説明

射出成形装置

【課題】合成樹脂成形品にフィラーを含有し、穴等の開口を有するものであるにもかかわらず、ゲートに面する開口形成体の裏方に形成される配向ラインを外側から極力見えなくして、前記合成樹脂成形品の外観を良好に仕上げること。
【解決手段】第1ゲート26Aによりフィラー29を含む溶融した熱可塑性の合成樹脂30が射出されて配向ライン27A2、27B2が形成された後において、前記第1ゲート26Aによる前記合成樹脂の射出の停止と同時に、停止前に又は停止後に前記第2ゲート26B、26Bによる前記合成樹脂の射出を開始し、且つ前記第1ゲート26Aによる前記合成樹脂の射出開始時にその上端面が前記可動金型のキャビティ形成面と同じ面一にあった昇降ピン28A、28Bをキャビティ14内に上昇させた後、元の位置に戻るように下降させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定金型と可動金型との間に形成され、且つ、成形品に開口を形成するための開口形成体を臨ませたキャビティ内にフィラーを含む溶融した熱可塑性の合成樹脂を射出して成形する射出成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の射出成形装置では、特許文献1などに開示するように、合成樹脂成形品の強度を向上するためのフィラー(カーボン、ガラス繊維等)や、表面の質感向上や外観品質向上のためのフィラー(アルミニウム粉末、マイカ等)を含む溶融した熱可塑性合成樹脂を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−1611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記合成樹脂成形品に穴等の開口を形成するためにキャビティに開口形成体を臨ませた場合、図17〜図19に示すように、上金型である固定金型1と下金型である可動金型2との間に形成されたキャビティ内3にフィラー4を含む溶融した熱可塑性の合成樹脂5をゲート(図示せず)から射出すると、前記ゲートと対向する前記開口形成体の裏方では図16に示す実線矢印で示す前記合成樹脂5の流れ方向に沿って前記フィラー4が並列に流れ、前記合成樹脂5の流動先端部5A、5Bでは前記フィラー4が前記合成樹脂5の先端表面形状に沿って並列に流れ(図17参照)、前記流動先端部5A、5Bが合流するウェルドライン6では前記フィラー4が前記合成樹脂5の流れ方向に対して垂直に配向されるようになる(図18参照)。
【0005】
そして、図19に示す破線矢印で示す射出圧力が加わると、前記ウェルドライン6の前記フィラー4はより垂直に配向され、その後、前記固定金型1を冷却すると、合成樹脂成形品の表面には前記ウェルドライン6を中心とする配向部L1が形成され、前記ウェルドライン6に沿って上下方向に延びる前記フィラー4の配向ラインが発生して、合成樹脂成形品の見映えが悪くなるという問題があった。
【0006】
このため、例えば特許文献1では、ウェルドラインを目立たなくするために成形時にウェルドライン近傍にせん断力を加えるようにしているが、合成樹脂成形品に穴等の開口を形成するためにキャビティ内に開口形成体を臨ませ、前記ゲートに面する前記開口形成体の裏方に前記ウェルドライン及び配向ラインが形成されるものでは、せん断力による溶融した合成樹脂の流動が間接的で、さほど大きくないことから、フィラーが溶融した合成樹脂の流れ方向と垂直に配向されることに起因する配向ラインを外側から見えなくすることは困難であった。
【0007】
そこで本発明は、上記の点に鑑み、合成樹脂成形品にフィラーを含有し、穴等の開口を有するものであるにもかかわらず、ゲートに面する開口形成体の裏方に形成される配向ラインを外側から極力見えなくして、前記合成樹脂成形品の外観を良好に仕上げることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため第1の発明は、固定金型と可動金型との間に形成され、且つ、成形品に開口を形成するための開口形成体を臨ませたキャビティ内にフィラーを含む溶融した熱可塑性の合成樹脂を射出して成形する射出成形装置であって、
前記キャビティ内に前記合成樹脂を射出するための第1ゲートと、
この第1ゲートに面する前記開口形成体の裏方に形成される前記フィラーの配向ラインに向けて前記合成樹脂を射出する第2ゲートと、
前記配向ライン近傍の前記可動金型に前記キャビティ内に出没可能に設けられた昇降ピンとを設け、
前記第1ゲートにより前記合成樹脂が射出されて前記配向ラインが形成された後において、前記第1ゲートによる前記合成樹脂の射出の停止と同時に、停止前に又は停止後に前記第2ゲートによる前記合成樹脂の射出を開始し、且つ前記第1ゲートによる前記合成樹脂の射出開始時にその上端面が前記可動金型のキャビティ形成面と同じ面一にあった前記昇降ピンを前記キャビティ内に上昇させた後、元の位置に戻るように下降させることを特徴とする。
【0009】
第2の発明は、固定金型と可動金型との間に形成され、且つ、成形品に開口を形成するための開口形成体を臨ませたキャビティ内にフィラーを含む溶融した熱可塑性の合成樹脂を射出して成形する射出成形装置であって、
前記キャビティ内に前記合成樹脂を射出するための第1ゲートと、
この第1ゲートに面する前記開口形成体の裏方に形成される前記フィラーの配向ラインに向けて前記合成樹脂を射出する第2ゲートと、
前記配向ラインの近傍の前記可動金型に昇降可能に設けられる昇降ピンとを設け、
前記第1ゲートによる前記合成樹脂の射出開始時にその上端面が前記可動金型のキャビティ形成面より下方の下降位置にある前記昇降ピンの上方に樹脂溜まり部を形成し、
前記第1ゲートにより前記合成樹脂が射出されて前記配向ラインが形成された後において、前記第1ゲートによる前記合成樹脂の射出の停止と同時に、停止前に又は停止後に前記第2ゲートによる前記合成樹脂の射出を開始し、且つ前記昇降ピンをその上端面が前記可動金型の前記キャビティ形成面と同じ面一となるように上昇させて、前記第1ゲートによる前記合成樹脂の射出により前記樹脂溜まり部内に溜められた前記合成樹脂を前記キャビティ内に押し上げることを特徴とする。
【0010】
第3の発明は、固定金型と可動金型との間に形成され、且つ、成形品に開口を形成するための開口形成体を臨ませたキャビティ内にフィラーを含む溶融した熱可塑性の合成樹脂を射出して成形する射出成形装置であって、
前記キャビティ内に前記合成樹脂を射出するための第1ゲートと、
