説明

封止部材挿入用押圧部材付きガイドワイヤー及び薬液注入用カテーテル装置

【課題】 カテーテルの先端開口と側孔のいずれかから薬液の注入が可能なようにカテーテルの先端部内腔に挿入する封止部材を、カテーテルが体内で屈曲している場合でも簡易に挿入することができ、しかも封止部材に付属するガイドワイヤーが折損することもない封止部材挿入用押圧部材付きガイドワイヤー等を提供すること。
【解決手段】 先端開口11のカテーテル本体の先端部にバルーン12が設けられ、該バルーンより後方に側孔13が設けられ、該側孔と先端開口のいずれかをカテーテル本体内の基端側から先端側の所定位置まで挿入される封止部材付きガイドワイヤー3の先端部に設けた封止部材16で封止して薬液を選択的に注出可能とする薬液注入用カテーテルに用いられるものであって、封止部材の挿入時に該封止部材をその後面から押し込みカテーテル本体内の基端側から先端側の所定位置まで挿入する押圧部材20を先端部に有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、封止部材挿入用押圧部材付きガイドワイヤー及び薬液注入用カテーテル装置に関し、さらに詳しくは例えばコアキシャル型バルーン付きマイクロカテーテルの薬液注入に使用する封止部材付きガイドワイヤーを簡易に押し込んで挿入することができる技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
近年の血管内治療ではマイクロカテーテルと呼ばれる外径1.0mm〜1.3mmの細径カテーテルをガイドワイヤーに沿って目的部位までを誘導し、カテーテルの先端開口から抗がん剤等の薬液を流して治療を行っている。しかし、血管は幾つにも分岐しており、時にはカテーテルの先端開口から薬液を流すと目的以外の血管にも薬液が流れ不具合を起こしてしまう。そこで、カテーテルのバルーンより手元側(後方側)に側孔を設け、カテーテルを分岐している健常部側血管へ進め、バルーンを膨らませ側孔から薬液を流すことで、健常部側への薬液の流入はバルーンで堰きとめられ、目的部位だけに薬液を流すことが可能となる。このような形状のバルーンカテーテルは2ルーメン、3ルーメンチューブを使用したバルーンカテーテルとして既に知られている。しかし、マイクロカテーテルのような外径の細いチューブでは、個々の内腔が小さくなってしまい、粘性の高い薬液は抵抗により治療効果の得られる量を注入することが困難である。
【0003】
そこで、マイクロカテーテルでは同軸構造のチューブを使用し、内側チューブの内腔をガイドワイヤー及び薬液注入ルーメン、内側チューブと外側チューブの環状隙間となった内腔をバルーンルーメンとして、主腔の大きさをかせいでいる。また、マイクロカテーテルは、血管挿入時にガイドワイヤーを用いて誘導するため、カテーテル先端はガイドワイヤーが挿入できるよう開口しており、バルーンより手元側の側孔と連通している。この形状のカテーテルに薬液を注入しても、薬液は側孔と先端開口の両方から流れてしまう。
【0004】
そこで、チューブ先端部の内腔に嵌合する封止部材を薬液注入前にカテーテル内腔に挿入し、カテーテル先端部を封止部材で閉塞することにより、薬液が側孔だけから流れるようにすることも行われている。この封止部材は、細いガイドワイヤーの先端にカテーテル内腔と同じ大きさのチップを設けた形状をしていることからガイドワイヤーの外径を太くする必要があって、カテーテル内腔との隙間が狭くなり薬液注入時の抵抗が増してしまうので、ガイドワイヤーはなるべく細い外径とすることが望ましいのであるが、封止部材付きガイドワイヤーの外径を細くすると剛性が低下し、カテーテルが体内で屈曲したりしている場合、挿入することが困難となったり、ガイドワイヤーが折損して封止部材が挿入できなくなるという問題があった。
【0005】
特許文献1には前記した封止部材と同様な封止部材がカテーテル本体の内腔を先端部で閉塞可能にした構成が開示されている。この封止部材も前記封止部材と似た機能をもっているが、これでもガイドワイヤーの外径を細くすると剛性が低下し、カテーテルが体内で屈曲したりして挿入が困難となったりして、前記した問題点は解決できず、問題点解決の課題は依然として残る。そこで、本発明者等は研究を重ねた結果、封止部材付きガイドワイヤーの挿入をサポートするための補助的なディバイスを発明するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−153000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
