説明

封止用樹脂組成物及び電子部品装置

【課題】 低反り性、耐半田性、流動性、耐燃性及び保存安定性に優れた封止用樹脂組成物ならびに、その硬化物により素子が封止されており、耐湿信頼性及び高温保管性に優れた電子部品装置を提供する。
【解決手段】 下記一般式(1)で表される構造を有し、d=0である重合体と、d≧1である重合体とを含むエポキシ樹脂(A)と、フェノール樹脂系硬化剤(B)と、無機充填剤(C)と、を含むことを特徴とする封止用樹脂組成物、ならびに、封止用樹脂組成物を硬化させた硬化物で素子が封止されているものであることを特徴とする、電子部品装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用樹脂組成物及び電子部品装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、軽量化、高機能化の要求に伴い、半導体素子のような電子部品装置は高集積化し、例えば、半導体素子を保護する半導体パッケージの形態も進化を遂げてきた。エリア表面実装型半導体パッケージは多ピン化・高速化の要求に対応するために登場したものであり、たとえばボール・グリッド・アレイ(以下、「BGA」という。)、更に小型化を追求したチップ・サイズ・パッケージ(以下、「CSP」という。)などを挙げることが出来る。構造としては、ビスマレイミド・トリアジン(以下、「BT」という。)樹脂/銅箔回路基板に代表される硬質回路基板、あるいはポリイミド樹脂フィルム/銅箔回路基板に代表されるフレキシブル回路基板の片面上に半導体素子を搭載し、その素子搭載面、即ち基板の片面のみが半導体封止用樹脂組成物などで成形・封止されている。また基板の素子搭載面の反対面には半田ボールを格子状に面配列して形成し、半田ボールを介してマザーボードと電気的接合を行う特徴を有している。更に、素子を搭載する基板としては、上記有機回路基板以外にもリードフレーム等の金属基板を用いる構造も考案されている。
【0003】
これらエリア表面実装型半導体パッケージの構造は基板の素子搭載面のみを半導体封止用樹脂組成物で封止し、半田ボール形成面側は封止しないという片面封止の形態をとっている。このため、有機基板や金属基板と半導体封止用樹脂組成物の硬化物との間での熱膨張・熱収縮の不整合、あるいは半導体封止用樹脂組成物の成形・硬化時の硬化収縮により、成形直後からパッケージの反りが発生しやすい。成形物の反りが過大であると、搬送工程においてチャッキング不良が発生するだけでなく、マザーボード上に実装(半田ボールを溶融接合)する際に、パッケージがさらに反り変形し、半田ボールがマザーボードから浮き上がり、電気的接合不良を引き起こす。近年では、これらのエリア表面実装型半導体装置を複数積層して用いるパッケージオンパッケージ、あるいは一括成型した後に個片に切断するMAP型半導体パッケージが登場し、封止厚みはより薄く、封止面積はより大きくなる傾向にあり、上述の反りの課題は従来よりもさらに深刻となる。
【0004】
反りを低減する方法としては、原因となる熱膨張・熱収縮の不整合の解消、すなわち半導体封止用樹脂組成物のα1を基板のα1へ適合化、高Tg化、硬化成形収縮の低減などの方法があり、具体的には、
(1)トリフェノールメタン型エポキシ樹脂とトリフェノールメタン型フェノール樹脂との組合せによりTgを高くし、半導体封止用樹脂組成物の硬化収縮を小さくする手法(例えば、特許文献1参照。)
(2)溶融粘度の低い樹脂を用いて無機充填剤の配合量を高めることにより、耐燃性とα1を基板に合わせる手法による低反り性を達成する方法(例えば、特許文献2参照。)
などが挙げられる。このほか、半導体装置の生産工程上の対策としては
(3)成型後のポストモールドキュアを行う際に、パッケージに重石などの荷重をかけて強制的に反りを抑制する方法
を挙げることができる。しかしながら、たとえば第一、第二の手法は、硬化物の吸水率が高く、半田リフロー処理時にクラックが生じ易く、耐燃性も十分ではないという課題がある。第三の手法は、荷重をかける工程によって生産性が低下する点で好ましくないばかりか、荷重の量によっては、半導体装置の個片化やリフロー処理などのプロセスにおいて、矯正の際に内部に蓄積した応力が解放され、チップと封止材との界面に剥離を、あるいは封止樹脂の内部にクラックを引き起こす場合がある。
成型(封止)面積が大きく、薄型であるMAP型半導体パッケージにおいては、上述の反りの課題のほかにも、成型時のワイヤ流れへの配慮もまた重要な課題となる。また、自動車や携帯電話などの屋外での使用を前提とした電子機器に用いられる場合には、耐湿信頼性、高温保管特性などの信頼性についても良好であることが求められる。
以上のことから、薄型のエリア表面実装型半導体パッケージのような電子部品装置に用いる封止用樹脂組成物には、低反り性、耐半田性、高耐燃性、高流動特性の特性をバランスよく満たす封止用樹脂組成物が求められている。さらには、耐湿信頼性、高温信頼性や生産性に関わる特性も求められている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−147940号公報
【特許文献2】特開平11−001541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低反り性、耐半田性、流動性、耐燃性及び保存安定性に優れた封止用樹脂組成物ならびに、その硬化物により素子が封止されており、耐湿信頼性及び高温保管性に優れた電子部品装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の封止用樹脂組成物は、下記一般式(1)で表される構造を有し、d=0である重合体と、d≧1である重合体とを含むエポキシ樹脂(A)と、フェノール樹脂系硬化剤(B)と、無機充填剤(C)と、を含むことを特徴とする。
【0008】
【化1】


上記一般式(1)において、
R1は、互いに独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、
R2、R3、R4及びR5は、互いに独立して、水素原子、又は炭素数1〜6の炭化水素基である。
R6は、互いに独立して、炭素数1〜6の炭化水素基である。
a1は0〜3の整数、 a2は0〜2の整数であり、
bは0〜4の整数であり、
cは1〜20の整数であり、
dは0〜20の整数であり、
構造式の両末端は水素原子である。

d=0である重合体においては、cは2〜20の整数であり、
置換もしくは無置換のグリシドキシフェニレン基であるc個の繰り返し単位の間には必ず

置換もしくは無置換のフェニレンを有するフェニルアラルキル基である(c−1)個の繰り返し単位を有する。

d≧1である重合体においては、(c+d)は2〜20の整数であり、
置換もしくは無置換のグリシドキシフェニレン基であるc個の繰り返し単位と、
ナフチルメチル基を置換基として有するとともに、上記R1により置換されもしくは無置換のグリシドキシフェニレン基であるd個の繰り返し単位とは、それぞれが連続で並んでいても、互いが交互もしくはランダムに並んでいてもよいが、それぞれの間には必ず置換もしくは無置換のフェニレンを有するフェニルアラルキル基である(c+d−1)個の繰り返し単位を有する。
【0009】
本発明の封止用樹脂組成物は、さらに、硬化促進剤(D)を含むものとすることができる。
【0010】
本発明の封止用樹脂組成物は、前記硬化促進剤(D)が、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物からなる群から選択される少なくとも1種の硬化促進剤を含むものとすることができる。
【0011】
本発明の封止用樹脂組成物は、さらに、芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(E)をさらに含むものとすることができる。
【0012】
本発明の封止用樹脂組成物は、さらに、カップリング剤(F)を含むものとすることができる。
【0013】
本発明の封止用樹脂組成物は、前記カップリング剤(F)が、2級アミノ基を有するシランカップリング剤を含むものとすることができる。
【0014】
本発明の封止用樹脂組成物は、前記カップリング剤(F)が、メルカプトシラン基を有するシランカップリング剤を含むものとすることができる。
【0015】
本発明の封止用樹脂組成物は、さらに、前記無機充填剤(C)とは異なる無機難燃剤(G)をさらに含むものとすることができる。
【0016】
本発明の封止用樹脂組成物は、前記無機難燃剤(G)が、金属水酸化物、又は複合金属水酸化物を含むものとすることができる。
【0017】
本発明の電子部品装置は、上述の封止用樹脂組成物を硬化させた硬化物で素子が封止されているものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に従うと、低反り性、耐半田性、流動性、耐燃性及び保存安定性に優れた封止用樹脂組成物ならびに、その硬化物により素子が封止されており、耐湿信頼性及び高温保管性に優れた電子部品装置を経済的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る封止用樹脂組成物の硬化物で、金属リードフレームに搭載された電子部品素子が封止されている電子部品装置の一例について、断面構造を示した図である。
【図2】本発明に係る封止用樹脂組成物の硬化物で、有機基板に搭載された電子部品素子が封止されている片面封止型の電子部品装置の一例について、断面構造を示した図である。
【図3】本発明に係る封止用樹脂組成物の硬化物で、金属リードフレームに搭載された電子部品素子が封止されている一括成形方式の片面封止型電子部品装置の一例について、一括封止して個片化する前の状態の電子部品装置の断面構造を示した図である。
【図4】本発明に係る封止用樹脂組成物の硬化物で、金属リードフレームに搭載された電子部品素子が封止されている電子部品装置であって、素子を搭載したパッドの裏面が、装置の表面に露出したパッド−エクスポーズド型の一例について、断面構造を示した図である。
【図5】実施例で用いたエポキシ樹脂1のFD−MSチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の封止用樹脂組成物は、下記一般式(1)で表わされる構造を有するd=0である重合体と、d≧1である重合体とを含むエポキシ樹脂(A)と、フェノール樹脂系硬化剤(B)と、無機充填剤(C)と、を含むことを特徴とする。これにより、低反り性、耐半田性、流動性、耐燃性、及び、保存安定性に優れた封止用樹脂組成物ならびに、その硬化物により素子が封止されており、耐湿信頼性及び高温保管性のような信頼性に優れた電子部品装置を得ることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書における「〜」で表される数値範囲は、その上限値下限値のいずれをも含むものである。
【0021】
[エポキシ樹脂(A)]
本発明の封止用樹脂組成物に用いられるエポキシ樹脂(A)としては、下記一般式(1)で表される構造を有し、d=0である重合体と、d≧1である重合体とを含む。
【0022】
【化1】


