説明

封止用樹脂組成物及び電子部品装置

【課題】パッケージ内部のボイドが極めて少なく、従来以上に流動性を向上させつつ、耐半田性、及び硬化性のバランスに優れた封止用樹脂組成物、ならびに、それを用いた信頼性に優れた半導体装置を経済的に提供すること。
【解決手段】エポキシ樹脂(A)と、一般式(1)で表されるフェノール樹脂系硬化剤(b1)及び一般式(2)で表されるフェノール樹脂系硬化剤(b2)とを含むフェノール樹脂系硬化剤(B)と、無機充填剤(C)と、硬化促進剤(D)と、を含むことを特徴とする封止用樹脂組成物、ならびに、その封止用樹脂組成物の硬化物で素子が封止されていることを特徴とする電子部品装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用樹脂組成物及び電子部品装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、軽量化、高性能化への要求はとどまることが無く、例えば、半導体素子(以下、「素子」、「チップ」ともいう。)の高集積化、高密度化は年々進行し、さらには半導体装置(以下、「パッケージ」ともいう。)の実装方式にも、表面実装技術が登場し、普及しつつある。このような半導体装置の周辺技術の進歩によって、半導体素子を封止する樹脂組成物への要求も厳しいものとなってきている。たとえば、表面実装工程では、吸湿した半導体装置が半田処理時に高温にさらされ、急速に気化した水蒸気の爆発的応力によってクラックや内部剥離が発生し、半導体装置の動作信頼性を著しく低下させる。さらには、鉛の使用撤廃の機運から、従来よりも融点の高い無鉛半田へ切り替えられ、実装温度が従来に比べ約20℃高くなり、上述の半田処理時に作用する応力の影響はより深刻となる。このように表面実装技術の普及と無鉛半田への切り替えによって、封止用樹脂組成物にとって、耐半田性は重要な技術課題のひとつとなっている。
【0003】
また、近年の環境問題を背景に、従来用いられてきたブロム化エポキシ樹脂や酸化アンチモン等の難燃剤の使用を撤廃する社会的要請が高まりを見せており、これらの難燃剤を使用せずに、従来と同等の難燃性を付与する技術が必要となってきている。そのような代替難燃化技術として、例えば低粘度の結晶性エポキシ樹脂を適用し、より多くの無機充填剤を配合する手法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。しかしながら、これらの手法も、耐半田性と難燃性を十分満たしているとはいいがたい。
【0004】
さらに近年では、1パッケージ内にチップを積層する構造を有する半導体装置、あるいは従来よりもワイヤ線径をより細くした半導体装置が登場している。このような半導体装置では、従来よりも樹脂封止部分の肉厚が薄くなることで、成形品の未充填が発生しやすい、あるいは成形中のワイヤ流れが発生しやすいなど、封止工程の歩留まりを低下させる懸念がある。そこで、樹脂組成物の流動特性を向上させるために、低分子量のエポキシ樹脂又はフェノール樹脂硬化剤を用いる手法が容易に想起されるが、同手法によって、樹脂組成物(タブレット)同士の固着による成形工程中の搬送不良、設備停止を起こしやすい(ハンドリング性の低下)、硬化性低下によって耐半田性、成形性のいずれかの特性が損なわれる、などの不具合が発生する場合がある。
以上のように、半導体装置の細線化、薄型化によって、樹脂組成物は、充分な流動性を確保しつつ、ハンドリング性、耐半田性、成形性を確保し、これらの諸特性をバランスさせることが重要課題となってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−130919号公報
【特許文献2】特開平8−20673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、充分な流動性を確保しながら、従来以上にハンドリング性、耐半田性及び連続成形性のバランスが良好で、成形後のパッケージ内のボイドが少ない封止用樹脂組成物、ならびに、その硬化物により素子を封止してなる信頼性に優れた電子部品装置を経済的に提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂系硬化剤(B)、無機充填材(C)、硬化促進剤(D)を含有し、
前記フェノール樹脂系硬化剤(B)は、該フェノール樹脂系硬化剤(B)全体に対して、下記一般式(1)で表される構造を含むフェノール樹脂系硬化剤(b1)を20質量%以上、80質量%以下、及び、下記一般式(2)で表されるフェノール樹脂系硬化剤(b2)を20質量%以上、80質量%以下含むことを特徴とする。
【0008】
【化1】


上記一般式(1)において、R1は互いに独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、aは1〜4の整数である。iが1〜20の整数であり、jが0〜20の整数であり、kが0〜20の整数である。
ここで、上記一般式(1)において、
(b1−1):i≧1、j=0、k=0の場合、繰り返し数iで表される構造単位が連結し、分子の左末端は水素原子、分子の右末端はヒドロキシフェニル基である構造であり、(b1−2):i≧1、j≧1、k=0の場合、繰り返し数iで表される構造単位及び繰り返し数jで表される構造単位が連結し、分子の左末端は水素原子、分子の右末端はヒドロキシフェニル基であり、繰り返し数iで表される構造単位と繰り返し数jで表される構造単位とは、それぞれが連続もしくは互いが交互もしくはランダムに並んでいる構造であり、
(b1−3):i≧1、j=0、k≧1の場合、繰り返し数iで表される構造単位及び繰り返し数kで表される構造単位が連結し、分子の左末端は水素原子、分子の右末端はヒドロキシフェニル基または置換基R1がa個置換したフェニル基であり、繰り返し数iで表される構造単位と繰り返し数kで表される構造単位とは、それぞれが連続もしくは互いが交互もしくはランダムに並んでいる構造であり、
(b1−4):i≧1、j≧1、k≧1の場合、繰り返し数iで表される構造単位、繰り返し数jで表される構造単位及び繰り返し数kで表される構造単位が連結し、分子の左末端は水素原子、分子の右末端はヒドロキシフェニル基または置換基R1がa個置換したフェニル基であり、繰り返し数iで表される構造単位と繰り返し数jで表される構造単位と繰り返し数kで表される構造単位とは、それぞれが連続もしくは互いが交互もしくはランダムに並んでいる構造であり、
前記フェノール樹脂系硬化剤(b1)は、前記(b1−1)、(b1−2)、(b1−3)、及び、(b1−4)を必ず含有するものである。

【0009】
【化2】


上記一般式(2)において、oは1〜20の整数、pは1〜20の整数である。繰り返し数oで表わされる構造単位と、繰り返し数pで表わされる構造単位とは、それぞれが連続で並んでいても、互いが交互もしくはランダムに並んでいてもよい。

