説明

射出成形システム

【課題】周辺機器による消費電力を低減させる射出成形システムを提供すること。
【解決手段】本発明に係る射出成形システムは、成形動作を行う射出成形部と、周辺機器80に電源を供給可能な電源供給部75と、射出成形部及び電源供給部75を制御する制御部70とを有する射出成形システムであって、制御部70は、電源供給部75の周辺機器80に対する電源の供給と遮断とを切り換える電源制御部71を有する。好適には、電源制御部71は、射出成形部の稼働状況に応じて周辺機器80に対する電源の供給と遮断とを切り換える。より好適には、電源制御部71は、成形動作が止まったときに周辺機器80に対する電源の供給を遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周辺機器に電源を供給可能な射出成形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定時刻に射出成形機及びその周辺機器を所定の順番で始動させる自動運転システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この自動運転システムは、射出成形機とその周辺機器とを制御対象として同列に扱うシステムであり、個別に電源供給される射出成形機及び周辺機器のそれぞれとの間で制御信号をやり取りして、射出成形機及び周辺機器のそれぞれを所定の順番で立ち上げるようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−114906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の自動運転システムは、射出成形機及び周辺機器のそれぞれの立ち上げを制御するのみであり、射出成形機及び周辺機器のそれぞれに対する電源の供給・遮断を切り換えるものではない。そのため、特許文献1に記載の自動運転システムは、周辺機器が立ち上げ済みであるか否かにかかわらず、周辺機器が常に電源に接続された状態、すなわち、成形動作時以外においても周辺機器が電力を消費する状態を放置することとなり、消費電力を十分に低減させることができない。
【0006】
上述の点に鑑み、本発明は、周辺機器による消費電力を低減させる射出成形システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明の実施例に係る射出成形システムは、成形動作を行う射出成形部と、周辺機器に電源を供給可能な電源供給部と、前記射出成形部及び前記電源供給部を制御する制御部とを有する射出成形システムであって、前記制御部は、前記電源供給部の周辺機器に対する電源の供給と遮断とを切り換える電源制御部を有することを特徴とする
【発明の効果】
【0008】
上述の手段により、本発明は、周辺機器による消費電力を低減させる射出成形システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例に係る射出成形システムの構成例を示す図である。
【図2】カレンダ設定画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の実施例に係る射出成形システムの構成例を示す図である。射出成形システムは、主に、射出装置5及び型締装置6から構成される射出成形部を有する。
【0012】
射出装置5は、ホッパ50を通じて供給される樹脂を、ヒータ(図示せず。)によって温度制御される射出シリンダ51内で溶融・可塑化する。具体的には、射出装置5は、計量モータ(図示せず。)により射出シリンダ51内でスクリュ(図示せず。)を回転させ、溶融樹脂を射出シリンダ51の先端部に給送する。
【0013】
また、射出装置5は、射出シリンダ51の先端部に給送された溶融樹脂を金型装置52内のキャビティ空間(図示せず。)に射出する。具体的には、射出装置5は、射出カバー53内に設置される射出モータ(図示せず。)により射出シリンダ51の先端部に向かってスクリュを軸方向移動させ、溶融樹脂を射出シリンダ51の先端部からキャビティ空間内に射出する。金型装置52は、固定プラテン54に取り付けられる固定金型52aと、可動プラテン55に取り付けられる可動金型52bとで構成される。キャビティ空間は、可動金型52bを固定金型52aに接触させることによって形成される。
【0014】
型締装置6は、型開閉動作及び型締動作を実行する。具体的には、型締装置6は、ボールねじ機構等の運動変換機構56により、型締モータ57による回転運動を型開閉方向の直線運動に変換する。そして、型締装置6は、タイバー58に沿って可動プラテン55を固定プラテン54に近づけるように移動させ、可動金型52bを固定金型52aに接触させる。
【0015】