上記一般式(1)において、
R1は、互いに独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、
R2、R3、R4及びR5は、互いに独立して、水素原子、又は炭素数1〜6の炭化水素基である。
R6は、互いに独立して、炭素数1〜6の炭化水素基である。
a1は0〜3の整数、 a2は0〜2の整数であり、
bは0〜4の整数であり、
cは1〜20の整数であり、
dは0〜20の整数であり、
構造式の両末端は水素原子である。

d=0である重合体においては、cは2〜20の整数であり、
置換もしくは無置換のグリシドキシフェニレン基であるc個の繰り返し単位の間には必ず

置換もしくは無置換のフェニレンを有するフェニルアラルキル基である(c−1)個の繰り返し単位を有する。

d≧1である重合体においては、(c+d)は2〜20の整数であり、
置換もしくは無置換のグリシドキシフェニレン基であるc個の繰り返し単位と、
ナフチルメチル基を置換基として有するとともに、上記R1により置換されもしくは無置
換のグリシドキシフェニレン基であるd個の繰り返し単位とは、 それぞれが連続で並んでいても、互いが交互もしくはランダムに並んでいてもよいが、それぞれの間には必ず置換もしくは無置換のフェニレンを有するフェニルアラルキル基である(c+d−1)個の繰り返し単位を有する。
【0023】
一般式(1)において、d=0である公知の重合体としては、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂を挙げることが出来る。これを用いた樹脂組成物は、良好な硬化性、耐半田性を有する。一般式(1)において、d≧1である重合体は、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂と比較すると、類似の骨格構造を有しており、おおむね同様の特性を示すが、ナフチルメチル基を置換基として有するとともに、上記R1により置換されもしくは無置換のグリシドキシフェニレン基であるd個の繰り返し単位を有することによって、さらに以下の特徴を発現する。
1)ナフタレン同士の平面スタック構造に由来する相互作用が強く働くことで、樹脂組成物の熱収縮率が低減し、結果として半導体パッケージのような電子部品装置の反りを抑えることができるほか、分子運動抑制効果で、耐熱性が向上し、高温環境下においても信頼性を保持できる。
2)架橋点間に嵩高いナフチルメチル構造を有していることから、樹脂組成物の高温時の弾性率が低下し、半田リフロー処理あるいは温度サイクル試験の際に、樹脂組成物で封止された電子部品装置内部に発生する応力や熱衝撃を緩和することできる。
3)ナフチルメチル基の疎水性によって、半導体パッケージのような電子部品装置の吸湿量が低下し、半田リフロー時の水蒸気爆発に起因する応力が軽減し、とりわけ内部クラックの発生を抑制する。
4)多環芳香族構造の密度が高まり、かつ高温域における弾性率が低減することにより、燃焼試験で速やかな発泡層を形成することができ、より良好な耐燃性が得られる。
以上のように、本発明に用いられるエポキシ樹脂は、一般式(1)で表わされる構造でd=0である重合体、ならびにd≧1である重合体、を含むことで、低反り性と耐半田性のみならず、耐燃性、硬化性、耐熱性に優れた樹脂組成物を得ることが出来る。
【0024】
[エポキシ樹脂(A)の合成方法]
本発明に係るエポキシ化合物(A)は、下記一般式(2)で表される前駆体フェノール樹脂(P1)をエピハロヒドリンと反応して得られる。
【0025】
【化2】

【0026】
上記一般式(2)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、a1、 a2、b、c、dについては、上記一般式(1)と同様である。
【0027】
エポキシ樹脂(A)の合成方法の例としては、一般式(2)で表される前駆体フェノール樹脂(P1)に過剰のエピハロヒドリン類を加えて溶解した後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の存在下で50〜150℃、好ましくは60〜120℃で1〜10時間反応させる方法等が挙げられる。反応終了後、過剰のエピハロヒドリン類を留去し、残留物をトルエン、メチルイソブチルケトン等の溶剤に溶解し、濾過し
、水洗して無機塩を除去し、次いで溶剤を留去することによりエポキシ樹脂(A)を得ることができる。
【0028】
エポキシ樹脂(A)の合成に用いられるエピハロヒドリンとしては、例えば、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリン、β−メチルエピブロモヒドリン、β−メチルエピヨードヒドリン等を挙げることができる。
【0029】
[前駆体フェノール樹脂(P1)]
次に、一般式(2)で表される構造を有する化合物(前駆体フェノール樹脂(P1))の合成例について説明する。
【0030】
本発明に係る前駆体フェノール樹脂(P1)の合成方法としては、特に限定されるものではないが、たとえば、下記一般式(3)で表されるハロメチルナフタレン化合物と、下記一般式(4)で表される出発フェノール樹脂(P0)とを、酸性雰囲気下で反応させて得ることができる。
【0031】
【化3】


上記一般式(3)において、Xはハロゲン原子又は、炭素数1〜4のアルコキシ基である。
【0032】
【化4】


上記一般式(4)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、a1、b、c、dについては、上記一般式(1)と同様である。
【0033】
前駆体フェノール化合物(P1)の製造に用いられる一般式(3)で表わされる構造中のXにおけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロキシル基、ブトキシ基等が挙げられる。
また、ハロメチル基又はアルコキシメチル基はナフタレン環上の何れの炭素原子に結合していてもよい。ハロメチル化合物の中でも、1−クロロメチルナフタレン、2−クロロメチルナフタレンは反応時に副生する塩素ガスを酸性触媒として用いることができる点で好ましい。
【0034】
前駆体フェノール樹脂(P1)の合成方法の例としては、一般式(4)で表される出発フェノール樹脂(P0)水酸基1モル当量に対して0.05〜0.2モルのハロメチルナフタレン化合物を加えて溶解した後、0.01〜0.05モルの蟻酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、塩酸、硫酸、酢酸、ルイス酸、リン酸などの酸性触媒の存在下で20〜150℃、好ましくは50〜120℃で1〜10時間反応させる方法等が挙げられる。ここで、ナフタレン化合物はヒドロキシフェニレン構造の水素と反応し、置換基としてメチルナフタレン基を生成する。反応終了後、残留物をトルエン、メチルイソブチルケトン等の溶剤に溶解し、濾過し、水洗して無機塩を除去し、次いで溶剤を留去することにより前駆体フェノール樹脂(P1)を得ることができる。
【0035】
[出発フェノール樹脂(P0)]
次に、一般式(4)で表される構造を有する化合物(出発フェノール樹脂(P0))の合成例について説明する。
【0036】
一般式(4)で表される出発フェノール樹脂(P0)の重合方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェノール化合物および下記一般式(5)で表される化合物を縮重合することにより得ることができる。
【0037】
【化5】


