説明

射出発泡成形装置及び射出発泡成形方法

【課題】 汎用的な射出成形機と3枚構造の金型を用いることにより、1回の成形動作で複数の発泡成形品を同時に成形できるので、生産効率が向上する。
【解決手段】 金型を開閉動作し型締力を負荷しさらに微小な型開き量を制御可能な型締装置と、型締装置の固定盤に取り付けられた固定型と可動盤に取り付けられた可動型と固定型と可動型の間に備え付けられた中間型とからなる3枚構造の金型と、固定型と中間型の間に形成されるキャビティ空間部Aおよび可動型と中間型の間に形成されるキャビティ空間部Bに連通するそれぞれの樹脂流路に設けられた樹脂流路遮断機構と、発泡性ガス成分を含む発泡性溶融樹脂を可塑化計量し金型のキャビティ空間部A内およびキャビティ空間部B内に射出充填することが可能な射出装置と、を備えた射出発泡成形装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、発泡性プラスチック製品を効率よく生産することができる射出成形機と金型の構造、および成形方法に関わる。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製品を成形する一般的な射出成形機、金型および成形工程について、図14を用いて説明する。
図14において、固定盤1には固定金型4が、可動盤2には可動金型5が取り付けられている。可動盤2は、図示せぬ型開閉装置によって動作し、金型の開閉や型締力の負荷が行われる。金型が閉じた状態で、固定金型4と可動金型5の間には空間であるキャビティ8が形成され、そこに溶融樹脂が射出充填されて、固化することにより、プラスチック製品を成形できる。固定金型4には溶融樹脂の流路であるランナー6が設けられ、キャビティ8に通じる接続部分はゲート7である。
【0003】
射出装置は、主にノズル12、バレル11、スクリュー15、射出シリンダー16、軸受けボックス19及び計量用電気モータ21から構成されており、図示せぬノズルタッチ機構によって、ノズル12の先端部が固定金型4の樹脂流入口に押し付けられている。ノズル12には、シャットオフバルブ13が設けられており、図示せぬ駆動装置により90°の回転動作を行って、溶融樹脂の通路を開閉することができる。ただし、シャットオフバルブ13の開閉を行なわない成形も可能であるし、またシャットオフバルブ13を設けないことも可能である。スクリュー15は、軸受けボックス19に回転自在に支持されるとともに計量用電気モータ21の回転軸と接続されて、バレル11の内部で回転運動が可能である。バレル11の周囲にはヒーターが巻かれており、樹脂が溶融するのに適した温度に制御されている。
そして、スクリュー15が回転すると、図示せぬホッパー口から入ってきた固体状の樹脂ペレットは、前方に移送されながらバレル11の内部で溶融し、スクリュー15の前部(ノズル12側)に貯留される。(この時スクリュー15は後退する。)
この状態で、射出シリンダー16のロッド側油室18に圧油が供給されると、軸受けボックス19、計量用電気モータ21及びスクリュー15が金型側に前進し、スクリュー15前方に貯留された溶融樹脂を、金型内に射出充填することが可能になっている。
軸受けボックス19には、位置センサー23が取り付けられ、スクリュー15のバレル11内での位置と速度を、精度良く測定できるようになっており、射出充填工程及び可塑化計量工程のフィードバック制御に用いられる。
【0004】
油圧供給源31は、電気モータにより回転する油圧ポンプや流量調整弁、圧力調整弁などから構成されており、所望の流量及び圧力の作動油を供給することができる。油圧供給源31から、射出前後進切替弁32を介して、射出シリンダー16のロッド側油室18及びヘッド側油室17へと回路接続され、射出前後進切替弁32を切替えることによりスクリュー15の前進及び後退が可能になっている。また、射出前後進切替弁32とロッド側油室18の間にはサーボ弁33が接続されており、ロッド室18に送り込む作動油の流量を微調整することにより、スクリュー15の前進速度さらには溶融樹脂の射出充填速度、圧力を微妙に制御可能となっている。サーボバルブ33はオイルタンクB35とも回路接続されているので、可塑化計量工程においては、ロッド側油室18からオイルタンクB35に流出する作動油の流量を調整し、スクリュー15が後退する際の抵抗(いわゆる背圧)を制御できるようになっている。さらに、射出前後進切替弁32はオイルタンクA34とも連絡しており、ヘッド側油室17またはロッド側油室18から出てくる作動油を、オイルタンクA34に戻すことができる。
