説明

射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物及び該樹脂組成物からなる射出発泡成形体

【課題】 薄肉射出充填が可能で高発泡倍率であるがために、軽量性に優れ、かつ、耐衝撃性の良好な射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物および該樹脂組成物からなる射出発泡成形体を提供すること。
【解決手段】 メルトフローレートが10g/10分以上150g/10分以下、メルトテンションが2cN以下、シャルピー衝撃強さ(−20℃)が4.5kJ/m2以上である線状ポリプロピレン系樹脂(A)50重量%以上95重量%以下、メルトフローレートが0.1g/10分以上30g/10分以下、メルトテンションが5cN以上で、かつ歪硬化性を示す改質ポリプロピレン系樹脂(B)5重量%以上50重量%以下を含んでなる射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物およびそれを用いた射出発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン樹脂は、良好な物性及び成形性を有しており、また、環境にやさしい材料として急速にその使用範囲が拡大している。特に、自動車部品等では、軽量で剛性に優れたポリプロピレン樹脂製品が提供されている。そのような製品の一つに、ポリプロピレン系樹脂の射出発泡成形体がある。
【0003】
ポリプロピレン系樹脂を高発泡化させる技術としては、型開き可能に保持された金型の空間内に発泡剤を含む樹脂を射出した後、金型を開くことにより前記空間を拡大して樹脂を発泡させるいわゆるコアバック法(Moving Cavity法)がある(例えば、特許文献1)。
【0004】
一般に、射出発泡成形に用いるポリプロピレン系樹脂の特性としては、金型内の隅々まで樹脂が充填されるための流動性と、充填後発泡するための発泡性を両立し、かつ、コンソールボックス、ラゲージボックス、ドアトリム、ツールボックス等自動車部品として使用する射出発泡成形体においては、軽量、薄肉であり、剛性と耐衝撃性のバランスが良好であることが要求される。
【0005】
通常使用される線状ポリプロピレン系樹脂は結晶性でメルトテンション(溶融張力)が低いため気泡が破壊され易い傾向にあり、その結果、内部にボイドが発生し易い、成形体表面にシルバーストリークと呼ばれる外観不良が発生しやすい、といった問題が生じ、外観良く発泡倍率を高くすることが困難であった。
【0006】
そのため、ポリプロピレン系樹脂のメルトテンションを高める方法として、例えば、架橋剤やシラングラフト熱可塑性樹脂を添加する(特許文献2、3)、無架橋のポリプロピレン系樹脂に放射線照射することで長鎖分岐を導入する方法(特許文献4)、ポリプロピレン系樹脂とイソプレン単量体とラジカル重合開始剤とを溶融混練して改質ポリプロピレン系樹脂を製造する方法(特許文献5)などが提案されている。確かに、この方法により高発泡倍率の射出発泡成形体が得られるものの、樹脂溶融時の粘度が上がりすぎ、流動性が不足していわゆるショートショットになる等、射出が困難となるとともに、成形不良であるフローマークが発生し、表面外観が悪くなる場合があった。特に、大型成形品の成形ではこの傾向は顕著に見られた。
【0007】
また、耐衝撃性を改良する方法として、ポリプロピレン樹脂に非晶性のゴム状物質をブレンドあるいは多段重合等によって加える方法が提案されている(例えば特許文献6〜10)。しかし、この方法では耐衝撃性は高くなるものの、添加するゴム成分の分散性が悪く成形不良となったり、または、樹脂の発泡性が十分でなく、2倍以上の高発泡倍率の射出発泡成形体を得ることはできないなど、これら諸物性を両立したものを得ることは難しかった。また、これらゴム状物質はポリプロピレンに対して比較的高価なものであり、添加することでコスト高になるという問題があった。
【0008】
以上のように、これまでは射出発泡成形に必要な樹脂特性としての流動性と発泡性を両立し、高発泡倍率で大幅な軽量化が可能であり、耐衝撃性が良好な射出発泡成形体を安価に得ることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2005/026255号公報
【特許文献2】特開昭61−152754号公報
【特許文献3】特開平7−109372号公報
【特許文献4】特開昭2001−226510号公報
【特許文献5】特開平9−188774号公報
【特許文献6】特開2004−082547号公報
【特許文献7】特開2002−11748号公報
【特許文献8】特開2004−189911号公報
【特許文献9】特開2005−324429号公報
【特許文献10】特開2002−283382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、薄肉射出充填が可能で高発泡倍率であるがために、軽量性に優れ、かつ、耐衝撃性の良好な射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物および該樹脂組成物からなる射出発泡成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、改質ポリプロピレン系樹脂を、流動性が良好でかつ耐衝撃性が良好なポリプロピレン系樹脂で希釈することで、成形性および発泡性を悪化させることなく、安価に耐衝撃性の優れた射出発泡成形体を得られることを見出し、本発明の完成に至った。