この第1ゲートに面する前記開口形成体の裏方に形成される前記フィラーの配向ラインに向けて前記合成樹脂を射出する第2ゲートと、
前記配向ラインの近傍の前記可動金型に昇降可能に設けられる第1昇降ピンと、
前記第1ゲートにより射出された前記合成樹脂が前記開口形成体を回り込んで互いに合流するウェルドラインを前記第1昇降ピンとで挟む位置の前記可動金型に昇降可能に設けられる第2昇降ピンとを設け、
前記第1ゲートによる前記合成樹脂の射出開始時には、前記第1昇降ピンはその上端面を前記金型のキャビティ形成面と同じ面一とした状態にすると共に、前記第2昇降ピンはその上端面を前記可動金型の前記キャビティ形成面より下方の下降位置としてこの第2昇降ピンの上方に樹脂溜まり部を形成し、
前記第1ゲートにより前記合成樹脂が射出されて前記配向ラインが形成された後において、前記第1ゲートによる前記合成樹脂の射出の停止と同時に、停止前に又は停止後に前記第2ゲートによる前記合成樹脂の射出を開始し、且つ前記第1昇降ピンを前記キャビティ内に押し上げると共にその上端面が前記可動金型の前記キャビティ形成面と同じ面一となるように下降させ、且つこの第1昇降ピンの下降と同時に前記樹脂溜まり部内に溜められた前記合成樹脂をその上端面が前記可動金型の前記キャビティ形成面と同じ面一となるように前記第2昇降ピンを上昇させて前記キャビティ内に押し上げることを特徴とする。
【0011】
第4の発明は、固定金型と可動金型との間に形成され、且つ、成形品に開口を形成するための開口形成体を臨ませたキャビティ内にフィラーを含む溶融した熱可塑性の合成樹脂を射出して成形する射出成形装置であって、
前記キャビティ内に前記合成樹脂を射出するための第1ゲートと、
この第1ゲートに面する前記開口形成体の裏方に形成される前記フィラーの配向ラインに向けて前記合成樹脂を射出する第2ゲートとを設け、
前記第1ゲートにより前記合成樹脂が射出されて前記配向ラインが形成された後において、前記第1ゲートによる前記合成樹脂の射出の停止と同時に、停止前に又は停止後において、前記第2ゲートにより前記合成樹脂を射出するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、合成樹脂成形品にフィラーを含有し、穴等の開口を有するものであるにもかかわらず、ゲートに面する開口形成体の裏方に形成される配向ラインを外側から極力見えなくして、前記合成樹脂成形品の外観を良好に仕上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施態様の射出成形装置のキャビティを上から見た概略構造説明図である。
【図2】型閉めした状態の第1の合成樹脂の射出状態を説明する図1のA−A断面図である。
【図3】同じく第2の合成樹脂射出状態を説明する図1のA−A断面図である。
【図4】同じく第2の実施態様の射出成形装置のキャビティを上から見た概略構造説明図である。
【図5】型閉めした状態の射出成形装置の合成樹脂注入前の図4のB―B断面図である。
【図6】同じく第1の合成樹脂射出状態を説明する図4のC−C断面図である。
【図7】同じく第2の合成樹脂射出状態を説明する図4のC−C断面図である。
【図8】同じく第3の合成樹脂射出状態を説明する図4のC−C断面図である。
【図9】同じく第4の合成樹脂射出状態を説明する図4のC−C断面図である。
【図10】同じく第3の実施態様の射出成形装置のキャビティを上から見た概略構造説明図である。
【図11】第4乃至第7の実施態様の射出成形装置のキャビティ部を上から見た概略構造説明図である。
【図12】型閉めした状態の第1の合成樹脂射出状態を説明する図11のD−D断面図である。
【図13】同じく第2の合成樹脂射出状態を説明する図11のD−D断面図である。
【図14】同じく第1の合成樹脂射出状態を説明する図11のE-E断面図である。
【図15】同じく第2の合成樹脂射出状態を説明する図11のE-E断面図である。
【図16】同じく第3の合成樹脂射出状態を説明する図11のE-E断面図である。
【図17】従来の射出成形装置の第1の合成樹脂射出状態を説明する断面図である。
【図18】従来の射出成形装置の第2の合成樹脂射出状態を説明する断面図である。
【図19】従来の射出成形装置の第3の合成樹脂射出状態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。先ず、図1〜図3に基づき、第1の実施態様の射出成形装置について説明する。図1〜図3において、加熱/冷却用の媒体通路11を有する上金型である固定金型12と下金型である可動金型13との間にキャビティ14が形成され、合成樹脂成形品に穴等の開口を形成する開口形成体15が前記キャビティ14のほぼ中央部に位置するように前記可動金型13に立設されている。
【0015】
また、前記キャビティ14の左側には後述する溶融した熱可塑性合成樹脂を射出するための第1ゲート16が設けられ、溶融した合成樹脂の射出の際に、前記開口形成体15の右側方に形成される上下方向に延びたウェルドライン17A1に沿って形成した配向ライン17A2を合成樹脂成形品において外側から極力見えなくするように、前記ウェルドライン17A1及び配向ライン17A2に対して、例えば直交して臨むように、前記キャビティ14の手前側中央部に溶融した合成樹脂を射出するための第2ゲート18が設けられている。
【0016】
なお、前記開口体15は、平面視した場合、前記第1ゲート16方向から見て、先端に向けて先細り形状を呈しているので、前記配向ライン17A2の発生量は少ないし、また前記開口体15の先端付近に合成樹脂が流れない又は流れにくい淀み部は発生しない。
【0017】
なお、前記第2ゲート18からの前記合成樹脂の射出は、前記第1ゲート16に面する前記開口形成体15の裏方に形成する配向ライン17A2を合成樹脂成形品において外側から極力見えなくするようにするためであって、前記ウェルドライン17A1及び配向ライン17A2に対して必ずしも直交しなくともよく、斜め方向から射出してもよい。
【0018】
以下、第1の実施態様における合成樹脂の成形動作について説明する。先ず、前記固定金型12と前記可動金型13との型閉めを行う直前に、前記媒体通路11内に加熱用媒体を流して前記固定金型12を加熱し、前記固定金型12の前記キャビティ14側の表面温度を前記合成樹脂の軟化点温度まで高める。なお、以上のように、昇温を開始した後に型閉めする場合に限らず、昇温の開始と同時に型閉めしたり、型閉めしてから昇温を開始してもよく、以後の実施態様において特別に限定する説明がない場合には、「昇温を開始した後に型閉めする」と表現しても、そのように解釈すべきものである。
