説明

射出成形に適切なポリオレフィンのマスターバッチ及び組成物

A)AI)0.1〜10g/10分のメルトフローレートMFRIを有する画分25%〜75%及びAII)100g/10分と等しい又はそれより低いメルトフローレート値MFRIIを有する画分25%〜75%を含み、比MFRI/MFRIIが5〜60である結晶ポリプロピレン成分50%〜90%と、B)15%〜50%のエチレンを含有するエチレンと少なくとも1つのC3−C10α−オレフィンとのコポリマー成分10%〜50%とを含み(重量%)、室温(約25℃)でキシレンに可溶な画分の固有粘度値[η]が3.5dl/gと等しいか又はこれより高いマスターバッチ組成物が、射出成形に適切な最終組成物を得るために、ポリオレフィン材料に添加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的大型の製品への射出成形に適切なポリオレフィン組成物の製造に用いることができるポリオレフィンマスターバッチに関する。より詳しくは、ポリオレフィン組成物は、改良された表面特性(特に、トラ縞模様やゲルの低減に関して)を示す大型品へ射出成形することができる。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン及び熱可塑性ポリオレフィンは、顕著なコスト・パフォーマンス性のために、広範な市場の支持を享受している。例えば、これらのポリマーは、良好な耐候性のために、内部着色用途で用いられる。
【0003】
ポリプロピレン及び熱可塑性ポリオレフィンは、一般に、所望の製品に射出成形される。比較的大型の部品(例えば、自動車のバンパーやフェーシア)は、特に難しい問題(例えば、コールドフロー、トラ縞模様及びゲル)を与える。「コールドフロー」は、金型中に射出された溶融ポリマーが、金型が完全にポリマーで充填される前に、冷却固化し始めるときに起こる。「トラ縞模様」とは、射出成形された製品の表面での色彩及び光沢のバラツキをいう。これは、溶融ポリマーが金型中に射出され所望の形状に成形されつつあるときのポリマーの不安定な金型充填特性のために起こる。「ゲル」とは、一種又はそれ以上のポリマー成分の比較的貧弱な分散性に起因する、最終形状の製品の表面に現れる小さな点をいう。このようなゲルは、トラ縞模様と共に、最終形状の製品の表面外観を悪化させる効果を有する。
【0004】
マスターバッチ組成物を用いることの利点は、多くの異なる種類のポリオレフィンに添加して、大型製品(例えば自動車バンパー)を射出成形によりいつでも製造できる状態の最終ポリオレフィン組成物を実現できることである。したがって、種々のポリオレフィン材料とブレンドすることで、物理特性と表面物性の良好なバランスを示す最終組成物を製造することができるマスターバッチ組成物に対する一定の必要が存在する。
【0005】
米国特許第5,519,090号には、異なる値のメルトフローインデックスを有する2つのポリプロピレンと、プロピレン/エチレンコポリマーを一緒にブレンドすることで、良好な溶融流動性及び良好な機械的特性(特に高剛性)が達成できることが教示されている。
【0006】
WO02/28958によれば、ポリオレフィンマトリックスに、以下
A)メルトフローレートMFRIが0.5〜10g/10分である画分AIを25%〜75%及び比MFRI/MFRIIが30〜2000であるようなメルトフローレートMFRIIを有する画分AIIを75%〜25%含有する結晶性ポリプロピレン成分20%〜90%;ここで、画分AIおよびAIIは、独立して、プロピレンホモポリマー、8%までのエチレンを含有するプロピレンのランダムコポリマー、及び8%までの少なくとも1つのC4〜C10α−オレフィンを含有するプロピレンのランダムコポリマーからなる群より選択される;及び
B)エチレンと少なくとも1つのC3〜C10α−オレフィンとのコポリマー成分10%〜80%、このコポリマーは10%〜70%のエチレンと任意に少量のジエンを含有し、室温にてキシレンに可溶で、固有粘度[η]が4〜9dl/gである
