるエポキシ樹脂や、下記一般式(VIII)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0020】
【化7】

(一般式(VII)中、R1〜Rは水素原子、炭素数1〜12の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、すべてが同一でも異なっていてもよい。iは0又は1〜3の整数を示し、nは0又は1〜10の整数を示す。)
【0021】
【化8】

(一般式(VIII)中、R1〜Rは水素原子、炭素数1〜12の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、すべてが同一でも異なっていてもよい。iは0又は1〜3の整数を示し、nは0又は1〜10の整数を示す。)
上記一般式(VII)で示されるフェノール・アラルキル樹脂のエポキシ化物は、アルキル置換、芳香環置換又は非置換のフェノールとジメトキシパラキシレンから合成されるフェノール・アラルキル樹脂にエピクロルヒドリンを公知の方法で反応させることによって得られる。また、上記一般式(VIII)で示されるビフェニレン骨格含有フェノール・アラルキル樹脂のエポキシ化物は、アルキル置換、芳香環置換又は非置換のフェノールとビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノール・アラルキル樹脂にエピクロルヒドリンを公知の方法で反応させることによって得られる。一般式(VII)中のR1〜Rおよび一般式(VIII)中のR1〜Rとしては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等の鎖状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の環状アルキル基、ベンジル基、フェネチル基等のアリール基置換アルキル基、メトキシ基置換アルキル基、エトキシ基置換アルキル基、ブトキシ基置換アルキル基等のアルコキシ基置換アルキル基、アミノアルキル基、ジメチルアミノアルキル基、ジエチルアミノアルキル基等のアミノ基置換アルキル基、水酸基置換アルキル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等の無置換アリール基、トリル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、ジメチルナフチル基等のアルキル基置換アリール基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基、メトキシナフチル基等のアルコキシ基置換アリール基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のアミノ基置換アリール基、水酸基置換アリール基などが挙げられ、なかでも水素原子又はメチル基が好ましい。また一般式(VII)および一般式(VIII)中のnとしては平均で6以下がより好ましく、そのようなエポキシ樹脂としては、一般式(VII)は、市販品として日本化薬株式会社製商品名NC−2000Lが、一般式(VIII)は市販品として日本化薬株式会社製商品名NC‐3000Sが入手可能である。
また、難燃性と耐リフロー性、流動性の両立の観点からは上記一般式(I)で示されるエポキシ樹脂を含有していることが好ましく、なかでも上記一般式(VIII)のR1〜R8が水素原子で上記一般式(I)のR1〜R8が水素原子でn=0であることがより好ましい。また特にその配合質量比は、(I)/(VIII)=50/50〜5/95であることが好ましく、40/60〜10/90であるものがより好ましく、30/70〜15/85であるものがさらに好ましい。このような配合質量比を満足する化合物としては、CER−3000L(日本化薬株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0022】
ナフトール・アラルキル樹脂のエポキシ化物としては、たとえば下記一般式(IX)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0023】
【化9】

(一般式(IX)中、Rは水素原子、炭素数1〜12の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、すべてが同一でも異なっていてもよい。iは0又は1〜3の整数を示し、Xは芳香環を含む二価の有機基を示し、nは0又は1〜10の整数を示す。)
Xは、たとえばフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基、トリレン基等のアルキル基置換アリーレン基、アルコキシル基置換アリーレン基、アラルキル基置換アリーレン基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基から得られる二価の基、キシリレン基等のアリーレン基を含む二価の基などが挙げられ、なかでも、難燃性及び保存安定性の両立の観点からはフェニレン基、ビフェニレン基が好ましい。
上記一般式(IX)で示されるナフトール・アラルキル樹脂のエポキシ化物は、アルキル置換、芳香環置換又は非置換のナフトールとジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるナフトール・アラルキル樹脂にエピクロルヒドリンを公知の方法で反応させることによって得られる。一般式(IX)中のRとしてはたとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等の鎖状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の環状アルキル基、ベンジル基、フェネチル基等のアリール基置換アルキル基、メトキシ基置換アルキル基、エトキシ基置換アルキル基、ブトキシ基置換アルキル基等のアルコキシ基置換アルキル基、アミノアルキル基、ジメチルアミノアルキル基、ジエチルアミノアルキル基等のアミノ基置換アルキル基、水酸基置換アルキル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等の無置換アリール基、トリル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、ジメチルナフチル基等のアルキル基置換アリール基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基、メトキシナフチル基等のアルコキシ基置換アリール基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のアミノ基置換アリール基、水酸基置換アリール基などが挙げられ、なかでも水素原子又はメチル基が好ましく、たとえば下記一般式(X)又は(XI)で示されるナフトール・アルキル樹脂のエポキシ化物が挙げられる。nは0又は1〜10の整数を示し、平均で6以下がより好ましい。下記一般式(X)で示されるエポキシ樹脂としては市販品として新日鐵化学株式会社製商品名ESN‐375が挙げられ、下記一般式(XI)で示されるエポキシ樹脂としては市販品として新日鐵化学株式会社製商品名ESN‐175が挙げられる。上記ナフトール・アラルキル樹脂のエポキシ化物の配合量は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量中20質量%以上とすることが好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。
【0024】
【化10】

