説明

射出成形機

【課題】渦電流の流路を適切に遮断して応答性を高めること。
【解決手段】射出成形機は、固定金型が取り付けられる第1の固定部材と、第1の固定部材と対向して配設される第2の固定部材13’と、可動金型が取り付けられる第1の可動部材と、第1の可動部材と連結されて第1の可動部材と共に移動する第2の可動部材と、を備え、第2の固定部材と第2の可動部材は、電磁石による吸着力で型締力を発生させる型締力発生機構を構成し、第2の固定部材及び第2の可動部材のうちの少なくともいずれか一方の部材は、2つ以上の分割体13A’13B’を結合して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型締め動作を駆動する電磁石を備える射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、射出成形機においては、樹脂を射出装置の射出ノズルから射出して固定金型と可動金型との間のキャビティ空間に充填(てん)し、固化させることによって成形品を得るようになっている。そして、固定金型に対して可動金型を移動させて型閉じ、型締め及び型開きを行うために型締装置が配設される。
【0003】
該型締装置には、油圧シリンダに油を供給することによって駆動される油圧式の型締装置、及び電動機によって駆動される電動式の型締装置があるが、該電動式の型締装置は、制御性が高く、周辺を汚すことがなく、かつ、エネルギー効率が高いので、多く利用されている。この場合、電動機を駆動することによってボールねじを回転させて推力を発生させ、該推力をトグル機構によって拡大し、大きな型締力を発生させるようにしている。
【0004】
ところが、構成の電動式の型締装置においては、トグル機構を使用するようになっているので、該トグル機構の特性上、型締力を変更することが困難であり、応答性及び安定性が悪く、成形中に型締力を制御することができない。そこで、ボールねじによって発生させられた推力を直接型締力として使用することができるようにした型締装置が提供されている。この場合、電動機のトルクと型締力とが比例するので、成形中に型締力を制御することができる。
【0005】
しかしながら、従来の型締装置においては、ボールねじの耐荷重性が低く、大きな型締力を発生させることができないだけでなく、電動機に発生するトルクリップルによって型締力が変動してしまう。また、型締力を発生させるために、電動機に電流を常時供給する必要があり、電動機の消費電力量及び発熱量が多くなるので、電動機の定格出力をその分大きくする必要があり、型締装置のコストが高くなってしまう。
【0006】
そこで、型開閉動作にはリニアモータを使用し、型締動作には電磁石の吸着力を利用した型締装置が考えられる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第05/090052号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に記載されるような電磁石の吸着力を利用した型締装置を使用する構成の場合、渦電流の発生による応答遅れや鉄損、それによる発熱等が問題となる。
【0009】
そこで、本発明は、渦電流の流路を適切に遮断して応答性を高めることができる射出成形機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一局面によれば、固定金型が取り付けられる第1の固定部材と、
前記第1の固定部材と対向して配設される第2の固定部材と、
可動金型が取り付けられる第1の可動部材と、
前記第1の可動部材と連結されて前記第1の可動部材と共に移動する第2の可動部材と、を備え、
前記第2の固定部材と前記第2の可動部材は、電磁石による吸着力で型締力を発生させる型締力発生機構を構成し、
前記第2の固定部材及び前記第2の可動部材のうちの少なくともいずれか一方の部材は、2つ以上の分割体を結合して構成される、射出成形機が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、渦電流の流路を適切に遮断して応答性を高めることができる射出成形機が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態の射出成形機における型締装置の型閉じ時の状態を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態の射出成形機における型締装置の型開き時の状態を示す図である。
