説明

射出成形方法及びパネル

【課題】特に側端面の見映えを良くし、外観意匠性を向上したパネルと、これを成形するための射出成形方法を、提供する。
【解決手段】凹凸を有する構造部2を備えた裏面層3と、裏面層3上に一体に設けられて外観面を形成する外観層4と、を含むパネル1を成形する射出成形方法である。裏面層3を射出成形によって形成する工程と、裏面層3上に、射出成形によって外観層4を形成する工程と、を備える。外観層4を形成する工程では、裏面層3の端部を覆って外観層4を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形方法及びパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形によって製造される樹脂製のパネルとして、表面側に平滑な外観面を有し、裏面側に突部などの凹凸からなる構造部を有したものが提供されている。このようなパネルとしては、特に化粧面となる外観面をより美麗にするため、光輝材を含有した合成樹脂によって成形したものが知られている。
【0003】
このようなパネルを、成形型に溶融樹脂を一度に注入して射出成形しようとすると、前記の構造部側に先行して流れる溶融樹脂と、他の部分を遅れて流れる溶融樹脂との合流によってパネルの表面側にフローマークやウエルドラインが生じ、見映えが悪くなってしまうことがある。特に、光輝材を含有した合成樹脂を用いた場合では、成形型内での樹脂の流動が比較的遅くなるため、フローマークやウエルドラインがパネルの表面側に生じ易くなってしまう。
【0004】
そこで、このようなフローマークやウエルドラインの発生を防止する技術として、突部を有した裏面側を形成し、その後、この裏面側の一方の面側(突部と反対の側)に平滑な表面側を形成し、これら裏面側と表面側とを一体化してなるパネル(成形品)を成形する射出成形方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この射出成形方法では、薄肉板部ならびに突部を一体に有する第1半成形品(裏面側)を射出成形し、その後、前記薄肉板部と共同で板部を構成する板状の第2半成形品(表面側)を、前記薄肉板部の表面側に一体に接合するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−225354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1の射出成形方法では、コアバックによって単調な箱型の空間を形成する金型を用い、前記第1半成形品を形成した後、コアバックさせて空間を形成し、この空間に前記第2半成形品を形成することで、成形品(パネル)を得るようにしている。そのため、一次成型による第1半成形品と二次成型による第2半成形品との界面に対応する成形ラインが、側端面に現れてしまう。したがって、この成形品を例えば外観部品としての一枚板(パネル)として使用したい場合には、前記の界面が見える側端面が露出してしまうため、見映えが悪く、外観意匠性が大きく低下してしまうといった課題がある。
【0007】
また、第2半成形品の表面となる側、すなわち外観面となる側から直接樹脂を充填し、第2半成形品の外観面を形成するようにしているので、ゲート痕を隠すなどの対策をとらないと、見映えが悪くなり、前述したように外観意匠性が大きく低下してしまう。
【0008】
本発明は前記課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、特に側端面の見映えを良くし、外観意匠性を向上したパネルと、これを成形するための射出成形方法を、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため本発明の射出成形方法は、凹凸を有する構造部を備えた裏面層と、該裏面層上に一体に設けられて外観面を形成する外観層と、を含むパネルを成形する射出成形方法であって、
前記裏面層を射出成形によって形成する工程と、
前記裏面層上に、射出成形によって前記外観層を形成する工程と、を備え、
前記外観層を形成する工程では、前記裏面層の端部を覆って外観層を形成することを特徴としている。
【0010】
この射出成形方法によれば、凹凸を有する構造部を備えた裏面層上に、該裏面層の端部を覆って外観層を形成するので、裏面層と外観層との間にこれらの界面に対応する成形ラインが形成されても、外観層で裏面層の端部を覆うことにより、この外観層に前記の成形ラインが隠れるようになる。したがって、形成するパネルの側端面の見映えを良くし、その外観意匠性を向上することができる。
