説明

射出成形用組成物、焼結体および焼結体の製造方法

【課題】脱脂時における保形性の高い成形体を製造可能であり、変形や欠損等が少ない高品質な焼結体を製造可能な射出成形用組成物、かかる射出成形用組成物を用いて製造された寸法精度の高い焼結体、およびかかる焼結体を効率よく製造可能な焼結体の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の射出成形用組成物は、金属材料およびセラミックス材料の少なくとも一方で構成された無機粉末と、成分Aとしてポリアセタール系樹脂と成分Bとしてエチレン−グリシジルメタクリレート系共重合体とを含むバインダーと、を含有することを特徴とする。また、本発明の射出成形用組成物を成形してなる混練物1では、無機粉末の粒子2の表面を覆うように設けられ、主として成分Bで構成された内層21と、内層21の外側に位置し、主として成分Aで構成された外層22と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形用組成物、焼結体および焼結体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属粉末を含む成形体を焼結して金属製品を製造する粉末冶金法は、ニアネットシェイプの焼結体が得られることから、近年、多くの産業分野で普及している。また、金属粉末に代えてセラミックス粉末を用いることも行われている。
成形体の製造方法(成形方法)には多くの方法があるが、無機粉末と有機バインダーとを混合、混練し、この混練物(コンパウンド)を用いて射出成形する粉末射出成形法が知られている。粉末射出成形法により製造された成形体は、その後、脱脂処理により有機バインダーが除去された後、焼成されることにより、目的とする形状の金属製品およびセラミックス製品となる。
【0003】
このような粉末射出成形法においては、成形体に保形性を与える等の種々の目的から、適当な有機バインダーを選定する必要がある。
例えば、特許文献1には、粉末射出成形法に用いる有機バインダーとして、ポリアセタール樹脂、ポリスチレン、ポリオレフィン、高級脂肪酸等が開示されている。
ところが、複雑な形状に成形する場合には特に、脱脂時に成形体の保形性が十分に高くなければ、成形直後の形状を脱脂や焼結時に維持することが難しく、変形や欠損等が生じて焼結体の寸法精度が低下する。このため、脱脂時の保形性をこれまで以上に高める必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−75153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、脱脂時における保形性の高い成形体を製造可能であり、変形や欠損等が少ない高品質な焼結体を製造可能な射出成形用組成物、かかる射出成形用組成物を用いて製造された寸法精度の高い焼結体、およびかかる焼結体を効率よく製造可能な焼結体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の射出成形用組成物は、金属材料およびセラミックス材料の少なくとも一方で構成された無機粉末と、
ポリアセタール系樹脂およびエチレン−グリシジルメタクリレート系共重合体を含むバインダーと、
を含有し、
前記エチレン−グリシジルメタクリレート系共重合体の含有量は、前記ポリアセタール系樹脂の含有量に対して1体積%以上30体積%以下であることを特徴とする。
これにより、脱脂時における保形性の高い成形体を製造可能な射出成形用組成物が得られる。その結果、変形や欠損等が少ない高品質な焼結体を製造可能な射出成形用組成物が得られる。
【0007】
本発明の射出成形用組成物では、前記無機粉末の粒子の表面を覆うように設けられ、主として前記エチレン−グリシジルメタクリレート系共重合体で構成された内層と、前記内層の外側に位置し、主として前記ポリアセタール系樹脂で構成された外層と、を有することが好ましい。
これにより、保形性と成形性の両立を図ることができる。
【0008】
本発明の射出成形用組成物では、前記ポリアセタール系樹脂は、ホルムアルデヒドとそれ以外のコモノマーとのコポリマーであることが好ましい。
これにより、保形性をより高めることができる。
本発明の射出成形用組成物では、前記エチレン−グリシジルメタクリレート系共重合体は、共重合体を構成するモノマーとして、酢酸ビニルおよびアクリル酸メチルの少なくとも一方を含むことが好ましい。
これにより、これらのモノマーが無機粉末の粒子同士をより確実に結着させるため、保形性を特に高めることができる。
本発明の射出成形用組成物では、前記エチレン−グリシジルメタクリレート系共重合体の軟化点は、65℃以上105℃以下であることが好ましい。
これにより、保形性と成形性とをより高度に両立することができる。
【0009】
本発明の射出成形用組成物では、さらに、飽和脂肪酸を含有することが好ましい。
これにより、飽和脂肪酸が潤滑剤として作用し、射出成形用組成物の成形性をより高めることができる。
本発明の射出成形用組成物では、さらに、ワックス類を含有することが好ましい。
これにより、射出成形用組成物は流動性の高いものとなり、より成形性の高いものとなる。また、脱脂の際にはポリアセタール系樹脂よりもエチレン−グリシジルメタクリレート系共重合体が低温域で分解するため、昇温に伴ってエチレン−グリシジルメタクリレート系共重合体、ポリアセタール系樹脂が順次排出されることとなり、脱脂する際の成形体の保形性をより高めることができる。
【0010】
本発明の焼結体は、本発明の射出成形用組成物を用いて製造されたことを特徴とする。
これにより、寸法精度の高い焼結体が得られる。
本発明の焼結体の製造方法は、金属材料およびセラミックス材料の少なくとも一方で構成された無機粉末と、ポリアセタール系樹脂およびエチレン−グリシジルメタクリレート系共重合体を含むバインダーとを、前記ポリアセタール系樹脂の軟化点と該軟化点−10℃との間の温度で混練し、混練物を得る工程と、
前記混練物を成形し、成形体を得る工程と、
前記成形体を脱脂、焼成して焼結体を得る工程と、を有することを特徴とする。
これにより、寸法精度の高い焼結体を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の射出成形用組成物の構造を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の射出成形用組成物を混練したときの構造を模式的に示す断面図である。
【図3】実施例4および比較例2で得られた射出成形用組成物(混練物)の観察像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の射出成形用組成物、焼結体および焼結体の製造方法を詳細に説明する。
<射出成形用組成物>
本発明の射出成形用組成物は、無機粉末と、バインダーと、を含み、これらを混練してなるものである。
このうち、無機粉末は、金属材料およびセラミックス材料の少なくとも一方で構成されたものである。
【0013】
一方、バインダーは、無機粉末の粒子同士を結着させるものであり、成分Aとしてポリアセタール系樹脂、成分Bとしてエチレン−グリシジルメタクリレート系共重合体をそれぞれ含むものである。
このような射出成形用組成物を射出成形することにより、脱脂時にも高い保形性を示す成形体が得られる。よって、この成形体を焼成することにより、変形や欠損等が少ない高品質な焼結体が得られる。