【0012】
すなわち本発明は次の構成よりなる。
〔1〕 メルトフローレートが10g/10分以上150g/10分以下、メルトテンションが2cN以下、シャルピー衝撃強さ(−20℃)が4.5kJ/m2以上である線状ポリプロピレン系樹脂(A)50重量%以上95重量%以下、メルトフローレートが0.1g/10分以上30g/10分以下、メルトテンションが5cN以上で、かつ歪硬化性を示す改質ポリプロピレン系樹脂(B)5重量%以上50重量%以下を含んでなる射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物。
〔2〕 前記改質ポリプロピレン系樹脂(B)が、線状ポリプロピレン系樹脂、ラジカル重合開始剤、共役ジエン化合物を溶融混合して得られた改質ポリプロピレン系樹脂である〔1〕記載の射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物。
〔3〕 前記線状ポリプロピレン系樹脂(A)が、メルトフローレートが50g/10分以上300g/10分以下、である線状ポリプロピレン系樹脂(A1)を10重量%以上90重量%以下、メルトフローレートが1g/10分以上50g/10分以下、シャルピー衝撃強さ(−20℃)が5.0kJ/m2以上である線状ポリプロピレン系樹脂(A2)を10重量%以上90重量%以下含んでなる〔1〕または〔2〕に記載の射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物。
〔4〕 前記線状プロピレン系樹脂(A2)が、エチレン−プロピレンブロック共重合体である〔1〕〜〔3〕何れかに記載の射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物。
〔5〕 〔1〕〜〔4〕の何れかに記載の射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物を発泡してなる射出発泡成形体。
〔6〕 平均気泡径が500μm以下の発泡層と、該発泡層の少なくとも片側の表面に形成される厚み10μm以上1000μm以下の非発泡層とを有する、発泡倍率が2倍以上10倍以下であることを特徴とする〔5〕記載の射出発泡成形体。
【発明の効果】
【0013】
本発明の射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物は、溶融時の流動性が高く、且つ、メルトテンションも高いことにより、射出発泡成形性が良好である。線状ポリプロピレンとして、流動性が良好でかつ耐衝撃性が良好なポリプロピレン系樹脂を使用することで、成形性および発泡性を悪化させることなく、安価に耐衝撃性の優れた射出発泡成形体を提供できる。また、比較的高価な改質ポリプロピレン系樹脂を安価な線状ポリプロピレン系樹脂で希釈しているために、このような優れた品質の射出発泡成形体を安価に提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物の特徴は、特定のメルトフローレートおよびシャルピー衝撃強さをもつ線状ポリプロピレン系樹脂(A)と特定のメルトフローレートおよびメルトテンションを持ち、かつひずみ硬化性を有する改質ポリプロピレン系樹脂(B)を含んでなることにある。
【0015】
線状ポリプロピレン系樹脂(A)としては、メルトフローレートが10g/10分以上150g/10分以下、好ましくは15g/10分以上70g/10分以下であり、−20℃で測定したシャルピー衝撃強さ(−20℃)が4.5kJ/m2以上、好ましくは5.0kJ/m2以上を示すものである。メルトフローレートが10g/10分以上150g/10分以下の範囲であると、射出発泡成形体を製造する際に、金型キャビティのクリアランスが2mm以下の薄肉部分を有する成形においても比較的低圧力で溶融樹脂を金型内に充填することが可能であり、連続して安定した成形が行えるとともに、改質ポリプロピレン系樹脂(B)の分散性が良好であり、均一なセル構造を有する射出発泡成形体が得られる。また、シャルピー衝撃強さが上記範囲内であると、十分な耐衝撃性を有する射出発泡成形体が得られる。
【0016】
さらに線状ポリプロピレン系樹脂(A)としては、特定のメルトフローレートを有する線状ポリプロピレン系樹脂(A1)と、特定のメルトフローレートおよびシャルピー衝撃強さを有する線状ポリプロピレン系樹脂(A2)を含んでなることが好ましい。
【0017】
線状ポリプロピレン系樹脂(A1)は、好ましくはメルトフローレートが50g/10分以上300g/10分以下、より好ましくは60g/10分以上150g/10分以下を示すものである。
【0018】
線状ポリプロピレン系樹脂(A2)は、好ましくはメルトフローレートが1g/10分以上50g/10分以下、より好ましくは5g/10分以上40g/10分以下であり、さらに−20℃で測定したシャルピー衝撃強さ(−20℃)が好ましくは5.0kJ/m2以上、より好ましくは5.5kJ/m2以上を示すものである。
