説明

射出成形機

【課題】電磁石による吸着力で型締力を発生させる型締力発生機構を採用しつつ、ストッパ機構を構成する棒状部材の長さを最小限に抑えること。
【解決手段】射出成形機は、固定金型が取り付けられる第1の固定部材と、第1の固定部材と対向して配設される第2の固定部材と、可動金型が取り付けられる第1の可動部材と、第1の可動部材と連結されて第1の可動部材と共に移動する第2の可動部材と、第2の可動部材と第2の固定部材との間に設けられ、第2の可動部材及び第2の固定部材のうちのいずれか一方に一端が固定されると共に、第2の可動部材及び第2の固定部材のうちの他方まで他端が延在する棒状部材と、棒状部材と係合する係合位置と棒状部材から離脱する離脱位置との間で移動可能な係止部材であって、係合位置にあるときに第2の可動部材の移動を防止する係止部材と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型締め動作を駆動する電磁石を備える射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、射出成形機においては、樹脂を射出装置の射出ノズルから射出して固定金型と可動金型との間のキャビティ空間に充填(てん)し、固化させることによって成形品を得るようになっている。そして、固定金型に対して可動金型を移動させて型閉じ、型締め及び型開きを行うために型締装置が配設される。
【0003】
該型締装置には、油圧シリンダに油を供給することによって駆動される油圧式の型締装置、及び電動機によって駆動される電動式の型締装置があるが、該電動式の型締装置は、制御性が高く、周辺を汚すことがなく、かつ、エネルギー効率が高いので、多く利用されている。この場合、電動機を駆動することによってボールねじを回転させて推力を発生させ、該推力をトグル機構によって拡大し、大きな型締力を発生させるようにしている。
【0004】
ところが、構成の電動式の型締装置においては、トグル機構を使用するようになっているので、該トグル機構の特性上、型締力を変更することが困難であり、応答性及び安定性が悪く、成形中に型締力を制御することができない。そこで、ボールねじによって発生させられた推力を直接型締力として使用することができるようにした型締装置が提供されている。この場合、電動機のトルクと型締力とが比例するので、成形中に型締力を制御することができる。
【0005】
しかしながら、従来の型締装置においては、ボールねじの耐荷重性が低く、大きな型締力を発生させることができないだけでなく、電動機に発生するトルクリップルによって型締力が変動してしまう。また、型締力を発生させるために、電動機に電流を常時供給する必要があり、電動機の消費電力量及び発熱量が多くなるので、電動機の定格出力をその分大きくする必要があり、型締装置のコストが高くなってしまう。
【0006】
そこで、型開閉動作にはリニアモータを使用し、型締動作には電磁石の吸着力を利用した型締装置が考えられる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第05/090052号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、射出成形機においては、金型保護等のため、所定条件成立時に、強制的に型開閉動作を停止させる機械的なストッパ機構が設けられる。このストッパ機構は、型締動作のためにトグル機構を用いる構成では、例えば、可動プラテンに固定され、溝が形成された棒状部材と、リヤプラテンに設けられ、棒状部材の溝に嵌る係止部材とを含み、係止部材を駆動して棒状部材の溝に係止部材を嵌めることで機械的な係止を実現している。
【0009】
他方、特許文献1に記載されるような電磁石の吸着力を利用した型締装置を使用する構成の場合、可動プラテンとリヤプラテンとの間に棒状部材を設けると、可動プラテンとリヤプラテンとの間の距離が型厚調整により変化するので、棒状部材の長さが比較的長くなるという問題が生じる。即ち、棒状部材の長さは、可動プラテンとリヤプラテンとの間の距離が最大となるとき(最小型厚)を基準として決定されるべきであるので、型厚調整代分だけ可動プラテンのストロークよりも長くする必要がある。
【0010】
