説明

射出成形用塩化ビニル系樹脂組成物

【課題】熱安定性及び耐熱性に優れ、射出成形時の外観不良の発生がなく、射出成形加工性に優れ、鉛、錫、バリウム等の重金属系安定剤を含有しない、射出成形用塩化ビニル系樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、(a)有機酸カルシウム塩及び/又は有機酸亜鉛塩0.01〜10質量部、(b)ハイドロタルサイト化合物0.01〜10質量部、(c)β−ジケトン化合物0.01〜10質量部、及び(d)ポリオール混合物0.01〜10質量部を含有する塩化ビニル系樹脂組成物であって、上記(d)成分のポリオール混合物が、ペンタエリスリトール及びその縮合物からなるポリオール混合物であり、ペンタエリスリトールの縮合度をnで表すと、ポリオール混合物の総量に対して、n=1〜3のペンタエリスリトール及びその縮合物の合計の含有量が5〜40質量%であることを特徴とする射出成形用塩化ビニル系樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形用塩化ビニル系樹脂組成物に関し、詳しくは、安全性や環境保護の観点から問題のある鉛や錫等の重金属系の安定剤を使用せずとも、熱安定性や耐熱性、成形加工性に優れる射出成形用塩化ビニル系樹脂組成物及び該射出成形用塩化ビニル系樹脂組成物によって得られる、外観に優れた射出成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂は安価で優れた物性を有し、難燃性、耐候性、耐薬品性等の特性を有する上、射出成形が可能であり、パイプ、継手等の配管材料、窓枠等の硬質建材等、種々の形状に成形され幅広い用途に用いられている。
【0003】
この射出成形する際の脱塩酸等の熱分解を抑制するためには、安定剤の添加が必須であり、従来、鉛、カドミウム、錫等の重金属系の安定剤が広く用いられてきた(例えば、特許文献1参照)。
しかし、近年、環境保護・保全に対する関心が高まり、重金属等の毒性や環境に対する悪影響が問題となるに伴い、バリウム−亜鉛系の複合系安定剤が使用される傾向があった。更に最近では、バリウムの環境に対する影響も懸念され始めたために、カルシウム−亜鉛系等の安定剤が提案されている。(例えば、特許文献2参照)
【0004】
しかしながら、これらの安定剤の耐熱性能は満足いくものではなく、射出成形時の耐熱不足による脱塩酸反応等を起因として、成形品の外観にフラッシュ(表面不良)が発生するという問題があった。またカルシウム−亜鉛系の安定剤配合は、鉛系の安定剤配合に比較して表面の艶が劣るという欠点が問題になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−241459号公報
【特許文献2】特開2004−238516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は、熱安定性及び耐熱性に優れ、射出成形時の外観不良の発生がなく、射出成形加工性に優れ、鉛、錫、バリウム等の重金属系安定剤を含有しない、射出成形用塩化ビニル系樹脂組成物を提供することにある。また該射出成形用塩化ビニル系樹脂組成物を射出成形して得られる外観に優れた成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、
(a)有機酸カルシウム塩及び/又は有機酸亜鉛塩0.01〜10質量部、
(b)ハイドロタルサイト化合物0.01〜10質量部、
(c)β−ジケトン化合物0.01〜10質量部、及び
(d)ポリオール混合物0.01〜10質量部を含有する塩化ビニル系樹脂組成物であって、
上記(d)成分のポリオール混合物が、ペンタエリスリトール及びその縮合物からなるポリオール混合物であり、ペンタエリスリトールの縮合度をnで表すと、ポリオール混合物の総量に対して、n=1〜3のペンタエリスリトール及びその縮合物の合計の含有量が5〜40質量%である(但し、n=1〜3のペンタエリスリトール及びその縮合物とn≧4のペンタエリスリトールの縮合物との合計の含有量は100質量%である。)ことを特徴とする射出成形用塩化ビニル系樹脂組成物を提供するものである。
【0008】
また本発明は、上記(d)成分のポリオール混合物が、ペンタエリスリトール及びその縮合物からなるポリオール混合物であり、ペンタエリスリトールの縮合度をnで表すと、ポリオール混合物の総量に対して、n=1のペンタエリスリトールの含有量が0〜10質量%であり、且つn=1〜3のペンタエリスリトール及びその縮合物の合計の含有量が5〜30質量%であることを特徴とする前記射出成形用塩化ビニル系樹脂組成物を提供するものである。
【0009】
また本発明は、前記射出成形用塩化ビニル系樹脂組成物を射出成形してなる成形体を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱安定性及び耐熱性に優れ、射出成形時の外観不良の発生がなく、射出成形加工性に優れ、鉛、錫、バリウム等の重金属系安定剤を含有しない、射出成形用塩化ビニル系樹脂組成物を提供することができる。また該射出成形用塩化ビニル系樹脂組成物を射出成形して得られる外観に優れた成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の射出成形用塩化ビニル系樹脂組成物について好ましい実施形態に基づき詳述する。
【0012】