【0019】
線状ポリプロピレン系樹脂(A)は、線状ポリプロピレン系樹脂(A1)を10重量%以上90重量%以下、線状ポリプロピレン系樹脂(A2)を10重量%以上90重量%以下含んでなることが好ましく、より好ましくは、線状ポリプロピレン系樹脂(A1)を20重量%以上80重量%以下、線状ポリプロピレン系樹脂(A2)を20重量%以上80重量%以下含んでなる。線状ポリプロピレン系樹脂(A)が、前記範囲内の線状ポリプロピレン系樹脂(A1)、線状ポリプロピレン系樹脂(A2)を含んでなることで良好な流動性および耐衝撃性を示し、かつ改質ポリプロピレン系樹脂(B)との相溶性に優れた線状ポリプロピレン系樹脂がより安価にかつ容易に得ることができる。
【0020】
線状ポリプロピレン系樹脂(A1)と線状ポリプロピレン系樹脂(A2)の混合方法は特に限定はなく、公知の方法で行うことが出来、例えば、ペレット状の樹脂をブレンダー、ミキサー等を用いてドライブレンドする、溶融混合する、溶剤に溶解して混合する等の方法が挙げられる。本発明においてはドライブレンドした上で射出発泡成形に供する方法が、熱履歴が少なくて済み、メルトテンションの低下が少なくなる為好ましい。
【0021】
メルトフローレートとは、JIS K 7210(1999)に準拠し、230℃、2.16kg荷重下で測定したものを言い、シャルピー衝撃強さとは、JIS K 7111(1996)に準拠して、試験温度−20℃で測定したものを言う。またメルトテンションとは、メルトテンション測定用アタッチメントを付けたキャピログラフ(東洋精機製作所製)を使用して、230℃でφ1mm、長さ10mmの孔を有するダイスから、ピストン降下速度10mm/分で降下させたストランドを1m/分で引き取り、安定後に40m/分2で引き取り速度を増加させたとき、破断したときのロードセル付きプーリーの引き取り荷重を言う。
【0022】
ここでいう線状ポリプロピレン系樹脂とは、線状の分子構造を有しているポリプロピレン系樹脂であり、通常の重合方法、例えば担体に担持させた遷移金属化合物と有機金属化合物から得られる触媒系(例えばチーグラー・ナッタ触媒)の存在下の重合で得られる。具体的には、プロピレンの単独重合体、ブロック共重合体およびランダム共重合体であって、結晶性の重合体があげられる。プロピレンの共重合体としては、プロピレンを75重量%以上含有しているものが、ポリプロピレン系樹脂の特徴である結晶性、剛性、耐薬品性などが保持されている点で好ましい。
【0023】
共重合可能なα−オレフィンは、エチレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3,4−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンなどの炭素数2または4〜12のα−オレフィン、シクロペンテン、ノルボルネン、テトラシクロ[6,2,11,8,13,6]−4−ドデセンなどの環状オレフィン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエンなどのジエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどのビニル単量体などが挙げられる。これらのうち、エチレン、1−ブテンが耐寒脆性向上、安価等という点で好ましい。
【0024】
これら単量体を重合させた線状プロピレン系樹脂としては、具体的には、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体等挙げられるが、中でも、射出発泡成形体に耐衝撃性を付与しやすいという点から、プロピレン−エチレンブロック共重合体を使用することが好ましい。
【0025】
特に線状ポリプロピレン系樹脂(A2)はプロピレン−エチレンブロック共重合体を使用することが好ましく、エチレン含量は10重量%以上であることが好ましく、さらには15重量%以上であることが好ましい。エチレン含量が上記範囲にあるプロピレン−エチレンブロック共重合体を使用することで、射出発泡成形体の剛性を必要以上に低下させずに耐衝撃性を付与することが可能である。
【0026】
本発明で使用する改質ポリプロピレン系樹脂(B)は、メルトフローレートが0.1g/10分以上30g/10分以下、好ましくは0.3g/10分以上20g/10分以下であり、メルトテンションが5cN以上、好ましくは8cN以上で、かつ歪硬化性を示すものである。メルトフローレートが0.1g/10分以上30g/10分以下であると、線状ポリプロピレン系樹脂(A)への分散性が良好であり、金型面への転写性が良好である。また、メルトテンションが5cN以上の場合には、射出発泡成形時の溶融樹脂流動先端部で破泡しにくくシルバーストリークが発生しにくくなり、美麗な表面外観を有する2倍以上の均一微細な気泡の射出発泡成形体が得られる。
【0027】
また、改質ポリプロピレン系樹脂(B)が歪硬化性を示すことの効果は、射出発泡成形時の溶融樹脂流動先端部での破泡等に起因するシルバーストリークが出にくくなり表面外観が美麗になり易く、また発泡倍率2倍を超える高倍率の射出発泡成形体が得られ易くなることである。
【0028】
