説明

封止用樹脂組成物

【課題】 熱膨張率、流動性に優れ、狭いギャップ間に容易に浸透できる封止用樹脂組成物の提供。
【解決手段】 エポキシ樹脂、硬化剤、無機粒子、有機チタン化合物及びリン酸エステルを含み、無機粒子の平均粒径が10μm以下であり、無機粒子の量が組成物全量を基準として60質量%以上であり、有機チタン化合物の量が組成物全量を基準として1質量%以上、5質量%以下であり、リン酸エステルの量が組成物全重量を基準として0.5質量%以上、3質量%以下である、封止用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用樹脂組成物、及び該封止用樹脂組成物で封止された半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体装置等における封止の分野において、エポキシ樹脂等の樹脂による封止が用いられてきた。近年、半導体の高密度化に伴い、小型且つ薄型のパッケージが開発されている。そのため、半導体におけるチップと基板間の距離(ギャップ)が減少し、今後も益々の狭ギャップ化が予想されている。その結果、封止材料に関しても、狭ギャップ対応型のものが求められている。
【0003】
特許文献1は、1種以上のエポキシ樹脂を1種以上のエポキシ硬化剤と共に含んでなるアンダーフィル組成物であって、該1種以上のエポキシ硬化剤が1種以上の二官能性シロキサン無水物を含む、アンダーフィル組成物を記載している。
【0004】
特許文献2は、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填材及びカップリング剤を含むアンダーフィル用液状エポキシ樹脂組成物であって、前記カップリング剤が−Si(OR)3−n(n=1〜3)で表される構造を1分子中に2個以上有し、前記樹脂組成物中における前記カップリング剤の含有量が0.05wt%〜1.5wt%であるアンダーフィル用液状エポキシ樹脂組成物を記載している。
【0005】
特許文献3は、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填材を含有するアンダーフィル用樹脂組成物において、エポキシ樹脂の全量に対して多官能型エポキシ樹脂を5〜20質量%配合し、硬化剤としてフェノール系化合物及び酸無水物を用いると共に硬化剤の全量に対してフェノール系化合物を3〜20質量%配合して成ることを特徴とするアンダーフィル用樹脂組成物を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0129956号明細書
【特許文献2】国際公開第2005/080502号
【特許文献3】特開2004−256646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
封止用樹脂組成物は、熱膨張性の観点から、一般に、無機粒子を高充填している。また、かかる無機粒子の高充填化に加え、得られる樹脂組成物の流動性の観点から、封止用樹脂組成物の粘度を低くするために、封止用樹脂組成物には比較的大きな平均粒径の無機粒子(例えば、15〜30μm)が使用されている。しかしながら、半導体におけるチップと基板間の距離(ギャップ)が減少してくると、このような比較的大きな平均粒径の無機粒子を用いて封止用樹脂組成物の粘度を低くした場合、無機粒子がギャップ間に詰まることで、封止用樹脂組成物のギャップ間への浸透が妨げられるという現象が見られる場合がある。そこで、無機粒子の平均粒径を小さくしても、熱膨張率、流動性に優れ、狭いギャップ間に容易に浸透できる封止用樹脂組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、エポキシ樹脂、硬化剤、無機粒子、有機チタン化合物、及びリン酸エステルを含む封止用樹脂組成物であって、無機粒子の平均粒径は10μm以下であり、無機粒子の量は封止用樹脂組成物全量に対して60質量%以上であり、有機チタン化合物の量は封止用樹脂組成物全量に対して1質量%以上、5質量%以下であり、リン酸エステルの量は封止用樹脂組成物全量に対して0.5質量%以上、3質量%以下である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、熱膨張率、流動性に優れ、狭いギャップ間に容易に浸透できる封止用樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の封止用樹脂組成物に使用可能なエポキシ樹脂としては、脂肪族、脂環式、芳香族又は複素環式の単量体又はオリゴマーのエポキシ化合物を挙げることができる。これらの物質は、一般に平均で1分子当たり少なくとも1個の重合可能なエポキシ基を有しており、また、1分子当たり少なくとも1.5個又は少なくとも2個の重合可能なエポキシ基を有していてもよい。ある態様においては、1分子あたり3個又は4個の重合可能なエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物を使用できる。また、エポキシ化合物は、純粋化合物であっても、分子1個当たり1個、2個又はそれ以上のエポキシ基を含有する化合物の混合物であってもよい。
【0011】
上記したエポキシ化合物は、任意の種類の主鎖を有し、また、置換基を有していてもよい。許容しうる置換基の例としては、ハロゲン、エステル基、エーテル、スルホネート基、シロキサン基、ニトロ基、リン酸基等が挙げられる。エポキシ化合物のエポキシ等量は、通常、50〜2000の範囲で変えることができる。