【0019】
然る後、前記合成樹脂が軟化点温度まで高められると、加熱用媒体による前記固定金型12の前記加熱を停止し、強度向上、表面質感向上、外観品質向上等のためのフィラー(ガラス粉末、アルミニウム粉末、マイカ等)19を含む溶融した熱可塑性の合成樹脂20を型閉め後に前記第1ゲート16から射出する。
【0020】
そして、キャビティ14内への前記合成樹脂20の注入量が増大して来ると、前記第1ゲート16に面する前記開口形成体15の裏方に、即ち前記第1ゲート16に面する側とは反対側の前記開口形成体15の側方位置に、図2に示すように、溶融した合成樹脂20が前記開口形成体15を回り込んで互いに合流するウェルドライン17A1に沿って前記フィラー19の配向ライン17A2が形成され、このウェルドライン17A1を中心とした配向部L2では前記フィラー19が垂直方向に配向される。この状態では前記合成樹脂20は加圧されてなく、圧縮密度がまだ低い。
【0021】
そして、前記配向ライン17A2が形成された後において、前記加圧(保圧)が開始される前であって、前記合成樹脂20の注入量が、例えば80%以上から95%未満までの間の、即ち前記キャビティ14内の上部(合成樹脂成形品の表面部)に溶融した合成樹脂が行き渡る80%以上から前記保圧が開始(注入量が95%)される前の、例えば90%になると前記第1ゲート16を閉じ、代わりに前記第2ゲート18を開いて、同様に前記フィラー19を含む溶融した前記熱可塑性合成樹脂20を射出すると、図3に示すように、射出された前記合成樹脂20は前記ウェルドライン17A1に対して直交するように流れて前記配向部L2の前記合成樹脂20を押し流し、特に合成樹脂成形品の表面近くでは前記フィラー19を垂直方向から極力水平方向に近い並列に配向させ、前記ウェルドライン17A1に沿った配向ライン17A2を外側から極力見えなくして、前記合成樹脂成形品の外観を良好に仕上げることができる。
【0022】
そして、前記第2ゲート18からの溶融した前記合成樹脂20の注入量は残りの10%であり、注入量の合計が95%程度になると、前記第2ゲート18からの合成樹脂の射出動作により前記キャビティ24内の前記合成樹脂20が加圧(保圧)されるようになり、やがて前記合成樹脂20の注入量が100%となっても、前記射出動作を継続すると保圧状態を維持しつつ圧縮密度が高められる。
【0023】
なお、また、前記第2ゲート18による射出開始を前記第1ゲート16の射出の停止と同時にしたが、これに限らず、前記配向ライン17A2が形成され、保圧が開始される前であれば、停止の前に、又は停止の後に行っても良い。
【0024】
前記キャビティ24内の前記合成樹脂20が保圧され始め、前記合成樹脂20の注入量が100%となる直前、100%となった時点又は100%となった直後に、前記媒体通路11内に冷却用媒体を流して前記固定金型12を冷却して前記合成樹脂20を硬化させ、前記固定金型12の温度が前記合成樹脂20の軟化点温度未満になったら、前述した冷却を終了させる。
【0025】
その後、合成樹脂成形品として取り出せる程度まで固化したら、前記固定金型12の冷却を終了させて型開きを行い、前記キャビティ14内から合成樹脂成形品を取出す。
【0026】
以上のようにして製造された合成樹脂成形品は、強度向上や表面質感向上、或は外観品質向上等のために前記フィラー19を含有し、しかも、穴等の開口を有するものであるにもかかわらず、配向ライン17A2を外側から極力見えなくして、外観を良好に仕上げることができる。
【0027】
この実施態様では、前記配向部L2における前記フィラー19を極力水平方向に配向させ、且つ、前記キャビティ14内の合成樹脂20を加圧するために前記第2ゲート18から前記合成樹脂20を射出するようにしたが、前記第1ゲート16から前記第2ゲート18への切り換えには種々の変形例がある。
【0028】
例えば、前述した実施態様では、合成樹脂の注入量が80%以上から95%未満までの間の90%になった時点で前記前記第1ゲート16から前記第2ゲート18に切り換えるようにしたが、これに限らず、注入量が例えば80%の時点や、保圧が開始する95%の直前(例えば、94%)になった時点で切り換えるようにしても良い。
【0029】
また、前記合成樹脂の注入量が、例えば80%になったら前記第1ゲート16の射出を停止し、その後前記第2ゲート18から射出を行って合成樹脂の合計注入量が、例えば90%になったら(前記第2ゲート18から10%射出した時点)、前記第1ゲート16からの射出を再開して両ゲート16、18から残りの10%を半分ずつ射出するようにしても良い。また、合成樹脂の注入量が、例えば80%になったら前記第1ゲート16の射出を停止して、前記第2ゲート18から、例えば10%分の射出注入を行って、前記合成樹脂の注入量が、例えば90%になったら前記第2ゲート18の射出を停止し、前記第1ゲート16からの射出を再開して、残りの、例えば10%を射出しても良い。
【0030】
次に、図4〜図9に基づき、第2の実施態様の射出成形装置について説明する。加熱/冷却用の媒体通路21を有する上金型である固定金型22と下金型である可動金型23との間にキャビティ24が形成され、前記可動金型23には合成樹脂成形品に穴等の開口を形成する角柱状の開口形成体25A、25Bが前記キャビティ24内に突出して設けられている。
【0031】
また、前記キャビティ24の左側には溶融した熱可塑性の合成樹脂を射出するためのゲート26Aが設けられ、前記開口形成体25A、25Bの右方に形成されるウェルドライン27A1、27B1の近傍であって、例えば前記前記開口形成体25A、25Bの右側面(図3参照)に接するように、前記前記開口形成体25A、25Bに隣接した位置の前記可動金型23に、昇降ピン28A、28Bが前記キャビティ24内に出没自在に昇降できるように配設される。
【0032】
前記昇降ピン28A、28Bは図示しない駆動機構により昇降可能であるが、成形サイクルの開始時の前記合成樹脂の射出開始時には、その上端面は前記可動金型23のキャビティ形成面と同じ面一となる位置にある。
【0033】
なお、前記開口体25A、25Bは平面視した場合、四角形状を呈しており、前記ゲート26A方向から見て、前記開口体25A、25Bの裏方に前記配向ライン27A2、27B2が発生し、また前記開口体25A、25Bの右側面付近(特に、前記開口体25A、25Bの右側の根元)に前記ゲート26Aより射出される合成樹脂が流れない又は流れにくい淀み部U1、U2が発生する。
【0034】