【0010】
本発明の封止用樹脂組成物は、該エポキシ樹脂(A)全体に対して、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及び、ビスフェノールA型エポキシ樹脂から選ばれる1種以上を、50質量%以上含むものとすることができる。
【0011】
本発明の封止用樹脂組成物は、前記無機充填材(C)の含有割合を、全封止用樹脂組成物中に85質量%以上、92質量%以下とすることができる。
【0012】
本発明の封止用樹脂組成物は、前記硬化促進剤(D)が、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物からなる群から選択される少なくとも1種の硬化促進剤を含むものとすることができる。
【0013】
本発明の封止用樹脂組成物は、芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(E)を含むものとすることができる。
【0014】
本発明の封止用樹脂組成物は、カップリング剤(F)を含むものとすることができる。
【0015】
本発明の封止用樹脂組成物は、前記カップリング剤(F)が、2級アミノ基を有するシランカップリング剤を含むものとすることができる。
【0016】
本発明の封止用樹脂組成物は、前記カップリング剤(F)が、メルカプト基を有するシランカップリング剤を含むものとすることができる。
【0017】
本発明の封止用樹脂組成物は、前記無機充填剤(C)とは異なる無機難燃剤(G)を含むものとすることができる。
【0018】
本発明の封止用樹脂組成物は、前記無機難燃剤(G)が、金属水酸化物、及び/又は、複合金属水酸化物を含むものとすることができる。
【0019】
本発明の電子部品装置は、上述の封止用樹脂組成物を硬化させた硬化物で素子が封止されているものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に従うと、充分な流動性を確保しながら、従来以上にハンドリング性、耐半田性及び連続成形性のバランスが良好で、成形後のパッケージ内のボイドが少ない封止用樹脂組成物、ならびに、その硬化物により素子が封止されている信頼性に優れた電子部品装置
を経済的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る封止用樹脂組成物を用いた半導体装置の一例について、断面構造を示した図である。
【図2】本発明に係る封止用樹脂組成物を用いた片面封止型の半導体装置の一例について、断面構造を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂系硬化剤(B)、無機充填材(C)、硬化促進剤(D)を含有し、
前記フェノール樹脂系硬化剤(B)は、該フェノール樹脂系硬化剤(B)全体に対して、下記一般式(1)で表される構造を含むフェノール樹脂系硬化剤(b1)を20質量%以上、80質量%以下、及び、下記一般式(2)で表されるフェノール樹脂系硬化剤(b2)を20質量%以上、80質量%以下含むことを特徴とする。
これにより、充分な流動性を確保しながら、従来以上にハンドリング性、耐半田性及び連続成形性のバランスに優れ、成形後のパッケージ内のボイドが少ない封止用樹脂組成物を得ることができる。また、本発明の電子部品装置は、上述の封止用樹脂組成物の硬化物で素子が封止されているものであることを特徴とする。これにより、信頼性に優れた電子部品装置を経済的に得ることができる。以下、本発明について詳細に説明する。
【0023】
先ず、本発明の封止用樹脂組成物について説明する。
本発明の封止用樹脂組成物に用いられるエポキシ樹脂(A)としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、アントラセンジオール型エポキシ樹脂等の結晶性エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂;メトキシナフタレン骨格を有するノボラック型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのエポキシ樹脂は、得られる封止用樹脂組成物の耐湿信頼性の観点から、イオン性不純物であるNaイオンやClイオンを極力含まないことが好ましい。また、封止用樹脂組成物の硬化性の観点から、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、100g/eq以上、500g/eq以下であることが好ましい。
【0024】
さらにその中でも、流動性の観点ではビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましく、耐半田性の観点ではフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、メトキシナフタレン骨格を有するノボラック型エポキシ樹脂等が好ましい。また、片面封止型の半導体装置における低反り性の観点ではトリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、アントラセンジオール型エポキシ樹脂等が好ましい。
このようなエポキシ樹脂であれば、後述する実施例で示すように、本発明のフェノール樹脂系硬化剤(B)と組み合わせて用いることにより、充分な流動性を確保しながら、ハ
ンドリング性、耐半田性及び連続成形性のバランスが安定的に良好となる作用効果が得られる。
【0025】
本発明の封止用樹脂組成物に用いられるエポキシ樹脂(A)としては、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及び、ビスフェノールA型エポキシ樹脂から選ばれる1種以上を、エポキシ樹脂(A)全体に対して50質量%以上含むことが好ましい。さらに好ましくは80質量%以上である。これにより、成形時の粘度が低くなり、また、パッケージ内部の部材との密着性が高くなるという効果を発現させることができる。
【0026】
封止用樹脂組成物中のエポキシ樹脂(A)の量は、封止用樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは4質量%以上である。下限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物は良好な流動性を有する。また、封止用樹脂組成物中のエポキシ樹脂の量は、封止用樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは13質量%以下である。下限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物は良好な耐半田性を有する。
【0027】
本発明の封止用樹脂組成物では、エポキシ樹脂(A)の硬化剤として、下記一般式(1)で表される構造を含むフェノール樹脂系硬化剤(b1)及び下記一般式(2)で表されるフェノール樹脂系硬化剤(b2)を含むフェノール樹脂系硬化剤(B)を用いる。
【0028】
【化1】


上記一般式(1)において、R1は互いに独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、aは1〜4の整数である。iが1〜20の整数であり、jが0〜20の整数であり、kが0〜20の整数である。
ここで、上記一般式(1)において、
(b1−1):i≧1、j=0、k=0の場合、繰り返し数iで表される構造単位が連結し、分子の左末端は水素原子、分子の右末端はヒドロキシフェニル基である構造であり、(b1−2):i≧1、j≧1、k=0の場合、繰り返し数iで表される構造単位及び繰り返し数jで表される構造単位が連結し、分子の左末端は水素原子、分子の右末端はヒドロキシフェニル基であり、繰り返し数iで表される構造単位と繰り返し数jで表される構造単位とは、それぞれが連続もしくは互いが交互もしくはランダムに並んでいる構造であり、
(b1−3):i≧1、j=0、k≧1の場合、繰り返し数iで表される構造単位及び繰り返し数kで表される構造単位が連結し、分子の左末端は水素原子、分子の右末端はヒドロキシフェニル基または置換基R1がa個置換したフェニル基であり、繰り返し数iで表される構造単位と繰り返し数kで表される構造単位とは、それぞれが連続もしくは互いが交互もしくはランダムに並んでいる構造であり、
(b1−4):i≧1、j≧1、k≧1の場合、繰り返し数iで表される構造単位、繰り返し数jで表される構造単位及び繰り返し数kで表される構造単位が連結し、分子の左末端は水素原子、分子の右末端はヒドロキシフェニル基または置換基R1がa個置換したフェニル基であり、繰り返し数iで表される構造単位と繰り返し数jで表される構造単位と
繰り返し数kで表される構造単位とは、それぞれが連続もしくは互いが交互もしくはランダムに並んでいる構造であり、
前記フェノール樹脂系硬化剤(b1)は、前記(b1−1)、(b1−2)、(b1−3)、及び、(b1−4)を必ず含有するものである。
【0029】
【化2】


上記一般式(2)において、oは1〜20の整数、pは1〜20の整数である。繰り返し数oで表わされる構造単位と、繰り返し数pで表わされる構造単位とは、それぞれが連続で並んでいても、互いが交互もしくはランダムに並んでいてもよい。
【0030】
フェノール樹脂系硬化剤(B)中のフェノール樹脂系硬化剤(b1)が有する、繰り返し数iで表わされる構造単位は、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型フェノール樹脂と同様の骨格構造であることから、良好な硬化性と耐半田性とを示す。繰り返し数jで表される構造単位は、局所的に水酸基密度が高まることから、樹脂組成物は良好な硬化性と密着性を示す。繰り返し数kで表される構造単位、および右末端に結合したヒドロキシフェニル基または置換基R1がa個置換したフェニル基のうち、特に置換基R1がa個置換したフェニル基はこれが疎水性を向上させることから、樹脂組成物は、良好な耐湿性と耐半田性を示す。
さらに、フェノール樹脂系硬化剤(b1)は、同程度の分子量を有するフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂と比較して、常温における固着が発生しにくくハンドリング性が良好でありながら、樹脂組成物の加熱時の流動性が良好であるというという特徴も有する。
【0031】
このようなフェノール樹脂系硬化剤(b1)の重合方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、下記一般式(4)で表されるアルキル置換芳香族化合物とホルムアルデヒド類を反応させた後、下記一般式(3)で表される化合物及びフェノールを加えて共重合することにより得る方法を挙げることができる。
【0032】
【化3】