【0012】
オリゴマーのエポキシ化合物としては、末端エポキシ基を有する線状オリゴマー(例えば、ポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテル)、骨格エポキシ単位を有するオリゴマー(例えば、ポリブタジエンポリエポキシド)又はペンダントエポキシ基を有するオリゴマー(例えば、グリシジルメタクリレートオリゴマー又はコオリゴマー)が挙げられる。
【0013】
ある態様においては、下記式のグリシジルエーテル単量体を使用することができる。
【0014】
【化1】

【0015】
式中、Rは、n原子価を有するラジカルであり、nは1〜6の整数である。Rは、芳香族基、脂環式基、脂肪族基又はそれらの組み合わせのいずれであってもよい。代表的なエポキシ化合物として、多価フェノールと、エピクロロヒドリン(例えば、2,2−ビス−(2,3−エポキシプロポキシフェノール)−プロパン)等の過剰のクロロヒドリンとの反応により得られる多価フェノールのグリシジルエーテルが挙げられる。具体的には、芳香族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物等を用いることができる。
【0016】
芳香族エポキシ化合物としては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、ビスフェノールFのジクリシジルエーテル(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、4,4'−ジヒドロキシビフェニルのジグリシジルエーテル及びこれらのオリゴマー、またはクレゾールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、フェノールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)を挙げることができる。
【0017】
脂環式エポキシ化合物としては、上記芳香族エポキシ化合物を水素化したもの、例えば、水添ビスフェノールAエポキシ化合物、水添ビスフェノールFエポキシ化合物が挙げられる。また、ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、1,2:8,9ジエポキシリモネン、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−2−メチルシシクロヘキサンカルボキシレート及びビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジパートに代表されるエポキシシクロヘキサンカルボキシレートなどのシクロヘキセンオキシド基を含有するものを用いることもできる。
【0018】
脂肪族エポキシ化合物は、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のグリシジルエーテルを含む。例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0019】
上記したエポキシ樹脂の他、ハロゲン化エポキシ樹脂(例えば、臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂)、またはグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物を用いることもできる。グリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物とは、各種のアミンをエピハロヒドリンと作用させてエポキシ化して得られるエポキシ化合物(エポキシ樹脂)であり、例えば、アミノフェノール型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、ヘキサグリシジルトリアミノベンゼンなどが挙げられる。
【0020】
アミノフェノール型エポキシ樹脂とは、各種のアミノフェノール類を公知の方法でエポキシ化したものである。アミノフェノール類の例としては、2−アミノフェノール、3−アミノフェノール、4−アミノフェノール、2−アミノ−m−クレゾール、2−アミノ−p−クレゾール、3−アミノ−o−クレゾール、4−アミノ−m−クレゾール、6−アミノ−m−クレゾールなどのアミノフェノール、アミノクレゾール類などが挙げられる。
【0021】
他の使用可能なエポキシ樹脂としては、グリシドールのアクリル酸エステル(グリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレートなど)と1つ以上の共重合性ビニル化合物とのコポリマーが挙げられる。そのようなコポリマーとして、スチレン−グリシジルメタクリレート及びメチルメタクリレート−グリシジルアクリレート等が例示できる。また、ケイ素原子がエポキシアルキル基で置換されたポリジメチルシロキサンであるエポキシ官能性シリコンを用いることもできる。
【0022】
