説明

封止膜およびこれを用いた太陽電池

【課題】太陽電池の内部などに含まれる金属腐食の抑制性能及び透明性に優れ、これらをより長期間に亘って維持することが可能な封止膜を提供する。
【解決手段】エチレン−極性モノマー共重合体と、末端にイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物よりなる封止膜。該末端にイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物のイソシアネート基の含有量は、2.0質量%以上であることが好ましい。また、前記末端にイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物が、脂肪族または脂環式ジイソシアネートの重合により形成されたものであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン−極性モノマー共重合体を主成分とする封止膜に関し、特に合わせガラスや太陽電池等における各種板材の貼り合わせに用いられるエチレン−極性モノマー共重合体を主成分とする封止膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、火力発電等の従来の発電方法は、石油、石炭など化石燃料の枯渇、高騰や、二酸化炭素等の温暖化ガスの発生などが問題視されてきている。これに対して、太陽光のエネルギーを直接的に電力に変換する太陽電池が注目され、需要が拡大している。
【0003】
一般に、太陽電池は、シリコン発電素子などの太陽電池用セルとそれを搭載するパネル材で構成されている。このパネル材は、太陽電池用セルを封止する表面側及び裏面側封止膜、およびガラス基板などからなる表面側透明保護部材と裏面側保護部材(バックカバー)などから構成されている。
【0004】
太陽電池において表面側及び裏面側に用いられる封止膜としては、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンエチルアクリレート共重合体(EEA)などのエチレン−極性モノマー共重合体からなるフィルムが用いられている。
【0005】
太陽電池は、室外において高温高湿下や風雨等の条件に曝される環境下で長期にわたって使用されると、電池内部に湿気ないし水が透過する場合がある。このように電池内部に浸入した水分は、太陽電池内部の導線や電極に到達してこれらを腐食させ、結果として、太陽電池の耐久性を低下させる。
【0006】
さらに、太陽電池などの内部に進入した水分は、エチレン−極性モノマー共重合体を加水分解させて酢酸などのカルボン酸やアルコールを生じさせ、さらにアミンを生じさせる場合がある。このようにして生じたカルボン酸は、電池内部の導線や電極などの金属と接触して錆の発生を促進させる。また、アルコールは、太陽電池内部において配線部分などの接着力が弱い部分で発泡し易い。さらに、アミンは、太陽電池を長時にわたって室外に暴露した時に封止膜を黄変させる場合がある。これらは、太陽電池の発電特性の低下や外観不良を招き、結果として太陽電池の耐久性を低下させる。
【0007】
したがって、太陽電池などの耐久性をさらに向上させるには、封止膜中のエチレン−極性モノマー共重合体の加水分解を抑制し、さらには加水分解により生じたカルボン酸、アルコール、アミンなどの劣化因子の発生を抑制することが必要である。
【0008】
そこで、電池内部の導線や電極の腐食を防止して、太陽電池の耐久性を向上させるために、従来では、表面側透明保護部材としてガラス板が用いられる等の対策が採られている。しかしながら、このようにして太陽電池の封止を十分に行ったとしても、発錆を防止して耐久性を十分に向上させるには至っていない。
【0009】
エチレン−極性モノマー共重合体のうち、例えばEVAフィルムは透明性および耐水性に優れることから封止膜として好ましく用いられる。しかしながら、EVAフィルムは、構成成分として酢酸ビニルを含むため、高温時の湿気ないし水の透過により経時的に加水分解して酢酸などのカルボン酸を生じ易い傾向にある。このようなカルボン酸が電池内部の導線や電極と接触して錆の発生を促進させることが明らかとなった。
【0010】
これを解決するため、太陽電池の封止膜などに用いられる透明フィルムとして、平均粒径5μm以下である受酸剤を、0.5質量%以下含むEVAフィルムが提案されている(特許文献1)。前記受酸剤を含むEVAフィルムによれば、フィルムからのカルボン酸の発生を抑制して、太陽電池の耐久性を向上させることが可能となる。
また、受酸剤として未反応イソシアネート基の含有量が1.0重量%以下のカルボジイミド化合物を添加して発生するカルボン酸を補足する事が提案されている。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−29588号公報
【特許文献2】特開2008−291222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、これらの提案された受酸剤は、主に発生するカルボン酸を捕捉する目的で添加されており、加水分解時にあわせて発生する水酸基を補足する能力は極めて乏しい物であった。したがって、加水分解を触媒的に誘発するカルボン酸はこれらの受酸剤で補足できるものの、同時に発生するアルコールやアミンは残ってしまう。その結果、封止膜の発泡や黄変を招く場合がある。
さらに、EVAは脱酢酸により分子構造中に親水性である水酸基が発生するため次第に水蒸気透過率が上昇し、封止膜組成自体の吸水率が上がるので、太陽電池内部に水分が浸入しやすくなり、加水分解を誘発する場合がある。
【0013】
そこで、本発明が目的とするところは、太陽電池の内部などに含まれる金属腐食の抑制性能及び透明性に優れ、これらをより長期間に亘って維持することが可能な封止膜を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、前記封止膜を用いた太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、エチレン−極性モノマー共重合体に末端にイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物を含有させることにより、加水分解を抑制し、金属腐食の抑制性能及び透明性に優れる封止膜が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0016】
すなわち本発明は、
1. エチレン−極性モノマー共重合体と、末端にイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物よりなる封止膜、