歪硬化性とは、溶融物の延伸歪みの増加に伴い粘度が上昇することとして定義され、通常は特開昭62−121704号公報に記載の方法、すなわち市販のレオメーターにより測定した伸長粘度と時間の関係をプロットすることで判定することができる。また、例えばメルトテンション測定時の溶融ストランドの破断挙動からも歪硬化性を判定できる。すなわち、引き取り速度を増加させたときに急激にメルトテンションが増加し、切断に至るときは歪硬化性を示す場合である。
【0029】
このような改質ポリプロピレン系樹脂(B)の製法としては、例えば、線状ポリプロピレン系樹脂に放射線を照射するか、または線状ポリプロピレン系樹脂、共役ジエン化合物、ラジカル重合開始剤を溶融混合するなどの方法が挙げられる。これらの方法によって得られた改質ポリプロピレン系樹脂は、分岐構造あるいは高分子量成分を含有する。これらの中で、本発明においては、線状ポリプロピレン樹脂、共役ジエン化合物、ラジカル重合開始剤を溶融混合して得られる改質ポリプロピレン系樹脂が、高価な設備を必要としないことにより安価に製造できる点から好ましい。この改質ポリプロピレン系樹脂(B)の製造に用いられる原料の線状ポリプロピレン系樹脂としては、前記線状ポリプロピレン系樹脂と同じものが例示できる。
【0030】
この改質ポリプロピレン系樹脂(B)の製造に使用する線状ポリプロピレン系樹脂は、メルトフローレートが5g/10分以上60g/10分以下であることが好ましい。当該範囲であると、メルトフローレートが0.1g/10分以上30g/10分以下の改質ポリプロピレン系樹脂が得やすい。
【0031】
前記共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ヘプタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2,5−ジメチル−2,4−ヘキサジエンなどがあげられるが、これらを単独または組み合わせ使用してもよい。これらの中では、ブタジエン、イソプレンが安価で取り扱いやすく、反応が均一に進みやすい点からとくに好ましい。
【0032】
前記共役ジエン化合物の添加量としては、線状ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上20重量部以下が好ましく、0.05重量部以上5重量部以下がさらに好ましい。0.01重量部未満では改質の効果が得られにくい場合があり、また20重量部を越える添加量においては効果が飽和してしまい、経済的でない場合がある。
【0033】
前記共役ジエン化合物と共重合可能な単量体、たとえば塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸金属塩、メタクリル酸金属塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリルなどのメタクリル酸エステルなどを併用してもよい。
【0034】
ラジカル重合開始剤としては、一般に過酸化物、アゾ化合物などが挙げられるが、ポリプロピレン系樹脂や前記共役ジエン化合物からの水素引き抜き能を有するものが好ましく、一般にケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステルなどの有機過酸化物が挙げられる。これらのうち、とくに水素引き抜き能が高いものが好ましく、たとえば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシンなどのジアルキルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレートなどのパーオキシエステルなどが挙げられる。これらは、1種または2種以上を併用して用いることが出来る。
【0035】
ラジカル重合開始剤の添加量としては、線状ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上10重量部以下が好ましく、0.05重量部以上2重量部以下がさらに好ましい。0.01重量部未満では改質の効果が得られにくい場合があり、また10重量部を越える添加量では、改質の効果が飽和してしまい経済的でない場合がある。
【0036】
線状ポリプロピレン系樹脂、共役ジエン化合物、ラジカル重合開始剤を反応させるための装置としては、ロール、コニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダー、単軸押出機、2軸押出機などの混練機、2軸表面更新機、2軸多円板装置などの横型撹拌機、ダブルヘリカルリボン撹拌機などの縦型撹拌機、などが挙げられる。これらのうち、混練機を使用することが好ましく、とくに押出機が生産性の点から好ましい。
【0037】
線状ポリプロピレン系樹脂、共役ジエン化合物、ラジカル重合開始剤を混合、混練(撹拌)する順序、方法にはとくに制限はない。線状ポリプロピレン系樹脂、共役ジエン化合物、ラジカル重合開始剤を混合したのち溶融混練(撹拌)してもよいし、ポリプロピレン系樹脂を溶融混練(撹拌)したのち、共役ジエン化合物あるいはラジカル開始剤を同時に、あるいは、別々に、一括してあるいは分割して混合してもよい。混練(撹拌)機の温度は130℃以上300℃以下が、線状ポリプロピレン系樹脂が溶融し、かつ熱分解しないという点で好ましい。またその時間は一般に1〜60分が好ましい。