【図3】一実施例(実施例1)による分割構造を備えるリヤプラテン13の単品状態を示す斜視図である。
【図4】磁場の対称面の説明図である。
【図5】分割構造を備えるリヤプラテン13の渦電流流路切断作用の説明図である。
【図6】分割体13A、13B間の結合態様の一例を示す図である。
【図7】分割体13A、13B間の結合部に設けられる補強部材90の一例を示す図である。
【図8】実施例2による分割構造を備えるリヤプラテン13の単品状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。尚、本実施の形態において、型締装置については、型閉じを行う際の可動プラテンの移動方向を前方とし、型開きを行う際の可動プラテンの移動方向を後方とし、射出装置については、射出を行う際のスクリューの移動方向を前方とし、計量を行う際のスクリューの移動方向を後方として説明する。
【0014】
図1は本発明の実施の形態の射出成形機における型締装置の型閉じ時の状態を示す図、図2は本発明の実施の形態の射出成形機における型締装置の型開き時の状態を示す図である。尚、図1及び図2において、ハッチングを付された部材は主要断面を示す。
【0015】
図において、10は型締装置、Frは射出成形機のフレーム(架台)、Gdは、該フレームFrに対して可動なガイド、11は、図示されないガイド上又はフレームFr上に載置された固定プラテンであり、該固定プラテン11と所定の間隔を置いて、かつ、固定プラテン11と対向させてリヤプラテン13が配設され、固定プラテン11とリヤプラテン13との間に4本のタイバー14(図においては、4本のタイバー14のうちの2本だけを示す。)が架設される。尚、リヤプラテン13は、フレームFrに対して固定される。
【0016】
タイバー14の前端部(図において右端部)にはネジ部(図示せず)が形成され、該ネジ部にナットn1を螺合して締め付けることによって、タイバー14の前端部が固定プラテン11に固定される。タイバー14の後端部はリヤプラテン13に固定される。
【0017】
そして、タイバー14に沿って固定プラテン11と対向させて可動プラテン12が型開閉方向に進退自在に配設される。そのために、可動プラテン12がガイドGdに固定され、可動プラテン12におけるタイバー14と対応する箇所にタイバー14を貫通させるための図示されないガイド穴又は切欠き部が形成される。尚、ガイドGdには、後述の吸着板22も固定される。
【0018】
また、固定プラテン11には固定金型15が、可動プラテン12には可動金型16がそれぞれ固定され、可動プラテン12の進退に伴って固定金型15と可動金型16とが接離させられ、型閉じ、型締め及び型開きが行われる。尚、型締めが行われるのに伴って、固定金型15と可動金型16との間に図示されないキャビティ空間が形成され、射出装置17の射出ノズル18から射出された図示されない樹脂がキャビティ空間に充墳される。また、固定金型15及び可動金型16によって金型装置19が構成される。
【0019】
吸着板22は、可動プラテン12と平行にガイドGdに固定される。これにより、吸着板22は、リヤプラテン13より後方において進退自在となる。吸着板22は、磁性材料で形成されてよい。例えば、吸着板22は、強磁性体から成る薄板を積層することによって形成される電磁積層鋼板により構成されてもよい。或いは、吸着板22は、鋳造により形成されてもよい。
【0020】
リニアモータ28は、可動プラテン12を進退させるため、ガイドGdに設けられる。リニアモータ28は、固定子29、及び可動子31を備え、固定子29は、フレームFr上において、ガイドGdと平行に、かつ、可動プラテン12の移動範囲に対応させて形成され、可動子31は、可動プラテン12の下端において、固定子29と対向させて、かつ、所定の範囲にわたって形成される。
【0021】
可動子31は、コア34及びコイル35を備える。そして、コア34は、固定子29に向けて突出させて、所定のピッチで形成された複数の磁極歯33を備え、コイル35は、各磁極歯33に巻装される。尚、磁極歯33は可動プラテン12の移動方向に対して直角の方向に、互いに平行に形成される。また、固定子29は、図示されないコア、及び該コア上に延在させて形成された図示されない永久磁石を備える。該永久磁石は、N極及びS極の各磁極を交互に着磁させることによって形成される。コイル35に所定の電流を供給することによってリニアモータ28を駆動すると、可動子31が進退させられ、それに伴って、ガイドGdにより可動プラテン12が進退させられ、型閉じ及び型開きを行うことができる。