(一般式(X)中、Xは芳香環を含む二価の有機基を示し、nは0又は1〜10の整数を示す。)
【0025】
【化11】

(一般式(XI)中、Xは芳香環を含む二価の有機基を示し、nは0又は1〜10の整数を示す。)
【0026】
上記のビフェニル型エポキシ樹脂、チオジフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノール・アラルキル樹脂のエポキシ化物及びナフトール・アラルキル樹脂のエポキシ化物は、いずれか1種を単独で用いても2種以上を組合せて用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いる場合の配合量は、エポキシ樹脂全量中合わせて50質量%以上とすることが好ましく、60質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。
【0027】
本発明において用いられる(B)硬化剤は、封止用エポキシ樹脂成形材料に一般に使用されているもので特に制限はないが、たとえば、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、チオジフェノール、アミノフェノール、α−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のフェノール類とホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂、フェノール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂、フェノールノボラック構造とフェノール・アラルキル構造がランダム、ブロック又は交互に繰り返された共重合型フェノール・アラルキル樹脂、パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、シクロペンタジエン変性フェノール樹脂、多環芳香環変性フェノール樹脂などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組合せて用いてもよい。
なかでも、流動性、難燃性及び耐リフロー性の観点からはフェノール・アラルキル樹脂、共重合型フェノール・アラルキル樹脂及びナフトール・アラルキル樹脂が好ましく、耐熱性、低膨張率及び低そり性の観点からはトリフェニルメタン型フェノール樹脂が好ましく、硬化性の観点からはノボラック型フェノール樹脂が好ましく、これらのフェノール樹脂の少なくとも1種を含有していることが好ましい。
【0028】
フェノール・アラルキル樹脂としては、たとえば下記一般式(XII)で示される樹脂が挙げられる。
【0029】
【化12】

(一般式(XII)中、Rは水素原子、炭素数1〜12の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、すべてが同一でも異なっていてもよい。iは0又は1〜3の整数を示し、Xは芳香環を含む二価の有機基を示し、nは0又は1〜10の整数を示す。)
上記一般式(XII)中のRとしては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等の鎖状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の環状アルキル基、ベンジル基、フェネチル基等のアリール基置換アルキル基、メトキシ基置換アルキル基、エトキシ基置換アルキル基、ブトキシ基置換アルキル基等のアルコキシ基置換アルキル基、アミノアルキル基、ジメチルアミノアルキル基、ジエチルアミノアルキル基等のアミノ基置換アルキル基、水酸基置換アルキル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等の無置換アリール基、トリル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、ジメチルナフチル基等のアルキル基置換アリール基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基、メトキシナフチル基等のアルコキシ基置換アリール基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のアミノ基置換アリール基、水酸基置換アリール基などが挙げられ、なかでも水素原子又はメチル基が好ましい。
また、Xは芳香環を含む基を示し、たとえばフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基、トリレン基等のアルキル基置換アリーレン基、アルコキシル基置換アリーレン基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基から得られる二価の基、アラルキル基置換アリーレン基、キシリレン基等のアリーレン基を含む二価の基などが挙げられる。なかでも、難燃性、流動性と硬化性の両立の観点からは置換又は非置換のフェニレン基が好ましく、例えば下記一般式(XIII)で示されるフェノール・アラルキル樹脂が挙げられ、難燃性と耐リフロー性の両立の観点からは置換又は非置換のビフェニレン基が好ましく、例えば下記一般式(XIV)で示されるフェノール・アラルキル樹脂が挙げられる。nは0又は1〜10の整数を示し、平均で6以下がより好ましい。
【0030】
【化13】

(一般式(XIII)中、nは0又は1〜10の整数を示す。)
【0031】
【化14】

(一般式(XIV)中、nは0又は1〜10の整数を示す。)
上記一般式(XIII)で示されるフェノール・アラルキル樹脂としては、市販品として三井化学株式会社製商品名XLCが挙げられ、一般式(XIV)で示されるビフェニレン骨格含有フェノール・アラルキル樹脂としては、市販品として明和化成株式会社製商品名MEH‐7851が挙げられる。上記フェノール・アラルキル樹脂の配合量は、その性能を発揮するために硬化剤全量中20質量%以上とすることが好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。
【0032】
ナフトール・アラルキル樹脂としては、たとえば下記一般式(XV)で示される樹脂が挙げられる。
【0033】
【化15】