【0014】
以下、本発明の射出成形用組成物の各成分について詳述する。
(無機粉末)
無機粉末としては、前述したように、金属材料およびセラミックス材料の少なくとも一方で構成された粉末が用いられる。具体的には、金属粉末、セラミックス粉末の他、金属材料とセラミックス材料との複合材料の粉末、金属粉末とセラミックス粉末の混合粉末等が挙げられる。
【0015】
このうち、金属材料としては、例えば、Mg、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Pd、Ag、In、Sn、Sn、Ta、W、またはこれらの金属元素同士合金や他の金属元素との合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が用いられる。
これらの中でも、特に、ステンレス鋼、ダイス鋼、高速度工具鋼、低炭素鋼、Fe−Ni系合金、Fe−Si系合金、Fe−Co系合金、Fe−Ni−Co系合金のような各種Fe系合金、Al系合金、Ti系合金等が好ましく用いられる。このような金属材料は、機械的特性に優れているため、機械的特性に優れ、広範な用途に適用可能な焼結体が得られる。
【0016】
なお、ステンレス鋼としては、例えば、SUS304、SUS316、SUS317、SUS329、SUS410、SUS430、SUS440、SUS630等が挙げられる。
また、Al系合金としては、例えば、アルミニウム単体、ジュラルミン等が挙げられる。
また、Ti系合金としては、例えば、チタン単体、または、チタンと、アルミニウム、バナジウム、ニオブ、ジルコニウム、タンタル、モリブデン等の金属元素との合金であり、具体的には、Ti−6Al−4V、Ti−6Al−7Nb等が挙げられる。なお、Ti系合金には、これらの金属元素の他に、ホウ素、炭素、窒素、酸素、ケイ素等の非金属元素を含んでいてもよい。
【0017】
なお、このような金属粉末は、いかなる方法で製造されたものでもよいが、例えば、アトマイズ法(水アトマイズ法、ガスアトマイズ法、高速回転水流アトマイズ法等)、還元法、カルボニル法、粉砕法等の方法により製造されたものを用いることができる。
このうち、金属粉末には、アトマイズ法により製造されたものを用いるのが好ましい。アトマイズ法によれば、前記したような極めて微小な平均粒径の金属粉末を効率よく製造することができる。また、粒径のバラツキが少なく、粒径の揃った金属粉末を得ることができる。したがって、このような金属粉末を用いることにより、焼結体における気孔の生成を確実に防止することができ、密度の向上を図ることができる。
また、アトマイズ法で製造された金属粉末は、比較的真球に近い球形状をなしているため、バインダーに対する分散性や流動性に優れたものとなる。このため、造粒粉末を成形型に充填して成形する際に、その充填性を高めることができ、最終的により緻密な焼結体を得ることができる。
【0018】
一方、セラミックス材料としては、例えば、アルミナ、マグネシア、ベリリア、ジルコニア、イットリア、フォルステライト、ステアタイト、ワラステナイト、ムライト、コージライト、フェライト、サイアロン、酸化セリウムのような酸化物系セラミックス材料、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステンのような非酸化物系セラミックス材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が用いられる。
【0019】
本発明に用いられる無機粉末の平均粒径は、好ましくは1μm以上30μm以下、より好ましくは3μm以上20μm以下とされ、さらに好ましくは3μm以上10μm以下とされる。このような粒径の金属粉末は、著しい凝集や、成形時の圧縮性の低下を避けつつ、最終的に十分に緻密な焼結体を製造可能なものとなる。
なお、平均粒径が前記下限値未満である場合、無機粉末が凝集し易くなり、成形時の圧縮性が著しく低下するおそれがある。一方、平均粒径が前記上限値を超える場合、粉末の粒子間の隙間が大きくなり過ぎて、最終的に得られる焼結体の緻密化が不十分になるおそれがある。
また、平均粒径は、レーザー回折法により、体積基準で累積量が50%になるときの粒径として求められる。
【0020】
また、本発明に用いられる無機粉末がFe系合金で構成されている場合、そのタップ密度は3.5g/cm以上であるのが好ましく、3.8g/cm以上であるのがより好ましい。このようにタップ密度が大きい無機粉末であれば、成形時に、粒子間の充填性が特に高くなる。このため、最終的に、特に緻密な焼結体を得ることができる。なお、無機粉末のタップ密度は、例えばJIS Z 2512に規定のタップ密度測定方法に準じて測定することができる。
【0021】
また、本発明に用いられる無機粉末の比表面積は、特に限定されないが、0.15m/g以上0.8m/g以下であるのが好ましく、0.2m/g以上0.7m/g以下であるのがより好ましく、0.3m/g以上0.6m/g以下であるのがさらに好ましい。このように比表面積の広い無機粉末であれば、表面の活性(表面エネルギー)が高くなるため、より少ないエネルギーの付与でも容易に焼結することができる。したがって、成形体を焼結する際に、より短時間で焼結することができ、保形性を高め易い。一方、比表面積が前記上限値を超えると、無機粉末とバインダーとの接触面積が必要以上に広くなり、射出成形用組成物の安定性や流動性が低下するおそれがある。なお、無機粉末の比表面積は、例えばJIS Z 8830に規定の気体吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法に準じて測定することができる。
【0022】
(バインダー)
本発明に用いられるバインダーは、前述したように、成分Aとしてポリアセタール系樹脂、成分Bとしてエチレン−グリシジルメタクリレート系共重合体を含むものである。以下、各成分について詳述する。
≪成分A≫
成分Aは、ポリアセタール系樹脂である。ポリアセタール系樹脂は、オキシメチレン構造を単位構造とするポリマーであり、ホルムアルデヒドのみをモノマーとするホモポリマー、それ以外のモノマーを含むコポリマー等であってもよいが、保形性を高める観点からコポリマーが好ましく用いられる。コポリマーにおけるホルムアルデヒド以外のモノマー(コモノマー)としては、例えば、オキシエチレン、オキシプロピレンのようなオキシアルキレンの他、エピクロルヒドリン、1,3−ジオキソラン、ジエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,3−ジオキサン等が挙げられ、特に分子中に炭素数2以上のオキシアルキレンユニットを有するものが好ましく用いられる。コモノマーの共重合量は、特に限定されないが、主モノマー100モル部に対して1モル部以上10モル部以下であるのが好ましく、1モル部以上6モル部以下であるのがより好ましい。また、コポリマーにおけるモノマーの配列は、特に限定されず、ランダム共重合、交互共重合、ブロック共重合、グラフト共重合のいずれであってもよい。
【0023】
このようなポリアセタール系樹脂としては、例えば、デュポン社製デルリン、ポリプラスチックス社製ジュラコン、旭化成工業社製テナック、三菱エンジニアリングプラスチックス社製ユピタール、クオドラントポリペンコジャパン社製ポリペンアセタール、東レ製アミラス等を用いることができる。