上記したエポキシ樹脂の中でも、封止用樹脂組成物の硬化後の特性の点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。また、封止用樹脂組成物の粘度と硬化後の特性のバランスの点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂の併用、または、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂にさらにアミノフェノール型エポキシを加えた3成分系がより好ましい。具体的には、市販品として入手可能である、製品名ZX1059(東都化成製、ビスフェノールA及びビスフェノールFの混合物)、jER(登録商標)630アミノフェノール型エポキシ(三菱化学製)等を使用することができる。
【0023】
エポキシ樹脂の量は、一般的に、封止用樹脂組成物の全量を基準として、20質量%以下であり、ある態様においては10〜20質量%である。
【0024】
本発明の封止用樹脂組成物に含まれる硬化剤としては、エポキシ化合物の硬化に使用される一般的な硬化剤を使用することができる。具体的には、アミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノ−ル系化合物、さらに、BF−モノエタノールアミンのような三弗化ホウ素錯化合物、2−エチル−4−メチルイミダゾールのようなイミダゾール類、アミノジヒドラジドのようなヒドラジド類、テトラメチルグアニジンのようなグアニジン類、及びジシアンジアミドなどが挙げられる。硬化剤は、単独で使用しても、また複数の異なる硬化剤を混合して用いても良い。粘度の点から、酸無水物系化合物が好ましい。
【0025】
酸無水物系化合物としては、非芳香族系酸無水物系化合物を用いることができる。例えば、ヘキサヒドロフタル酸無水物、3−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、4−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、1−メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、5−メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、1−メチルナジック酸無水物、5−メチルナジック酸無水物、ナジック酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、3−メチルテトラヒドロフタル酸無水物、4−メチルテトラヒドロフタル酸無水物、及びドデセニルコハク酸無水物等が挙げられる。
【0026】
これらの中でも、化合物中に二重結合を持たない、ヘキサヒドロフタル酸無水物、3−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、4−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、1−メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、5−メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物が好ましい。特に、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸及びヘキサヒドロ無水フタル酸の混合物(例えば、新日本理化製、製品名リカシッドMH700(4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30)は、封止用樹脂組成物の粘度が低く、結晶化しにくいため好ましい。
【0027】
フェノール系硬化剤としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ビフェニルフェノール、テトラメチルビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、ジメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチル−4,4’−ビフェノール、ジメチル−4,4’−ビフェニルフェノール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−{1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エチル}フェニル]プロパン、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ジイソプロピリデン、テルペン骨格を有するフェノール類、1,1−ジ−4−ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエン、フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類、テルペンジフェノール類等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、フラン骨格含有フェノールノボラック樹脂等の各種ノボラック樹脂等が挙げられる。
【0028】
アミン系硬化剤としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族アミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、メタキシレンジアミン、芳香族アミンとアルデヒド類との縮合物などの芳香族アミン、ポリアミドアミン等が挙げられる。