【0022】
尚、本実施の形態においては、固定子29に永久磁石を、可動子31にコイル35を配設するようになっているが、固定子にコイルを、可動子に永久磁石を配設することもできる。その場合、リニアモータ28が駆動されるのに伴って、コイルが移動しないので、コイルに電力を供給するための配線を容易に行うことができる。
【0023】
尚、ガイドGdに可動プラテン12と吸着板22を固定する構成に限られず、可動プラテン12又は吸着板22にリニアモータ28の可動子31を設ける構成としてもよい。また、型開閉機構としては、リニアモータ28に限定されず、油圧式や電動式等であってもよい。
【0024】
可動プラテン12が前進させられて可動金型16が固定金型15に当接すると、型閉じが行われ、続いて、型締めが行われる。リヤプラテン13と吸着板22との間に、型締めを行うための電磁石ユニット37が配設される。また、リヤプラテン13及び吸着板22を貫通して延び、かつ、可動プラテン12と吸着板22とを連結するセンターロッド39が進退自在に配設される。該センターロッド39は、型閉じ時及び型開き時に、可動プラテン12の進退に連動させて吸着板22を進退させ、型締め時に、電磁石ユニット37によって発生させられた吸着力を可動プラテン12に伝達する。
【0025】
尚、固定プラテン11、可動プラテン12、リヤプラテン13、吸着板22、リニアモータ28、電磁石ユニット37、センターロッド39等によって型締装置10が構成される。
【0026】
電磁石ユニット37は、リヤプラテン13側に形成された電磁石49、及び吸着板22側に形成された吸着部51からなる。また、リヤプラテン13の後端面の所定の部分、本実施の形態においては、センターロッド39まわりに溝45が形成され、溝45よりも内側にコア46、及び溝45よりも外側にヨーク47が形成される。そして、溝45内でコア46まわりにコイル48が巻装される。尚、コア46及びヨーク47は、鋳物の一体構造で構成されてもよい。
【0027】
尚、本実施の形態において、リヤプラテン13とは別に電磁石49が、吸着板22とは別に吸着部51が形成されもよいし、リヤプラテン13の一部として電磁石を、吸着板22の一部として吸着部を形成してもよい。また、電磁石と吸着部の配置は、逆であってもよい。例えば、吸着板22側に電磁石49を設け、リヤプラテン13側に吸着部を設けてもよい。
【0028】
電磁石ユニット37において、コイル48に電流を供給すると、電磁石49が駆動され、吸着部51を吸着し、型締力を発生させることができる。
【0029】
センターロッド39は、後端部において吸着板22と連結させて、前端部において可動プラテン12と連結させて配設される。したがって、センターロッド39は、型閉じ時に可動プラテン12と共に前進させられて吸着板22を前進させ、型開き時に可動プラテン12と共に後退させられて吸着板22を後退させる。そのために、リヤプラテン13の中央部分に、センターロッド39を貫通させるための穴41が形成され、穴41の前端部の開口に臨ませて、センターロッド39を摺動自在に支持するブッシュ等の軸受部材Br1が配設される。
【0030】
型締装置10のリニアモータ28及び電磁石49の駆動は、制御部60によって制御される。制御部60は、CPU及びメモリ等を備え、CPUによって演算された結果に応じて、リニアモータ28のコイル35や電磁石49のコイル48に電流を供給するための回路も備える。制御部60には、また、荷重検出器55が接続される。荷重検出器55は、型締装置10において、少なくとも1本のタイバー14の所定の位置(固定プラテン11とリヤプラテン13との間における所定の位置)に設置され、当該タイバー14にかかる荷重を検出する。図中では、上下二本のタイバー14に荷重検出器55が設置された例が示されている。荷重検出器55は、例えば、タイバー14の伸び量を検出するセンサによって構成される。荷重検出器55によって検出された荷重は、制御部60に送られる。尚、制御部60は、図2においては便宜上省略されている。
【0031】
次に、型締装置10の動作について説明する。
【0032】
制御部60の型開閉処理部61によって型閉じ工程が制御される。図2の状態(型開き時の状態)において、型開閉処理部61は、コイル35に電流を供給する。続いて、リニアモータ28が駆動され、可動プラテン12が前進させられ、図1に示されるように、可動金型16が固定金型15に当接させられる。このとき、リヤプラテン13と吸着板22との間、すなわち、電磁石49と吸着部51との間には、ギャップδが形成される。尚、型閉じに必要とされる力は、型締力と比較されて十分に小さくされる。