また、成分Aは、その引張強さが30MPa以上90MPa以下程度であるのが好ましく、40MPa以上80MPa以下程度であるのがより好ましい。このような引張強さをもつ成分Aは、成形後において成形体の保形性を特に高め得るものとなる。
【0024】
≪成分B≫
成分Bは、エチレン−グリシジルメタクリレート系共重合体である。エチレン−グリシジルメタクリレート系共重合体は、エチレン構造およびグリシジルメタクリレート構造を単位構造とするコポリマーである。また、成分Bは、その他のコモノマーとして、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルのようなカルボン酸ビニルエステル、α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル等のエチレン系不飽和エステル化合物の構造を1種または2種以上含んでいてもよい。このうち、特に、酢酸ビニルおよびアクリル酸メチルの少なくとも一方を含んでいるのが好ましい。これにより、保形性の特に高い成形が可能な射出成形用組成物が得られ、最終的に変形や欠損等が特に少ない高品質な焼結体を製造することができる。
ここで、本発明の射出成形用組成物は、前述したように、成分Aとしてポリアセタール系樹脂、成分Bとしてエチレン−グリシジルメタクリレート系共重合体をそれぞれ含むバインダーを含有するものである。
【0025】
本発明者は、従来の射出成形用組成物の脱脂時の保形性が低く、焼結後に変形や欠損等の不良が発生する原因について鋭意検討を重ねた。そして、保形性が低下する原因は、無機粉末中の金属元素がバインダーの分解を促す触媒的働きをすることにより、バインダーが必要以上に分解されてしまい、無機粉末の粒子同士を結着させる本来の機能が損なわれている点にあることを見出した。その上で、バインダーとして成分Aと成分Bの双方を含むことにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0026】
具体的には、上記2種類の成分を含んでいると、原料の混練時に成分Bが流動し、無機粉末の粒子を覆うように浸透する。これは、成分Aに対して成分Bの軟化点が相対的に低いため、成分Aよりも先に液状になり、無機粉末の粒子とバインダーとの隙間に入り込むことができるからである。しかも、軟化時の成分Bは、軟化後における流動性が比較的高いため、毛細管現象に伴って小さな隙間にも効率よく浸透することができる。その結果、原料を混練してなる混練物(本発明の射出成形用組成物)では、無機粉末の粒子を覆うように成分Bが存在し、さらにその外側を覆うように成分Aが存在することとなる。さらに、成分Aの著しい分解が抑制され、脱脂工程において成分Aを徐々に分解することができるため、保形性の低下が抑制される。
【0027】
図1は、本発明の射出成形用組成物の構造を模式的に示す断面図、図2は、本発明の射出成形用組成物を混練したときの構造を模式的に示す断面図である。
射出成形用組成物10では、図1に示すように、バインダー3中に複数の無機粉末の粒子2が分散している。バインダー3では成分Aと成分Bとが混在している。
このような射出成形用組成物10を混練する際には、外部からの加熱あるいは混練に伴う自己発熱により、射出成形用組成物10の温度が上昇する。その結果、得られた混練物1では、図2に示すように、粒子2の表面を覆うように成分Bを主材料とする内層21が形成され、その外側には成分Aを主材料とする外層22が位置する。このような内層21が形成されると、内層21が隔壁となって、粒子2中の金属元素と外層22との接触が防止されることとなり、前述した触媒的働きが抑えられる。その結果、バインダー3の突発的な分解が抑制され、保形性の低下を避けることができる。
【0028】
また、内層21は粒子2と接触するため、前述した触媒的働きに対する対抗性を備えている必要がある一方、外層22は内層21より軟化点が高いにもかかわらず優れた流動性を備えていることが好ましい。これに対し、本発明者は、成分Aとしてポリアセタール系樹脂を用い、成分Bとしてエチレン−グリシジルメタクリレート系共重合体を用いることにより、上記の課題の双方を確実に解決し得ることを見出したのである。内層21が存在することにより、成形体を脱脂処理に供したとき、外層22は突発的ではなく徐々に熱分解されるため、成形体の形状を維持し易くなる。また、エチレン−グリシジルメタクリレート系共重合体は、金属元素による触媒的働きに対する優れた遮蔽性とポリアセタール系樹脂との相溶性の双方を有しているため、成形性をより高めることができる。したがって、保形性と成形性との両立を図ることができる。
【0029】
ここで、成分Bはグリシジル基が含んでいるが、このグリシジル基は混練、成形等において開環し、無機粉末の粒子表面の水酸基と結合する。その結果、無機粉末と成分Bとが高い密着性を示すこととなる。その結果、内層21が安定的に形成されることとなる。一方、エチレン構造は、前記遮蔽性を提供するとともに、成分Aとの相溶性を提供していると考えられる。
さらに、成分B中に前述したエチレン系不飽和エステル化合物の単位構造を含んでいるときには、このエチレン系不飽和エステル化合物が粒子2同士をより確実に結着させるため、保形性を特に高めることができる。
【0030】
内層21は、粒子2の表面を覆っていればその厚さは特に限定されないが、例えば平均厚さが1nm以上2000nm以下であるのが好ましく、2nm以上1000nm以下であるのがより好ましい。これにより、保形性と成形性(形状転写性)とを高度に両立することができる。なお、内層21の平均厚さが前記下限値を下回る場合、内層21が途切れ易くなるため、粒子2と外層22とが接触するおそれがあり、一方、前記上限値を上回る場合、相対的に外層22の比率が低下するため、成形性が低下するおそれがある。
【0031】
また、外層22は、内層21の外側に位置していれば層状でなくてもよく、各粒子2に係る外層22同士が連結された状態、すなわち図2に示すように混練物1において粒子2を分散する基質(マトリックス)状であってもよい。同様に、内層21についても、粒子2ごとで独立していなくてもよく、粒子2同士の間を繋ぐように分布していてもよい。
また、内層21は、主として成分Bで構成されていればよいが、成分Aやその他の成分を含んでいてもよい。同様に、外層22は、主として成分Aで構成されていればよいが、成分Bやその他の成分を含んでいてもよい。なお、内層21における成分Bの含有率は、体積比で50%超であればよく、同様に、外層22における成分Aの含有率は、体積比で50%超であればよい。
【0032】
また、内層21と外層22との境界では、界面を介して構成材料が連続的に変化してもよいが、好ましくは不連続的に構成材料が変化しているものとされる。このような構造であれば、内層21と外層22との界面がすべり面となり、射出成形用組成物の流動性が特に向上する。その結果、射出成形時の成形性が特に高くなり、最終的に寸法精度の高い焼結体が得られる。
【0033】
射出成形用組成物における成分Bの含有量は、成分Aの含有量に対して1質量%以上30質量%以下とされ、2質量%以上20質量%以下であるのが好ましい。成分Bの含有量を前記範囲内とすることにより、保形性と成形性とを高度に両立することができる。
また、成分Bの軟化点は、65℃以上105℃以下であるのが好ましく、70℃以上100℃以下であるのがより好ましい。これにより、射出成形用組成物を混練したときあるいは成形したときに、成分Bを確実に軟化させ、内層21を形成することができる。