を含む(重量%)マスターバッチ組成物を添加することで、溶融流動性、機械的特性及び表面特性(特にトラ縞模様の低減に関する)の特に良好なバランスが達成される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
種々の成分の組成及び割合に関連する他の特徴と組み合わせて、ポリプロピレン成分のメルトフローレート値を適切に選択することで、特に有益な物理的特性と機械的特性の組を有し、トラ縞模様の低減とゲルの欠如に起因する優れた表面外観を持つ最終ポリオレフィン組成物を製造するために特に適切であるマスターバッチ組成物を得ることができることが、今や見出された。
【0008】
したがって、本発明は、
A)以下を含む結晶性ポリプロピレン成分50%〜90%、好ましくは55〜80%:
I)25%〜75%、好ましくは30%〜70%の、メルトフローレートMFRIが0.1〜10g/10分、好ましくは0.1〜5g/10分、さらに好ましくは0.1〜3g/10分である画分;及び
II)25%〜75%、好ましくは30%〜70%の、メルトフローレート値MFRIIが100g/10分と同じかそれ未満、特に5〜100g/10分、好ましくは10〜100g/10分、より好ましくは10〜68g/10分である画分;
ここで、比MFRI/MFRII(すなわち、(AII)のMFR値に対する(AI)のMFR値の比の値である)は、5〜60、好ましくは10〜55であり、画分(AI)及び(AII)は、独立して、プロピレンホモポリマー、3%までのエチレンを含有するプロピレンのランダムコポリマー及び6%までの少なくとも1つのC4〜C10α−オレフィンを含有するプロピレンのランダムコポリマーからなる群より選択される;及び
B)15%〜50%、好ましくは20%〜48%、さらに好ましくは25%〜38%のエチレンと任意に少量のジエンを含有する、エチレンと少なくとも1つのC3〜C10α−オレフィンのコポリマー成分10%〜50%、好ましくは20〜45%
を含む(重量%)マスターバッチ組成物に関し、該マスターバッチ組成物は、室温(約25℃)におけるキシレン可溶画分の固有粘度[η]値が、3.5dl/gに等しいかそれより高い、特に3.5〜9dl/g、好ましくは4〜8dl/gである。
【0009】
MFR値は、ASTM-D 1238の条件L(230℃、2.16kg荷重)に従って測定される。
マスターバッチ組成物のメルトフローレートは、好ましくは0.1〜10g/10分、より好ましくは0.1〜5g/10分の範囲であり得る。
【0010】
(AI)及び/又は(AII)に存在し得るC4〜C10α−オレフィンの例示としては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン及び1−オクテンが挙げられ、1−ブテンが特に好ましい。
好ましくは、(AI)及び(AII)は共にポリプロピレンホモポリマーである。
コポリマー成分(B)に存在するC3〜C10α−オレフィンの中では、プロピレンが好ましい。
【0011】
本発明のマスターバッチ組成物の他の好ましい特徴は、以下である;
− (A)のP.I.(多分散性指数) 4〜7;
− (AI)及び(AII)の両方のMw/Mn値 4より高い、より好ましくは4.5より高い、特に5より高い(135℃のトリクロロベンゼン中のゲル透過クロマトグラフィーにより測定);
− 組成物全体の室温におけるキシレン可溶画分の量 35重量%より低い。
【0012】
本発明のマスターバッチ組成物は、少なくとも3つの逐次工程を含む逐次重合によって製造することができる。ここで、成分(A)及び(B)は別個の後続の工程で製造され、最初の工程を除き各工程は、先行する工程で形成されたポリマーと使用した触媒の存在下で行う。触媒は最初の工程でのみ添加されるが、その活性は、後続の工程の全てで依然として活性であるほどの活性である。
【0013】
特に、成分(A)は2つの逐次工程を必要とし、一方は画分(AI)の製造のためであり、他方は画分(AII)の製造のためである。
好ましくは、成分(A)は成分(B)より前に製造される。
画分(AI)と画分(AII)が製造される順序は重要ではない。
【0014】
重合(連続的又はバッチであり得る)は、公知技術に従い、希釈剤の存在下若しくは不在下の液相又は気相或いは気−液が混じった技法で行われる。気相で重合を行うのが好ましい。