【0005】
射出前後進切替弁32、計量用電気モータ21、位置センサー23などの機器は、図示せぬ射出成形機用のコントローラと電気的に接続されており、操作盤からオペレータにより入力された運転条件に基づいて、コントローラが射出成形機全体の動作制御を行なう。
【0006】
射出成形機の型締力は、金型キャビティの投影面積と金型内樹脂圧力との積より大きいことが必要である。そうでないと、射出充填中に金型が開いてバリが発生し、不良品を生産することになる。また、射出装置の容量は、1回の射出計量動作で溶融し貯留できる樹脂の体積が、金型キャビティの体積よりも大きい必要がある。
【0007】
成形工程では、まず金型を閉じて型締め力を負荷する型閉工程から始まり、その後スクリューが前進し溶融樹脂を金型キャビティ内に射出充填して樹脂圧力を保持する射出・保圧工程が行なわれる。続いて、樹脂を冷却固化させるための冷却工程、冷却工程と同時にスクリューが回転して固体状の樹脂ペレットをノズル側へ移送しながら溶融しスクリューの前部に貯留する可塑化計量工程が行なわれる。冷却工程が終わると、金型を開く型開工程、そして成形品を金型から取り外し機外に搬出する押出・取出工程が行われる。これらの工程で1回の成形サイクルをなす。
【0008】
このような射出成形機によってプラスチック製品を生産するにおいては、成形品の品質が良好で、かつ短時間で効率良く大量に生産することが肝要であり、そのため今までに多くの工夫がなされてきた。
例えば、特許文献1においては、1組の金型に複数のキャビティとその樹脂流路上にバルブゲート(樹脂流路遮断機構)を設け、バルブゲートを順番に開閉しながら各キャビティに溶融樹脂を射出充填し、1回の成形サイクルで複数の成形品を得る方法が開示されている。
【0009】
また、自動車の内装部品などに利用される柔軟性のあるプラスチック製品を得るため、発泡性溶融樹脂を用いた発泡成形が頻繁に行なわれる。特許文献2においては、発泡性溶融樹脂を金型キャビティ内に射出充填後、金型を低速で微少に開きキャビティ容積を徐々に拡大させて、樹脂の発泡膨張と柔軟化を促進する成形方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−155071号公報
【特許文献2】特開2002−283423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、生産性向上のため、複数の発泡成形品を1回の成形工程で成形できるよう、特許文献1の方法を適用してキャビティの数を増やすと、投影面積が増して金型が大きくなり、大きいサイズの型締装置が必要になるとともに型締力もアップする必要がある
本願発明は、汎用の射出成形機を用い、型締装置のサイズを大きくすることなく、1回の成形動作で複数の発泡成形品を得るための装置および方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上の課題を解決するために、本願の発明では、
金型を開閉動作し型締力を負荷しさらに微小な型開き量を制御可能な型締装置と、型締装置の固定盤に取り付けられた固定型と可動盤に取り付けられた可動型と固定型と可動型の間に備え付けられた中間型とからなる3枚構造の金型と、固定型と中間型の間に形成されるキャビティ空間部Aおよび可動型と中間型の間に形成されるキャビティ空間部Bに連通するそれぞれの樹脂流路に設けられた樹脂流路遮断機構と、発泡性ガス成分を含む発泡性溶融樹脂を可塑化計量し金型のキャビティ空間部A内およびキャビティ空間部B内に射出充填することが可能な射出装置と、を備えた射出発泡成形装置である。
前述の金型には、固定型と中間型の間あるいは中間型と可動型の間のどちらか一方の間には、開きを抑制するロック装置と開き量を制限する開き量制限装置が設けれ、他の一方の間には開き量を任意の位置で保持できる型開き量保持装置が設けられている。
【0013】
次に、前述の射出発泡成形装置を用いた射出発泡成形方法であって、固定型と中間型と可動型とを閉じて型締力を負荷し、双方の樹脂流路遮断機構を開き、キャビティ空間部A及びキャビティ空間部Bに発泡性溶融樹脂を同時に射出充填し、双方の樹脂流路遮断機構を閉じ、型締力を下げた後、キャビティ空間部Aを開いて発泡性溶融樹脂を発泡膨張させ、次にキャビティ空間部Aの開き量を保持しながらキャビティ空間部Bを開いて発泡性溶融樹脂を発泡膨張させる、射出発泡成形方法である。