そこで、本発明は、電磁石による吸着力で型締力を発生させる型締力発生機構を採用しつつ、ストッパ機構を構成する棒状部材の長さを最小限に抑えることができる射出成形機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の一局面によれば、固定金型が取り付けられる第1の固定部材と、
前記第1の固定部材と対向して配設される第2の固定部材と、
可動金型が取り付けられる第1の可動部材と、
前記第1の可動部材と連結されて前記第1の可動部材と共に移動する第2の可動部材であって、前記第2の固定部材と協動して、電磁石による吸着力で型締力を発生させる型締力発生機構を構成する第2の可動部材と、
前記第2の可動部材と前記第2の固定部材との間に設けられ、前記第2の可動部材及び前記第2の固定部材のうちのいずれか一方に一端が固定されると共に、前記第2の可動部材及び前記第2の固定部材のうちの他方まで他端が延在する棒状部材と、
前記棒状部材と係合する係合位置と前記棒状部材から離脱する離脱位置との間で移動可能な係止部材であって、前記係合位置にあるときに前記第2の可動部材の移動を防止する係止部材と、を備えることを特徴とする、射出成形機が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電磁石による吸着力で型締力を発生させる型締力発生機構を採用しつつ、ストッパ機構を構成する棒状部材の長さを最小限に抑えることができる射出成形機が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態の射出成形機における型締装置の型閉じ時の状態を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態の射出成形機における型締装置の型開き時の状態を示す図である。
【図3】ストッパ機構90の一実施例を示す図である。
【図4】ストッパ機構90の動作態様の一例を示す断面図である。
【図5】他の一実施例によるストッパ機構90'を示す図である。
【図6】係止部材94がストッパ溝93'に嵌った状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。尚、本実施の形態において、型締装置については、型閉じを行う際の可動プラテンの移動方向を前方とし、型開きを行う際の可動プラテンの移動方向を後方とし、射出装置については、射出を行う際のスクリューの移動方向を前方とし、計量を行う際のスクリューの移動方向を後方として説明する。
【0015】
図1は本発明の実施の形態の射出成形機における型締装置の型閉じ時の状態を示す図、図2は本発明の実施の形態の射出成形機における型締装置の型開き時の状態を示す図である。尚、図1及び図2において、ハッチングを付された部材は主要断面を示す。
【0016】
図において、10は型締装置、Frは射出成形機のフレーム(架台)、Gdは、該フレームFrに対して可動なガイド、11は、図示されないガイド上又はフレームFr上に載置された固定プラテンであり、該固定プラテン11と所定の間隔を置いて、かつ、固定プラテン11と対向させてリヤプラテン13が配設され、固定プラテン11とリヤプラテン13との間に4本のタイバー14(図においては、4本のタイバー14のうちの2本だけを示す。)が架設される。尚、リヤプラテン13は、フレームFrに対して固定される。
【0017】
タイバー14の前端部(図において右端部)にはネジ部(図示せず)が形成され、該ネジ部にナットn1を螺合して締め付けることによって、タイバー14の前端部が固定プラテン11に固定される。タイバー14の後端部はリヤプラテン13に固定される。
【0018】
そして、タイバー14に沿って固定プラテン11と対向させて可動プラテン12が型開閉方向に進退自在に配設される。そのために、可動プラテン12がガイドGdに固定され、可動プラテン12におけるタイバー14と対応する箇所にタイバー14を貫通させるための図示されないガイド穴又は切欠き部が形成される。尚、ガイドGdには、後述の吸着板22も固定される。ガイドGdは、図示のように、吸着板22と可動プラテン12のそれぞれに対して別々に設けられてもよいし、吸着板22と可動プラテン12に対して共通の一体物により構成されてもよい。
【0019】
