説明

射出成形機の射出装置および発泡射出成形方法

【課題】ショートショット法およびフルショット法などの発泡射出成形において、微細で均一な発泡セル集合体の発泡成形品を得る射出成形機の射出装置および発泡射出成形方法を提供する。
【解決手段】射出成形用スクリュ41を、スクリュ本体11、スクリュ本体11の先端に脱着自在に固定されたミキシングヘッド12、ミキシングヘッド12の先端に逆流防止装置40を備えてミキシングヘッド12に脱着自在に固定されたスクリュヘッド13により構成する。
そして、ミキシングヘッド12の外周面に、スクリュ本体11側からスクリュヘッド13側に向けて分岐と合流を繰り返す網目状の溝部を形成し、網目状に形成された溝部の中で軸方向の溝18を軸直角方向に切断した際の樹脂の通過面積が、スクリュ本体11側からスクリュヘッド13側に向かって減少するように形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機の射出装置および発泡射出成形方法に関するものであり、特に金型内に樹脂を射出充填して発泡させ、樹脂の発泡成形品を得るために好適な射出成形機の射出装置および発泡射出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡成形品を得る発泡射出成形方法として、発泡剤を混合した溶融樹脂を金型内にショートショットの状態で射出充填し、その後金型内で樹脂を発泡させるショートショット法や、発泡剤を混合した溶融樹脂を金型内にフルショットの状態で射出充填し、その後金型を開きながら樹脂を発泡させるフルショット法が従来から一般的に知られている。
【0003】
前記従来の何れの発泡射出成形方法にも適用できる射出成形機の射出装置の一例を図4に示す。
図4に示した射出装置は、加熱シリンダ32と該加熱シリンダ32に内装され螺旋状のフライトを有する射出成形用スクリュ31と、加熱シリンダ32内に発泡剤と混合した樹脂を供給するホッパ34と、該射出成形用スクリュ31を加熱シリンダ32内で軸方向に進退自在に移動させる射出シリンダ35と、該射出成形用スクリュ31を加熱シリンダ32内で回転させる油圧モータ36とを有するとともに、該射出シリンダ35と油圧モータ36に所望の圧油を供給する油圧源37と制御装置38とを備え、前記加熱シリンダ32外周面には図示しないヒータが取付けられている。
【0004】
前記射出装置は、油圧モータ36によって射出成形用スクリュ31が回転することにより、ホッパ34から発泡剤と混合した樹脂が加熱シリンダ32内に供給される構成となっており、該供給された発泡剤と混合した樹脂は、加熱シリンダ32に取付けられた図示しないヒータによって加熱され、また、射出成形用スクリュ31の回転によって混練圧縮作用を受け溶融しながら該射出成形用スクリュ31前方へ送られる。射出成形用スクリュ31前方へ送られた溶融樹脂は、射出シリンダ35により前進する射出成形用スクリュ31によって、加熱シリンダ32の先端に取付けられたノズル33から図示しない金型キャビティ内に射出充填され、発泡射出成形品を得ることができる。(特許文献1参照)
【0005】
そして、前記射出装置の射出成形用スクリュ31には、従来から一般的に知られている高分散タイプが用いられている。高分散タイプの従来型射出成形用スクリュについて、スクリュ先端構造の一例を図5に示す。
図5に示した射出成形用スクリュ31は、樹脂を送り出すための螺旋状のフライト45が設けられたスクリュ本体42と、スクリュ本体42の先端に固定されたスクリュヘッド43と、スクリュヘッド43に形成した小径部に配されたチェックリング47と、外周面の円周方向に複数個、軸方向に複数列の突起物46が形成されたミキシングヘッド44から構成される。
【0006】
そして、図5に示すスクリュ本体42から送り出された溶融樹脂は、ミキシングヘッド44を通って突起物46間の隙間を分岐又合流しながら蛇行して流れこの間に良好に分散される。(特許文献2参照)
【0007】
【特許文献1】特願2002−52591号
【特許文献2】特開平8−156047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前述した従来型の射出装置を用いて化学発泡剤による発泡射出成形を行なう場合において、化学発泡剤がミキシングヘッドの突起物部において凝集し、粗大発泡セルが混在し発泡状態が不均一となる問題が発生していた。