重合工程に関する反応の時間、圧力及び温度は重要ではない。しかし、温度は50〜100℃が最適である。圧力は大気圧又はそれより高くてもよい。
分子量の調節は、公知の調節剤、特に水素を使用することで行う。
【0015】
本発明のマスターバッチ組成物はまた、少なくとも2つの相互に接続した重合区画で行われる気相重合法によって製造することができる。この種の方法は、欧州特許出願第782 587号に例示されている。
【0016】
詳しくは、上述の方法は、反応条件下で触媒の存在下に重合区画に1又はそれ以上のモノマーを供給し、重合区画からポリマー生成物を回収することを含む。この方法では、成長中のポリマー粒子は、高速流動化条件下で、ある(第1の)重合区画(上昇管(riser))を上方に流れ、上昇区画を出て、別(第2)の重合区画(下降管(downcomer))に入り、そこを、高密度化形態で重力の作用下で下方に流れ、下降管を出て、上昇管に再導入される。このようにして上昇管と下降管との間のポリマー循環が確立される。
【0017】
下降管では、固体の密度が高値に達して、ポリマーの嵩密度に近づく。このように、流れ方向に沿って圧力の正の利得(positive gain)が得られるので、特別な機械的手段の補助無しに、ポリマーの上昇管への再導入が可能になる。このような方法で、「ループ」循環が設けられ、これは2つの重合区画の間の圧力バランスとこの系に導入されるヘッドロスにより規定される。
【0018】
一般に、上昇管の高速流動化の条件は、該当するモノマーを含む気体混合物を上昇管へ供給することで確立される。気体混合物の供給は、適切な場合には気体分配手段の使用によって、ポリマーの上昇管への再導入点より下で達成されるのが好ましい。上昇管への搬送ガスの速度は、操作条件下の搬送速度より高く、好ましくは2〜15m/秒である。
【0019】
一般に、上昇管を出て行くポリマーと気体混合物は、固体/気体分離区画へ運ばれる。固体/気体分離は、従来の分離手段を使用することで達成することができる。分離区画から、ポリマーは下降管へ入る。分離区画を出て行く気体混合物は圧縮され、冷却され、そして適切な場合には仕上げモノマー(make-up monomer)及び/又は分子量調節剤を加えて、上昇管へ移送される。移送は、気体混合物の再循環経路(recycle line)により達成することができる。
【0020】
2つの重合区画の間を循環するポリマーの制御は、固体の流れを制御するに適した手段(例えば機械弁)を使って、下降管を出て行くポリマーの量を測定することで達成することができる。
【0021】
操作パラメータ(例えば温度)は、気相オレフィン重合法で通常のパラメータ(例えば50〜120℃)である。
この方法は、0.5〜10MPa、好ましくは1.5〜6MPaの操作圧力下で行うことができる。
【0022】
有利には、1又はそれより多い不活性ガスが、その不活性ガスの分圧の合計が好ましくは気体の全圧の5〜80%であるような量で、重合区画に維持される。不活性ガスは、例えば窒素又はプロパンが可能である。
【0023】
種々の触媒は上昇管へ任意の地点で供給される。しかし、これらは、下降管の任意の地点に供給することもできる。触媒は任意の物理的状態が可能であり、したがって固体又は液体状態の触媒を用いることができる。
【0024】
重合反応は、好ましくは、立体特異性チーグラー−ナッタ触媒の存在下で行われる。触媒の本質的成分は、少なくとも1つのチタン−ハロゲン結合を有するチタン化合物と電子供与体化合物を含み、共に活性形態のハロゲン化マグネシウム上に担持されている、固体触媒成分である。別の本質的成分(助触媒)は、有機アルミニウム化合物(例えばアルキルアルミニウム化合物)である。
任意に、外部電子供与体が添加される。
【0025】
本発明の方法において一般に用いられる触媒は、アイソタクティック指数が90%より大きい、好ましくは95%より大きいポリプロピレンを製造することができる。上述の特徴を有する触媒は特許文献において周知である;特に有利なものは、米国特許第4,399,054号及び欧州特許第45977号に記載されている触媒である。
【0026】