ここで、上記一般式(3)において、Xは、ハロゲン原子、水酸基又は炭素数1〜6のアルコキシ基である。
【0033】
【化4】


ここで、上記一般式(4)において、R1は、互いに独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、aは1〜4の整数である。
【0034】
フェノール樹脂系硬化剤(b1)の製造において、一般式(3)で表される化合物は、一種類を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。中でも、1,4―ビス(クロロメチル)ベンゼンは微量の水分の存在に起因して発生する塩化水素を酸触媒として利用することができる点で好ましい。
【0035】
フェノール樹脂系硬化剤(b1)の製造において、一般式(4)で表されるアルキル置換芳香族化合物としては、特に制限は無いが、例えば、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、1,3,5−トリメチルベンゼン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,2,3,5−テトラメチルベンゼン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、エチルベンゼン、o−ジエチルベンゼン、m−ジエチルベンゼン、p−ジエチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、1,2,3−トリエチルベンゼン、1,2,4−トリエチルベンゼン、クメン、o−シメン、m−シメン、p−シメン、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジペンチルベンゼン等が挙げられる。
これらの中でも、原料価格や樹脂組成物の耐燃性と耐湿性のバランスという観点からトルエン、ジメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼンが好ましい。フェノール樹脂(b1)の製造において、一般式(4)で表される化合物は、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0036】
フェノール樹脂系硬化剤(b1)の製造において用いられる、ホルムアルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドなどが挙げられる。
【0037】
フェノール樹脂系硬化剤(b1)の合成方法については特に限定されるものではないが、一般式(4)で表されるアルキル置換芳香族化合物1モルに対して、ホルムアルデヒド類を1〜2.5モル、触媒としてパラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、硫酸などの強酸を0.1〜2.5モル加えて、100〜160℃の温度で、0.5〜6時間反応して「反応中間体」を得る。次いで、一般式(3)で表される化合物0.2〜5モル及びフェノール化合物1〜20モル、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、塩酸、硫酸、燐酸、酢酸、ルイス酸などの酸性触媒0.005〜0.05モルを加えて50〜200℃の温度にて窒素フローにより発生ガスを系外へ排出しながら、2〜20時間共縮合反応させ、反応終了後に残留するモノマー、水分及びアルコール成分などを減圧蒸留、水蒸気蒸留などの方法で留去することによって得ることができる。一般式(3)においてXがハロゲン原子である場合、微量の水分の存在に起因して発生するハロゲン化水素を酸触媒として用いることができる。
【0038】
上述の合成方法によって得られる重合体は、具体的には、以下の(b1−1)〜(b1−4)が挙げられる。
(b1−1):一般式(1)において、i≧1、j=0、k=0の場合、繰り返し数iで
表される構造単位が連結し、分子の左末端は水素原子、分子の右末端はヒドロキシフェニル基である構造である。
(b1−2):一般式(1)において、i≧1、j≧1、k=0の場合、繰り返し数iで表される構造単位及び繰り返し数jで表される構造単位が連結し、分子の左末端は水素原子、分子の右末端はヒドロキシフェニル基であり、繰り返し数iで表される構造単位と繰り返し数jで表される構造単位とは、それぞれが連続もしくは互いが交互もしくはランダムに並んでいる構造である。
(b1−3):一般式(1)において、i≧1、j=0、k≧1の場合、繰り返し数iで表される構造単位及び繰り返し数kで表される構造単位が連結し、分子の左末端は水素原子、分子の右末端はヒドロキシフェニル基または置換基R1がa個置換したフェニル基であり、繰り返し数iで表される構造単位と繰り返し数kで表される構造単位とは、それぞれが連続もしくは互いが交互もしくはランダムに並んでいる構造である。
(b1−4):一般式(1)において、i≧1、j≧1、k≧1の場合、繰り返し数iで表される構造単位、繰り返し数jで表される構造単位及び繰り返し数kで表される構造単位が連結し、分子の左末端は水素原子、分子の右末端はヒドロキシフェニル基または置換基R1がa個置換したフェニル基であり、繰り返し数iで表される構造単位と繰り返し数jで表される構造単位と繰り返し数kで表される構造単位とは、それぞれが連続もしくは互いが交互もしくはランダムに並んでいる構造である。
そして、本発明で用いられるフェノール樹脂系硬化剤(b1)は、上記(b1−1)、(b1−2)、(b1−3)、及び、(b1−4)を必ず含有するものである。
【0039】
ここで、上述の合成方法によって得られる重合体に占める、アルキル置換のフェニル基を有する重合体の含有割合、つまり成分(b1−3)と(b1−4)の含有割合に特に制限はないが、電界脱離質量分析(Field Desorption Mass Spectrometry;FD−MS)による測定で、成分(b1−1)(フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂)の相対強度の合計を100とした場合に、成分(b1−3)と(b1−4)の合計相対強度が100〜400であることが好ましく、150〜300であることがより好ましく、180〜240であることが特に好ましい。ここで、本明細書における「〜」は、すべてその上下両端を含むものである。
成分(b1−3)と(b1−4)の合計と成分(b1−1)との相対強度比が、上記範囲にあることにより、流動性、硬化性および耐半田性のバランスに優れた樹脂組成物を得ることができる。ここで、成分(b1−3)と(b1−4)の相対強度の合計が上記上限値より大きい場合、連続成形性が低下する恐れがある。また、相対強度の合計が上記下限値より小さい場合、得られる樹脂組成物の流動特性及び耐半田性が低下する恐れがある。また、成分(b1−1)(フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂)の相対強度の合計を100とした場合に、成分(b1−2)の合計相対強度は100以下であることが好ましく、成分(b1−5:(一般式(1)において、i=0、j≧1、k=0の場合、繰り返し数jで表される構造単位が連結し、分子の左末端は水素原子、分子の右末端はヒドロキシフェニル基または置換基R1がa個置換したフェニル基である重合体、i=0、j=0、k≧1の場合、繰り返し数kで表される構造単位が連結し、分子の左末端は水素原子、分子の右末端はヒドロキシフェニル基または置換基R1がa個置換したフェニル基である重合体、i=0、j≧1、k≧1の場合、繰り返し数jで表される構造単位及び繰り返し数kで表される構造単位が連結し、分子の左末端は水素原子、分子の右末端はヒドロキシフェニル基または置換基R1がa個置換したフェニル基であり、繰り返し数jで表される構造単位と繰り返し数kで表される構造単位とは、それぞれが連続もしくは互いが交互もしくはランダムに並んでいる構造である重合体、及び、i=0、j=0、k=0の場合、未反応のフェノール化合物及び未反応の置換基R1がa個置換したベンゼン化合物)の合計相対強度は40以下であることが好ましい。
成分(b1−2)あるいは成分(b1−5)の相対強度の合計が上記上限値より大きい場合、耐燃性が低下する恐れがある。
FD−MS測定は、検出質量(m/z)範囲50〜2000にて測定し、検出された各ピークについて、検出質量(m/z)から分子量、繰り返し数i、j、kの値、及び一般式(1)の右末端の構造を把握することができる。
【0040】
上述の複数の構造の重合体を含むことにより、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂と同様に硬化性に優れ、さらにフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂よりも、流動性と耐半田性に優れた特性を発現することができる。
【0041】
フェノール樹脂系硬化剤(B)中のフェノール樹脂系硬化剤(b2)は、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型フェノール樹脂と類似の骨格構造を有することで良好な耐燃性と耐半田性とを示し、さらに繰り返し数pで表される構造単位を有することで、局所的に水酸基密度が高まり、樹脂組成物は良好な硬化性ならびに密着性を示すことができる。さらにフェノール樹脂系硬化剤(b2)は、同程度の軟化点を有するビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂と比較して、低粘度であり、良好な流動特性を示すという特徴も有する。
【0042】
このようなフェノール樹脂(b2)の重合方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ホルムアルデヒド類、フェノール、下記一般式(5)で表される2官能型ビフェニル化合物とを酸性触媒下で共縮重合することにより得る方法を挙げることができる。
【0043】
【化5】


(上記一般式(5)において、Xは、水酸基、ハロゲン原子、又は炭素数1〜6のアルコキシ基である。)
【0044】
フェノール樹脂(b2)の製造において、一般式(5)で表される化合物としては、例えば、4,4’−ビスクロロメチルビフェニル、4,4’−ビスブロモメチルビフェニル、4,4’−ビスヨードメチルビフェニル、4,4’−ビスヒドロキシメチルビフェニル、4,4’−ビスメトキシメチルビフェニル、などが挙げられる。これらの中でも、微量の水分の存在に起因して発生するハロゲン化水素を酸触媒として利用することができるという点で4,4’−ビスクロロメチルビフェニルが好ましい。
【0045】
フェノール樹脂系硬化剤(b2)の製造において用いられるホルムアルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサンなどが挙げられる。
【0046】
フェノール樹脂系硬化剤(b2)の合成方法については特に限定されるものではないが、ホルムアルデヒド類と一般式(5)で表される2官能型ビフェニル化合物とを合計1モルに対して、フェノール化合物3〜5モル、蟻酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、塩酸、硫酸、燐酸、酢酸、ルイス酸、などの酸性触媒0.005〜0.05モルを50〜200℃の温度で、窒素フローにより発生ガス及び水分を系外へ排出しながら、2〜20時間反応させ、反応終了後に残留するモノマーを減圧蒸留、水蒸気蒸留などの方法で留去することによって得ることができる。一般式(5)においてXがハロゲン原子である場合、微量の水分の存在に起因して発生するハロゲン化水素を酸触媒として用いることができる。
【0047】
上述の合成方法によって得られる重合体は、具体的には、下記(b2−1)、(b2−2)、(b2−3)の成分を含有する。
【0048】
【化6】