また、固定プラテン11には固定金型15が、可動プラテン12には可動金型16がそれぞれ固定され、可動プラテン12の進退に伴って固定金型15と可動金型16とが接離させられ、型閉じ、型締め及び型開きが行われる。尚、型締めが行われるのに伴って、固定金型15と可動金型16との間に図示されないキャビティ空間が形成され、射出装置17の射出ノズル18から射出された図示されない樹脂がキャビティ空間に充墳される。また、固定金型15及び可動金型16によって金型装置19が構成される。
【0020】
吸着板22は、可動プラテン12と平行にガイドGdに固定される。これにより、吸着板22は、リヤプラテン13より後方において進退自在となる。吸着板22は、磁性材料で形成されてよい。例えば、吸着板22は、強磁性体から成る薄板を積層することによって形成される電磁積層鋼板により構成されてもよい。或いは、吸着板22は、鋳造により形成されてもよい。
【0021】
リニアモータ28は、可動プラテン12を進退させるため、ガイドGdに設けられる。リニアモータ28は、固定子29、及び可動子31を備え、固定子29は、フレームFr上において、ガイドGdと平行に、かつ、可動プラテン12の移動範囲に対応させて形成され、可動子31は、可動プラテン12の下端において、固定子29と対向させて、かつ、所定の範囲にわたって形成される。
【0022】
可動子31は、コア34及びコイル35を備える。そして、コア34は、固定子29に向けて突出させて、所定のピッチで形成された複数の磁極歯33を備え、コイル35は、各磁極歯33に巻装される。尚、磁極歯33は可動プラテン12の移動方向に対して直角の方向に、互いに平行に形成される。また、固定子29は、図示されないコア、及び該コア上に延在させて形成された図示されない永久磁石を備える。該永久磁石は、N極及びS極の各磁極を交互に着磁させることによって形成される。コイル35に所定の電流を供給することによってリニアモータ28を駆動すると、可動子31が進退させられ、それに伴って、ガイドGdにより可動プラテン12が進退させられ、型閉じ及び型開きを行うことができる。
【0023】
尚、本実施の形態においては、固定子29に永久磁石を、可動子31にコイル35を配設するようになっているが、固定子にコイルを、可動子に永久磁石を配設することもできる。その場合、リニアモータ28が駆動されるのに伴って、コイルが移動しないので、コイルに電力を供給するための配線を容易に行うことができる。
【0024】
尚、ガイドGdに可動プラテン12と吸着板22を固定する構成に限られず、可動プラテン12又は吸着板22にリニアモータ28の可動子31を設ける構成としてもよい。また、型開閉機構としては、リニアモータ28に限定されず、油圧式や電動式等であってもよい。
【0025】
可動プラテン12が前進させられて可動金型16が固定金型15に当接すると、型閉じが行われ、続いて、型締めが行われる。リヤプラテン13と吸着板22との間に、型締めを行うための電磁石ユニット37が配設される。また、リヤプラテン13及び吸着板22を貫通して延び、かつ、可動プラテン12と吸着板22とを連結するセンターロッド39が進退自在に配設される。該センターロッド39は、型閉じ時及び型開き時に、可動プラテン12の進退に連動させて吸着板22を進退させ、型締め時に、電磁石ユニット37によって発生させられた吸着力を可動プラテン12に伝達する。
【0026】
尚、固定プラテン11、可動プラテン12、リヤプラテン13、吸着板22、リニアモータ28、電磁石ユニット37、センターロッド39等によって型締装置10が構成される。
【0027】
電磁石ユニット37は、リヤプラテン13側に形成された電磁石49、及び吸着板22側に形成された吸着部51からなる。また、リヤプラテン13の後端面の所定の部分、本実施の形態においては、センターロッド39まわりに溝45が形成され、溝45よりも内側にコア46、及び溝45よりも外側にヨーク47が形成される。そして、溝45内でコア46まわりにコイル48が巻装される。尚、コア46及びヨーク47は、鋳物の一体構造で構成されるが、強磁性体から成る薄板を積層することによって形成され、電磁積層鋼板を構成してもよい。
【0028】
尚、本実施の形態において、リヤプラテン13とは別に電磁石49が、吸着板22とは別に吸着部51が形成されもよいし、リヤプラテン13の一部として電磁石を、吸着板22の一部として吸着部を形成してもよい。また、電磁石と吸着部の配置は、逆であってもよい。例えば、吸着板22側に電磁石49を設け、リヤプラテン13側に吸着部を設けてもよい。
