説明

封止用液状エポキシ樹脂組成物

【課題】充填性に優れた封止用液状エポキシ樹脂組成物、及びこれにより封止された素子を備えた耐湿性、耐熱衝撃性等の信頼性の高い電子部品装置を提供する。
【解決手段】(A)液状エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)金属酸化物を含有する樹脂組成物であって、上記金属酸化物は、構成金属成分としてケイ素原子を90〜99.9モル%、ホウ素原子を10〜0.1モル%含有してなる封止用液状エポキシ樹脂組成物、及び、上記封止用液状エポキシ樹脂組成物により封止された素子を備えたものである電子部品装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厳しい成形性、信頼性を要求される電子部品装置の封止用に特に好適な封止用液状エポキシ樹脂組成物、及びこの組成物で封止された素子を備えた電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トランジスタ、IC、LSI等の半導体素子は、主にエポキシ樹脂組成物を用いて封止され電子部品装置として使用される。また、電子部品装置の低コスト化、小型・軽量化、高性能・高機能化を図るために素子の高密度実装化、配線の微細化、多層化、多ピン化、素子のパッケージに対する占有面積増大化等が進んでいる。これに伴い、電子部品装置は、固形のエポキシ樹脂を用いたトランスファー成形によるDIP(デュアルインラインパッケージ)等の従来のピン挿入タイプからPPGA(プラスチックピングリッドアレイ)、BGA(ボールグリッドアレイ)、CSP(チップサイズパッケージ)等の表面実装タイプのパッケージへ主流が移行しており、一部用途ではフリップチップ等のベアチップ実装も行われている。この際用いられる封止材には液状のエポキシ樹脂組成物が多用されている。この種の液状エポキシ樹脂組成物は、通常、液状エポキシ樹脂と低粘度化に有利な酸無水物系硬化剤等をベース樹脂として用い、さらに硬化促進剤、無機充填剤、カップリング剤、着色剤、レベリング剤等の各種添加剤を適宜配合した液状エポキシ樹脂組成物である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記液状エポキシ樹脂組成物は、フリップチップ実装用アンダーフィル剤等に用いられた場合、従来使用されていた溶融シリカ等を充填剤として配合すると、充填性が低下したり、充填剤の沈降現象が起きる等の問題がある。今後フリップチップ実装のバンプの大きさ、パッドピッチが小さくなると、より一層上記問題が起こりやすくなる。この問題を避けるために、充填剤の粒子径を微細なものにした場合、液状エポキシ樹脂組成物の粘度が上昇し、充填性が低下する。また粘度上昇を抑制するために、充填剤量を低減した場合は、PCT(プレッシャークッカー:121℃、0.2MPa、100%RH)試験等の耐湿試験において封止材/半導体チップ/有機基材との熱膨張係数の違いによって発生する熱ストレスによって、界面剥離を生じやすく、このような組成物を用いて封止された電子部品装置は、耐湿信頼性や耐熱衝撃性に乏しいという欠点を有する。本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、充填性に優れた封止用液状エポキシ樹脂組成物、及びこれにより封止された素子を備えた耐湿性、耐熱衝撃性等の信頼性の高い電子部品装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは上記の課題を解決するために充填性に優れた封止用液状エポキシ樹脂組成物を得るために鋭意検討した結果、特定の充填剤を用いることにより、上記目的を達することを見い出し、本発明を完成するに至った。
本願は以下の発明に関する。
(1)(A)液状エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)金属酸化物を含有する樹脂組成物であって、該金属酸化物は、構成金属成分としてケイ素原子を90〜99.9モル%、ホウ素原子を10〜0.1モル%含有してなる封止用液状エポキシ樹脂組成物。
(2)上記(A)液状エポキシ樹脂は、下記一般式(1);
【0005】
【化1】

【0006】
(式中、Xは、−CH−又は−C(CH−を表す。)で表されるものを含有してなる封止用液状エポキシ樹脂組成物。
(3)上記(A)液状エポキシ樹脂は、下記一般式(2);
【0007】
【化2】

【0008】
で表されるものを含有してなる封止用液状エポキシ樹脂組成物。
(4)上記封止用液状エポキシ樹脂組成物により封止された素子を備えたものである電子部品装置。
なお、本明細書では、封止用液状エポキシ樹脂組成物を、液状エポキシ樹脂組成物又は封止用エポキシ樹脂組成物とも言う。
【0009】