【0029】
硬化剤の量は、得られる硬化物の特性上、エポキシ樹脂に対して等量に近い量配合することが好ましい。一般的には、硬化剤の量は、封止剤樹脂組成物の全重量を基準にして、5〜15質量%の範囲である。
【0030】
本発明の封止用樹脂組成物には、無機粒子がほぼ均一に分散して含まれている。無機粒子は、封止用樹脂組成物に高い弾性率と低い熱膨張率を付与するために使用されるものであり、単独または複数組み合わせて、使用することができる。一般に、かかる無機粒子として、シリカ(溶融シリカ、結晶シリカ)、アルミナ、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、或いは、これらを球形化したビーズ、ガラス繊維等が挙げられる。これらの無機粒子は単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
上記無機粒子の中で、熱膨張性の点からは溶融シリカが、高熱伝導性の点から結晶シリカ及びアルミナが好ましい。また、無機粒子としてシリカ粒子を有機ゾルから生成した場合、その粒径分布が狭くなるので、樹脂組成物中に効果的に分散することができるようになる。なお、無機粒子の一次粒子の形状は特に重要ではないが、微細間隙への流動性、浸透性の点から球状が好ましい。
【0032】
また、封止用樹脂組成物の流動性の点から、平均粒径が小さく、粒径分布の狭い無機粒子が好ましい。封止用樹脂組成物を狭ギャップに浸透させる際に無機粒子がスタックしやすくなるため、本発明においては、無機粒子の平均粒径は10μm以下である。また、無機粒子の平均粒径は、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、特に好ましくは2μm以下である。一方、無機粒子における平均粒径の下限は、特に制限はないが、シリカ粒子の場合には、流動性の観点から0.5μm以上が好ましく、アルミナ粒子の場合には0.1μm以上であることが好ましい。また、封止用樹脂組成物に含まれる無機粒子の粒径は、「平均粒径±(平均粒径×0.3)」の範囲(例えば、1±0.3μm)にあることが好ましい。無機粒子の平均粒径や粒度分布は、電子顕微鏡やレーザー散乱装置により測定することができる。なお、無機粒子は、樹脂組成物への分散性を損なわない範囲で表面処理がなされていてもよい。
【0033】
無機粒子として、ゾル−ゲル法で作られた粒径分布の狭い溶融シリカを使用することが好ましく、平均粒径が0.8〜1.8μmの範囲にあるゾルーゲル法で作られた粒径分布の狭い(「平均粒径±(平均粒径×0.3)」の範囲)溶融シリカを用いることがより好ましい。かかる無機粒子は市販品として入手可能であり、例えば、東亜合成製のゾル−ゲル法で作られたシリカHPS−1000や、(株)トクヤマ製のゾル−ゲル法で作られたシリカSS−07、SS−10、SS−14等が挙げられる。
【0034】
封止用樹脂組成物における無機粒子の量は、得られる硬化物の熱膨張率の点から、封止用樹脂組成物の全量に基づき60質量%以上であり、また、樹脂組成物の粘度の点から、封止用樹脂組成物の全量に基づき90質量%以下であることが好ましい。無機粒子の量が上記範囲にあると、一般に、硬化物の熱膨張率を35ppm以下とすることができ、半導体の封止用樹脂組成物として好適に使用することができる。
【0035】
本発明の封止用樹脂組成物に使用できる有機チタン化合物は、化合物中に加水分解性基及び疎水基を有している有機チタン化合物とすることができる。このような有機チタン化合物は、一般にチタンカップリング剤として知られている。有機チタン化合物は無機粒子の表面にある−OH基と反応し、例えば、加水分解によりアルコールを脱離させることでチタンとの間に共有結合を形成する。これによって、無機粒子の表面は有機化され、エポキシ樹脂への分散性が良好になると考えられる。
【0036】
有機チタン化合物における加水分解性基としては、RO−、−O−CH−CH−O−、又は−O−CH−C(=O)−O−等が挙げられる。ここで、Rは置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基とすることができる。Rは無機粒子との反応後、脱離するため(例えば、アルコールとなって脱離)、脱離した後の沸点がある程度低くなる基であることが望ましい。従って、Rは炭素数が少ない基が好ましく、炭素数が1〜10(より好ましくは、炭素数が1〜8)である置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基であることが好ましい。
【0037】
また、有機チタン化合物における疎水基としては、−O−C(=O)−R、−O−S(=O)−Ph−R、−O−P(=O)(−OH)−O−P(=O)−(OR、−O−P(=O)−(OR、HO−P−(OR、又は−O−(CH−NH−(CH−NH等が挙げられる。ここで、Phはフェニル基を表し、m及びnは1〜10の整数であり、Rは、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基とすることができる。Rは、無機粒子の表面を被覆する効率をあげるため、炭素数が多い基が望ましく、炭素数が8〜30である置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基であることが好ましい。