本発明に使用される塩化ビニル系樹脂としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等その重合方法には特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニリトル共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−イソプレン共重合体、塩化ビニル−塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−各種ビニルエーテル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、及びそれら相互のブレンド品或いは他の塩素を含まない合成樹脂、例えば、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体、ポリエステル等とのブレンド品、ブロック共重合体、グラフト共重合体等を挙げることができる。
【0013】
次に本発明の(a)成分について説明する。
本発明では、(a)成分として有機酸カルシウム塩及び/又は有機酸亜鉛塩を使用する。かかる有機酸カルシウム塩としては、有機カルボン酸、フェノール類又は有機リン酸類等のカルシウム塩が挙げられる。また、前記有機酸亜鉛塩としては、前記有機酸カルシウム塩として例示したカルシウム塩を亜鉛に変更した亜鉛塩が挙げられる。
【0014】
前記有機カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、2−エチルヘキシル酸、ネオデカン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘニン酸、モンタン酸、安息香酸、モノクロル安息香酸、p−第三ブチル安息香酸、ジメチルヒドロキシ安息香酸、3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、トルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、クミン酸、n−プロピル安息香酸、アミノ安息香酸、N,N−ジメチルアミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸、サリチル酸、p−第三オクチルサリチル酸、エライジン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、オクチルメルカプトプロピオン酸等の一価カルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フタール酸、イソフタール酸、テレフタール酸、ヒドロキシフタール酸、クロルフタール酸、アミノフタール酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、メタコン酸、イタコン酸、アコニット酸、チオジプロピオン酸等の二価カルボン酸或いはこれらのモノエステル又はモノアマイド化合物;ブタントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、メロファン酸、ピロメリット酸等の三価又は四価カルボン酸のジ又はトリエステル化合物が挙げられる。
【0015】
また、前記フェノール類としては、例えば、第三ブチルフェノール、ノニルフェノール、ジノニルフェノール、シクロヘキシルフェノール、フェニルフェノール、オクチルフェノール、フェノール、クレゾール、キシレノール、n−ブチルフェノール、イソアミルフェノール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、イソオクチルフェノール、2−エチルヘキシルフェノール、第三ノニルフェノール、デシルフェノール、第三オクチルフェノール、イソヘキシルフェノール、オクタデシルフェノール、ジイソブチルフェノール、メチルプロピルフェノール、ジアミルフェノール、メチルイソフキシルフェノール、メチル第三オクチルフェノール等が挙げられる。
【0016】
また、前記有機リン酸類としては、例えば、モノ又はジオクチルリン酸、モノ又はジドデシルリン酸、モノ又はジオクタデシルリン酸、モノ又はジ−(ノニルフェニル)リン酸、ホスホン酸ノニルフェニルエステル、ホスホン酸ステアリルエステル等が挙げられる。
本発明では、前記(a)成分として、有機酸カルシウム塩及び/又は有機亜鉛塩である酸性塩、中性塩、塩基性塩或いは塩基性塩の塩基の一部又は全部を炭酸で中和した過塩基性錯体を用いてもよい。
【0017】
また、前記有機酸カルシウム塩及び有機酸亜鉛塩は、それぞれ単独で使用してもよく、併用してもよい。また各有機酸カルシウム塩及び有機酸亜鉛塩は、1種類のみを使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0018】
前記(a)成分である有機酸カルシウム塩及び/又は有機酸亜鉛塩としては、耐熱性と射出成形加工性の点から、有機カルボン酸塩が好ましい。
【0019】
本発明の射出成形用塩化ビニル系樹脂組成物において、前記(a)成分である有機酸カルシウム塩及び/又は有機酸亜鉛塩の含有量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部であり、耐熱性と射出成形加工性の点から、好ましくは0.1〜6質量部、より好ましくは0.5〜3質量部である。(a)成分の含有量が0.01質量部より少ないと、その効果は、ほとんどみられず、10質量部を超えても、それ以上効果は上がらず、むしろ射出成形加工性に悪影響を与えるおそれがある。
【0020】
前記(a)成分としては、有機酸カルシウム塩の一種類以上と有機酸亜鉛塩の一種類以上を併用することが好ましく、その場合の有機酸カルシウム塩の含有量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.01〜5質量部が好ましく、0.05〜3質量部がより好ましく、有機酸亜鉛塩の含有量は、0.01〜5質量部が好ましく、0.05〜3質量部がより好ましい。
