説明

射出成形金型装置

【目的】 カセット金型の自動交換が可能な構成の射出成形金型における樹脂漏れを防止する。
【構成】 可動側ベース金型Qに設けてある1対のカセット金型15の間に、当接部11bと係合部11cとを有する1対のカセットゲート金型11が設けてある。各カセットゲート金型は、付勢手段13によって互いに接近するように付勢されており、カセット金型の側面15dとカセットゲート金型の当接部11bおよびカセットゲート金型の係合部11c同士の境界面が密着した状態になり、境界面からの樹脂漏れを防止している。カセット金型を装着した状態においてカセット金型とカセットゲート金型の前面には、ベース金型のスプルー3dと連通するランナ部16ができる。1対のカセットゲート金型を離反する方向に移動させると、当接部とカセット金型の側面との間に間隙ができるので、カセット金型の自動交換が容易になる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、射出成形金型装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】1回の成形操作によって成形品を複数個取りする射出成形用金型装置として、成形品の変化に応じて異なるキャビティを構成するカセット金型を固定側金型および可動側金型のどちらかに、または双方に挿脱自在に装着した射出成形金型が広く用いられている。
【0003】カセット金型を採用した射出成形金型の構成の第1例として、ベース金型に対向する1対のカセット金型用挿入穴を設け、これらの挿入穴の間に形成された仕切り部の上面にゲートブロックを固着し、各カセット挿入穴に、このゲートブロックとともに上面が、パーティングライン面(以下「PL面」という。)を構成するカセット金型を装着したものがある。PL面に形成されたランナは、ゲートブロックとカセット金型の境界を通って、カセット金型のPL面に形成されたキャビティに連結している。
【0004】第2例として、ベース金型に対向する1対のカセット金型用挿入穴間に形成された仕切り部の両側にカセット金型を対接させるように装着し、固定側金型と可動側金型とのそれぞれの仕切り部と各カセット金型との境界部のPL面にベース金型とカセット金型との間に跨がる凹部を形成し、この凹部にランナの一部を構成する溝を備えたアタッチメントを嵌着し、両者間の境界面からの樹脂漏れを防止するようにしたものがある(特公平3−22810)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記した第1例は、ランナが仕切り部とカセット金型との接合境界面上を通ることから、これらの境界面からの樹脂漏れを生じる原因になっている。この樹脂漏れを防止するためには、境界面を完全密着するように精密仕上げをしなければならないので、金型のコスト高の原因になっている。また、境界面を精密仕上げしたとしても、カセット金型の着脱、運搬、保管等の取り扱い時に、特に境界面のランナが通るエッジ部に傷がつき易く、結局この傷に起因して接合境界面から樹脂漏れを生じ、著しい場合にはその樹脂圧によって金型破壊が生じるなどの問題があった。
【0006】これに対し、第2例は、固定側金型と可動側金型とのPL面に、ベース金型とカセット金型とに跨がるアタッチメントを嵌着してあるので、樹脂漏れ防止には有効であるが、構造が複雑化し、カセット金型の着脱が面倒なので、カセット金型交換の自動化を妨げる原因となっている。
【0007】そこで本発明の目的は、境界面からの樹脂漏れを生じ難くするとともに、カセット金型交換が容易な射出成型金型装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明の射出成形金型装置は、少なくとも1対のカセット金型収納凹部を有するとともに、1対のカセット金型収納凹部の間に位置するスプルーとを有するベース金型と、ベース金型のカセット金型収納凹部に挿脱自在な複数のカセット金型とを備えていたものを基本的構成とするものであり、このような基本的構成を有するものについて、以下のような手段を採用したものである。