【0029】
電磁石ユニット37において、コイル48に電流を供給すると、電磁石49が駆動され、吸着部51を吸着し、型締力を発生させることができる。
【0030】
センターロッド39は、後端部において吸着板22と連結させて、前端部において可動プラテン12と連結させて配設される。したがって、センターロッド39は、型閉じ時に可動プラテン12と共に前進させられて吸着板22を前進させ、型開き時に可動プラテン12と共に後退させられて吸着板22を後退させる。そのために、リヤプラテン13の中央部分に、センターロッド39を貫通させるための穴41が形成される。
【0031】
型締装置10のリニアモータ28及び電磁石49の駆動は、制御部60によって制御される。制御部60は、CPU及びメモリ等を備え、CPUによって演算された結果に応じて、リニアモータ28のコイル35や電磁石49のコイル48に電流を供給するための回路も備える。制御部60には、また、荷重検出器55が接続される。荷重検出器55は、型締装置10において、少なくとも1本のタイバー14の所定の位置(固定プラテン11とリヤプラテン13との間における所定の位置)に設置され、当該タイバー14にかかる荷重を検出する。図中では、上下二本のタイバー14に荷重検出器55が設置された例が示されている。荷重検出器55は、例えば、タイバー14の伸び量を検出するセンサによって構成される。荷重検出器55によって検出された荷重(歪)は、制御部60に送られる。制御部60は、荷重検出器55の出力に基づいて、型締力を検出する。尚、制御部60は、図2においては便宜上省略されている。
【0032】
尚、図示の例では、吸着板22の後方側には、型厚調整機構44が設けられる。型厚調整機構44は、金型装置19の厚さに対応させて、可動プラテン12と吸着板22との相対的な位置(即ちこれらの間の距離)を調整する機構である。型厚調整機構44の構成自体は任意であってよい。例えば、型厚調整機構44は、図示しない型厚調整用モータにより吸着板22に対するセンターロッド39の位置を可変する。これにより、吸着板22に対するセンターロッド39の位置が調整され、固定プラテン11に対する可動プラテン12の位置が調整される。すなわち、可動プラテン12と吸着板22との相対的な位置を変えることによって、型厚の調整が行われる。
【0033】
次に、型締装置10の動作について説明する。
【0034】
制御部60の型開閉処理部61によって型閉じ工程が制御される。図2の状態(型開き時の状態)において、型開閉処理部61は、コイル35に電流を供給する。続いて、リニアモータ28が駆動され、可動プラテン12が前進させられ、図1に示されるように、可動金型16が固定金型15に当接させられる。このとき、リヤプラテン13と吸着板22との間、すなわち、電磁石49と吸着部51との間には、ギャップδが形成される。尚、型閉じに必要とされる力は、型締力と比較されて十分に小さくされる。
【0035】
続いて、制御部60の型締処理部62は、型締工程を制御する。型締処理部62は、コイル48に電流を供給し、吸着部51を電磁石49の吸着力によって吸着する。それに伴って、吸着板22及びセンターロッド39を介して型締力が可動プラテン12に伝達され、型締めが行われる。型締め開始時等、型締力を変化させる際に、型締処理部62は、当該変化によって得るべき目標となる型締力、すなわち、定常状態で目標とする型締力を発生させるために必要な定常的な電流の値をコイル48に供給するように制御している。
【0036】
尚、型締力は荷重検出器55によって検出される。検出された型締力は制御部60に送られ、制御部60において、型締力が設定値になるようにコイル48に供給される電流が調整され、フィードバック制御が行われる。この間、射出装置17において溶融させられた樹脂が射出ノズル18から射出され、金型装置19のキャビティ空間に充墳される。
【0037】
キャビティ空間内の樹脂が冷却されて固化すると、型開閉処理部61は、型開き工程を制御する。型締処理部62は、図1の状態において、コイル48への電流の供給を停止する。それに伴って、リニアモータ28が駆動され、可動プラテン12が後退させられ、図2に示されるように、可動金型16が後退限位置に置かれ、型開きが行われる。