【0038】
これらの中でも、封止用樹脂組成物における無機粒子との反応性及び粘度低下の点から、好ましい疎水基は、−O−C(=O)−R、HO−P−(OR、−O−(CH−NH−(CH−NHである。流動性の観点から−O−C(=O)−R又はHO−P−(ORであることがより好ましく、また、チタンカップリング剤の安定性の観点からは−O−C(=O)−Rであることがより好ましい。ここで、Rは炭素数が8〜30、好ましくは炭素数10〜30である置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基である。
【0039】
具体的に、チタンカップリング剤としては、テトラアルコキシチタン(例えばテトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブチロキシチタン)、チタン酸テトラエチレングリコール、チタン酸ジ−n−ブチルビス(トリエタノールアミン)、ビス(アセチルアセトン)酸ジ−イソプロポキシチタン、オクタン酸イソプロポキシチタン、トリメタクリル酸イソプロピルチタン、トリアクリル酸イソプロピルチタン、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリ(ブチル、メチルピロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルジ(ジラウリルホスファイト)チタネート、ジメタクリルオキシアセテートチタネート、ジアクリルオキシアセテートチタネート、ジ(ジオクチルホスフェート)エチレンチタネート、トリ(ジオクチルリン酸)イソプロポキシチタン、イソプロピルトリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)オキシアセテートチタネート、トリス(ジオクチルピロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリ−n−ドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリロイルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート等が挙げられる。
【0040】
味の素ファインテクノ社から市販されているプレンアクト(登録商標)シリーズ、KR TTS(イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、(CHCHOTi[OCO(CH14CH(CH)、KR 46B(テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート)、KR 55(テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート)、KR 41B(テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート)、KR 38S(イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート)、KR 138S(ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート)、KR 238S(トリス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート)、338X(イソプロピルジオクチルパイロホスフェートチタネート)、KR 44(イソプロピルトリ(N−アミノエチルアミノエチル)チタネート)、KR 9SA(イソプロピルトリス(ドデシルベンゼンスルフォニル)チタネート)等が使用できる。好ましくはプレンアクトKR TTS、KR 46B、KR 9SAであり、より好ましくはプレンアクトKR TTS、KR 46Bである。
【0041】
有機チタン化合物の量は、封止用樹脂組成物の粘度を低くするという点から、封止用樹脂組成物の全量に基づき1質量%以上であり、好ましくは2質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上である。一方、得られる硬化物のガラス転移温度や弾性率低下という点から、有機チタン化合物の量は、封止用樹脂組成物の全量に基づき5質量%以下であり、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
【0042】
本発明の封止用樹脂組成物に使用できるリン酸エステルとしては、有機リン化合物のうち、リン酸とアルコールが脱水縮合したエステルが挙げられる。上記した有機チタン化合物に、さらにリン酸エステルを添加することで、リン酸エステルがチタンと配位結合のような弱い結合を形成する。その結果、有機チタン化合物で有機化された無機粒子の表面の有機層は、更にその有機層の厚みが増すことになる。
【0043】
具体的には、リン酸エステルは、リン酸(O−P(OH))が持つ3個の水素の全て又は一部が有機基で置き換わった構造を有している。その置換の数が1、2、3個のものが、順にリン酸モノエステル(P(OZ))、リン酸ジエステル(HOP(OZ))、リン酸トリエステル((HO)POZ)と呼ばれる。ここで、Zは炭素数が10〜50の置換又は無置換のアルキル、フェニル、ポリエステル、又はポリカプロラクトン等である。Zは、無機粒子表面に形成される有機層の厚みを増すという観点から、分子量が大きいものが好ましい。具体的には、重量平均分子量が200〜20000のものが好ましく、重量平均分子量が300〜10000のものがより好ましい。