また、固定型と中間型と可動型とを閉じて型締力を負荷し、キャビティ空間部Bに連通する樹脂流路遮断機構を開き、キャビティ空間部Bに発泡性溶融樹脂を射出充填し、キャビティ空間部Bに連通する樹脂流路遮断機構を閉じ、次にキャビティ空間部Aに連通する樹脂流路遮断機構を開き、キャビティ空間部Aに発泡性溶融樹脂を射出充填し、キャビティ空間部Aに連通する樹脂流路遮断機構を閉じ、型締力を下げた後、キャビティ空間部Aを開いて発泡性溶融樹脂を発泡膨張させ、次にキャビティ空間部Aの開き量を保持しながらキャビティ空間部Bを開いて発泡性溶融樹脂を発泡膨張させる、射出発泡成形方法である。
さらに、固定型と中間型と可動型とを閉じて型締力を負荷し、双方の樹脂流路遮断機構を開き、キャビティ空間部A及びキャビティ空間部Bに発泡性溶融樹脂を同時に射出充填し、双方の樹脂流路遮断機構を閉じ、型締力を下げた後一方のキャビティ空間部を開いて発泡性溶融樹脂を発泡膨張させ、他方のキャビティ空間部は発泡性溶融樹脂を発泡膨張させずに冷却固化し、1回の成形動作で発泡成形品と未発泡成形品を同時に成形する、射出発泡成形方法である。
最後に、前述の射出発泡成形方法であって、金型が開いた状態でキャビティ空間部A又はキャビティ空間部Bのどちらか一方あるいは両方の内部にインサート部品をインサート保持しておくことにより、1回の成形動作で、複数のインサート一体発泡成形品、インサート一体発泡成形品と発泡成形品または未発泡成形品を同時に成形する、射出発泡成形方法である。
【発明の効果】
【0014】
汎用の射出成形機に3枚構造の金型を取り付けるだけで、1回の成形サイクル動作にて複数個の発泡成形品の成形が可能となり、生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本願発明の第1の実施例に係る、成形の手順や金型の動きを示す図である。
【図2】本願発明の第2の実施例に係る、成形の手順や金型の動きを示す図である。
【図3】本願発明の第3の実施例に係る、成形の手順や金型の動きを示す図である。
【図4】本願発明の第4の実施例に係る、成形の手順や金型の動きを示す図である。
【図5】本願発明に係る金型を備えた型締装置において、型締め状態を示す図である。
【図6】本願発明に係る金型を備えた型締装置において、型開き状態を示す図である。
【図7】本願発明に係る金型の内部構造を示す図である。
【図8】本願発明に係る金型の外観を示す図である。
【図9】バルブゲートの構造を示す図である。
【図10】カプラー装置の構造を示す図である。
【図11】ロック装置の第1例を示す図である。
【図12】ロック装置の第2例を示す図である。
【図13】型開き量保持装置の構造を示す図である。
【図14】一般的な射出成形装置における、金型、型盤、射出装置および油圧回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る実施例を説明する。
【実施例1】
【0017】
まず、図5を用いて本願に係る金型が、型締装置に取り付けられている状態を説明する。図5の型締装置は、油圧駆動のトグル式型締装置である。固定盤1がマシンベース3上にキーを介して固定的に載置されている。可動盤2はマシンベース3上を金型の開閉方向に摺動移動可能な状態で載置される。固定盤1と可動盤2の間には、金型が取り付けられている。可動盤2の後方(図の左側)には、リンクハウジング43がマシンベース3上に載置されており、可動盤2との間にリンク機構44が備え付けられている。リンクハウジング43には、型締シリンダー41が固定されており、そのシリンダーロッド42の先端は、リンク機構44と連結している。固定盤1、可動盤2、リンクハウジング43の四隅には、タイバー45が4本貫通しており、片方の端部は固定ナット46を介して固定盤1に固定されている。また反対の端部はリンクハウジング43に可動ナット47を介して移動可能なように取り付けられており、金型の厚みの違いに対応できるようになっている。図示せぬ油圧装置から高圧作動油を型締シリンダー41のヘッド室に供給すると、シリンダーロッド42が伸びてリンク機構44を動作し、可動盤2を前進させ、金型が閉じた後に型締力を負荷することができる。
【0018】