本発明で用いる(A)成分の液状エポキシ樹脂としては、一分子中に1個以上のエポキシ基を有するもので、常温で液状であれば制限はなく、封止用エポキシ樹脂組成物で一般に使用されている液状エポキシ樹脂を用いることができる。また、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物には、本発明の効果が達成される範囲内であれば固形エポキシ樹脂を併用することもできるが、併用する固形エポキシ樹脂はエポキシ樹脂全量に対して20重量%以下とすることが好ましい。本発明で使用できるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、水添ビスフェノールA等のジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を代表とするフェノール類とアルデヒド類のノボラック樹脂をエポキシ化したもの、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸により酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも低粘度化の観点からは下記一般式(1)で示される液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0010】
【化3】

【0011】
(式中、Xは−CH−又は−C(CH−を表す。)。
また、耐熱性の観点からは下記一般式(2)で示される液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0012】
【化4】

【0013】
上記2種のエポキシ樹脂はいずれか1種を単独で用いても2種以上を組合わせて用いてもよいが、その配合量は、その性能を発揮するために液状エポキシ樹脂全量に対して合わせて20重量%以上とすることが好ましく、30重量%以上がより好ましく、50重量%以上とすることがさらに好ましい。
また、これらの液状エポキシ樹脂は十分に精製されたもので、イオン性不純物はできるだけ少ないものが好ましく、例えば、遊離のNa+、Cl−等のイオン性不純物は500ppmであることが好ましい。
【0014】
本発明において用いられる(B)硬化剤は、封止用液状エポキシ樹脂組成物に一般に使用されているもので特に制限はないが、たとえば、無水フタル酸、無水マレイン酸、メチルハイミック酸無水物、ハイミック酸無水物、無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、クロレンド酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、3−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸マレイン酸付加物、メチルヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ドデセニル無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、水素化メチルナジック酸無水物等の酸無水物化合物、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、m−キシレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、イソフォロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、ラロミン、ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン、ポリシクロヘキシルポリアミン混合物、N−アミノエチルピペラジン等のアミン化合物、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−(2−メチルイミダゾイル−(1))エチル−s−トリアジン、2−フェニルイミダゾリン、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ(1,2−a)ベンズイミダゾール等のイミダゾール化合物、3級アミン、DBU、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、N,N−ジメチル尿素誘導体等が挙げられる。
中でも低粘度化の観点からは液状の酸無水物化合物、アミン化合物が好ましい。また、本発明の封止用液状エポキシ樹脂組成物には、本発明の効果が達成される範囲内であればフェノール系の固形硬化剤も併用することもできる。フェノール系固形硬化剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂、フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂、フェノール類及び/又はナフトール類とシクロペンタジエンから共重合により合成される、ジクロペンタジエン型フェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のジクロペンタジエン型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂等が挙げられる。
【0015】
(A)液状エポキシ樹脂と(B)硬化剤との当量比は特に制限はないが、それぞれの未反応分を少なく抑えるために、エポキシ樹脂に対して硬化剤を0.7〜1.6当量の範囲に設定することが好ましく、0.8〜1.4当量がより好ましく、0.9〜1.2当量がさらに好ましい。
【0016】
本発明の(C)成分の金属酸化物としては、構成金属成分としてケイ素原子を90〜99.9モル%、ホウ素原子を10〜0.1モル%含有してなるものである。
上記金属成分の構成金属成分であるケイ素原子の含有量が90モル%未満であったり、99.9モル%を超えたりすると、金属酸化物を生成する好適な反応である加水分解・縮合反応時にゲル化を引き起こす可能性がある。ケイ素原子の含有量としては、95〜99.8モル%であることが好ましく、97〜99.5モル%であることがより好ましい。