触媒に用いられる固体触媒成分は、電子供与体(内部供与体)として、エーテル、ケトン、ラクトン、N、P及び/又はS原子を含有する化合物、並びにモノカルボン酸及びジカルボン酸のエステルからなる群より選択される化合物を含む。
特に適切な電子供与体化合物は、フタル酸エステル、例えば、ジイソブチル、ジオクチル、ジフェニル及びベンジルブチル フタレートである。
【0027】
特に適切な他の電子供与体は、式:
【化1】

(式中、RI及びRIIは同じか異なり、C1〜C18アルキル、C3〜C18シクロアルキル又はC7〜C18アリール基であり;RIII及びRIVは同じか異なり、C1〜C4アルキル基である)の1,3−ジエーテルであるか;又は、2位の炭素原子が、5、6又は7個の炭素原子からなり2又は3の不飽和を含有する環状構造又は多環状構造に属している1,3−ジエーテルである。
【0028】
このタイプのエーテルは、欧州特許公開公報第361493号及び第728769号に記載されている。
ジエーテルの代表的例は、2−メチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソアミル−1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンである。
【0029】
上述の触媒組成物の製造は、種々の方法に従って行われる。
例えば、nが一般に1〜3で、ROHがエタノール、ブタノール又はイソブタノールである(特に球状粒子の形状の)MgCl2・nROH付加物を、電子供与体化合物を含有する過剰のTiCl4と反応させる。反応温度は一般に80〜120℃である。次いで、固形物を単離し、電子供与体化合物の存在下あるいは不在下で、再度TiCl4と反応させ、その後分離し、全ての塩素イオンが無くなるまで一定量の炭化水素で洗浄する。
【0030】
この固体触媒成分において、Tiと表されるチタン化合物は、一般に0.5〜10重量%の量で存在する。固体触媒成分に固定されて残存する電子供与体化合物の量は、一般に、二ハロゲン化マグネシウムに対して5〜20モル%である。
固体触媒成分の製造に用いることができるチタン化合物は、チタンのハロゲン化物及びハロゲンアルコラートである。四塩化チタンが好ましい化合物である。
【0031】
上述の反応は、結果として活性形のハロゲン化マグネシウムの形成を生じる。他の反応は文献に公知であり、これらは、ハロゲン化物以外のマグネシウム化合物(例えばカルボン酸マグネシウム)から出発する活性形のハロゲン化マグネシウムの形成を引き起こす。
【0032】
助触媒として用いるAl−アルキル化合物は、Al−トリアルキル(例えば、Al−トリエチル、Al−トリイソブチル、Al−トリ−n−ブチル)、及び、O若しくはN原子又はSO4若しくはSO3基により互いに結合した2又はそれより多いAl原子を含有する直鎖又は環状のAl−アルキル化合物を含む。
Al−アルキル化合物は、一般に、Al/Ti比が1〜1000であるような量で用いられる。
【0033】
外部供与体として用いることができる電子供与体化合物としては、芳香族酸エステル(例えば安息香酸アルキル)、及び特に、少なくとも1つのSi−OR結合(Rは炭化水素基)を含むケイ素化合物が挙げられる。
【0034】
ケイ素化合物の例は、(tert−ブチル)2Si(OCH3)2、(シクロヘキシル)(メチル)Si(OCH3)2、(フェニル)2Si(OCH3)2及び(シクロペンチル)2Si(OCH3)2である。前記式を有する1,3−ジエーテルもまた有利に用いることができる。内部供与体がこれらジエーテルの一つである場合、外部供与体は省略することができる。
【0035】
本発明による方法で用い得る他の触媒は、米国特許第5,324,800号及び欧州特許公開公報第0 129 368号に記載されるようなメタロセン型触媒である。特に有利なものは、例えば米国特許第5,145,819号及び欧州特許公開公報第0 485 823号に記載のような架橋型ビス−インデニルメタロセンである。適切な触媒の別のクラスは、欧州特許公開公報第0 416 815号(Dow)、欧州特許公開公報第0 420 436号(Exxon)、欧州特許公開公報第0 671 404号、欧州特許公開公報第0 643 066号及び国際公開第WO91/04257号に記載のようないわゆるconstrained geometry触媒である。これらのメタロセン化合物は、特に成分(B)の製造に用い得る。