また、従来型の射出成形用スクリュを備えた射出装置はミキシングヘッドの突起物部において溶融樹脂が滞留し易いことから色替が悪いという問題もあった。
【0009】
さらに、前述した従来型の射出装置は、チェックリングとミキシングヘッドが直接当接して樹脂の流れを防止する構造であるため、溶融樹脂中の異物などでシール面が損傷し逆流防止の性能が低下したときは、高価なミキシングヘッドも交換しなければならないという問題もあった。
【0010】
さらに、近年、樹脂の成形性の向上が図られ、メルトフローレート(溶融指数、ISO−1133)が20g/10分以上の高流動性樹脂(ハイフロー材)が射出成形に多く用いられるようになった。しかし、前述した従来型の射出装置を用いて、前述した高流動性樹脂に化学発泡剤を混合して発泡射出成形する場合において、粘性の低い高流動性樹脂の溶融樹脂中では化学発泡剤が分散しにくく、その結果、溶融樹脂中で発泡剤の分散不良が発生して、発泡不良という問題を引き起こしていた。
【0011】
本発明は、前述した従来技術の問題点に着目し、発泡射出成形する場合においても樹脂を均一に分散することができ、化学発泡剤の混練、分散性に優れ、微細で均一な発泡セル集合体の発泡成形品を得る射出成形機の射出装置および発泡射出成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明による射出装置は、
(1)加熱シリンダ内で周方向に回転自在に、かつ、軸方向に進退自在に挿入されたスクリュ本体、該スクリュ本体の先端に脱着自在に固定されたミキシングヘッド、該ミキシングヘッドの先端に逆流防止装置を備えて該ミキシングヘッドに脱着自在に固定されたスクリュヘッドを有して、該ミキシングヘッドの外周面に、複数列の円環状の溝と隣接する該円環状の溝を連通させる複数の軸方向の溝を形成し、該軸方向の溝の軸直角断面での樹脂の通過面積が、スクリュ本体側からスクリュヘッド側に向かって減少するように形成した射出成形用スクリュを備えて、
ホッパから供給される発泡剤を混合した樹脂を、該射出成形用スクリュを回転させて混合溶融しながらスクリュヘッド前方へ送り込むことにより該射出成形用スクリュを後退させた後、該射出成形用スクリュを前進させて該スクリュヘッド前方へ送り込まれた発泡剤を含む溶融樹脂を金型キャビティ内へ射出充填するようにした。
【0013】
(2)(1)記載の射出装置において、軸方向に複数列形成した軸方向の溝の各列において、円周方向に等分割する分割数を同一として軸方向に隣接する列を互にピッチで2分の1宛(ずつ)ずらして形成することにより、前記スクリュヘッド外周面に網目状の溝を形成した。
【0014】
(3)(1)または(2)記載の射出装置において、軸方向の溝の条数は円周方向に等分割する分割数を15条以上として前記スクリュヘッド外周面に網目状の溝を形成した。
【0015】
上記の目的を達成するため、本発明による発泡射出成形方法は、
(4)加熱シリンダ内で周方向に回転自在に、かつ、軸方向に進退自在に挿入されたスクリュ本体、該スクリュ本体の先端に脱着自在に固定されたミキシングヘッド、該ミキシングヘッドの先端に逆流防止装置を備えて該ミキシングヘッドに脱着自在に固定されたスクリュヘッドを有して、該ミキシングヘッドの外周面に、複数列の円環状の溝と隣接する該円環状の溝を連通させる複数の軸方向の溝を形成し、該軸方向の溝の軸直角断面での樹脂の通過面積が、スクリュ本体側からスクリュヘッド側に向かって減少するように形成した射出成形用スクリュを用いて、
ホッパから供給される発泡剤を混合した樹脂を、該射出成形用スクリュを回転させて混合溶融しながらスクリュヘッド前方へ送り込むことによりスクリュ本体を後退させた後、該射出成形用スクリュを前進させて該スクリュヘッド前方へ送り込まれた発泡剤を含む
溶融樹脂を金型キャビティ内へ射出充填するようにした。
【0016】
(5)(4)記載の発泡射出成形方法において、発泡剤を混合した樹脂を溶融した際のメルトフローレート(溶融指数、ISO−1133)を20g/10分以上の高流動性樹脂(ハイフロー材)とした。
【発明の効果】
【0017】
本発明の射出成形機の射出装置によれば、ミキシングヘッドの外周面に、スクリュ本体側からスクリュヘッド側に向けて分岐と合流を繰り返す網目状の溝部を形成して、該網目状に形成された溝部の軸方向の溝を軸直角方向に切断した際の樹脂の通過面積が、スクリュ本体側からスクリュヘッド側に向かって減少するように形成したので、樹脂を均質化でき、発泡剤の混練、分散性に優れている。従って、発泡剤が溶融樹脂に均一に分散され、粗大発泡セルのない微細で均一な発泡セル集合体の成形品を得ることができる。