以下、第2の実施態様における合成樹脂の成形動作について説明する。先ず、前記固定金型22と前記可動金型23との型閉めを行う直前に前記媒体通路21に加熱用媒体を流して前記固定金型22を加熱し、前記固定金型22の前記キャビティ24側の表面温度を前記合成樹脂の軟化点温度まで高める。
【0035】
然る後、前記合成樹脂が軟化点温度まで高められると加熱用媒体による前記固定金型22の前記加熱を停止し、型閉め後に、第1の実施態様のフィラー19と同様なフィラー29を含む溶融した熱可塑性の合成樹脂30を前記ゲート26Aから射出する。
【0036】
そして、前記ゲート26Aからのキャビティ24内への溶融した前記合成樹脂30の注入量が増大して来ると、前記ゲート26Aに面する前記開口形成体25A、25Bの裏方に、即ち前記ゲート26Aに面する側とは反対側の前記開口形成体25A、25Bの側方位置に、図6に示すように、前記合成樹脂30が前記開口形成体25A、25Bを回り込んで互いに合流するウェルドライン27A1、27B1に沿って前記フィラー29の配向ライン27A2、27B2が形成され、このウェルドライン27A1、27B1を中心とした配向部L3では前記フィラー29が垂直方向に配向される。この状態では前記合成樹脂30は加圧されてなく、圧縮密度がまだ低い。
【0037】
そして、前述したように、前記ゲート26A方向から見て、前記開口体25A、25Bの裏方に前記配向ライン27A2、27B2が発生し、また前記開口体25A、25Bの右側面付近(特に、前記開口体25A、25Bの右側の根元)に前記ゲート26Aより射出される合成樹脂30が流れない又は流れにくい淀み部U1、U2が発生する。
【0038】
また、前記配向ライン27A2、27B2が発生した後で、前記保圧が開始される前に、図7乃至図9に示すように、前記昇降ピン28A、28Bが前記キャビティ24内に進入した後、前記可動金型23のキャビティ形成面と同じ面一となる位置に戻る。この昇降ピン28A、28Bの昇降動作は、対応する配向ラインが形成した時に応じて個別に行ってもよく、同時に昇降してもよく、更には3本以上の昇降ピンを設けた場合でも同様に、個別に又は同時に昇降動作をしてもよい。
【0039】
そして、前記合成樹脂30の注入量が95%以上となると、加圧(保圧)が始まるが、その保圧が開始する前の状態において、この射出中に前記昇降ピン28A、28Bを上昇させるので(図7参照)、この前記昇降ピン28A、28Bは上昇し易く、上昇させると前記ウェルドライン27A1、27B1及び配向ライン27A2、27B2は斜めに変形する。
【0040】
そして、図8に示すように、保圧が始まる前に前記昇降ピン28A、28Bを下降させることにより前記ウェルドライン27A1、27B1及び配向ライン27A2、27B2近傍の前記合成樹脂30内には空間S1(上昇した前記昇降ピン28A、28Bの前記キャビティ24内の容積分)が形成される。
【0041】
前記ゲート26Aからの更なる前記合成樹脂30の射出により、図9に示すように、この合成樹脂30が前記ウェルドライン27A1、27B1及び配向ライン27A2、27B2近傍の前記合成樹脂30を前記空間S1内に埋めるように、また前記開口体25A、25Bの裏方の右側面付近、即ち右側に接する箇所に発生した前記淀み部U1、U2を図9における右方へ押し流す。従って、前記淀み部U1、U2を含む前記配向部L3にあった前記フィラー29を垂直から極力水平に近い並列に配向させることができ、配向ライン27A2、27B2を外側から極力見えなくして、外観を良好に仕上げることができる。
【0042】
そして、合成樹脂30の注入量が95%程度になると、前記キャビティ24内の前記合成樹脂30が保圧されるようになり、前記ゲート26Aからの合成樹脂30の射出動作を継続すると保圧状態を維持しつつ圧縮密度が高められ、やがて前記合成樹脂30の注入量が100%となる。
【0043】
前記キャビティ24内の前記合成樹脂30が保圧され始め、前記合成樹脂30の注入量が100%となる直前、100%となった時点又は100%となった直後に、前記媒体通路21内に冷却用媒体を流して前記固定金型22を冷却して前記合成樹脂30を硬化させ、前記固定金型22の温度が前記合成樹脂30の軟化点温度未満になったら、前述した保圧を終了させる。
【0044】
その後、合成樹脂成形品として取り出せる程度まで固化したら、前記固定金型22の冷却を終了させて型開きを行い、前記キャビティ24内から合成樹脂成形品を取出す。
【0045】
以上のようにして製造された合成樹脂成形品は、強度向上や表面質感向上、或は外観品質向上等のために前記フィラー29を含有し、しかも、穴等の開口を有するものであるにもかかわらず、前記配向ライン27A2、27B2を外側から極力見えなくして、外観を良好に仕上げることができる。
【0046】
次に、図10に基づき、第3の実施態様の射出成形装置について説明するが、第2の実施態様と機械的な構成が異なるのは、前記ゲート26Aに加えて、他のゲート26B、26Bが設けられた点にあるので、第3の実施態様の射出成形装置における開口形成体25A、25Bに関係する各断面図は第2の実施態様の図5〜図9と同一である。
【0047】
即ち、合成樹脂の射出の際に、前記開口形成体25A、25Bの右側方に形成される上下方向に延びた配向ライン27A2、27B2を合成樹脂成形品において外側から極力見えなくするように、例えば前記ウェルドライン27A1、27B1及び配向ライン27A2、27B2に対して、例えば直交して臨むように、前記キャビティ24の奥側中間部に溶融した合成樹脂を射出するためのゲート26B、26Bが設けられている。尚、このゲート26B、26Bは、配向ライン27A2、27B2を合成樹脂成形品において外側から極力見えなくするようにするためであって、前記ウェルドライン27A1、27B1及び配向ライン27A2、27B2に対して必ずしも直交しなくともよく、斜め方向から射出してもよい。
【0048】
以下、この第3の実施態様における合成樹脂の成形動作について説明する。先ず、前記固定金型22と前記可動金型23との型閉めを行う直前に前記媒体通路21に加熱用媒体を流して前記固定金型22を加熱し、前記固定金型22の前記キャビティ24側の表面温度を前記合成樹脂の軟化点温度まで高める。
【0049】
然る後、前記合成樹脂が軟化点温度まで高められると加熱用媒体による前記固定金型22の前記加熱を停止し、型閉め後に、第1の実施態様のフィラー19と同様なフィラー29を含む溶融した熱可塑性の合成樹脂30を前記ゲート26Aから射出する。
【0050】