上記一般式(6)において、qは0〜20の整数、rは0〜20の整数である。

(b2−1):一般式(6)で、q≧1、r≧1である成分。
(b2−2):一般式(6)で、q≧1、r=0である成分(ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂と同様の構造)。
(b2−3):一般式(6)で、q=0、r≧1(フェノールノボラック樹脂)。
【0049】
ここで、一般式(6)で、o≧1、p≧1である成分の含有割合に特に制限はないが、電界脱離質量分析(Field Desorption Mass Spectrometry;FD−MS)による測定で、一般式(6)で、(b2−2):q≧1、r=0である成分の相対強度の合計を100とした場合に、一般式(6)で、(b2−1):q≧1
、r≧1である成分の合計相対強度が20〜110であることが好ましく、30〜90で
あることがより好ましく、40〜75であることが特に好ましい。ここで、本明細書における「〜」は、すべてその上下両端を含むものである。
(b2−1):q≧1、r≧1である成分の含有割合が、上記範囲にあることにより、流動性、硬化性、耐燃性および耐半田性のバランスに優れた樹脂組成物を得ることができる。ここで、(b2−1):q≧1、r≧1である成分に該当する重合体の相対強度の合計が上記上限値より大きい場合、耐燃性ならびに耐半田性が低下する恐れがある。また、相対強度比が上記下限値より小さい場合、得られる樹脂組成物の流動特性及び連続成型性が低下する恐れがある。FD−MS測定は、検出質量(m/z)範囲50〜2000にて測定し、検出された各ピークについて、検出質量(m/z)から分子量、及び繰り返し数o、pの値を得ることができる。
【0050】
上述の複数の構造の重合体を含むことにより、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂と同様に耐半田性と耐燃性に優れ、さらにビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂よりも、低粘度でありながら硬化性に優れた特性を発現することができる。
【0051】
本発明の封止用樹脂組成物において、フェノール樹脂系硬化剤(B)中に、上述のフェノール樹脂系硬化剤(b1)及び(b2)のいずれをも含有することにより、(b1)あるいは(b2)のどちらか一方のみを使用する場合、あるいはどちらか一方のみを他のフェノール系樹脂とともに使用する場合に比べて、(b1)と(b2)の分子中の結節基の長さが異なることから自由体積を大きくすることができ、相乗効果により極めて優れた耐半田性を示し、さらには内部ボイドを低減できることが分かった。
【0052】
本発明の封止用樹脂組成物において、上述のフェノール樹脂系硬化剤(b1)及び(b2)のフェノール樹脂系硬化剤(B)全体に対する配合割合は、それぞれ20質量%以上、80質量%以下が好ましい。下限値が上記範囲内であると、上述の通り、樹脂組成物は
極めて良好な耐半田性を有し、内部ボイドの低減効果が発揮される。
【0053】
本発明の封止用樹脂組成物におけるフェノール樹脂系硬化剤(B)の配合量は、封止用樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上であり、さらに好ましくは1.5質量%以上である。下限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物は良好な流動性を有する。また、封止用樹脂組成物中のフェノール樹脂系硬化剤(B)の配合量は、封止用樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは9質量%であり、さらに好ましくは8質量%以下である。上限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物は良好な耐半田性と硬化性を有する。
【0054】
本発明の封止用樹脂組成物では、上記フェノール樹脂系硬化剤(B)を用いることによる効果が損なわれない範囲で、他の硬化剤を併用することができる。
併用できる硬化剤としては、例えば重付加型の硬化剤、触媒型の硬化剤、縮合型の硬化剤等を挙げることができる。重付加型の硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレリレンジアミン(MXDA)などの脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m−フェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)などの芳香族ポリアミンのほか、ジシアンジアミド(DICY)、有機酸ジヒドララジドなどを含むポリアミン化合物;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)などの芳香族酸無水物などを含む酸無水物;ノボラック型フェノール樹脂、フェノールポリマーなどのポリフェノール化合物;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類などが挙げられる。
【0055】
触媒型の硬化剤としては、例えば、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、2,4,6−トリスジメチルアミノメチルフェノール(DMP−30)などの3級アミン化合物;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール(EMI24)などのイミダゾール化合物;BF錯体などのルイス酸などが挙げられる。
【0056】
縮合型の硬化剤としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂等のフェノール樹脂;メチロール基含有尿素樹脂のような尿素樹脂;メチロール基含有メラミン樹脂のようなメラミン樹脂などが挙げられる。
【0057】
これらの中でも、耐燃性、耐湿性、電気特性、硬化性、保存安定性等のバランスの点からフェノール樹脂が好ましい。フェノール樹脂は、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。これらのうち、硬化性の点から水酸基当量は90g/eq以上、250g/eq以下のものが好ましい。
【0058】
このような他の硬化剤を併用する場合において、フェノール樹脂系硬化剤(B)の配合割合の下限値としては、全硬化剤に対して、40質量%以上であることが好ましく、60
質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。配合割合が上記範囲内であると、耐燃性、耐半田性を保持しつつ、良好な流動性を発現させることができる。
【0059】
硬化剤全体の配合割合の下限値については、特に限定されるものではないが、全樹脂組成物中に、0.8質量%以上であることが好ましく1.5質量%以上であることがより好ましい。配合割合の下限値が上記範囲内であると、充分な流動性を得ることができる。また、硬化剤全体の配合割合の上限値についても、特に限定されるものではないが、全樹脂組成物中に、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。配合割合の上限値が上記範囲内であると、良好な耐半田性を得ることができる。
【0060】
なお、フェノール樹脂系硬化剤(B)とエポキシ樹脂(A)とは、全エポキシ樹脂のエポキシ基数(EP)と、全フェノール樹脂のフェノール性水酸基数(OH)との当量比(EP)/(OH)が、0.8以上、1.3以下となるように配合することが好ましい。当量比が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物を成形する際、十分な硬化特性を得ることができる。
【0061】
本発明の封止用樹脂組成物に用いられる無機充填剤(C)としては、当該分野で一般的に用いられる無機充填剤を使用することができる。例えば、溶融シリカ、球状シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミ等が挙げられる。無機充填剤の粒径は、金型キャビティへの充填性の観点から、0.01μm以上、150μm以下であることが望ましい。
【0062】
封止用樹脂組成物中の無機充填剤(C)の量は、封止用樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは85質量%以上であり、より好ましくは86質量%以上であり、さらに好ましくは87質量%以上である。下限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物の硬化に伴う吸湿量の増加や、強度の低下が低減でき、したがって良好な耐半田クラック性を有する硬化物を得ることができる。また、封止用樹脂組成物中の無機充填剤の量は、封止用樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは92質量%以下であり、より好ましくは91質量%以下であり、さらに好ましくは90質量%以下である。上限値が上記範囲内であると、得られる樹脂組成物は良好な流動性を有するとともに、良好な成形性を備える。
【0063】
なお、後述する、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物や、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム・亜鉛固溶体等の複合金属水酸化物等の無機系難燃剤を用いる場合には、これらの無機系難燃剤と上記無機充填剤の合計量を上記範囲内とすることが望ましい。
【0064】
本発明の封止用樹脂組成物は、硬化促進剤(D)を含有する。硬化促進剤(D)は、エポキシ樹脂のエポキシ基とフェノール樹脂の水酸基との反応を促進するものであればよく、一般に使用される硬化促進剤を用いることができる。
具体例としては、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、ベンジルジメチルアミン、2−メチルイミダゾール等の窒素原子含有化合物が挙げられる。これらのうち、硬化性の観点からはリン原子含有化合物が好ましく、流動性と硬化性のバランスの観点からは、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等の潜伏性を有する触媒がより好ましい。流動性という点を考慮するとテトラ置換ホスホニウム化合物が特に好ましく、また耐半田性の観点では、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物が特に好ましく、また潜伏的硬化性という点を
考慮すると、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が特に好ましい。また、連続成形性の観点では、テトラ置換ホスホニウム化合物が好ましい。
【0065】
本発明の封止用樹脂組成物で用いることができる有機ホスフィンとしては、例えばエチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第2ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第3ホスフィンが挙げられる。
【0066】
本発明の封止用樹脂組成物で用いることができるテトラ置換ホスホニウム化合物としては、例えば下記一般式(7)で表される化合物等が挙げられる。
【0067】
【化7】


一般式(7)において、Pはリン原子を表し、R2、R3、R4及びR5は、それぞれ独立して芳香族基又はアルキル基を表し、Aはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸のアニオンを表し、AHはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸を表し、x及びyは1〜3の整数であり、zは0〜3の整数であり、かつx=yである。
【0068】
一般式(7)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られるがこれに限定されるものではない。まず、テトラ置換ホスホニウムハライドと芳香族有機酸と塩基を有機溶剤に混ぜ均一に混合し、その溶液系内に芳香族有機酸アニオンを発生させる。次いで水を加えると、一般式(7)で表される化合物を沈殿させることができる。一般式(7)で表される化合物において、合成時の収得率と硬化促進効果のバランスに優れるという観点では、リン原子に結合するR2、R3、R4及びR5がフェニル基であり、かつAHはヒドロキシル基を芳香環に有する化合物、すなわちフェノール化合物であり、かつAは該フェノール化合物のアニオンであるのが好ましい。
【0069】
本発明の封止用樹脂組成物で用いることができるホスホベタイン化合物としては、例えば下記一般式(8)で表される化合物等が挙げられる。
【0070】
【化8】


一般式(8)において、X1は炭素数1〜3のアルキル基を表し、Y1はヒドロキシル基を表し、fは0〜5の整数であり、gは0〜4の整数である。
【0071】
一般式(8)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られる。まず、第三ホスフィンであるトリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩とを接触させ、トリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩が有するジアゾニウム基とを置換させる工程を経て得られる。しかしこれに限定されるものではない。
【0072】
本発明の封止用樹脂組成物で用いることができるホスフィン化合物とキノン化合物との付加物としては、例えば下記一般式(9)で表される化合物等が挙げられる。
【0073】
【化9】