その後、型締装置6は、トグル機構等の倍力機構59により運動変換機構56による型締方向の力を増大させ、より大きな力で可動金型52bを固定金型52aに押し付ける。射出装置5は、この状態において、射出シリンダ51の先端部に給送された溶融樹脂を金型装置52内のキャビティ空間内に射出する。
【0016】
その後、所定時間が経過し、キャビティ空間内の溶融樹脂が冷えて固化した後、型締装置6は、タイバー58に沿って可動プラテン55を固定プラテン54から遠ざけるように移動させ、可動金型52bと固定金型52aとを分離する。
【0017】
その後、型締装置6は、エジェクタモータ60により可動金型52b内にエジェクタピン(図示せず。)を突出させ、固化した樹脂(成形品)を可動金型52bから押し出す。
【0018】
なお、運動変換機構56、型締モータ57、倍力機構59、エジェクタモータ60等は、固定式安全カバー61内に収容される。危険防止の観点から、操作者によるアクセスを制限するためである。一方で、金型装置52は、スライド式安全カバー62内に収容される。操作者による金型交換等の作業を行いやすくするためである。具体的には、操作者は、スライド式安全カバー62を図の左方向にスライドして固定式安全カバー61内に収容し、金型装置52の周囲を露出させる。
【0019】
また、操作者は、設定・操作パネル部63を通じて、射出装置5及び型締装置6による動作を含む射出成形システムの各種動作を設定する。
【0020】
また、射出装置5及び型締装置6は、フレーム64上に、操作者が作業しやすい高さに設置される。なお、フレーム64は、制御部70及び電源供給部75が収容される収容部65を含む。
【0021】
制御部70は、射出成形システムを制御するための機能要素であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、内蔵時計等を備えたコンピュータである。具体的には、制御部70は、電源制御部71及び供給遮断設定部72のそれぞれに対応するプログラムをROMから読み出してRAMに展開しながら、電源制御部71及び供給遮断設定部72のそれぞれに対応する処理をCPUに実行させる。
【0022】
電源制御部71は、周辺機器80に対する電源の供給と遮断とを切り換える機能要素であり、例えば、射出成形部の稼働状況に応じて周辺機器80に対する電源の供給と遮断とを切り換える。
【0023】
具体的には、電源制御部71は、射出成形部による成形動作が停止したときに、電源供給部75に対して制御信号を出力し、周辺機器80に対する電源の供給を遮断する。
【0024】
また、電源制御部71は、射出成形システムのメインスイッチがオンされたときに、電源供給部75に対して制御信号を出力し、周辺機器80と電源とを接続し、周辺機器80に対する電源の供給を開始してもよい。
【0025】
また、電源制御部71は、射出成形システムのメインスイッチがオフされたときに、電源供給部75に対して制御信号を出力し、周辺機器80と電源との間の接続を遮断し、周辺機器80に対する電源の供給を停止してもよい。
【0026】
電源供給部75は、一又は複数の周辺機器80のそれぞれに電力を分配する装置であり、例えば、一又は複数の周辺機器80の電源プラグが差し込まれる一又は複数の差し込み口を備える。そして、電源供給部75は、電源プラグを介して接続される周辺機器80に、商用電源(図示せず。)からの電力を分配する。具体的には、電源供給部75は、キープリレー、パワーMOSFET、IGBT等で構成されるスイッチを備え、電源制御部71からの制御信号に応じてそのスイッチを開閉する。その結果、電源供給部75は、周辺機器80の電源プラグが差し込み口に差し込まれた状態で、周辺機器80に対する電源の供給と遮断とを電源制御部71が切り換えられるようにする。
【0027】
周辺機器80は、射出成形システムから電源の供給を受ける機器であり、例えば、金型装置52の温度を調整するための金型温調器81、ホッパ50に投入される樹脂を乾燥させるための樹脂乾燥器82、射出成形システムを局所的に冷却するためのスポットクーラ83等を含む。
【0028】
供給遮断設定部72は、射出成形部、射出成形システムの付属機器、周辺機器80等に対する電源の供給及び遮断のタイミングを設定する機能要素である。供給遮断設定部72は、例えば、設定・操作パネル部63を通じた操作者による操作入力に応じて、設定・操作パネル部63におけるディスプレイにカレンダ設定画面D1を表示する。
【0029】
ここで、図2を参照しながら、電源制御部71による周辺機器80に対する電源の供給・遮断の切り換えについて説明する。なお、図2は、供給遮断設定部72によりディスプレイに表示されるカレンダ設定画面D1の一例を示す図である。
【0030】