すなわち、この発明の目的は、前記のような従来の問題点を解決して、カテーテルの先端開口と側孔のいずれかから薬液の注入が可能なようにカテーテルの先端部内腔に挿入する封止部材を、カテーテルが体内で屈曲している場合でも簡易に挿入することができ、しかも封止部材に付属するガイドワイヤーが折損することもない封止部材挿入用押圧部材付きガイドワイヤー及び薬液注入用カテーテル装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、先端開口のカテーテル本体の先端部にバルーンが設けられ、該バルーンより後方に側孔が設けられ、該側孔と先端開口のいずれかをカテーテル本体内の基端側から先端側の所定位置まで挿入される封止部材付きガイドワイヤーの先端部に設けた封止部材で封止して薬液を選択的に注出可能とする薬液注入用カテーテルに用いられるものであって、前記封止部材の挿入時に該封止部材をその後面から押し込みカテーテル本体内の基端側から先端側の所定位置まで挿入する押圧部材を先端部に有することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、押圧部材は、封止部材の後面に取り付けられたガイドワイヤーを挿通するスリットが軸方向にその外周面から内部に向けて切り欠き形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、封止部材は、略円柱状体を呈し、その外周面がカテーテル本体の先端側に細くなるテーパー加工された先端部内周面に摺接して先端開口を封止するようにテーパー加工されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2において、封止部材は、略中空円筒状体を呈し、その外周面がカテーテル本体の先端側に細くなるテーパー加工された先端部内周面に摺接して側孔を封止するようにテーパー加工されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、薬液注入用カテーテル装置であって、先端開口のカテーテル本体の先端部にバルーンが設けられ、該バルーンより後方に側孔が設けられた薬液注入用カテーテルと、先端部に封止部材を有し、該封止部材を前記薬液注入用カテーテルのカテーテル本体内の基端側から先端側の所定位置まで挿入することにより前記側孔と先端開口のいずれかを封止し薬液を選択的に注出可能とする封止部材付きガイドワイヤーと、先端部に押圧部材を有し、該押圧部材を前記封止部材の挿入時に該封止部材の後面から押し込むことにより前記封止部材を前記薬液注入用カテーテルのカテーテル本体内の基端側から先端側の所定位置まで挿入する封止部材挿入用押圧部材付きガイドワイヤーと、を具えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、前記のようであって、請求項1ないし4に記載の発明によれば、先端開口のカテーテル本体の先端部にバルーンが設けられ、該バルーンより後方に側孔が設けられ、該側孔と先端開口のいずれかをカテーテル本体内の基端側から先端側の所定位置まで挿入される封止部材付きガイドワイヤーの先端部に設けた封止部材で封止して薬液を選択的に注出可能とする薬液注入用カテーテルに用いられるものであって、前記封止部材の挿入時に該封止部材をその後面から押し込みカテーテル本体内の基端側から先端側の所定位置まで挿入する押圧部材を先端部に有するので、カテーテルの先端開口と側孔のいずれかから薬液の注入が可能なようにカテーテルの先端部内腔に挿入する封止部材を、従来のようにカテーテルが体内で屈曲している場合でも簡易に挿入することができ、しかも封止部材に付属するガイドワイヤーが折損することもないという効果が期待できる。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、薬液注入用カテーテル装置であって、先端開口のカテーテル本体の先端部にバルーンが設けられ、該バルーンより後方に側孔が設けられた薬液注入用カテーテルと、先端部に封止部材を有し、該封止部材を前記薬液注入用カテーテルのカテーテル本体内の基端側から先端側の所定位置まで挿入することにより前記側孔と先端開口のいずれかを封止し薬液を選択的に注出可能とする封止部材付きガイドワイヤーと、先端部に押圧部材を有し、該押圧部材を前記封止部材の挿入時に該封止部材の後面から押し込むことにより前記封止部材を前記薬液注入用カテーテルのカテーテル本体内の基端側から先端側の所定位置まで挿入する封止部材挿入用押圧部材付きガイドワイヤーと、を具えているので、封止部材挿入用押圧部材付きガイドワイヤーを、側孔と先端開口のいずれかを封止部材で封止して薬液を選択的に注出可能とする封止部材付きガイドワイヤー及び薬液注入用カテーテルとセットで提供することができる効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の一実施の形態に係る薬液注入用カテーテル装置を示す一部省略した全体概略図である。