一般式(9)において、Pはリン原子を表し、R6、R7及びR8は、互いに独立して、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表し、R9、R10及びR11は、互いに独立して、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、R9とR10は互いに結合して環を形成していてもよい。
【0074】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるホスフィン化合物としては、例えばトリフェニルホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリス(ベンジル)ホスフィン等の芳香環に無置換又はアルキル基、アルコキシル基等の置換基が存在するものが好ましく、アルキル基、アルコキシル基等の置換基としては1〜6の炭素数を有するものが挙げられる。入手しやすさの観点からはトリフェニルホスフィンが好ましい。
【0075】
またホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるキノン化合物としては、o−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン、アントラキノン類が挙げられ、中でもp−ベンゾキノンが保存安定性の点から好ましい。
【0076】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物の製造方法としては、有機第三ホスフィンとベンゾキノン類の両者が溶解することができる溶媒中で接触、混合させることにより付加物を得ることができる。溶媒としてはアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類で付加物への溶解性が低いものがよい。しかしこれに限定されるものではない。
【0077】
一般式(9)で表される化合物において、リン原子に結合するR6、R7及びR8がフェニル基であり、かつR9、R10及びR11が水素原子である化合物、すなわち1,4−ベンゾキノンとトリフェニルホスフィンを付加させた化合物が樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率を低下させる点で好ましい。
【0078】
本発明の封止用樹脂組成物で用いることができるホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物としては、例えば下記式(10)で表される化合物等が挙げられる。
【0079】
【化10】


一般式(10)において、Pはリン原子を表し、Siは珪素原子を表す。R12、R13、R14及びR15は、互いに独立して、芳香環又は複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基を表し、X2は、基Y2及びY3と結合する有機基である。X3は、基Y4及びY5と結合する有機基である。Y2及びY3は、プロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基Y2及びY3が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。Y4及びY5はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基Y4及びY5が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。X2、及びX3は互いに同一であっても異なっていてもよく、Y2、Y3、Y4、及びY5は互いに同一であっても異なっていてもよい。Z1は芳香環又は複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基である。
【0080】
一般式(10)において、R12、R13、R14及びR15としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ナフチル基、ヒドロキシナフチル基、ベンジル基、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−オクチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられ、これらの中でも、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基等の置換基を有する芳香族基もしくは無置換の芳香族基がより好ましい。
【0081】
また、一般式(10)において、−Y2−X2−Y3−、及びY4−X3−Y5−で表される基は、プロトン供与体が、プロトンを2個放出してなる基で構成されるものであり、プロトン供与体としては、例えば、カテコール、ピロガロール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,2’−ビフェノール、1,1’−ビ−2−ナフトール、サリチル酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、クロラニル酸、タンニン酸、2−ヒドロキシベンジルアルコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−プロパンジオール及びグリセリン等が挙げられる。これらの中でも、原料入手の容易さと硬化促進効果のバランスという観点では、カテコール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレンがより好ましい。
【0082】
また、一般式(10)中のZ1は、芳香環又は複素環を有する有機基又は脂肪族基を表し、これらの具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基等の脂肪族炭化水素基や、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基及びビフェニル基等の芳香族炭化水素基、グリシジルオキシプロピル基、メルカプトプロピル基、アミノプロピル基及びビニル基等の反応性置換基などが挙げられるが、これらの中でも、メチル基、エチル基、フェニル基、ナフチル基及びビフェニル基が熱安定性の面から、より好ましい。
【0083】
ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物の製造方法としては、メタノールを入れたフラスコに、フェニルトリメトキシシラン等のシラン化合物、2,3−ジヒドロキシナフタレン等のプロトン供与体を加えて溶かし、次に室温攪拌下ナトリウムメトキシド−メ
タノール溶液を滴下する。さらにそこへ予め用意したテトラフェニルホスホニウムブロマイド等のテトラ置換ホスホニウムハライドをメタノールに溶かした溶液を室温攪拌下滴下すると結晶が析出する。析出した結晶を濾過、水洗、真空乾燥すると、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が得られる。しかし、これに限定されるものではない。
【0084】
本発明の封止用樹脂組成物に用いることができる硬化促進剤(D)の配合割合の下限値は、全樹脂組成物中0.1質量%以上であることが好ましい。硬化促進剤(D)の配合割合の下限値が上記範囲内であると、充分な硬化性を得ることができる。また、硬化促進剤(D)の配合割合の上限値は、全樹脂組成物中1質量%以下であることが好ましい。硬化促進剤(D)の配合割合の上限値が上記範囲内であると、充分な流動性を得ることができる。
【0085】
本発明では、さらに芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(E)(以下、単に「化合物(E)」とも称する)を用いることができる。芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(E)は、これを用いることにより、フェノール樹脂とエポキシ樹脂との架橋反応を促進させる硬化促進剤(D)として、潜伏性を有しないリン原子含有硬化促進剤を用いた場合であっても、樹脂組成物の溶融混練中での反応を抑えることができ、安定して樹脂組成物を得ることができる。また、化合物(E)は、樹脂組成物の溶融粘度を下げ、流動性を向上させる効果も有するものである。
化合物(E)としては、下記一般式(11)で表される単環式化合物、又は下記一般式(12)で表される多環式化合物等を用いることができ、これらの化合物は水酸基以外の置換基を有していてもよい。
【0086】
【化11】


一般式(11)において、R16及びR20のいずれか一方が水酸基であり、他方は水素原子、水酸基又は水酸基以外の置換基であり、R17、R18及びR19は、水素原子、水酸基又は水酸基以外の置換基である。
【0087】
【化12】


