説明

射出成形用金型、及び成形品

【課題】製品機能を維持した上で、所望の形状に成形することが可能な射出成形用金型、及び成形品を提供する。
【解決手段】キャビティCは、筒部を成形するための筒状の第1キャビティ31と、第1キャビティ31における軸方向一端側に連通し、フランジ部を成形するための環状の第2キャビティ32と、を有し、第2キャビティ32は、型板22,23のうち、可動側型板23に形成された可動側凹部41と、固定側型板22の上面24と、で画成され、固定側型板22の上面24において、内周部分には、可動側凹部41内に向けて突出するとともに、第1キャビティ31の全周を取り囲む突出成形部51が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形用金型、及び成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、筒部、及び筒部における軸方向一端縁から径方向外側に向けて突設されたフランジ部を有する成形品を、射出成形により成形する方法として、例えば特許文献1に示されるような方法が知られている。
具体的に、特許文献1には、射出成形用金型において環状のキャビティの内側にディスク状のランナーが形成されるとともに、そのランナーの外縁と環状のキャビティの内縁とを全周に亘って繋ぐゲートが形成されており、さらに、ランナーに連通するスプルが雌型に形成されている。そして、このスプルからランナーに樹脂を注入すると、その樹脂が環状のゲートの全周からキャビティに流れ込み、キャビティに樹脂が充填されるようになっている。
【0003】
ところで、上述した筒部、及びフランジ部を有する成形品を成形する場合、フランジ部が厚かったり、筒部の軸長が長かったりすると、フランジ部の内周部分と筒部の根元部分との間でヒケが発生し易い。この場合には、筒部のうち軸方向に沿う先端側から根元側に向かうに従い内径が漸次広くなる等、先端側と根元側とで径差が発生する。
また、フランジ部が厚かったり、筒部の軸長が長かったりすると、樹脂充填の様相が悪く、樹脂材料がキャビティの全体に均一に行き渡り難くなるため、所望の形状の成形品を成形できないという問題がある。
そこで、これらの課題に対応するために、例えば、成形品全体での肉厚の均一化や、ゲート寸法の変更、成形収縮率の低い材料への変更、成形条件の変更等の対策が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−49711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、時計用歯車等の微小な部品を射出成形により成形する場合にあっては、製品形状が小さいため、未だ以下のような問題がある。
すなわち、上述した各種の対策のうち、例えば肉厚の均一化やゲート寸法の変更をする場合等には、自由度が小さく、所望の製品機能を有した上で、肉厚の均一化やゲート寸法の変更が難しいという問題がある。
また、上述した各種の対策のうち、例えば材料や成形条件の変更をする場合等には、変更による効果が小さく、改善が見込めないという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、製品機能を維持した上で、所望の形状に成形することが可能な射出成形用金型、及び成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の射出成形用金型は、重ね合わせた一対の型板の間に形成されたキャビティ内にゲートを介して樹脂材料が注入されることにより、筒部、及び前記筒部における軸方向一端縁から径方向外側に向けて突設されたフランジ部を有する成形品を成形するための射出成形用金型において、前記キャビティは、前記筒部を成形するための筒状の第1キャビティと、前記第1キャビティにおける軸方向一端側に連通し、前記フランジ部を成形するための環状の第2キャビティと、を有し、前記第2キャビティは、前記型板のうち、一方の型板に形成された凹部と、他方の型板における前記一方の型板との合わせ面と、で画成され、前記他方の型板の合わせ面において、内周部分には、前記凹部内に向けて突出するとともに、前記第1キャビティの全周を取り囲む突出成形部が形成されていることを特徴としている。
【0008】
この構成によれば、第2キャビティの内周部分、すなわち突出成形部と凹部との間隔を、第2キャビティの外周部分、すなわち他方の型板の合わせ面と凹部との間隔に比べて狭くすることができる。そのため、第2キャビティの内周部分には、突出成形部と凹部との間で成形されて、外周部分よりも薄肉とされた薄肉部が形成されることになる。