またホウ素原子の含有量が0.1モル%未満であったり、50モル%を超えたりすると、耐熱性等の物性を充分には向上できないこととなる。ホウ素原子の含有量としては、5〜0.2モル%であること好ましく、3〜0.5モル%であることがより好ましい。
上記金属酸化物における構成金属成分量としては、例えば、封止用液状エポキシ樹脂組成物の硬化板をX線光電子分光法(XPS)分析に供することにより測定することができる。
【0017】
上記金属酸化物は、金属酸化物が均一に分散された樹脂組成物の形態であることが好ましい。このような金属酸化物の粒度分布としては、0.5nm以上10nm未満の粒子を50〜80体積%、10nm以上100nm未満の粒子を50〜20体積%有するものであることが好ましい。金属酸化物の粒子全体を100体積%とすると、0.5nm以上10nm未満の粒度の粒子が50体積%未満の場合、線膨張係数を充分には小さくすることができなくなる。80体積%を超える場合は、封止用液状エポキシ樹脂組成物の硬化物のガラス転移点が低くなる可能性がある。下限値としては、好ましくは、55体積%であり、より好ましくは、60体積%である。上限値としては、好ましくは、78体積%であり、より好ましくは、75体積%である。
また、10nm以上100nm未満の粒度の粒子が20体積%未満であったり、50体積%を超えたりしても、線膨張係数を充分に小さくすることができなくなったり、ガラス転移点を充分に高くすることができなくなったりする。下限値としては、好ましくは、23体積%であり、より好ましくは、25体積%である。上限値としては、好ましくは、45体積%であり、より好ましくは、40体積%である。
上記範囲内に粒度分布を制御することにより、封止用液状エポキシ樹脂組成物を硬化させるときに生じるブリードや硬化物の破損等を抑制することが可能となる。
上記粒度分布としては、例えば、封止用液状エポキシ樹脂組成物の硬化板をX線小角散乱分析に供し、この測定により得られた散乱プロファイルからFankuchenの方法によりギニエプロットを作成して慣性半径を算出し、粒子の幾何学形状を球と仮定することにより粒径分布を求めることができる。
【0018】
上記金属酸化物の含有量としては、封止用液状エポキシ樹脂組成物を100質量%とすると、下限値が3質量%であることが好ましい。より好ましくは、10質量%であり、更に好ましくは、15質量%である。上限値としては、80質量%であることが好ましい。より好ましくは、70質量%であり、更に好ましくは、60質量%である。
また(A)液状エポキシ樹脂の含有量としては、封止用液状エポキシ樹脂組成物を100質量%とすると、下限値が40質量%であることが好ましい。より好ましくは、50質量%である。上限値としては、95質量%であることが好ましい。より好ましくは、90質量%であり、更に好ましくは、85質量%である。
【0019】
本封止用液状エポキシ樹脂組成物には(C)成分以外に無機充填剤を併用することができる。無機充填剤としては例えば、溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ、炭酸カルシウム、クレー、酸化アルミナ等のアルミナ、窒化珪素、炭化珪素、窒化ホウ素、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム、窒化アルミ、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維等が挙げられる。さらに、難燃効果のある無機充填剤としては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等が挙げられる。これらの無機充填剤は単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでもシリカが好ましく、液状封止材の微細間隙への流動性・浸透性の観点からは球形シリカがより好ましい。無機充填剤の平均粒径は、特に球形シリカの場合、1〜20μmの範囲が好ましく、平均粒径2〜10μmの範囲がより好ましい。平均粒径が1μm未満では液状樹脂への分散性に劣る傾向や液状封止材にチキソトロピック性が付与されて流動特性に劣る傾向があり、20μmを超えるとフィラ沈降を起こしやすくなる傾向や、液状封止材としての微細間隙への浸透性・流動性が低下してボイド・未充填を招きやすくなる傾向がある。無機充填剤の配合量は、封止用エポキシ樹脂組成物全体の10〜90重量%の範囲に設定されるのが好ましく、より好ましくは20〜80重量%、さらに好ましくは30〜60重量%である。配合量が10重量%未満では熱膨張係数の低減効果が低くなる傾向があり、90重量%を超えると封止用エポキシ樹脂組成物の粘度が上昇し、流動性・浸透性およびディスペンス性の低下を招く傾向がある。
【0020】