【0038】
このようにして、本発明に用いる改質ポリプロピレン系樹脂(B)を製造することができる。改質ポリプロピレン系樹脂の形状、大きさに制限はなく、ペレット状でもよい。
【0039】
本発明の射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物は、線状ポリプロピレン樹脂(A)を50重量%以上95重量%以下、改質ポリプロピレン系樹脂(B)を5重量%以上50重量%以下含んでなり、好ましくは、線状ポリプロピレン樹脂(A)を55重量%以上90重量%以下、改質ポリプロピレン系樹脂(B)を10重量%以上45重量%以下含んでなる。
【0040】
上記配合量であると、均一微細な気泡を有する発泡倍率2倍以上の射出発泡成形体を安価に提供することが出来る射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物となる。
【0041】
本発明で用いる発泡剤は、化学発泡剤、物理発泡剤など射出発泡成形に通常使用できるものであればとくに制限はない。化学発泡剤は、分解して炭酸ガス等の気体を発生するものであり、前記樹脂と予め混合してから射出成形機に供給することができる。化学発泡剤としては、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等の無機系化学発泡剤や、アゾジカルボンアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等の有機系化学発泡剤があげられる。
【0042】
物理発泡剤は、成形機のシリンダ内の溶融樹脂にガス状または超臨界流体として注入され、分散または溶解されるもので、金型内に射出後、圧力開放されることによって発泡剤として機能するものである。物理発泡剤としては、プロパン、ブタン等の脂肪族炭化水素類、シクロブタン、シクロペンタン等の脂環式炭化水素類、クロロジフルオロメタン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類、窒素、炭酸ガス、空気等の無機ガスがあげられる。これらは単独または2種以上混合して使用してよい。
【0043】
これらの発泡剤の中では、通常の射出成形機が安全に使用でき、均一微細な気泡が得られやすいものとして、化学発泡剤としては、無機系化学発泡剤、物理発泡剤としては、窒素、炭酸ガス、空気等の無機ガスが好ましい。これらの発泡剤には、射出発泡成形体の気泡を安定的に均一微細にするために必要に応じて、例えばクエン酸のような有機酸等の発泡助剤やタルク、炭酸リチウムのような無機微粒子等の造核剤を添加してもよい。通常、上記無機系化学発泡剤は取扱性、貯蔵安定性、ポリプロピレン系樹脂への分散性の点から、10〜50重量%濃度のポリオレフィン系樹脂のマスターバッチを作製し、使用されることが好ましい。
【0044】
上記発泡剤の使用量は、得られる射出発泡成形体の発泡倍率と発泡剤の種類や成形時の樹脂温度によって適宜設定すればよい。例えば、通常無機系化学発泡剤の場合は、前記射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、好ましくは、0.5重量部以上20重量部以下、さらに好ましくは1重量部以上10重量部以下の範囲で使用される。この範囲で使用することにより、経済的に発泡倍率が2倍以上、且つ均一微細気泡の射出発泡成形体が得られやすい。
【0045】
本発明の射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物は、線状ポリプロピレン系樹脂(A)と改質ポリプロピレン系樹脂(B)を混合することで得ることが出来る。混合方法は特に限定はなく、公知の方法で行うことが出来、例えば、ペレット状の樹脂をブレンダー、ミキサー等を用いてドライブレンドする、溶融混合する、溶剤に溶解して混合する等の方法が挙げられる。本発明においてはドライブレンドした上で射出発泡成形に供する方法が、熱履歴が少なくて済み、メルトテンションの低下が少なくなる為好ましい。
【0046】
射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物は、射出成形機へ供給され、金型に射出して発泡成形に供される。発泡剤の添加方法については、予め、射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物に発泡剤をドライブレンドして、射出成形機に供給してもよいし、発泡剤以外の射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物を射出成形機に供給した後、発泡剤を添加してもよい。
【0047】