【0021】
次に本発明の(b)成分について説明する。
本発明では、(b)成分としてハイドロタルサイト化合物を使用する。本発明において、ハイドロタルサイト化合物とは、マグネシウム及び/又は亜鉛とアルミニウムとの炭酸複塩化合物をいう。前記ハイドロタルサイト化合物は、天然物であってもよく、また合成品であってもよい。前記合成品の合成方法としては、特公昭46−2280号公報、特公昭50−30039号公報、特公昭51−29129号公報、特開昭61−174270号公報等に記載の公知の方法を例示することができる。また、本発明においては、前記ハイドロタルサイト化合物の結晶構造、結晶粒子系或いは結晶水の有無及びその量等に制限されることなく使用することできる。
【0022】
また、前記ハイドロタルサイトは、過塩素酸処理することもでき、その表面をステアリン酸のごとき高級脂肪酸、オレイン酸アルカリ金属塩のごとき高級脂肪酸金属塩、ドデシルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩のごとき有機スルホン酸金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル又はワックス等で被覆したものも使用できる。
【0023】
前記(b)成分であるハイドロタルサイト化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【化1】

【0024】
本発明の射出成形用塩化ビニル系樹脂組成物において、前記(b)成分であるハイドロタルサイト化合物の含有量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.01〜10質量部であり、耐熱性と射出成形加工性の点から、0.05〜5質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましい。(b)成分の含有量が0.01質量部より少ないと、耐熱性向上効果がほとんどみられず、10質量部を超えても、それ以上効果は上がらず、むしろ耐熱性と射出成形加工性等に悪影響を与えるおそれがある。
【0025】
次に本発明の(c)成分について説明する。
本発明では、(c)成分として、β−ジケトン化合物を使用する。β−ジケトン化合物としては、例えば、デヒドロ酢酸、ジベンゾイルメタン、ジステアロイルメタン、アセチルベンゾイルメタン、パルミトイルベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン等が有用であり、これらの金属塩(カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩等)も同様に有用である。かかるβ−ジケトン化合物は単独で使用してもよく、併用してもよい。
【0026】
本発明の射出成形用塩化ビニル系樹脂組成物において、前記(c)成分であるβ−ジケトン化合物の含有量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部であり、耐着色性と射出成形加工性の点から、0.05〜5質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましい。(c)成分の含有量が0.01質量部より少ないと、耐着色性向上効果がほとんどみられず、10質量部を超えても、それ以上効果は上がらず、むしろ射出成形加工性等に悪影響を与えるおそれがある。
【0027】
次に本発明の(d)成分について説明する。
本発明では、(d)成分としてポリオール混合物を使用する。かかるポリオール混合物は、ペンタエリスリトール及びその縮合物からなるポリオール混合物であり、ペンタエリスリトールの縮合度をnで表すと、ポリオール混合物の総量に対し、n=1〜3のペンタエリスリトール及びその縮合物の合計の含有量が5〜40質量%であることを特徴とするものである(但し、n=1〜3のペンタエリスリトール及びその縮合物とn≧4のペンタエリスリトールの縮合物との合計の含有量は100質量%である。)。
【0028】
前記ポリオール混合物としては、耐熱性と射出成形加工性の点から、ペンタエリスリトールの縮合度をnで表すと、ポリオール混合物の総量に対し、n=1〜3のペンタエリスリトール及びその縮合物の合計の含有量が10〜30質量%であるものが好ましく、n=1のペンタエリスリトールの含有量が0〜10質量%であり、且つn=1〜3のペンタエリスリトール及びその縮合物の合計の含有量が5〜30質量%であるものがより好ましく、n=1のペンタエリスリトールの含有量が0〜5質量%であり、且つn=1〜3のペンタエリスリトール及びその縮合物の合計の含有量が10〜30質量%であるものが最も好ましい。n=1〜3のペンタエリスリトール及びその縮合物の合計の含有量が5質量%より少ないと、塩化ビニル系樹脂組成物の耐熱性が乏しくなるとともに、射出成形体の外観に悪影響がでるため好ましくなく、また40質量%より多くても、射出成形体の外観に悪影響を与えるおそれがある。
【0029】
前記ペンタエリスリトール及びその縮合物としては、下記一般式(2)で示される化合物が挙げられる。
【化2】

【0030】
前記ポリオール混合物中には、前記一般式(2)で示されるペンタエリスリトールの縮合物が分子内でエーテル結合したもの、中間メチロール基が他の分子とエーテル結合したもの、さらには網目状に連なったもの、分子がさらに連なり、大きくなって各所で大環状エーテル構造になったもの等も含まれていてよい。
【0031】