2. 末端にイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物におけるイソシアネート基の含有量が2.0質量%以上である1に記載の封止膜、
3. 前記末端にイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物が、ジイソシアネート化合物の重合により形成されたものである1又は2に記載の封止膜、
4. 前記ジイソシアネート化合物が、脂肪族または脂環式ジイソシアネートからなる1〜3に記載の封止膜、
5. 前記カルボジイミド化合物の重合度が、2〜20である1〜4に記載の封止膜、
6. 前記カルボジイミド化合物の含有量が、前記エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して0.05〜2質量部である1〜5に記載の封止膜、
7. さらに有機過酸化物を、エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して0.1〜2質量部含む1〜6に記載の封止膜、
8. 太陽電池用封止膜である1〜7に記載の封止膜。
9. 表面側透明保護部材と裏面側保護部材との間に封止膜を介在させ、架橋一体化させることにより太陽電池用セルを封止してなる太陽電池において、前記封止膜が、8に記載の太陽電池用封止膜であることを特徴とする太陽電池、
を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、長期間に亘って金属の腐食を抑制することができるだけでなく、高い透明性を維持することが可能で、さらにガラス基板、裏面保護部材やシリコン発電素子との接着性に優れた封止膜を提供することができる。このような封止膜を太陽電池用封止膜などとして用いることで、内部に含まれる金属の腐食を防止するとともに、高い透明度により外観意匠性にも優れる太陽電池を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の封止膜は、エチレン−極性モノマー共重合体の他に、末端にイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物を含む。
【0019】
本発明では、末端にイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物を用いることにより、発生する酸成分とカルボジイミド基が反応し、カルバモイル基を、水酸基とイソシアネート基が反応し、ウレタン基を、アミノ基とカルボジイミド基およびイソシアネート基が反応し、グアニジン基およびウレア基を有する化合物を形成することができる。このように、末端にイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物によれば、優れたガスバリア性および低い水蒸気透過性を維持でき、加水分解により生じた太陽電池の劣化要因の発生を高く抑制することができ、太陽電池の内部などに含まれる金属の腐食をさらに長期間に亘って抑制することが可能な封止膜を提供することができる。
【0020】
以下、本発明の封止膜について、より詳細に説明する。
【0021】
(カルボジイミド化合物)
本発明の封止膜に用いられるカルボジイミド化合物は、イソシアネート化合物を用いて形成され、カルボジイミド基すなわち−N=C=N−で表される基を少なくとも一個有する化合物である。
【0022】
本発明において用いられる、カルボジイミド化合物としては、一般的に良く知られた方法で合成されたものを使用することができ、例えば、触媒として有機リン系化合物又は有機金属化合物を用い、各種ポリイソシアネートを約70度以上の温度で、無溶媒又は不活性溶媒中で、脱炭酸縮合反応に付することより合成することができるものを挙げることができる。
【0023】
上記カルボジイミド化合物に含まれるポリカルボジイミド化合物としては、種々の方法で製造したものを使用することができるが、基本的には、従来のポリカルボジイミドの製造方法[例えば、米国特許第2941956号明細書、特公昭47−33279号公報、J.0rg.Chem.28,2069−2075(1963)、Chemical Review l981,Vol.81 No.4、p619−621]により、製造されたものを用いることができる。
【0024】
本発明において用いられるジイソシアネート化合物としては、脂肪族、脂環族、芳香族、または芳香脂肪族ジイソシアネート化合物が挙げられる。具体的には、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメチルジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロへキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
これらのうち、脂肪族、脂環族のジイソシアネートが好ましく、具体的にはシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロへキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートが好ましく、特にイソホロンジイソシアネート、ジシクロへキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート好ましい。脂肪族、脂環族のジイソシアネートを用いると、本発明の封止膜の経時的な黄変を抑制することができる。
【0025】
上記ジイソシアネートの脱炭酸縮合反応は、適当なカルボジイミド化触媒の存在下で行うものであり、使用し得るカルボジイミド化触媒としては、有機リン系化合物、有機金属化合物(一般式M−(OR)4[Mは、チタン(Ti)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、鉛(Pb)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、カルシウム(Ca)やバリウム(Ba)等を、Rは、炭素数1〜20までのアルキル基又はアリール基を示す]で表されるもの)が好適であり、特に活性の面から、有機リン系化合物ではフォスフォレンオキシド類が、また、有機金属化合物ではチタン、ハフニウム、ジルコニウムのアルコキシド類が好ましい。
【0026】
上記フォスフォレンオキシド類としては、具体的には、3−メチル−1−フェニル−2−フォスフォレン−1−オキシド、3−メチル−1−エチル−2−フォスフォレン−1−オキシド、1,3−ジメチル−2−フォスフォレン−1−オキシド、1−フェニル−2−フォスフォレン−1−オキシド、1−エチル−2−フォスフォレン−1−オキシド、1−メチル−2−フォスフォレン−1−オキシド又はこれらの二重結合異性体を例示することができ、中でも工業的に入手の容易な3−メチル−1−フェニル−2−フォスフォレン−1−オキシドが特に好ましい。