【図2】同上のカテーテル先端部の拡大縦断正面図である。
【図3】同上の封止部材付きガイドワイヤーを示し、(A)は一部省略した正面図、(B)は側面図である。
【図4】別の封止部材付きガイドワイヤーを示すカテーテル先端部の拡大縦断正面図である。
【図5】同上の封止部材付きガイドワイヤーを示し、(A)は一部省略した正面図、(B)は側面図である。
【図6】封止部材挿入用押圧部材付きガイドワイヤーを示し、(A)は一部省略した正面図、(B)は側面図である。
【図7】側孔からの薬液注入の例を示す作用説明図である。
【図8】先端開口からの薬液注入の例を示す作用説明図である。
【図9】血管内に挿入した後の薬液注入状態を示す作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、この発明の一実施の形態に係る薬液注入用カテーテル装置について説明する。
【0017】
図1において、1は薬液注入用カテーテル装置であり、この薬液注入用カテーテル装置1は、薬液注入用カテーテル2と、封止部材付きガイドワイヤー3,4と、封止部材挿入用押圧部材付きガイドワイヤー5と、を具えている。
【0018】
薬液注入用カテーテル2は、外径1.0mm〜1.3mmの細径マイクロカテーテルからなっている。すなわち、このカテーテル2は図2にその先端部を拡大して詳示するようにカテーテル本体として内側チューブ6と外側チューブ7を同軸状に有し、内側チューブ6の内腔をガイドワイヤー3,4の挿入及び薬液注入用ルーメン8、内側チューブ6と外側チューブ7の環状隙間となった内腔をバルーンルーメン9としており、その主腔(内側チューブ6の内腔)は、カテーテル先端部で先端側に細く小径となるテーパー加工がされ、先端が開口11されている。外側チューブ7は同図から明らかなように内側チューブ6より先端方向の長さがやや短くなっている。
【0019】
カテーテル本体の先端部となる、内側チューブ6と外側チューブ7の各先端間の外周にはバルーン12が跨って設けられ、該バルーン部位より後方側(手元側)には側孔13が設けられている。側孔13は内側チューブ6と外側チューブ7の同位置に薬液注入用ルーメン8からの薬液がバルーンルーメン9へ流れずに直に外部に流れるように外側チューブ7の側孔口縁が内側チューブ6の側孔口縁に接着した形に設けられている。前記の先端開口11と側孔13は薬液注入口の役目を果たす。バルーン12内に位置する外側チューブ7の先端も開口14されており、この開口からはバルーン12を膨らませるための滅菌水がバルーンルーメン9を経て注入されるようになっている。
【0020】
封止部材付きガイドワイヤー3は、図3にも示すようにその外周面が内側チューブ6の先端部内周面に摺接して先端開口11を封止する位置に納まるようにテーパー加工された先細形状の封止部材16を先端部に有し、該封止部材を内側チューブ6の内腔に挿入、抜去することが可能になっている。封止部材16は略円柱状体を呈し、その外周面が後端から先端にかけてやや緩やかに小径となったテーパー状に、さらにその先に向けて急激に小径となったテーパー状(円錐状)に形成されている。そして後端面の中心部にガイドワイヤー3の先端が固着して取り付けられている。したがって、この封止部材付きガイドワイヤー3をその先端の封止部材16側から内側チューブ6に挿入すると、目的部位である図示した先端側の所定位置で内側チューブ6の内腔の先端部内周面と封止部材16の外周面が摺接して密に嵌合し、内側チューブ6の先端開口11から封止部材16が突出することなく内側チューブ6の先端開口11を塞ぐことが可能となっている。
【0021】
もう1つの封止部材付きガイドワイヤー4は、図4,5に示すように先端開口11ではなく、側孔13を閉塞するときに用いられる。すなわち、このガイドワイヤー4はその外周面が内側チューブ6の先端部内周面に摺接して側孔13を封止する位置に納まるように形成された封止部材18を先端部に有し、該封止部材を内側チューブ6の内腔に挿入、抜去することが可能になっている。封止部材18は略中空円筒体を呈し、その外周面が後端から先端にかけて極く緩やかに小径となったテーパー状に形成されている。そして後端面の外周縁にガイドワイヤー4の先端が固着して取り付けられている。したがって、この封止部材付きガイドワイヤー4を内側チューブ6に挿入すると、目的部位である図示した先端側の所定位置で内側チューブ6の先端部内周面と封止部材18の外周面が摺接して密に嵌合し、側孔13を塞ぐことが可能となっている。
【0022】
