説明

射出成形装置のスクリュ

【課題】スクリュ内の樹脂流動が遅くなる部位において溶融樹脂中の添加剤等が滞留することを低減して堆積が生じ難く、成形品の品質を向上させる射出成形装置のスクリュを提供すること。
【解決手段】先端部に逆流防止機構を有し、基部から供給部、圧縮部、計量部で構成される射出成形装置のスクリュにおいて、該スクリュの溝部と逆方向となる複数の溝部を備え、スクリュ先端方向に流れる溶融樹脂を前記複数の溝内で逆流させて撹拌する撹拌体を、スクリュの先端部と逆流防止機構との間に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は射出成形装置において、スクリュの溶融樹脂通過部に逆フライト型の拡散体を設け、難燃剤等の添加剤を含むオレフィン系樹脂材料の射出成形に用いるスクリュに関する。
【背景技術】
【0002】
逆流防止機構を備えた従来型の射出成形装置のスクリュとして、図3に示すものが知られている。図3に示すようにスクリュ本体10の先端部には円環状のチェックリング12とシート13で構成された逆流防止機構11が設けられている。シート13は、スクリュ本体10に螺着されたスクリュヘッド14によってスクリュ本体10に固定され、チェックリング12はスクリュヘッド14とシート13の間で前後に移動自在に設けられている。シート13の外径寸法をスクリュ先端部の谷径寸法と同一寸法とする構成は、スクリュ本体10により移送される溶融樹脂の流れを滞らせることがない。そして、スクリュ本体10により溶融された樹脂は逆流防止機構11の樹脂流路部を通ってスクリュヘッド14の先端部に送り出される。(特許文献1参照)
【0003】
ところで、ポリプロピレン等は相溶性が無いため、難燃剤等を溶融すると混練ムラが発生して、樹脂リッチ部は流され易く、難燃剤等の濃度の高い所は流れなくなる。このために、上記のように構成された従来型のスクリュを用い、難燃剤等を添加したオレフィン系樹脂材料を可塑化して溶融した場合、スクリュ溝底面とスクリュフライト側面との間、即ちスクリュ溝を流れる溶融樹脂の推進流はスクリュ先端部のスクリュフライトが途切れた位置で、スクリュフライト方向からスクリュ軸線方向に変化する。また、スクリュ先端部の溶融樹脂流路の断面積は、スクリュ溝の断面積に比して増大することから流速が低下する。このために、溶融樹脂が難燃剤等の添加剤を含んでいることから、スクリュ溝内で分散していた添加剤等が滞留してスクリュ先端部のスクリュ谷部表面や、スクリュフライト側面に付着し堆積していく。そして、堆積した滞留物は時間の経過後にスクリュ表面から剥離して溶融樹脂に混入、成形品の品質を低下させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−169899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、スクリュ内の樹脂流動が遅くなる部位において溶融樹脂中の添加剤等が滞留することを低減して堆積が生じ難く、成形品の品質を向上させる射出成形装置のスクリュを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために本発明の請求項1に記載の射出成形装置のスクリュは、先端部に逆流防止機構を有し、基部から供給部、圧縮部、計量部で構成される射出成形装置のスクリュにおいて、該スクリュの溝部と逆方向となる複数の溝部を備え、スクリュ先端方向に流れる溶融樹脂を前記複数の溝内で逆流させて撹拌する撹拌体が設けられたことを特徴とする。
本発明の請求項2に記載の射出成形装置のスクリュは請求項1に記載の発明において、前記撹拌体がスクリュの先端部と逆流防止機構との間に設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の射出装置のスクリュによれば、可塑化するときに溶融樹脂中の添加剤が滞留してスクリュ表面に付着し堆積することが少なく、また堆積物の剥離を減少して成形品への混入を防ぎ、成形品の品質を向上させることができる。
さらに、樹脂の滞留を無くすことができるので、樹脂替性や色替性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の射出成形装置のスクリュの実施の形態を示す断面図である。
【図2】図1におけるA−A断面図である。
【図3】従来の他の射出成形装置のスクリュを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の射出成形装置のスクリュについて実施の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲において、当業者の知識に基づいて、種々に変更、修正、改良を加え得るものである。例えば、図面は、好適な本発明の実施の形態を表すものであるが、本発明は図面に示された情報により制限されない。本発明を実施し又は検証する上では、本明細書中に記述されたものと同様の手段若しくは均等な手段が適用し得るが、好適な手段はいかに記述される手段である。なお、以下の記載において、一般的な技術、公知の技術、汎用の技術は省略している。