【0038】
ここで、図3以降を参照して、ストッパ機構90について説明する。尚、図1及び図2においては、断面図であるので、ストッパ機構90は図示されていない。ストッパ機構90は、例えば、射出成形機の側方側に設けられてよい。
【0039】
図3は、ストッパ機構90の一実施例を示す図である。図4は、ストッパ機構90の動作態様の一例を示す断面図であり、棒状部材92に係止部材94が嵌る態様の一例を示す。
【0040】
ストッパ機構90は、図3に示すように、リヤプラテン13と吸着板22との間に設けられる。具体的には、ストッパ機構90は、リヤプラテン13と吸着板22との間に設けられる棒状部材92と、係止部材94とを含む。
【0041】
棒状部材92は、金属などからなる高強度・剛性の部材であり、リヤプラテン13と吸着板22との間に延在する。棒状部材92は、丸棒であってもよいし、角棒であってもよいし、任意の断面形状を有してよい。棒状部材92は、実質的に、型開き状態(図2及び図3参照)におけるリヤプラテン13と吸着板22との間の距離に対応する長さを有する。棒状部材92は、後方側端部が吸着板22に結合される。棒状部材92の前方側端部は、リヤプラテン13まで延在する。棒状部材92は、型閉じ時に、吸着板22と共に前方(図3の矢印Y参照)に移動する。尚、棒状部材92は、かかる前方移動時(後方移動時も同様)に、リヤプラテン13の側方(図3の紙面鉛直方向手前側)を通過し、リヤプラテン13と干渉しない。
【0042】
棒状部材92は、複数のストッパ溝93(本例では、5つ)が形成される。ストッパ溝93は、後述の係止部材94が嵌るような形状に形成される。尚、ストッパ溝93の数や間隔は任意であってよい。ストッパ溝93は、図3及び図4に示すように、前方側から傾斜面93aにて底面93cに達し、底面93cの後方側で直角な係止面93bで立ち上がる断面を有する。
【0043】
係止部材94は、金属などからなる高強度・剛性の部材であり、図4に示すように、棒状部材92のストッパ溝93に嵌る端部を有する。係止部材94は、棒状部材92のストッパ溝93に嵌る係合位置(図4(B)参照)と、棒状部材92のストッパ溝93から離脱する離脱位置(図4(A)参照)との間で移動可能である。係止部材94は、図示しないアクチュエータにより駆動される。
【0044】
ストッパ機構90の非作動時、係止部材94は、離脱位置(図4(A)参照)に保持される。この場合、棒状部材92及びそれに伴い吸着板22は、リヤプラテン13の方向(図3の矢印Y参照)及びその逆方向に移動することができる。即ち、型開閉動作が可能である。他方、ストッパ機構90の作動時、係止部材94は、離脱位置から係合位置(図4(B)参照)へと駆動される。この場合、吸着板22は、棒状部材92がストッパ溝93の係止面93bから受ける力F(図4(B)参照)により、リヤプラテン13の方向への移動が不能となる。即ち、吸着板22は、棒状部材92がストッパ溝93の係止面93bに当たると、それ以上、前方に移動できなくなる。
【0045】
ストッパ機構90の動作、即ち係止部材94の位置の切り替え制御は、制御部60により実現されてよい。制御部60は、ストッパ機構90が作動すべき所定条件が成立した場合に、図示しないアクチュエータにより係止部材94を係合位置へと駆動する。所定条件は、任意であるが、例えば射出成形機のドアが開かれた場合を含んでよい。尚、係止部材94が係合位置へと駆動されると、複数のストッパ溝93のうちのいずれかに係止部材94が嵌る。具体的には、複数のストッパ溝93は、型閉じ時の吸着板22の移動中の任意の時点でストッパ機構90が作動されても、係止部材94を受け入れられるように設けられる。尚、ストッパ機構90の作動時の吸着板22とリヤプラテン13の位置関係に依存して、係止部材94は、ストッパ機構90の作動時に、直接、ストッパ溝93内に嵌ることもあれば、ストッパ溝93以外部位に当たり、傾斜面93aを介してストッパ溝93内に嵌ることもありうる。傾斜面93aは、型閉じ中のストッパ機構90の作動時において、ストッパ溝93内への係止部材94のスムーズな嵌りを補助する機能を有する。
【0046】