触媒は、少量のオレフィンと事前接触させることができる(予備重合)。
【0036】
本発明のマスターバッチ組成物は、当該分野において通常使用される添加剤、例えば抗酸化剤、光安定化剤、熱安定化剤、着色剤及び充填剤を含有することもできる。
【0037】
前述したように、本発明のマスターバッチ組成物は、有利には、追加のポリオレフィン、特にプロピレンポリマー(例えばプロピレンホモポリマー、ランダムコポリマー)、及び熱可塑性エラストマー性ポリオレフィン組成物を配合することができる。
【0038】
従って、本発明の第2の実施形態は、上述のマスターバッチ組成物を含有する射出成形に適切な熱可塑性ポリオレフィン組成物に関する。好ましくは、この熱可塑性ポリオレフィン組成物は、30重量%まで、代表的には5〜20重量%の本発明に従うマスターバッチ組成物を含む。
【0039】
本マスターバッチが添加されるポリオレフィン(すなわち、マスターバッチ中に存在するもの以外のポリオレフィン)の実例は、以下のポリマーである。
1) 結晶性プロピレンホモポリマー、特にアイソタクティック又は主としてアイソタクティックホモポリマー;
2) エチレン及び/又はC4−C10α−オレフィンとの結晶性プロピレンコポリマー、ここでコモノマーの合計含有量は、コポリマーの重量に対して0.05〜20重量%の範囲であり、好ましいα−オレフィンは1−ブテン;1−ヘキセン;4−メチル−1−ペンテン及び1−オクテンである;
3) 結晶性のエチレンホモポリマー並びにプロピレン及び/又はC4−C10α−オレフィンとのエチレンコポリマー(例えばHDPE);
4) 任意に少量のジエン(例えばブタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン及びエチリデン−1−ノルボルネン)を含有してもよい、プロピレン及び/又はC4−C10α−オレフィンとエチレンとのエラストマー性コポリマー、ここでジエン含有量は代表的には1〜10重量%である;
5) 1又はそれより多いプロピレンホモポリマー及び/又は項目2)のコポリマーと、1又はそれより多い項目4)のコポリマーを含むエラストマー部分(moiety)とを含む熱可塑性エラストマー組成物で、代表的には公知の方法に従って溶融状態で成分を混合するか又は逐次重合により製造され、一般に5〜80重量%の量でエラストマー部分を含有する。
【0040】
ポリオレフィン組成物は、公知の技術及び装置を使って、マスターバッチ組成物と追加のポリオレフィンを一緒に混合し、混合物を押し出し、そして生じた組成物をペレット化することで製造することができる。
【0041】
ポリオレフィン組成物はまた、通常の添加剤(例えば、無機充填剤、着色剤及び安定化剤)を含有することができる。この組成物に含有させることができる無機充填剤としては、タルク、CaCO3、シリカ(例えばウォラストナイト(CaSiO3))、クレイ、珪藻土、酸化チタン、及びゼオライトが挙げられる。代表的には、無機充填剤は、0.1〜5マイクロメートルの範囲の平均直径を有する球状の形である。
【0042】
本発明はまた、このポリオレフィン組成物から作製された最終製品(例えばバンパーやフェーシア)を提供する。
【実施例】
【0043】
本発明の実施及び利点は下記の実施例に開示されている。これらの実施例は、本発明の単なる説明であり、いかなる意味でも本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0044】
以下の分析方法がポリマー組成物を特徴付けるために用いられる。
メルトフローレート:ASTM-D1238、条件L。
[η]固有粘度:135℃のテトラヒドロナフタレン中で測定。
エチレン含有量:I.R.分光法。
曲げ弾性率:ISO178
降伏時強度:ISO527
破断時強度:ISO527
降伏時及び破断時伸び:ISO527
ノッチ付きIZOD衝撃試験:ISO180/1A
【0045】
多分散性指数(P.I.)