なお、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物には、上記(A)〜(C)成分以外に、必要に応じて他の添加剤を適宜配合することができる。前記の添加剤としてはカップリング剤、難燃剤、イオントラップ剤、硬化促進剤、希釈剤、着色剤、レベリング剤、消泡剤、溶剤等が挙げられる。カップリング剤としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができるが、例えば、エポキシ基含有シラン、アミノ基含有シラン、メルカプト基含有シラン、ウレイド基含有シラン等のシラン系カップリング剤、有機チタネート等のチタン系カップリング剤、アルミニウムアルコレート等のアルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系カップリング剤等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。難燃剤としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができるが、例えば、ブロム化エポキシ樹脂、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の酸化アンチモン、赤燐、リン酸エステル、メラミン、メラミン誘導体、トリアジン環を有する化合物、シクロホスファゼン等の燐窒素含有化合物等のリン窒素系化合物、金属水酸化物、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化モリブデン、フェロセン等の金属化合物等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。イオントラップ剤としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができるが、例えば、ハイドロタルサイト類、ビスマス、アンチモン、ジルコニウム、チタン、スズ、マグネシウム、アルミニウム等の元素の含水酸化物等が挙げられ、中でも、ハイドロタルサイト類及びビスマスの含水酸化物が好ましい。これらのイオントラップ剤は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。硬化促進剤としては硬化促進効果があれば特に制限はなく、従来公知のものを用いることができるが、例えば、シクロアミジン化合物、3級アミン類、イミダゾール類、有機ホスフィン類、リン化合物、テトラフェニルボロン塩及びこれらの誘導体等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は、上記各成分を混合することにより製造することができる。このような混合方法としては、上記の各種成分を均一に分散混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製できるが、通常、各成分、添加剤等を三本ロール、擂潰機等を使って分散混練することによって製造される。
また上記各成分の混合形態としては、本発明の作用効果を発揮する封止用液状エポキシ樹脂組成物が得られるものであれば特に限定されないが、上記(C)金属酸化物においては、エポキシ樹脂の存在下で、水を投入して金属アルコキシド及び/又はカルボン酸金属塩を加水分解・縮合する製造方法により得た金属酸化物含有樹脂組成物の形態とすることが好ましい。このように金属アルコキシド及び/又はカルボン酸金属塩を加水分解・縮合することにより、エポキシ樹脂中に、金属酸化物が均一に分散された樹脂組成物を得ることができることとなる。
【0022】
上記金属酸化物含有樹脂組成物の製造方法において用いられるエポキシ樹脂としては、金属酸化物が均一に分散されたものとできる樹脂であれば特に限定されないが、上述した(A)液状エポキシ樹脂を好適に用いることができる。
上記製造方法においては、加水分解・縮合反応により、加水分解・縮合物である金属酸化物(金属酸化物含有樹脂組成物)を得ることができることになる。加水分解・縮合物とは、加水分解反応により得られたものを更に縮合反応することによって得られる化合物をいう。
以下に、アルコキシド化合物やカルボン酸塩化合物の加水分解反応及び縮合反応を示す。
M(OR)+aHO(加水分解)→M(OH)+aROH
M(OH)→M(OH)→MO2/c(縮合物)
(式中、Mは、金属元素を表す。Rは、アルキル基又はアシル基を表す。a、b及びcは任意の数値である。)。
上記封止用液状エポキシ樹脂組成物としては、上述のような加水分解・縮合反応工程により得られる樹脂組成物に、更に(A)液状エポキシ樹脂や金属酸化物を添加して混合することにより製造してもよい。
【0023】
上記加水分解・縮合反応においては、水を用いることが好ましく、金属アルコキシド及び/又はカルボン酸金属塩100質量%に対して、10〜50質量%の水を添加して反応させることが好適である。好ましくは、20〜40質量%である。
上記反応に用いる水は、イオン交換水、pH調整水等のいずれを用いてもよいが、pH7前後の水を用いることが好ましい。このような水を用いることにより、組成物中のイオン性不純物量を低減させることが可能となり、低吸湿性あるいは高絶縁性の封止用液状エポキシ樹脂組成物とすることが可能となる。
上記水の使用形態としては、金属アルコキシド及び/又はカルボン酸金属塩に滴下する形態でもよいし、一括投入する形態でもよい。
【0024】
上記加水分解・縮合する工程においては、触媒としてホウ素原子を含有する有機金属化合物を用いることが好適である。
上記加水分解・縮合触媒としての有機金属化合物は、加水分解性を有することが好ましく、より好適には加水分解した後に金属酸化物骨格あるいは結晶格子中に組み込まれる化合物である。例えば、無機化合物がシリカの場合、加水分解・縮合触媒として酸・アルカリ化合物を用いてpH調整を必須とすると、酸・アルカリ化合物は組成物中にイオン性不純物として残存するため、組成物本来の低吸湿性や絶縁性を損なうおそれがある。それに対して上記有機金属化合物を用いる場合、シリカ分散時にシロキサン架橋構造中に取り込まれ、組成物調製後にイオン性不純物が残存することによる物性低下を引き起こすことがないため、電子部品装置の封止用に好適に使用できる封止用液状エポキシ樹脂組成物を得ることができる。