ここで、第1キャビティの全周に亘って突出成形部を形成することで、突出成形部と凹部との間隔が、第1キャビティの全周に亘って均一となる。
これにより、筒部となる第1キャビティ内とフランジ部となる第2キャビティ内の全体に樹脂材料を均一に充填でき、樹脂充填の様相を改善させることができるため、均一な収縮を促すことができる。また、樹脂材料が収縮する際に、第1キャビティと第2キャビティとの間でのヒケの発生を抑制することが可能になり、筒部の軸方向における径差を抑制できる。
その結果、成形品全体での肉厚の均一化や、ゲート寸法の変更、成形収縮率の低い材料への変更、成形条件の変更等、上述した各種の大幅な変更を伴うことなく、かつ製品機能を維持した上で、成形品を所望の形状に成形できる。
【0009】
また、前記前記第1キャビティにおける径方向の間隔D1は、前記第2キャビティのうち前記突出成形部と前記凹部との間隔D2以上に設定されていることを特徴としている。
この構成によれば、筒部(第1キャビティ)の軸方向一端側と、フランジ部(第2キャビティ)の内周部分と、の間でのヒケを効果的に抑制できる。
【0010】
また、前記突出成形部には、前記キャビティ内に開口するゲートが形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、突出成形部に開口するゲートを形成することで、成形後のゲート残り部が成形品の薄肉部に配置されることになる。そのため、ゲート残り部がフランジ部のから突出するのを抑えて、フランジ部の薄型化を図ることができる。
【0011】
また、本発明の成形品は、上記本発明の射出成形用金型を用いて成形された成形品であって、前記フランジ部のうち、内周部分には、前記突出成形部と前記凹部との間で成形されて、外周部分よりも薄肉とされた薄肉部が形成され、前記薄肉部は、前記筒部における軸方向一端側を全周に亘って取り囲むように形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明の射出成形用金型を用いて成形されているため、筒部の軸方向での径差の発生を抑制して、所望の形状の成形品を提供できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る射出成形用金型によれば、製品機能を維持した上で、所望の形状に成形することが可能となる。
また、本発明に係る成形品によれば、筒部の軸方向での径差の発生を抑制して、所望の形状の成形品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態における成形品の斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図1のA−A線に相当する射出成形用金型の断面図である。
【図4】成形品の他の構成を示す斜視図である。
【図5】成形品の他の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
(成形品)
まず、後述する本実施形態の射出成形用金型21で成形する成形品1について説明する。図1は成形品の斜視図であり、図2は図1のA−A線に沿う断面図である。
図1に示すように、成形品1は、例えば機械式時計やクオーツ時計等に組み込まれる歯車であって、筒部2と、筒部2における軸方向一端縁(根元)から径方向の外側に向けて突設されたフランジ部3と、を有している。なお、筒部2及びフランジ部3は、それぞれの軸線を共通軸O上に配置させた状態で連設されている。以下、共通軸Oに沿った方向を単に「軸方向」、「軸方向」に直交する方向を単に「径方向」、「軸方向」周りの方向を単に「周方向」という。
【0015】
筒部2は、軸方向に沿って肉厚が一様な円筒状に形成されており、根元側の大径部5と、大径部5の軸方向他端側(先端側)に連設されて大径部5に対して縮径された小径部6と、を備えている。
フランジ部3の軸方向他端側(筒部2側)に位置する面(以下、表面7という)において、内周部分には外周部分に対して軸方向一端側に向けて窪んだ凹部8が形成されている。この凹部8は、筒部2(大径部5)の根元部を周方向の全周に亘って取り囲む環状の第1凹部11と、第1凹部11から径方向外側に向けて連設された第2凹部12と、を備えている。第2凹部12は、平面視で半円状に形成されるとともに、周方向に沿って間隔をあけて複数配列されている。したがって、フランジ部3のうち、内周部分は凹部8が形成された薄肉部13を構成し、外周部分は薄肉部13よりも厚い厚肉部14を構成している。
【0016】