【0027】
前記不活性溶媒としては、公知のものが使用される。具体的には、テトラクロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒が挙げられる。これらの溶媒は単独で若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0028】
上記ジイソシアネートの脱炭酸縮合反応において、冷却等により反応を途中で停止させ、適当な重合度に制御することにより、末端にイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物を得ることができる。
【0029】
本発明におけるカルボジイミド化合物は、イソシアネート基の含有量が、2.0質量%以上、好ましくは3.0質量%以上である。これにより、長期間に亘って金属の腐食を抑制することができるだけでなく、高い透明性を長期間に亘り維持することができ、外観意匠性にも優れる封止膜を提供することができる。
【0030】
さらに、イソシアネート基が2.0質量%を下回らない範囲で、所定の含有量に調整するために、カルボジイミド化合物の末端イソシアネートと反応する化合物を用いて、残存する末端イソシアネートの一部を封止する方法を用いることが出来る。
このようなカルボジイミド化合物の末端を封止するためのモノイソシアネートとしては、例えば、フェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、ジメチルフェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート等を例示することができる。
また、カルボジイミド化合物の末端を封止してその重合度を制御する末端封止剤としては、上記モノイソシアネートに限定されることはなく、イソシアネートと反応し得る活性水素化合物、例えば、(i)脂肪族、芳香族又は脂環族化合物であって、−OH基を有するメタノール、エタノール、フェノール、シクロヘキサノール、N−メチルエタノールアミン、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル;(ii)=NH基を有するジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン;(iii)−NH2基を有するブチルアミン、シクロヘキシルアミン;(iv)−COOH基を有するコハク酸、安息香酸、シクロヘキサン酸;(v)−SH基を有するエチルメルカプタン、アリルメルカプタン、チオフェノール;(vi)エポキシ基を有する化合物;(vii)無水酢酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等を例示することができる。
【0031】
本発明におけるカルボジイミド化合物の重合度は、2〜20が好ましい。重合度が2以上であると耐熱性の点で好ましく、重合度が20以下であると相溶性の点で好ましい。また、この範囲にすることにより、エチレン−極性モノマー共重合体との相溶性に優れるカルボジイミド化合物とすることができ、長期間に亘り金属腐食の抑制性能及び透明性に優れる封止膜を形成することができる。
【0032】
本発明の封止膜において、上述したカルボジイミド化合物の含有量は、前記エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して、好ましくは0.05〜2質量部、より好ましくは0.1〜1質量部とするのがよい。前記カルボジイミド化合物の含有量が、0.05質量部未満であるとカルボジイミド化合物による十分な効果が得られない恐れがあり、2質量部を超えると封止膜の透明度が低下する恐れがある。
【0033】
(エチレン−極性モノマー共重合体)
本発明の封止膜に用いられるエチレン−極性モノマー共重合体の極性モノマーとしては、不飽和カルボン酸、その塩、そのエステル、そのアミド、ビニルエステル、一酸化炭素などを例示することができる。より具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸、これら不飽和カルボン酸のリチウム、ナトリウム、カリウムなどの1価金属の塩やマグネシウム、カルシウム、亜鉛などの多価金属の塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル等の不飽和カルボン酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、一酸化炭素、二酸化硫黄などの一種又は二種以上などを例示することができる。
【0034】
エチレン−極性モノマー共重合体としてより具体的には、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体のようなエチレン−不飽和カルボン酸共重合体、前記エチレン−不飽和カルボン酸共重合体のカルボキシル基の一部又は全部が上記金属で中和されたアイオノマー、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン−アクリル酸nブチル共重合体のようなエチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸イソブチル−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸nブチル−メタクリル酸共重合体のようなエチレン−不飽和カルボン酸エステル−不飽和カルボン酸共重合体及びそのカルボキシル基の一部又は全部が上記金属で中和されたアイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体のようなエチレン−ビニルエステル共重合体などを代表例として例示することができる。
【0035】
なかでも、エチレン−極性モノマー共重合体として、最も好ましくは、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)及び/又はエチレンエチルアクリレート共重合体(EEA)が挙げられる。特に好ましくは、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)が挙げられる。これらのエチレン−極性モノマー共重合体であれば、透明度、耐水性に優れる封止膜を安価に形成することができる。
【0036】
エチレン−極性モノマー共重合体における極性モノマーの含有量は、前記エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して20〜35質量部、さらに22〜30質量部、特に24〜28質量部とするのが好ましい。極性モノマーの含有量が、20質量部未満であると、高温で架橋硬化させる場合に得られる封止膜の透明度が充分でない恐れがあり、35質量部を超えると、カルボン酸、アルコール、アミン等が発生しやすくなる恐れがある。