尚、図3及び図4に示す例では、係止部材94との衝突に対する強度上の観点から、複数のストッパ溝93は、連続して形成されず、互いに離間して形成されている。即ち、前方側のストッパ溝93の傾斜面93aから前方側の次のストッパ溝93の係止面93bまでの間の距離をゼロにすると、傾斜面93aの頂部が鋭利になり、係止部材94との衝突に対して強度上不利となるので、ストッパ溝93の傾斜面93aから隣のストッパ溝93の係止面93bまでの間に、一定の距離が設けられている。また、図3及び図4に示す例では、複数のストッパ溝93の全ては、後方側に係止面93bを有し、前方側には傾斜面93aを有するので、ストッパ機構90は、実質的に、型閉じ時にのみ機能する。即ち、型開き時は、ストッパ溝93内に係止部材94が嵌っても、傾斜面93aにて係止部材94を係止できないので、吸着板22の後方への移動が許容される。
【0047】
このように図3に示すストッパ機構90によれば、棒状部材92がリヤプラテン13と吸着板22との間に設けられるので、棒状部材92に必要な長さ(型開閉方向の長さ)は、型開閉のストローク分で済む。これに対して、比較例として、同様のストッパ機構(及びその棒状部材)がリヤプラテン13と可動プラテン12との間に設けられる場合には、棒状部材は、型開閉のストローク分と型厚調整代分の長さが必要となる。これは、リヤプラテン13と吸着板22との間は、型厚調整によって距離が変化しないのに対して、リヤプラテン13と可動プラテン12との間は、型厚調整によって距離が変化することに起因する。このように、型厚調整によって距離が変化しないリヤプラテン13と吸着板22との間にストッパ機構90を配置することで、棒状部材92の長さを最小限に抑えることができる。
【0048】
図5は、他の一実施例によるストッパ機構90'を示す図である。図6は、係止部材94がストッパ溝93'に嵌った状態を示す断面図である。
【0049】
本実施例のストッパ機構90'は、図3及び図4を参照して説明したストッパ機構90に対して、最も後方側のストッパ溝93が、ストッパ溝93'に置換された点が主に異なる。即ち、ストッパ機構90'の棒状部材92'は、複数のストッパ溝93(本例では4つ)とストッパ溝93'が形成され、ストッパ溝93'は、最も後方側に形成される。
【0050】
ストッパ溝93'は、図5及び図6に示すように、底面93cの前方側で直角な係止面93a'で立ち上がると共に、底面93cの後方側で直角な係止面93bで立ち上がる断面を有する。棒状部材92'におけるストッパ溝93'は、係止部材94が嵌るときに、リヤプラテン13と吸着板22との間の距離が型締時のギャップδ(図1参照)に対応する距離となるような位置に形成される。即ち、図6に示す状態では、吸着板22は、係止部材94がストッパ溝93'の係止面93a'から受ける力F1により、後方(型開き方向)への移動が不能となるが、この状態において、リヤプラテン13と吸着板22との間の距離が型締時のギャップδに対応するようにする。これにより、金型交換時(金型整備を目的とした交換時を含む)において、固定プラテン11や可動プラテン12への金型のいわゆる無給電型締めが可能となる。具体的には、リヤプラテン13と吸着板22との間の距離が型締時のギャップδとなる状態で、ストッパ機構90'を作動させる。これにより、図6に示すように、吸着板22は、係止部材94がストッパ溝93'の係止面93a'から受ける力F1により、後方(型開き方向)への移動が不能となる。従って、この状態では、電磁石49の駆動を必要とすることなく、金型交換中に常にギャップδが維持され、金型交換作業を効率的に行うことができる。例えば、係止部材94をストッパ溝93'に嵌めた状態で型厚調整機構44により、可動プラテン12を前進させることにより、所望の型締力を発生させることができる。これにより、固定プラテン11と可動プラテン12との間に所望の型締力が維持された状態で、金型装置19の本止め作業を行うことができる。
【0051】
尚、上述した実施例においては、特許請求の範囲における「第1の固定部材」は、固定プラテン11に対応し、特許請求の範囲における「第1の可動部材」は、可動プラテン12に対応する。また、特許請求の範囲における「第2の固定部材」は、リヤプラテン13に対応し、特許請求の範囲における「第2の可動部材」は、吸着板22に対応する。また、特許請求の範囲における「第1の溝」は、ストッパ溝93に対応し、特許請求の範囲における「第2の溝」は、ストッパ溝93'に対応する。