【0044】
上記化合物として、例えば、ジメチルホスフェート、ジエチルホスフェート、ジプロピルホスフェート、モノブチルホスフェート、ジブチルホスフェート、モノ−2−エチルヘキシルホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルホスフェート、モノフェニルホスフェート、モノ−2−エチルヘキシルホスファイト、ジオクチルホスフェート、ジフェニルホスフェートなどが挙げられる。具体的には、ビックケミー・ジャパン株式会社製のディスパービック111などの市販品が入手可能である。
【0045】
上記したリン酸エステルの中でも、無機粒子の分散の点から、リン酸ジエステルが好ましく、Zがポリカプロラクトンであるリン酸ジエステルがより好ましい。
【0046】
リン酸エステルの量は、封止用樹脂組成物の粘度を低くするという点から、封止用樹脂組成物の全量に基づき0.5質量%以上であり、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.2質量%以上である。一方、得られる硬化物の電機特性(絶縁性)低下を引き起こす可能性があるという点から、リン酸エステルの量は、封止用樹脂組成物の全量に基づき3質量%以下であり、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.8質量%以下である。
【0047】
上述の通り、有機チタン化合物とリン酸エステルとを組み合わせることで、エポキシ樹脂と無機粒子の分散性を改善し、得られる封止用樹脂組成物の流動性を改良することができる。特に、ROTi(OCORH)又は(RO)Ti[HOP(OR](ここで、Rは炭素数が3〜8の直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基、Rは炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基である。)で表される化学構造を有する有機チタン化合物、及びHOP(OZ)(ここで、Zは炭素数が10〜50の置換又は無置換のアルキル、フェニル、ポリエステル、又はポリカプロラクトンである)で表される化学構造を有する重量平均分子量が200〜20000のリン酸ジエステルの組み合わせが好ましい。
【0048】
本発明の封止用樹脂組成物は、上記成分に加えて、反応促進剤を含んでいてもよい。ここで、エポキシ樹脂と硬化剤の反応促進剤としては、シクロアミジン化合物、3級アミン類、4級アンモニウム塩、イミダゾール類、ルイス酸として働く有機金属化合物、トリフェニルフォスフィンのような有機ホスフィン類等のリン化合物、及びこれらの誘導体、又はそれらのテトラフェニルボロン塩など、一般的に使用されている公知の反応促進剤が挙げられる。これら反応促進剤は、単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。なお、反応促進剤の配合量は、反応促進効果が達成される量であれば特に限定されない。
【0049】
また、本発明の封止用樹脂組成物には、半導体素子の耐湿性、高温放置特性を向上させるイオントラッパー剤も配合することもできる。イオントラッパー剤としては特に制限はなく、これまで公知のものを用いることができる。具体的にはハイドロタルサイト類、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ビスマス等の元素の含水酸化物などが挙げられる。
【0050】
更に、本発明の封止用樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、シリコーンゴム粉末等の応力緩和剤、染料、カーボンブラック等の着色剤、レベリング剤、消泡剤、その他の無機充填剤(例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等の難燃効果のある無機充填剤)等を配合することができる。また、赤燐、燐酸エステル、メラミン、メラミン誘導体、トリアジン環を有する化合物、シアヌル酸誘導体、イソシアヌル酸誘導体の窒素含有化合物、シクロホスファゼン等の燐窒素含有化合物、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化モリブデン、フェロセン等の金属化合物、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の酸化アンチモン、ブロム化エポキシ樹脂等の難燃剤を配合してもよい。
【0051】
本発明における封止用樹脂組成物の硬化物は、10〜35ppmの熱膨張率を有する。半導体の封止ではシリコンの熱膨張率が低いので、これを封止する材料の熱膨張率も低いほど好ましい。熱膨張率が35ppmより高くなると、熱ストレスのために半導体にクラックが発生するおそれがある。なお、熱膨張率の測定方法は、TMA(Thermal Mechanical Anayzer)で測定することが可能である。具体的には、熱膨張率はリガク製TMA8310熱機械分析装置を用いて測定できる。サンプル(サイズ:4x5x10mm)を窒素気流下で20℃/分で昇温し、10mNの加重を印加し、圧縮モードで測定する。