カレンダ設定画面D1は、射出成形部、射出成形システムの付属機器、周辺機器80等の始動・停止スケジュールを設定する際に用いられる画面であり、インジケータ領域R1、カレンダ設定領域R2、周辺機器自動停止時間設定領域R3、及び画面切換領域R4を含む。操作者は、設定・操作パネル部63を通じた操作入力により、任意のタイミングでカレンダ設定画面D1をディスプレイ上に表示させることができる。なお、射出成形システムの付属機器には、例えば、射出シリンダ51を加熱するヒータが含まれる。
【0031】
インジケータ領域R1は、「型開限」、「型全閉」、「エジェクタ戻」、「ノズルタッチ」、「休止」、「冷却」、「遅延」、「保圧」、「充填」、「計量」、及び「計量完」のそれぞれに対応するインジケータを配し、そのインジケータを点灯或いは消灯させることによって射出成形システムの現在の状態を示す。
【0032】
カレンダ設定領域R2は、射出成形部、射出成形システムの付属機器、周辺機器80等の始動・停止スケジュールを操作者が設定できるように表示する。
【0033】
本実施例では、カレンダ設定領域R2は、月曜から金曜までの平日では、射出シリンダ51を加熱するヒータを午前8時に始動させ、周辺機器80を午前8時30分に始動させ、また、射出成形部による成形動作を午後5時に停止させるスケジュールが設定された状態を示す。また、カレンダ設定領域R2は、土曜及び日曜の休日では、ヒータ及び周辺機器80の始動時刻、並びに射出成形部による成形動作の停止時刻が設定されていないことを示す。なお、月曜から金曜までの5つの設定は、平日設定として1つに纏められてもよく、土曜及び日曜の2つの設定は、休日設定として1つに纏められてもよい。
【0034】
周辺機器自動停止時間設定領域R3は、成形動作が停止してから周辺機器80を自動的に停止させるまでの時間を示す周辺機器自動停止時間を操作者が設定できるように表示する。
【0035】
本実施例では、周辺機器自動停止時間が30分に設定された状態を示す。電源制御部71は、成形動作が停止してから30分が経過した時点で、電源供給部75に対し制御信号を出力し、周辺機器80に対する電源の供給を遮断する。なお、成形動作の停止は、カレンダ設定領域R2で設定される成形動作の停止スケジュールに基づく停止以外にも、射出成形システムの故障に起因する停止や操作者による手動停止等がある。
【0036】
画面切換領域R4は、「段取」、「型開閉」、「Z−可塑化」、「温度」、「Z−screen」、「波形表示」、「品質管理」、及び「生産管理」の各種画面への切り換えのためのソフトウェアボタンを示す。
【0037】
操作者は、設定・操作パネル部63を介して所望の画面に対応するソフトウェアボタンを押下することによって、所望の画面を表示させることができる。
【0038】
制御部70は、自身が有する内蔵時計に基づいて所定周期で繰り返し電源制御部71による処理をCPUに実行させる。
【0039】
電源制御部71は、内蔵時計が示す現在時刻と、カレンダ設定画面D1で設定された始動・停止スケジュールとを参照しながら、ヒータ及び周辺機器80を設定時刻に始動させ、射出成形部による成形動作を設定時刻に停止させる。
【0040】
具体的には、電源制御部71は、月曜日の午前8時にヒータを起動させ、午前8時30分に周辺機器80を起動させる。また、電源制御部71は、月曜日の午後5時に射出成形部による成形動作を停止させ、その30分後に周辺機器80を停止させる。なお、本実施例では、電源制御部71は、成形動作の停止とともにヒータを停止させる。電源制御部71は、火曜〜金曜まで、同様のスケジュールでヒータ及び周辺機器80を起動・停止させ、且つ、射出成形部による成形動作を停止させる。
【0041】
なお、本実施例では、平日において、ヒータ及び周辺機器80が自動的に始動された後、射出成形部による成形動作が操作者によって手動で開始される。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、電源制御部71は、ヒータ及び周辺機器80と同様、設定された時刻に射出成形部による成形動作を自動的に開始させてもよい。
【0042】
以上の構成により、本実施例に係る射出成形システムは、成形動作が停止したときに周辺機器80に対する電源の供給を自動的に遮断するので、周辺機器80による消費電力を含めた全体的な消費電力を低減させることができる。
【0043】
また、本実施例に係る射出成形システムは、始動スケジュールにしたがって、射出成形システムの付属機器、周辺機器80等に対する電源の供給を開始するので、成形動作が開始されるまでに、射出成形システムの周辺環境を成形動作に適した状態にすることができる。
【0044】
また、上述の実施例において、カレンダ設定画面D1は、周辺機器80の始動スケジュールを操作者が設定できるように表示する。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、カレンダ設定画面D1は、周辺機器80の停止スケジュール、一時中断スケジュール、一時起動スケジュール等を操作者が設定できるように表示してもよい。なお、一時中断スケジュールは、中断開始時刻と中断終了時刻とで構成され、一時起動スケジュールは、一時起動開始時刻と一時起動停止時刻とで構成される。