そして、キャビティ24内への前記合成樹脂30の注入量が増大して来ると、前記ゲート26Aに面する前記開口形成体25A、25Bの裏方に、即ち前記ゲート26Aに面する側とは反対側の前記開口形成体25A、25Bの側方位置に、図6に示すように、前記合成樹脂30が前記開口形成体25A、25Bを回り込んで互いに合流するウェルドライン27A1、27B1に沿って前記フイラー29の配向ライン27A2、27B2が形成され、このウェルドライン27A1、27B1を中心とした配向部L3では前記フィラー29が垂直方向に配向される。この状態では前記合成樹脂30は加圧されてなく、圧縮密度がまだ低い。
【0051】
そして、前述したように、前記ゲート26A方向から見て、前記開口体25A、25Bの裏方に前記配向ライン27A2、27B2が発生し、また前記開口体25A、25Bの右側面付近(特に、前記開口体25A、25Bの右側の根元)に前記ゲート26Aより射出される前記合成樹脂20が流れない又は流れにくい淀み部U1、U2が発生する。
【0052】
そして、前記配向ライン27A2、27B2が形成されて保圧開始前の、前記ゲート26Aからのキャビティ24内への合成樹脂の注入量が例えば90%程度になったら、前記ゲート26Aからの射出を停止するが、この停止の同時に前記第2ゲート26B、26Bからの溶融した熱可塑性の前記合成樹脂30の射出を開始する。なお、前記ゲート26Aからの前記合成樹脂30の射出の停止と同時に限らず、前記配向ライン27A2、27B2が形成されて保圧開始前であれば、この前記ゲート26Aからの射出の停止前又は停止後に、前記第2ゲート26B、26Bからの前記合成樹脂30の射出を開始してもよい。
【0053】
また、前記配向ライン27A2、27B2が発生した後で、前記保圧が開始される前に、図7乃至図9に示すように、前記昇降ピン28A、28Bが前記キャビティ24内に進入した後、前記可動金型23のキャビティ形成面と同じ面一となる位置に戻る。この昇降ピン28A、28Bの昇降動作は、対応する配向ラインが形成した時に応じて個別に行ってもよく、同時に昇降してもよく、更には3本以上の昇降ピンを設けた場合でも同様に、個別に又は同時に昇降動作をしてもよい。
【0054】
そして、前記合成樹脂30の注入量が95%以上となると加圧(保圧)が始まるが、前記配向ラインが発生した後で、前記保圧が開始する前の状態において、この射出中に前記昇降ピン28A、28Bを上昇させるので(図7参照)、この前記昇降ピン28A、28Bは上昇し易く、上昇させると前記ウェルドライン27A1、27B1及び配向ライン27A2、27B2は斜めに変形する。
【0055】
そして、図8に示すように、前述したように、保圧開始前に前記昇降ピン28A、28Bを下降させることにより前記ウェルドライン27A1、27B1及び配向ライン27A2、27B2近傍の前記合成樹脂30内には空間S1(上昇した前記昇降ピン28A、28Bの前記キャビティ24内の容積分)が形成される。
【0056】
前記第2ゲート26B、26Bからの更なる熱可塑性合成樹脂30の射出により、図9に示すように、この合成樹脂30が前記ウェルドライン27A1、27B1及び配向ライン27A2、27B2近傍の前記合成樹脂30を前記空間S1内に埋めるように、また前記開口体25A、25Bの裏方の右側面付近、即ち右側に接する箇所に発生した前記淀み部U1、U2を図9における右方へ押し流す。従って、前記淀み部U1、U2を含む前記配向部L3にあった前記フィラー29を垂直から極力水平に近い並列に配向させることができ、配向ライン27A2、27B2を外側から極力見えなくして、外観を良好に仕上げることができる。
【0057】
そして、合成樹脂30の注入量が95%程度になると、前記キャビティ24内の前記合成樹脂30が保圧されるようになり、前記第2ゲート26B、26Bからの合成樹脂20の射出動作を継続すると保圧状態を維持しつつ圧縮密度が高められ、やがて前記合成樹脂20の注入量が100%となる。
【0058】
前記キャビティ24内の前記合成樹脂30が保圧され始め、前記合成樹脂30の注入量が100%となる直前、100%となった時点又は100%となった直後に、前記媒体通路21内に冷却用媒体を流して前記固定金型22を冷却して前記合成樹脂30を硬化させ、前記固定金型22の温度が前記合成樹脂30の軟化点温度未満になったら、前述した保圧を終了させる。
【0059】
その後、合成樹脂成形品として取り出せる程度まで固化したら、前記固定金型22の冷却を終了させて型開きを行い、前記キャビティ24内から合成樹脂成形品を取出す。
【0060】
以上のようにして製造された合成樹脂成形品は、強度向上や表面質感向上、或は外観品質向上等のために前記フィラー29を含有し、しかも、穴等の開口を有するものであるにもかかわらず、前記配向ライン27A2、27B2を外側から極力見えなくして、外観を良好に仕上げることができる。
【0061】
次に、図11〜図16に基づき、第4及び第5の実施態様の射出成形装置について説明する。加熱/冷却用の媒体通路31を有する上金型である固定金型32と下金型である可動金型33との間にキャビティ34が形成され、前記可動金型33には合成樹脂成形品に穴等の開口を形成する角柱状の開口形成体35A、35Bが前記キャビティ34内に突出して設けられている。
【0062】
また、前記キャビティ34の左側には溶融した熱可塑性の合成樹脂を射出するためのゲート36が設けられ、前記開口形成体35Aの右側に形成されるウェルドライン37A1を挟んだ両側位置の前記可動金型33にはこのウェルドライン37A1の近傍であって、例えば前記前記開口形成体35Aの右側面(図11参照)に接するように、前記開口形成体35A、25Bに隣接した位置に、昇降ピン38A及び38Bが前記キャビティ34内に昇降可能に設けられている。また、前記開口形成体35Bの右側に形成されるウェルドライン37B1の近傍であって、例えば前記前記開口形成体3BAの右側面(図11参照)に接するように、前記開口形成体35Bに隣接した位置の前記可動金型33に昇降ピン38Cが設けられている。
【0063】
そして、前記昇降ピン38A、38B、38Cは図示しない駆動機構により昇降可能であるが、成形サイクルの開始時の前記合成樹脂の射出開始時には、前記昇降ピン38A、38Cはその上端面が前記可動金型33のキャビティ形成面より下方の下降位置にあって前記昇降ピン38A、38Cの上方に樹脂溜まり部P1、P2がそれぞれ形成できる状態にあり(図11、図13参照)、一方前記昇降ピン38Bはその上端面が前記可動金型33のキャビティ形成面と同じ面一となる位置にある(図13参照)。