封止部材挿入用押圧部材付きガイドワイヤー5は、図6に示すように封止部材付きガイドワイヤー3又は封止部材付きガイドワイヤー4を内側チューブ6の先端部に押し込むプッシャーディバイスとしての略円柱状の押圧部材20を先端部に有し、該押圧部材を内側チューブ6の内腔に挿入、抜去することが可能になっている。押圧部材20は封止部材16,18の後端と同じ外径かそれよりやや小径に形成されており、その外周面から内部に向けて封止部材16の後面に先端が取り付けられたガイドワイヤー3,4を挿通するためのスリット21がその軸方向中心孔22と連通して軸方向に切り欠き形成されている。すなわち、スリット21は図6にも示すように外周面から軸方向中心孔22に向けて直線状に切り欠かれており、ガイドワイヤー3を外周面側からスリット21を通過させて軸方向中心孔22に位置させ、この軸方向中心孔22内で摺動可能に保持できるようになっている。そして後端面におけるスリット21が形成された側と反対側の外周縁にガイドワイヤー5の先端が固着して取り付けられている。
【0023】
ガイドワイヤー5は内側チューブ6の内腔を通過する太さで、かつ押圧部材20を介して封止部材16,18を押し込める剛性があればどのような太さでも構わない。また、ガイドワイヤー5の材質は、ステンレス、NI-TI 等の医療に使用させる金属及びPP、PE、PU等の熱可塑性樹脂、又はそれらの複合材を使用するのが望ましい。
【0024】
前記のようであって、封止部材付きガイドワイヤー3を用いて、封止部材挿入用押圧部材付きガイドワイヤー5の押圧部材20による押し込み作用によって封止部材16を内側チューブ6に挿入して所定位置に達すると、その先端部内周面と封止部材16の外周面が摺接して密に嵌合し、内側チューブ6の先端開口11が塞がれる。したがって、カテーテル本体の基端側から内側チューブ6の内腔に入れられた薬液は図7に示すように封止部材16によって堰き止められ側孔13から外部に流れることになる。
【0025】
一方、封止部材付きガイドワイヤー4を用いて、封止部材挿入用押圧部材付きガイドワイヤー5の押圧部材20による押し込み作用によって封止部材18を内側チューブ6に挿入して所定位置に達すると、その先端部内周面と封止部材18の外周面が摺接して密に嵌合し、内側チューブ6の側孔13が塞がれる。したがって、カテーテル本体の基端側から内側チューブ6の内腔に入れられた薬液は図8に示すように封止部材18によって側孔13からの注出が堰き止められ封止部材18内を経て先端開口11から外部に流れる。
【0026】
このように2種類の封止部材付きガイドワイヤー3,4を使い分けることで、薬液注出の位置を変えてその治療範囲を広げることができる。
【0027】
次に実際の使用例について図9を参照して説明する。図9は封止部材付きガイドワイヤー3を脳内にある血管の治療に用いた例を示している。この図の状態に至る前に、先ず健常部側血管Aの中に該血管から分岐した薬液注入を行いたい血管Bの近くまで図示しない誘導用のガイドワイヤーを挿入して留置する。しかる後、この留置したガイドワイヤーに沿わせて薬液注入用カテーテル2を先端開口11から挿入してやる。そして、カテーテル2の側孔13が血管Bの分岐開口と対面する位置まで挿入されたことを確認した後に前記ガイドワイヤーを血管Aから引き抜いて取り除く。
【0028】
しかる後、封止部材付きガイドワイヤー3と封止部材挿入用押圧部材付きガイドワイヤー5をカテーテル2のカテーテル本体の基端側から挿入してやる。すなわち、封止部材付きガイドワイヤー3の封止部材16を先頭にし、かつ該封止部材の後端面に封止部材挿入用押圧部材付きガイドワイヤー5の押圧部材20が当接するように連続させて押し込んでいくのであるが、この際前記ガイドワイヤー3を押圧部材20のスリット21を通過させて軸方向中心孔22に摺動可能に保持する。これにより押圧部材20の押し込み時にガイドワイヤー3が妨げになるようなことなく押し込みはスムーズに行われる。そして、ガイドワイヤー3の封止部材16がカテーテル本体の先端部近くまで押し込まれ、その外周面が先端部内周面と摺接して密に嵌合した状態になると、先端開口11が封止部材16により閉塞される。この閉塞状態の後、ガイドワイヤー5をカテーテル本体内から抜去する。この際も軸方向中心孔22に保持された前記ガイドワイヤー3に沿ってガイドワイヤー5は摺動して抜去可能なので、抜去に支障となることはない。そして、バルーンルーメン9から滅菌水を注入すると、滅菌水は開口14からバルーン12内に入りバルーンを膨らませる。そして、適度の膨張でバルーン12が血管A内に固定され、これに伴いカテーテル2が血管A内に固定留置される。
【0029】
しかる後、カテーテル本体の基端側から抗がん剤等の薬液を入れてやると、薬液は図9に示すように側孔13から薬液注入を行いたい血管Bの方向へ流れる。健常部側血管Aへは外側はバルーン12により、また内側は封止部材16により、その流れは阻止され、薬液が流れることはない。これにより、薬液が流れる血管Bのある側の治療部位の治療行為がスムーズに、かつ良好に行えることになる。