(一般式(XV)中、Rは水素原子、炭素数1〜12の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、すべてが同一でも異なっていてもよい。iは0又は1〜3の整数を示し、Xは芳香環を含む二価の有機基を示し、nは0又は1〜10の整数を示す。)
上記一般式(XV)中のRとしては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等の鎖状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の環状アルキル基、ベンジル基、フェネチル基等のアリール基置換アルキル基、メトキシ基置換アルキル基、エトキシ基置換アルキル基、ブトキシ基置換アルキル基等のアルコキシ基置換アルキル基、アミノアルキル基、ジメチルアミノアルキル基、ジエチルアミノアルキル基等のアミノ基置換アルキル基、水酸基置換アルキル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等の無置換アリール基、トリル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、ジメチルナフチル基等のアルキル基置換アリール基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基、メトキシナフチル基等のアルコキシ基置換アリール基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のアミノ基置換アリール基、水酸基置換アリール基などが挙げられ、なかでも水素原子又はメチル基が好ましい。
また、Xは芳香環を含む二価の有機基を示し、たとえばフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基、トリレン基等のアルキル基置換アリーレン基、アルコキシル基置換アリーレン基、アラルキル基置換アリーレン基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基から得られる二価の基、キシリレン基等のアリーレン基を含む二価の基などが挙げられ、なかでも、保存安定性と難燃性の観点からは置換又は非置換のフェニレン基及びビフェニレン基が好ましく、フェニレン基がより好ましく、たとえば下記一般式(XVI)および(XVII)で示されるナフトール・アラルキル樹脂が挙げられる。nは0又は1〜10の整数を示し、平均で6以下がより好ましい。
【0034】
【化16】

(一般式(XVI)中、nは0又は1〜10の整数を示す。)
【0035】
【化17】

(一般式(XVII)中、nは0又は1〜10の整数を示す。)
上記一般式(XVI)で示されるナフトール・アラルキル樹脂としては、市販品として新日鐵化学株式会社製商品名SN‐475が挙げられ、上記一般式(XVII)で示されるナフトール・アラルキル樹脂としては、市販品として新日鐵化学株式会社製商品名SN‐170が挙げられる。上記ナフトール・アラルキル樹脂の配合量は、その性能を発揮するために硬化剤全量中20質量%以上とすることが好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。
上記一般式(XII)で示されるフェノール・アラルキル樹脂、一般式(XV)で示されるナフトール・アラルキル樹脂は、難燃性の観点からその一部又は全部がアセナフチレンと予備混合されていることが好ましい。アセナフチレンはアセナフテンを脱水素して得ることができるが、市販品を用いてもよい。また、アセナフチレンの代わりにアセナフチレンの重合物又はアセナフチレンと他の芳香族オレフィンとの重合物として用いることもできる。アセナフチレンの重合物又はアセナフチレンと他の芳香族オレフィンとの重合物を得る方法としては、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合等が挙げられる。また、重合に際しては従来公知の触媒を用いることができるが、触媒を使用せずに熱だけで行うこともできる。この際、重合温度は80〜160℃が好ましく、90〜150℃がより好ましい。得られるアセナフチレンの重合物又はアセナフチレンと他の芳香族オレフィンとの重合物の軟化点は、60〜150℃が好ましく、70〜130℃がより好ましい。60℃より低いと成形時の染み出しにより成形性が低下する傾向にあり、150℃より高いと樹脂との相溶性が低下する傾向にある。アセナフチレンと共重合させる他の芳香族オレフィンとしては、スチレン、α‐メチルスチレン、インデン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル又はそれらのアルキル置換体等が挙げられる。また、上記した芳香族オレフィン以外に本発明の効果に支障の無い範囲で脂肪族オレフィンを併用することもできる。脂肪族オレフィンとしては、(メタ)アクリル酸及びそれらのエステル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、フマル酸及びそれらのエステル等が挙げられる。これら脂肪族オレフィンの使用量は重合モノマー全量中20質量%以下が好ましく、9質量%以下がより好ましい。
硬化剤の一部又は全部とアセナフチレンとの予備混合の方法としては、硬化剤及びアセナフチレンをそれぞれ微細に粉砕し固体状態のままミキサー等で混合する方法、両成分を溶解する溶媒に均一に溶解させた後、溶媒を除去する方法、硬化剤及び/又はアセナフチレンの軟化点以上の温度で両者を溶融混合する方法等で行うことができるが、均一な混合物が得られて不純物の混入が少ない溶融混合法が好ましい。前記の方法により予備混合物(アセナフチレン変性硬化剤)が、製造される。溶融混合は、硬化剤及び/又はアセナフチレンの軟化点以上の温度であれば制限はないが、100〜250℃が好ましく、120〜200℃がより好ましい。また、溶融混合は両者が均一に混合すれば混合時間に制限はないが、1〜20時間が好ましく、2〜15時間がより好ましい。硬化剤とアセナフチレンを予備混合する場合、混合中にアセナフチレンが重合もしくは硬化剤と反応しても構わない。
【0036】
トリフェニルメタン型フェノール樹脂としては、たとえば下記一般式(XVIII)で示されるフェノール樹脂等が挙げられる。
【0037】
【化18】