【0037】
(架橋剤)
さらに、本発明の封止膜は、エチレン−極性モノマー共重合体およびカルボジイミド化合物の他に、架橋剤を含むのが好ましい。これにより、架橋の際の高い反応性を維持しながら、耐久性を向上することができる。
【0038】
前記封止膜に用いられる架橋剤としては、有機過酸化物又は光重合開始剤を用いることが好ましい。なかでも、接着力、透明性、耐湿性、耐貫通性の温度依存性が改善された封止膜が得られることから、有機過酸化物を用いるのが好ましい。
【0039】
前記有機過酸化物としては、100℃以上の温度で分解してラジカルを発生するものであれば、どのようなものでも使用することができる。有機過酸化物は、一般に、成膜温度、組成物の調整条件、硬化温度、被着体の耐熱性、貯蔵安定性を考慮して選択される。特に、半減期10時間の分解温度が70℃以上のものが好ましい。
【0040】
前記有機過酸化物としては、樹脂の加工温度・貯蔵安定性の観点から例えば、ベンゾイルパーオキサイド系硬化剤、tert−ヘキシルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ジ−n−オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、スクシニックアシドパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、4−メチルベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、m−トルオイル+ベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキサシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサネート、2,2−ビス(4,4−ジ−tert−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、tert−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシマレイックアシド、tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、tert−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、等が挙げられる。
【0041】
前記ベンゾイルパーオキサイド系硬化剤としては、70℃以上の温度で分解してラジカルを発生するものであればいずれも使用可能であるが、半減期10時間の分解温度が50℃以上のものが好ましく、調製条件、成膜温度、硬化(貼り合わせ)温度、被着体の耐熱性、貯蔵安定性を考慮して適宜選択できる。使用可能なベンゾイルパーオキサイド系硬化剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ビスパーオキシベンゾエート、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。ベンゾイルパーオキサイド系硬化剤は1種でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
前記封止膜において、前記有機過酸化物の含有量は、エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して、好ましくは0.1〜2質量部、より好ましくは0.2〜1.5質量部であることが好ましい。前記有機過酸化物の含有量は、少ないと得られる封止膜の透明性が低下する恐れがあり、多くなると共重合体との相溶性が悪くなる恐れがある。
【0043】
また、光重合開始剤としては、公知のどのような光重合開始剤でも使用することができるが、配合後の貯蔵安定性の良いものが望ましい。このような光重合開始剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフェノン系、ベンジルジメチルケタ−ルなどのベンゾイン系、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、イソプロピルチオキサントン、2−4−ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン系、その他特殊なものとしては、メチルフェニルグリオキシレ−トなどが使用できる。特に好ましくは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾフェノン等が挙げられる。これら光重合開始剤は、必要に応じて、4−ジメチルアミノ安息香酸のごとき安息香酸系又は、第3級アミン系などの公知慣用の光重合促進剤の1種または2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。また、光重合開始剤のみの1種単独または2種以上の混合で使用することができる。
【0044】
前記封止膜において、前記光重合開始剤の含有量は、エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して0.5〜5.0質量部であることが好ましい。
【0045】
(架橋助剤)
前記架橋助剤は、エチレン−極性モノマー共重合体のゲル分率を向上させ、耐久性を向上させるために組成物に添加することができる。この目的に供される架橋助剤(官能基としてラジカル重合性基を有する化合物)としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の3官能の架橋助剤の他、(メタ)アクリルエステル(例、NKエステル等)の単官能又は2官能の架橋助剤等を挙げることができる。なかでも、トリアリルシアヌレートおよびトリアリルイソシアヌレートが好ましく、特にトリアリルイソシアヌレートが好ましい。これらの架橋助剤は、エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、一般に10質量部以下、好ましくは0.1〜5質量部で使用される。
【0046】
(その他)
前記封止膜は、膜の種々の物性(機械的強度、接着性、透明性等の光学的特性、耐熱性、耐光性、架橋速度等)の改良あるいは調整、特に機械的強度の改良のため、必要に応じて、受酸剤、可塑剤、接着向上剤、アクリロキシ基含有化合物、メタクリロキシ基含有化合物及び/又はエポキシ基含有化合物などの各種添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0047】