一般式(12)において、R21及びR27のいずれか一方が水酸基であり、他方は水素原子、水酸基又は水酸基以外の置換基であり、R22、R23、R24、R25及びR2
6は、水素原子、水酸基又は水酸基以外の置換基である。
【0088】
一般式(11)で表される単環式化合物の具体例としては、例えば、カテコール、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル又はこれらの誘導体が挙げられる。また、一般式(12)で表される多環式化合物の具体例としては、例えば、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン及びこれらの誘導体が挙げられる。
これらのうち、流動性と硬化性の制御のしやすさから、芳香環を構成する2個の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物が好ましい。また、混練工程での揮発を考慮した場合、母核は低揮発性で秤量安定性の高いナフタレン環である化合物とすることがより好ましい。この場合、化合物(E)を、具体的には、例えば、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン及びその誘導体等のナフタレン環を有する化合物とすることができる。これらの化合物(E)は1種類を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0089】
かかる化合物(E)の配合割合の下限値は、全樹脂組成物中に0.01質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.03質量%以上、特に好ましくは0.05質量%以上である。化合物(E)の配合割合の下限値が上記範囲内であると、樹脂組成物の充分な低粘度化と流動性向上効果を得ることができる。また、化合物(E)の配合割合の上限値は、全樹脂組成物中に1質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.8質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下である。化合物(E)の配合割合の上限値が上記範囲内であると、樹脂組成物の硬化性の低下や硬化物物性の低下を引き起こす恐れが少ない。
【0090】
本発明の封止用樹脂組成物においては、エポキシ樹脂と無機充填剤との密着性を向上させるため、シランカップリング剤等のカップリング剤(F)を添加することができる。その例としては特に限定されるものではないが、エポキシシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、メルカプトシラン等が挙げられ、エポキシ樹脂と無機充填剤との間で反応し、エポキシ樹脂と無機充填剤の界面強度を向上させるものであればよい。また、シランカップリング剤は、前述の化合物(E)と併用することで、樹脂組成物の溶融粘度を下げ、流動性を向上させるという化合物(E)の効果を高めることもできるものである。
【0091】
エポキシシランとしては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
また、アミノシランとしては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−6−(アミノヘキシル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
上記アミノシランの中で、2級アミノ基を有するシランカップリング剤としては、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−6−(アミノヘキシル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
また、ウレイドシランとしては、例えば、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。アミノシランの1級アミノ部位をケトンまたは
アルデヒドを反応させて保護した潜在性アミノシランカップリング剤として用いてもよい。
また、メルカプトシランとしては、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランのほか、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドのような熱分解することによってメルカプトシランカップリング剤と同様の機能を発現するシランカップリング剤など、が挙げられる。
またこれらのシランカップリング剤は予め加水分解反応させたものを配合してもよい。これらのシランカップリング剤は1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0092】
本発明の場合、耐半田性と連続成型性のバランスという観点では、メルカプト基を有するシランカップリング剤であるメルカプトシランが好ましく、流動性の観点ではアミノシラン、特に2級アミノ基を有するシランカップリング剤が好ましく、シリコンチップ表面のポリイミドや基板表面のソルダーレジストなどの有機部材への密着性という観点ではエポキシシランが好ましい。
【0093】
本発明の封止用樹脂組成物に用いることができるシランカップリング剤等のカップリング剤(F)の配合割合の下限値としては、全樹脂組成物中0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上である。シランカップリング剤等のカップリング剤(F)の配合割合の下限値が上記範囲内であれば、エポキシ樹脂と無機充填剤との界面強度が低下することがなく、半導体装置における良好な耐半田クラック性を得ることができる。また、シランカップリング剤等のカップリング剤(F)の配合割合の上限値としては、全樹脂組成物中1質量%以下が好ましく、より好ましくは0.8質量%以下、特に好ましくは0.6質量%以下である。シランカップリング剤等のカップリング剤(F)の配合割合の上限値が上記範囲内であれば、エポキシ樹脂と無機充填剤との界面強度が低下することがなく、半導体装置における良好な耐半田クラック性を得ることができる。また、シランカップリング剤等のカップリング剤(F)の配合割合が上記範囲内であれば、樹脂組成物の硬化物の吸水性が増大することがなく、半導体装置における良好な耐半田クラック性を得ることができる。
【0094】
本発明の封止用樹脂組成物においては、難燃性を向上させるために、上述した無機充填材(C)とは異なる無機難燃剤(G)を添加することができる。なかでも燃焼時に脱水、吸熱することによって燃焼反応を阻害する金属水酸化物、及び/または複合金属水酸化物が燃焼時間の短縮することができる点で好ましい。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニアを挙げることができる。複合金属水酸化物としては、2種以上の金属元素を含むハイドロタルサイト化合物であって、少なくとも一つの金属元素がマグネシウムであり、かつ、その他の金属元素がカルシウム、アルミニウム、スズ、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、または亜鉛から選ばれる金属元素であればよく、そのような複合金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム・亜鉛固溶体が市販品で入手が容易である。なかでも、耐半田性と連続成型性のバランスの観点からは水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム・亜鉛固溶体が好ましい。上記の難燃剤は、単独で用いても、2種以上用いてもよい。また、連続成型性への影響を低減する目的から、シランカップリング剤などの珪素化合物やワックスなどの脂肪族系化合物などで表面処理を行って用いてもよい。
【0095】
本発明の封止用樹脂組成物では、前述した成分以外に、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタン等の着色剤;カルナバワックス等の天然ワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス、ステアリン酸やステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸及びその金属塩類若しくはパラフィン等の離型剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力添加剤を適宜配合してもよい。
【0096】
本発明の封止用樹脂組成物は、フェノール樹脂系硬化剤、エポキシ樹脂及び無機充填剤、ならびに上述のその他の添加剤等を、例えば、ミキサー等を用いて常温で均一に混合し、その後、必要に応じて、加熱ロール、ニーダー又は押出機等の混練機を用いて溶融混練し、続いて必要に応じて冷却、粉砕することにより、所望の分散度や流動性等に調整することができる。
【0097】
次に、本発明の電子部品装置について説明する。本発明の封止用樹脂組成物を用いて電子部品装置を製造する方法としては、例えば、半導体素子を搭載したリードフレーム又は回路基板等を金型キャビティ内に設置した後、封止用樹脂組成物をトランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の成形方法で成形、硬化させることにより、この半導体素子を封止する方法が挙げられる。
【0098】
封止される半導体素子としては、例えば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0099】
得られる半導体装置の形態としては、例えば、デュアル・インライン・パッケージ(DIP)、プラスチック・リード付きチップ・キャリヤ(PLCC)、クワッド・フラット・パッケージ(QFP)、ロー・プロファイル・クワッド・フラット・パッケージ(LQFP)、スモール・アウトライン・パッケージ(SOP)、スモール・アウトライン・Jリード・パッケージ(SOJ)、薄型スモール・アウトライン・パッケージ(TSOP)、薄型クワッド・フラット・パッケージ(TQFP)、テープ・キャリア・パッケージ(TCP)、ボール・グリッド・アレイ(BGA)、チップ・サイズ・パッケージ(CSP)、マトリクス・アレイ・パッケージ・ボール・グリッド・アレイ(MAPBGA)、チップ・スタックド・チップ・サイズ・パッケージ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0100】
封止用樹脂組成物のトランスファーモールドなどの成形方法により半導体素子が封止された半導体装置は、そのまま、或いは80℃〜200℃程度の温度で、10分間〜10時間程度の時間をかけてこの樹脂組成物を完全硬化させた後、電子機器等に搭載される。
【0101】
図1は、本発明に係る封止用樹脂組成物を用いた半導体装置の一例について、断面構造を示した図である。ダイパッド3上に、ダイボンド材硬化体2を介して半導体素子1が固定されている。半導体素子1の電極パッドとリードフレーム5との間はワイヤ4によって接続されている。半導体素子1は、封止用樹脂組成物の硬化体6によって封止されている。
【0102】
図2は、本発明に係る樹脂組成物を用いた片面封止型の半導体装置の一例について、断面構造を示した図である。基板8上にダイボンド材硬化体2を介して半導体素子1が固定されている。半導体素子1の電極パッドと基板8上の電極パッドとの間はワイヤ4によって接続されている。封止用樹脂組成物の硬化体6によって、基板8の半導体素子1が搭載された片面側のみが封止されている。基板8上の電極パッドは基板8上の非封止面側の半田ボール9と内部で接合されている。
【実施例】
【0103】
以下、本発明を、実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。以下に記載の各成分の配合量、配合割合は、特に記載しない限り、質量部、質量%とする。
【0104】
(硬化剤)
硬化剤として、以下のフェノール樹脂1〜5を使用した。
硬化剤1:
セパラブルフラスコに撹拌装置、温度計、還流冷却器、窒素導入口を装着し、ホルムアルデヒド37%水溶液(和光純薬工業製、ホルマリン37質量%)116.3質量部、硫酸37.7質量部、m−キシレン(関東化学製、特級試薬、m−キシレン、沸点139℃、分子量106、純度99.4%)100質量部を秤量した後、窒素置換しながら加熱を開始した。系内の温度が90〜100℃の温度範囲を維持しながら6時間攪拌し、室温まで冷却した後、20質量%水酸化ナトリウム150質量部を徐々に添加することにより系内を中和した。この反応系に、フェノール839質量部、α,α’−ジクロロ−p−キシレン338質量部を加え、窒素置換及び攪拌を行いながら加熱し、系内温度を110〜120℃の範囲に維持しながら5時間反応させた。上記の反応によって系内に発生した塩酸ガスは、窒素気流によって系外へ排出した。反応終了後、150℃、2mmHgの減圧条件で未反応成分と水分を留去した。ついでトルエン200質量部を添加し、均一溶解させた後、分液漏斗に移し、蒸留水150質量部を加えて振とうした後に、水層を棄却する操作(水洗)を洗浄水が中性になるまで繰り返し行った後、油層を125℃、2mmHgの減圧条件でトルエン、残留未反応成分などの揮発成分を留去し、下記一般式(13)で表される構造を有する1以上の重合体からなるフェノール樹脂系硬化剤1(水酸基当量180、軟化点67℃、150℃におけるICI粘度0.6dPa・s。)を得た。
【0105】
このもののFD−MS分析の結果、
(b1−1):一般式(13)において、i≧1、j=0、k=0の場合、繰り返し数iで表される構造単位が連結し、分子の左末端は水素原子、分子の右末端はヒドロキシフェニル基である構造である重合体、
(b1−2):一般式(13)において、i≧1、j≧1、k=0の場合、繰り返し数iで表される構造単位及び繰り返し数jで表される構造単位が連結し、分子の左末端は水素原子、分子の右末端はヒドロキシフェニル基であり、繰り返し数iで表される構造単位と繰り返し数jで表される構造単位とは、それぞれが連続もしくは互いが交互もしくはランダムに並んでいる構造である重合体、
(b1−3):一般式(13)において、i≧1、j=0、k≧1の場合、繰り返し数iで表される構造単位及び繰り返し数kで表される構造単位が連結し、分子の左末端は水素原子、分子の右末端はヒドロキシフェニル基または置換基R1がa個置換したフェニル基であり、繰り返し数iで表される構造単位と繰り返し数kで表される構造単位とは、それぞれが連続もしくは互いが交互もしくはランダムに並んでいる構造である重合体、
(b1−4):一般式(13)において、i≧1、j≧1、k≧1の場合、繰り返し数iで表される構造単位、繰り返し数jで表される構造単位及び繰り返し数kで表される構造単位が連結し、分子の左末端は水素原子、分子の右末端はヒドロキシフェニル基または置換基R1がa個置換したフェニル基であり、繰り返し数iで表される構造単位と繰り返し数jで表される構造単位と繰り返し数kで表される構造単位とは、それぞれが連続もしくは互いが交互もしくはランダムに並んでいる構造の重合体、
(b1−5):一般式(13)において、i=0、j≧1、k=0の場合、繰り返し数jで表される構造単位が連結し、分子の左末端は水素原子、分子の右末端はヒドロキシフェニル基または置換基R1がa個置換したフェニル基である重合体、i=0、j=0、k≧1の場合、繰り返し数kで表される構造単位が連結し、分子の左末端は水素原子、分子の右末端はヒドロキシフェニル基または置換基R1がa個置換したフェニル基である重合体、i=0、j≧1、k≧1の場合、繰り返し数jで表される構造単位及び繰り返し数kで表される構造単位が連結し、分子の左末端は水素原子、分子の右末端はヒドロキシフェニル基または置換基R1がa個置換したフェニル基であり、繰り返し数jで表される構造単位と繰り返し数kで表される構造単位とは、それぞれが連続もしくは互いが交互もしくはランダムに並んでいる構造である重合体、i=0、j=0、k=0の場合、未反応のフェ
ノール化合物及び未反応の置換基R1がa個置換したベンゼン化合物が検出されており、各成分の合計相対強度の比は、(b1−1):(b1−2):{(b1−3)+(b1−4)}:(b1−5)=100:67:204:19であった。
【0106】
【化13】