【0064】
以下、第4及び第5の実施態様における合成樹脂の成形動作について説明する。先ず、前記固定金型32と前記可動金型33との型閉めを行う直前に媒体通路31に加熱用媒体を流して固定金型32を加熱し、前記固定金型32の前記キャビティ34側の表面温度を前記合成樹脂の軟化点温度まで高める。
【0065】
然る後、前記合成樹脂が軟化点温度まで高められると前記加熱を停止し、型閉め後に、第1の実施態様のフィラー19と同様なフィラー39を含む溶融した熱可塑性の合成樹脂40を前記ゲート36から射出する。
【0066】
そして、キャビティ34内への前記合成樹脂40の注入量が増大して来ると、前記ゲート36に面する前記開口形成体35Aの裏方に、即ち前記ゲート36に面する側とは反対側の前記開口形成体35Aの側方位置に、図14に示すように、前記合成樹脂40が前記開口形成体35Aを回り込んで互いに合流するウェルドライン37A1に沿って前記フィラー39の配向ライン37A2が形成され、このウェルドライン37A1を中心とした配向部L5では前記フィラー39が垂直方向に配向される。この状態では前記合成樹脂40は加圧されてなく、圧縮密度がまだ低い。
【0067】
また、前述と同様に、キャビティ34内への前記合成樹脂40の注入量が増大して来ると、前記ゲート36に面する前記開口形成体35Bの裏方に、即ち前記ゲート36に面する側とは反対側の前記開口形成体35Bの側方位置に、図12に示すように、前記合成樹脂40が前記開口形成体35Bを回り込んで互いに合流するウェルドライン37B1に沿って上下方向に延びた前記フィラー39の配向ライン37B2が形成され、このウェルドライン37B1を中心とした配向部L4では前記フィラー39が垂直方向に配向される。この状態では前記合成樹脂40は加圧されてなく、圧縮密度がまだ低い。
【0068】
そして、前述したように、前記ゲート36方向から見て、前記開口体35A、35Bの裏方に前記配向ライン37A2、37B2が発生し、また前記開口体35A、35Bの右側面付近(特に、前記開口体35A、35Bの右側の根元)に前記ゲート36より射出される合成樹脂が流れない又は流れにくい淀み部U3、U4が発生する。
【0069】
そして、前記配向ライン37A2、37B2が発生した後で、例えば保圧開始前に、前記昇降ピン38Bを前記固定金型32のキャビティ形成面には届かない位置まで一旦押し上げた後(図15参照)、直ちに前記可動金型33のキャビティ形成面と同じ面一となる位置まで下降させることにより前記ウェルドライン37A1の一側に空間S2が形成される。更に、前記昇降ピン38Bの下降と同時で、且つ、キャビティ34内への合成樹脂の注入量が95%以上となって加圧が開始することとなるその直前に、前記昇降ピン38Aをその上端面が前記可動金型33のキャビティ形成面と同じ面一となるまで押し上げると(図16参照)、前記樹脂溜まり部P1内に溜められた前記合成樹脂40がウェルドライン37A1の他側のキャビティ34内に押し上げられて、ウェルドライン37A1付近の前記合成樹脂40を前記空間S2内に埋めるように、また前記開口体35Aの裏方の右側面付近、即ち右側に接する箇所に発生した前記淀み部U3を図16における右方へ押し流す。従って、前記淀み部U3を含む前記配向部L5にあった前記フィラー39を垂直から極力水平に近い並列に配向させることができ、配向ライン37A2を外側から極力見えなくして、外観を良好に仕上げることができる。
【0070】
また前述と同様に、前記配向ライン37A2、37B2が発生した後で、例えば保圧開始前に、前記昇降ピン38Cをその上端面が前記可動金型33のキャビティ形成面と同じ面一となる位置まで上昇させると、前記樹脂溜まり部P2内に溜められた前記合成樹脂40がウェルドライン37B1近くにおいて前記キャビティ34内に押し上げられて、このウェルドライン37B1付近の合成樹脂を押し流し、また前記開口体35Aの裏方の右側面付近、即ち右側に接する箇所に発生した前記淀み部U3を図16における右方へ押し流す(図13参照)。前記淀み部U4を含む前記配向部L4にあった前記フィラー39を垂直から極力水平に近い並列に配向させることができ、配向ライン37B2を外側から極力見えなくして、外観を良好に仕上げることができる。
【0071】
なお、この開口形成体35Aに対応した昇降ピン38A、38B、開口形成体35Bに対応した昇降ピン38Cの昇降動作は、前記開口形成体35A、35Bを複数設けた場合に各開口形成体35A、35Bに対応して各昇降ピンも増加するが、各開口形成体35A、35Bに対応して前記配向ラインが発生した時に対応して、個別に又は同時に昇降動作をしてもよい。これは、後述する第6及び第7の実施態様においても同様である。
【0072】
そして、前記合成樹脂40の注入量が95%程度になると、前記キャビティ34内の前記合成樹脂40が保圧されるようになり、前記ゲート36からの前記合成樹脂40の射出動作を継続すると保圧状態を維持しつつ圧縮密度が高められ、やがて前記合成樹脂40の注入量が100%となる。
【0073】
前記キャビティ34内の前記合成樹脂40が保圧され始め、前記合成樹脂40の注入量が100%となる直前、100%となった時点又は100%となった直後に、前記媒体通路31内に冷却用媒体を流して前記固定金型32を冷却して前記合成樹脂40を硬化させ、前記固定金型32の温度が前記合成樹脂40の軟化点温度未満になったら、前述した保圧を終了させる。
【0074】
その後、合成樹脂成形品として取り出せる程度まで固化したら、前記固定金型32の冷却を終了させて型開きを行い、また前記昇降ピン38Cを上昇させると共に前記昇降ピン38Aを下降させ、前記キャビティ34内から合成樹脂成形品を取出す。
【0075】
以上のようにして製造された合成樹脂成形品は、強度向上や表面質感向上、或は外観品質向上等のために前記フィラー39を含有し、しかも、穴等の開口を有するものであるにもかかわらず、前記配向ライン37A2、37B2を外側から極力見えなくして、外観を良好に仕上げることができる。
【0076】
なお、前述した図11〜図16に基づいた第4及び第5の実施態様において、図4〜図9に基づいた第2の実施態様で示したような配向ラインを外側から極力見えなくなるようにする他のゲート36A(図11において点線で示す。)を設けてもよく、以下第6及び第7の実施態様における合成樹脂の成形動作について説明する。尚、この他のゲート36Aは、配向ライン37A2、37B2を合成樹脂成形品において外側から極力見えなくするようにするためであって、ウェルドライン37A1、37B1及び配向ライン37A2、37B2に対して必ずしも直交しなくともよく、斜め方向から射出してもよい。