前記受酸剤としては、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸化物又は複合金属水酸化物が用いられ、発生する酢酸の量、及び用途に応じ適宜選択することができる。前記受酸剤として、具体的には、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、硼酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フタル酸カルシウム、亜燐酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ホウ酸マグネシウム、メタホウ酸マグネシウム、メタホウ酸カルシウム、メタホウ酸バリウムなどの周期律表第2族金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、珪酸塩、硼酸塩、亜燐酸塩、メタホウ酸塩など;酸化錫、塩基性炭酸錫、ステアリン酸錫、塩基性亜燐酸錫、塩基性亜硫酸錫、四酸化三鉛、酸化ケイ素、ステアリン酸ケイ素などの周期律表第14族金属の酸化物、塩基性炭酸塩、塩基性カルボン酸塩、塩基性亜燐酸塩、塩基性亜硫酸塩など;酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄;ハイドロタルサイト類等の複合金属水酸化物;水酸化アルミニウムゲル化合物;などが挙げられる。これらは一種単独で用いられてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0048】
前記封止膜において、受酸剤の含有量は、前記エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して、好ましくは0.01〜0.15質量部とするのがよい。
【0049】
前記可塑剤としては、特に限定されるものではないが、一般に多塩基酸のエステル、多価アルコールのエステルが使用される。その例としては、ジオクチルフタレート、ジヘキシルアジペート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、ブチルセバケート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、トリエチレングリコールジペラルゴネートを挙げることができる。可塑剤は一種用いてもよく、二種以上組み合わせて使用しても良い。可塑剤の含有量は、エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して5質量部以下の範囲が好ましい。
【0050】
前記接着向上剤は、シランカップリング剤を用いることができる。これにより、優れた接着力を有する封止膜を形成することが可能となる。前記シランカップリング剤としては、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。これらシランカップリング剤は、単独で使用しても、又は2種以上組み合わせて使用しても良い。また前記接着向上剤の含有量は、エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して5質量部以下であることが好ましい。
【0051】
前記アクリロキシ基含有化合物及び前記メタクリロキシ基含有化合物としては、一般にアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体であり、例えばアクリル酸あるいはメタクリル酸のエステルやアミドを挙げることができる。エステル残基の例としては、メチル、エチル、ドデシル、ステアリル、ラウリル等の直鎖状のアルキル基、シクロヘキシル基、テトラヒドルフルフリル基、アミノエチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプオピル基を挙げることができる。アミドの例としては、ジアセトンアクリルアミドを挙げることができる。また、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールとアクリル酸あるいはメタクリル酸のエステルも挙げることができる。
【0052】
前記エポキシ含有化合物としては、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノール(エチレンオキシ)5グリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、グリシジルメタクリレート、ブチルグリシジルエーテルを挙げることができる。
【0053】
前記アクリロキシ基含有化合物、前記メタクリロキシ基含有化合物、または前記エポキシ基含有化合物は、それぞれエチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対してそれぞれ一般に0.5〜5.0質量部、特に1.0〜4.0質量部含まれていることが好ましい。
【0054】
さらに、前記封止膜は、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤および老化防止剤を含んでいてもよい。
【0055】
本発明の封止膜が紫外線吸収剤を含むことにより、照射された光などの影響によってエチレン−極性モノマー共重合体の劣化し、封止膜が黄変するのを抑制することができる。前記紫外線吸収剤としては、特に制限されないが、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物又はヒドロキシルアミン系化合物、ベンゾフェノン系化合物から選ばれる少なくとも一種の紫外線吸収剤が挙げられる。
【0056】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、通常、有機系紫外線吸収剤として用いられているものや、ペプチド縮合反応の際に用いられるものなどが挙げられ、単にベンゾトリアゾールやその誘導体であってもよい。紫外線吸収剤として用いられているベンゾトリアゾール系化合物としては、通常、紫外線吸収剤として用いられているものならば特に制限なく、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。具体的には、例えば、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の「チヌビン(TINUVIN)234」、「チヌビン320」、「チヌビン326」、「チヌビン327」、「チヌビン328」、「チヌビンP」や、住友化学株式会社製の「Sumisorb340」、旭電化工業株式会社製の「アデカスタブLA−31」などが挙げられる。また、ペプチド縮合反応の際に用いられるベンゾトリアゾール系化合物としては、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール(又は1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)や、その誘導体などが挙げられる。