上記一般式(5)において、R2、R3、R4、R5、R6、bについては、上記一般式(1)と同様である。Xは、ハロゲン原子、水酸基又は炭素数1〜6のアルコキシ基である。R7、R8、R9及びR10は、互いに独立して、炭素数1〜5の炭化水素基又は水素原子である。
【0038】
出発フェノール樹脂(P0)の製造に用いられるフェノール化合物としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、p−クレゾール、m−クレゾール、フェニルフェノール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、iso−プロピルフェノール、tert−ブチルフェノール、キシレノール、メチルプロピルフェノール、メチルブチルフェノール、ジプロピルフェノール、ジブチルフェノール、ノニルフェノール、メシトール、2,3,5−トリメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、ベンジルフェノール、ナフチルフェノール、ナフチジルフェノール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、フェノール、o−クレゾールが好ましく、さらにフェノールが、ハロメチルナフタレン化合物とヒドロキシフェニレンの水酸基との反応が速やかに進行してナフチルメトキシフェニレン基を生成することが出来るという観点から、より好ましい。出発フェノール樹脂(P0)の製造において、これらのフェノール化合物は、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0039】
出発フェノール樹脂(P0)の製造に用いられる一般式(5)で表される化合物中のR
2、R3、R4及びR5における炭素数1〜6の炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、2,4−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、3,4−ジメチルブチル基、4,4−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、1−エチルブチル基、シクロヘキシル基、及びフェニル基等が挙げられる。
【0040】
出発フェノール樹脂(P0)の製造に用いられる一般式(5)で表される化合物中のR6における炭素数1〜6の炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、2,4−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、3,4−ジメチルブチル基、4,4−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、1−エチルブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、等が挙げられる。
【0041】
出発フェノール樹脂(P0)の製造に用いられる一般式(5)で表される化合物中の=CR7R8及び=CR9R10(いずれもアルキリデン基)としては、メチリデン基、エチリデン基、プロピリデン基、n−ブチリデン基、イソブチリデン基、tert−ブチリデン基、n−ペンチリデン基、2−メチルブチリデン基、3−メチルブチリデン基、tert−ペンチリデン基、n−ヘキシリデン基、1−メチルペンチリデン基、2−メチルペンチリデン基、3−メチルペンチリデン基、4−メチルペンチリデン基、2,2−ジメチルブチリデン基、2,3−ジメチルブチリデン基、2,4−ジメチルブチリデン基、3,3−ジメチルブチリデン基、3,4−ジメチルブチリデン基、4,4−ジメチルブチリデン基、2−エチルブチリデン基、1−エチルブチリデン基、及びシクロヘキシリデン基等が挙げられる。
【0042】
出発フェノール樹脂(P0)の製造に用いられる一般式(5)で表される化合物中のXにおけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。また、前駆体フェノール樹脂(P1)の製造に用いられる一般式(5)で表される化合物中のXにおける炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、2−メチルブトキシ基、3−メチルブトキシ基、tert−ペントキシ基、n−ヘキトキシ基、1−メチルペントキシ基、2−メチルペントキシ基、3−メチルペントキシ基、4−メチルペントキシ基、2,2−ジメチルブトキシ基、2,3−ジメチルブトキシ基、2,4−ジメチルブトキシ基、3,3−ジメチルブトキシ基、3,4−ジメチルブトキシ基、4,4−ジメチルブトキシ基、2−エチルブトキシ基、及び1−エチルブトキシ基等が挙げられる。
【0043】
出発フェノール樹脂(P0)の製造において、一般式(5)で表される化合物は、一種類を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。中でも、p−キシリレングリコールは、比較的低温で合成が可能であり、反応副生成物の留去や取り扱いが容易であるため好ましい。また、Xがハロゲン原子である場合、微量の水分の存在に起因して発生するハロゲン化水素を酸触媒として利用することができる。
【0044】
出発フェノール樹脂(P0)の合成方法については特に限定されるものではないが、たとえばフェノール化合物1モルに対して、一般式(5)で表される化合物0.1〜0.6モル、蟻酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、塩酸、硫酸、燐酸
、酢酸、ルイス酸、などの酸性触媒0.005〜0.05モルを加え、50〜200℃の温度で、窒素フローにより発生ガス及び水分を系外へ排出しながら、2〜20時間反応させ、反応終了後に残留するモノマーを減圧蒸留、水蒸気蒸留などの方法で留去することによって得ることができる。なお一般式(5)のXがハロゲンの場合には、反応系に少量の水を加えることで、発生するハロゲン化水素を酸性触媒として用いることが出来る。このほか、出発フェノール樹脂(P0)として、市販の同構造のものを用いてもよく、たとえば一般式(4)においてa1=0、b=0、R2、R3、R4、R5が水素原子である重合体が入手可能である。このような市販品として具体的には、三井化学製XLC−LL、XLC−3L、XLC−4L、明和化成製MEH−7800SS、MEH−7800S等の商品名の樹脂が挙げられる。
【0045】
本発明に用いるエポキシ樹脂(A)の軟化点としては、ハンドリング性と封止用樹脂組成物の流動特性とのバランスという観点から、50℃以上110℃以下であることが好ましい。
【0046】
本発明に用いるエポキシ樹脂(A)のICI粘度としては、0.5dPa・s〜10dPa・sである。
【0047】
本発明に用いるエポキシ樹脂(A)のエポキシ当量としては、240g/eq以上が好ましく、より好ましくは250g/eq以上である。下限値が上記範囲内であると、エポキシ樹脂(A)中に含まれるナフチルメチル基が適量となる結果、封止用樹脂組成物の耐アルカリ性、耐燃性、耐半田性の向上効果を得ることができる。
本発明に用いるエポキシ樹脂(A)のエポキシ当量としては、350g/eq以下が好ましく、より好ましくは340g/eq以下である。上限値が上記範囲内であると、エポキシ樹脂(A)中に含まれるグリシドキシフェニレン基が適量となる結果、封止用樹脂組成物は良好な硬化特性と密着性を発現することができる。
【0048】
また、本発明の封止用樹脂組成物におけるエポキシ樹脂(A)の配合量の下限値は、封止用樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上であり、さらに好ましくは1.5質量%以上である。下限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物は良好な流動性を有する。また、封止用樹脂組成物中のエポキシ樹脂(A)の配合量の上限値は、封止用樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは12質量%以下、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは8質量%以下である。上限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物は良好な耐半田性と硬化性を有する。
【0049】
このほか、本発明の封止用樹脂組成物は、上記エポキシ樹脂(A)を用いることによる効果が損なわれない範囲で、他のエポキシ樹脂を併用することができる。併用できるエポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジヒドロアントラセンジオール型エポキシ樹脂等の結晶性エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ヒドロキシナフタレン及び/又はジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ヒドロキシナフタレンまたはジヒドロキシナフタレン等のナフトール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド化合物と、を酸触媒下において反応させて得られるノボラック型ナフトール樹脂をエポキシ化して得られる樹脂等のナフトール
型エポキシ樹脂;メトキシナフタレン骨格を有するノボラック型エポキシ樹脂;フェノール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂を挙げることができる。
さらにその中でも、モールディッド・アレイ・プロセス・ボール・グリッド・アレイ(MAP−BGA)やモールディッド・アレイ・プロセス・クワッド・フラット・ノンリードパッケージ(MAP−QFN)に代表される大型片面封止成型物の耐半田クラック性の観点からは、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ジヒドロアントラセンジオール型エポキシ樹脂等の結晶性を有するエポキシ樹脂が好ましく、このようなエポキシ樹脂であれば、エポキシ樹脂(A)と組み合わせて用いることにより、流動性を向上させつつ、低反り性、耐半田性、耐燃性及び保存安定性のバランスが安定的に良好となる作用効果が得られる。
【0050】
[フェノール樹脂系硬化剤(B)]
次に、フェノール樹脂系硬化剤(B)について説明する。フェノール樹脂系硬化剤(B)は、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物、アルキル置換ベンゼンとホルムアルデヒドとを重合して得られる樹脂をフェノール類及びパラキシリレン化合物で変性して得られるフェノール変性アルキル置換芳香族炭化水素樹脂、等が挙げられる。また、上述の前駆体フェノール樹脂(P1)を硬化剤として用いることができる。さらにこの中でも、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂が耐燃性に優れる。また、トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂はモールディッド・アレイ・プロセス・ボール・グリッド・アレイ(MAP−BGA)やモールディッド・アレイ・プロセス・クワッド・フラット・ノンリードパッケージ(MAP−QFN)に代表される大型片面封止成型物の反り低減に優れる。これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。このようなフェノール樹脂系硬化剤(B)により、耐燃性、耐湿性、電気特性、硬化性、保存安定性等のバランスが良好となる。特に、硬化性の点から水酸基当量は90g/eq以上、250g/eq以下のものが好ましい。
【0051】
本発明においては、さらに他の硬化剤を併用することができる。併用できる硬化剤としては、例えば重付加型の硬化剤、触媒型の硬化剤、縮合型の硬化剤等を挙げることができる。
【0052】
重付加型の硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレンジアミン(MXDA)などの脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m−フェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)などの芳香族ポリアミンのほか、ジシアンジアミド(DICY)、有機酸ジヒドラジドなどを含むポリアミン化合物;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)などの芳香族酸無水物などを含む酸無水物;ノボラック型フェノール樹脂、フェノールポリマーなどのポリフェノール化合物;ポリサルファイド、チオ
エステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類などが挙げられる。
【0053】
触媒型の硬化剤としては、例えば、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、2,4,6−トリスジメチルアミノメチルフェノール(DMP−30)などの3級アミン化合物;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール(EMI24)などのイミダゾール化合物;BF3錯体などのルイス酸などが挙げられる。
【0054】
縮合型の硬化剤としては、例えば、メチロール基含有尿素樹脂のような尿素樹脂;メチロール基含有メラミン樹脂のようなメラミン樹脂などが挙げられる。
【0055】
このような他の硬化剤を併用する場合において、フェノール樹脂系硬化剤(B)の配合割合の下限値としては、全硬化剤に対して、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。配合割合が上記範囲内であると、耐燃性、耐半田性を保持しつつ、良好な流動性を発現させることができる。
【0056】
硬化剤全体の配合割合の下限値については、特に限定されるものではないが、全樹脂組成物中に、0.8質量%以上であることが好ましく1.5質量%以上であることがより好ましい。配合割合の下限値が上記範囲内であると、充分な流動性を得ることができる。また、硬化剤全体の配合割合の上限値についても、特に限定されるものではないが、全樹脂組成物中に、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。配合割合の上限値が上記範囲内であると、良好な耐半田性を得ることができる。
【0057】
[無機充填剤(C)]
本発明の封止用樹脂組成物に用いられる無機充填剤(C)としては、当該分野で一般的に用いられる無機充填剤を使用することができる。例えば、溶融シリカ、球状シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミ等が挙げられる。無機充填剤(C)の粒径は、金型キャビティへの充填性の観点から、0.01μm以上、150μm以下であることが望ましい。
【0058】
封止用樹脂組成物中の無機充填剤(C)の量の下限値は、封止用樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは78質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは86質量%以上である。下限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物の硬化に伴う吸湿量の増加や、強度の低下が低減でき、したがって良好な耐半田クラック性を有する硬化物を得ることができる。また、連続成形時の金型ゲート側の樹脂詰まりに起因する成形不良を引き起こす恐れが少ない。また、封止用樹脂組成物中の無機充填剤(C)の量の上限値は、封止用樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは93質量%以下であり、より好ましくは91質量%以下であり、さらに好ましくは90質量%以下である。上限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物は良好な流動性を有するとともに、良好な成形性を備える。
【0059】
なお、後述する、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物や、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、三酸化アンチモン等の無機系難燃剤を用いる場合には、これらの無機系難燃剤と上記無機充填剤の合計量を上記範囲内とすることが望ましい。
【0060】
本発明の封止用樹脂組成物では、さらに硬化促進剤(D)を用いることができる。硬化促進剤(D)は、エポキシ樹脂(A)のエポキシ基とフェノール樹脂系硬化剤(B)のフェノール性水酸基との反応を促進するものであればよく、一般の封止用樹脂組成物に使用
されているものを利用することができる。具体例としては、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、ベンジルジメチルアミン、2−メチルイミダゾール等の窒素原子含有化合物が挙げられる。これらのうち、リン原子含有化合物が好ましく、流動性と硬化性のバランスの観点からは、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等の潜伏性を有する触媒がより好ましい。流動性という点を考慮するとテトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が好ましく、またモールディッド・アレイ・プロセス・ボール・グリッド・アレイ(MAP−BGA)やモールディッド・アレイ・プロセス・クワッド・フラット・ノンリードパッケージ(MAP−QFN)に代表される大型片面封止成型物のワイヤ流れ量が少なく、流動性保存安定性を考慮するとホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物が特に好ましい。さらに、上記の大型片面封止の成型物の反りを低減できるという点では、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が特に好ましい。
【0061】
本発明の封止用樹脂組成物で用いることができる有機ホスフィンとしては、例えばエチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第2ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第3ホスフィンが挙げられる。
【0062】
本発明の封止用樹脂組成物で用いることができるテトラ置換ホスホニウム化合物としては、例えば下記一般式(6)で表される化合物等が挙げられる。
【0063】
【化6】