【0077】
先ず、前記固定金型32と前記可動金型33との型閉めを行う直前に前記媒体通路31に加熱用媒体を流して前記固定金型32を加熱し、前記固定金型32の前記キャビティ34側の表面温度を前記合成樹脂の軟化点温度まで高める。
【0078】
然る後、前記合成樹脂が軟化点温度まで高められると前記加熱を停止し、型閉め後に、前記フィラー39を含む溶融した熱可塑性の合成樹脂40を前記ゲート36から射出する。
【0079】
また、そして、キャビティ34内への溶融した前記合成樹脂40の注入量が増大して来ると、前記ゲート36に面する前記開口形成体35Aの裏方に、即ち前記ゲート36に面する側とは反対側の前記開口形成体35Aの側方位置に、図14に示すように、前記合成樹脂40が前記開口形成体35Aを回り込んで互いに合流するウェルドライン37A1に沿って前記フィラー39の配向ライン37A2が形成され、このウェルドライン37A1を中心とした配向部L5では前記フィラー39が垂直方向に配向される。この状態では前記合成樹脂40は加圧されてなく、圧縮密度がまだ低い。
【0080】
そして、前述と同様に、キャビティ34内への前記合成樹脂40の注入量が増大して来ると、前記ゲート36に面する前記開口形成体35Bの裏方に、即ち前記ゲート36に面する側とは反対側の前記開口形成体35Bの側方位置に、図13に示すように、溶融した合成樹脂40が前記開口形成体35Bを回り込んで互いに合流するウェルドライン37B1に沿って前記フィラー39の配向ライン37B2が形成され、このウェルドライン37B1を中心とした配向部L4では前記フィラー39が垂直方向に配向される。この状態では前記合成樹脂40は加圧されてなく、圧縮密度がまだ低い。
【0081】
そして、前述したように、前記ゲート36方向から見て、前記開口体35A、35Bの裏方に前記配向ライン37A2、37B2が発生し、また前記開口体35A、35Bの右側面付近(特に、前記開口体35A、35Bの右側の根元)に前記ゲート36より射出される合成樹脂が流れない又は流れにくい淀み部U3、U4が発生する。
【0082】
そして、配向ライン37A2、37B2が発生した後で、保圧が開始される前に、他のゲート36Aにより前記キャビティ34内に射出が開始されるが、この開始と共に前記昇降ピン38Bを前記固定金型32のキャビティ形成面には届かない位置まで一旦押し上げた後(図15参照)、直ちに前記可動金型33のキャビティ形成面と同じ面一となる位置まで下降させることにより前記ウェルドライン37A1の一側に空間S2が形成される。更に、前記昇降ピン38Bの下降と同時で、且つ、キャビティ34内への合成樹脂の注入量が95%以上となって保圧が開始することとなるその直前に、前記昇降ピン38Aをその上端面が前記可動金型33のキャビティ形成面と同じ面一まで押し上げると(図16参照)、前記樹脂溜まり部P1内に溜められた前記合成樹脂40がウェルドライン37A1の他側のキャビティ34内に押し上げられてウェルドライン37A1付近の前記合成樹脂40を前記空間S2内に埋めるように、前記開口体35Aの裏方の右側面付近、即ち右側に接する箇所に発生した前記淀み部U3を図16における右方へ押し流す。更には、前記配向ライン配向ライン37A2、37B2が発生した後の前記保圧の開始と同時に、又は保圧開始の前後に、前記ゲート36からの射出を停止するが、この停止の少し前に他のゲート36Aから溶融した熱可塑性の前記合成樹脂40を射出する。従って、前記淀み部U3を含む前記配向部L5にあった前記フィラー39を垂直から極力水平に近い並列に配向させることができ、配向ライン37A2を外側から極力見えなくして、外観を良好に仕上げることができる。
【0083】
また前述したように、配向ライン37A2、37B2が発生した後で、保圧が開始される前に、前記昇降ピン38Cをその上端面が前記可動金型33のキャビティ形成面と同じ面一となる位置まで上昇させると、前記樹脂溜まり部P2内に溜められた前記合成樹脂40がウェルドライン37B1近くの前記キャビティ34内に押し上げられて、このウェルドライン37B1付近の合成樹脂を押し流し、また前記開口体35Bの裏方の右側面近傍に発生した前記淀み部U4をも右方へ押し流す(図13参照)。このとき、前述したように、前記保圧の開始と同時に、又は保圧開始の前後に、前記ゲート36からの射出を停止するが、この停止の少し前に他のゲート36Aから前記合成樹脂40を射出する。従って、前記淀み部U3を含む前記配向部L5にあった前記フィラー39を垂直から極力水平に近い並列に配向させることができ、配向ライン37A2を外側から極力見えなくして、外観を良好に仕上げることができる。
【0084】
そして、前記合成樹脂40の注入量が95%程度になると、前記キャビティ34内の前記合成樹脂40が保圧されるようになり、前記他のゲート36Aからの前記合成樹脂40の射出動作を継続すると保圧状態を維持しつつ圧縮密度が高められ、やがて前記合成樹脂40の注入量が100%となる。
【0085】
前記キャビティ34内の前記合成樹脂40が保圧され始め、前記合成樹脂40の注入量が100%となる直前、100%となった時点又は100%となった直後に、前記媒体通路31内に冷却用媒体を流して前記固定金型32を冷却して前記合成樹脂40を硬化させ、前記固定金型32の温度が前記合成樹脂40の軟化点温度未満になったら、前述した保圧を終了させる。
【0086】
その後、合成樹脂成形品として取り出せる程度まで固化したら、前記固定金型32の冷却を終了させて型開きを行うと共に、前記昇降ピン38A、38Cを下降させ、前記キャビティ34内から合成樹脂成形品を取出す。
【0087】
以上のようにして製造された合成樹脂成形品は、強度向上や表面質感向上、或は外観品質向上等のために前記フィラー39を含有し、しかも、穴等の開口を有するものであるにもかかわらず、前記配向ライン37A2、37B2を外側から極力見えなくして、外観を良好に仕上げることができる。
【0088】
なお、以上の第1の実施態様における第1ゲート16及び第2ゲート18、第2の実施態様におけるゲート26A、第3の実施態様におけるゲート26A及び他のゲート26B、第4及び第5の実施態様におけるゲート36及び他のゲート36A、第6及び第7の実施態様におけるゲート36及び他のゲート36Aは、図面において示されている数に限らず、2以上又は3以上の数としてもよい。この場合、各実施態様における各ゲート同じ機能を果たすものであれば、それぞれのゲートを2以上又は3以上の数としても、それらは各実施態様における各ゲートとして扱われるべきである。