【0052】
また、本発明の封止用樹脂組成物は良好な流動性を有する。ここで、流動性の測定には粘度計を使う方法もあるが、実際に狭いギャップに浸透するか否かは粘度の値だけで決定することができない場合がある。そのため、一定のギャップを有する平行平面板の間に樹脂組成物が浸透する時間を測定するのが、最も直接的な方法である。このような樹脂組成物の浸透測定には、2枚の大きさの異なるガラス板を使用する。例えば、40x40x1mmの大きなガラス板と、30x30x1mmの小さなガラス板を用意し、小さい方のガラス板の2つの端に厚さ40μmの粘着テープ(30x5mm)を貼り付け、これを大きなガラス板と接着することで2枚のガラスの間隔を40μmにした後、このガラス板を大きなガラス板を下にして100℃に温度制御したホットプレートに載せ、小さいガラスの端に樹脂を供給し、樹脂の浸透長さと時間の関係を測定することで、封止用樹脂組成物の流動性を確認することが可能となる。本発明においては、かかる測定方法に基づき測定された封止用樹脂組成物の浸透時間が10〜1000秒の範囲にすることができる。浸透時間が10秒以下のときは、樹脂組成物の粘度が低すぎて気泡が入り易くなる場合があり、一方、1000秒以上要する場合には、実際の封止材として使用する際、作業性が悪く、使いづらい。
【0053】
また、本発明における封止用樹脂組成物の硬化物は、60〜120℃のガラス転移温度(Tg)、5〜40GPaの弾性率(動的貯蔵弾性率;E’)を有している。なお、ガラス転移温度及び弾性率は、DMA(動的粘弾性測定)装置により測定できる。測定方法としては、Rheometric Scientific社製のSolid analyzer(RSA−III)を用い、3点曲げモード(歪:0.05%、周波数:1Hz)で、サンプル(サイズ:2x10x35mm)を3℃/分で昇温しながら、測定を行う。
【0054】
具体的に、弾性率(動的貯蔵弾性率)は、上記直方体サンプル(サイズ:2x10x35mm)を2つのナイフエッジ(距離25mm)の上に置き、その中心部分を押して変形させた際の荷重を測定する3点曲げ方式で測定可能である。その際、歪は最大値が0.05%となるサイン波として与え、荷重もサイン波として計測する(サイン波の周期は1Hz)。
【0055】
本発明の封止用樹脂組成物は、上記した各成分を均一に分散混合できるのであれば、いかなる製造方法を用いても調製できる。一般的な製法として、所定の配合量の原材料成分を一緒に又は別々に配合し、必要に応じて加熱冷却処理を行いながら、ミキシングロール、押出機、プラネタリーミキサー等によって攪拌、溶解、混合、分散を行った後、冷却し、必要に応じて脱泡、粉砕する方法等を挙げることができる。なお、無機粒子以外の成分の混合物をまず作製し、次いで、この混合物に無機粒子を加えて封止用樹脂組成物としてもよい。また、封止用樹脂組成物は、必要に応じて成形条件に合うような寸法及び重量でタブレット化してもよい。
【0056】
本発明の封止用樹脂組成物は、上述の通り、平均粒径が小さい無機粒子を高充填しているにもかかわらず、低粘度にすることが可能である。よって、本発明の封止用樹脂組成物は、熱膨張率、流動性に優れ、狭いギャップ間でも容易に浸透することができる。本発明の封止用樹脂組成物は種々の用途に使用でき、通常の電子部品用途であれば、何れの用途にも適用可能である。例えば、コンデンサ、抵抗器、半導体装置、集積回路、トランジスタ、ダイオード、トライオード、サイリスタ、コイル、バリスター、コネクター、変換器、マイクロスイッチ及びこれらの複合部品などが挙げられる。好ましくは、半導体装置の封止に使用することができる。半導体装置としては、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス等の支持部材や実装基板に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子等の素子を搭載し、封止用エポキシ樹脂成形材料で封止したフリップチップ実装型の半導体装置などが挙げられる。
【0057】
本発明の封止用樹脂組成物は、特に、アンダーフィル用樹脂組成物(アンダーフィル用封止材料)として好適である。例えば、銅回路が形成されたポリイミド基板と該基板上に搭載された半導体チップとの間の空隙及び隣接するバンプ間の空隙に本発明の封止用樹脂組成物を充填し、加熱乾燥して硬化させることにより、かかる空隙に本発明の封止用樹脂組成物の硬化膜を形成することができる。この封止用樹脂組成物の硬化膜を形成した後、銅回路の表面にカバーレイを適用して保護する。アンダーフィル用封止材料として用いる場合、作業性及び得られる硬化物の特性の点から、一般的に、25℃の粘度が5000センチポイズ以下であることが好ましく、より好ましくは500〜3000センチポイズである。
【0058】
本発明における封止用樹脂組成物による封止方法としては、特に制限はなく、低圧トランスファ成形法、インジェクション成形法、圧縮成形法等が挙げられる。また、ディスペンス方式、注型方式、印刷方式等を用いてもよい。充填性の観点からは減圧状態にて成形できる成形法が好ましい。なお、本発明の封止用樹脂組成物は低粘度であるため、狭いギャップから侵入させる以外の使い方もできる。具体的には、スピンコーティング、ステンシルコーティング、ジェットディスペンス、スクリーン印刷、パッドコーティングなど様々な方法で様々な基材に印刷することが可能である。印刷された樹脂はその上に被着体を圧着することで基材と被着体の間を埋めた構造にすることができる。