この特性は、試験下のポリマーの分子量分布に厳密に関係している。詳細には、この特性は、溶融状態におけるポリマーのクリープ抵抗に反比例する。この抵抗は、低弾性値(500Pa)における分離係数(modulus separation)と呼ばれ、RHEOMETRICS(USA)から市販されている平行盤レオメータ モデルRMS-800を使って、0.1rad/秒から100rad/秒まで増加する振動周波数で操作して、温度200℃で測定した。分離係数値から、以下の等式によってP.I.を導くことができる:
P.I.=54.6×(分離係数)-1.76
ここで、分離係数は以下のように定義される:
分離係数=(G’=500Paでの周波数)/(G’’=500Paでの周波数)
ここで、G’は貯蔵弾性率で、G’’は損失弾性率である。
【0046】
キシレン可溶画分及び不溶画分
冷却管とマグネチックスターラーを備えるガラスフラスコに、2.5gのポリマーと250m3のキシレンを導入する。温度を30分で溶媒の沸点まで上昇させる。次いで、こうして得られた透明溶液を還流及び撹拌下に更に30分間維持する。次いで、密閉されたフラスコを、氷水の水浴に30分間維持し、25℃に温調された水浴にも30分間維持する。こうして生じた固形物を高速ろ紙でろ過する。事前に秤量し、窒素気流下に加熱板で加熱したアルミニウム容器に100m3のろ液を注いで、溶媒を蒸発によって除去する。次いで、この容器を、真空下の80℃のオーブン中で一定重量が得られるまで維持する。次いで、室温でキシレンに可溶なポリマーの重量パーセントを算出する。
【0047】
室温でキシレンに不溶なポリマーの重量パーセントは、ポリマーのアイソタクティック性指標とみなされる。この値は、定義上ポリプロピレンのアイソタクティック性指標を構成する、沸騰n−ヘプタンでの抽出により決定されるアイソタクティック性指標と実質的に一致する。
【0048】
成形フィルム評価
薄膜化装置Plasticisers MKIIを使用して、実施例の組成物から100μm厚の成形フィルムを製造する。
押出機は、スクリューの直径及び長さがそれぞれ19mm及び400mmである。
ダイは、幅80mm、ダイギャップ0.2mmである。
押出機とダイの温度は270℃である。
組成物は、フィルムサンプルに見出されるゲルの平均直径が1.5mmより小さい場合、「良好」と分類され、前記の値と同じかそれより大きい平均直径のゲルが検出される場合、「不良」と分類される。
【0049】
ブレンド中のトラ縞模様
トラ縞模様を評価するため、実施例の組成(下記の表2に示されている)で以下のブレンドを密閉式ミキサーで製造する。
【表1】

注記:(全て重量%)
HECO=チーグラー−ナッタ触媒で製造され、90g/10分のMFR Lを有するプロピレンホモポリマー44%と、49%のエチレンを有し2.5g/10分の全体MFR Lを有するプロピレン/エチレン二元ポリマー(bipolymer)56%とからなるへテロ相コポリマー;
EPR=チーグラー−ナッタ触媒で製造され、60%のエチレンを含有し、1.5g/10分の全体MFR Lを有するエチレン/プロピレンゴム;
HOMO1=チーグラー−ナッタ触媒で製造され、2000g/10分のMFR Lを有するプロピレンホモポリマー;
HOMO2=チーグラー−ナッタ触媒で製造され、400g/10分のMFR Lを有するプロピレンホモポリマー;
EPDM=Vベース触媒で製造され、66%のエチレンと4.5%のエチリデン−ノルボルネン−1を含有し、0.6g/10分のMFR Lを有するエチレン/プロピレン/ジエンゴム;
Neotalc Natural=天然タルク。
【0050】
トラ縞模様評価に使用するプラック(長さ250mm、幅150mm、厚さ3mm)を、射出プレス機Negri Bossi(型締力225トン)で、以下の条件で成形する:
− スクリュー回転: 100rpm
− 溶融温度: 215〜220℃
− 金型温度: 55℃
− 射出時間: 11秒
− 保持圧力: 20〜30バール
− 保持時間: 5秒
− 冷却時間: 40秒。
【0051】
こうして得られたプラックについて、射出点と最初のトラ縞との間の距離を測定することにより評価を行う。明らかなことではあるが、そのような距離が長ければ長いほど、試験した材料は、トラ縞模様を低減する能力に関してより優れている。
【0052】
実施例1〜4及び比較例1
重合に使用する固体触媒成分は、欧州特許公開公報第674991号の実施例に記載されている方法と類似の方法により製造した、約2.5重量%のチタンと内部供与体としてのジイソブチルフタレートを含有し、塩化マグネシウム上に担持されている高度に立体特異性であるチーグラー−ナッタ触媒成分である。
【0053】
触媒系及び予備重合処理