【0057】
トリアジン系化合物としては、通常、有機系紫外線吸収剤として用いられているものや、分子中に少なくとも一つのアミノ基を有するトリアジン誘導体などが挙げられる。紫外線吸収剤として用いられているトリアジン系化合物としては、通常紫外線吸収剤として用いられているものならば特に制限なく、例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノール、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−[(オクチル)オキシ]フェノールなどを挙げることができ、具体的には、例えば、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の「チヌビン(TINUVIN)1577」や、サイテック・インダストリー社製の「Cyasorb(サイアソーブ) UV−1164」などが挙げられる。また、分子中に少なくとも一つのアミノ基を有するトリアジン誘導体としては、例えば、2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン(又はメラミン)、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン(又はベンゾグアナミン)、2,4−ジアミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2−(ドデカシルアミノ)エチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(o−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、4,6−ジアミノ−1,2ージヒドロ−2,2−ジメチル−1−(2,6−キシリル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2−メトキシエチル)−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−エチル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−フェニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−エチル−6−メチル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−エチル−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−メチル−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどが例示される。具体的には、例えば、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の「IRGANOX565」、「CHIMASSORB119 FL」などが挙げられる。本発明で使用するトリアジン誘導体は、これらに限定されるものではなく、分子中に少なくとも一つのアミノ基を有するトリアジン誘導体であれば、いずれも使用することができる。
【0058】
ヒドロキシルアミン系化合物としては、ペプチド縮合反応の際に用いられるものなどが挙げられ、例えば、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)、N−ヒドロキシスクシンイミド、それらの誘導体などが挙げられる。尚、N−ヒドロキシベンゾトリアゾールは、前記のベンゾトリアゾール系化合物にも例示しているものである。
【0059】
ベンゾフェノン系化合物としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン等が好ましく挙げられる。
【0060】
本発明の封止膜が酸化防止剤を含むことにより、熱酸化劣化による樹脂の脆弱化を抑制することができる。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤等を例示することができる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、4,4’−メチレン−ビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)(MW=420)や、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(MW=531)(チバスペシャルティケミカル社販売の商品名イルガノックス1076)、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](MW=1178)(チバスペシャルティケミカル社販売の商品名イルガノックス1010)、3,9−ビス[2−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(MW=741)(住友化学社販売の商品名スミライザーGA−80)などが挙げられる。
フォスファイト系酸化防止剤としては、例えば、トリス−(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(チバスペシャルティケミカル社販売の商品名イルガフォス168、旭電化工業社販売の商品名アデカスタブ2112等)やビス−(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジフォスファイト(チバスペシャルティケミカル社販売の商品名イルガフォス126、旭電化工業社販売の商品名アデカスタブPEP−24G等)、ビス−(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジフォスファイト(旭電化工業社販売の商品名アデカスタブPEP−36)、ジステアリル−ペンタエリスリトール−ジフォスファイト(旭電化工業社販売の商品名アデカスタブPEP−8、城北化学社販売の商品名JPP−2000等)、[ビス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェノキシ)ホスフィノ]ビフェニル(大崎工業株式会社販売のGSY−P101)、N,N−bis[2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン−6−yl]oxy]−エチル]エタンアミン(チバスペシャルティケミカル社販売の商品名イルガフォス12)などが挙げられる。