(一般式(XVIII)中、Rは水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、nは0〜10の整数を示す。)
上記一般式(XVIII)中のRとしては、たとえば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基等のアルケニル基、ハロゲン化アルキル基、アミノ基置換アルキル基、メルカプト基置換アルキル基などの炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基が挙げられ、なかでもメチル基、エチル基等のアルキル基及び水素原子が好ましく、メチル基及び水素原子がより好ましい。トリフェニルメタン型フェノール樹脂を用いる場合、その配合量はその性能を発揮するために硬化剤全量中30質量%以上とすることが好ましく、50質量%以上がより好ましい。
【0038】
ノボラック型フェノール樹脂としては、たとえば下記一般式(XIX)で示されるフェノール樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂等が挙げられ、なかでも下記一般式(XIX)で示されるノボラック型フェノール樹脂が好ましい。
【0039】
【化19】

(一般式(XIX)中、Rは水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、nは0〜10の整数を示す。)
上記一般式(XIX)中のRとしては、たとえば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基等のアルケニル基、ハロゲン化アルキル基、アミノ基置換アルキル基、メルカプト基置換アルキル基などの炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基が挙げられ、なかでもメチル基、エチル基等のアルキル基及び水素原子が好ましく、水素原子がより好ましく、nの平均値が0〜8であることが好ましい。ノボラック型フェノール樹脂を用いる場合、その配合量はその性能を発揮するために硬化剤全量中30質量%以上とすることが好ましく、50質量%以上がより好ましい。
【0040】
共重合型フェノール・アラルキル樹脂としては、たとえば下記一般式(XX)で示されるフェノール樹脂が挙げられる。
【0041】
【化20】