【0052】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0053】
例えば、上述した実施例では、ストッパ溝93に傾斜面93aを形成して、リヤプラテン13の型閉じ方向の移動のみを係止しつつ、ストッパ溝93内への係止部材94のスムーズな嵌りを実現しているが、係止部材94の端部に同様の傾斜面を形成して同様の効果を得ることも可能である。
【0054】
また、上述した実施例では、係止部材94は、リヤプラテン13に設けられているが、フレームFr等のような他の固定部材に設けられてもよい。例えば、係止部材94は、フレームFrから係合位置への上方に移動するように構成されてもよい。この場合、ストッパ溝93(ストッパ溝93'も同様、以下同じ)は、棒状部材92(棒状部材92'も同様、以下同じ)の下面側に形成されればよい。
【0055】
また、上述した実施例では、棒状部材92が吸着板22側に固定され、係止部材94がリヤプラテン13側に設けられているが、逆の構成も可能である。即ち、棒状部材92がリヤプラテン13(又はフレームFr等のような他の固定部材)に固定され、係止部材94が吸着板22に設けられてもよい。後者の場合、棒状部材92は、フレームFrと一体的に構成されてもよい。
【0056】
また、上述では、特定の構成の型締装置10を例示しているが、型締装置10は、電磁石を利用して型締めを行う任意の構成であってよい。
【符号の説明】
【0057】
Fr フレーム
Gd ガイド
10 型締装置
11 固定プラテン
12 可動プラテン
13 リヤプラテン
14 タイバー
15 固定金型
16 可動金型
17 射出装置
18 射出ノズル
19 金型装置
22 吸着板
28 リニアモータ
29 固定子
31 可動子
33 磁極歯
34 コア
35 コイル
37 電磁石ユニット
39 センターロッド
41 穴
44 型厚調整機構
45 溝
46 コア
47 ヨーク
48 コイル
49 電磁石
51 吸着部
55 荷重検出器
60 制御部
61 型開閉処理部
62 型締処理部
90、90' ストッパ機構
92、92' 棒状部材
93、93' ストッパ溝
93a 傾斜面
93a' 係止面
93b 係止面
94 係止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型が取り付けられる第1の固定部材と、
前記第1の固定部材と対向して配設される第2の固定部材と、
可動金型が取り付けられる第1の可動部材と、
前記第1の可動部材と連結されて前記第1の可動部材と共に移動する第2の可動部材であって、前記第2の固定部材と協動して、電磁石による吸着力で型締力を発生させる型締力発生機構を構成する第2の可動部材と、
前記第2の可動部材と前記第2の固定部材との間に設けられ、前記第2の可動部材及び前記第2の固定部材のうちのいずれか一方に一端が固定されると共に、前記第2の可動部材及び前記第2の固定部材のうちの他方まで他端が延在する棒状部材と、
前記棒状部材と係合する係合位置と前記棒状部材から離脱する離脱位置との間で移動可能な係止部材であって、前記係合位置にあるときに前記第2の可動部材の移動を防止する係止部材と、を備えることを特徴とする、射出成形機。
【請求項2】
前記棒状部材は、前記係合位置にある前記係止部材が嵌る溝が複数個形成される、請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記複数の溝は、前記係止部材が嵌るときに、型閉じ方向の前記第2の可動部材の移動を係止するように機能する第1の溝と、前記係止部材が嵌るときに、型開き方向の前記第2の可動部材の移動を係止するように機能する第2の溝とを含む、請求項2に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記棒状部材における前記第2の溝は、前記係止部材が嵌るときに、前記第2の可動部材と前記第2の固定部材との間の距離が型締時のギャップに対応する距離となるような位置に形成される、請求項3に記載の射出成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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