重合反応器に導入する前に、上述の固体触媒成分を、アルミニウムトリエチル(TEAL)及びジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)と、約15に等しいTEAL/DCPMS重量比で、TEAL/Tiモル比が65に等しい量で−5℃にて5分間接触させる。
次いで、触媒系を、第一反応器に導入する前に、20分間20℃の液体プロピレン中で懸濁状態に維持することにより予備重合する。
【0054】
重合
第一の気相重合反応器で、予備重合した触媒系、水素(分子量調節剤として使用)及び気状プロピレンを連続定常流で供給することにより、ポリプロピレンホモポリマー(画分(AII))が製造される。
重合条件を表1に示す。
【0055】
第一反応器で製造したポリプロピレンホモポリマーは、定常流で排出され、未反応モノマーを除去後、量的に一定の流れの水素及び気状プロピレンと共に、連続流で第二気相反応器に導入される。
第二反応器で、プロピレンホモポリマー(画分(AI))が製造される。重合条件、反応物質のモル比及び得られるコポリマーの組成を表1に示す。
【0056】
第二反応器内からのポリマーは定常流で排出され、未反応モノマーを除去後、量的に一定の流れの水素と気状エチレンと共に、連続流で第三気相反応器に導入される。
第三反応器で、プロピレン/エチレンコポリマー(成分(B))が製造される。重合条件、反応物質のモル比及び得られるコポリマーの組成を表1に示す。
【0057】
第三反応器から出てくるポリマー粒子を、蒸気処理して反応性モノマー及び揮発性物質を取り除き、次いで乾燥する。
次いで、ポリマー粒子を回転ドラムに導入し、そこで0.05重量%のパラフィンオイルROL/OB 30(ASTM D 1298による20℃での密度0.842kg/l、ASTM D 97による流動点−10℃を有する)、0.15重量%のIrganox(登録商標)B215(約34%のIrganox(登録商標)1010及び66%のIrgafos(登録商標)168からなる)及び0.05重量%のステアリン酸カルシウムと混合する。
【0058】
Irganox1010は、2,2−ビス[3−[,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)−1−オキソプロポキシ]メチル]−1,3−プロパンジイル−3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼン−プロパノエートであり、Irgafos168はトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトである。
次いで、ポリマー粒子を二軸押出機Berstorff ZE 25(スクリューの長さ/直径比:33)に導入し、窒素雰囲気下に以下の条件で押し出す:
回転速度: 250rpm
押出機の吐出量: 6〜20kg/時間
溶融温度: 200〜250℃
表2に報告したこのポリマー組成物に関する特徴は、このように押出成形されたポリマーについて行われた測定から得られたものである。
【表2】

【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)AI)0.1〜10g/10分のメルトフローレートMFRIを有する画分25%〜75%、及び
II)100g/10分と等しいか又はそれより低いメルトフローレート値MFRIIを有する画分25%〜75%を含有し、ここで、比MFRI/MFRIIが5〜60であり、画分(AI)及び(AII)が、独立して、プロピレンホモポリマー、3%までのエチレンを含有するプロピレンのランダムコポリマー及び6%までの少なくとも1つのC4−C10α−オレフィンを含有するプロピレンのランダムコポリマーからなる群より選択される、結晶ポリプロピレン成分50%〜90%と、
B)15%〜50%のエチレンを含有し任意に少量のジエンを含有してもよい、エチレンと少なくとも1つのC3−C10α−オレフィンとのコポリマー成分10%〜50%
とを含み(重量%)、室温(約25℃)でキシレンに可溶な画分の固有粘度値[η]が3.5dl/gと等しいか又はこれより高いマスターバッチ組成物。
【請求項2】
0.1〜10g/10分のMFR値を有する請求項1のマスターバッチ組成物。
【請求項3】
請求項1のマスターバッチ組成物を含有する熱可塑性ポリオレフィン組成物。
【請求項4】
マスターバッチ組成物の含有量が熱可塑性組成物の総重量に対して5重量%〜20重量%である請求項3の熱可塑性ポリオレフィン組成物。
【請求項5】
マスターバッチ組成物に含有されているもの以外のオレフィンポリマーが、
1)結晶プロピレンホモポリマー;
2)全コモノマー含有量がコポリマーの重量に対して0.05〜20重量%の範囲である、エチレン及び/又はC4−C10α−オレフィンとのプロピレンの結晶コポリマー;