そして、薄肉部13において、各第2凹部12の内側に位置する部分には、軸方向他端側に向けて突出するゲート残り部15がそれぞれ形成されている。このゲート残り部15における軸方向他端面は、フランジ部3の表面7に対して軸方向一端側に向けて窪んだ位置に配置されている。また、フランジ部3(厚肉部14)の外周縁には、周方向の全周に亘って歯部16が形成されている。これら歯部16は、厚肉部14よりも薄肉に形成されている。
【0017】
(射出成形用金型)
次に、上述した成形品1を成形するための射出成形用金型21について説明する。図3は、射出成形用金型の断面図であって、図1のA−A線に相当する断面を示している。
図3に示すように、本実施形態における射出成形用金型21は、固定側型板22(他方の型板)と可動側型板23(一方の型板)とを備えている。固定側型板22及び可動側型板23は、固定側型板22を下に可動側型板23を上にして上下に配置されており、これら固定側型板22の上面(合わせ面)24と可動側型板23の下面(合わせ面)25とが重ね合わされることで、両型板22、23の間に溶融樹脂(樹脂材料)Wが充填されるキャビティCが形成される。また、図示しない昇降機構によって可動側型板23を上下に昇降させることで、固定側型板22と可動側型板23とは上下方向に相対的に接近離間可能とされている。
【0018】
キャビティCは、上述した成形品1を成形するための空間であり、成形品1のうち、筒部2を成形するための筒状の第1キャビティ31と、第1キャビティ31の上端部に連通し、フランジ部3を成形するための環状の第2キャビティ32と、を有している。なお、各キャビティ31,32の軸線は、上述した共通軸O上に配置されており、共通軸Oに沿う可動側型板23側(一端側)が上側、固定側型板22側(他端側)が下側となっている。
【0019】
第1キャビティ31は、固定側型板22の上面24に形成された固定側凹部33と、固定側凹部33の内側に配設されたピン部材34と、で画成されている。
固定側凹部33は、上下方向を軸方向とする円柱状に形成され、上方から下方に向かうに従い多段(2段)に縮径されている。
【0020】
ピン部材34は、固定側凹部33と同軸上に配置された円柱状とされ、上方から下方に向かうに従い多段(2段)に縮径されている。そして、ピン部材34は、根元側(上端部)が可動側型板23に固定され、先端側がキャビティC内を下方に向けて延在している。そして、ピン部材34の先端面(下端面)は、固定側凹部33の底壁35に突き当たっている。すなわち、ピン部材34は、キャビティCにおける径方向中央部を上下方向に貫通するように配置されている。
【0021】
そして、第1キャビティ31のうち、固定側凹部33の周壁部36は、上側が上述した筒部2における大径部5の外周面を、下側が小径部6の外周面を成形し、底壁35は筒部2における先端面をそれぞれ成形する。また、ピン部材34は、上側が筒部2における大径部5の内周面を、下側が小径部6の内周面をそれぞれ成形する。
【0022】
第2キャビティ32は、可動側型板23の下面25に形成された可動側凹部41と、固定側型板22の上面24と、上述したピン部材34と、で画成されている。
可動側凹部41は、上下方向に沿う深さが固定側凹部33よりも浅く、かつ、内径が固定側凹部33よりも大きい円盤状に形成されており、固定側凹部33と同軸上に配置されている。また、可動側凹部41の周壁部42のうち、上側には上述したフランジ部3の歯部16を成形するための歯部成形部43が形成されている。
【0023】
固定側型板22の上面24は、上述した可動側凹部41の頂壁44と平行な平坦面であり、頂壁44との間に上述したフランジ部3の厚み分の間隔を有している。また、固定側型板22の上面24のうち、可動側凹部41の外周に相当する部分には、可動側凹部41内を臨むように上方に向けて突出する環状突部45が形成されている。環状突部45の外周面は、可動側凹部41における周壁部42の下側に摺接している。そして、環状突部45の上端面と可動側凹部41の頂壁44との間は、上述した歯部16の厚み分の間隔を有している。
【0024】
ここで、固定側型板22の上面24の内周部分、すなわち固定側凹部33の周囲に相当する部分には、可動側凹部41内を臨むように上方へ向けて突出する突出成形部51が形成されている。この突出成形部51は、上述したフランジ部3のうち凹部8内に入り込む部分であり、固定側凹部33の全周を取り囲む環状の第1突出部52と、第1突出部52から径方向の外側に向けて連設された第2突出部53と、を有している。突出成形部51の上端面と可動側凹部41の頂壁44との間は、上述した薄肉部13の厚み分の間隔を有している。
【0025】