【0033】
続いて、制御部60の型締処理部62は、型締工程を制御する。型締処理部62は、コイル48に電流を供給し、吸着部51を電磁石49の吸着力によって吸着する。それに伴って、吸着板22及びセンターロッド39を介して型締力が可動プラテン12に伝達され、型締めが行われる。型締め開始時等、型締力を変化させる際に、型締処理部62は、当該変化によって得るべき目標となる型締力、すなわち、定常状態で目標とする型締力を発生させるために必要な定常的な電流の値をコイル48に供給するように制御している。
【0034】
尚、型締力は荷重検出器55によって検出される。検出された型締力は制御部60に送られ、制御部60において、型締力が設定値になるようにコイル48に供給される電流が調整され、フィードバック制御が行われる。この間、射出装置17において溶融させられた樹脂が射出ノズル18から射出され、金型装置19のキャビティ空間に充墳される。
【0035】
キャビティ空間内の樹脂が冷却されて固化すると、型開閉処理部61は、型開き工程を制御する。型締処理部62は、図1の状態において、コイル48への電流の供給を停止する。それに伴って、リニアモータ28が駆動され、可動プラテン12が後退させられ、図2に示されるように、可動金型16が後退限位置に置かれ、型開きが行われる。
【0036】
ここで、図3以降を参照して、本発明の特徴的な構成について説明する。
【0037】
図3は、一実施例(実施例1)による分割構造を備えるリヤプラテン13の単品状態を示す斜視図である。尚、図3において、矢印h、矢印Vは、それぞれリヤプラテン13の左右方向(水平方向)、上下方向(垂直方向)を示す。但し、これらの方向は射出成形機の設置状態(向き)に応じて変化するため、あくまで便宜的なものである。また、矢印fはリヤプラテン13の前方を示す。図4は、磁場の対称面の説明図であり、リヤプラテン13と吸着板22とを断面視で模式的に示す図である。
【0038】
本実施例では、リヤプラテン13は、磁場対称面X1で分割された2つの分割体13A、13Bを結合して構成される。この際、分割体13A、13Bは、互いに対して電気的に絶縁される態様で結合される。例えば、分割体13A、13Bは、絶縁部材を介して互いに離間して結合されてもよい。この場合、分割体13A、13B間には、空気層(絶縁層)が形成され、絶縁性が確保される。或いは、分割体13A、13Bの結合面には、絶縁材料が被覆(例えばラミネート)されてもよい。
【0039】
ここで、磁場対称面X1とは、電磁石49の駆動時にリヤプラテン13と吸着板22に形成される磁場(図4に模式的に示される磁力線P参照)の対称面である。本例では単極構成であり、磁場対称面X1は、図3に示すように、リヤプラテン13の上下方向Vの中心を通って、リヤプラテン13の左右方向hに平行な平面である。
【0040】
図5は、分割構造を備えるリヤプラテン13の渦電流流路切断作用の説明図であり、図5(A)は、分割の無い場合の比較例を示し、図5(B)は、本実施例を示し、コイル48が配置されたリヤプラテン13を吸着板22側から型締め方向に視た平面図である。
【0041】
リヤプラテン13の分割が無い場合は、図5(A)にて矢印Iで示すように、リヤプラテンの中央部(コア)に渦電流がセンターロッド用の穴まわりに流れる。このような渦電流は、上述の如く、電磁石49の駆動時の応答性(型締め力の応答性)を悪くする等の問題を生む。これに対して、本実施例によれば、リヤプラテン13は、磁場対称面X1で分割された2つの分割体13A、13Bを結合して構成されるので、図5(B)にて矢印I、Iで示すように、センターロッド用の穴41まわりの渦電流の経路が、分割面(即ち磁場対称面X1)にて、切断される。このようにして、渦電流の流路を適切に変化させることで、電磁石49の駆動時の応答性を高めることができる。また、リヤプラテン13の分割面(即ち2つの分割体13A、13B同士の結合面)は磁場対称面X1であるので、磁気的ギャップができず、分割による電磁石49の駆動時の出力への影響を最小限に抑えることができる。
【0042】
図6は、分割体13A、13B間の結合態様の一例を示す図である。尚、図6では、リヤプラテン13は、便宜上、1/2モデルで一方の半体が示されているが、他方の半体についても同様であってよい。
【0043】