【0009】ベース金型に設けてある1対のカセット金型収納凹部の間には、それぞれのカセット金型の少なくとも1つの側面と当接可能な当接部および所定位置において互いに係合して密着可能な係合部を有し、1対のカセット金型収納凹部を結ぶ直線に対して実質的に直交する方向に移動可能かつ係合部同士が対向するように1対のカセットゲート金型が設けてある。
【0010】1対のカセットゲート金型は、ベース金型に配設されている付勢手段によってそれぞれのカセットゲート金型同士が互いに接近するように付勢されている。
【0011】1対のカセットゲート金型は、カセット金型がカセット金型収納凹部に装着された時に、カセット金型に当接部が当接して押圧されることにより、互いに離反する方向に所定位置まで移動された状態において、互いに連通するようにカセット金型および係合部のそれぞれの上面に設けられており、スプルーより射出された樹脂の流通が可能なランナ部を有しているとともに、所定位置において付勢手段の付勢力によって当接部がカセット金型の側面と密着し係合部同士が係合かつ密着するように配設されている。
【0012】また、他の手段として、対向するカセットゲート金型を、1対のカセット金型を結ぶ線に対して直交する方向に移動可能な第1カセットゲート金型と、この第1カセットゲート金型に対して直交する方向に移動可能な第2カセットゲート金型とによって構成してもよい。
【0013】第1カセットゲート金型は、カセット金型の少なくとも1つの側面と当接可能な当接部と実質的に三角形状の先端部とを有し、1対のカセット金型収納凹部を結ぶ直線に対して実質的に平行な方向に移動可能かつ先端部同士が対向するように1対のカセット金型収納凹部の間に配設してある。
【0014】1対の第2カセットゲート金型は、1対の第1カセットゲート金型と当接可能であり、実質的に三角形状の先端部を有し、第1カセットゲート金型の移動方向と直交する方向に移動可能かつこれらの先端部同士が対向するように1対のカセット金型収納凹部の間に配設されている。
【0015】1対の第1カセットゲート金型および1対の第2カセットゲート金型は、それぞれ互いに接近するように付勢手段によって付勢されている。
【0016】カセット金型がカセット金型収納凹部に装着された時に、カセット金型に第2カセットゲート金型の当接部が当接して押圧されることにより、第1カセットゲート金型が互いに接近するように移動し、第1カセットゲート金型に第2カセットゲート金型の当接部が当接して押圧されることにより、第2カセットゲート金型が互いに離反する方向に移動されて、第1カセットゲート金型および第2カセットゲート金型の各先端部が係合した状態において、互いに連通するように、第1カセットゲート金型および第2カセットゲート金型の少なくともいずれか一方の先端部とカセット金型の上面に設けられており、ベース金型のスプルーより射出された樹脂の流通が可能なランナ部を有している。
【0017】第1および第2カセットゲート金型は、カセット金型がカセット金型収納凹部に装着された時に、第1カセットゲート金型の当接面がカセット金型側面と密着するとともに、各先端部同士が互いに密着するように配設してある。
【0018】
【作用】1対のカセットゲート金型を付勢手段の付勢力に抗して離反した位置に係止すると、各カセットゲート金型の当接部と各カセット金型の一側面との境界面の間隙が大きくなり、PL面の前方からカセット金型収納凹部にカセット金型を容易に挿入可能になる。1対のカセットゲート金型の上記係止状態を解除すれば、1対のカセットゲート金型がそれぞれ付勢手段によって付勢され、各カセットゲート金型の係合部同士が係合かつ密着するとともに、各当接部とカセット金型の一側面とが密着し、カセット金型および各係合部の上面にスプルーより射出された樹脂の流通が可能なランナ部を構成し、このランナ部を流通する樹脂は、カセット金型とカセットゲート金型およびカセットゲート金型同士の境界面からの樹脂漏れを起こさない。