(ただし、上記一般式(6)において、Pはリン原子を表す。R11、R12、R13及びR14は芳香族基又はアルキル基を表す。Aはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸のアニオンを表す。AHはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸を表す。x、yは1〜3の整数、zは0〜3の整数であり、かつx=yである。)
【0064】
一般式(6)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られるがこれに限定されるものではない。まず、テトラ置換ホスホニウムハライドと芳香族有機酸と塩基を有機溶剤に混ぜ均一に混合し、その溶液系内に芳香族有機酸アニオンを発生させる。次いで水を加えると、一般式(6)で表される化合物を沈殿させることができる。一般式(6)で表される化合物において、リン原子に結合するR11、R12、R13及びR14がフェニル基であり、かつAHはヒドロキシル基を芳香環に有する化合物、すなわちフェノール類であり、かつAは該フェノール類のアニオンであるのが好ましい。
【0065】
本発明の封止用樹脂組成物で用いることができるホスホベタイン化合物としては、例えば下記一般式(7)で表される化合物等が挙げられる。
【0066】
【化7】


(ただし、上記一般式(7)において、X1は炭素数1〜3のアルキル基、Y1はヒドロキシル基を表す。fは0〜5の整数であり、gは0〜4の整数である。)
【0067】
一般式(7)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られる。まず、第三ホスフィンであるトリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩とを接触させ、トリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩を有するジアゾニウム基とを置換させる工程を経て得られる。しかしこれに限定されるものではない。
【0068】
本発明の封止用樹脂組成物で用いることができるホスフィン化合物とキノン化合物との付加物としては、例えば下記一般式(8)で表される化合物等が挙げられる。
【0069】
【化8】


(ただし、上記一般式(8)において、Pはリン原子を表す。R15、R16及びR17は炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。R18、R19及びR20は水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよく、R18とR19が結合して環状構造となっていてもよい。)
【0070】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるホスフィン化合物としては、例えばトリフェニルホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリス(ベンジル)ホスフィン等の芳香環に無置換又はアルキル基、アルコキシル基等の置換基が存在するものが好ましく、アルキル基、アルコキシル基等の置換基としては1〜6の炭素数を有するものが挙げられる。入手しやすさの観点からはトリフェニルホスフィンが好ましい。
【0071】
またホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるキノン化合物としては、o−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン、アントラキノン類が挙げられ、中でもp−ベンゾキノンが保存安定性の点から好ましい。
【0072】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物の製造方法としては、有機第三ホスフィンとベンゾキノン類の両者が溶解することができる溶媒中で接触、混合させることにより付加物を得ることができる。溶媒としてはアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類で付加物への溶解性が低いものがよい。しかしこれに限定されるものではない。
【0073】
一般式(8)で表される化合物において、リン原子に結合するR15、R16及びR17がフェニル基であり、かつR18、R19及びR20が水素原子である化合物、すなわち1,4−ベンゾキノンとトリフェニルホスフィンを付加させた化合物が封止用樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率を低下させる点で好ましい。
【0074】
本発明の封止用樹脂組成物で用いることができるホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物としては、例えば下記一般式(9)で表される化合物等が挙げられる。
【0075】
【化9】