【0011】
また、前記の射出成形方法において、前記裏面層を形成する工程、及び前記外観層を形成する工程では、いずれも前記裏面層の裏面側から樹脂を射出するようにしてもよい。
このようにすれば、たとえ樹脂を射出した際のゲート痕が残ってしまっても、このゲート痕は外観層ではなく裏面層の裏面側に形成されるため、パネルとしての外観意匠性が低下することはない。
【0012】
また、前記の射出成形方法において、前記裏面層を形成する工程では、光輝材を含有した樹脂によって該裏面層を形成し、前記外観層を形成する工程では、光輝材を含有した樹脂によって該外観層を形成するようにしてもよい。
このようにすれば、光輝材を含有した樹脂で全体を形成するため、より見映えが良い、外観意匠性に優れたパネルを成形することが可能になる。
【0013】
また、前記の射出成形方法において、前記外観層を形成する工程では、該裏面層の裏面側から樹脂を射出し、前記外観層を形成する工程では、該外観層の側面側から樹脂を射出するようにしてもよい。
このようにすれば、外観層の側面側から樹脂を射出して外観層を形成するので、注入射出した溶融樹脂がキャビティー面に衝突することで流れに乱れが生じ、これによって外観層にフローマークなどが生じることが防止される。
【0014】
また、この射出成形方法において、前記外観層を形成する工程では、光輝材を含有した樹脂によって該外観層を形成するようにしてもよい。
このようにすれば、光輝材を含有した樹脂で外観層を形成するため、見映えが良い、外観意匠性に優れたパネルを成形することが可能になる。
【0015】
本発明のパネルにあっては、凹凸を有する構造部を備えた裏面層と、該裏面層上に一体に設けられて外観面を形成する外観層と、を含むパネルであって、
前記外観層は、前記裏面層の端部を覆って形成されていることを特徴としている。
【0016】
このパネルによれば、凹凸を有する構造部を備えた裏面層の端部を覆って外観層が形成されているので、裏面層と外観層との間にこれらの界面に対応する成形ラインが形成されていても、外観層で裏面層の端部を覆うことにより、この外観層で前記の成形ラインを隠すことができる。したがって、このパネルは側端面の見映えが良く、外観意匠性が向上したものとなる。
【0017】
また、前記パネルにおいては、前記外観層が、光輝材を含有した樹脂によって形成されていてもよい。
このようにすれば、外観層についての見映えが良く、したがって外観意匠性に優れたパネルとなる。
【0018】
また、前記パネルにおいては、前記裏面層及び前記外観層が、いずれも光輝材を含有した樹脂によって形成されていてもよい。
このようにすれば、全体として見映えが良く、したがって外観意匠性に優れたパネルとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)〜(c)は本発明のパネルの概略構成図である。
【図2】本発明に係る射出成形金型の一例の概略構成を示す要部側断面図である。
【図3】本発明の射出成形方法を説明するための射出成形金型の要部側断面図である。
【図4】本発明の射出成形方法を説明するための射出成形金型の要部側断面図である。
【図5】本発明の射出成形方法を説明するための射出成形金型の要部側断面図である。
【図6】本発明に係る射出成形金型の一例の概略構成を示す要部側断面図である。
【図7】本発明の射出成形方法を説明するための射出成形金型の要部側断面図である。
【図8】本発明の射出成形方法を説明するための射出成形金型の要部側断面図である。
【図9】本発明の射出成形方法を説明するための射出成形金型の要部側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明を詳しく説明する。なお、以下の図面においては、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
図1(a)〜(c)は、本発明のパネルの一実施形態を示す図であり、(a)はパネルの側断面図、(b)はパネルの背面図、(c)はパネルの正面図である。
【0021】
図1(a)〜(c)において符号1はパネルであり、このパネル1は、図1(a)に示すように凹凸を有する構造部2を備えた裏面層3と、該裏面層3上に一体に設けられて外観面を形成する外観層4と、からなる矩形板状のものである。