【0025】
上記ホウ素原子を含有する有機金属化合物としては、例えば以下のような化合物等が好適である。
有機ボロン化合物:ボラトレイン、ボロンアリロキシド、ボロン−n−ブトキシド、ボロン−tert−ブトキシド、ボロンエトキシド、ボロンイソプロポキシド、ボロンメトキシド、ボロンメトキシエトキシド、ボロン−n−プロポキシド、トリス(トリメチルシロキシ)ボロン、ボロンビニルジメチルシロキシド、ジフェニルボラン8−ヒドロキノリネート。
【0026】
上記加水分解・縮合触媒の使用量としては、金属アルコキシド及びカルボン酸金属塩100質量%に対して、下限値が0.1質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.5質量%である。上限値としては、20質量%であることが好ましい。より好ましくは、10質量%である。
【0027】
上記金属アルコキシドやカルボン酸金属塩としては、例えば、下記一般式(1);
M(OR (1)
(式中、Mは、金属元素を表す。Rは、アルキル基又はアシル基を表す。nは、1〜7の整数を表す。)で表される化合物及び/又は下記一般式(2);
(RM(OR (2)
(式中、M及びRは、一般式(1)と同様である。Rは、有機基を表す。m及びpは、1〜6の整数を表す。)で表される化合物が好適である。
【0028】
上記Rのアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好適であり、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等が好ましい。また、Rのアシル基としては、炭素数1〜4のアシル基が好適であり、アセチル基、プロピオニル基、ブチニル基等が好ましい。
【0029】
上記Rの有機基としては、炭素数1〜8の有機基が好適であり、メチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等のアルキル基;3−フルオロプロピル基等のフッ化アルキル基;2−メルカプトプロピル基等のメルカプト基含有アルキル基;2−アミノエチル基、2−ジメチルアミノエチル基、3−アミノプロピル基、3−ジメチルアミノプロピル基等のアミノ基含有アルキル基;フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フルオロフェニル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基;2−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基等のエポキシ基含有有機基;ビニル基、3−(メタ)アクリルオキシプロピル基等の不飽和基含有有機基等が好ましい。
【0030】
上記金属元素Mとしては、上記一般式(1)及び一般式(2)に示す化合物の構造を取り得る金属元素であれば周期表のどの金属でもよいが、B又はSiが好適である。より好ましくは、Siである。
【0031】
上記一般式(1)及び(2)で表される化合物の使用割合としては、得られる金属酸化物含有樹脂組成物と封止用液状エポキシ樹脂組成物を構成する他の成分との親和性の点から、一般式(1)及び(2)で表される化合物の全量を100質量%とすると、一般式(1)で表される化合物を80質量%以上とすることが好ましい。より好ましくは90質量%以上である。
【0032】
上記金属アルコキシド及び/又はカルボン酸金属塩の使用量としては、エポキシ樹脂100質量%に対して、下限値が20質量%であることが好ましい。より好ましくは、40質量%であり、更に好ましくは、60質量%である。上限値としては、200質量%であることが好ましい。より好ましくは、180質量%であり、更に好ましくは、160質量%である。
【0033】
上記金属元素MがSiである場合の金属アルコキシドやカルボン酸金属塩としては、以下のような化合物好適である。
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−i−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン類;テトラアセチルオキシシラン、テトラプロピオニルオキシシラン等のテトラアシルオキシシラン類;メチルトリアセチルオキシシラン、エチルトリアセチルオキシシラン等のトリアシルオキシシラン類;ジメチルジアセチルオキシシラン、ジエチルジアセチルオキシシラン等のジアシルオキシシラン類等。
これらの中でも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランが好ましい。このようにシリコンアルコキシドを含有してなることが好ましい。
【0034】