【0018】
そして、ミキシングヘッド外周面に複数列の環状溝を形成し、該隣接する環状溝間を連通して軸方向に延びる溝を、周方向に複数条、かつ、軸方向に複数列形成するとともに、該軸方向に複数列形成した溝の各列において、周方向に形成する間隔を同一として軸方向に隣接する列を互にピッチで2分の1宛(ずつ)ずらして形成するように網目状の溝を形成したので、ミキシングヘッドに送り込まれた樹脂は分岐と合流を繰り返し発泡剤は良好に分散される。また、ミキシングヘッドの網目状の溝部は滞留個所が少なく、急激な断面積の変化もなく色替性に優れる。
【0019】
本発明の発泡射出成形方法によれば、ミキシングヘッドの外周面に、スクリュ本体側からスクリュヘッド側に向けて分岐と合流を繰り返す網目状の溝部を形成して、該網目状に形成された溝部の軸方向の溝を軸直角方向に切断した際の樹脂の通過面積が、スクリュ本体側からスクリュヘッド側に向かって減少するように形成したので、樹脂を均質化でき、発泡剤の混練、分散性に優れている。従って、化学発泡剤がミキシングヘッドにおいて凝集し、粗大発泡セルが混在し発泡状態が不均一となるといった問題が生じないという優れた効果を有する。
【0020】
また、ミキシングヘッド外周面に形成した網目状の溝部において、軸方向に延びる溝の条数は円周方向に等分割する分割数を15条以上としたので、メルトフローレート(溶融指数、ISO−1133)が20g/10分以上の高流動性樹脂であっても発泡剤を全体的に均一に分散するので発泡不良を防ぐという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面に基づいて本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
図1及び図2は本発明による実施の形態に係り、図1は本発明による実施形態の好ましい一例を示す射出装置の断面図、図2はミキシングヘッド外周面網目状溝部の実施形態を説明する展開図である。
ここで、図2は、ミキシングヘッド外周面に軸方向に複数列形成した環状溝の各列において、円周方向に等分割する分割数を同一として、軸方向に隣接する列を互いにピッチで2分の1宛ずらして形成することにより、矩形の隔壁が複数形成されるような網目を形成した場合を示している。
【0022】
本発明の実施形態である射出成形機の射出装置50の構成について説明する。
図1及び図2において、41は加熱シリンダ23に内装された射出成形用スクリュで、スクリュ本体11、ミキシングヘッド12、スクリュヘッド13および逆流防止装置40を有している。該逆流防止装置40は、チェックリング14およびシート15から構成される。
そして、射出装置50は、加熱シリンダ23内に発泡剤と混合した樹脂を供給するホッパと、該射出成形用スクリュ41を加熱シリンダ23内で軸方向に進退自在に移動させる射出シリンダと、該射出成形用スクリュ41を加熱シリンダ23内で回転させる油圧モータとを有するとともに、射出シリンダと油圧モータに所望の圧油を供給する油圧源と制御装置とを備え、前記加熱シリンダ23外周面にはヒータが取付けられている。
【0023】
ミキシングヘッド12はスクリュ本体11の先端の開口部に螺合するねじ部16を備え、スクリュ本体11に脱着自在に取付けられている。そして、スクリュヘッド13はミキシングヘッド12の先端の開口部に螺合するねじ部17を備え、ミキシングヘッド12に脱着自在に取付けられている。
そして、ミキシングヘッド12は、スクリュヘッド13側の大径部と、スクリュ本体11側でスクリュ本体11の先端の開口部に螺合するねじ部16を形成した小径部とで形成され、ミキシングヘッド12のスクリュヘッド13側端面にはミキシングヘッド12脱着工具用の孔21が複数個設けられている。
また、ミキシングヘッド12大径部の最大外径は加熱シリンダ23の内径よりも小さく、かつ、スクリュ本体11の谷径よりも大きく形成した。また、ミキシングヘッド12大径部において、スクリュ本体11側の端部に形成する谷径は隣接するスクリュ本体11の谷径に一致させるとともに、スクリュヘッド13側端面の谷径はシート15の外径に一致させることによって、接合部での段差をなくして溶融樹脂の滞留が起こらない構成としている。