裏面層3は、矩形状に形成された合成樹脂製のもので、外観層4と反対の側の面、すなわちパネル1の裏面となる面に、構造部2を形成したものである。この構造物2は、本実施形態ではネジ用のボスとなる円筒状の突起(ネジボス)からなり、図1(b)に示すように矩形の裏面層3の各隅部に対応して4箇所形成されている。なお、構造物2としては、ネジボス以外にも、例えば細板状のリブなど、各種の形状・機能のものが形成可能である。
【0022】
外観層4は、裏面層3より一回り大きい矩形状に形成された合成樹脂製のもので、その外周部の裏面側(裏面層3側)に、前記裏面層3の端部(側端部)を覆う外枠部5を一体に形成したものである。外枠部5は、裏面層3より大きく形成された外観層4の外周部、すなわち裏面層3の外側に位置する外周部の裏面側に、前記裏面層3側に突出して形成された矩形枠状のもので、これによって裏面層3の端部(側端部)を覆ったものである。
【0023】
これら裏面層3と外観層4とからなるパネル1は、本実施形態では全て光輝材を含有した合成樹脂によって形成されている。合成樹脂としては、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂や、AAS(アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン)樹脂、AES(アクリロニトリル・塩素化ポリエチレン・スチレン)などが用いられる。また、光輝材としては、アルミ箔、ガラスビーズ、パールマイカ等が用いられる。
【0024】
合成樹脂に対する光輝材の配合比としては、たとえば0.1〜7重量%程度とされる。なお、光輝材以外にも、合成樹脂には必要に応じて適宜な添加剤、配合剤が加えられるのは従来と同様である。
【0025】
次に、このような構造のパネル1の成形方法に基づき、本発明の射出成形方法の第1の実施形態を説明する。
図2は、本発明の射出成形方法の第1の実施形態において好適に用いられる射出成形金型の一例を示す図であり、図1中符号10は成形金型である。まず、この成形金型10について説明すると、この成形金型10は固定型11と可動型12とからなっている。
【0026】
固定型11には凹部13が形成され、可動型12には、前記凹部13に嵌合するコアとなる凸部14が形成されている。可動型12は、図示しない作動部によって固定型11に対し進退可能に設けられている。このような構成のもとに、前記凸部14は凹部13内を摺動可能になっている。そして、固定型11と可動型12とは、その凹部13と凸部14との間にキャビティーを形成し、ここで前記パネル1を成形するようにしている。
【0027】
すなわち、前記凹部13には、前記凸部14と反対の側の内面に前記裏面層3に対応した凹状の裏面層成形部15が形成され、さらに、この裏面層成形部15の外側には、前記外枠部5に対応した凹状(矩形溝状)の外枠成形部16が形成されている。また、前記裏面層成形部15の内面には、前記構造部2に対応した凹状の構造成形部17が形成されている。なお、凹部13の、前記裏面層成形部15と前記外枠成形部16との間に位置する見掛け上突出してなる部位の外面は、後述するように前記可動型12の凸部14に当接する当接面18となっている。
【0028】
固定型11には、前記凹部13と前記凸部14との間のキャビティー内に溶融樹脂(溶融合成樹脂)を注入するための、二つのゲート、すなわち第1ゲート19と第2ゲート20とが設けられている。これらゲート19、20はバルブゲートからなるもので、第1ゲート19は、その注入口19aが前記裏面層成形部15の内面、すなわち前記パネル1における裏面層3の裏面に対応する位置に開口している。また、第2ゲート20は、その注入口20aが、前記裏面層成形部15の開口面、すなわち前記パネル1における裏面層3と外観層4と界面に対応する位置に開口している。
【0029】
なお、固定型11には、ゲート19、20の注入口19a(20a)を開閉するためのピン(図示せず)と、該ピンを軸方向に進退させるためのシリンダ(図示せず)とが設けられる。
【0030】