【0089】
また、以上の第1〜第7の実施態様における各開口形成体や各昇降ピンの形状は、各図面において表された四角柱に限られない。
【0090】
以上のように、本発明の実施態様について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
【符号の説明】
【0091】
12、22、32 固定金型
13、23、33 可動金型
14、24、34 キャビティ
15、25A、25B、35A、35B 開口形成体
16 第1ゲート
18 第2ゲート
26A、36 ゲート
26B、36A 他のゲート
17A1、27A1、27B1、37A1、37B1 ウェルドライン
17A2、27A2、27B2、37A2、37B2 配向ライン
19、29、39 フィラー
20、30、40 合成樹脂
28A、28B、38A、38B、38C 昇降ピン
S1、S2 空間
P1、P2 樹脂溜まり部
U1〜U4 淀み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型と可動金型との間に形成され、且つ、成形品に開口を形成するための開口形成体を臨ませたキャビティ内にフィラーを含む溶融した熱可塑性の合成樹脂を射出して成形する射出成形装置であって、
前記キャビティ内に前記合成樹脂を射出するための第1ゲートと、
この第1ゲートに面する前記開口形成体の裏方に形成される前記フィラーの配向ラインに向けて前記合成樹脂を射出する第2ゲートと、
前記配向ライン近傍の前記可動金型に前記キャビティ内に出没可能に設けられた昇降ピンとを設け、
前記第1ゲートにより前記合成樹脂が射出されて前記配向ラインが形成された後において、前記第1ゲートによる前記合成樹脂の射出の停止と同時に、停止前に又は停止後に前記第2ゲートによる前記合成樹脂の射出を開始し、且つ前記第1ゲートによる前記合成樹脂の射出開始時にその上端面が前記可動金型のキャビティ形成面と同じ面一にあった前記昇降ピンを前記キャビティ内に上昇させた後、元の位置に戻るように下降させることを特徴とする射出成形装置。
【請求項2】
固定金型と可動金型との間に形成され、且つ、成形品に開口を形成するための開口形成体を臨ませたキャビティ内にフィラーを含む溶融した熱可塑性の合成樹脂を射出して成形する射出成形装置であって、
前記キャビティ内に前記合成樹脂を射出するための第1ゲートと、
この第1ゲートに面する前記開口形成体の裏方に形成される前記フィラーの配向ラインに向けて前記合成樹脂を射出する第2ゲートと、
前記配向ラインの近傍の前記可動金型に昇降可能に設けられる昇降ピンとを設け、
前記第1ゲートによる前記合成樹脂の射出開始時にその上端面が前記可動金型のキャビティ形成面より下方の下降位置にある前記昇降ピンの上方に樹脂溜まり部を形成し、
前記第1ゲートにより前記合成樹脂が射出されて前記配向ラインが形成された後において、前記第1ゲートによる前記合成樹脂の射出の停止と同時に、停止前に又は停止後に前記第2ゲートによる前記合成樹脂の射出を開始し、且つ前記昇降ピンをその上端面が前記可動金型の前記キャビティ形成面と同じ面一となるように上昇させて、前記第1ゲートによる前記合成樹脂の射出により前記樹脂溜まり部内に溜められた前記合成樹脂を前記キャビティ内に押し上げることを特徴とする射出成形装置。
【請求項3】
固定金型と可動金型との間に形成され、且つ、成形品に開口を形成するための開口形成体を臨ませたキャビティ内にフィラーを含む溶融した熱可塑性の合成樹脂を射出して成形する射出成形装置であって、
前記キャビティ内に前記合成樹脂を射出するための第1ゲートと、
この第1ゲートに面する前記開口形成体の裏方に形成される配向ラインに向けて前記合成樹脂を射出する第2ゲートと、
前記配向ラインの近傍の前記可動金型に昇降可能に設けられる第1昇降ピンと、
前記第1ゲートにより射出された前記合成樹脂が前記開口形成体を回り込んで互いに合流するウェルドラインを前記第1昇降ピンとで挟む位置の前記可動金型に昇降可能に設けられる第2昇降ピンとを設け、
前記第1ゲートによる前記合成樹脂の射出開始時には、前記第1昇降ピンはその上端面を前記金型のキャビティ形成面と同じ面一とした状態にすると共に、前記第2昇降ピンはその上端面を前記可動金型の前記キャビティ形成面より下方の下降位置としてこの第2昇降ピンの上方に樹脂溜まり部を形成し、
前記第1ゲートにより前記合成樹脂が射出されて前記配向ラインが形成された後において、前記第1ゲートによる前記合成樹脂の射出の停止と同時に、停止前に又は停止後に前記第2ゲートによる前記合成樹脂の射出を開始し、且つ前記第1昇降ピンを前記キャビティ内に押し上げると共にその上端面が前記可動金型の前記キャビティ形成面と同じ面一となるように下降させ、且つこの第1昇降ピンの下降と同時に前記樹脂溜まり部内に溜められた前記合成樹脂をその上端面が前記可動金型の前記キャビティ形成面と同じ面一となるように前記第2昇降ピンを上昇させて前記キャビティ内に押し上げることを特徴とする射出成形装置。
【請求項4】
固定金型と可動金型との間に形成され、且つ、成形品に開口を形成するための開口形成体を臨ませたキャビティ内にフィラーを含む溶融した熱可塑性の合成樹脂を射出して成形する射出成形装置であって、
前記キャビティ内に前記合成樹脂を射出するための第1ゲートと、
この第1ゲートに面する前記開口形成体の裏方に形成される前記フィラーの配向ラインに向けて前記合成樹脂を射出する第2ゲートとを設け、
前記第1ゲートにより前記合成樹脂が射出されて前記配向ラインが形成された後において、前記第1ゲートによる前記合成樹脂の射出の停止と同時に、停止前に又は停止後において、前記第2ゲートにより前記合成樹脂を射出するようにしたことを特徴とする射出成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−82230(P2013−82230A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−286642(P2012−286642)
【出願日】平成24年12月28日(2012.12.28)
【分割の表示】特願2011−223210(P2011−223210)の分割
【原出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(300045558)株式会社富士精工 (14)
【Fターム(参考)】