【0061】
本発明の封止膜が光安定剤を含むことによっても、照射された光などの影響によってエチレン−極性モノマー共重合体の劣化し、封止膜が黄変するのを抑制することができる。前記光安定剤としてはヒンダードアミン系と呼ばれる光安定剤を用いることが好ましく、例えば、LA−52、LA−57、LA−62、LA−63LA―63p、LA−67、LA−68(いずれも(株)ADEKA製)、Tinuvin744、Tinuvin 770、Tinuvin 765、Tinuvin144、Tinuvin 622LD、CHIMASSORB 944LD(いずれもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)社製)、UV−3034(B.F.グッドリッチ社製)等を挙げることができる。なお、上記光安定剤は、単独で使用しても、2種以上組み合わせて用いてもよく、その配合量は、エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましい。
【0062】
前記老化防止剤としては、例えばN,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド〕等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤、ラクトン系熱安定剤、ビタミンE系熱安定剤、イオウ系熱安定剤等が挙げられる。
【0063】
上述した本発明の封止膜を形成するには、上述した各種成分を含む組成物を、通常の押出成形、又はカレンダ成形(カレンダリング)等により成形してシート状物を得る方法を用いることができる。また、前記組成物を溶剤に溶解させ、この溶液を適当な塗布機(コーター)で適当な支持体上に塗布、乾燥して塗膜を形成することによりシート状物を得ることもできる。押出成形等を用いて加熱圧延することによって成膜する場合、加熱は一般に50〜90℃の範囲である。
【0064】
前記封止膜の厚さは、特に制限されないが、50μm〜2mmの範囲であればよい。
【0065】
上述した封止膜によれば、太陽電池内部に浸入した水分によるエチレン−極性モノマー共重合体の加水分解の他、加水分解により生じたカルボン酸、アルコール、アミンなどの劣化因子の発生を抑制することができる。したがって、電池内部などに含まれる金属の腐食などを抑制することが、太陽電池用封止膜として好ましく用いられる。
【0066】
本発明による太陽電池用封止膜を用いた太陽電池の構造は、特に制限されないが、表面側透明保護部材と裏面側保護部材との間に、前記太陽電池用封止膜を介して架橋一体化させることにより太陽電池用セルを封止した構造などが挙げられる。
【0067】
前記太陽電池において、太陽電池用セルを十分に封止するには、表面側透明保護部材、表面側封止膜1、太陽電池用セル、裏面側封止膜及び裏面側保護部材を積層し、加熱加圧など常法に従って、封止膜を架橋硬化させればよい。
【0068】
前記加熱加圧するには、例えば、前記積層体を、真空ラミネータで温度135〜180℃、さらに140〜180℃、特に155〜180℃、脱気時間0.1〜5分、プレス圧力0.1〜1.5kg/cm2、プレス時間5〜15分で加熱圧着すればよい。この加熱加圧時に、表面側封止膜および裏面側封止膜に含まれるエチレン−極性モノマー共重合体を架橋させることにより、表面側封止膜および裏面側封止膜を介して、表面側透明保護部材、裏面側透明部材、および太陽電池用セルを一体化させて、太陽電池用セルを封止することができる。
【0069】
本発明の太陽電池に使用される表面側透明保護部材は、通常珪酸塩ガラスなどのガラス基板であるのがよい。ガラス基板の厚さは、0.1〜10mmが一般的であり、0.3〜5mmが好ましい。ガラス基板は、一般に、化学的に、或いは熱的に強化させたものであってもよい。
【0070】
本発明で使用される裏面側保護部材は、PETなどのプラスチックフィルムであるが、耐熱性、耐湿熱性を考慮してフッ化ポリエチレンフィルム、特にフッ化ポリエチレンフィルム/Al/フッ化ポリエチレンフィルムをこの順で積層させたフィルムが好ましい。
【0071】
なお、本発明の太陽電池は、上述した通り、表面側および裏面側に用いられる封止膜に特徴を有する。したがって、表面側透明保護部材、裏面側保護部材、および太陽電池用セルなどの前記封止膜以外の部材については、従来公知の太陽電池と同様の構成を有していればよく、特に制限されない。
【0072】
また、封止膜の用途として、上記では主に太陽電池について説明したが、これに限定されず、金属を有する各種板材の貼り合わせに用いられる。例えば、金属膜または金属酸化物膜などの熱線遮蔽膜を有する熱線遮蔽合わせガラスなどにも使用することができる。このような用途であっても、本発明の封止膜は、長期間に亘って金属や金属酸化物の腐食や黄変の発生が抑制された優れた特性を発揮することができる。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を実施例により説明する。本発明は、以下の実施例により制限されるものではない。
【0074】
[吸水率]
JIS K7209に従い、試験片(50mm×50mm×3mm)を各3枚作成し、耐湿熱試験の前後において乾燥時の重量およびイオン交換水24時間浸漬後の重量を測定することにより吸水率(%)の平均を算出した。
【0075】
[耐湿熱試験]
恒温恒湿試験機(AGX-225 ADVANTEC社製)を使用し、80℃95%RHの条件でサンプル片を暴露させた。
【0076】
[重量減少率]
作成した試験片の耐湿熱試験前後の重量を50±2℃に保った恒温槽中で24時間乾燥し、デシケーター中で放冷後測定し、重量変化率を算出した。
【0077】
[耐候性試験]
作成した試験片を、スーパーキセノンウェザーメーターSC-750(スガ試験機株式会社製)を用いて、100W/m、ブラックパネル温度63℃にて暴露させた。
【0078】
[全光線透過率]
作成した試験片の耐候性試験前後の全光線透過率を、ヘイズメーターNDH5000(日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。
【0079】
[黄色度試験]
作成した試験片の耐候性試験前後の黄色度(YI)を、簡易型色差計NF333(日本電色工業株式会社製)を用い、C光源を使用し視野角2°で測定した。
【0080】
合成例での各分析は以下の方法にて行った。
(1)赤外吸収(IR)スペクトル
FTIR−8200PC(株式会社島津製作所製)を使用した。
(2)GPC
RI検出器:RID−6A(株式会社島津製作所製)
カラム:KF−806、KF−804L、KF−804L
展開溶媒:THF 1ml/min.