【0019】他の手段においては、1対の第2カセットゲート金型を付勢手段の付勢力に抗して離反した位置に係止すると、第1カセットゲート金型は付勢手段の付勢力により互いに接近する方向に移動し、カセット金型の側面と第1カセットゲート金型との間隙を広くして、カセット金型をPL面の前方からカセット金型収納凹部に挿入するのを容易にする。カセット金型の挿入後に第2カセットゲート金型同士の係止状態を解除すると、1対の第2カセットゲート金型は付勢手段の付勢力によって互いに接近する方向に移動し、第1または第2の少なくともいずれか一方のカセットゲート金型上面とカセット金型上面とには互いに連通し、かつベース金型のスプルーより射出される樹脂の流通が可能なランナ部を形成する。カセット金型が装着されると、第1および第2の各カセットゲート金型の先端部同士が係合して密着した状態になるとともに、第1カセットゲート金型の当接部とカセット金型の側面とが密着した状態になり、射出成形の際にこれらの境界面からの樹脂漏れを防止する。
【0020】
【実施例】以下本発明の一実施例について、図面を参照して説明する。図4に示すように、本発明のベース金型は、固定側金型Pと可動側金型Qとによって構成される。
【0021】固定側金型Pは、射出成形機に固定された取付け板1と、この取付け板の前面から水平前方(図面右側)に突設してあるガイド軸2…および取付け板1の前面に対接固定してある固定側のベースプレート3とによって構成される。
【0022】ベースプレート3には、1対のカセット金型収納凹部3a,3aが設けてあり、これらの各カセット金型収納凹部には、それぞれカセット金型4,4が固定キー5を介して装着してある。ベースプレート3の収納凹部の中心部にはスプルー3dが設けてあり、このスプルーが設けられた位置を含むベースプレート3の前面のカセット金型4,4の間には、1対のカセットゲート金型6,6が設けてある。
【0023】可動側金型Qは、固定側金型Pに対してガイド軸2に沿って進退自在に設けてあり、最外側に位置し、シリンダロッド(図示略)に連結された可動側の取付け板7の前面(図面左側)にスペーサブロック8、その前面に受け板9、さらにその前面に可動側のベースプレート10を順次積層させたもので構成してある。
【0024】図2に示すように、ベースプレート10には、四隅に丸みを有する正方形をした1対のカセット金型収納凹部10a,10aが設けてある。図4に示すように、カセット金型収納凹部10aの後端部の対向する2辺には、紙面に垂直方向に延長し、ベースプレート10の一側面に開口部を有し、段差状断面に切欠したキー溝10b…が形成してある。
【0025】1対のカセット金型収納凹部10a,10aの中間位置は、ベースプレート10の前面と同一平面の仕切り部10cとなっており、この仕切り部10cの中心に後述の突出し機構17を構成する突出しピン17cが挿着されたピン挿入孔10dが貫設してある。仕切り部10cの前面には、カセット金型収納凹部10a,10aを結ぶ直線に対し、実質的に直交する方向に移動可能な1対のカセットゲート金型11,11が設けてある。
【0026】図2に示すように、カセットゲート金型11は、細長い板状体によって構成され、基部からほぼ3分の1の部分は板厚を薄くして段差11aを設け、その先の部分である板厚の大きい部分の一側面は、先端部を狭くするこう配を設け、後述のカセット金型15の一側面と当接可能な当接部11bになっている。他側面は、長さのほぼ中間まで1対のカセット金型収納凹部10a間を結ぶ直線と直交する方向にまっすぐに延長し、中心位置で直角に屈成し、板幅を狭くする方向に水平部を設け、そこからさらに先端部を狭くするこう配に形成して互いに係合可能な係合部11cになっている。このため、カセットゲート金型11の先端部は、基部の板幅の3分の1ほどの幅になっている。カセットゲート金型11の係合部11cの中程の位置には、ベース金型のスプルー3dと連結される半円状の凹部からなるランナ溝11d,11dが形成してあり、このランナ溝11dの前端部は、カセットゲート金型11の前面を横断するように設けてあるランナ溝11eと連通している。カセットゲート金型11の前面中央部には、それぞれ後述のカセット金型自動交換装置のチャック手段用のテーパピンが挿入可能なテーパ穴11fが設けてある。