前記ポリオール混合物は、特に制限がなく公知の方法で製造することができる。例えば、ペンタエリスリトール及び/又はペンタエリスリトールの縮合物を、そのまま、或いは適当な触媒と溶媒の存在下、加熱脱水縮合反応させることによって製造することができる。
【0032】
前記ポリオール混合物の製造に用いられる触媒の例としては、アルコールの脱水縮合反応に通常使用される無機酸、有機酸等が挙げられる。無機酸としては、リン酸、硫酸等の鉱酸;これらの鉱酸の酸性塩;粘土鉱物(例えば、モンモリロナイト等)、シリカ・アルミナ、ゼオライト等の固体酸触媒等が挙げられる。有機酸としては、蟻酸、パラトルエンスルホン酸等が挙げられる。
【0033】
前記触媒の使用量は特に制限はないが、水溶性の酸触媒を用いる場合には、反応中の反応系内のpHが7未満、好ましくは5以下に維持できる量であればよい。また固体酸触媒を用いる場合には、通常、ペンタエリスリトールに対して0.1〜100質量%の使用量でよい。
【0034】
前記ポリオール混合物の製造に用いられる溶媒の例としては、ベンゼン、キシレン、デカリン、テトラリン等の炭化水素類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルエーテル、アニソール、フェニルエーテル、ジグライム、テトラグライム、18−クラウン−6等のエーテル類、酢酸メチル、酪酸エチル、安息香酸メチル、γ−ブチロラクトン等のケトン類、N−メチルピロリジン−オン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピペリドン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等のN−置換アミド類、N,N−ジエチルアニリン、N−メチルモルホリン、ピリジン、キノリン等の三級アミン類、スルホラン等のスルホン類、ジメチルスルホキサイド等のスルホキサイド類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の尿素誘導体、トリブチルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類、及びシリコーンオイル等が挙げられ、脱水処理したものでも含水品でも良い。
【0035】
前記ポリオール混合物の製造における加熱脱水縮合の反応温度は、通常約100〜280℃程度であり、より好ましくは、150〜240℃である。100℃より低いと反応が遅くなる場合があり、280℃より高いと縮合反応の制御が困難になる場合がある。
【0036】
また、本発明の射出成形用塩化ビニル系樹脂組成物において、(d)成分であるポリオール混合物の含有量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.01質量部〜10質量部、熱安定性の点から、好ましくは0.05〜5質量部、より好ましくは、0.1〜3質量部配合される。0.01質量部より少ないと、添加効果が不十分であり、10質量部より多いと、加工性に悪影響を与えるおそれがある。
【0037】
また、本発明の射出成形用塩化ビニル系樹脂組成物には、加工性の観点から、更に滑剤を含有させることも好ましい。
【0038】
本発明で使用する滑剤は、公知の滑剤の中から適宜選択することができる。公知の滑剤としては、例えば、低分子ワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、塩素化炭化水素、フルオロカーボン等の炭化水素系滑剤;カルナバワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス系滑剤;ラウリン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等の高級脂肪酸、又はヒドロキシステアリン酸等のオキシ脂肪酸等の脂肪酸系滑剤;ステアリルアミド、ラウリルアミド、オレイルアミド等の脂肪族アミド化合物又はメチレンビスステアリルアミド、エチレンビスステアリルアミド等のアルキレンビス脂肪族アミド等の脂肪族アミド系滑剤;ステアリルステアレート、ブチルステアレート等の脂肪酸1価アルコールエステル化合物、又は、グリセリントリステアレート、ソルビタントリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ポリグリセリンポリリシノレート、硬化ヒマシ油等の脂肪酸多価アルコールエステル化合物、又は、ジペンタエリスリトールのアジピン酸・ステアリン酸エステル等の1価脂肪酸及び多塩基性有機酸と多価アルコールの複合エステル化合物等の脂肪酸アルコールエステル系滑剤;ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、パルミチルアルコール等の脂肪族アルコール系滑剤;金属石鹸類;部分ケン化モンタン酸エステル等のモンタン酸系滑剤;アクリル系滑剤;シリコーンオイル等が挙げられる。これらの滑剤は、1種類のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
本発明の射出成形用塩化ビニル系樹脂組成物に滑剤を使用する場合、その含有量は、射出成形加工性の点から、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部であることが好ましく、特に0.05〜5質量部であることが好ましい。
【0040】