3)結晶性のエチレンホモポリマー並びにプロピレン及び/又はC4−C10α−オレフィンとのエチレンコポリマー;
4)任意に少量のジエンを含有してもよい、エチレンとプロピレン及び/又はC4−C10α−オレフィンとのエラストマー性コポリマー;
5)1又はそれより多いプロピレンホモポリマー及び/又は項目2)のコポリマーと、1又はそれより多い項目4)のコポリマーを含むエラストマー部分とを含み、5〜80重量%の量でエラストマー部分を含有する熱可塑性エラストマー組成物;
6)2又はそれより多い項目1)〜5)のポリマー又は組成物のブレンド
からなる群より選択される請求項3の熱可塑性ポリオレフィン組成物。
【請求項6】
少なくとも3つの逐次工程を含み、成分(A)及び(B)が別個の後続の工程で製造され、第1工程を除き各工程において先行する工程で生成したポリマー及び使用した触媒の存在下で操作される、逐次重合による請求項1のマスターバッチ組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項1のマスターバッチ組成物を含むバンパー及びフェーシア。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)AI)0.1〜10g/10分のメルトフローレートMFRIを有する画分25%〜75%、及び
II)100g/10分と等しいか又はそれより低いメルトフローレート値MFRIIを有する画分25%〜75%を含有し、ここで、比MFRII/MFRIが5〜60であり、画分(AI)及び(AII)
が、独立して、プロピレンホモポリマー、3%までのエチレンを含有するプロピレンのランダムコポリマー及び6%までの少なくとも1つのC4−C10α−オレフィンを含有する
プロピレンのランダムコポリマーからなる群より選択される、結晶ポリプロピレン成分50%〜90%と、
B)15%〜50%のエチレンを含有し任意に少量のジエンを含有してもよい、エチレンと
少なくとも1つのC3−C10α−オレフィンとのコポリマー成分10%〜50%
とを含み(重量%)、室温(約25℃)でキシレンに可溶な画分の固有粘度値[η]が3.5dl/gと
等しいか又はこれより高いマスターバッチ組成物。
【請求項2】
0.1〜10g/10分のMFR値を有する請求項1のマスターバッチ組成物。
【請求項3】
請求項1のマスターバッチ組成物を含有する熱可塑性ポリオレフィン組成物。
【請求項4】
マスターバッチ組成物の含有量が熱可塑性組成物の総重量に対して5重量%〜20重量%である請求項3の熱可塑性ポリオレフィン組成物。
【請求項5】
マスターバッチ組成物に含有されているもの以外のオレフィンポリマーが、
1)結晶プロピレンホモポリマー;
2)全コモノマー含有量がコポリマーの重量に対して0.05〜20重量%の範囲である、エチレン及び/又はC4−C10α−オレフィンとのプロピレンの結晶コポリマー;
3)結晶性のエチレンホモポリマー並びにプロピレン及び/又はC4−C10α−オレフィンとのエチレンコポリマー;
4)任意に少量のジエンを含有してもよい、エチレンとプロピレン及び/又はC4−C10α−オレフィンとのエラストマー性コポリマー;
5)1又はそれより多いプロピレンホモポリマー及び/又は項目2)のコポリマーと、1又はそれより多い項目4)のコポリマーを含むエラストマー部分とを含み、5〜80重量%の
量でエラストマー部分を含有する熱可塑性エラストマー組成物;
6)2又はそれより多い項目1)〜5)のポリマー又は組成物のブレンド
からなる群より選択される請求項3の熱可塑性ポリオレフィン組成物。
【請求項6】
少なくとも3つの逐次工程を含み、成分(A)及び(B)が別個の後続の工程で製造され、第1工程を除き各工程において先行する工程で生成したポリマー及び使用した触媒の存在下で操作される、逐次重合による請求項1のマスターバッチ組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項1のマスターバッチ組成物を含むバンパー及びフェーシア。

【公表番号】特表2006−522169(P2006−522169A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500077(P2006−500077)
【出願日】平成16年3月29日(2004.3.29)
【国際出願番号】PCT/EP2004/003304
【国際公開番号】WO2004/087805
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(501468046)バセル ポリオレフィン イタリア エス.アール.エル. (33)
【住所又は居所原語表記】Via Pergolesi 25,20124 Milano,Italy
【Fターム(参考)】