さらには、成分Bの軟化点と成分Aの軟化点との差は、55℃以上120℃以下であるのが好ましく、60℃以上115℃以下であるのがより好ましい。成分Bと成分Aとの軟化点差が前記範囲内であれば、保形性と成形性とをさらに高度に両立することができる。
【0034】
成分Bのエチレン−グリシジルメタクリレート系共重合体を構成する単位構造には、前述したように、エチレン構造、グリシジルメタクリレート構造、エチレン系不飽和エステル化合物構造等が挙げられるが、これらの存在比は、エチレン構造が60質量%99.9質量%程度であり、グリシジルメタクリレート構造が0.1質量%20質量%程度であり、エチレン系不飽和エステル化合物構造が0質量%以上39.9質量%程度とされる。
【0035】
特に、グリシジルメタクリレート構造は、エチレン構造100質量部に対して1質量部以上30質量部以下であるのが好ましく、2質量部以上25質量部以下であるのがより好ましい。これにより、エチレン構造による成分Aとの相溶性と、グリシジルメタクリレート構造による粒子2との親和性と、を高度にバランスすることができ、保形性と成形性の双方を特に高めることができる。
さらには、エチレン系不飽和エステル化合物構造は、グリシジルメタクリレート構造100質量部に対して20質量部以上80質量部以下であるのが好ましく、25質量部以上75質量部以下であるのがより好ましい。
【0036】
また、成分Bのメルトフローレートは、0.5g/10分以上50g/10分以下程度であるのが好ましく、3g/10分以上40g/10分以下程度であるのがより好ましい。メルトフローレートが前記範囲内であれば、内層21が確実に形成されるため、本発明の射出成形用組成物の保形性が特に向上する。なお、メルトフローレートは、JIS K 6922−2に規定の方法に準じて測定温度190℃、測定荷重2.16kgで測定することができる。
【0037】
さらに、成分Bは、その引張強さが4MPa以上25MPa以下程度であるのが好ましく、5MPa以上20MPa以下程度であるのがより好ましい。これにより、成分Bは、軟化時にも流動性に富んだものとなり、内層21をより確実に形成し得るものとなる。
成分Bの重量平均分子量は、上述したようなメルトフローレート等を考慮して適宜設定されるが、一例として、1万以上40万以下であるのが好ましく、3万以上30万以下であるのがより好ましい。
【0038】
≪その他の成分≫
また、本発明に用いられるバインダーは、その他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、ワックス類が好ましく用いられる。ワックス類としては、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木ろう、ホホバ油のような植物系ワックス、みつろう、ラノリン、鯨ろうのような動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシンのような鉱物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムのような石油系ワックス等の天然ワックス、ポリエチレンワックスのような合成炭化水素、モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体のような変性ワックス、硬化ひまし油、硬化ひまし油誘導体のような水素化ワックス、12−ヒドロキシステアリン酸のような脂肪酸、ステアリン酸アミドのような酸アミド、無水フタル酸イミドのようなエステル等の合成ワックスが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。このようなワックスを含むことにより、射出成形用組成物は流動性の高いものとなり、より成形性の高いものとなる。
【0039】
なお、ワックス類としては、特に石油系ワックスまたはその変性物が好ましく用いられ、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックスまたはこれらの誘導体がより好ましく用いられ、パラフィンワックスまたはカルナバワックスがさらに好ましく用いられる。これらのワックスは、成分Aとの相溶性に優れているため、均質なバインダーの調製を可能にする。このため、成形性の高い射出成形用組成物の製造に寄与する。
【0040】
また、ワックス類の重量平均分子量は、100以上1万未満であるのが好ましく、200以上5000以下であるのがより好ましい。ワックス類の重量平均分子量を前記範囲内とすることにより、無機粉末とバインダーとをより均一に混合することができ、射出成形用組成物の成形性をより高めることができる。
また、バインダーにおけるワックス類の含有量は、0.1質量%以上20質量%以下であるのが好ましく、1質量%以上15質量%以下であるのがより好ましい。ワックス類の含有量を前記範囲内とすることにより、射出成形用組成物の流動性を特に高めることができる。
【0041】
また、成分Bに対するワックス類の割合は、0.01以上0.5以下であるのが好ましく、0.02以上0.4以下であるのがより好ましい。成分Bに対するワックス類の割合を前記範囲内に設定することにより、成分Bとワックス類とのバランスが最適化され、脱脂時の保形性を阻害することなく成形性を高めることができる。
なお、ワックス類としては、その軟化点が30℃以上200℃以下のものが好ましく用いられ、50℃以上150℃以下のものがより好ましく用いられる。
【0042】
また、その他の成分としては、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸のような高級脂肪酸、ステアリン酸アミド、スパルミン酸アミド、オレイン酸アミドのような高級脂肪酸アミド、ステアリンアルコール、エチレングリコールのような高級アルコール、パーム油のような脂肪酸エステル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチルのようなフタル酸エステル、アジピン酸ジブチルのようなアジピン酸エステル、セバシン酸ジブチルのようなセバシン酸エステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリプロピレンカーボネート、エチレンビスステアロアミド、アルギン酸ソーダ、寒天、アラビアゴム、レジン、しょ糖、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
このうち、高級脂肪酸としては特に、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸のような飽和脂肪酸が好ましく用いられる。このような飽和脂肪酸は、長鎖アルキル基を有するとともに不飽和結合を含まないため、潤滑剤として作用し、射出成形用組成物の成形性をより高めることができる。
バインダーにおける飽和脂肪酸の含有量は、0.1質量%以上10質量%以下であるのが好ましく、1質量%以上8質量%以下であるのがより好ましい。飽和脂肪酸の含有量を前記範囲内とすることにより、射出成形用組成物の成形性を特に高めることができる。
また、成分Bに対する飽和脂肪酸の割合は、0.01以上1以下であるのが好ましく、0.02以上0.5以下であるのがより好ましい。成分Bに対する飽和脂肪酸の割合を前記範囲内に設定することにより、保形性と成形性とをより高度に両立することができる。
【0044】