【0024】
ここで、図1に示すように、ミキシングヘッド12の外周面に、複数列の円環状の溝20を形成するとともに、隣接する円環状の溝20を連通して軸方向に延びる軸方向の溝18を、円周方向に複数条、かつ、軸方向に複数列形成し、該軸方向に複数列を形成した軸方向の溝の各列において、円周方向に等分割する分割数を同一として軸方向に隣接する列を互いにピッチの2分の1宛ずらして形成することにより、図2に展開図を示す矩形の隔壁部を形成するようにして網目状の溝部を形成している。
そして、該溝部の中で軸方向の溝18を軸直角方向に切断した際の樹脂の通過面積が、スクリュ本体11側からスクリュヘッド13側に向かって減少するようにするため、スクリュ本体11の谷径よりもシート15側の外径を大きくした形状としている。
【0025】
また、図1に示した射出成形機の射出装置50においては、軸方向の溝18の谷径寸法に合わせて連通する円環状の溝20の谷径寸法をスクリュヘッド側に向かって大きくするとともに溝の幅を調整して、軸方向の溝18から円環状の溝20に樹脂が流れ込む際に急激な圧力変化などが生じない構成とした。
ここで、本発明における好ましいスクリュ本体11側とスクリュヘッド13側との樹脂の通過面積の比率は1:0.9〜0.3の範囲であり、成形する樹脂のメルトフローレートや発泡剤の種類や量、発泡倍率などにより適宜選択して使用する。
【0026】
なお、前記溝部の形状は、図2に示した形状に限らないことは勿論であって、スクリュ本体11側からスクリュヘッド13側に向けて分岐と合流を繰り返す構成となっていれば良い。
また、軸方向の溝18を軸直角方向に切断した際の樹脂の通過面積を減少させる方法は前記方法に限らず、ミキシングヘッド12溝部の谷径を同一寸法とし、軸方向の溝18の円周方向の幅をスクリュ本体11側からスクリュヘッド13側に向かって減少させる方法であっても良い。
【0027】
スクリュヘッド13は、略円錐形状に形成された先頭部に後述する逆流防止装置40を取付けるための小径部を隣接して、該小径部にミキシングヘッド12の先端開口部に螺合するねじ部17を形成した構成となっている。
そして、スクリュヘッド13の小径部からチェックリング14を緩やかに嵌め込み、スクリュヘッド13のねじ部17をミキシングヘッド12の先端開口部に螺合することによって、ミキシングヘッド12とスクリュヘッド13の間でシート15を挟持させる。これによって、チェックリング14及びシート15から構成される逆流防止装置40がミキシングヘッド12とスクリュヘッド13との間で脱着自在に取付けられることになる。
なお、チェックリング14はスクリュヘッド13先端部の小径部外側に軸方向に進退自在であり、射出充填時に溶融樹脂の圧力によってスクリュ本体11側に移動した際にシート15と当接してスクリュヘッド13先端の溶融樹脂がスクリュ本体11側へ逆流することを防止する。
また、スクリュ本体11が回転しながら後退する計量工程においては、前記チェックリング14がスクリュヘッド13方向へ移動する。そして、スクリュ本体11から送られた溶融樹脂は逆流防止機構40の通路部であるチェックリング14とシート15との隙間、及び、チェックリング14とスクリュヘッド13との隙間を通ってスクリュヘッド13先端に送り込まれる。
【0028】
また、図1に示した本実施形態による射出成形装置50は、スクリュ本体11、ミキシングヘッド12、逆流防止装置40、及びスクリュヘッド12を脱着自在に固定しているため、例え、逆流防止装置のシール面が溶融樹脂中の異物などで損傷し逆流防止の性能が低下したとしても、該逆流防止装置40を該ミキシングヘッド12から取り外し別の逆流防止装置と交換することができるので、ミキシングヘッド12を交換する必要がないという優れた作用効果を備えている。
【0029】
さらに、取り扱う樹脂材料や発泡剤の種類と射出成形用スクリュが適合しないときは、前記ミキシングヘッドを前記スクリュ本体から取り外し適合する別のミキシングヘッドに交換すれば良く、高価なスクリュ本体を交換する必要がない。
【0030】
次に、このように構成された射出成形機の射出装置50を用いた発泡射出成形方法を説明する。
本発明に適用できる樹脂材料は、射出成形が可能なポリスチレンやポリプロピレンなどに代表される熱可塑性樹脂に化学発泡剤を混合したものである。そして、化学発泡剤には重炭酸ソーダに代表される無機発泡剤やアゾジカルボンアミドに代表される有機発泡剤が用いられる。