第2突出部53は、平面視で半円状に形成されるとともに、周方向に沿って間隔をあけて複数配列されている。また、突出成形部51のうち、各第2突出部53に相当する部分には、キャビティC内に開口するゲート開口55を有するピンゲート56がそれぞれ形成されている。各ピンゲート56は、固定側型板22を上下方向に沿って貫通しており、上方から下方に向かうに従い漸次拡径されている。そして、ピンゲート56のゲート開口55は、可動側凹部41における頂壁44の内周部分と上下方向で対向している。
【0026】
そして、第2キャビティ32のうち、固定側型板22の上面24がフランジ部3の表面7を、可動側凹部41の周壁部42(歯部成形部43)がフランジ部3の歯部16を、可動側凹部41の頂壁44がフランジ部3の軸方向一端側(筒部2とは反対側)に位置する面(以下、裏面9(図1参照)という)を、それぞれ成形する。そして、本実施形態では、突出成形部51と可動側凹部41の頂壁44との間で、フランジ部3の薄肉部13を成形する。
【0027】
なお、固定側凹部33の上端部において、周壁部36とピン部材34との径方向に沿う間隔D1(筒部2における基端部の径方向に沿う厚さ)は、突出成形部51の上端面と可動側凹部41の頂壁44との上下方向に沿う間隔D2(薄肉部13の厚さ)と等しく設定されていることが好ましい(D1=D2)。本実施形態では製品形状の制約上、周壁部36とピン部材34との径方向に沿う間隔D1は、突出成形部51の上端面と可動側凹部41の頂壁44との上下方向に沿う間隔D2以上になっている(D1≧D2)。
【0028】
(射出成形方法)
次に、上述した射出成形用金型21を用いて成形品1を製造する方法について説明する。
はじめに、図示しない昇降機構によって可動側型板23を下降させ、可動側型板23の下面25を固定側型板22の上面24に当接させ、射出成形用金型21を閉じておく。続いて、図示しない射出装置によって溶融樹脂Wを各ピンゲート56内に注入する。ピンゲート56内に注入された溶融樹脂Wは、各ゲート開口55を通じてキャビティC(第2キャビティ32)内に注入される。すると、キャビティC内に注入された溶融樹脂Wは、各ゲート開口55から径方向の全域に行き渡り、第2キャビティ32内の全体に充填されるとともに、第1キャビティ31の上端部から第1キャビティ31内に流入し、第1キャビティ31内の全体に充填される。
なお、キャビティC内の気体(エア)は、溶融樹脂Wの注入に伴って図示しないガス抜き溝を通って射出成形用金型21の外部に排出される。
【0029】
そして、充填した溶融樹脂Wが固化した後、固定側型板22と可動側型板23とを相対的に離間させる離型を行う。つまり、可動側型板23を図示しない昇降機構によって上昇させ、可動側型板23を固定側型板22から離間させる。その後、例えば図示しないエジェクターピンによる突き出し等によって、成形品1を可動側型板23から取り外すことで、図1,2に示す成形品1を得ることができる。
【0030】
なお、上述した射出成形用金型21で成形された成形品1には、図1,2に示すように、フランジ部3において筒部2を全周に亘って取り囲む凹部8が形成されるとともに、凹部8のうち第2凹部12の内側に位置する部分には、ゲート残り部15が形成されることとなる。
【0031】
このように、本実施形態では、固定側型板22の上面24のうち内周部分に、可動側凹部41内に向けて突出するとともに、第1キャビティ31の全周を取り囲む突出成形部51を形成する構成とした。
この構成によれば、第1キャビティ31の全周に亘って突出成形部51を形成することで、突出成形部51と可動側凹部41との間隔が、第1キャビティ31の全周に亘って均一となる。
これにより、第1キャビティ31内と第2キャビティ32内の全体に溶融樹脂Wを均一に充填でき、樹脂充填の様相を改善させることができるため、均一な収縮を促すことができる。また、溶融樹脂Wが収縮する際に、第1キャビティ31と第2キャビティ32との間でのヒケの発生を抑制することが可能になり、筒部2の軸方向における径差を抑制できる。
したがって、成形品全体での肉厚の均一化や、ゲート寸法の変更、成形収縮率の低い材料への変更、成形条件の変更等、上述した各種の大幅な変更を伴うことなく、かつ製品機能を維持した上で、成形品1を所望の形状に成形できる。この場合、突出成形部51を形成する簡素な構成のため、時計用歯車等の微小な部品であっても、比較的容易に高精度な成形品1を成形できる。
【0032】
しかも、本実施形態では、固定側凹部33の上端部において、周壁部36とピン部材34との径方向に沿う間隔D1が、突出成形部51の上端面と可動側凹部41の頂壁44との上下方向に沿う間隔D2以上に設定されているため、第1キャビティ31と第2キャビティ32との間でのヒケを効果的に抑制できる。