【0027】1対のカセットゲート金型11,11は、それぞれ薄板の部分の断面形状に対応した溝を有する支持部材12で押さえられ、仕切り部10c上面にてカセット金型収納凹部を結ぶ線に対して実質的に直交する方向に移動可能に装着してある。
【0028】各カセットゲート金型11の基端部には、各カセットゲート金型を互いに接近する方向に付勢する付勢手段として、圧縮ばね13が設けてある。圧縮ばね13は、ばね保持部材14に一端部を保持され、他端部がカセットゲート金型11の基端部を押圧しており、各カセットゲート金型は圧縮ばね13の付勢力により互いに接近するように付勢されている。
【0029】図1,4に示すように、可動側のベースプレート10に設けてある1対のカセット金型収納凹部10a,10aには、それぞれカセット金型15,15が装着してある。カセット金型15は、前面にキャビティ部15cを有するとともに、ベースプレート10への係止用のつば部15aを有し、後端に固定キー16が係止する脱落防止用の係止部15bを有している。係止部15bには、キー溝10bに差し込まれた固定キー16の突起部が係合しており、カセット金型15はベースプレート10に脱落不能に固定されている。
【0030】カセット金型15のつば部15aの各一側面15dに、それぞれカセットゲート金型11の当接部11bが当接している。カセット金型15の前面中央部に形成されているキャビティ部15cからカセットゲート金型11の当接部11bと当接する一側面15dに向けて、ランナ溝15e,15eが形成してある。キャビティ部15cとランナ溝15eとの連結部は、溝部を細く絞ったゲート部15fが形成してある。カセットゲート金型11と当接するカセット金型15の一側面15dは、カセットゲート金型の当接部11bのこう配と対応するこう配に形成してあり、当接しない余りの部分は、カセット金型収納凹部10a,10aを結ぶ線に対して実質的に直角方向に直線状に形成してある。
【0031】1対のカセットゲート金型11,11が、1対のカセット金型15,15の間に挾まれて、互いに接近するように付勢された状態になると、半円状の凹部11d,11dが向かい合って円形穴からなるピン挿入穴になる。このピン挿入穴とランナ溝15eとが連通し、ランナ部16を構成し、ベース金型のスプルー3dとキャビティ部15cとを連通可能にしている。
【0032】図4に示すように、可動側のカセット金型15,15の後方には、成形品の突出し機構17を備えている。突出し機構17は、スペーサブロック8に設けられたスペース8a内に突出し板17a,17bを進退自在に設け、突出し板に複数の突出しピン17c…が固着してある。各突出しピン17cの先端は、キャビティ部15cの底面に一致させてある。
【0033】図3に示すように、固定側金型Pの前面も、可動側のそれと同様に、固定側金型Pを構成するベースプレート3に設けられたカセット金型収納凹部3a,3aに1対のカセット金型4,4が装着してあり、これらのカセット金型の間に1対のカセットゲート金型6,6が付勢手段18,18によって付勢された状態に設けてある。
【0034】図5は、カセット金型自動交換装置(図示略)のチャック手段50によってベース金型のベースプレート10へカセット金型15を装着する要領を示している。チャック手段50は先端部が二股状に形成してあり、カセット金型を把持する位置にはエアチャック用の吸着口50a…が設けてある。1対のカセット金型を吸着すべき場所の中間位置には、カセットゲート金型11,11の係合部11c,11cが互いに係合したときに各カセットゲート金型の上面に設けてあるテーパ穴11f,11fの位置に対応した間隔にテーパピン50b,50bが設けてある。チャック手段50は、カセット金型自動交換装置本体の駆動手段によって左右方向(x方向)および紙面に対して垂直方向(y方向)に移動可能である。