(一般式(XX)中、Rは水素原子、炭素数1〜12の置換又は非置換の一価の炭化水素基及び水酸基から選ばれ、すべてが同一でも異なっていてもよい。またXは芳香環を含む二価の基を示す。n及びmは、0又は1〜10の整数を示す。)
上記一般式(XX)中のRとしては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等の鎖状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の環状アルキル基、ベンジル基、フェネチル基等のアリール基置換アルキル基、メトキシ基置換アルキル基、エトキシ基置換アルキル基、ブトキシ基置換アルキル基等のアルコキシ基置換アルキル基、アミノアルキル基、ジメチルアミノアルキル基、ジエチルアミノアルキル基等のアミノ基置換アルキル基、水酸基置換アルキル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等の無置換アリール基、トリル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、ジメチルナフチル基等のアルキル基置換アリール基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基、メトキシナフチル基等のアルコキシ基置換アリール基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のアミノ基置換アリール基、水酸基置換アリール基などが挙げられ、なかでも水素原子又はメチル基が好ましく、またn及びmは0又は1〜10の整数を示し、平均で6以下がより好ましい。
上記一般式(XX)中のXとしては、たとえばフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基、トリレン基等のアルキル基置換アリーレン基、アルコキシル基置換アリーレン基、アラルキル基置換アリーレン基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基から得られる二価の基、キシリレン基等のアリーレン基を含む二価の基などが挙げられ、なかでも、保存安定性と難燃性の観点からは置換又は非置換のフェニレン基及びビフェニレン基が好ましい。一般式(XX)で示される化合物としては、HE−510(エア・ウォーター株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。共重合型フェノール・アラルキル樹脂を用いる場合、その配合量はその性能を発揮するために硬化剤全量中30質量%以上とすることが好ましく、50質量%以上がより好ましい。
【0042】
上記のフェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール脂及び共重合型フェノール・アラルキル樹脂は、いずれか1種を単独で用いても2種以上を組合せて用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いる場合の配合量は、フェノール樹脂全量中合わせて50質量%以上とすることが好ましく、60質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。
【0043】
本発明において用いられる(C)1分子中にフェノール性水酸基を1個以上有するベンゾフェノン誘導体は、置換または非置換のベンゾフェノン、ナフチルフェニルケトン、ジナフチルケトン、キサントン、フルオレノンなどの芳香環に1個以上水酸基が直接結合していれば特に制限はなく、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。具体的には、o−ヒドロキシベンゾフェノン、m−ヒドロキシベンゾフェノン、p−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アリルオキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,3’,4,4’,5−ヘキサヒドロキシベンゾフェノンおよびこれらの位置異性体や置換体などが挙げられるが、熱応力低減(リフロー温度での弾性率の低減)の観点では、o−ヒドロキシベンゾフェノン、m−ヒドロキシベンゾフェノン、p−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノンが好ましく、さらなる接着性向上の観点では、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノンが好ましい。
【0044】
本発明において用いられる(C)1分子中にフェノール性水酸基を1個以上有するベンゾフェノン誘導体の全配合量は封止用エポキシ樹脂成形材料中0.1質量%以上、1.0質量%未満が好ましい。0.1質量%未満では発明の効果が小さくなる傾向にあり、1.0質量%を超える場合には封止用エポキシ樹脂成形材料の硬度が大幅に低下する傾向がある。
【0045】
本発明において、(A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤および(C)1分子中にフェノール性水酸基を1個以上有するベンゾフェノン誘導体との当量比、すなわちエポキシ基数に対する硬化剤および1分子中にフェノール性水酸基を1個以上有するベンゾフェノン誘導体中の水酸基数の比(硬化剤および1分子中にフェノール性水酸基を1個以上有するベンゾフェノン誘導体中の水酸基数/エポキシ樹脂中のエポキシ基数)は、特に制限はないが、それぞれの未反応分を少なく抑えるために0.5以上、2.0未満の範囲に設定されることが好ましく、0.6以上、1.3未満がより好ましい。成形性に優れる封止用エポキシ樹脂成形材料を得るためには0.8以上、1.2未満の範囲に設定されることがさらに好ましい。
【0046】
本発明の成形材料は、(D)シラン化合物を含有してもよい。(D)シラン化合物とは、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン系化合物である。これらを例示すると、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−[ビス(β−ヒドロキシエチル)]アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルシランジオール、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、トリフェニルシラノール、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリエトキシシラン、2−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)フェニルイミン、3−(3−(トリエトキシシリル)プロピルアミノ)−N,N−ジメチルプロピオンアミド、N−トリエトキシシリルプロピル−β−アラニンメチルエステル、3−(トリエトキシシリルプロピル)ジヒドロ−3,5−フランジオン、ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン等のシラン系化合物、1H−イミダゾール、2−アルキルイミダゾール、2,4−ジアルキルイミダゾール、4−ビニルイミダゾール等のイミダゾール化合物とγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のγ−グリシドキシプロピルアルコキシシランの反応物であるイミダゾール系シラン化合物が挙げられる。これらの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(D)シラン化合物の全配合量は成形性および流動性の観点から封止用エポキシ樹脂成形材料中0.06質量%以上2質量%未満が好ましく、0.1質量%以上0.75質量%未満がより好ましく、0.2質量%以上0.7質量%未満がさらに好ましい。0.06質量%未満では流動性が低下する傾向にあり、2質量%以上ではボイド等の成形不良が発生しやすい傾向がある。
【0047】
本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料には、従来公知のカップリング剤を配合してもよい。たとえば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等が挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。またこれらカップリング剤の全配合量は成形性及び接着性の観点から封止用エポキシ樹脂成形材料中0.06質量%以上、42質量%未満が好ましく、0.1質量%以、上0.75質量%未満がより好ましく、0.2質量%以上、0.7質量%未満がさらに好ましい。0.06質量%未満では流動性が低下する傾向にあり、2質量%以上ではボイド等の成形不良が発生しやすい傾向がある。
【0048】
本発明の成形材料は、(E)硬化促進剤を含有してもよい。本発明で用いられる(E)硬化促進剤としては、封止用エポキシ樹脂成形材料で一般に使用されているもので特に限定はない。たとえば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、5,6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等のシクロアミジン化合物及びこれらの化合物に無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン類及びこれらの誘導体、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2―フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール類及びこれらの誘導体、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン類及びこれらのホスフィン類に無水マレイン酸、上記キノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有するリン化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムエチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムテトラブチルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩及びこれらの誘導体などが挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0049】
第三ホスフィンとキノン化合物との付加物に用いられる第三ホスフィンとしては特に制限はないが、たとえば、ジブチルフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4−エチルフェニル)ホスフィン、トリス(4−プロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4−ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリス(tert−ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6−トリメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6−ジメチル−4−エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4−エトキシフェニル)ホスフィン等のアリール基を有する第三ホスフィンが挙げられ、成形性の点からはトリフェニルホスフィンが好ましい。
また、第三ホスフィンとキノン化合物との付加物に用いられるキノン化合物としては特に制限はないが、たとえば、o−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン、ジフェノキノン、1,4−ナフトキノン、アントラキノン等が挙げられ、耐湿性又は保存安定性の観点からはp−ベンゾキノンが好ましい。
【0050】
硬化促進剤の配合量は、硬化促進効果が達成される量であれば特に限定されるものではないが、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)1分子中にフェノール性水酸基を1個以上有するベンゾフェノン誘導体の合計量100質量部に対して、0.1質量部以上、10質量部未満が好ましく、0.3質量部以上、5質量部未満がより好ましい。0.1質量部未満では短時間で硬化させることが困難となり、10質量部以上では硬化速度が早すぎて良好な成形品が得られない傾向がある。
【0051】
本発明の成形材料は、(F)無機充てん剤を含有してもよい。本発明で用いられる(F)無機充てん剤は、吸湿性、線膨張係数低減、熱伝導性向上及び強度向上のために成形材料に配合されるものであり、封止用エポキシ樹脂成形材料に一般に使用されているものであれば特に制限されるものではないが、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、線膨張係数低減の観点からは溶融シリカが、高熱伝導性の観点からはアルミナが好ましく、充てん剤形状は成形時の流動性及び金型摩耗性の点から球形が好ましい。特にコストと性能のバランスの観点からは球状溶融シリカが好ましい。
【0052】
無機充てん剤の配合量は、難燃性、成形性、吸湿性、線膨張係数低減及び強度向上の観点から、封止用エポキシ樹脂成形材料中70質量%以上、95質量%未満が好ましい。70質量%未満では、難燃性が低下する傾向があり、95質量%以上では流動性が不足する傾向がある。
【0053】
また、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料には、ICの耐湿性、高温放置特性を向上させる目的で陰イオン交換体を必要に応じて配合することができる。陰イオン交換体としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができるが、たとえば、ハイドロタルサイト類や、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ビスマスから選ばれる元素の含水酸化物等が挙げられ、これらを単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、下記組成式(XXI)で示されるハイドロタルサイトが好ましい。
【0054】
【化21】