本発明の射出成形用塩化ビニル系樹脂組成物を製造するに際して、塩化ビニル系樹脂に、(a)〜(d)成分、及び必要に応じて添加する滑剤、後述するその他の任意の添加成分を配合するタイミングが、特に制限されるということはない。例えば、予め(a)〜(d)成分、必要に応じて滑剤やその他の任意の添加成分の中から選択される2種以上をワンパック化し、その混合物を塩化ビニル系樹脂に配合しても良いし、各々の成分を塩化ビニル系樹脂に対して順次配合してもよい。また、ワンパック化する場合には、各成分を、各々粉砕してから混合しても、混合してから粉砕しても良い。
【0041】
本発明の射出成形用塩化ビニル系樹脂組成物には、通常、塩化ビニル系樹脂組成物に用いられる他の添加剤、例えば、可塑剤、ゼオライト化合物、金属アセチルアセトナート、過塩素酸塩類、エポキシ化合物、多価アルコール、リン系、フェノール系及び硫黄系等の酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系等の光安定剤、充填剤、発泡剤、難燃剤、難燃助剤等を、本発明の効果を損なわない範囲(塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、好ましくは合計で100質量部以下)で添加することができる。
【0042】
前記可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ブチルヘキシルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジオクチルテレフタレート等のフタレート系可塑剤;ジオクチルアビペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジ(ブチルジグリコール)アジペート等のアジペート系可塑剤;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリ(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリ(ブトキシエチル)ホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート等のホスフェート可塑剤系;多価アルコールとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等と、二塩基酸としてシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フタール酸、イソフタール酸、テレフタール酸等を用い、必要により一価アルコール、モノカルボン酸をストッパーに使用したポリエステル系可塑剤;その他、テトラヒドロフタール酸系可塑剤、アゼライン酸系可塑剤、セバチン酸系可塑剤、ステアリン酸系可塑剤、クエン酸系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、ビフェニルテトラカルボン酸エステル系可塑剤、塩素系可塑剤等が挙げられる。
【0043】
本発明の射出成形用塩化ビニル系樹脂組成物において、前記可塑剤の含有量は任意に変えることができるが、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、10質量部以下であることが特に好ましく、これにより硬質塩化ビニル系樹脂とすることによって本発明の効果をより発揮することができる。また、前記可塑剤を塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、50質量部以下含有させた半硬質用途にも好ましく使用できる。
【0044】
前記ゼオライト化合物は、独特の三次元のゼオライト結晶構造を有するアルカリ又はアルカリ土類金属のアルミノケイ酸塩であり、その代表例としては、A型、X型、Y型及びP型ゼオライト、モノデナイト、アナルサイト、ソーダライト族アルミノケイ酸塩、クリノブチロライト、エリオナイト及びチャバサイト等を挙げることができ、これらのゼオライト化合物の結晶水(いわゆるゼオライト水)を有する含水物又は結晶水を除去した無水物の何れでもよく、またその粒径が0.1〜50μmのものを用いることができ、特に、0.5〜10μmのものが好ましい。
【0045】
前記金属アセチルアセトナートとしては、例えば、カルシウムアセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート等が挙げられる。
【0046】
前記過塩素酸塩類としては、過塩素酸金属塩、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸処理珪酸塩等が挙げられる。これらの金属塩を構成する金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、カドミウム、鉛、アルミニウム等が例示できる。前記過塩素酸金属塩は、無水物でも含水塩でもよく、また、ブチルジグリコール、ブチルジグリコールアジペート等のアルコール系及びエステル系の溶剤に溶かしたもの及びその脱水物でもよい。
【0047】
前記エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノール型及びノボラック型のエポキシ樹脂、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化桐油、エポキシ化魚油、エポキシ化牛脂油、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化サフラワー油、エポキシ化トール油脂肪酸オクチル、エポキシ化アマニ油脂肪酸ブチル、エポキシステアリン酸メチル,エポキシステアリン酸ブチル,エポキシステアリン酸−2−エチルヘキシル又はエポキシステアリン酸ステアリル、トリス(エポキシプロピル)イソシアヌレート、3−(2−キセノキシ)−1,2−エポキシプロパン、エポキシ化ポリブタジエン、ビスフェノール−Aジグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジエポキサイド、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシル−6−メチルエポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート等が挙げられる。