【0035】カセット金型15,15をベースプレート10のカセット金型収納凹部10a,10aに装着する要領を述べる。まず、チャック手段50によりカセット金型自動交換装置本体のカセット金型格納装置(図示略)から1対のカセット金型15,15を取り出し、ベースプレート10の前面に沿って移動させ(x方向)、カセット金型15,15をベース金型間に位置させる。次に、カセット金型15,15をカセット金型収納凹部10a,10a内の装着位置まで挿入した後、チャック手段50の位置は動かさないまま、吸着口50aの真空状態を解除し、カセット金型15,15をチャック手段50から解放させる。その状態において、カセット金型後端の係止部15bに固定キー16を挿入、係止させて、カセット金型15,15をカセット金型収納凹部10a,10a内に残して、チャック手段50は、固定側・可動側両ベースプレート3,10間の中央(チャック手段50がカセット金型15,15から完全に離脱する所)に移動する。カセット金型15,15の装着時において、テーパピン50b,50bは、カセットゲート金型11,11のテーパ穴11f,11fに挿入された状態が作られる。その経過の詳細について述べる。テーパピン50b,50bが進入するのにしたがって、1対のカセットゲート金型11,11は互いに離反する方向に移動し、外側に位置する当接部11b,11b同士の間隔がわずかに狭くなる。さらに、チャック手段50を接近させていくと、カセット金型15,15は、カセット金型収納凹部10a,10aに挿入されていく。吸着穴50aの真空状態を解除してカセット金型11を収納凹部内に残してチャック手段50を後退させると、テーパピン50bもテーパ穴11fから脱出し、1対のカセットゲート金型11,11は付勢手段により互いに接近する方向に付勢される。このため、こう配に形成してあるカセットゲート金型11,11の当接部11bとカセット金型の一側面15dとが密着状態で当接するとともに、各カセットゲート金型11,11の係合部11c,11c同士が密着した状態で係合し、PL面にスプルー3dと連結されたランナ部16が作られる。カセット金型15をベースプレート10から取り外す場合には、これと反対の動作によってカセット金型15,15をカセット金型格納装置に格納する。
【0036】射出成形の工程は、シリンダロッドにより可動側金型Qを固定側金型Pの方向へ接近させ、固定側のカセット金型4,4の前面と可動側のカセット金型15,15の前面とを対接させて型締めすると、両カセット金型によってできたPL面にキャビティおよびランナが形成される。次に、射出成形機のノズルからスプルー3dを経てランナおよびキャビティ内に溶融樹脂を供給し、所定のキュアリングタイムをおくと、ランナと一体の成形品ができあがる。その後に、可動側金型Qを後退させるとともに、可動側の取付け板7の穴部から突出しロッド(図示略)を進入させて突出し機構17によって、成形品を金型から突き落す。突出しロッドが後退すると、突出し機構17は戻しばね(図示略)によって後退する。可動側金型Qが元の位置に戻って1サイクルの工程が終了し、次の射出成形工程に移り、このサイクルを繰り返す。
【0037】次に、他の実施例について説明する。
【0038】本実施例もカセットゲート金型とカセット金型との境界面からの樹脂漏れ防止を意図したのである点において共通の目的を有するものであり、基本的構成もベース金型は、固定側金型Pと可動側金型Qとによって構成され、その他の構成においても、大部分は先の実施例についてのそれと共通するものを備えている。
【0039】図6に示すように、固定側金型Pは、固定側の取付け板21の前面に複数のガイド軸22…が突設してあり、取付け板21の前面には、固定側のベースプレート23が設けてある。ベースプレート23には、カセット金型収納凹部23a,23aが設けてあり、各カセット金型収納凹部には、それぞれカセット金型24,24が装着してある。カセット金型24は、前面にキャビティ部24cを有し、後端部24bは、固定キー25によってベースプレート23に係止されることによりベース金型に脱落不能に固定されている。1対のカセット金型収納凹部23a,23aの間に位置する仕切り部23cの中心位置には、板厚方向に貫通するスプルー23dが設けてある。