【0010】
先ず、図面に基づいて本発明を実施するための形態について説明する。図1及び2は、本発明を実施するための形態に係り。図1は本実施形態による射出成形装置のスクリュの実施の形態を示す断面図である。図2は図1におけるA−A断面図である。
以下、図1及び2に従って説明する。
【0011】
図1に示すように本発明の射出成形装置のスクリュ30は、スクリュ本体31と、スクリュ本体31の先端部に先端部には円環状のチェックリング12とシート13で構成された逆流防止機構11が設けられている。シート13は、スクリュ本体10に螺着されたスクリュヘッド14によってスクリュ本体10に固定され、チェックリング12はスクリュヘッド14とシート13の間で前後に移動自在に設けられている。
シート13の外周部にはスクリュ本体31のスクリュ溝と逆方向に傾斜した複数の溝33と複数の隔壁34とにより形成された撹拌体32を設けた構成となっている。なお、この図はスクリュが回転して溶融樹脂をスクリュ先端に送り出している計量工程の状態を示している。
【0012】
撹拌体32の溝33はスクリュ本体31のフライトに対して60度から90度の間で傾斜して設けることが好ましい。スクリュのフライトと隔壁34との成す角θが60度より小さいときは、スクリュ本体31から送り出される樹脂の抵抗が増大しスクリュ先端に送り出される樹脂量が低下、樹脂圧力の上昇と可塑化能力の低下を招き、スクリュのフライトと隔壁34との成す角θが90度より大きいときは、スクリュ本体31から送り出される樹脂の抵抗が減少しスクリュ先端に送り出される樹脂量が増大、スクリュ本体表面への添加剤等の付着滞留を招く。
【0013】
図2に示すように溝33の断面は、異なる半径の円弧で形成される半円状であり、溝の断面積aの総和はスクリュ本体31のメタリングゾーンにおける溝断面積に対し1.5から2.0倍の範囲で設定することが好ましい。溝31の断面積の総和が2.0より大きいときは、流速が下がり過ぎて溶融樹脂の澱みが問題となり、1.5より小さいときはスクリュ溝内の流速が下がりスクリュ表面への付着が増大する。
スクリュ本体31の溝内の溶融樹脂はスクリュフライトに沿って層流となって流動し、スクリュ先端部において隔壁34に流れを阻まれ、傾斜角に沿って流れ方向と流速が変えられる。そして、隔壁34に衝突した溶融樹脂は溝33内でスクリュ先端と逆方向の渦流を形成しながらスクリュ先端側に送り出される構成となっている。
【0014】
本発明の実施の形態において、複数の溝33及び隔壁34をシート13の外周面に設ける構成としたが、これに限ることなく、例えば、シート13と溝33と隔壁34を形成した撹拌体32を別体として作成し、スクリュヘッド14によりスクリュ本体に挟持する構成としても良い。また、隔壁34の外周面と図示しない射出装置のバレルとの隙間は、容易に溶融樹脂が流れ出すことのない寸法により形成されている。
【0015】
以上説明したように、本発明の射出成形装置のスクリュはスクリュフライトと逆方向の複数の溝を有する撹拌体を備えたので、添加剤を含むオレフィン系樹脂材料の成形にあたって、溶融樹脂の流動速度と流動方向を変化させることにより溶融樹脂中に含まれる添加剤がスクリュ表面に滞留して堆積することを少なくすることができる。このため、添加剤の堆積に伴う堆積物の剥離が減少し、成形品の品質が向上する。また、堆積した添加剤を取り除くための成形装置を分解して点検するまでの期間が延長され、成形装置の稼働率が向上する。
【符号の説明】
【0016】
12 チェックリング
13 シート
14 スクリュヘッド
30、40 射出成形装置のスクリュ
31、41 スクリュ本体
32 撹拌体
33 溝
34 隔壁
θ 撹拌体とスクリュフライトとの角度
a 溝の断面積

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に逆流防止機構を有し、基部から供給部、圧縮部、計量部で構成される射出成形装置のスクリュにおいて、該スクリュの溝部と逆方向となる複数の溝部を備え、スクリュ先端方向に流れる溶融樹脂を前記複数の溝内で逆流させて撹拌する撹拌体が設けられたことを特徴とする射出成形装置のスクリュ。
【請求項2】
前記撹拌体がスクリュの先端部と逆流防止機構との間に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の射出成形装置のスクリュ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−62951(P2011−62951A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216558(P2009−216558)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】