上記加水分解・縮合反応においては、有機溶媒を用いることもでき、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、メチルエチルセロソルブ、ブチルセロソルブ(エチレングリコールモノブチルエーテル)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエーテル類;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド類;アセトン、2−ブタノン(MEK)等のケトン類;メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール類;グリシジルメタクリレート等の反応性希釈剤;ヘキサン、シクロヘキサン等のハイドロカーボン類;トルエン、キシレン、m−クレゾール、ベンゼン、ニトロベンゼン等の芳香族類;クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン類;ジメチルポリシロキサン、サイクロメチコーン等のシリコーン類;アセトニトリル、ジオキサン、ピリジン等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0035】
上記有機溶媒の使用量としては、エポキシ樹脂100質量%に対して、下限値が20質量%であることが好ましい。より好ましくは、25質量%であり、更に好ましくは、30質量%である。上限値としては、120質量%であることが好ましい。より好ましくは、110質量%であり、更に好ましくは、100質量%である。
【0036】
上記加水分解・縮合反応において、反応温度としては、下限値が0℃であることが好ましい。より好ましくは、10℃であり、更に好ましくは、20℃である。また上限値としては、200℃であることが好ましい。より好ましくは、150℃であり、更に好ましくは、100℃である。
上記加水分解・縮合反応の反応時間としては、下限値が30分であることが好ましい。より好ましくは、1時間であり、更に好ましくは、2時間である。また上限値としては、24時間であることが好ましい。より好ましくは、18時間であり、更に好ましくは、12時間である。
【0037】
本発明で得られる封止用エポキシ樹脂組成物により素子を封止して得られる電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、抵抗アレイ、コイル、スイッチ等の受動素子等の素子を搭載し、必要な部分を本発明の封止用エポキシ樹脂組成物で封止して得られる電子部品装置等が挙げられる。このような電子部品装置としては、例えば、リードフレーム上に半導体素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部をワイヤボンディングやバンプで接続した後、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物を用いてディスペンス方式等により封止してなる、PLCC(Plastic Leaded ChipCarrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline ackage)、SOJ(Small Outline J−leadedpackage)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の一般的な樹脂封止型IC、テープキャリアにバンプで接続した半導体チップを、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物で封止したTCP(TapeCarrier Package)、配線板やガラス上に形成した配線に、ワイヤーボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子及び/又はコンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子を、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物で封止したCOB(Chip On Board)モジュール、ハイブリッドIC、マルチチップモジュール、裏面に配線板接続用の端子を形成した有機基板の表面に素子を搭載し、バンプ又はワイヤボンディングにより素子と有機基板に形成された配線を接続した後、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物で素子を封止したBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)等が挙げられる。また、プリント回路板にも本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は有効に使用できる。このように、本発明の封止用液状エポキシ樹脂組成物は、半導体装置用液体状樹脂組成物として好適に用いることができる。
【0038】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物を用いて素子を封止する方法としては、ディスペンス方式、注型方式、印刷方式等が挙げられる。
【発明の効果】
【0039】
本発明による封止用液状エポキシ樹脂組成物は充填性が良好でフリップチップ実装型パッケージの成形に好適で、かつ耐湿性、耐熱衝撃性等の信頼性が良好な電子部品装置等の製品を得ることができ、その工業的価値は大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
次に実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
金属酸化物含有樹脂組成物の作製
合成例1