さらに必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、滑剤、ポリオレフィンワックス、等の流動性向上剤、熱可塑性エラストマー、ゴムなどの耐衝撃性改良剤、酸化防止剤、金属不活性剤、燐系加工安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光増白剤、金属石鹸、制酸吸着剤などの安定剤、架橋剤、連鎖移動剤、核剤、可塑剤、充填材、強化材、顔料、染料、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を併用してもよい。必要に応じて用いられるこれらの添加剤は、本発明の効果を損なわない範囲で使用されるのはもちろんであるが、本発明の射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上40重量部以下で使用される。
【0048】
以上のようにして得られる本発明の射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物は、発泡して射出発泡成形体とする。
【0049】
次に本発明の射出発泡成形体の製造方法について具体的に説明する。製造方法自体は公知の方法が適用でき、ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート、発泡剤の種類、成形機の種類あるいは金型の形状によって適宜成形条件を調整すればよい。通常、ポリプロピレン系樹脂の場合は樹脂温度170〜250℃、金型温度10〜100℃、成形サイクル1〜60分、射出速度10〜300mm/秒、射出圧10〜200MPa等の条件で行われる。また、金型内で発泡させる方法としては種々有るが、なかでも固定型と任意の位置に前進および後退が可能な可動型とから構成される金型を使用し、射出完了後、可動型を後退させて発泡させる、いわゆるコアバック法(Moving Cavity法)が、表面に非発泡層が形成され、内部の発泡層が均一微細気泡になりやすく、軽量性に優れ、耐衝撃性の良好な射出発泡成形体が得られやすいことから好ましい。可動型を後退させる方法としては、一段階で行ってもよいし、二段階以上の多段階で行ってもよく、各段階で可動型を停止させる工程を入れるあるいは連続的に速度を変えて後退させても良く、後退させる速度も適宜調整してもよい。
【0050】
また、予め金型内を不活性ガス等で圧力をかけながら射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物を金型内に導入するいわゆるカウンタープレッシャー法を併用することで、シルバーストリークに起因する表面外観不良を低減することが出来るため好ましい。
【0051】
このようにして得られる本発明の射出発泡成形体は、平均気泡径が好ましくは500μm以下、さらに好ましくは250μm以下の発泡層と、該発泡層の少なくとも片側の表面に形成される厚みが好ましくは10μm以上1000μm以下、さらに好ましくは100μm以上500μm以下の非発泡層とを有する。
【0052】
発泡層の平均気泡径が500μmを越える場合は優れた剛性が得られない場合がある。非発泡層の厚みが10μm未満では、剛性が低下する傾向があり、1000μmを越える場合は軽量性が得られにくい恐れがある。
【0053】
本発明の射出発泡成形体の発泡倍率は、好ましくは2倍以上10倍以下、さらに好ましくは2.5倍以上6倍以下である。発泡倍率が2倍未満では軽量性が得られ難く、10倍を越える場合には剛性の低下が著しくなる傾向がある。発泡倍率は、射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物から発泡剤を除いた樹脂組成物を、射出発泡成形体と同条件で射出成形して得られた非発泡の射出成形体との比重の比から得られた値である。
【実施例】
【0054】
以下に実施例によって本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。実施例および比較例において、各種の評価方法に用いられた試験法および判定基準は次の通りである。
【0055】
(1)ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR):JIS K 7210(1999)に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgで測定した。
【0056】
(2)メルトテンション:メルトテンション測定用アタッチメントを付けたキャピログラフ(東洋精機製作所製)を使用した。230℃でφ1mm、長さ10mmの孔を有するダイスから、ピストン降下速度10mm/分で降下させたストランドを1m/分で引き取り、安定後に40m/分2で引き取り速度を増加させたとき、破断したときのロードセル付きプーリーの引き取り荷重をメルトテンションとした。
【0057】
(3)歪硬化性:上記メルトテンション測定時、引き取り速度を増加させたときに急激に引き取り荷重が増加し、破断に至った場合を「歪硬化性を示す」、そうでない場合を「歪硬化性を示さない」とした。
【0058】
(4)シャルピー衝撃強さ:JIS K 7111(1996)に準拠して、試験温度−20℃で測定した(試験片サイズ:80×10×4、ノッチタイプ:A、打撃方向:エッジワイズ)。
【0059】
(5)射出発泡成形性:連続して20ショット成形したときにショートショットになった個数(不良個数)を求めて、次の3段階で評価した。
不良個数が0個・・・・・・・○
不良個数が1〜2個・・・・・△
不良個数が3個以上・・・・・×
【0060】