(組成式(XXI)中、0<X≦0.5、mは正の数)
陰イオン交換体の配合量は、ハロゲンイオンなどの陰イオンを捕捉できる十分量であれば特に限定されるものではないが、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上、30質量部未満が好ましく、1質量部以上、5質量部未満がより好ましい。
【0055】
本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料には、必要に応じて離型剤を用いてもよい。離型剤としては、酸化型又は非酸化型のポリオレフィンを(A)エポキシ樹脂100質量部に対して0.01質量部以上、10質量部未満用いることが好ましく、0.1質量部以上、5質量部未満用いることがより好ましい。0.01質量部未満では離型性が不十分となる傾向があり、10質量部以上では接着性が低下する傾向がある。酸化型又は非酸化型のポリオレフィンとしては、ヘキスト株式会社製商品名H4やPE、PEDシリーズ等の数平均分子量が500〜10000程度の低分子量ポリエチレンなどが挙げられる。また、これ以外の離型剤としては、たとえばカルナバワックス、モンタン酸エステル、モンタン酸、ステアリン酸等が挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。酸化型又は非酸化型のポリオレフィンに加えてこれら他の離型剤を併用する場合、その配合量は合わせて(A)エポキシ樹脂100質量部に対して0.1質量部以上、10質量部未満が好ましく、0.5質量部以上、3質量部未満がより好ましい。
【0056】
本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料には従来公知の難燃剤を必要に応じて配合することができる。たとえば、ブロム化エポキシ樹脂、三酸化アンチモン、赤リン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の無機物及び/又はフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂等で被覆された赤リン、リン酸エステル等のリン化合物、メラミン、メラミン誘導体、メラミン変性フェノール樹脂、トリアジン環を有する化合物、シアヌル酸誘導体、イソシアヌル酸誘導体等の窒素含有化合物、シクロホスファゼン等のリン及び窒素含有化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム及び下記組成式(XXII)で示される複合金属水酸化物などが挙げられる。
【0057】
【化22】