【0030】
この使用例とは逆に血管Aのある側が治療部位である場合は、前記したように封止部材付きガイドワイヤー4を用いて、封止部材18で内側チューブ6の側孔13を塞ぐようにする。これにより薬液は封止部材18内を経て先端開口11から血管Aの方向へ流れる。
【0031】
前記のように実施の形態によれば、カテーテル2の先端開口11と側孔13のいずれかから薬液の注入が可能となる。また、カテーテル2が体内で屈曲したりしても封止部材付きガイドワイヤー3,4の挿入が困難となることがないのに加え、その先端部内腔に挿入する封止部材16,18を、該封止部材に付属するガイドワイヤー3,4が折損して挿入できないというようなことなく簡易に挿入することができる。換言すると、封止部材付きガイドワイヤー3,4はカテーテル内腔に対し充分小径でなければ薬液注入時の抵抗が高くなり充分な薬液投与ができず、このような細いガイドワイヤーでは剛性が劣りカテーテル先端まで封止部材を押し込むことが困難な場合があったが、これらの問題を一挙に解決することができる。なお、前記したような封止部材挿入用押圧部材付きガイドワイヤー5を用いればガイドワイヤー3,4を極細の毛のような細いものにすることも可能となる利点がある。
【0032】
前記に示した実施の形態は、あくまでも好ましい一例であり、例えばカテーテルとしてはマイクロカテーテルに限らないなど他の実施の形態を排除するものではない。また、使用する血管も実施の形態では脳内の血管での治療で説明したが、治療部位としては脳内の血管に限らず、腹部や胸部の血管などいろいろな血管での治療に用いることができる。このように、この発明は特許請求の範囲に記載した範囲内であれば細部の設計等は任意に変更、修正が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0033】
1 薬液注入用カテーテル装置
2 薬液注入用カテーテル
3,4 封止部材付きガイドワイヤー
5 封止部材挿入用押圧部材付きガイドワイヤー
6 内側チューブ
7 外側チューブ
8 薬液注入用ルーメン
9 バルーンルーメン
11 先端開口
12 バルーン
13 側孔
14 開口
16,18 封止部材
20 押圧部材
21 スリット
22 軸方向中心孔
A 健常部側血管
B 薬液注入を行いたい血管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端開口のカテーテル本体の先端部にバルーンが設けられ、該バルーンより後方に側孔が設けられ、該側孔と先端開口のいずれかをカテーテル本体内の基端側から先端側の所定位置まで挿入される封止部材付きガイドワイヤーの先端部に設けた封止部材で封止して薬液を選択的に注出可能とする薬液注入用カテーテルに用いられるものであって、
前記封止部材の挿入時に該封止部材をその後面から押し込みカテーテル本体内の基端側から先端側の所定位置まで挿入する押圧部材を先端部に有することを特徴とする封止部材挿入用押圧部材付きガイドワイヤー。
【請求項2】
押圧部材は、封止部材の後面に取り付けられたガイドワイヤーを挿通するスリットが軸方向にその外周面から内部に向けて切り欠き形成されている請求項1に記載の封止部材挿入用押圧部材付きガイドワイヤー。
【請求項3】
封止部材は、略円柱状体を呈し、その外周面がカテーテル本体の先端側に細くなるテーパー加工された先端部内周面に摺接して先端開口を封止するようにテーパー加工されている請求項1又は2に記載の封止部材挿入用押圧部材付きガイドワイヤー。
【請求項4】
封止部材は、略中空円筒状体を呈し、その外周面がカテーテル本体の先端側に細くなるテーパー加工された先端部内周面に摺接して側孔を封止するようにテーパー加工されている請求項1又は2に記載の封止部材挿入用押圧部材付きガイドワイヤー。
【請求項5】
先端開口のカテーテル本体の先端部にバルーンが設けられ、該バルーンより後方に側孔が設けられた薬液注入用カテーテルと、先端部に封止部材を有し、該封止部材を前記薬液注入用カテーテルのカテーテル本体内の基端側から先端側の所定位置まで挿入することにより前記側孔と先端開口のいずれかを封止し薬液を選択的に注出可能とする封止部材付きガイドワイヤーと、先端部に押圧部材を有し、該押圧部材を前記封止部材の挿入時に該封止部材の後面から押し込むことにより前記封止部材を前記薬液注入用カテーテルのカテーテル本体内の基端側から先端側の所定位置まで挿入する封止部材挿入用押圧部材付きガイドワイヤーと、を具えたことを特徴とする薬液注入用カテーテル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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