ガスインレット、冷却管、攪拌棒付きの4つ口500mLフラスコにビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(商品名「YDF8170C」、東都化成社製)157.8g、テトラヒドロフラン157.8gを仕込み、室温にてよく攪拌して均一溶液になったところで、テトラメトキシシラン106.0g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン41.1gを投入して室温にて攪拌し均一溶液を得た。この混合液に攪拌しながらpH6.8のイオン交換水59.6gを室温にて2時間かけて滴下し、引き続き80℃まで昇温して4時間保持した。次にトリメトキシボロン0.90gを投入して更に2時間保持した後、減圧下で揮発成分としてのメタノールとプロピレングリコールメチルエーテルアセテートを留去し、冷却後に無色透明な粘凋な液体である樹脂組成物Aを得た。収量250g、エポキシ当量は213g/mol、金属酸化物含有率は29.6重量%、小角X線散乱により測定した金属酸化物の粒度分布は0.5nm以上10nm未満の粒径で65.3体積%、10nm以上100nm未満の粒径で34.7体積%だった。
【0041】
合成例2
ガスインレット、冷却管、攪拌棒付きの4つ口500mLフラスコにグリシジルアミン系液状エポキシ樹脂(商品名「E630」、ジャパンエポキシレジン社製)161.9g、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート161.9gを仕込み、室温にてよく攪拌して均一溶液になったところで、テトラメトキシシラン87.4g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン19.4g、フェニルトリメトキシシラン32.5gを投入して室温にて攪拌し均一溶液を得た。この混合液に攪拌しながらpH6.8のイオン交換水54.6gを室温にて2時間かけて滴下し、引き続き80℃まで昇温して4時間保持した。次にトリス(トリメチルシロキン)ボロン2.28gを投入して更に2時間保持した後、減圧下で揮発成分としてのメタノールとプロピレングリコールメチルエーテルアセテートを留去し、冷却後に無色透明な粘凋な液体である樹脂組成物Bを得た。収量260g、エポキシ当量は145g/mol、金属酸化物含有率は30.3重量%だった。小角X線散乱により測定した金属酸化物の粒度分布は0.5nm以上10nm未満の粒径で58.1体積%、10nm以上100nm未満の粒径で41.9体積%だった。
【0042】
合成例3
ガスインレット、冷却管、攪拌棒付きの4つ口500mLフラスコにビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(商品名「アラルダイトAER2502」、旭化成エポキシ社製)144.0g、ジグライム144.0gを仕込み、室温にてよく攪拌して均一溶液になったところで、テトラメトキシシラン156.3gを投入して室温にて攪拌し均一溶液を得た。この混合液に攪拌しながらイオン交換水59.6gを室温にて2時間かけて滴下し、引き続き80℃まで昇温して4時間保持した。次にトリエタノールアミンボレート1.61gを投入して更に2時間保持した後、減圧下で揮発成分としてのメタノールとプロピレングリコールメチルエーテルアセテートを留去し、冷却後に無色透明な粘凋な液体である樹脂組成物Cを得た。収量240g、エポキシ当量は285g/mol、金属酸化物含有率は29.3重量%、小角X線散乱により測定した金属酸化物の粒度分布は0.5nm以上10nm未満の粒径で73.2体積%、10nm以上100nm未満の粒径で26.8体積%だった。
【0043】
合成例4
1LビーカーにビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(商品名「YDF8170C」、東都化成社製)205.9g、テトラヒドロフラン205.9gを仕込み、室温にてよく攪拌して均一溶液になったところで、金属酸化物としての溶融シリカ(商品名「SO−E2」、平均粒径0.5μm、アドマテックス社製)88.2g、重量平均分子量4000のポリエチレングリコール0.88gを投入し、超音波ホモジナイザー(商品名「US−600T」、日本精機製作所社製)で約20分間攪拌した。次にガスインレット、冷却管、攪拌棒付きの4つ口500mLフラスコに混合液を移して減圧下でテトラヒドロフランを留去し、冷却後に半透明で粘凋な液体である樹脂組成物Dを得た。収量290g、エポキシ当量は229g/mol、金属酸化物含有率は30.0重量%だった。
【0044】
合成例5
合成例4のビスフェノールF型液状エポキシ樹脂の代わりにグリシジルアミン系液状エポキシ樹脂(商品名「E630」、ジャパンエポキシレジン社製)を用いることで樹脂組成物Eを得た。収量288g、エポキシ当量は135g/mol、金属酸化物含有率は30.0重量%だった。
【0045】
・半導体装置の作製、評価
実施例および比較例において行った特性試験の試験方法を以下にまとめて示す。なお、パッケージおよび試験片は、封止用エポキシ樹脂組成物を150℃、3時間の加熱条件でディスペンス方式により成形して作製した。
(1)粘度
封止用エポキシ樹脂組成物の25℃の粘度をE型粘度計(回転数5rpm)を用いて測定した。
(2)耐湿信頼性