さらに、その他の成分としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテンのようなポリオレフィン、ポリエチレン−ポリプロピレン共重合体、ポリエチレン−ポリブチレン共重合体のようなポリオレフィン系共重合体、ポリスチレン等の炭化水素系樹脂が挙げられる。
なお、射出成形用組成物は、上記の成分の他に、酸化防止剤、脱脂促進剤、界面活性剤等を含んでいてもよい。
【0045】
また、射出成形用組成物中におけるバインダーの含有率は、金属粉末、セラミックス粉末に応じて適宜設定されるが、無機粉末100質量部に対して1質量部以上50質量部以下程度とするのが好ましく、3質量部以上30質量部以下程度とするのがより好ましい。これにより、射出成形用組成物は、特に脱脂時の保形性に優れたものとなる。
また、射出成形用組成物は、上述した無機粉末、バインダー等を混練して調製されるが、この混練には、例えば、加圧または双腕ニーダー式混練機、ロール式混練機、バンバリー型混練機、1軸または2軸押出機等の各種混練機を用いることができる。
混練条件は、用いる金属粉末の粒径、金属粉末とバインダー組成物との混合比等の諸条件により異なるが、その一例を挙げると、混練温度:50〜200℃、混練時間:15〜210分とすることができる。
【0046】
<焼結体の製造方法>
以下、本発明の焼結体の製造方法について説明する。
焼結体の製造方法は、無機粉末とバインダーとを混練して混練物(本発明の射出成形用組成物)を得る混練工程と、得られた混練物を所望の形状に成形する成形工程と、得られた成形体を脱脂する脱脂工程と、得られた脱脂体を焼成する焼成工程とを有する。以下、各工程について順次説明する。
【0047】
(混練工程)
混練物は、上述した無機粉末、バインダー等を混練して調製されるが、この混練には、例えば、加圧または双腕ニーダー式混練機、ロール式混練機、バンバリー型混練機、1軸または2軸押出機等の各種混練機を用いることができる。
混練工程における混練温度は、成分Aおよび成分Bの軟化点に応じて設定されるのが好ましい。具体的には、成分Bであるエチレン−グリシジルメタクリレート系共重合体は、成分Aであるポリアセタール系樹脂よりも軟化点が低いので、初期の混練温度は、成分Aの軟化点とこの軟化点−10℃との間の温度に設定されるのが好ましい。このような温度で混練することにより、混練時の昇温に伴って成分Bのみが軟化し、粒子2と成分Aとの間に浸透し易くなる。その結果、内層21と外層22とが形成されることとなり、保形性と成形性とを高度に両立することができる。
【0048】
なお、成分Aの軟化点をT[℃]とし、成分Bの軟化点をT[℃]としたとき、混練温度は前述したようにT−10℃以上T℃以下であるのが好ましく、T−10℃以上T−2℃以下であるのがより好ましい。このような温度で混練することにより、上述した効果がより顕著なものとなる。また、このような混練温度は、5分以上180分以下程度維持されるのが好ましい。ただし、TおよびTは、T−10>Tの関係を満たすのが好ましい。
【0049】
一方、上記の条件で混練が終わった後、最終的には成分Aの軟化点Tよりも高温側で混練を行うようにしてもよい。これにより、成分Aも軟化し、混練物全体の流動性がより向上する。この場合、最終的な混練温度は、T℃超T+70℃以下であるのが好ましい。
なお、全体の混練時間は、15分以上210分以下程度であるのが好ましい。
【0050】
得られた混練物の粘度は、500P以上7000P以下(50Pa・s以上700Pa・s以下)であるのが好ましく、1000P以上6000P以下(100Pa・s以上600Pa・s以下)であるのがより好ましい。これにより、成形時の成形性を特に高めることができる。なお、粘度の測定は、混練物を190℃の温度に保ち、キャピログラフにより測定される。
【0051】
また、本工程に供されるバインダーには粉末状のものが好ましく用いられる。そして、バインダーを粉末化する際には、一般的な粉砕方法が用いられるが、特に凍結粉砕を用いることが好ましい。凍結粉砕によって得られるバインダー粉末は、特に細かく均一なものであり、しかも粉砕時の熱影響が抑えられた本来のバインダー特性を有するものとなる。このため、成分Aと成分Bの軟化点の差に基づく上述の効果がより確実に発揮されることとなる。その結果、無機粉末の粒子の周りに内層21および外層22が確実に形成されることとなり、保形性と成形性とを高度に両立し得る混練物が得られる。
【0052】
凍結粉砕は、試料を凍結させることにより生じる脆性を利用して、細かく均一に粉砕する方法である。凍結粉砕には、凍結粉砕機が用いられる。凍結粉砕機は、試料を入れる粉砕容器と、粉砕容器内を往復運動する鋼球と、を備えており、粉砕容器を液体窒素等の冷却剤で冷却しつつ、鋼球を往復運動させることで、粉砕容器内の試料を粉砕する。冷却に伴い、試料には脆性が生じることから、柔軟性を有する試料も粉砕することができる。なお、上述した凍結粉砕機は一例であり、それ以外の構造の凍結粉砕機も用いることができる。
【0053】
バインダーを凍結粉砕することにより、バインダーを変性させることなく、細かく均一に粉砕することができる。なお、凍結粉砕以外の粉砕方法を用いた場合、粉砕に伴ってバインダーが発熱し、熱によって変性、溶融(軟化)、分解することもあるが、凍結粉砕によりこの変性、溶融、分解を防止することができる。その結果、バインダーは本来の特性を維持したままその後の工程に供されることとなり、成形体における保形性の低下が防止される。そして最終的には、変形や欠損等が少ない高品質な焼結体を製造することができる。
【0054】
また、凍結粉砕すると、得られた粉末は微細で比表面積が大きく、活性度の高いものとなる。このような粉末は、無機粉末に対して親和性の高いものとなり、バインダー粉末と無機粉末とを混合する際には、偏在等の不具合の抑制に寄与するものとなる。したがって、凍結粉砕によればとりわけ均一な射出成形用組成物の製造を可能にする。
凍結粉砕における冷却剤には、前述したような液体窒素の他、液体空気、液体酸素、ドライアイス等を用いてもよい。
なお、凍結粉砕を行う場合、成分Aと成分Bとを混合した後に行ってもよいし、成分Aおよび成分Bのそれぞれを粉砕するようにしてもよいが、成分Aと成分Bとを均一に混合し、均質な混練物を得るという観点からは、後者の方が好ましい。
【0055】
このようにして得られたバインダー粉末の平均粒径は、それぞれ10μm以上500μm以下程度であるのが好ましく、15μm以上400μm以下程度であるのがより好ましい。凍結粉砕によってこの程度の粒径にまで粉砕することにより、混合における比重の差の影響を最小限に抑えることができるので、バインダー粉末と無機粉末とを均一に混合することができる。
【0056】
また、特に成分Aと成分Bを個別に粉砕する場合、成分Aのバインダー粉末の平均粒径は、無機粉末の平均粒径の3倍以上20倍以下であるのが好ましく、7倍以上15倍以下であるのがより好ましい。また、成分Bのバインダー粉末の平均粒径は、無機粉末の平均粒径の3倍以上50倍以下であるのが好ましく、5倍以上30倍以下であるのがより好ましい。これにより、バインダー粉末と無機粉末とをより均一に混合することができる。
【0057】
なお、成分Bのバインダー粉末の平均粒径は、成分Aのバインダー粉末の平均粒径の2倍以上15倍以下であるのが好ましく、3倍以上10倍以下であるのがより好ましい。これにより、成分Aのバインダー粉末と成分Bのバインダー粉末とをより均一に混合することができる。