(ただし、上記一般式(9)において、Pはリン原子を表し、Siは珪素原子を表す。R21、R22、R23及びR24は、それぞれ、芳香環又は複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。式中X2は、基Y2及びY3と結合する有機基である。式中X3は、基Y4及びY5と結合する有機基である。Y2及びY3は、プロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基Y2及びY3が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。Y4及びY5はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基Y4及びY5が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。X2、及びX3は互いに同一であっても異なっていてもよく、Y2、Y3、Y4、及びY5は互いに同一であっても異なっていてもよい。Z1は芳香環又は複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基である。)
【0076】
一般式(9)において、R21、R22、R23及びR24としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ナフチル基、ヒドロキシナフチル基、ベンジル基、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−オクチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられ、これらの中でも、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基等の置換基を有する芳香族基もしくは無置換の芳香族基がより好ましい。
【0077】
また、一般式(9)において、−Y2−X2−Y3−、及び−Y4−X3−Y5−で表される基は、プロトン供与体が、プロトンを2個放出してなる基で構成されるものであり、プロトン供与体としては、例えば、カテコール、ピロガロール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,2’−ビフェノール、1,1’−ビ
−2−ナフトール、サリチル酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、クロラニル酸、タンニン酸、2−ヒドロキシベンジルアルコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−プロパンジオール及びグリセリン等が挙げられるが、これらの中でも、カテコール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレンがより好ましい。
【0078】
また、一般式(9)中のZ1は、芳香環又は複素環を有する有機基又は脂肪族基を表し、これらの具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基等の脂肪族炭化水素基や、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基及びビフェニル基等の芳香族炭化水素基、グリシジルオキシプロピル基、メルカプトプロピル基、アミノプロピル基及びビニル基等の反応性置換基などが挙げられるが、これらの中でも、メチル基、エチル基、フェニル基、ナフチル基及びビフェニル基が熱安定性の面から、より好ましい。
【0079】
ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物の製造方法としては、メタノールを入れたフラスコに、フェニルトリメトキシシラン等のシラン化合物、2,3−ジヒドロキシナフタレン等のプロトン供与体を加えて溶かし、次に室温攪拌下ナトリウムメトキシド−メタノール溶液を滴下する。さらにそこへ予め用意したテトラフェニルホスホニウムブロマイド等のテトラ置換ホスホニウムハライドをメタノールに溶かした溶液を室温攪拌下滴下すると結晶が析出する。析出した結晶を濾過、水洗、真空乾燥すると、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が得られる。しかし、これに限定されるものではない。
【0080】
本発明の封止用樹脂組成物に用いることができる硬化促進剤(D)の配合割合は、全樹脂組成物中0.1質量%以上、1質量%以下であることがより好ましい。硬化促進剤(D)の配合割合が上記範囲内であると、充分な硬化性を得ることができる。また、硬化促進剤(D)の配合割合が上記範囲内であると、充分な流動性を得ることができる。
【0081】
本発明の封止用樹脂組成物では、さらに芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(E)を用いることができる。芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(E)(以下、「化合物(E)」とも称する。)は、これを用いることにより、エポキシ樹脂(A)とフェノール樹脂系硬化剤(B)との架橋反応を促進させる硬化促進剤として、潜伏性を有しないリン原子含有硬化促進剤を用いた場合であっても、保存安定性に優れた封止用樹脂組成物を得ることができる。また、化合物(E)は、封止用樹脂組成物の溶融粘度を下げ、流動性を向上させる効果も有するものである。化合物(E)としては、下記一般式(10)で表される単環式化合物又は下記一般式(11)で表される多環式化合物等を用いることができ、これらの化合物は水酸基以外の置換基を有していてもよい。
【0082】
【化10】


(ただし、上記一般式(10)において、R25、R29はどちらか一方が水酸基であり
、他方は水素原子、水酸基又は水酸基以外の置換基である。R26、R27及びR28は水素原子、水酸基又は水酸基以外の置換基である。)
【0083】
【化11】