封止用エポキシ樹脂組成物で封止されたTEGチップ(チップサイズ:10×10mm、バンプ径:100μm、ピッチ:300μm、ピン数:900)を搭載した評価用BGAパッケージ(基板はポリイミド)を、121℃、0.2MPa、100%RHのPCT条件で処理後、超音波探傷装置AT5500(日立建機株式会社製商品名)を用いて封止用エポキシ樹脂組成物とチップ及びポリイミドフィルムとの剥離の有無を確認した。また、アルミパッドの腐食の有無を赤外線顕微鏡により確認し、不良パッケージ数/測定パッケージ数で評価した。
【0046】
(3)耐熱衝撃性
封止用エポキシ樹脂組成物で封止されたTEGチップ(チップサイズ:10×10mm、バンプ径:100μm、ピッチ:300μm、ピン数:900)を搭載した評価用BGAパッケージを、−50℃/150℃、各30分のヒートサイクルで処理し、アルミ配線の断線不良を調べ、不良パッケージ数/測定パッケージ数で評価した。
(4)充填性
上記(2)で作製したBGAパッケージをダイヤモンドカッターで切断し、断面をSEMにて観察して、充填性を確認した。この時、判定は以下の指標をもとに行った。
◎:封止材硬化物全体に均一にシリカが充填されている。
〇:封止材硬化物厚み方向でシリカ沈降無し。
△:封止材硬化物の厚み10%でシリカ沈降。
×:封止材硬化物の厚み50%以上でシリカ沈降。
××:封止材硬化物の厚み80%以上でシリカ沈降。
×××:封止材硬化物の厚み90%以上でシリカ沈降。
【0047】
実施例1〜16、比較例1〜16
液状エポキシ樹脂としてエポキシ当量160のビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂1)(東都化成株式会社製商品名YDF−8170C)、エポキシ当量94の下記一般式(2)のエポキシ樹脂(エポキシ樹脂2)(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名E630)、硬化剤として活性水素当量63の3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(硬化剤1)(日本化薬株式会社製商品名カヤハードA−A)、酸無水物当量168のMH−700(硬化剤2)(新日本理化株式会社製商品名)、無機充填剤として上記で作製した、各種無機充填剤を含む樹脂組成物A〜E及び平均粒径4μmの球状溶融シリカ(球状溶融シリカ)、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(硬化促進剤)、カップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランKBM−403(カップリング剤)(信越化学株式会社製商品名)を、それぞれ表1〜4に示す組成で配合し、三本ロールにて混練分散した後、真空脱泡して、実施例1〜16及び比較例1〜16の封止用エポキシ樹脂組成物を作製した。各種評価結果を表5〜8に示す。
【0048】
【化5】

【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
【表5】

【0054】
【表6】

【0055】
【表7】

【0056】
【表8】

【0057】
本発明の(C)金属酸化剤を含まない比較例1〜16は充填性に劣り、また耐湿性や耐熱衝撃性といった信頼性も著しく劣っている。
これに対し、本発明の(A)液状エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)金属酸化物を有する実施例1〜16は全て充填性が良好で、耐湿性及び耐熱衝撃性といった信頼性にも優れている。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明になる封止用液状エポキシ樹脂組成物は、実施例で示したように充填性が高く、この封止用エポキシ樹脂組成物を用いて素子を封止すれば耐湿信頼性及び耐熱衝撃性に優れる電子部品装置を得ることができるので、その工業的価値は大である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)液状エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)金属酸化物を含有する樹脂組成物であって、
該金属酸化物は、構成金属成分としてケイ素原子を90〜99.9モル%、ホウ素原子を10〜0.1モル%含有してなることを特徴とする封止用液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)液状エポキシ樹脂は、下記一般式(1);
【化1】

(式中、Xは、−CH−又は−C(CH−を表す。)で表されるものを含有してなることを特徴とする請求項1記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)液状エポキシ樹脂は、下記一般式(2);
【化2】

で表されるものを含有してなることを特徴とする請求項1又は2記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の封止用液状エポキシ樹脂組成物により封止された素子を備えたものであることを特徴とする電子部品装置。


【公開番号】特開2006−219601(P2006−219601A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−35031(P2005−35031)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】