【0040】図7に示すように、固定側のベース金型の仕切り部23cの前面には、1対の第1カセットゲート金型27,27およびこれらのカセットゲート金型と直交するように、1対の第2カセットゲート金型28,28が配設してある。各1対の第1および第2カセットゲート金型は、それぞれ付勢手段29,30によって互いに接近するように付勢されている。
【0041】図6に示すように、可動側金型Qは、取付け板31,スペーサブロック32,受け板33および可動側のベースプレート34とによって構成されており、ベースプレート34に設けられた1対のカセット金型収納凹部34a,34aには、それぞれカセット金型35,35が装着してあり、その後端部35bは固定キー36によってベースプレート34に脱落不能に固定してある。各カセット金型35の前面には、キャビティ部35cおよびランナ溝35eが設けてある。
【0042】図8に示すように、1対のカセット金型収納凹部34a,34aの間に形成された仕切り部34cの前面に、実質的に三角形状の先端部37aを有する1対の第1カセットゲート金型37が設けてある。第1カセットゲート金型37は、実質的に三角形状の先端部37aをそれぞれ対向させ、各底辺部は後述のカセット金型の側面に当接可能な当接部37bを構成している。各第1カセットゲート金型は、先端部37aの各斜辺間に三角形の空間を形成した状態で向かい合い、それぞれの両側に設けてある1対の付勢手段38,38の付勢力によって互いに接近する方向に付勢されている。
【0043】対向する1対の第1カセットゲート金型37,37に対して上記した斜辺によってできた空間に対応した形状、すなわち、実質的に三角形状の先端部39aを有する1対の第2カセットゲート金型39,39が係合している。各第2カセットゲート金型39は、先端部39aの底辺を延長した平行部39bを有する細長い板状体からなり、先端部39aは鋭角に形成してある。また、先端部39aを構成する三角形の頂点の部分を半円状に形成した凹部を設け、カセット金型が装着されたときに、突出しピン42cの挿通穴を構成するようにしてある。各第2カセットゲート金型39の平行部は、板厚を薄くして、カセットゲート金型保持手段40の凹部に嵌合可能にしてあり、第1カセットゲート金型に対して実質的に直角方向に移動可能にしてある。
【0044】各第2カセットゲート金型39の上面の中央より先端部寄りの位置には、チャック手段(図示略)のテーパピンを挿入可能なテーパ穴39f、39fが設けてある。第2カセットゲート金型39の基部は、ばね保持部材41に保持された圧縮ばね42によって互いに接近するように付勢されている。
【0045】図9は、可動側金型のベースプレート34にカセット金型35,35を装着した状態を示すものである。図中、第1カセットゲート金型の先端部37a,37aと、第2カセットゲート金型の先端部39a,39aとが当接し、各頂点に形成された凹部が対向することによって円形の突出しピン用穴部を構成している。第1カセットゲート金型の当接部37bは、それぞれカセット金型35,35の一側面35dに当接している。第2カセットゲート金型の先端部39aは鋭角になっているため、対向する第1カセットゲート金型37,37の間に形成された三角形の空間に両側から割り込んでゆき、第1カセットゲート金型を付勢力に抗して互いに離反するように押圧し、それぞれの先端部同士を密着させるとともに、1対の第1カセットゲート金型37,37を互いに離反する方向に移動可能にしてある。このため、カセット金型35の側面と第1カセットゲート金型の当接部37bとの境界面および第1カセットゲート金型37と第2カセットゲート金型39の先端部37a,39a同士の境界面を押圧して密着させている。
【0046】このようにして、ベース金型が装着された状態では、第1カセットゲート金型37,37の上面に形成してあるランナ溝とカセット金型35の前面に形成してあるランナ溝とが連通してランナ部43が構成される。ランナ部43は、密着した境界面上を跨ぐ状態になっており、射出成形工程において、境界面から樹脂漏れを生じるおそれがなくなっている。
【0047】図6において、カセット金型収納凹部34a,34aの背後には、突出し機構44が設けてある。突出し機構44は、スペーサブロック32の中央部に貫設してある凹部32a内に進退可能に設けてある突出し板40a,40aと、これに固着された複数の突出しピン44c…とによって構成されている。