(6)発泡倍率:実施例で使用するポリプロピレン系樹脂組成物を、発泡剤を混合せずに実施例と同条件で射出成形して得られた非発泡の箱形状射出成形体の底面部の比重を実施例で得られた箱形状射出発泡成形体の底面部の比重で除することで求めた。
【0061】
(7)平均気泡径:箱形状の射出発泡成形体の底面部を厚み方向に切断した断面の顕微鏡写真より求めた。厚み方向中心線から上下1.0mmの範囲に含まれる気泡の内任意に選んだ20個の平均値とし、次の3段階で評価した
500μm以下・・・・・・○
500μmを超え、1000μm以下・・・△
1000μmを超える・・・×
【0062】
(8)耐衝撃性:JIS−K7211(1976)に準拠して試験片(箱形状の射出発泡成形体の底面部から4cm角試片を切り出したもの)の、試験温度−30℃における50%破壊エネルギーE50を求めた。得られた数値により次の3段階で評価した。
2.0J以上・・・・・・・・・◎
1.0J以上2.0J未満・・・○
1.0J未満・・・・・・・・・×
【0063】
(9)曲げ弾性勾配:得られた射出発泡成形体から、150mm×50mmの試験片を切り出し、23℃および50%RHの雰囲気中で、両端自由支持で支点間距離100mmの曲げ試験用冶具にセットし、支点間中心部に50mm/分の速度で荷重をかけていき、その荷重と歪の関係を示す曲線を得た。得られた荷重−歪曲線の加圧初期直線部分の歪量と曲げ荷重から、歪量1cm当りの曲げ荷重を算出し、曲げ弾性勾配とした。得られた数値により次の3段階で評価した。
110N/cm以上・・・・・・・・・・・・◎
100N/cm以上110N/cm未満・・・○
100N/cm未満・・・・・・・・・・・・△
【0064】
次に、実施例、比較例で使用したポリプロピレン系樹脂、発泡剤等の原料を以下に示す。
【0065】
(A)線状ポリプロピレン系樹脂
PP−1:サンアロマー社製PMD81M(プロピレン−エチレンブロック共重合体、MFR110g/10分、メルトテンション1cN以下、シャルピー衝撃強さ:3.4kJ/m2
PP−2:プロピレン−エチレンブロック共重合体、MFR28g/10分、メルトテンション1cN以下、シャルピー衝撃強さ:8.0kJ/m2
PP−3:プライムポリマー社製J708UG(プロピレン−エチレンブロック共重合体、MFR45g/10分、メルトテンション1cN以下、シャルピー衝撃強さ:4.1kJ/m2
【0066】
(B)改質ポリプロピレン系樹脂
MP−1:線状ポリプロピレン系樹脂として、MFR:45g/10分のプロピレン単独重合体100重量部と、ラジカル重合開始剤としてt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.7重量部の混合物を、ホッパーから50kg/時で45mmφ二軸押出機(L/D=40)に供給してシリンダ温度200℃で溶融混練し、途中に設けた圧入部よりイソプレンモノマーを、定量ポンプを用いて0.5kg/時の速度で供給し、ストランドを水冷、細断することにより得た改質ポリプロピレン系樹脂(MFR:7g/10分、メルトテンション12cN、歪硬化性を示す)
【0067】
(C)発泡剤
BA−1:化学発泡剤マスターバッチ(永和化成製ポリスレンEE275F、分解ガス量40ml/g)
【0068】
(実施例1)
線状ポリプロピレン系樹脂(A)、改質ポリプロピレン系樹脂(B)を表1に示す組成比でドライブレンドし、射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0069】
当該樹脂組成物100重量部に対して前記化学発泡剤BA−1を7.5重量部添加したものを宇部興産機械(株)製「MD350S−IIIDP型」(シャットオフノズル仕様)の射出成形機で、樹脂温度220℃、背圧15MPaで溶融混練した後、60℃に設定された、φ2mmのピンゲートを有し、固定型と前進および後退が可能な可動型とから構成される、縦330mm×横230mm×高さ100mmの箱形状のキャビティ(立壁部:傾斜10度、クリアランス3mm、底面部:クリアランスt0=1.5mm)を有する金型中に、射出速度100mm/秒で射出充填した。射出充填完了後に、底面部の発泡倍率が3倍になるように可動型を後退させて、キャビティ内の樹脂を発泡させた。発泡完了後60秒間冷却してから射出発泡成形体を取り出した。射出発泡成形性、得られた射出発泡成形体の物性を表2に示す。
【0070】
本発明の射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物は耐衝撃性に優れており、ゴム等の添加も必要なく、得られた射出発泡成形体は優れた耐衝撃性を発揮することが可能である。さらには、流動性および発泡性に優れていることから、射出充填時の金型キャビティ・クリアランスが2mm以下においても、ショートショット等の問題なく成形可能であり、また内部にボイド等の発生も無く、表面平滑性に優れ、気泡の微細な発泡倍率3倍(底面部)の箱形状の射出発泡成形体が得られた。
【0071】
(実施例2)
線状ポリプロピレン系樹脂として表1に示すものを使用する以外は、実施例1と同様にして射出発泡成形体を得た。得られた射出発泡成形体は表2に示す通り、実施例1に比べて曲げ弾性勾配が若干低いものの、耐衝撃性に優れ、表面平滑で微細気泡を有する発泡倍率3倍(底面部)のものであった。