【0031】
図示しないホッパから供給された化学発泡剤を混合した樹脂は、加熱シリンダ23内で該加熱シリンダ23外周面に取付けられたヒータの熱エネルギーを受けながらスクリュ本体11の供給部、圧縮部および計量部を通過してスクリュ本体11の回転に伴う機械的エネルギーによって可塑化溶融され、ミキシングヘッド12へ送られる。そして、ミキシングヘッド12外周面に形成された網目状の溝部に流入し、軸方向の溝18、円環状の溝20、隔壁19および射出成形用スクリュ41の回転によって分岐と合流を繰り返し、発泡剤は凝集することなく分散される。
そして、ミキシングヘッド12へ送られた溶融樹脂は、逆流防止装置40の通路部を通ってスクリュヘッド13前方へ送り込まれ、その圧力で射出成形用スクリュ41を後退させる。スクリュヘッド13前方に送り込まれた溶融樹脂は、前記射出成形用スクリュ41が前進することによって射出され、加熱シリンダ23先端に取付けられたノズル24から金型キャビティ内へ充填される。
【0032】
以下、本発明による射出装置50の特徴的な作用効果について詳述する。
本発明では、ミキシングヘッド12の外周面に、スクリュ本体11側からスクリュヘッド13側に向けて分岐と合流を繰り返す網目状の溝部を形成するとともに、網目状に形成した溝部の軸方向の溝を軸直角方向に切断した際の樹脂の通過面積が、スクリュ本体11側からスクリュヘッド13側に向かって減少する構成とした。
前述したように、一般的な高分散スクリュは、ミキシングヘッドに形成した突起物を隔壁として、樹脂を分岐又合流させることにより、樹脂を混練して発泡剤を分散させる。しかし、その作用効果には限界があって、例えば、粉末状の発泡剤を樹脂中に分散させる際において、ミキシングヘッドの溝部分に樹脂の滞留しやすい部分が生じて、該滞留部分に樹脂に含まれる発泡剤が滞留部分で凝集することにより、発泡不良といった問題を引き起こしやすく、この問題は特に溶融樹脂の圧力や速度に急激な変化を生じる部分に生じやすい。
これを防止するためには、樹脂を全体的に均一に混練する必要があり、樹脂の分岐と合流回数を従来よりも増やす、あるいは狭い樹脂通路を通過させる等の手段が有効である。
たとえば、樹脂の分岐と合流回数を従来よりも増やす方法として、軸方向に延びる溝の条数を円周方向に等分割する分割数を15条以上とすると発泡剤の分散効果は大幅に改善する。
【0033】
前述した理由により、本発明による図1の射出装置50によれば、ミキシングヘッド12内を流れる溶融樹脂の圧力や速度に急激な変化を生じさせることなく、狭い樹脂通路(断面積の小さな溝部)を通過させることができ、溶融樹脂は静的な分岐と合流を繰り返し、溶融樹脂中に分散した発泡剤は凝集を起さないのである。
本発明による射出成形機の射出装置および発泡成形方法を使用し、ポリプロピレン樹脂にアゾ系の化学発泡剤を混合して射出成形をおこない、微細で均一な発泡セル集合体を有する発泡成形品を得ることができた。
【0034】
また、ミキシングヘッド12外周面の複数列の環状溝20と連通して軸方向に延びる軸方向の溝18を、周方向に複数条、かつ、軸方向に複数列形成するとともに、軸方向に複数列を形成した溝の各列において、円周方向に等分割する分割数を同一として軸方向に隣接する列を互にピッチで2分の1宛ずれるようにした図2に示す構成の射出装置50は、製作が容易で、使用後において清掃等のメンテナンスがしやすいという優れた利点を有している。
【0035】
なお、本実施の形態においては、駆動機構が油圧式の射出装置としたが、本発明に適応できる本実施の形態に限らず、電動サーボを使用する駆動機構の射出装置を本発明に使用しても良い。
また、本発明の射出装置および発泡射出成形方法は、発泡剤を混合した溶融樹脂を金型内にショートショットの状態で射出充填し、その後金型内で樹脂を発泡させるショートショット法や、発泡剤を混合した溶融樹脂を金型内にフルショットの状態で射出充填し、その後金型を開きながら樹脂を発泡させるフルショット法のいずれの発泡射出成形方法にも適用できる。
【0036】
さらに、本発明の射出装置および発泡射出成形方法は、分散性に優れているので少量の発泡剤でも均一で微細な発泡セル集合体の成形品が得られるので、未反応発泡剤の残渣による金型エアーベントの詰まりが減少するとともに、未反応発泡剤の残留による成形品強度の低下を防止するという優れた効果を有する。