ポリスチレン換算により算出した。
(3)NCO%
平沼自動滴定装置COM−900(平沼産業株式会社製)、タイトステーションK−900(平沼産業株式会社製)を使用し、既知濃度のジブチルアミン/トルエン溶液を加え、塩酸水溶液で電気差滴定により算出した。
【0081】
<合成例1>
攪拌モーター、窒素ガスバブリング管および冷却管を付けたフラスコに4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート1000gと3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド10.0gを加え、窒素ガスバブリングを行ないながら、185℃で18時間カルボジイミド化反応を行なった。得られたカルボジイミドの重合度は15で、NCO基含有量は、2.38質量%であった。赤外吸収(IR)スペクトル測定により波長2150cm−1前後のカルボジイミド基による吸収ピークと波長2200〜2300cm−1のイソシアネート基による吸収ピークを確認した。GPCの測定により、ポリスチレン換算数平均分子量は4061であった。
【0082】
<合成例2>
攪拌モーター、窒素ガスバブリング管および冷却管を付けたフラスコに4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート1000gと3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド10.0gを加え、窒素ガスバブリングを行ないながら、185℃で8時間カルボジイミド化反応を行なった。得られたカルボジイミドの重合度は3で、NCO基含有量は、9.16質量%であった。赤外吸収(IR)スペクトル測定により波長2150cm−1前後のカルボジイミド基による吸収ピークと波長2200〜2300cm−1のイソシアネート基による吸収ピークを確認した。GPCの測定により、ポリスチレン換算数平均分子量は1575であった。
【0083】
<合成例3>
攪拌モーター、窒素ガスバブリング管および冷却管を付けたフラスコに4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート576.4gと末端封止剤として、シクロヘキシルイソシアネート50gおよび、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド6.0gを加え、窒素ガスバブリングを行ないながら、185℃で30時間カルボジイミド化反応させた後、赤外吸収(IR)スペクトル測定により波長2200〜2300cm−1のイソシアネート基の吸収が消失したことを確認した後冷却して、4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドの末端が封止されたカルボジイミド(重合度=10)を得た。GPCの測定により、ポリスチレン換算数平均分子量は3474であった。
【0084】
<実施例1>
ローラーミキサーR60H(東洋精機社製)に硬化剤として過酸化物を含むエチレン酢酸ビニル共重合体(以下EVAと略す)50重量部と合成例1で合成したポリカルボジイミド(以下PCDと略す)0.25重量部を各々投入し80℃にて5分間混練を行った。その後、80℃で圧延し厚み10mmのフィルム状に成形し、作成した試験片の両面に離型処理されたポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す)フィルムで挟み、3mmのスペーサーを入れ、真空プレス機にて脱気時間5分、プレス圧力1.0kg/cm2、プレス時間15分加熱温度150℃で加熱圧着し過酸化物で硬化させた厚み3mmの試験片を作成した。その後、離型処理PETを剥がし50mm×50mmに切り出した物を試験片とした。
【0085】
<実施例2>
ポリカルボジイミドを合成例2で合成したPCDに変更した以外は実施例1と同様に試験片を作成した。
【0086】
<比較例1>
ポリカルボジイミドを合成例3で合成したPCDに変更した以外は実施例1と同様に試験片を作成した。
【0087】
<比較例2>
ポリカルボジイミドを4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)に変更した以外は実施例1と同様に試験片を作成した。
【0088】
<比較例3>
添加剤を加えずにEVA50重量部のみを投入し、実施例1と同様に試験片を作成した。
【0089】
上記記載の各試験片を初期吸水率、湿熱試験100時間後の吸水率および湿熱試験100時間後の重量減少率を測定した。結果を表1に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
実施例1,2は初期吸水率の低減および湿熱試験後の吸水率、重量減少率すべてにおいて比較例1〜3に勝っており、長期間過酷な環境下にさらされる太陽電池封止膜として適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン−極性モノマー共重合体と、末端にイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物よりなる封止膜。
【請求項2】
末端にイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物におけるイソシアネート基の含有量が2.0質量%以上である請求項1に記載の封止膜。
【請求項3】
前記末端にイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物が、ジイソシアネート化合物の重合により形成されたものである請求項1又は2のいずれか1項に記載の封止膜。
【請求項4】
前記ジイソシアネート化合物が、脂肪族または脂環式ジイソシアネートからなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の封止膜。
【請求項5】
前記カルボジイミド化合物の重合度が、2〜20である請求項1〜4のいずれか1項に記載の封止膜。
【請求項6】
前記カルボジイミド化合物の含有量が、前記エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して0.05〜2質量部である請求項1〜5のいずれか1項に記載の封止膜。
【請求項7】
さらに有機過酸化物を、エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して0.1〜2質量部含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の封止膜。
【請求項8】
太陽電池用封止膜である請求項1〜7のいずれか1項に記載の封止膜。
【請求項9】
表面側透明保護部材と裏面側保護部材との間に封止膜を介在させ、架橋一体化させることにより太陽電池用セルを封止してなる太陽電池において、
前記封止膜が、請求項8に記載の太陽電池用封止膜であることを特徴とする太陽電池。



【公開番号】特開2011−26562(P2011−26562A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140039(P2010−140039)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000004374)日清紡ホールディングス株式会社 (370)
【Fターム(参考)】