一般式(13)において、iが0〜20の整数であり、jが0〜20の整数であり、kが0〜20の整数である。一般式(13)で表されるフェノール樹脂系硬化剤は、上記の成分を有するものであり、本願発明の樹脂組成物において用いられるフェノール樹脂系硬化剤(b1)に相当するものである。
【0107】
FD−MS測定は次の条件で行なった。樹脂試料10mgに溶剤ジメチルスルホキシド(DMSO)1gを加えて十分溶解したのち、FDエミッターに塗布の後、測定に供した。FD−MSシステムは、イオン化部に日本電子(株)製のMS−FD15Aを、検出器に日本電子(株)製のMS−700とを接続して用い、検出質量範囲(m/z)50〜2000にて測定した。
【0108】
硬化剤2:
セパラブルフラスコに撹拌装置、温度計、還流冷却器、窒素導入口を装着し、フェノール400質量部、あらかじめ粒状に砕いた4,4’−ビスクロロメチルビフェニル156質量部を、セパラブルフラスコに秤量し、窒素置換しながら加熱し、フェノールの溶融の開始に併せて攪拌を開始した。系内の温度が95℃に到達した時点から、ホルムアルデヒド37質量%水溶液34質量部を3時間かけて徐々に系内に添加し、さらに3時間反応させた。なお、反応の間、系内は95℃から105℃の温度範囲を維持し、反応によって系内に発生する塩酸ガスは、窒素気流によって系外へ排出した。反応終了後、160℃、2mmHgの減圧条件で未反応成分などを留去し、ついでトルエン200質量部を添加し、均一溶解させた後、分液漏斗に移し、蒸留水150質量部を加えて振とうした後に、水層を棄却する操作(水洗)を洗浄水が中性になるまで繰り返し行った後、油層を125℃減圧処理することによってトルエン、残留未反応成分などの揮発成分を留去し、下記一般式(14)で表される構造を有するフェノール樹脂系硬化剤2(水酸基当量166、軟化点67℃、150℃におけるICI粘度0.5dPa・s。)を得た。
このもののFD−MS分析の結果、一般式(14)で、q≧1、r≧1である成分、一般式(14)で、q≧1、r=0である成分、一般式(14)で、q=0、r≧1である成分の合計相対強度の比は、67:100:7であった。
【0109】
【化14】


一般式(14)において、qは0〜20の整数、rは0〜20の整数である。
上記一般式(14)において、本願発明の樹脂組成物で用いられるフェノール樹脂系硬化剤(b2)に該当するものは、q≧1、r≧1である成分であり、また、その反応機構から、繰り返し数qで表わされる構造単位と、繰り返し数rで表わされる構造単位とは、連続して結合、互いが交互に結合、もしくはランダムに結合している場合が考えられる。
【0110】
FD−MS測定は次の条件で行なった。樹脂試料10mgに溶剤ジメチルスルホキシド(DMSO)1gを加えて十分溶解したのち、FDエミッターに塗布の後、測定に供した。FD−MSシステムは、イオン化部に日本電子(株)製のMS−FD15Aを、検出器に日本電子(株)製のMS−700とを接続して用い、検出質量範囲(m/z)50〜2000にて測定した。
【0111】
硬化剤3:
ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(明和化成株式会社製、MEH−7851SS。水酸基当量203g/eq、軟化点67℃、150℃におけるICI粘度1.1dPa・s)
【0112】
硬化剤4:
フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(三井化学(株)製、XLC−4L。水酸基当量168、軟化点62℃、150℃におけるICI粘度0.76dPa・s。)
【0113】
硬化剤5:
フェノールノボラック樹脂(住友ベークライト(株)製、PR−HF−3。水酸基当量104、軟化点80℃。)
【0114】
(エポキシ樹脂)
以下のエポキシ樹脂1〜5を使用した。
【0115】
エポキシ樹脂1:
ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、YX4000K。エポキシ当量185、軟化点107℃。)
【0116】
エポキシ樹脂2:
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成(株)製、YSLV−80XY。エポキシ当量190、軟化点80℃。)
【0117】
エポキシ樹脂3:
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、YL6810。エポキシ当量172、軟化点45℃。)
【0118】
エポキシ樹脂4:
ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、NC3000。エポキシ当量276、軟化点58℃。)
【0119】
エポキシ樹脂5:
フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(三井化学(株)製、E−XLC−3L。エポキシ当量238、軟化点52℃。)
【0120】
(無機充填剤)
無機充填剤としては、電気化学工業(株)製溶融球状シリカFB560(平均粒径30
μm)100質量部、(株)アドマテックス製合成球状シリカSO−C2(平均粒径0.5μm)6.5質量部、(株)アドマテックス製合成球状シリカSO−C5(平均粒径30μm)7.5質量部のブレンドを使用した。
【0121】
(硬化促進剤(D))
以下の硬化促進剤を使用した。
【0122】
硬化促進剤1:下記式(15)で表される硬化促進剤
【0123】
【化15】

【0124】
硬化促進剤2:トリフェニルホスフィン(東京化成工業(株)製、純度95質量%以上)
【0125】
硬化促進剤3:下記式(16)で表される硬化促進剤
【0126】
【化16】

【0127】
(化合物E)
化合物Eとして、下記式(17)で表される化合物(東京化成工業(株)製、2,3−ナフタレンジオール、純度98質量%)を使用した。
【0128】
【化17】

【0129】
(シランカップリング剤)
以下のシランカップリング剤1〜3を使用した。
シランカップリング剤1:γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM−803)。
シランカップリング剤2:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工
業(株)製、KBM−403)。
シランカップリング剤3:N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM−573)。
【0130】
(無機難燃剤)
以下の無機難燃剤1〜2を使用した。
無機難燃剤1:水酸化アルミニウム(住友化学(株)製、CL310)
無機難燃剤2:水酸化マグネシウム・水酸化亜鉛固溶体複合金属水酸化物(タテホ化学工業(株)製、エコーマグZ−10)
【0131】
(着色剤)
着色剤として、三菱化学(株)製のカーボンブラック(MA600)を使用した。
【0132】
(離型剤)
離型剤として、日興ファイン(株)製のカルナバワックス(ニッコウカルナバ、融点83℃)を使用した。
【0133】
(実施例1)
以下の成分をミキサーを用いて、常温で混合し、80℃〜100℃の加熱ロールで溶融混練し、その後冷却し、次いで粉砕して、封止用樹脂組成物を得た。
フェノール樹脂系硬化剤1 2.65質量部
フェノール樹脂系硬化剤2 2.65質量部
エポキシ樹脂1 5.68質量部
無機充填剤 88.0質量部
硬化促進剤1 0.3質量部
着色剤 0.3質量部
離型剤 0.1質量部
シランカップリング剤1 0.07質量部
シランカップリング剤2 0.07質量部
シランカップリング剤3 0.08質量部
化合物E 0.1質量部
得られた封止用樹脂組成物を、以下の項目について評価した。評価結果を表1に示す。
【0134】
(評価項目)
スパイラルフロー:低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製、KTS−15)を用いて、EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型に、175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間120秒の条件で樹脂組成物を注入し、流動長を測定した。スパイラルフローは、流動性のパラメータであり、数値が大きい方が、流動性が良好である。単位はcm。実施例1で得られた樹脂組成物は、121cmと良好な流動性を示した。
【0135】
硬化性(硬化トルク比):キュラストメーター(オリエンテック(株)製、JSRキュラストメーターIVPS型)を用いて、175℃、60秒後のトルク値を300秒後のトルク値で除した値で示した。この値の大きい方が硬化性は良好であり、連続成形性の良好差を表わす一つの指標となる。単位は%とした。
【0136】
耐半田性試験:タブレット化した樹脂組成物を低圧トランスファー成形機にて175℃、6.9MPa、120秒の条件にて、耐半田性試験用の256ピンパッド露出型LQFPパッケージ(寸法;28mm×28mm×1.4mm厚、Cuリードフレーム、テスト素子;8mm×8mm×0.7mm厚)を各12パッケージ成形し、ポストキュアとして
175℃で4時間加熱処理した。電界バリ取り工程と、パッケージ外部の端子及びパッケージ裏側の露出したパッド裏面への錫メッキ工程を通し、125℃で20時間乾燥処理し、85℃、相対湿度60%で168時間加湿処理した後、IRリフロー処理(260℃、JEDEC条件に従う)を行った。これらの半導体装置内部の剥離及びクラックの有無を超音波探傷装置(日立建機ファインテック(株)製、mi−scope10)で観察し、剥離又はクラックのいずれか一方でも発生したものを不良とした。不良半導体装置の個数がn個であるとき、nと表示した。実施例1で得られた樹脂組成物は0と良好な信頼性を示した。
【0137】
パッケージ内部ボイド数:タブレット化した樹脂組成物を低圧トランスファー成形機にて175℃、6.9MPa、120秒の条件にて、パッケージ内部ボイド評価用の208ピンQFPパッケージ(寸法;28mm×28mm×3.2mm厚、Cuリードフレーム、テスト素子;8mm×8mm×0.35mm厚、ワイヤ;Au、直径0.8mils、長さ約5mm)を各12パッケージ成形し、成形した208ピンQFPパッケージを超音波探傷装置(日立建機ファインテック(株)製、mi−scope10)で観察した。内部ボイドの算出方法としては、各パッケージ中の長径0.3mm以上のボイドを目視で数え、12パッケージの合計を示した。なお、内部ボイドが多いと、耐湿信頼性が低下し電気絶縁性の低下を招く危険性が高くなる。実施例1で得られた樹脂組成物は、5個と内部ボイドが少ない結果となった。
【0138】
ワイヤ流れ率:タブレット化した樹脂組成物を低圧トランスファー成形機にて175℃、6.9MPa、120秒の条件にて、ワイヤ流れ量評価試験用の256ピンLQFPパッケージ(寸法;28mm×28mm×1.4mm厚、Cuリードフレーム、テスト素子;8mm×8mm×0.35mm厚、ワイヤ;Au、直径0.8mils、長さ約5mm)を各12パッケージ成形し、成形した256ピンLQFPパッケージを軟X線透過装置で観察した。ワイヤ流れ率の計算方法としては、1個のパッケージの中で最も流れた(変形した)ワイヤの流れ量をF、そのワイヤの長さをLとして、流れ率=F/L×100(%)を算出し、12パッケージの平均値を示した。なお、ワイヤ流れ量の値は小さいほど、隣り合うワイヤ同士が接触してショートする可能性が小さくなり、良好である。また、ワイヤの細線化につながり、半導体装置の製造コストを抑えることができるようになる。実施例1で得られた樹脂組成物は、2.5%と良好なワイヤ流れ率を示した。
【0139】
実施例2〜17、比較例1〜9
表1の配合に従い、実施例1と同様にして樹脂組成物を製造し、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に示した。
【0140】
【表1】