(ただし、上記一般式(11)において、R30、R36はどちらか一方が水酸基であり、他方は水素原子、水酸基又は水酸基以外の置換基である。R31、R32、R33、R34及びR35は水素原子、水酸基又は水酸基以外の置換基である。)
【0084】
一般式(10)で表される単環式化合物の具体例としては、例えば、カテコール、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル又はこれらの誘導体が挙げられる。また、一般式(11)で表される多環式化合物の具体例としては、例えば、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン及びこれらの誘導体が挙げられる。これらのうち、流動性と硬化性の制御のしやすさから、芳香環を構成する2個の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物が好ましい。また、混練工程での揮発を考慮した場合、母核は低揮発性で秤量安定性の高いナフタレン環である化合物とすることがより好ましい。この場合、化合物(E)を、具体的には、例えば、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン及びその誘導体等のナフタレン環を有する化合物とすることができる。これらの化合物(E)は1種類を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0085】
かかる化合物(E)の配合割合は、全封止用樹脂組成物中に0.01質量%以上、1質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.03質量%以上、0.8質量%以下、特に好ましくは0.05質量%以上、0.5質量%以下である。化合物(E)の配合割合の下限値が上記範囲内であると、封止用樹脂組成物の充分な低粘度化と流動性向上効果を得ることができる。また、化合物(E)の配合割合の上限値が上記範囲内であると、封止用樹脂組成物の硬化性の低下や硬化物物性の低下を引き起こす恐れが少ない。
【0086】
本発明の封止用樹脂組成物においては、エポキシ樹脂(A)と無機充填剤(C)との密着性を向上させるため、シランカップリング剤(F)をさらに添加することができる。その例としては特に限定されないが、エポキシシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、メルカプトシラン等が挙げられ、エポキシ樹脂と無機充填剤との間で反応し、エポキシ樹脂と無機充填剤の界面強度を向上させるものであればよい。また、シランカップリング剤(F)は、前述の化合物(E)と併用することで、封止用樹脂組成物の溶融粘度を下げ、流動性を向上させるという化合物(E)の効果を高めることもできるものである。
【0087】
より具体的には、エポキシシランとしては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
また、アミノシランとしては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニルγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−6−(アミノヘキシル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−3−(トリメトキシシリルプロピル)−1,3−ベンゼンジメタナン等が挙げられる。
これらの中で、2級アミノ基を有するシランカップリング剤としては、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−6−(アミノヘキシル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
また、ウレイドシランとしては、例えば、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。
また、メルカプトシラン(メルカプトシラン基を有するシランカップリング剤)としては、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
これらのシランカップリング剤は1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0088】
樹脂組成物の流動性の観点では、2級アミノ基を有するシランが好ましく、耐半田性とワイヤ流れとのバランスという観点では、メルカプトシランが好ましく、シリコンチップ表面のポリイミドや基板表面のソルダーレジストなどの有機部材への密着性という観点ではエポキシシランが好ましい。耐アルカリ性という観点では、N−フェニル−γ−アミノプロピル構造を有する2級アミノ基を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0089】
本発明の封止用樹脂組成物に用いることができるシランカップリング剤(F)の配合割合としては、全樹脂組成物中0.01質量%以上、1質量%以下が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上、0.8質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以上、0.6質量%以下である。シランカップリング剤(F)の配合割合が上記下限値以上であれば、エポキシ樹脂と無機充填剤との界面強度が低下することがなく、半導体装置などの電子部品装置における良好な耐半田クラック性を得ることができる。また、シランカップリング剤(F)の配合割合が上記範囲内であれば、樹脂組成物の硬化物の吸水性が増大することがなく、半導体装置などの電子部品装置における良好な耐半田クラック性を得ることができる。
【0090】
本発明の封止用樹脂組成物においては、難燃性を向上させるために前記無機充填剤(C)とは異なる無機難燃剤(G)をさらに添加することができる。なかでも燃焼時に脱水、吸熱することによって燃焼反応を阻害する金属水酸化物、又は複合金属水酸化物が燃焼時間を短縮することができる点で好ましい。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニアを挙げることができる。複合金属水酸化物としては、2種以上の金属元素を含むハイドロタルサイト化合物であって、少なくとも一つの金属元素がマグネシウムであり、かつ、その他の金属元素がカルシウム、アルミニウム、スズ、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、又は亜鉛から選ばれる金属元素であればよく、そのような複合金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム・亜鉛固溶体が市販品で入手が容易である。なかでも、耐半田性と連続成形性のバランスの観点からは水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム・亜鉛固溶体が好ましい。前記無機充填剤(C)とは異なる無機難燃剤(G)は、単独で用いても、2種以上用いてもよい。また、連続成形性への影響を低減する目的から、シランカップリング剤などの珪素化合物やワックスなどの脂肪族系化合物などで表面処理を行って用いてもよい。
【0091】
本発明の封止用樹脂組成物では、前述した成分以外に、カーボンブラック、ベンガラ、
酸化チタン等の着色剤;カルナバワックス等の天然ワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス、ステアリン酸やステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸及びその金属塩類若しくはパラフィン等の離型剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力添加剤;酸化ビスマス水和物等の無機イオン交換体;硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、フォスファゼン、三酸化アンチモン等の難燃剤等の添加剤を適宜配合してもよい。
【0092】
本発明の封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂系硬化剤(B)及び無機充填剤(C)、ならびに上述のその他の成分等を、例えば、ミキサー等を用いて常温で均一に混合する。
【0093】
その後、必要に応じて、加熱ロール、ニーダー又は押出機等の混練機を用いて溶融混練し、続いて必要に応じて冷却、粉砕することにより、所望の分散度や流動性等に調整することができる。
【0094】
次に、本発明の電子部品装置について説明する。本発明の電子部品装置は、上述した本発明の封止用樹脂組成物を硬化させた硬化物で素子が封止されているものであることを特徴とする。
本発明の封止用樹脂組成物を用いて電子部品装置を製造する方法としては、例えば、電子部品素子を搭載したリードフレーム又は回路基板等を金型キャビティ内に設置した後、封止用樹脂組成物をトランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の成形方法で成形、硬化させることにより、この電子部品素子を封止する方法が挙げられる。
【0095】
封止される電子部品素子としては、例えば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
得られる電子部品装置の形態としては、例えば、デュアル・インライン・パッケージ(DIP)、プラスチック・リード付きチップ・キャリヤ(PLCC)、クワッド・フラット・パッケージ(QFP)、ロー・プロファイル・クワッド・フラット・パッケージ(LQFP)、スモール・アウトライン・パッケージ(SOP)、スモール・アウトライン・Jリード・パッケージ(SOJ)、薄型スモール・アウトライン・パッケージ(TSOP)、薄型クワッド・フラット・パッケージ(TQFP)、テープ・キャリア・パッケージ(TCP)、ボール・グリッド・アレイ(BGA)、チップ・サイズ・パッケージ(CSP)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
封止用樹脂組成物を用いてトランスファーモールド等の成形方法により電子部品素子が封止された電子部品装置は、そのまま、あるいは80℃から200℃程度の温度で、10分間から10時間程度の時間をかけてこの樹脂組成物を完全硬化させた後、電子機器等に搭載される。
【0098】
図1は、本発明に係る封止用樹脂組成物の硬化物で、金属リードフレームに搭載された電子部品素子が封止されている電子部品装置の一例について、断面構造を示した図である。ダイパッド3上に、ダイボンド材硬化体2を介して半導体素子1が固定されている。半導体素子1の電極パッドとリードフレーム5との間は金線4によって接続されている。半導体素子1は、封止用樹脂組成物の硬化体6によって封止されている。
【0099】
図2は、本発明に係る封止用樹脂組成物の硬化物で、有機基板に搭載された電子部品素子が封止されている片面封止型の電子部品装置の一例について、断面構造を示した図である。基板8の表面に、ソルダーレジスト7の層が形成された積層体のソルダーレジスト7上にダイボンド材硬化体2を介して半導体素子1が固定されている。半導体素子1の電極
パッドと基板8上の電極パッドとの間は金線4によって接続されている。封止用樹脂組成物の硬化体6によって、基板8の半導体素子1が搭載された片面側のみが封止されている。基板8上の電極パッドは基板8上の非封止面側の半田ボール9と内部で接合されている。
【0100】
図3は、本発明に係る封止用樹脂組成物の硬化物で、金属リードフレームに搭載された電子部品素子が封止されている一括成形方式の片面封止型電子部品装置の一例について、断面構造を示した図である。ダイパッド3上に、ダイボンド材硬化体2を介して半導体素子1が固定されている。半導体素子1の電極パッドとリードフレーム5との間は金線4によって接続されている。半導体素子1は、封止用樹脂組成物の硬化体6によって封止されている。なお、図3は、金属製リードフレームの片面のみを封止用樹脂組成物で一括封止成形した状態を示しており、点線部分をダイシング処理、又はレーザーカット処理することで個片化する。
【実施例】
【0101】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。以下に記載の各成分の配合量は、特に記載しない限り、質量部とする。
【0102】
エポキシ樹脂は、以下のエポキシ樹脂1〜6を使用した。これらのうち、エポキシ樹脂1〜3が、本発明におけるエポキシ樹脂(A)に該当する。なお、エポキシ樹脂1の合成に先立ち、前駆体フェノール樹脂(P1)の合成を説明する。
【0103】
前駆体フェノール樹脂(P1)の合成:出発フェノール樹脂(P0)としてフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(明和化成株式会社製、MEH−78004S。水酸基当量168g/eq、軟化点62℃)500質量部、メチルイソブチルケトン570質量部、蒸留水1質量部をセパラブルフラスコに秤量し、撹拌装置、温度計、還流冷却器、窒素導入口を装着し、室温で窒素バブリングしながら撹拌して成分を溶解させたのち、加温を開始し、系内の温度を100℃〜110℃の範囲に維持しながら1時間かけて1−クロロメチルナフタレン(東京化成工業株式会社製試薬、融点20℃、分子量176.6、純度99.1%)66質量部を徐々に添加し、さらに3時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却した後、蒸留水300質量部を加えて振とうした後に、水層を棄却する操作(水洗)を洗浄水が中性になるまで繰り返し行った。次に、100℃2mmHgの減圧条件でメチルイソブチルケトンを留去し、下記式(I)で表される前駆体フェノール樹脂(P1)(cは1〜20の整数であり、dは0〜20の整数であり、構造式の両末端は水素原子である。d=0である重合体においては、cは2〜20の整数であり、ヒドロキシフェニレン基であるc個の繰り返し単位の間には必ずフェニルアラルキル基である(c−1)個の繰り返し単位を有する。また、d≧1である重合体においては、(c+d)は2〜20の整数であり、ヒドロキシフェニレン基であるc個の繰り返し単位と、ナフチルメチル基を置換基として有するヒドロキシフェニレン基であるd個の繰り返し単位とは、 それぞれが連続で並んでいても、互いが交互もしくはランダムに並んでいてもよいが、それぞれの間には必ずフェニルアラルキル基である(c+d−1)個の繰り返し単位を有する。水酸基当量189。)を得た。
【0104】
【化20】

【0105】
エポキシ樹脂1:セパラブルフラスコに撹拌装置、温度計、還流冷却器、窒素導入口を装着し、前駆体フェノール樹脂(P1)を500質量部、エピクロルヒドリン1500質量部、ジメチルスルホキシド290質量部を加えた。45℃に加熱して溶解させた後、水酸化ナトリウム(固形細粒状、純度99%試薬)108質量部を2時間かけて添加し、50℃に昇温して2時間、さらに70℃に昇温して2時間反応させた。反応後、蒸留水300質量部を加えて振とうした後に、水層を棄却する操作(水洗)を洗浄水が中性になるまで繰り返し行った後、油層を125℃2mmHgの減圧条件でエピクロルヒドリン及びジメチルスルホキシドを留去した。得られた固形物にメチルイソブチルケトン1100質量部を加えて溶解し、70℃に加熱し、30質量%水酸化ナトリウム水溶液34質量部を1時間かけて添加し、さらに1時間反応した後、静置し、水層を棄却した。油層に蒸留水150質量部を加えて水洗操作を行い、洗浄水が中性になるまで同様の水洗操作を繰り返し行った後、加熱減圧によってメチルイソブチルケトンを留去し、下記一般式(II)で表わされるエポキシ樹脂1(cは1〜20の整数であり、dは0〜20の整数であり、構造式の両末端は水素原子である。d=0である重合体においては、cは2〜20の整数であり、グリシドキシフェニレン基であるc個の繰り返し単位の間には必ずフェニルアラルキル基である(c−1)個の繰り返し単位を有する。また、d≧1である重合体においては、(c+d)は2〜20の整数であり、グリシドキシフェニレン基であるc個の繰り返し単位と、ナフチルメチル基を置換基として有するグリシドキシフェニレン基であるd個の繰り返し単位とは、それぞれが連続で並んでいても、互いが交互もしくはランダムに並んでいてもよいが、それぞれの間には必ずフェニルアラルキル基である(c+d−1)個の繰り返し単位を有する。エポキシ当量257、軟化点57℃、150℃におけるICI粘度1.3dPa・s)を得た。
【0106】
【化21】