【0072】
(実施例3)
線状ポリプロピレン系樹脂として表1に示すものを使用する以外は、実施例1と同様にして射出発泡成形体を得た。得られた射出発泡成形体は表2に示す通り、実施例1に比べて射出発泡成形性および曲げ弾性勾配が劣るが実用上問題ないレベルであり、耐衝撃性はより良好で、表面平滑で微細気泡を有する発泡倍率3倍(底面部)のものであった。
【0073】
(比較例1〜2)
線状ポリプロピレン系樹脂として表1に示すものを使用する以外は、実施例1と同様にして射出発泡成形体を得た。表2より得られた射出発泡成形体の耐衝撃性は低いものであった。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
(実施例4)
実施例1〜3で使用した射出成形機をベントタイプ仕様に変え、さらに旭エンジニアリング(株)製「炭酸ガス供給装置MAC−100」を用いて、ベント部分から発泡剤として二酸化炭素を圧力一定で供給できるようにした。
【0077】
表3に示す比率の線状ポリプロピレン系樹脂(A)と改質ポリプロピレン系樹脂(B)に発泡造核剤として前記化学発泡剤BA−1を0.5重量部加えたものをドライブレンドして得た射出発泡成形用ポリプロピレン系組成物を前記射出成形機に供給し、発泡剤として二酸化炭素を成形機ベント部分の圧力を1.5MPaにして供給した以外は実施例1〜4と同様にして射出発泡成形体を得た。射出発泡成形性、得られた射出発泡成形体の物性を表4に示す。
【0078】
【表3】

【0079】
【表4】

【0080】
本発明の射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物は耐衝撃性に優れており、ゴム等の添加も必要なく、得られた射出発泡成形体は優れた耐衝撃性を発揮することが可能である。さらには、流動性および発泡性に優れていることから、射出充填時の金型キャビティ・クリアランスが2mm以下においても、ショートショット等の問題なく成形可能であり、また内部にボイド等の発生も無く、表面平滑性に優れ、気泡の微細な発泡倍率3倍(底面部)の箱形状の射出発泡成形体が得られた。
【0081】
(実施例5)
線状ポリプロピレン系樹脂として表3に示すものを使用する以外は、実施例4と同様にして射出発泡成形体を得た。得られた射出発泡成形体は表4に示す通り、実施例4に比べて曲げ弾性勾配が若干低いものの、耐衝撃性に優れ、表面平滑で微細気泡を有する発泡倍率3倍(底面部)のものであった。
【0082】
(比較例3)
線状ポリプロピレン系樹脂としてPP−3のみを使用する以外は、実施例4と同様にして射出発泡成形体を得た。表2より、得られた射出発泡成形体の耐衝撃性は低いものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルトフローレートが10g/10分以上150g/10分以下、メルトテンションが2cN以下、シャルピー衝撃強さ(−20℃)が4.5kJ/m2以上である線状ポリプロピレン系樹脂(A)50重量%以上95重量%以下、メルトフローレートが0.1g/10分以上30g/10分以下、メルトテンションが5cN以上で、かつ歪硬化性を示す改質ポリプロピレン系樹脂(B)5重量%以上50重量%以下を含んでなる射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項2】
前記改質ポリプロピレン系樹脂(B)が、線状ポリプロピレン系樹脂、ラジカル重合開始剤、共役ジエン化合物を溶融混合して得られた改質ポリプロピレン系樹脂である請求項1記載の射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記線状ポリプロピレン系樹脂(A)が、メルトフローレートが50g/10分以上300g/10分以下、である線状ポリプロピレン系樹脂(A1)を10重量%以上90重量%以下、メルトフローレートが1g/10分以上50g/10分以下、シャルピー衝撃強さ(−20℃)が5.0kJ/m2以上である線状ポリプロピレン系樹脂(A2)を10重量%以上90重量%以下含んでなる請求項1または2に記載の射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項4】
前記線状プロピレン系樹脂(A2)が、エチレン−プロピレンブロック共重合体である請求項1〜3何れか一項に記載の射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物を発泡してなる射出発泡成形体。
【請求項6】
平均気泡径が500μm以下の発泡層と、該発泡層の少なくとも片側の表面に形成される厚み10μm以上1000μm以下の非発泡層とを有する、発泡倍率が2倍以上10倍以下であることを特徴とする請求項5記載の射出発泡成形体。

【公開番号】特開2010−241978(P2010−241978A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93051(P2009−93051)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】