【0048】
前記多価アルコールとしては、例えば、ソルビトール、マンニトール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールのステアリン酸部分エステル、ビス(ジペンタエタスリトール)アジペート、グリセリン、ジグリセリン、トリス(2ーヒドロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0049】
前記リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、ビス(2−第三ブチル−4,6−ジメチルフェニル)・エチルホスファイト、ジフェニルアシッドホスファイト、2,2'−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、ジブチルアシッドホスファイト、ジラウリルアシッドホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ビス(ネオペンチルグリコール)−1,4−シクロヘキサンジメチルジホスフィト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(C12−15混合アルキル)−4,4'−イソプロピリデンジフェニルホスファイト、ビス[2,2'−メチレンビス(4,6−ジアミルフェニル)]・イソプロピリデンジフェニルホスファイト、水素化−4,4'−イソプロピリデンジフェノールポリホスファイト、テトラトリデシル[4,4'−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)]ジホスファイト、ヘキサキス(トリデシル)−1,1,3−トリス(2'−メチル−5'−第三ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)ブタントリホスファイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール・2,4,6−トリ第三ブチルフェノールモノホスファイト等が挙げられる。
【0050】
前記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、チオジエチレングリコールビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4'−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−第三ブチルフェノール)、ビス〔3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、4,4'−ブチリデンビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2'−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェノール)、2,2'−エチリデンビス(4−第二ブチル−6−第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、ビス〔2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5. 5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕等が挙げられる。
【0051】
前記硫黄系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、ジミリスチル、ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート類及びペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)等のポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類が挙げられる。
【0052】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5'−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ第三ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−第三ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2'−メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリル)フェノール等の2−(2'−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3',5'−ジ第三ブチル−4'−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2'−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4'−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類が挙げられる。