【0141】
実施例1〜17は、エポキシ樹脂(A)と、一般式(1)で表されるフェノール樹脂系硬化剤(b1)と一般式(2)で表されるフェノール樹脂系硬化剤(b2)を含むフェノール樹脂系硬化剤(B)と、無機充填剤(C)と、硬化促進剤(D)を含む本発明の封止
用樹脂組成物であり、フェノール樹脂系硬化剤(B)の配合割合を変更したもの、フェノール樹脂系硬化剤(B)以外に他の硬化剤を含むもの、エポキシ樹脂(A)の種類を変更したもの、硬化促進剤(D)の種類を変更したもの、或いは、無機難燃剤(G)の種類を変更したものを含むものであるが、いずれにおいても、パッケージ内部のボイドが少なく、ワイヤ流れ率、硬化性、耐半田性のバランスに優れた結果が得られた。
【0142】
一方、一般式(1)で表されるフェノール樹脂系硬化剤(b1)、あるいは一般式(2)で表されるフェノール樹脂系硬化剤(b2)のどちらか一方のみを含む比較例1ないし8、フェノール樹脂系硬化剤(b1)と(b2)のどちらも含んでいてもフェノール樹脂系硬化剤(B)全体に対する配合比率の小さい比較例9においては、パッケージ内部のボイドが多く、耐半田性が十分でなく、特性バランスが劣る結果となった。
【0143】
上記の結果のとおり、硬化剤とエポキシ樹脂と無機充填剤と硬化促進剤を含む樹脂組成物において、硬化剤として一般式(1)で表されるフェノール樹脂系硬化剤(b1)及び一般式(2)で表されるフェノール樹脂系硬化剤(b2)とを所定比率で含むフェノール樹脂系硬化剤(B)を用いた場合においてのみ、パッケージ内部のボイドの数が少なく、ワイヤ流れ率、硬化性、及び耐半田性のバランスに優れる結果が得られるものであり、硬化剤として一般式(1)で表されるフェノール樹脂系硬化剤(b1)のみ又は一般式(2)で表されるフェノール樹脂系硬化剤(b2)のみを用いた場合から予測又は期待できる範疇を超えた顕著な効果となっている。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明に従うと、従来以上にパッケージ内部のボイドを少なくすることができ、ワイヤ流れ率を抑制しつつ、耐半田性、及び硬化性のバランスに優れる封止用樹脂組成物を得ることができるため、半導体装置のような電子部品装置、とりわけ、1パッケージ内にチップを積層する構造、あるいは従来よりもワイヤ線径をより細くした半導体装置の封止用として好適である。
【符号の説明】
【0145】
1 半導体素子
2 ダイボンド材硬化体
3 ダイパッド
4 ワイヤ
5 リードフレーム
6 封止用樹脂組成物の硬化体
7 ソルダーレジスト
8 基板
9 半田ボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂系硬化剤(B)、無機充填材(C)、硬化促進剤(D)を含有する封止用樹脂組成物であって、
前記フェノール樹脂系硬化剤(B)は、該フェノール樹脂系硬化剤(B)全体に対して、下記一般式(1)で表される構造を含むフェノール樹脂系硬化剤(b1)を20質量%以上、80質量%以下、及び、下記一般式(2)で表されるフェノール樹脂系硬化剤(b2)を20質量%以上、80質量%以下含むことを特徴とする、封止用樹脂組成物。
【化1】


上記一般式(1)において、R1は互いに独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、aは1〜4の整数である。iが1〜20の整数であり、jが0〜20の整数であり、kが0〜20の整数である。
ここで、上記一般式(1)において、
(b1−1):i≧1、j=0、k=0の場合、繰り返し数iで表される構造単位が連結し、分子の左末端は水素原子、分子の右末端はヒドロキシフェニル基である構造であり、(b1−2):i≧1、j≧1、k=0の場合、繰り返し数iで表される構造単位及び繰り返し数jで表される構造単位が連結し、分子の左末端は水素原子、分子の右末端はヒドロキシフェニル基であり、繰り返し数iで表される構造単位と繰り返し数jで表される構造単位とは、それぞれが連続もしくは互いが交互もしくはランダムに並んでいる構造であり、
(b1−3):i≧1、j=0、k≧1の場合、繰り返し数iで表される構造単位及び繰り返し数kで表される構造単位が連結し、分子の左末端は水素原子、分子の右末端はヒドロキシフェニル基または置換基R1がa個置換したフェニル基であり、繰り返し数iで表される構造単位と繰り返し数kで表される構造単位とは、それぞれが連続もしくは互いが交互もしくはランダムに並んでいる構造であり、
(b1−4):i≧1、j≧1、k≧1の場合、繰り返し数iで表される構造単位、繰り返し数jで表される構造単位及び繰り返し数kで表される構造単位が連結し、分子の左末端は水素原子、分子の右末端はヒドロキシフェニル基または置換基R1がa個置換したフェニル基であり、繰り返し数iで表される構造単位と繰り返し数jで表される構造単位と繰り返し数kで表される構造単位とは、それぞれが連続もしくは互いが交互もしくはランダムに並んでいる構造であり、
前記フェノール樹脂系硬化剤(b1)は、前記(b1−1)、(b1−2)、(b1−3)、及び、(b1−4)を必ず含有するものである。

【化2】


上記一般式(2)において、oは1〜20の整数、pは1〜20の整数である。繰り返し数oで表わされる構造単位と、繰り返し数pで表わされる構造単位とは、それぞれが連続で並んでいても、互いが交互もしくはランダムに並んでいてもよい。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂(A)が、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及び、ビスフェノールA型エポキシ樹脂から選ばれる1種以上を、該エポキシ樹脂(A)全体に対して50質量%以上含む、請求項1に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項3】
前記無機充填材(C)の含有割合が、全封止用樹脂組成物中に85質量%以上、92質量%以下である、請求項1又は2に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項4】
前記硬化促進剤(D)が、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物からなる群から選択される少なくとも1種の硬化促進剤を含むものである、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(E)を含むものである、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、カップリング剤(F)を含むものである、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項7】
前記カップリング剤(F)が、2級アミノ基を有するシランカップリング剤を含むものである、請求項6に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項8】
前記カップリング剤(F)が、メルカプト基を有するシランカップリング剤を含むものである、請求項6に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項9】
さらに、前記無機充填剤(C)とは異なる無機難燃剤(G)を含むものである、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項10】
前記無機難燃剤(G)が、金属水酸化物、及び/又は複合金属水酸化物を含むものである、請求項9に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物を硬化させた硬化物で素子が封止されているものであることを特徴とする、電子部品装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−64076(P2013−64076A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204003(P2011−204003)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】