【0048】可動側金型Qへのカセット金型35の装着要領は、第1実施例の場合と同様のカセット金型自動交換装置を用い、チャック手段によって第2カセットゲート金型39,39のテーパ穴39f,39fにチャック手段のテーパピンを差し込み、両カセットゲート金型を後退させた所定位置に係止すると、第1カセットゲート金型37,37は、付勢力によって互いに接近するように引き寄せられる。この状態で、カセット金型の一側面35dと第1カセットゲート金型の当接部37bとの間にはすき間ができているので、カセット金型35,35はカセット金型収納部に容易に挿入される。次に、第2カセットゲート金型39,39の係止状態を解除すると、付勢手段の付勢力により第1カセットゲート金型37の間に進入し、これらを両側に押し付けて、それぞれの当接面を密着させ、図9に示すようなカセット金型が装着された状態となる。
【0049】固定側金型Pへのカセット金型の装着も、可動側のそれと同様の要領で行われる。なお、射出成型の工程については、第1実施例の場合と同様である。
【0050】上記した2つの実施例では、いずれもカセット金型収納凹部,カセット金型,カセットゲート金型などを1対として説明しているが、これらのものは1対に限らず2対以上とすることも可能である。また、ベース金型の構成も、上記以外のものを採用可能である。
【0051】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、対向する1対のカセット金型の間に、カセット金型の側面と当接可能な当接部と所定位置にて互いに係合して密着可能な係合部とを有し、かつ1対のカセットゲート金型は付勢手段によって互いに接近する方向に付勢されているので、各当接部とカセット金型の側面および係合部同士の係合面は密着状態となる。そして、カセット金型およびカセットゲート金型のPL面にランナ部を形成し、このランナ部からキャビティ内に樹脂を供給するようにしてあるので、境界面を高精度に仕上げなくても境界面が密着しているため、ランナ部に供給された樹脂がカセット金型の側面とカセットゲート金型の当接面の境界面からの樹脂漏れを生じることがなくなる。また、樹脂漏れを防止する手段として、カセット金型の境界面のPL面にアタッチメントなどの樹脂漏れ防止手段を装着しないので、カセット金型の着脱操作が容易となる。このため、カセット金型自動交換装置の採用が容易となり、カセット金型の着脱の自動化に貢献する。
【0052】また、カセットゲート金型として、1対の第1カセットゲート金型と1対の第2カセットゲート金型とを1対のカセット金型の間に設けるようにすれば、カセットゲート金型が容易に移動するので、カセット金型の着脱操作が一層容易になる。このため、カセット金型着脱の自動化推進に一層貢献する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すもので、可動側ベース金型にカセット金型が装着された状態を示す正面図
【図2】同、カセット金型が未装着状態の可動側ベース金型の正面図
【図3】同、固定側ベース金型にカセット金型を装着した状態を示す正面図
【図4】同、ベース金型にカセット金型を装着してある状態を示す断面図
【図5】同、チャック手段により1対のカセット金型をベース金型に装着する要領を示す正面図
【図6】本発明の他の実施例を示すもので、ベース金型にカセット金型を装着してある状態を示す断面図
【図7】同、固定側ベース金型にカセット金型を装着した状態を示す正面図
【図8】同、カセット金型が未装着状態の可動側ベース金型の正面図
【図9】同、可動側ベース金型にカセット金型を装着した状態を示す正面図
【符号の説明】
P、Q ベース金型
3a,10a,23a,34a カセット金型収納凹部
3d,23d スプルー
4,15,24,35 カセット金型
4a,15d,24a,35d (カセット金型の)側面
6,11 カセットゲート金型
6b,11b 当接部
6c、11c 係合部
13,18,30,38,42 付勢手段