可動型12は、前記したように固定型11に対し進退可能に設けられている。具体的には、固定型11の凹部13とともにキャビティーを形成するための凸部14の前面14aが、図2中実線で示すように凹部13内の前記当接面18に当接する第1の位置と、図2中二点鎖線で示す第2の位置との間で進退するようになっている。また、成形後のパネル1を成形金型10から取り出す際には、第2の位置よりさらに後退した第3の位置(図示せず)にまで、移動するようになっている。ここで、第2の位置は、凸部14の前面14aと前記当接面18との間の距離が、前記パネル1の、外観層4の厚さに一致する位置となっている。なお、ここで言う外観層4の厚さとは、外枠部5を除いた位置での厚さである。
【0031】
このような構成からなる成形金型10を用いて、パネル1を射出成形するには、まず、図3に示すように固定型11に対して可動型12を第1の位置に固定し、その状態で第1ゲート19から、光輝材を含有する溶融樹脂を注入・射出する。すると、可動型12が第1の位置にあるときには、前記凸部14の前面14aが前記凹部13内の当接面18に当接しているため、溶融樹脂は外枠成形部16に流れることなく、裏面層成形部15内を満たす。その際、この裏面層成形部15内には構造成形部17があることから、この構造成形部17に対応する位置、すなわち構造成形部17と反対の、前記凸部14の前面14a側の面に、フローマーク(図示せず)が形成されることがある。なお、この状態では、第2ゲート20はその注入口20aが凸部14の前面14aに覆われた状態になっている。
【0032】
このようにして裏面層成形部15内に溶融樹脂を注入し、その後所定時間冷却して該溶融樹脂を固化させ、パネル1における裏面層3を成形したら、可動型12を後退(コアバック)させ、図4に示すように凸部14を第2の位置に移動させてそこに固定する。すると、この凸部14の前面14aと固定型11の凹部13内における前記裏面層3との間には、新たな空間、すなわち前記外観層4に対応したキャビティーが形成される。なお、このようにして凸部14が後退すると、その前面14aと前記当接面18とは離間するため、新たなキャビティーは前記外枠成形部16に連通してこれを含む空間となる。また、第2ゲート20は、その注入口20aを裏面層3の表面側に開口し、したがって新たなキャビティー内に開口するようになる。
【0033】
次いで、この状態のもとで、図5に示すように第2ゲート20から光輝材を含有する溶融樹脂を注入・射出する。すると、溶融樹脂は、外枠成形部16を含む新たなキャビティー内を満たす。その際、外枠成形部16は第2ゲート20から遠い位置にあり、また新たなキャビティーの外周部全体に連通しているため、この外枠成形部16内に溶融樹脂が先行することなどによる、フローマークやウエルドラインの形成はほとんど生じることがない。
【0034】
このようにして新たなキャビティー内に溶融樹脂を注入し、その後所定時間冷却して該溶融樹脂を固化させると、パネル1における外観層4が裏面層3に一体に成形され、これによってパネル1が成形される。
その後、可動型12の凸部14をさらに第3の位置にまで後退させ、凸部14を固定型11の凹部13から離脱させる。そして、その状態で凹部14から成形したパネル1を離型する。
【0035】
このようなパネル1の射出成形方法にあっては、凹凸を有する構造部2を備えた裏面層3上に、該裏面層3の端部を覆って外観層4を形成するので、裏面層3と外観層4との間にこれらの界面に対応する成形ラインが形成されても、外観層4の外枠部5で裏面層3の側端面(端部)を覆うことにより、この外観層4で前記の成形ラインを隠すことができる。したがって、形成するパネル1の側端面の見映えを良くし、その外観意匠性を向上することができる。
また、裏面層3には、その外観層4側の面にフローマークが形成されることがあるが、このフローマークは外観層4に覆われて露出しないため、パネル1の外観意匠性を損なうことはない。
【0036】
また、第1ゲート19、第2ゲート20を共に裏面層成形部15側配置し、溶融樹脂を裏面層3の裏面側から注入・射出するようにしたので、樹脂を射出した際のゲート痕が残っても、このゲート痕は外観層4ではなく裏面層3の裏面側に形成されるため、パネル1としての外観意匠性を低下させることはない。なお、第2ゲート20はその注入口20aが裏面層3と外観層4との界面に対応する位置に開口しているため、裏面層3には第2ゲート20に対応する位置に凹部(ゲート痕)が形成してしまう。しかし、前出したようにこのゲート痕は裏面層3の裏面側に形成されるため、パネル1の外観意匠性を損なうことはない。ただし、必要に応じて、この凹部を埋め戻したり、キャップ材で覆い隠すようにしてもよいのはもちろんである。
【0037】