【0059】
近年半導体バンプのピッチ及び高さの減少に伴い、バンプ接合後の半導体と基板の間隔は狭くなる傾向があり、本発明のように狭いギャップに侵入できる封止用樹脂組成物は好適である。また、本発明の封止用樹脂組成物は、粘度が低いため、様々な印刷でウェーハー上に樹脂をコーティングすることも可能であり、これを半硬化させた後に張り合わせるような方法にも有効に活用することができる。
【0060】
本発明で得られる封止用樹脂組成物により素子を封止して得られる半導体装置としては、裏面に配線板接続用の端子を形成した有機基板又は無機基板の表面に素子を搭載し、バンプやワイヤボンディングにより素子と有機基板に形成された配線を接続した後、本発明の封止用樹脂組成物で素子を封止したBGA、CSP(チップサイズパッケージ)等が挙げられる。さらに具体的には、素子の回路形成面と素子を搭載する有機又は無機基板の回路形成面を対向させ、素子の電極と基板の回路をバンプを介して電気的に接続し、素子と基板の隙間に本発明の封止用樹脂組成物を含浸させたフリップチップ実装型半導体装置等が挙げられる。このような半導体装置は、半導体チップのバンプ電極を基板の表面の電極と接合した後、半導体チップと基板との間に形成される隙間に上記封止用樹脂組成物を充填し、この封止用樹脂組成物を硬化させて上記の隙間を封止することによって形成することができる。また、シリコンウェーハー上の電極にバンプを形成したものや、さらに貫通シリコンビアを有する表裏にバンプを有するウェーハーなどが挙げられる。本発明の封止用樹脂組成物をウェーハーに適用する場合は、上述の種々の印刷方法で封止用樹脂組成物をウェーハー上に形成した後10〜120℃で5〜120分程度放置し、Bステージ(半硬化)状態にして用いてもよい。
【実施例】
【0061】
<封止用樹脂組成物の調製>
(使用成分)
封止用樹脂組成物の調製に使用した成分を表1に示す。
【表1】

【0062】
実施例1〜11、比較例1〜4
(封止用樹脂組成物の調製)
表2に示した配合に従い、各成分をプラネタリーミキサー (Thinky Model AR250)に加え、室温において、3000rpmで攪拌して混合することで、実施例1〜11及び比較例1〜4の封止用樹脂組成物を得た。
【表2】

【0063】
封止用樹脂組成物の評価
(流動性(浸透時間))
上で得られた封止用樹脂組成物を、40μmのギャップを有するガラス板(上板30x30mm、下板40x40mm)の間に浸透する時間を測定した。ガラス板は100℃のホットプレート上に置き、封止用樹脂組成物を上板の端に塗布した。封止用樹脂組成物が上板の端から10mm浸透するまでの時間を測定し、測定結果を表3に示した。
【表3】

【0064】
(Tg、弾性率、熱膨張率の測定)
実施例1の封止用樹脂組成物を150℃において2時間硬化したサンプル、及び実施例2及び10の封止用樹脂組成物を165℃において2時間硬化したサンプルを作製し、ガラス転移温度(Tg)、弾性率(動的貯蔵弾性率;E’)(DMA法)及び熱膨張率(CTE)を測定した。DMA法によるTg測定にはRheometric Scientific社製のSolid analyzer(RSA−III)を用い、3点曲げモード(歪0.05%、周波数1Hz)で測定を行った。サンプルサイズは(2x10x35mm)であり、サンプルを3℃/分で昇温した。具体的な弾性率の測定は、上記直方体のサンプル(2x10x35mm)を2つのナイフエッジ(距離25mm)の上に置き、その中心部分を押して変形させた際の荷重を測定する3点曲げ方式で測定した。その際、歪は最大値が0.05%となるサイン波として与え、荷重もサイン波として計測した(サイン波の周期は1Hz)。
【0065】
また、熱膨張率は、リガク製TMA8310熱機械分析装置を用いて測定した。サンプルは窒素気流下で20℃/分で昇温した。測定は圧縮モードであり、測定中は10mNの加重を印加した。サンプルサイズは(4x5x10mm)とした。測定結果を表4に示す。
【0066】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、硬化剤、無機粒子、有機チタン化合物、及びリン酸エステルを含む封止用樹脂組成物であって、
無機粒子の平均粒径が10μm以下であり、
無機粒子の量が封止用樹脂組成物全量を基準として60質量%以上であり、
有機チタン化合物の量が封止用樹脂組成物全量を基準として1質量%以上、5質量%以下であり、
リン酸エステルの量が封止用樹脂組成物全量を基準として0.5質量%以上、3質量%以下である、
封止用樹脂組成物。
【請求項2】
無機粒子の平均粒径が5μm以下である、請求項1記載の封止用樹脂組成物。
【請求項3】
アンダーフィル用封止材料である、請求項1又は2記載の封止用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の封止用樹脂組成物で封止された半導体装置。

【公開番号】特開2012−36240(P2012−36240A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174946(P2010−174946)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】