また、平均粒径は、レーザー回折法により、体積基準で累積量が50%になるときの粒径として求められる。
【0058】
(成形工程)
まず、上述したような本発明の射出成形用組成物を用いて、成形を行う。これにより、所望の形状、寸法の成形体を製造する。
成形方法としては、射出成形法が用いられる。なお、射出成形に先立って、射出成形用組成物には、必要に応じてペレット化処理を施すようにしてもよい。ペレット化処理は、ペレタイザー等の粉砕装置を用い、コンパウンドを粉砕する処理である。これにより得られたペレットは、平均粒径が1mm以上10mm以下程度とされる。
【0059】
次いで、得られたペレットを射出成形機に投入し、成形型に射出して成形する。これにより、成形型の形状が転写された成形体が得られる。
なお、製造される成形体の形状寸法は、以後の脱脂および焼結による収縮分を見込んで決定される。
また、得られた成形体に対して、必要に応じ、機械加工、レーザー加工等の後加工を施すようにしてもよい。
また、射出成形用組成物の射出圧力は、5〜500MPa程度であるのが好ましい。
さらには、成形工程のみでなく、射出成形用組成物を混練する際の温度(混練温度)も上記成形温度と同様に設定されるのが好ましい。これにより、混練段階から内層21が形成されることになるので、混練物の流動性が向上し、均一な混練が可能になる。このため、成形体も均質なものとなり、保形性および成形性のさらなる向上が図られる。
【0060】
(脱脂工程)
次に、得られた成形体に対して脱脂処理を施す。これにより、成形体中に含まれるバインダーを除去(脱脂)して、脱脂体が得られる。
また、成分Bは、脱脂時またはその前の成形時において成分Aよりも先に分解し、外部に放出されることが多く、その場合、成形体には流路が形成される。脱脂工程では、この流路を介して成分Aの分解物が容易に放出されるため、成形体に亀裂等が発生するのを防止しつつ脱脂処理を施すことができる。その結果、成形体(脱脂体)の保形性を特に高めることができる。
【0061】
この脱脂処理は、特に限定されないが、酸素、硝酸ガス等の酸化性雰囲気の他、非酸化性雰囲気中、例えば真空または減圧状態下(例えば1.33×10−4Pa以上13.3Pa以下)、または、窒素ガス、アルゴンガス等のガス中で、熱処理を行うことによりなされる。
また、脱脂工程(熱処理)における処理温度は、特に限定されないが、100℃以上750℃以下であるのが好ましく、150℃以上700℃以下であるのがより好ましい。
また、脱脂工程(熱処理)における処理時間(熱処理時間)は、0.5時間以上20時間以下であるのが好ましく、1時間以上10時間以下であるのがより好ましい。
【0062】
また、このような熱処理による脱脂は、種々の目的(例えば、脱脂時間の短縮等の目的)で、複数の工程(段階)に分けて行ってもよい。この場合、例えば、前半を低温で、後半を高温で脱脂するような方法や、低温と高温を繰り返し行う方法等が挙げられる。
また、上記のような脱脂処理後に、得られた脱脂体に対して、例えば、ばり取りや、溝等の微小構造の形成等の目的で、各種後加工を施してもよい。
なお、成形体中のバインダーは、脱脂処理によって完全に除去されなくてもよく、例えば、脱脂処理の完了時点で、その一部が残存していてもよい。
【0063】
(焼成工程)
次に、脱脂処理が施された脱脂体を焼成する。これにより、脱脂体が焼結し、焼結体(本発明の焼結体)が得られる。
焼成条件は、特に限定されないが、非酸化性雰囲気中、例えば真空または減圧状態下(例えば1.33×10−4Pa以上133Pa以下)、または、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス中で、熱処理を行うことによりなされる。これにより、金属粉末が酸化してしまうのを防止することができる。
【0064】
また、無機粉末中に金属材料を含む場合、焼成する際には、金属材料と同種の金属材料で構成された容器内に脱脂体を入れ、その状態で焼成するのが好ましい。これにより、脱脂体中の金属成分が揮発し難くなるため、最終的に得られる焼結体の金属組成が目的とする組成から変化してしまうのを防止することができる。
用いる容器は、密閉構造のものではなく、適度な孔または隙間を有するものが好ましい。これにより、容器内と容器外の雰囲気を同一にして、容器内の雰囲気が意図しないものに変化するのを防止することができる。また、容器と脱脂体との間は、できるだけ密着することなく、十分な隙間を有しているのが好ましい。
【0065】
なお、焼成工程を行う雰囲気は、工程の途中で変化してもよい。例えば、最初に減圧雰囲気とし、途中で不活性雰囲気に切り替えるようにしてもよい。
また、焼成工程は、2段階またはそれ以上に分けて行ってもよい。これにより、焼結の効率が向上し、より短い焼成時間で焼成を行うことができる。
また、焼成工程は、前述の脱脂工程と連続して行うのが好ましい。これにより、脱脂工程は、焼結前工程を兼ねることができ、脱脂体に予熱を与えて、脱脂体をより確実に焼結させることができる。
【0066】
焼成温度は、無機粉末の種類に応じて適宜設定されるが、金属粉末の場合、1000℃以上1650℃以下であるのが好ましく、1050℃以上1500℃以下であるのがより好ましい。また、セラミックス粉末の場合、1250℃以上1900℃以下であるのが好ましく、1300℃以上1800℃以下であるのがより好ましい。
また、焼成時間は、0.5時間以上20時間以下であるのが好ましく、1時間以上15時間以下であるのがより好ましい。
【0067】
また、このような焼成工程は、種々の目的(例えば、焼成時間の短縮等の目的)で、複数の工程(段階)に分けて行ってもよい。この場合、例えば、前半を低温で、後半を高温で焼成するような方法や、低温と高温を繰り返し行う方法等が挙げられる。
また、上記のような焼成工程後に、得られた焼結体に対して、例えば、ばり取りや、溝等の微小構造の形成等の目的で、機械加工、放電加工、レーザー加工、エッチング等を施してもよい。
【0068】
なお、得られた焼結体には、必要に応じて、HIP処理(熱間等方加圧処理)等を施すようにしてもよい。これにより、焼結体のさらなる高密度化を図ることができる。
HIP処理の条件としては、例えば、温度が850℃以上1100℃以下、時間が1時間以上10時間以下とされる。
また、加圧圧力は、50MPa以上であるのが好ましく、100MPa以上であるのがより好ましい。
【0069】
上記のようにして得られた焼結体は、いかなる目的で用いられるものであってもよく、その用途としては、各種構造部品、各種医療用構造体等が挙げられる。
また、得られる焼結体の相対密度は、例えば、95%以上、好ましくは96%以上となることが期待される。このような焼結体は、焼結密度が高く、かつ外観および寸法精度に優れたものとなる。
また、焼結体の引張強度は、例えば金属粉末を用いた場合、900MPa以上になることが期待される。さらには、焼結体の0.2%耐力は、例えば金属粉末を用いた場合、750MPa以上になることが期待される。
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0070】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.焼結体の製造
(実施例1)