【0053】
前記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ドデシルコハク酸イミド、1−〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、N,N'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン、テトラ(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、テトラ(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)ブタンテトラカルボキシレート、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、1,5,8,12−テトラキス〔4,6−ビス{N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミノ}−1,3,5−トリアジン−2−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジメチル縮合物、2−第三オクチルアミノ−4,6−ジクロロ−s−トリアジン/N,N'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン縮合物、N,N'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン/ジブロモエタン縮合物等が挙げられる。
【0054】
前記充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、クレー、ガラスビーズ、マイカ、セリサイト、ガラスフレーク、アスベスト、ウオラストナイト、チタン酸カリ、PMF、石膏繊維、ゾノトライト、MOS、ホスフェートファイバー、ガラス繊維、炭酸繊維、アラミド繊維等が挙げられる。
【0055】
前記発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、p,p'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、n,n'−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、トリヒドラゾトリアジン等の分解型有機発泡剤及び重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、アジド化合物、ホウ水素化ナトリウム等の分解型無機発泡剤が挙げられる。
【0056】
前記難燃剤や難燃助剤の例としては、トリアジン環含有化合物、金属水酸化物、その他無機リン、ハロゲン系難燃剤、シリコン系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤、縮合リン酸エステル系難燃剤、イントメッセント系難燃剤、三酸化アンチモン等の酸化アンチモン、その他の無機系難燃助剤、有機系難燃助剤等が挙げられる。
【0057】
前記トリアジン環含有化合物としては、例えば、メラミン、アンメリン、ベンズグアナミン、アセトグアナミン、フタロジグアナミン、メラミンシアヌレート、ピロリン酸メラミン、ブチレンジグアナミン、ノルボルネンジグアナミン、メチレンジグアナミン、エチレンジメラミン、トリメチレンジメラミン、テトラメチレンジメラミン、ヘキサメチレンジメラミン、1,3−ヘキシレンジメランミン等が挙げられる。
【0058】
前記金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛、キスマー5A(水酸化マグネシウム:協和化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0059】
前記リン酸エステル系難燃剤の例としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリスクロロエチルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリスイソプロピルフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、t-ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ビス-(t-ブチルフェニル)フェニルホスフェート、トリス-(t-ブチルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ビス-(イソプロピルフェニル)ジフェニルホスフェート、トリス-(イソプロピルフェニル)ホスフェート等が挙げられる。
【0060】
前記縮合リン酸エステル系難燃剤の例としては、1,3−フェニレン ビス(ジフェニルホスフェート)、1,3−フェニレン ビス(ジキシレニルホスフェート)、ビスフェノールA ビス(ジフェニルホスフェート)等が挙げられ、イントメッセント系難燃剤としては、ポリリン酸等のアンモニウム塩やアミン塩が挙げられる。
【0061】
前記その他の無機系難燃助剤としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、タルク等の無機化合物、及びその表面処理品が挙げられ、例えば、TIPAQUE R−680(酸化チタン:石原産業(株)製)、キョーワマグ150(酸化マグネシウム:協和化学工業(株)製)等の種々の市販品を用いることができる。
【0062】