(組成式(XXII)で、M、M及びMは、互いに異なる金属元素を示し、a、b、c、d、e、f、p、q及びmは正の数、rは0又は正の数を示す。)
上記組成式(XXII)中のM、M及びMは、互いに異なる金属元素であれば特に制限はないが、難燃性の観点からは、Mが第3周期の金属元素、IIA族のアルカリ土類金属元素、IVB族、IIB族、VIII族、IB族、IIIA族及びIVA族に属する金属元素から選ばれ、MがIIIB〜IIB族の遷移金属元素から選ばれることが好ましく、Mがマグネシウム、カルシウム、アルミニウム、スズ、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛から選ばれ、Mが鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛から選ばれることがより好ましい。流動性の観点からは、Mがマグネシウム、Mが亜鉛又はニッケルで、r=0のものが好ましい。p、q及びrのモル比は特に制限はないが、r=0で、p/qが1/99〜1/1であることが好ましい。なお、金属元素の分類は、典型元素をA亜族、遷移元素をB亜族とする長周期型の周期律表(出典:共立出版株式会社発行「化学大辞典4」1987年2月15日縮刷版第30刷)に基づいて行った。また、酸化亜鉛、錫酸亜鉛、硼酸亜鉛、酸化鉄、酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛、ジシクロペンタジエニル鉄等の金属元素を含む化合物などが挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組合せて用いてもよい。難燃剤の配合量は特に制限はないが、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して1質量部以上、30質量部未満が好ましく、2質量部以上、15質量部未満がより好ましい。
【0058】
また、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料には、カーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラ等の着色剤を用いても良い。さらに、その他の添加剤として、シリコーンオイルやシリコーンゴム粉末等の応力緩和剤等を必要に応じて配合することができる。
【0059】
本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料は、各種成分を均一に分散混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製できるが、一般的な手法として、所定の配合量の成分をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、押出機等によって溶融混練した後、冷却、粉砕する方法を挙げることができる。たとえば、上述した成分の所定量を均一に撹拌、混合し、予め70〜140℃に加熱してあるニーダー、ロール、エクストルーダーなどで混練、冷却し、粉砕するなどの方法で得ることができる。成形条件に合うような寸法及び質量でタブレット化すると使いやすい。
【0060】
本発明で得られる封止用エポキシ樹脂成形材料により封止した素子を備えた電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子等の素子を搭載し、必要な部分を本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料で封止した、電子部品装置などが挙げられる。このような電子部品装置としては、たとえば、リードフレーム上に半導体素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部をワイヤボンディングやバンプで接続した後、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料を用いてトランスファ成形等により封止してなる、DIP(Dual Inline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J−lead package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の一般的な樹脂封止型IC、テープキャリアにバンプで接続した半導体チップを、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料で封止したTCP(Tape Carrier Package)、配線板やガラス上に形成した配線に、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子及び/又はコンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子を、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料で封止したCOB(Chip On Board)モジュール、ハイブリッドIC、マルチチップモジュール、裏面に配線板接続用の端子を形成した有機基板の表面に素子を搭載し、バンプ又はワイヤボンディングにより素子と有機基板に形成された配線を接続した後、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料で素子を封止したBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)などが挙げられる。また、プリント回路板にも本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料は有効に使用できる。
本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料を用いて素子を封止する方法としては、低圧トランスファ成形法が最も一般的であるが、インジェクション成形法、圧縮成形法等を用いてもよい。
【実施例】
【0061】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の成分をそれぞれ下記表1〜6に示す質量部で配合し、混練温度80℃、混練時間10分の条件でロール混練を行い、実施例1〜24及び比較例1〜24の封止用エポキシ樹脂成形材料を作製した。なお表中の空欄は配合無しを表す。
(A)エポキシ樹脂としては、
エポキシ樹脂1:エポキシ当量196、融点106℃のビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名YX−4000)、
エポキシ樹脂2:エポキシ当量240、軟化点96℃のビフェニレン骨格含有フェノール・アラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製商品名CER−3000L)、
エポキシ樹脂3:エポキシ当量238、軟化点55℃のフェノール・アラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製商品名NC−2000L)、
エポキシ樹脂4:エポキシ当量200、軟化点60℃のオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製商品名N500P−1)を使用した。
【0062】
(B)硬化剤としては、
硬化剤1:水酸基当量175、軟化点70℃のフェノール・アラルキル樹脂(明和化成株式会社製商品名MEH−7800)、
硬化剤2:水酸基当量106、軟化点83℃のフェノールノボラック樹脂(明和化成株式会社製商品名H−100)を使用した。
【0063】
(C)1分子中にフェノール性水酸基を1個以上有するベンゾフェノン誘導体(以下ヒドロキシベンゾフェノン類と記す)としては、
ヒドロキシベンゾフェノン類1:p−ヒドロキシベンゾフェノン、
ヒドロキシベンゾフェノン類2:o−ヒドロキシベンゾフェノン、
ヒドロキシベンゾフェノン類3:2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、
ヒドロキシベンゾフェノン類4:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、
ヒドロキシベンゾフェノン類5:4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンを使用した。
また、比較例でヒドロキシベンゾフェノン類の替わりに使用した材料としては、
フェノール類1:フェノール、
フェノール類2:p−クレゾール、
フェノール類3:カテコール、
フェノール類4:レソルシノール、
フェノール類5:ヒドロキノン、
ベンゾフェノン類1:ベンゾフェノン、
ベンゾフェノン類2:p−メトキシベンゾフェノンを使用した。
【0064】
(D)シラン化合物としては、
シラン化合物1:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
(E)硬化促進剤としては、
硬化促進剤1:トリフェニルホスフィンとp−ベンゾキノンとのベタイン型付加物、
(F)無機充てん剤としては、
無機充てん剤1:平均粒径17.5μm、比表面積3.8m/gの球状溶融シリカを使用した。その他の添加成分としてはモンタン酸エステル、カーボンブラックを使用した。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
【表4】