【0045】
また、上述の実施例において、カレンダ設定画面D1は、複数の周辺機器を一纏めにしてその始動スケジュールを操作者が設定できるように表示する。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、カレンダ設定画面D1は、複数の周辺機器のそれぞれの始動スケジュール、停止スケジュール、一時中断スケジュール、一時起動スケジュール等を操作者が個別に設定できるようにしてもよい。
【0046】
また、上述の実施例において、カレンダ設定画面D1は、一画面で構成される。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、カレンダ設定画面D1は、機器別、曜日別、内容(始動、停止、一時中断、一時起動等)別、材料として使用する樹脂別に、複数の画面で構成されてもよい。
【0047】
また、上述の実施例において、カレンダ設定画面D1は、重複が生じない1つのスケジュール設定を記憶する。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、カレンダ設定画面D1は、選択的に採用される複数のスケジュール設定を記憶し且つ表示できるように構成されてもよい。
【0048】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0049】
例えば、上述の実施例において、電源制御部71は、カレンダ設定画面D1で設定された周辺機器自動停止時間に応じて周辺機器80を停止させる。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、電源制御部71は、成形動作の停止以外の所定のイベントが発生することを始動条件又は停止条件として操作者に設定させてもよい。具体的には、電源制御部71は、一日の成形品の製造個数が予定製造個数の設定比率(例えば、90%である。)に相当する個数に達することを、周辺機器80の1つである樹脂乾燥器82の停止条件としてもよい。予定製造個数の全てが製造されるまで樹脂乾燥器82を作動させておく必要はないためである。この場合、カレンダ設定画面D1は、その設定比率を操作者が設定できるように表示する。これにより、電源制御部71は、周辺機器80による消費電力を更に低減させることができる。
【符号の説明】
【0050】
5・・・射出装置 6・・・型締装置 50・・・ホッパ 51・・・射出シリンダ 52・・・金型装置 52a・・・固定金型 52b・・・可動金型 53・・・射出カバー 54・・・固定プラテン 55・・・可動プラテン 56・・・運動変換機構 57・・・型締モータ 58・・・タイバー 59・・・倍力機構 60・・・エジェクタモータ 61・・・固定式安全カバー 62・・・スライド式安全カバー 63・・・設定・操作パネル部 64・・・フレーム 65・・・収容部 70・・・制御部 71・・・電源制御部 72・・・供給遮断設定部 75・・・電源供給部 80・・・周辺機器 81・・・金型温調器 82・・・樹脂乾燥器 83・・・スポットクーラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形動作を行う射出成形部と、周辺機器に電源を供給可能な電源供給部と、前記射出成形部及び前記電源供給部を制御する制御部とを有する射出成形システムであって、
前記制御部は、前記電源供給部の周辺機器に対する電源の供給と遮断とを切り換える電源制御部を有する、
ことを特徴とする射出成形システム。
【請求項2】
前記電源制御部は、前記射出成形部の稼働状況に応じて前記周辺機器に対する電源の供給と遮断とを切り換える、
ことを特徴とする請求項1に記載の射出成形システム。
【請求項3】
前記電源制御部は、前記周辺機器に対する電源の供給及び遮断のタイミングを設定する供給遮断設定部を有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の射出成形システム。
【請求項4】
前記電源制御部は、前記成形動作が停止したときに前記周辺機器に対する電源の供給を遮断する、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の射出成形システム。

【図1】
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【図2】
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