また、本発明の射出成形用塩化ビニル系樹脂組成物には、他の安定化剤を添加することができる。かかる他の安定化剤としては、例えば、ジフェニルチオ尿素、アニリノジチオトリアジン、メラミン、安息香酸、ケイヒ酸、p−第三ブチル安息香酸、ゼオライト、過塩素酸塩が挙げられる。
【0063】
さらにまた、本発明の射出成形用塩化ビニル系樹脂組成物には、必要に応じて通常塩化ビニル系樹脂に使用される添加剤、例えば、架橋剤、帯電防止剤、防曇剤、プレートアウト防止剤、表面処理剤、蛍光剤、防黴剤、殺菌剤、金属不活性剤、離型剤、加工助剤、ブルーイング剤、顔料、染料等を配合することができる。
【0064】
本発明の射出成形用塩化ビニル系樹脂組成物は、射出成形した成形体として、パイプ、継手、配管部品等の配管材料;壁材、床材、窓枠、波板、雨樋等の建材・構造材;自動車用内外装材;電線用被覆材;農業用資材;食品包装材;パッキン、ガスケット、ホース、シート、玩具等の雑貨として使用することができるが、特に、熱安定性及び耐熱性に優れ、外観に優れる成形体が得られるため、建材や構造材用途に好ましく用いることができる。
【実施例】
【0065】
以下に、実施例及び比較例によって本発明を更に詳述するが、本発明はこれらによって
限定されるものではない。
【0066】
[実施例1〜4及び比較例1〜4]
<試験用コンパウンドの作製>
下記表1の配合物を、10Lヘンシェルミキサーを用いて2000rpmにて撹拌し、120℃まで昇温した。120℃到達後、1000rpmにて50℃まで冷却し、射出成形試験用コンパウンドを得た。
【0067】
<試験用射出成形体の作製及び評価試験(外観、グロス(Gloss)>
得られたコンパウンドを、株式会社東芝機械製 射出成形機EC60NIIを用いて下記の条件で射出成形を行い、カップ形状の成形体を得た。
射出成形の条件:
バレル温度170〜200℃
射出圧力90〜95MPa
金型温度40℃
得られた成形体の外観を目視にて確認した。外観の評価は、フラッシュ(表面不良)が有る場合を×、無い場合を○として評価した。結果を表1に示す。
また、成形体の表面のグロス(測定角60°)を、日本電色工業株式会社製光沢計(VG−2000)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0068】
<試験用シートの作製及び静的熱安定性試験>
下記表1の配合物をロッキングミキサーでブレンド後、190℃×30rpm×0.6mm×3分の条件でロール混練して試験用シートを作製した。
得られたシートを190℃と200℃のギヤーオーブンに入れて<静的熱安定性試験>として、黒化時間(分)を測定した。結果を表1に示す。
【0069】
<塩化水素補足能試験(コンゴーレッド試験)>
上記で得られたシートを用いて、JIS K 6723に準拠し、190℃でコンゴーレッド試験を行い、シート中の塩化ビニル系樹脂の熱分解による塩化水素脱離時間を測定した。結果を表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
上記結果から明らかなように、ペンタエリスリトール又はその縮合物として、ジペンタエリスリトールを用いた場合(比較例2及び4)には、熱安定性、耐熱性、外観(フラッシュの有無)及びグロスの何れの点においても不十分であった。また、ジペンタエリスリトールの配合量を増加させた場合(比較例1及び3)には、熱安定性、耐熱性、及びグロスについては若干の改善が見られたが、外観(フラッシュの有無)については全く改善されなかった。
【0072】
これに対し、ペンタエリスリトール又はその縮合物として、(d)成分であるポリオール混合物を用いた場合(実施例1〜4)には、熱安定性、耐熱性、外観(フラッシュの有無)及びグロスの何れの点においても優れることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、
(a)有機酸カルシウム塩及び/又は有機酸亜鉛塩0.01〜10質量部、
(b)ハイドロタルサイト化合物0.01〜10質量部、
(c)β−ジケトン化合物0.01〜10質量部、及び
(d)ポリオール混合物0.01〜10質量部を含有する塩化ビニル系樹脂組成物であって、
上記(d)成分のポリオール混合物が、ペンタエリスリトール及びその縮合物からなるポリオール混合物であり、ペンタエリスリトールの縮合度をnで表すと、ポリオール混合物の総量に対して、n=1〜3のペンタエリスリトール及びその縮合物の合計の含有量が5〜40質量%である(但し、n=1〜3のペンタエリスリトール及びその縮合物とn≧4のペンタエリスリトールの縮合物との合計の含有量は100質量%である。)ことを特徴とする射出成形用塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項2】
上記(d)成分のポリオール混合物が、ペンタエリスリトール及びその縮合物からなるポリオール混合物であり、ペンタエリスリトールの縮合度をnで表すと、ポリオール混合物の総量に対して、n=1のペンタエリスリトールの含有量が0〜10質量%であり、且つn=1〜3のペンタエリスリトール及びその縮合物の合計の含有量が5〜30質量%であることを特徴とする請求項1記載の射出成形用塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の射出成形用塩化ビニル系樹脂組成物を射出成形してなる成形体。

【公開番号】特開2012−241119(P2012−241119A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113310(P2011−113310)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】