【0069】
【表5】

【0070】
【表6】

【0071】
実施例及び比較例の封止用エポキシ樹脂成形材料を、次の(1)〜(7)の各種特性試験により評価した。評価結果を下記表7〜12に纏めて示した。なお、封止用エポキシ樹脂成形材料の成形は、明記しない限りトランスファ成形機により、金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件で行った。また、後硬化は180℃で5時間行った。
【0072】
(1)スパイラルフロー
EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、封止用エポキシ成形材料を上記条件で成形し、流動距離(cm)を求めた。
(2)熱時硬度
封止用エポキシ樹脂成形材料を上記条件で直径50mm、厚さ3mmの円板に成形し、成形後直ちにショアD型硬度計(株式会社上島製作所製HD−1120(タイプD))を用いて測定した。
【0073】
(3)吸湿時熱時硬度
(2)で成形する前に封止用エポキシ樹脂成形材料を25℃、50%RHの条件で72時間放置し、その後成形して直ちにショアD型硬度計(株式会社上島製作所製HD−1120(タイプD))を用いて測定した。
(4)吸水率
(2)で成形した円板を上記条件で後硬化し、85℃、60%RHの条件下で168時間放置し、放置前後の質量変化を測定して、吸水率(質量%)={(放置後の円板質量−放置前の円板質量)/放置前の円板質量}×100を評価した。
【0074】
(5)260℃における弾性率(高温曲げ試験)
JIS−K−6911に準じた3点曲げ試験を曲げ試験機(株式会社エー・アンド・デイ製テンシロン)を用いて行い、恒温槽で260℃に保ちながら、下記の式のより、曲げ弾性率(E)、曲げ強度(S)、破断伸び(ε)をそれぞれ求めた。測定は封止用エポキシ樹脂成形材料を上記条件で10mm、70mm、3mmに成形した試験片を用い,ヘッドスピード1.5mm/minの条件で行った。
【0075】
【数1】

(6)260℃における金属との接着力測定(シェア強度測定)
封止用エポキシ樹脂成形材料を上記条件で、銅板または銀メッキした銅板にそれぞれ底面の直径4mm、上面の直径3mm、高さ4mmのサイズに成形、後硬化し、ボンドテスター(デイジ・ジャパン株式会社製シリーズ4000)によって、各種銅板の温度を260℃に保ちながら、せん断速度50μm/sでせん断接着力を測定した。
(7)耐リフロー性
8×10×0.4mmのシリコーンチップを搭載した外形寸法20×14×2mmの80ピンフラットパッケージ(リードフレーム材質:銅合金、ダイパッド部上面およびリード先端部銀メッキ処理品)を、封止用エポキシ樹脂成形材料を用いて上記条件で成形、後硬化して作製し、85℃、60%RHの条件で1週間放置後、実施例1〜16および比較例1〜16は240℃で、実施例17〜20および比較例17〜20は230℃で、実施例21〜24および比較例21〜24は220℃でリフロー処理を行い、樹脂/フレーム界面のはく離の有無を超音波探傷装置(日立建機株式会社製HYE−FOCUS)で観察し、試験パッケージ数(5)に対するはく離発生パッケージ数で評価した。
【0076】
【表7】

【0077】
【表8】

【0078】
【表9】

【0079】
【表10】

【0080】
【表11】

【0081】
【表12】

【0082】
上記(1)〜(7)の特性を、同一のエポキシ樹脂および硬化剤の組合せで実施例と比較例を比べる。例えば、エポキシ樹脂1と2/硬化剤1の組合せである実施例1〜16と比較例1〜16、エポキシ樹脂1と3/硬化剤1の組合せである実施例17〜20と比較例17〜20、エポキシ樹脂1と4/硬化剤2の組合せである実施例21〜24と比較例21〜24を比べる。
表7〜12を見ると、ヒドロキシベンゾフェノン類を添加した実施例は、比較例よりも260℃せん断接着力(銀および銅)が高く、85℃、60%RHの条件で1週間放置後のリフロー処理において、樹脂/フレーム界面のはく離が発生せず、耐リフロー性に優れている。
ヒドロキシベンゾフェノン類の割合が0.1重量%未満の実施例5は、同じエポキシ樹脂/硬化剤の組合せである実施例1〜4および6〜16よりも接着力が低く、発明の効果が小さく出ており、ヒドロキシベンゾフェノン類の割合が1.0%以上の実施例23は、同じエポキシ樹脂/硬化剤の組合せである実施例21、22、24よりも硬度が低下している。しかしながら、いずれの実施例も樹脂/フレーム界面のはく離は発生していない。
一方、本発明と異なる組成の比較例では本発明の目的を満足しない。実施例と比較して260℃せん断接着力(銀および銅)が同等以下で、85℃、60%RHの条件で1週間放置後のリフロー処理において、樹脂/フレーム界面のはく離が大半のパッケージで発生し、耐リフロー性に劣る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中にエポキシ基を2個以上含有するエポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)1分子中にフェノール性水酸基を1個以上有するベンゾフェノン誘導体を含有する封止用エポキシ樹脂成形材料。
【請求項2】
封止用エポキシ樹脂成形材料中の(C)1分子中にフェノール性水酸基を1個以上有するベンゾフェノン誘導体の割合が、0.1質量%以上、1.0質量%未満である請求項1に記載の封止用エポキシ樹脂成形材料。
【請求項3】
さらに、(D)シラン化合物を含有する請求項1または請求項2に記載の封止用エポキシ樹脂成形材料。
【請求項4】
さらに、(E)硬化促進剤を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の封止用エポキシ樹脂成形材料。
【請求項5】
さらに、(F)無機充てん剤を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の封止用エポキシ樹脂成形材料。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の封止用エポキシ樹脂成形材料により封止された素子を備える電子部品装置。

【公開番号】特開2012−140566(P2012−140566A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1130(P2011−1130)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】