また、裏面層3、外観層4のいずれも、同じ光輝材を含有した樹脂で形成しているので、全体的に見映えが良い、外観意匠性に優れたパネル1を成形することができる。
また、このようにして成形されたパネル1にあっては、裏面層3と外観層4との間にこれらの界面に対応する成形ラインが形成されていても、外観層4の外枠部5で裏面層3の側端面(端部)を覆うことにより、この外観層4で前記の成形ラインを隠すことができる。したがって、側端面の見映えが良く、外観意匠性が向上したものとなる。
また、裏面層3及び外観層4が、いずれも光輝材を含有した樹脂によって形成されているので、全体として見映えが良く、したがって外観意匠性に優れたパネルとなる。
【0038】
次に、前記パネル1の成形方法としての、本発明の射出成形方法の第2の実施形態を説明する。
図6は、本発明の射出成形方法の第2の実施形態において、好適に用いられる射出成形金型の一例を示す図であり、図1中符号30は成形金型である。この成形金型30が図2に示した成形金型10と異なるところは、図2に示した成形金型10では第1ゲート19、第2ゲート20を共に裏面層成形部15に対応する位置に設けているのに対し、図6に示した成形金型30では、裏面層成形部15の外側の、前記した新しいキャビティーの側面に対応した位置、つまり外観層4の側面と対応する位置に、第2ゲート31を配置した点にある。
【0039】
すなわち、図6に示した成形金型30では、図2に示した成形金型10と同じ位置に第1ゲート19が配置されているものの、第2ゲート31は、その注入口31aが前記凹部13の内側面に開口して配置されたサイドゲートとなっている。なお、この成形金型30にあっても、固定型11に対する可動型12の位置は、前記成形金型10と同様、第1の位置、第2の位置、第3の位置の間で移動可能になっている。
【0040】
このような構成からなる成形金型30を用いて、パネル1を射出成形するには、まず、図7に示すように固定型11に対して可動型12を第1の位置に固定し、その状態で第1ゲート19から溶融樹脂を注入・射出する。ただし、本実施形態では、第1ゲート19から注入する合成樹脂として、第1の実施形態と異なり、光輝材を含有しない合成樹脂を用いる。すると、第1の実施形態と同様にして、裏面層成形部15内に裏面層3が形成される。
【0041】
このようにして裏面層3を成形したら、可動型12を後退(コアバック)させ、図8に示すように凸部14を第2の位置に移動させてそこに固定する。すると、この凸部14の前面14aと固定型11の凹部13内における前記裏面層3との間には、前記外観層4に対応した新たなキャビティーが形成される。そして、このように凸部14が後退し、新たなキャビティーが形成されることにより、このキャビティー内に第2ゲート31の注入口31aが開口するようになる。
【0042】
次いで、この状態のもとで、図9に示すように第2ゲート31から光輝材を含有する溶融樹脂を注入・射出する。すると、溶融樹脂は、外枠成形部16を含む新たなキャビティー内を満たす。その際、第2ゲート31の注入口31aを、外観層4の側面と対応する位置に開口させているので、注入射出した溶融樹脂がキャビティー面、例えば凸部14の前面14aに直接衝突することがなく、したがって前面14aに直接衝突することで流れに乱れが生じることが防止されている。
【0043】
このようにして新たなキャビティー内に溶融樹脂を注入し、その後所定時間冷却して該溶融樹脂を固化させると、パネル1における外観層4が裏面層3に一体に成形され、これによってパネル1が成形される。
その後、可動型12の凸部14をさらに第3の位置にまで後退させ、凸部14を固定型11の凹部13から離脱させる。そして、その状態で凹部14から成形したパネル1を離型する。
【0044】
このようなパネル1の射出成形方法にあっても、凹凸を有する構造部2を備えた裏面層3上に、該裏面層3の端部を覆って外観層4を形成するので、裏面層3と外観層4との間にこれらの界面に対応する成形ラインが形成されても、外観層4の外枠部5で裏面層3の側端面(端部)を覆うことにより、この外観層4で前記の成形ラインを隠すことができる。したがって、形成するパネル1の側端面の見映えを良くし、その外観意匠性を向上することができる。
【0045】
また、第2ゲート31の注入口31aを、外観層4の側面と対応する位置に開口させ、これによって注入射出した溶融樹脂の流れに乱れが生じるのを防止しているので、このような流れの乱れに起因して外観層21にフローマークなどが生じるのを防止することができる。