分割体13A、13Bは、図6に示すように、絶縁部材136,138を介した凹部132と凸部131の嵌め合いにより結合されてもよい。具体的には、分割体13Aは、分割体13Bとの結合面に、凸部131を有し、これに対応して、分割体13Bは、分割体13Aとの結合面に、凹部132を有する。凸部131には、絶縁部材136が被覆され、凹部132内には、絶縁部材138が設けられる。尚、凸部131の高さは、凹部132の深さよりも大きく設定されてよく、これにより、結合後に、分割体13A、13Bの結合面同士を所定距離離間させてもよい。
【0044】
図7は、分割体13A、13B間の結合部に設けられる補強部材90の一例を示す図である。尚、図6では、リヤプラテン13は、便宜上、1/2モデルで一方の半体が示されているが、他方の半体についても同様であってよい。
【0045】
分割体13A、13B間の結合部には、図7に示すように、補強部材90が設けられてもよい。この補強部材90は、分割による強度低下を補う機能を果たす。これにより、分割により応答性を高めつつ、リヤプラテン13として必要な強度を維持することができる。図7に示す例では、補強部材90は、リヤプラテン13から電気的に絶縁された金属板などの板材で構成される。但し、補強部材90は、強度が保たれる限り、プラスティック等(強化プラスティック)により形成されてもよい。尚、補強部材90は、分割体13A、13Bにボルトや溶接等により結合されてもよい。この場合、補強部材90は、分割体13A、13B同士を結合する機能をも果たす。
【0046】
また、補強部材90は、冷却機構を備えてもよい。冷却機構は、例えば冷却水が流される管や、冷却水の通路が内部に形成された冷却プレートであってよい。後者の場合、補強部材90自体が冷却プレートで構成されてもよい。
【0047】
図8は、実施例2による分割構造を備えるリヤプラテン13'の単品状態を示す斜視図である。
【0048】
本実施例2によるリヤプラテン13'は、上述した実施例1によるリヤプラテン13に対して、分割方向が異なる。具体的には、リヤプラテン13'は、磁場平行面X2で分割された2つの分割体13A'、13B'を結合して構成される。この際、分割体13A'、13B'は、互いに対して電気的に絶縁される態様で結合される。例えば、分割体13A'、13B'は、絶縁部材を介して互いに離間して結合されてもよい。この場合、分割体13'A、13B'間には、空気層(絶縁層)が形成され、絶縁性が確保される。或いは、分割体13A'、13B'の結合面には、絶縁材料が被覆(例えばラミネート)されてもよい。また、分割体13A'、13B'は、図6を参照して説明したような結合態様で結合されてもよいし、図7を参照して説明したような補強部材90が設けられてもよい。
【0049】
磁場平行面X2とは、電磁石49の駆動時にリヤプラテン13'と吸着板22に形成される磁場(図4に模式的に示される磁力線P参照)の平行面である。従って、磁場平行面X2は、図4に示す断面に平行な面に相当する。
【0050】
このような分割構造によっても、上述した実施例1による分割構造と同様に、センターロッド用の穴41まわりの渦電流の経路(図5(A)参照)が、分割面(即ち磁場平行面X2)にて、切断される。このようにして、渦電流の流路を適切に変化させることで、電磁石49の駆動時の応答性を高めることができる。また、リヤプラテン13'の分割面(即ち2つの分割体13A'、13B'同士の結合面)は磁場平行面X2であるので、磁気的ギャップができず、分割による電磁石49の駆動時の出力への影響を最小限に抑えることができる。
【0051】
尚、本実施例2では、リヤプラテン13'は、2つに分割されているが、分割数は任意である。即ち、リヤプラテン13'は、磁場平行面X2に平行に3つ以上に分割されてもよい。また、本実施例2では、2つの分割体13A'、13B'は、リヤプラテン13'の略中央(左右方向hでの中央)で分割されているが、リヤプラテン13'は、左右方向hの任意の箇所で分割されてもよい。
【0052】
また、本実施例2による分割構造は、上述した実施例1による分割構造と組み合わせることも可能である。即ち、リヤプラテン13'は、磁場対称面X1で更に分割されてもよい。
【0053】
尚、上述した実施例においては、特許請求の範囲における「第1の固定部材」は、固定プラテン11に対応し、特許請求の範囲における「第1の可動部材」は、可動プラテン12に対応する。また、特許請求の範囲における「第2の固定部材」は、リヤプラテン13、13'に対応し、特許請求の範囲における「第2の可動部材」は、吸着板22に対応する。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0055】