【0107】
エポキシ樹脂1のFD−MSチャートを図5に示す。たとえば、図5のFD−MS分析の
m/z=402は、一般式(II)のc=2、d=0である成分に、
m/z=654は、一般式(II)のc=3、d=0である成分に
相当し、これらは一般式(1)のd=0である重合体に該当する。
m/z=542は、一般式(II)のc=1、d=1である成分に、
m/z=682は、一般式(II)のc=0、d=2である成分に
相当し、これらは一般式(1)のd≧1である重合体に該当する。
以上のように得られたエポキシ樹脂1には、一般式(1)で表わされる構造であってd=0である重合体とd≧1である重合体とを含むことが確認できた。
【0108】
エポキシ樹脂1のFD−MS測定は次の条件で行なった。エポキシ樹脂1の試料10mgに溶剤ジメチルスルホキシド(DMSO)1gを加えて十分溶解したのち、FDエミッターに塗布の後、測定に供した。FD−MSシステムは、イオン化部に日本電子株式会社製のMS−FD15Aを、検出器に日本電子株式会社製のMS−700機種名二重収束型質量分析装置とを接続して用い、検出質量範囲(m/z)50〜2000にて測定した。
【0109】
エポキシ樹脂2:前駆体フェノール樹脂(P1)の合成において、1−クロロメチルナフタレン35質量部に、エポキシ樹脂1の合成において前駆体フェノール樹脂(P1)470質量部に変更した以外は、エポキシ樹脂1と同様の合成操作を行い、一般式(II)で表されるエポキシ樹脂2(エポキシ当量246、軟化点55℃、150℃におけるICI粘度1.2dPa・s)を得た。エポキシ樹脂2のFD−MS分析の結果、エポキシ樹脂1と同様にm/z=402、654、542、682が検出されており、エポキシ樹脂1と同様に、一般式(1)のd=0である重合体、ならびに一般式(1)のd≧1である重合体を含むことが確認できた。
【0110】
エポキシ樹脂3:前駆体フェノール樹脂(P1)の合成において、1−クロロメチルナフタレン106質量部、エポキシ樹脂1の合成において前駆体フェノール樹脂(P1)535質量部に変更した以外は、エポキシ樹脂1と同様の合成操作を行い、一般式(II)で表されるエポキシ樹脂3(エポキシ当量270、軟化点59℃、150℃におけるICI粘度1.4dPa・s)を得た。エポキシ樹脂3のFD−MS分析の結果、エポキシ樹脂1と同様にm/z=402、654、542、682が検出されており、エポキシ樹脂1と同様に、一般式(1)のd=0である重合体、ならびに一般式(1)のd≧1である重合体を含むことが確認できた。
【0111】
エポキシ樹脂4:ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、YX4000K。エポキシ当量185g/eq、軟化点107℃、150℃におけるICI粘度0.1dPa・s。)
【0112】
エポキシ樹脂5:フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、NC2000。エポキシ当量238g/eq、軟化点52℃、150℃におけるICI粘度1.2dPa・s。)
【0113】
エポキシ樹脂6:オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、N−660。エポキシ当量210g/eq、軟化点62℃、150℃におけるICI粘度2.3dPa・s。)
【0114】
硬化剤1:フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(明和化成株式会社製、MEH−7800SS。水酸基当量170、軟化点65℃、150℃におけるICI粘度0.9dPa・s。)
【0115】
硬化剤2:ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(明和化成株式会社製、MEH−7851SS。水酸基当量203、軟化点67℃、150℃におけるICI粘度0.7dPa・s。)
【0116】
硬化剤3:フェノールノボラック樹脂(住友ベークライト株式会社製、PR−HF−3。水酸基当量104、軟化点80℃、150℃におけるICI粘度0.7dPa・s。)
【0117】
硬化剤4:フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂(東都化成株式会社製、SN−485。水酸基当量210、軟化点87℃、150℃におけるICI粘度1.8dPa・s。)
【0118】
硬化剤5:トリフェニルプロパン型フェノール樹脂(明和化成(株)製、MEH−7500。水酸基当量97、軟化点110℃、150℃におけるICI粘度5.8dPa・s。)
【0119】
(無機充填剤)
無機充填剤としては、電気化学工業株式会社製溶融球状シリカFB560(平均粒径30μm)100質量部、アドマテックス製合成球状シリカSO−C2(平均粒径0.5μm)6.5質量部、アドマテックス製合成球状シリカSO−C5(平均粒径1.5μm)7.5質量部のブレンドを使用した。
【0120】
(硬化促進剤)
以下の硬化促進剤1〜5を使用した。
【0121】
硬化促進剤1:下記式(12)で表される硬化促進剤
【0122】
【化12】