金型は、固定型50、中間型51、可動型52からなる3枚構造となっている。金型の中間型51は、図6に示されているよう、円柱状の固定側ガイドロッド58および可動側ガイドロッド59によって、固定型50と可動型52に摺動可能な状態で支持され、3枚金型の開閉が可能となっている。また、金型には図8に示すよう、可動型52の両側面には、止めボルト55によって開き限装置54がそれぞれ2個取り付けられている。開き限装置54には、長穴56が長手方向に開けられており、その中に、中間型51に固定されているピン57が挿入されている。ピン57は、長穴56の内部を移動可能である。長穴56の長さは、可動型52と中間型51が開いた間から、成形品が取り出せる長さとなる。
図5の状態から型締シリンダー41のロッド室に高圧作動油が供給されると、シリンダーロッド42は引っ込み、リンク機構44を屈曲させ、可動プラテン2が後退して、図6に示すような型開き状態となる。
【0019】
ここでは、油圧駆動のトグル式型締装置を用いて説明したが、トグル式でなくても、直圧式や複合式の型締装置であっても良い。また、油圧駆動式でなくても、サーボモータとボールねじで動作する電動駆動式のものであっても良い。
【0020】
金型の内部構造を図7に示す。固定型50、中間型51、可動型52の3枚の型から構成され、固定型50には溶融樹脂の流入口が設けられており、そこに射出装置のノズル12の先端が押し付けられ、溶融樹脂が金型内に射出充填される。
【0021】
固定型50と中間型51の間には、溶融樹脂を充填する空間部であるキャビティA63が形成されており、樹脂流路遮断機構であるバルブゲートA62を介して、樹脂流路であるホットランナー61によって、流入口と接続されている。また、中間型51と可動型52の間には、キャビティB64が形成され、樹脂流路遮断機構であるバルブゲートB65を介し、樹脂流路であるホットランナー61によって、流入口と接続されている。ホットランナー61の周囲には、図示せぬヒーターと温度センサーが埋め込まれており、溶融樹脂が冷却固化せず流動可能なように制御されている。
【0022】
ホットランナー61の途中において溶融樹脂の流路を遮断するバルブゲート(62、65)について、図9を用いて詳細に説明する。樹脂流路は小径部からテーパ部を経て大径部が設けられている。大径部には、金型内に組み込まれた油圧式あるいはエアー式のシリンダーのピストン71と一体のロッド70が挿入されている。シリンダーのヘッド室72にヘッド側流路74を介して圧力が供給されると、ロッド70は突き出され先端のテーパ部が、樹脂流路のテーパ部と当接する。そのことにより、樹脂流路を閉塞し、溶融樹脂の流動を遮断することができる。また、ロッド側流路75を介してロッド室73に圧力が供給されると、バルブ部材70は引っ込み先端部には隙間ができて、溶融樹脂の流路が確保される。
【0023】
図7において、ホットランナー61(樹脂流路)が、固定型50から中間型51に繋がる部分には、カプラー装置60が組み込まれている。金型が開いている時はホットランナー61の開口部を塞ぎ樹脂が漏れ出ることを防ぎ、また金型が閉じている時は、ホットランナー61を連通し、溶融樹脂が流動可能なようになっている。
【0024】
カプラー装置60の詳細を図10に示す。上の図は、金型が開いた状態でホットランナー61が遮断され、溶融樹脂が漏れ出ない状態である。ホットランナー61の開口部には、突起部材82を一体で有する移動部材83が、摺動可能な状態で嵌め込まれている。移動部材83とホットランナー61の大径部との間には、圧縮状態のばね84が組み込まれている。移動部材83は、取り付けボルト81によって金型に取り付けられているカプラー押さえ80によって、押さえられている。移動部材83には、穴状樹脂流路85が円周方向に複数個設けられており、溶融樹脂の流動通路となる。また、弾力性を有した金属などからなるシール材86によって、溶融樹脂の漏れを確実に防止する。移動部材83の摺動部には、適宜パッキンが嵌め込まれている。
上の図の型開状態では、カプラー押さえ80の端面と移動部材83の端面は、ばね84の圧縮力によって押さえ付けられているため、穴状樹脂流路85の出口は塞がれており、ホットランナー61内の溶融樹脂は漏出しないようになっている。一方、下の図に示す型閉状態の場合、固定型50側の突起部材82と、中間型51側の突起部材82の端面が当接し、ばね84の圧縮力に抗して、移動部材83は、内側に押し込まれている。そのため、穴状樹脂流路85の出口は開放され、溶融樹脂の流路が確保される。よって、固定型50のホットランナー61内の溶融樹脂は、穴状樹脂流路85、突起部材の周囲、中間型51側の穴状樹脂流路85を通過して、中間型51のホットランナー61へと流入することができる。