【0046】
また、光輝材を含有した樹脂で外観層4を形成しているので、見映えが良い、外観意匠性に優れたパネル1を成形することができる。
また、このようにして成形されたパネル1にあっては、裏面層3と外観層4との間にこれらの界面に対応する成形ラインが形成されていても、外観層4の外枠部5で裏面層3の側端面(端部)を覆うことにより、この外観層4で前記の成形ラインを隠すことができる。したがって、側端面の見映えが良く、外観意匠性が向上したものとなる。
また、外観層4が光輝材を含有した樹脂によって形成されているので、見映えが良く、したがって外観意匠性に優れたパネルとなる。
【0047】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、第2実施形態では、第1ゲート19と第2ゲート31とを備えた成形金型30を用いて射出成形を行っているが、例えば成形金型として、これら第1ゲート19、第2ゲート31に、第1実施形態における成形金型10の第2ゲート20を加えた、三つのゲートを有した金型を用いてもよい。その場合に、外観層4の成形時には、第2ゲート31と第2ゲート19の両方から溶融樹脂を注入・射出するようにする。
【0048】
このようにすれば、新たなキャビティー内で、注入した溶融樹脂の流れに乱れが生じるのをより良好に防止することができ、したがって外観層21にフローマークなどが生じるのをより確実に防止することができる。
なお、その場合には、裏面層3についても、外観層4と同様に、光輝材を含有した合成樹脂で成形することができる。
【符号の説明】
【0049】
1…パネル、2…構造部、3…裏面層、4…外観層、5…外枠部、10…成形金型、11…固定型、12…可動型、13…凹部、14…凸部、15…裏面層成形部、16…外枠成形部、17…構造部成形部、18…当接面、19…第1ゲート、19a…注入口、20…第2ゲート、20a…注入口、21…フローマーク、30…成形金型、31…第2ゲート、31a…注入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸を有する構造部を備えた裏面層と、該裏面層上に一体に設けられて外観面を形成する外観層と、を含むパネルを成形する射出成形方法であって、
前記裏面層を射出成形によって形成する工程と、
前記裏面層上に、射出成形によって前記外観層を形成する工程と、を備え、
前記外観層を形成する工程では、前記裏面層の端部を覆って外観層を形成することを特徴とする射出成形方法。
【請求項2】
前記裏面層を形成する工程、及び前記外観層を形成する工程では、いずれも前記裏面層の裏面側から樹脂を射出することを特徴とする請求項1記載の射出成形方法。
【請求項3】
前記裏面層を形成する工程では、光輝材を含有した樹脂によって該裏面層を形成し、
前記外観層を形成する工程では、光輝材を含有した樹脂によって該外観層を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の射出成形方法。
【請求項4】
前記外観層を形成する工程では、該裏面層の裏面側から樹脂を射出し、
前記外観層を形成する工程では、該外観層の側面側から樹脂を射出することを特徴とする請求項1記載の射出成形方法。
【請求項5】
前記外観層を形成する工程では、光輝材を含有した樹脂によって該外観層を形成することを特徴とする請求項4記載の射出成形方法。
【請求項6】
凹凸を有する構造部を備えた裏面層と、該裏面層上に一体に設けられて外観面を形成する外観層と、を含むパネルであって、
前記外観層は、前記裏面層の端部を覆って形成されていることを特徴とするパネル。
【請求項7】
前記外観層が、光輝材を含有した樹脂によって形成されていることを特徴とする請求項6記載のパネル。
【請求項8】
前記裏面層及び前記外観層が、いずれも光輝材を含有した樹脂によって形成されていることを特徴とする請求項6記載のパネル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−126121(P2011−126121A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286367(P2009−286367)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】