例えば、上述の如く、吸着板22側に電磁石49を設け、リヤプラテン13、13'側に吸着部を設けてもよい。このように吸着板22側に電磁石49を設ける場合には、鋳造により形成される吸着板22について、同様の分割構造を実現すればよい。
【0056】
また、リヤプラテン13、13'側に電磁石49を形成する場合でも、吸着板22を鋳造により形成して、吸着板22に対して同様の分割構造を実現してもよい。これにより、吸着板22側においても渦電流の流路が同様に変更されるので、電磁石49の駆動時の応答性を高めることに寄与することができる。この場合、吸着板22は、好ましくは、リヤプラテン13、13'の分割位置が同じになるように分割される。即ち、吸着板22は、好ましくは、リヤプラテン13、13'の同一の分割面にて分割される。
【0057】
また、上述の実施例では、水が冷却用の流体として使用されているが、水以外の流体(例えば、油や気体等)が使用されてもよい。
【0058】
また、上述の実施例では、リヤプラテン13には、一極の電磁石49が形成されているが、リヤプラテン13には、複数の極が形成されるように電磁石が設けられてもよい(即ち多極化が実現されてもよい)。
【0059】
また、上述では、特定の構成の型締装置10を例示しているが、型締装置10は、電磁石を利用して型締めを行うものであれば、任意の構成であってよい。
【符号の説明】
【0060】
Br1 軸受部材
Fr フレーム
Gd ガイド
10 型締装置
11 固定プラテン
12 可動プラテン
13、13' リヤプラテン
13A、13B、13A'、13B' 分割体
14 タイバー
15 固定金型
16 可動金型
17 射出装置
18 射出ノズル
19 金型装置
22 吸着板
28 リニアモータ
29 固定子
31 可動子
33 磁極歯
34 コア
35 コイル
37 電磁石ユニット
39 センターロッド
41 穴
45 溝
46 コア
47 ヨーク
48 コイル
49 電磁石
51 吸着部
55 荷重検出器
60 制御部
61 型開閉処理部
62 型締処理部
131 凸部
132 凹部
136 絶縁材料
138 絶縁部材
90 補強部材
X1 磁場対称面
X2 磁場平行面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型が取り付けられる第1の固定部材と、
前記第1の固定部材と対向して配設される第2の固定部材と、
可動金型が取り付けられる第1の可動部材と、
前記第1の可動部材と連結されて前記第1の可動部材と共に移動する第2の可動部材と、を備え、
前記第2の固定部材と前記第2の可動部材は、電磁石による吸着力で型締力を発生させる型締力発生機構を構成し、
前記第2の固定部材及び前記第2の可動部材のうちの少なくともいずれか一方の部材は、2つ以上の分割体を結合して構成される、射出成形機。
【請求項2】
前記分割体同士は、互いに対して絶縁される態様で結合される、請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記分割体同士は、互いに対して離間して結合される、請求項1又は2に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記分割体間は、前記電磁石を形成するコイルが配置される方の部材における磁場の対称面又は平行面で結合される、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記分割体間の結合部を補強する補強部材を備える、請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項6】
前記補強部材に冷却機構が設けられる、請求項5に記載の射出成形機。
【請求項7】
前記第2の固定部材及び前記第2の可動部材は、共に、2つ以上の分割体を結合して構成され、前記第2の固定部材を構成する分割体の結合面と、前記第2の可動部材を構成する分割体の結合面とが同じである、請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の射出成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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