【0025】
次に、中間型51と可動型52を閉状態で保持するロック装置53について、図11を用いて説明する。ロック装置53の主要部であるロックサポート90は、可動型52に固定されている。ロックサポート90には、油圧式あるいはエアー式のシリンダー92が取り付けられており、そのロッドの先端にはロック部材93が取り付けられている。一方、中間型51には、テーパ部を有する金型突起部91が固定されている。図示せぬ配管によって、シリンダー92のヘッド室に圧力が供給されると、ロッドとロック部材93は下側に下がり、金型突起部のテーパ部と当接し、上の図のようにロック状態となって、金型の開きは拘束される。また、シリンダー92のロッド室に圧力が供給されると、下の図のようにロック部材93は上側に上がり、金型突起部91との干渉がなくなるので、金型を自由に開くことが可能となる。
図12は、電磁駆動式のロック装置53を示す。ロックサポートには、電磁石96とばね97が取り付けられ、ロック部材と一体のロックヘッド95が上下に摺動可能に設けられている。上の図は、金型のロック状態を示し、電磁石96は通電されており、電磁力によりロックヘッドは下側に引き付けられ、ロック部材と金型突起部は当接している。電磁石96への通電が停止されると、電磁力は無くなるので、ばね力によってロックヘッド95およびロック部材は上側に押し上げられ、金型突起部との干渉が無くなり、金型を自由に開閉することができる。
【0026】
図13を用いて、固定型50と中間型51の間に取り付けられる型開き量保持装置100について説明する。中間型51には、ラック取り付けボルト102によってラック101が固定されている。固定型50には、保持装置ハウジング103が固定されており、内部には軸受けを介してピニオン軸105が回転自在に取り付けられている。ピニオン軸105の一端には、ピニオン104が結合されており、周囲の歯がラック101の歯と噛み合っている。ピニオン軸105の他端は、保持装置ハウジング103に取り付けられた電磁ブレーキ106の回転部とキーを介して連結している。電磁ブレーキ106は、電流を通電していない状態でブレーキが作動し、ピニオン軸105およびそれと結合するピニオン104の回転が拘束される。そして、ピニオン104とラック101が噛み合っていることにより、固定型50と中間型51の相対的な開閉動作が拘束されるため、型開き動作がロックされる。電磁ブレーキ106に通電すると、ブレーキは解除されるため、固定型50と中間型51の相対的な動作は拘束されず、型開き動作は自由となり、ロックは解除される。所望の型開き量の時、電磁ブレーキ106への通電を止めることにより、所望の開き量の状態を保持することができる。
【0027】
ここから、本願発明に関わる射出発泡成形方法について図1を用いて説明する。
発泡性溶融樹脂の可塑化計量が完了し金型が開いた状態から、型締シリンダー41を作動してリンク機構44および可動盤2を前進させ、型締力を負荷する。ロック装置53を作動して中間型51と可動型52をロックするとともに、型開き量保持装置100を作動させ固定型50と中間型51をロックする。
次に、バルブゲートA62とバルブゲートB65を開く。射出装置を駆動しスクリューを前進させて、発泡性溶融樹脂をキャビティA63およびキャビティB64に同時に射出充填する(射出A・B)。双方のキャビティに発泡性溶融樹脂がフル充填されると、バルブゲートA62とバルブゲートB65を閉じる。
【0028】
そして、まず、型開き量保持装置100のロックが解除され、型締装置によって固定型50と中間型51が所望の速度で開かれる(型開A→発泡A)。そして設定量開くと型開きは停止し、型開き量保持装置100が作動し、開き量を保持する。次に、ロック装置53が解除され、再度型締装置が作動し、所望の速度で中間型51と可動型52が開かれ(型開B→発泡B)、設定量開くと開き量を保持する。型を開く速度や型開き量は、キャビティの厚さや発泡膨張速度及び目標とする製品厚みなどによって決定されコントローラに設定されており、型締シリンダー41のロッド室に供給する作動油の流量やヘッド室から排出される作動油の流量を制御することにより、実現できる。型開き量を所望の量で保持することにより、発泡成形品の肉厚が正確に定まり、品質が良好に安定する。型開き量は、例えば自動車内装部品(ドアトリム)であれば、0.5〜5.0mmの範囲内で調整される。金型を微少に開き、キャビティ空間部を拡大することにより、発泡性溶融樹脂の中でガス成分の気泡が膨張し、内部に微細な気泡の集合体を有した発泡製品を得る。