また、本実施形態では、突出成形部51にゲート開口55を形成することで、ゲート残り部15が成形品1の第2凹部12内(薄肉部13上)に配置されることになる。そのため、ゲート残り部15がフランジ部3の表面7から突出することがなく、フランジ部3の薄型化を図ることができる。
【0033】
以上、本発明の技術範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、フランジ部3の外周縁に歯部16を有する成形品1に本発明を適用した場合について説明したが、これに限らず、図4に示すように、筒部2及びフランジ部3を有していれば、種々の形状に採用することができる。
また、上述した実施形態では、フランジ部3の表面7側に凹部8を形成する構成について説明したが、これに限らず、図5に示すように、フランジ部3の裏面9側に凹部8を形成する構成にしても構わない。
【0034】
また、上述した実施形態では、突出成形部51の各第2突出部53にゲート開口55を形成した場合について説明したが、これに限らず、ゲート開口55の位置や数量は適宜変更が可能である。
また、上述した実施形態では、一方の型板を可動側型板23、他方の型板を固定側型板22として説明したが、これとは逆に、一方の型板を固定側型板、他方の型板を可動側型板としても構わない。
【0035】
さらに、上述した実施形態では、ピンゲート56を用いて溶融樹脂Wを注入する構成について説明したが、これに限らず、サイドゲートやディスクゲート等を用いても構わない。特に、ディスクゲートを採用することで、溶融樹脂Wが周方向の全周から一様に充填されるため、キャビティC内の全体に確実に溶融樹脂Wを充填できる。
また、上述した実施形態では、時計用の歯車を成形する場合について説明したが、これに限らず、種々の部品を成形することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1…成形品 2…筒部 3…フランジ部 31…第1キャビティ 32…第2キャビティ 22…固定側型板(他方の型板) 23…可動側型板(一方の型板) 24…上面(合わせ面) 41…可動側凹部(凹部) 56…ピンゲート(ゲート)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね合わせた一対の型板の間に形成されたキャビティ内にゲートを介して樹脂材料が注入されることにより、筒部、及び前記筒部における軸方向一端縁から径方向外側に向けて突設されたフランジ部を有する成形品を成形するための射出成形用金型において、
前記キャビティは、前記筒部を成形するための筒状の第1キャビティと、
前記第1キャビティにおける軸方向一端側に連通し、前記フランジ部を成形するための環状の第2キャビティと、を有し、
前記第2キャビティは、前記型板のうち、一方の型板に形成された凹部と、他方の型板における前記一方の型板との合わせ面と、で画成され、
前記他方の型板の合わせ面において、内周部分には、前記凹部内に向けて突出するとともに、前記第1キャビティの全周を取り囲む突出成形部が形成されていることを特徴とする射出成形用金型。
【請求項2】
前記前記第1キャビティにおける径方向の間隔D1は、前記第2キャビティのうち前記突出成形部と前記凹部との間隔D2以上に設定されていることを特徴とする請求項1記載の射出成形用金型。
【請求項3】
前記突出成形部には、前記キャビティ内に開口するゲートが形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の射出成形用金型。
【請求項4】
請求項1記載の射出成形用金型を用いて成形された成形品であって、
前記フランジ部のうち、内周部分には、前記突出成形部と前記凹部との間で成形されて、外周部分よりも薄肉とされた薄肉部が形成され、
前記薄肉部は、前記筒部における軸方向一端側を全周に亘って取り囲むように形成されていることを特徴とする成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−71364(P2013−71364A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213017(P2011−213017)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(305018823)盛岡セイコー工業株式会社 (51)
【Fターム(参考)】