まず、水アトマイズ法により製造されたSUS316L粉末(粉末No.1)を用意した。SUS316L粉末について、レーザー回折方式の粒度分布測定装置(マイクロトラック、日機装株式会社製、HRA9320−X100)により平均粒径を測定した。測定値を表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
一方、表2に示す組成のバインダーを用意し、成分A、成分B、潤滑剤等のその他の成分をそれぞれ凍結粉砕した。これにより、成分Aを凍結粉砕してなる第1のバインダー粉末、成分Bを凍結粉砕してなる第2のバインダー粉末、潤滑剤等を凍結粉砕してなる第3のバインダー粉末をそれぞれ製造した。
具体的には、成分A等の原料を粉砕容器に入れ、液体窒素で冷却しながら粉砕した。なお、凍結粉砕における粉砕条件は、材料温度が−196℃、粉砕機温度が−15℃、粉砕機回転数が5200rpmであった。得られた第1のバインダー粉末の平均粒径は53μm、第2のバインダー粉末の平均粒径は242μm、第3のバインダー粉末の平均粒径は200μmであった。
次いで、SUS316L粉末と、バインダー粉末と、を混合し、加圧ニーダー(混練機)にて混練温度160℃で30分間の条件で混練した。この混練は、窒素雰囲気中で行った。なお、SUS316L粉末とバインダーとの混合比を表1に示す。
【0073】
次に、得られた混練物をペレタイザーにより粉砕して、平均粒径5mmのペレットを得た。
次いで、得られたペレットを用い、材料温度:190℃、射出圧力:10.8MPa(110kgf/cm)という成形条件で、射出成形機にて成形を行った。これにより、成形体を得た。なお、成形体の形状は、直径0.5mm×高さ0.5mmの円筒形状である。
次に、成形体に対して、温度:500℃、時間:1時間、雰囲気:窒素ガス(大気圧)という脱脂条件で脱脂処理を施した。これにより、脱脂体を得た。
次に、脱脂体に対して、温度:1270℃、時間:3時間、雰囲気:窒素ガス(大気圧)という焼成条件で焼成処理を施した。これにより、焼結体を得た。
【0074】
(実施例2〜13)
バインダーとして、表2に示す組成のものを用いるようにした以外は、それぞれ実施例1と同様にして焼結体を得た。なお、実施例12については、混練温度を155℃とした。
(比較例1〜6)
無機粉末として粉末No.1を用い、バインダーとして表2に示す組成のものを用いるようにした以外は、それぞれ実施例1と同様にして焼結体を得た。
【0075】
【表2】

【0076】
なお、表2および後述する表3〜5における成分A、Bは、以下に示すものである。
<成分A>
・テナックHC750:ポリアセタール系コポリマー
・テナック7520 :ポリアセタール系コポリマー
・テナック7054 :ポリアセタール系ホモポリマー
【0077】
<成分B>
・E−GMA−VA :グリシジルメタクリレート構造 12質量%、酢酸ビニル構造 5質量%、エチレン構造 残部
・E−GMA−MA :グリシジルメタクリレート構造 3質量%、アクリル酸メチル構造 27質量%、エチレン構造 残部
・E−GMA :グリシジルメタクリレート構造 12質量%、エチレン構造 残部
また、成分Bのメルトフローレートは、E−GMA−VAが7g/10分、E−GMA−MAが7g/10分、E−GMAが3g/10分であった。
【0078】
(実施例14〜16)
まず、水アトマイズ法により製造された2%Ni−Fe合金粉末(粉末No.2)を用意し、レーザー回折方式の粒度分布測定装置により平均粒径を測定した。測定値を表1に示す。なお、2%Ni−Fe合金の組成は、C:0.4質量%以上0.6質量%以下、Si:0.35質量%以下、Mn:0.8質量%以下、P:0.03質量%以下、S:0.045質量%以下、Ni:1.5質量%以上2.5質量%以下、Cr:0.2質量%以下、Fe:残部である。
【0079】
そして、バインダーとして表3に示す組成のものを用いるようにした以外は、それぞれ実施例1と同様にして焼結体を得た。なお、混練条件は、温度:160℃、時間:30分間とした。また、成形条件は、材料温度:190℃とした。また、脱脂条件は、温度:600℃、時間:1時間、雰囲気:窒素ガス(大気圧)とした。また、焼成条件は、温度:1150℃、時間:3時間、雰囲気:窒素ガス(大気圧)とした。
【0080】
(比較例7〜11)
無機粉末として粉末No.2を用い、バインダーとして表3に示す組成のものを用いるようにした以外は、それぞれ実施例1と同様にして焼結体を得た。
【0081】
【表3】

【0082】
(実施例17〜19)
まず、ガスアトマイズ法により製造されたTi合金粉末(粉末No.3)を用意し、レーザー回折方式の粒度分布測定装置により平均粒径を測定した。測定値を表1に示す。
そして、バインダーとして表4に示す組成のものを用いるようにした以外は、それぞれ実施例1と同様にして焼結体を得た。なお、混練条件は、温度:160℃、時間:30分間とした。また、成形条件は、材料温度:190℃とした。また、脱脂条件は、温度:450℃、時間:1時間、雰囲気:窒素ガス(大気圧)とした。また、焼成条件は、温度:1100℃、時間:3時間、雰囲気:アルゴンガス(減圧、1.3kPa)とした。
(比較例12〜16)
無機粉末として粉末No.3を用い、バインダーとして表4に示す組成のものを用いるようにした以外は、それぞれ実施例1と同様にして焼結体を得た。
【0083】
【表4】

【0084】
(実施例20〜22)
まず、アルミナ粉末(粉末No.4)を用意し、レーザー回折方式の粒度分布測定装置により平均粒径を測定した。測定値を表1に示す。
そして、バインダーとして表5に示す組成のものを用いるようにした以外は、それぞれ実施例1と同様にして焼結体を得た。なお、混練条件は、温度:160℃、時間:30分間とした。また、成形条件は、材料温度:190℃とした。また、脱脂条件は、温度:500℃、時間:2時間、雰囲気:窒素ガス(大気圧)とした。また、焼成条件は、温度:1600℃、時間:3時間、雰囲気:大気とした。
(比較例17〜21)
無機粉末として粉末No.4を用い、バインダーとして表5に示す組成のものを用いるようにした以外は、それぞれ実施例1と同様にして焼結体を得た。
【0085】
【表5】

2.混練物の評価
2.1 混練物の粘度の評価
各実施例および各比較例で得られた混練物について、190℃の温度に保ち、キャピログラフにより粘度を測定した。測定結果を表2〜5に示す。
【0086】
2.2 顕微鏡観察による評価
各実施例および各比較例で得られた混練物について、120℃の発煙硝酸下に3時間置いた。これにより、混練物中から成分Aを選択的に除去した。成分Aであるポリアセタール系樹脂は、発煙硝酸下において軟化点よりも低温で分解するため、選択的に除去可能であることから、この処理を施すことによって、混練物から外層22を選択的に除去することができる。その結果、混練物中には、無機粉末と内層21とが主に残存することとなる。
【0087】
ここで、この発煙硝酸処理を施した混練物を走査型電子顕微鏡で観察した。図3には、代表として実施例4および比較例2で得られた混練物の観察像を示す。
このうち、実施例4で得られた混練物について発煙硝酸処理を施したものは、図3(a)に示すように、無機粉末の粒子同士を繋ぐように内層21が存在している様子が認められる。また、粒子状に見えるものの表面は、比較的平滑性が高いことが認められる。したがって、図3(a)に示す無機粉末の粒子は内層21で隙間なく覆われていることが認められる。
【0088】