【0123】
硬化促進剤2:下記式(13)で表される硬化促進剤
【0124】
【化13】

【0125】
硬化促進剤3:下記式(14)で表される硬化促進剤
【0126】
【化14】

【0127】
硬化促進剤4:下記式(15)で表される硬化促進剤
【0128】
【化15】

【0129】
硬化促進剤5:トリフェニルホスフィン(北興化学工業株式会社製、TPP)
【0130】
(芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(E))
化合物Eとして、2,3−ナフタレンジオール(東京化成工業株式会社製、2,3−ナフタレンジオール、純度98%)を使用した。
【0131】
(シランカップリング剤)
以下のシランカップリング剤1〜3を使用した。
【0132】
シランカップリング剤1:γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−803)。
シランカップリング剤2:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−403)。
シランカップリング剤3:N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−573。)
【0133】
(難燃剤)
以下の難燃剤1〜2を使用した。
難燃剤1:水酸化アルミニウム(住友化学株式会社製、CL−303)
難燃剤2:水酸化マグネシウム・水酸化亜鉛固溶体複合金属水酸化物(タテホ化学工業株式会社製、エコーマグZ−10)
【0134】
(着色剤)
着色剤として、三菱化学工業株式会社製のカーボンブラック(MA600)を使用した。
【0135】
(離型剤)
離型剤として、日興ファイン株式会社製のカルナバワックス(ニッコウカルナバ、融点83℃)を使用した。
【0136】
後述する実施例及び比較例で得られた封止用樹脂組成物について、次のような測定及び評価を行った。
(評価項目)
【0137】
スパイラルフロー:低圧トランスファー成形機(コータキ精機株式会社製、KTS−15)を用いて、EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型に、175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間120秒間の条件で封止用樹脂組成物を注入し、流動長を測定した。スパイラルフローは、流動性のパラメータであり、数値が大きい方が、流動性が良好である。単位はcm。
【0138】
MAP−BGAのパネル反り評価:樹脂基板(サイズ190×15mm)に、チップサイズ7×8×0.4mmのチップを搭載し、φ18μmの金ワイヤにより電気的に接続したものを圧縮成形金型の上型キャビティに設置し、樹脂組成物を圧縮成形金型の下型キャビティに投入した後、圧縮成形機を用いて、金型温度175℃、硬化時間120sec、成形圧力9.8MPaの条件で、MAP−BGAの半導体装置を形成した。175℃で4時間加熱処理し、パネルを測定サンプルとして用いた。接触式表面粗さ計に、樹脂組成物で封止成形した面が上になるように測定サンプルを水平にセットし、MAP−BGAのパネルの長手方向に接触子を走査しながら、封止面の高さ方向の変位を測定し、変位(高低)差の最大値をパネル反り量とした。測定サンプル数は各n=4個とし、表には平均値を示した。なお、測定値は、上に凸の反り変位の場合は数値を負の値とし、凹の反り変位の場合は数値を正の値として(+の符号は略)表示した。数値の絶対値の小さい方が、反りが小さく、ハンドリングや応力の面で優れる。
数値の絶対値が4.0mm以下であれば良好とし、2.0mm以下であればきわめて良好と判断した。実施例1で得られたエポキシ樹脂組成物を用いて作製したMAP−BGAのパネルは、3、2mmと良好な低反り性を示した。
【0139】
MAP−BGAのワイヤ流れ率−1:上記の175℃で4時間加熱処理前のMAP−BGAのパネルを切断し、個片化した半導体装置を得た。個片化した半導体装置のサイズは、10×14mm、樹脂の厚みは550μm、チップ上の樹脂部の厚みは150μm。得られたパッケージを軟X線透視装置(ソフテックス株式会社製PRO−TEST 100)で観察し、パッケージの対角線上にある最も長い金ワイヤ4本(長さ5mm)の平均の流れ率を(流れ)/(ワイヤ長)の比率で表わした。単位は%。
【0140】
MAP−BGAのワイヤ流れ率保存安定性評価:封止用樹脂成形物を25℃の雰囲気下で48時間放置した後に、前記のMAP−BGAのワイヤ流れ率(MAP−BGAのワイヤ流れ率−2)を測定し、48時間放置後の封止用樹脂成形物を用いた場合のワイヤ流れ率と、初期の封止用樹脂成形物を用いた場合のワイヤ流れ率との比較で、ワイヤ流れ率の保持率を求めた。単位は%。保持率が110%以下の場合、良好な結果と判断した。
【0141】
個片化MAP−BGAの耐半田性評価−1:個片化して収得した半導体装置MAP−BGAのうち良品の半数(最大で20個)を、30℃、相対湿度60%で192時間処理した後、IRリフロー処理(260℃、JEDEC条件に従う)を行った。ついで半導体装置内部の剥離及びクラックの有無を超音波探傷装置にて確認し、耐半田性評価−1を実施した半導体装置の個数が20個で、そのうち不良の個数がn個であるとき、n/20と表示した。不良半導体装置の個数が1個以下の場合、良好な結果と判断した。実施例1で得られた封止用樹脂組成物を用いて作製した半導体装置は0/20と良好な耐半田性を示した。
【0142】
個片化MAP−BGAの耐半田性評価−2:個片化して収得した半導体装置MAP−BGAのうち良品の半数(最大で20個)を、30℃、相対湿度60%で696時間処理した後、IRリフロー処理(260℃、JEDEC条件に従う)を行った。ついで半導体装置内部の剥離及びクラックの有無を超音波探傷装置にて確認し、耐半田性評価−2を実施した半導体装置の個数が20個で、そのうち不良の個数がn個であるとき、n/20と表示した。不良半導体装置の個数が2個以下の場合、良好な結果と判断した。実施例1で得られた封止用樹脂組成物を用いて作製した半導体装置は1/20と良好な耐半田性を示した。
【0143】
個片化MAP−BGAの温度サイクル試験(TCT):個片化して収得した半導体装置MAP−BGAのうち良品の10個を−55℃/10分間〜125℃/10分間の環境下で繰り返し処理をおこない、半導体装置内部の剥離及びクラックの有無を超音波探傷装置にて確認した。評価したパッケージの50%以上の個数に剥離または外部クラックが生じた時間を測定し、「50%不良発生時間」を示した。単位はhr。50%不良発生時間が長いほど好ましく、1000時間以上で合格とした。
【0144】
耐燃性:低圧トランスファー成形機(コータキ精機株式会社製、KTS−30)を用いて、金型温度175℃、注入時間15秒間、硬化時間120秒間、注入圧力9.8MPaの条件で、封止用樹脂組成物を注入成形して、3.2mm厚の耐燃試験片を作製した。得られた試験片について、UL94垂直法の規格に則り耐燃試験を行った。表には、Fmax、ΣF及び判定後の耐燃ランク(クラス)を示した。
【0145】
耐湿信頼性(HAST):低圧トランスファー成形機(第一精工株式会社製、GP−ELF)を用いて、金型温度175℃、注入圧力7.4MPa、硬化時間105秒間の条件で、エポキシ樹脂組成物を注入して半導体素子(シリコンチップ)が搭載されたリードフレーム等を封止成形し、16ピンSOP(半導体素子はHAST用標準品TEG9を使用し、半導体素子とリードフレームのインナーリード部とは25μm径の金線でボンディングされている。)を成形し、アフターベークとして175℃、8時間処理行い半導体装置を作製した。得られた半導体装置について、IEC68−2−66に準拠してHAST(Highly Accelerated temperature and humidity Stress Test)試験を実施した。試験条件は130℃、85%RH、印加電圧20V、168時間処理とした。半導体装置1個当り4つの端子について回路のオープン不良の有無を観察し、5個の半導体装置で合計20回路を観察して不良回路の個数を測定した。n/20と表示した。不良半導体装置の個数が5個以下の場合、良好な結果と判断した。実施例1で得られた封止用樹脂組成物を用いて作製した半導体装置は0/20と良好な耐湿信頼性を示した。
【0146】
高温保管特性(HTSL):上記の耐湿信頼性評価と同様の半導体装置で高温保管試験(185℃、1000時間)を行い、配線間の電気抵抗値が初期値に対し20%増加したパッケージを不良と判定した。20個のパッケージ中の不良回路の個数を測定し、n/2
0と表示した。不良半導体装置の個数が5個以下の場合、良好な結果と判断した。実施例1で得られた封止用樹脂組成物を用いて作製した半導体装置は0/20と良好な高温保管特性を示した。
【0147】
実施例2〜14、比較例1〜2
表1の配合に従い、実施例1と同様にして封止用樹脂組成物を製造し、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1示した。
【0148】
【表1】

【0149】
本発明の封止用樹脂組成物は、一般式(1)で表される構造を有するd=0である重合体と、d≧1である重合体とを含むエポキシ樹脂(A)と、フェノール樹脂系硬化剤(B)と、無機充填剤(C)と、を含むものであり、実施例1〜14のいずれにおいても、低反り性、ワイヤ流れ率、保存安定性、耐半田性、耐燃性、耐湿信頼性、及び、高温保管性において優れた結果が得られた。
【0150】
また、実施例8〜14においては、エポキシ樹脂(A)と併用するエポキシ樹脂として、結晶性エポキシ樹脂を用いているため、流動性が向上し、ワイヤ流れ率をより低減することができ、また、個片化MAP−BGAの耐半田性評価−2においても優れた結果となった。
一方、比較例1、2はいずれも、実施例で用いているエポキシ樹脂(A)を配合していないため、反り、ワイヤ流れ率、保存安定性、耐半田性、難燃性、耐湿信頼性、及び、高温保管性において低下がみられた。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明に従うと、低反り性、ワイヤ流れ率、保存安定性に優れた封止用樹脂組成物を得ることができるため、耐半田性、耐燃性、耐湿信頼性、及び、高温保管性に優れた電子部品用として好適なものを得ることができる。
【符号の説明】
【0152】
1 半導体素子
2 ダイボンド体硬化体
3 ダイパッド
4 金線
5 リードフレーム
6 エポキシ樹脂組成物の硬化体
7 ソルダーレジスト
8 基板
9 半田ボール


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構造を有し、d=0である重合体と、d≧1である重合体とを含むエポキシ樹脂(A)と、フェノール樹脂系硬化剤(B)と、無機充填剤(C)と、を含むことを特徴とする封止用樹脂組成物。
【化1】


上記一般式(1)において、
R1は、互いに独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、
R2、R3、R4及びR5は、互いに独立して、水素原子、又は炭素数1〜6の炭化水素基である。
R6は、互いに独立して、炭素数1〜6の炭化水素基である。
a1は0〜3の整数であり、 a2は0〜2の整数であり、
bは0〜4の整数であり、
cは1〜20の整数であり、
dは0〜20の整数であり、
構造式の両末端は水素原子である。

d=0である重合体においては、cは2〜20の整数であり、
置換もしくは無置換のグリシドキシフェニレン基であるc個の繰り返し単位の間には必ず

置換もしくは無置換のフェニレンを有するフェニルアラルキル基である(c−1)個の繰り返し単位を有する。

d≧1である重合体においては、(c+d)は2〜20の整数であり、
置換もしくは無置換のグリシドキシフェニレン基であるc個の繰り返し単位と、
ナフチルメチル基を置換基として有するとともに、上記R1により置換されもしくは無置換のグリシドキシフェニレン基であるd個の繰り返し単位とは、 それぞれが連続で並んでいても、互いが交互もしくはランダムに並んでいてもよいが、それぞれの間には必ず置換もしくは無置換のフェニレンを有するフェニルアラルキル基である(c+d−1)個の繰り返し単位を有する。
【請求項2】
さらに、硬化促進剤(D)を含むものである、請求項1に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項3】
前記硬化促進剤(D)が、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物からなる群から選択される少なくとも1種の硬化促進剤を含むものである、請求項2に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(E)を含むものである、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、カップリング剤(F)を含むものである、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項6】
前記カップリング剤(F)が、2級アミノ基を有するシランカップリング剤を含むものである、請求項5に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項7】
前記カップリング剤(F)が、メルカプトシラン基を有するシランカップリング剤を含むものである、請求項5に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項8】
さらに、前記無機充填剤(C)とは異なる無機難燃剤(G)を含むものである、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項9】
前記無機難燃剤(G)が、金属水酸化物、又は複合金属水酸化物を含むものである、請求項8に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物を硬化させた硬化物で素子が封止されているものであることを特徴とする、電子部品装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−246472(P2012−246472A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121991(P2011−121991)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】