【0037】
なお、図1に示す本発明の射出成形機の射出装置および発泡射出成形方法に使用するミキシングヘッドは、図3に示すようなスクリュ本体11先端の開口部およびスクリュヘッド13a小径部の開口部に螺合するねじ部16、22を備えた構成であっても良い。
そして、本発明の実施形態であるミキシングヘッドは、樹脂の押出装置および樹脂の発泡押出に使用しても、前述と同様の効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明による実施形態としての射出装置におけるスクリュ先端構造の好ましい一例を示す断面図である。
【図2】本発明によるミキシングヘッド外周面網目状溝部の実施形態を説明するための展開図である。
【図3】本発明による他の実施形態としての射出装置におけるスクリュ先端構造を説明するための断面図である。
【図4】従来の射出成形機の射出装置の一例を説明するための断面図である。
【図5】従来の射出成形用スクリュのスクリュ先端構造の一例を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0039】
11 スクリュ本体
12 ミキシングヘッド
13 スクリュヘッド
18 軸方向の溝
19 隔壁
20 円環状の溝
23 加熱シリンダ
40 逆流防止装置
41 射出成形用スクリュ
50 射出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱シリンダ内で周方向に回転自在に、かつ、軸方向に進退自在に挿入されたスクリュ本体、該スクリュ本体の先端に脱着自在に固定されたミキシングヘッド、該ミキシングヘッドの先端に逆流防止装置を備えて該ミキシングヘッドに脱着自在に固定されたスクリュヘッドを有して、
該ミキシングヘッドの外周面に、複数列の円環状の溝と隣接する該円環状の溝を連通させる複数の軸方向の溝を形成し、該軸方向の溝の軸直角断面での樹脂の通過面積が、スクリュ本体側からスクリュヘッド側に向かって減少するように形成した射出成形用スクリュを備えて、
ホッパから供給される発泡剤を混合した樹脂を、該射出成形用スクリュを回転させて混合溶融しながらスクリュヘッド前方へ送り込むことにより該射出成形用スクリュを後退させた後、該射出成形用スクリュを前進させて該スクリュヘッド前方へ送り込まれた発泡剤を含む溶融樹脂を金型キャビティ内へ射出充填する射出成形機の射出装置。
【請求項2】
前記軸方向に複数列形成した軸方向の溝の各列において、円周方向に等分割する分割数を同一として軸方向に隣接する列を互にピッチで2分の1宛(ずつ)ずらして形成した請求項1に記載の射出成形機の射出装置。
【請求項3】
前記軸方向の溝の条数は円周方向に等分割する分割数を15条以上とした請求項1または請求項2に記載の射出成形機の射出装置。
【請求項4】
加熱シリンダ内で周方向に回転自在に、かつ、軸方向に進退自在に挿入されたスクリュ本体、該スクリュ本体の先端に脱着自在に固定されたミキシングヘッド、該ミキシングヘッドの先端に逆流防止装置を備えて該ミキシングヘッドに脱着自在に固定されたスクリュヘッドを有して、
該ミキシングヘッドの外周面に、複数列の円環状の溝と隣接する該円環状の溝を連通させる複数の軸方向の溝を形成し、該軸方向の溝の軸直角断面での樹脂の通過面積が、スクリュ本体側からスクリュヘッド側に向かって減少するように形成した射出成形用スクリュを用いて、
ホッパから供給される発泡剤を混合した樹脂を、該射出成形用スクリュを回転させて混合溶融しながらスクリュヘッド前方へ送り込むことにより該射出成形用スクリュを後退させた後、該射出成形用スクリュを前進させて該スクリュヘッド前方へ送り込まれた発泡剤を含む溶融樹脂を金型キャビティ内へ射出充填する樹脂の発泡射出成形方法。
【請求項5】
前記発泡剤を混合した樹脂を溶融した際のメルトフローレート(溶融指数、ISO−1133)が20g/10分以上の高流動性樹脂(ハイフロー材)である請求項4に記載の発泡射出成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−1109(P2006−1109A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179238(P2004−179238)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】