16,43 ランナ部
27,37 第1カセットゲート金型
28,39 第2カセットゲート金型
27a,28a,37a,39a 先端部
27b,37b 当接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも1対のカセット金型収納凹部を有するとともに、上記1対のカセット金型収納凹部の間に位置するスプルーとを有するベース金型と、上記カセット金型収納凹部に挿脱自在な複数のカセット金型と、上記カセット金型の少なくとも1つの側面と当接可能な当接部と、所定位置において互いに係合して密着可能な係合部とを有し、上記1対のカセット金型収納凹部を結ぶ直線に対して実質的に直交する方向に移動可能かつ上記係合部同士が対向するように、上記1対のカセット金型収納凹部の間に配設されている1対のカセットゲート金型と、上記ベース金型に配設されており、上記1対のカセットゲート金型を互いに接近するように付勢する付勢手段と、上記カセット金型が上記カセット金型収納凹部に装着された時に、上記カセット金型に上記当接部とが当接して押圧されることにより、上記1対のカセットゲート金型が互いに離反する方向に上記所定位置まで移動された状態において互いに連通するように、上記カセット金型および上記係合部のそれぞれの上面に設けられており、上記スプルーより射出された樹脂の流通が可能なランナ部とを有しており、上記カセットゲート金型は、上記カセット金型が上記カセット金型収納凹部に装着された時に、上記所定位置において上記付勢手段の付勢力によって上記当接部が上記カセット金型側面と密着するとともに、上記係合部同士が係合かつ密着するように配設されたものであることを特徴とする射出成型金型装置。
【請求項2】 少なくとも1対のカセット金型収納凹部を有するとともに、上記1対のカセット金型収納凹部の間に位置するスプルーとを有するベース金型と、上記カセット金型収納凹部に挿脱自在な複数のカセット金型と、上記カセット金型の少なくとも1つの側面と当接可能な当接部と、実質的に三角形状の先端部とを有し、上記1対のカセット金型収納凹部を結ぶ直線に対して実質的に平行な方向に移動可能かつ上記先端部同士が対向するように上記1対のカセット金型収納凹部の間に配設されている1対の第1カセットゲート金型と、上記第1カセットゲート金型と当接可能な当接部と、実質的に三角形状の先端部とを有し、上記第1カセットゲート金型の移動方向と直交する方向に移動可能かつ上記先端部同士が対向するように上記1対のカセット金型収納凹部の間に配設されている1対の第2カセットゲート金型と、上記ベース金型に設けられており、上記1対の第1カセットゲート金型および上記1対の第2カセットゲ−ト金型をそれぞれ互いに接近するように付勢する付勢手段と、上記カセット金型が上記カセット金型収納凹部に装着された時に、上記カセット金型に上記当接部が当接して押圧されることにより上記1対の第1カセットゲート金型が互いに接近するように移動し、上記第1カセットゲート金型に上記当接部が当接して押圧されることにより上記第2カセットゲート金型が互いに離反する方向に移動されて、上記第1および第2カセットゲート金型の各上記先端部が係合した状態において、互いに連通するように、上記第1カセットゲート金型および上記第2カセットゲート金型の少なくともいずれか一方の上記先端部と上記カセット金型との上面に設けられており、上記スプルーより射出された樹脂の流通が可能なランナ部とを有しており、上記第1および第2カセットゲート金型は、上記カセット金型が上記カセット金型収納凹部に装着された時に、上記付勢手段の付勢力によって、上記第1カセットゲート金型の上記当接面が上記カセット金型側面と密着し、上記第2カセットゲート金型の上記当接面が上記第1カセットゲート金型側面と密着するとともに、上記各先端部同士が互いに密着するように配設されたものであることを特徴とする射出成形金型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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