一方、比較例2で得られた混練物について発煙硝酸処理を施したものは、図3(b)に示すように、無機粉末の粒子同士を繋ぐように存在している内層21はほとんど認められない。また、粒子状に見えるものの表面は、濃淡の差が大きく、比較的平滑性が低いことが認められる。したがって、図3(b)に示す無機粉末の粒子は内層21が存在していたとしても隙間があることが認められる。
なお、実施例4で得られた混練物について発煙硝酸処理を施したものについて、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)により定性分析を行った。その結果、主に成分Bに含まれる結合に由来する特徴を示すスペクトルが得られた。
以上のことから、各実施例においては、内層21および外層22が確実に形成されていることが認められる。
【0089】
3.焼結体の評価
3.1 焼結密度の評価
各実施例および各比較例で得られた焼結体について、アルキメデス法(JIS Z 2501に規定)に準じた方法により密度を測定した。また、測定された焼結密度と、金属粉末の真密度から、焼結体の相対密度を算出した。
【0090】
3.2 外観の評価
各実施例および各比較例で得られた焼結体100個について、その外観を以下の評価基準にしたがって評価した。
<外観の評価基準>
◎:割れ、欠損および変形の発生数が3個以下である。
○:割れ、欠損および変形の発生数が4個以上10個以下である。
△:割れ、欠損および変形の発生数が11個以上50個以下である。
×:割れ、欠損および変形の発生数が51個以上である。
【0091】
3.3 寸法精度の評価
各実施例および各比較例で得られた焼結体100個について、その直径をマイクロメーターで測定した。そして、測定値について、JIS B 0411(金属焼結品の普通許容差)に規定の「幅の普通許容差」に基づき、以下の評価基準に基づいて評価した。
<寸法精度の評価基準>
◎:等級が精級である(許容差±0.05mm以下)。
○:等級が中級である(許容差±0.05mm超±0.1mm以下)。
△:等級が並級である(許容差±0.1mm超±0.2mm以下)。
×:許容外である。
【0092】
以上、2.および3.の評価結果を表2〜5に示す。
表2〜5から明らかなように、各実施例で得られた焼結体は、いずれも、各比較例で得られた焼結体に比べて、焼結密度が高いことが認められた。また、各実施例で得られた焼結体は、いずれも、各比較例で得られた焼結体に比べて、外観および寸法精度が優れていることが認められた。
【0093】
4.評価用サンプルの評価
4.1 評価用サンプルの作製
まず、粉砕条件と混練物の状態との関係を明らかにするため、以下の粉砕条件で粉砕したバインダー粉末と無機粉末とを用いて、それぞれ評価用サンプルとしての混練物を作製した。なお、無機粉末およびバインダー粉末としては、実施例3と同じものを使用し、実施例3と同じ条件で混練することにより混練物を得た。
【0094】
4.2 評価用サンプルの粘度評価
次いで、作製した評価用サンプルについて、190℃の温度に保ち、キャピログラフにて粘度を測定した。そして、以下の評価基準にしたがって粘度を評価した。
<粘度の評価基準>
○:成形性および保形性の双方を高め得る粘度範囲である
△:保形性は高いが、成形性がやや劣る粘度範囲である
×:成形性と保形性の双方が劣る粘度範囲である
【0095】
4.3 評価用サンプルの粘度評価
次いで、作製した評価用サンプルについて前述した発煙硝酸処理を施し、各評価用サンプルから外層22を選択的に除去した。
そして、残部について走査型電子顕微鏡で観察し、観察像を得た。
<顕微鏡観察像の評価基準>
○:ネックが多く認められる(粒子状物間の70%以上にネックが存在している)
△:ネックは少ない(粒子状物間の20%以上70%未満にネックが存在している)
×:ネックは認められない(粒子状物間の20%未満にネックが存在している)
以上、4.2および4.3の評価結果を表6に示す。なお、上記ネックとは、粒子状物の間を繋ぐように存在するものを指す。
【0096】
【表6】

【0097】
表6から明らかなように、バインダー粉末として凍結粉砕により得たものを用いたサンプル1、2においては、保形性に適した粘度を示すとともに、無機粉末の粒子を覆う内層が形成されていることが認められた。
一方、バインダー粉末として常温粉砕により得たものを用いたサンプル3においては、保形性が低く、顕微鏡で観察したところ、無機粉末の粒子を覆う内層も認められなかった。
以上のことから、凍結粉砕により粉砕して得たバインダー粉末を用いるとともに、粉砕機の回転数や平均粒径を最適化することにより、より保形性の高い成形体を製造可能な射出成形用組成物を製造し得ることが認められた。
【符号の説明】
【0098】
1……混練物 10……射出成形用組成物 2……粒子 21……内層 22……外層 3……バインダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料およびセラミックス材料の少なくとも一方で構成された無機粉末と、
ポリアセタール系樹脂およびエチレン−グリシジルメタクリレート系共重合体を含むバインダーと、
を含有し、
前記エチレン−グリシジルメタクリレート系共重合体の含有量は、前記ポリアセタール系樹脂の含有量に対して1体積%以上30体積%以下であることを特徴とする射出成形用組成物。
【請求項2】
前記無機粉末の粒子の表面を覆うように設けられ、主として前記エチレン−グリシジルメタクリレート系共重合体で構成された内層と、前記内層の外側に位置し、主として前記ポリアセタール系樹脂で構成された外層と、を有する請求項1に記載の射出成形用組成物。
【請求項3】
前記ポリアセタール系樹脂は、ホルムアルデヒドとそれ以外のコモノマーとのコポリマーである請求項1または2に記載の射出成形用組成物。
【請求項4】
前記エチレン−グリシジルメタクリレート系共重合体は、共重合体を構成するモノマーとして、酢酸ビニルおよびアクリル酸メチルの少なくとも一方を含む請求項1ないし3のいずれかに記載の射出成形用組成物。
【請求項5】
前記エチレン−グリシジルメタクリレート系共重合体の軟化点は、65℃以上105℃以下である請求項1ないし4のいずれかに記載の射出成形用組成物。
【請求項6】
さらに、飽和脂肪酸を含有する請求項1ないし5のいずれかに記載の射出成形用組成物。
【請求項7】
さらに、ワックス類を含有する請求項1ないし6のいずれかに記載の射出成形用組成物。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の射出成形用組成物を用いて製造されたことを特徴とする焼結体。
【請求項9】
金属材料およびセラミックス材料の少なくとも一方で構成された無機粉末と、ポリアセタール系樹脂およびエチレン−グリシジルメタクリレート系共重合体を含むバインダーとを、前記ポリアセタール系樹脂の軟化点と該軟化点−10℃との間の温度で混練し、混練物を得る工程と、
前記混練物を成形し、成形体を得る工程と、
前記成形体を脱脂、焼成して焼結体を得る工程と、を有することを特徴とする焼結体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−112886(P2013−112886A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262956(P2011−262956)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】