その後、冷却工程が開始されるとともに、計量工程が開始される。計量工程では、発泡剤が混ぜられた樹脂ペレットがホッパー内に貯留された状態で、スクリューが回転され、樹脂ペレットがバレル内に導かれ、発泡性樹脂は溶融しながら前方へ移送する。キャビティ空間部容積に適応した所望の量の発泡性溶融樹脂が、スクリューヘッドの前部に貯留されると、可塑化計量が完了する。
【0029】
発泡性溶融樹脂が固化し、冷却工程が終了すると、型締シリンダー41のロッド室に作動油が供給され、リンク機構44および可動盤2が動作し金型が開かれる。この時、固定型50と中間型51の間の型開き量保持装置100はロック状態であるため、可動型52と中間型51の間だけが開くことになる。そして、中間型51に固定されているピン57が、可動型52に取り付いている開き限装置54の長穴56の端部近く(中間位置)まで移動すると、一旦型開き動作は停止する。そして、型開き量保持装置100をロック解除した後、再度金型が開かれる。可動型52と中間型51の開き量は、開き限装置54の長穴56によって規制されるので、それ以上は中間型51と固定型50の間が開くことになる。金型が押出し位置まで開くと、型開工程は終了する。そして、キャビティの片側面に貼り付いている製品を図示せぬ押出し装置により押し出して、機外に取り出し、1成形サイクルが終了する。その後、また次の成形サイクルが開始される。
【0030】
本実施例において、固定型50と中間型51の間のキャビティA63と、中間型51と可動型52の間のキャビティB64は、1個で説明したが、サイズの小さいキャビティをそれぞれ複数個並列に配置しても良い。
【実施例2】
【0031】
次に第2の実施例について、図2を用いて説明する。第2の実施例は、キャビティの大きさが異なる場合において、有効である。中間型と可動型の間のキャビティBは、固定型と中間型の間のキャビティAに比べて大きくなっている。金型が閉じた状態から、まず、中間型と可動型の間のキャビティBに通じる樹脂流路のバルブゲートBを開いて、キャビティBを充填(射出B)する。バルブゲートBを閉じた後に、続いてキャビティAに通じる樹脂流路のバルブゲートAを開いて、キャビティAを充填する(射出A)。充填が完了すると、バルブゲートAを閉じると伴に、型開き量保持装置のロックを解除して、固定型と中間型を所望の速度で開き(型開A→発泡A)、キャビティA内に充填された発泡樹脂を発泡させる。そして設定された量だけ型が開くと、型開き量保持装置をロックする。続いて、ロック装置のロックを解除し、中間型と可動型の間を所望の装度で開き(型開B→発泡B)、キャビティB内に充填された溶融樹脂を発泡させる。そして、所望の量だけ型が開くと、型締め装置を停止して、型開量を維持する。冷却が完了すると、型開き量保持装置のロックを解除し、型を開く。これ以降の動作は、第1の実施例と同じである。キャビティBの容積の方が大きく、発泡性溶融樹脂の持つ熱量も多く冷えにくいので、この場合、キャビティAを先に開き、発泡膨張させる。
【実施例3】
【0032】
第3の実施例について、図3を参照しながら説明する。第3の実施例は、発泡成形品と未発泡成形品を組み合わせて、1回の成形動作で成形する方法である。固定型と中間型の間に未発泡成形品を成形するキャビティAを形成し、一方中間型と可動型の間には発泡成形品を成形するキャビティBを形成する。まず、キャビティAに溶融樹脂を充填し(射出A)、続いてキャビティBに充填する(射出B)。充填が完了すると、ロック装置のロックを解除し、型締装置を駆動してキャビティBを所望の速度で開き(型開B→発泡B)、発泡性溶融樹脂を発泡膨張させる。そして、設定の型開き量に到達すると、開き量を維持し、発泡性溶融樹脂が冷却固化するのを待つ。キャビティA内の発泡性溶融樹脂は、充填後型が完全に閉じた状態で冷却されるので、内部が詰まった強度の高い通常の樹脂成形品となる。冷却時間が完了すると、実施例1の要領で型締装置を開き、発泡成形品と未発泡成形品を取り出す。このような方法を用いると、1回の成形動作で内部に微細な気泡を有した発泡成形品と強度の高い未発泡成形品を、同時に得ることができるという効果がある。例えば、発泡成形品は自動車内装品のドアトリム本体として使用し、未発泡成形品は周囲の取り付け部品として使用できる。
【実施例4】
【0033】
最後に、第4の実施例について、図4を用いて説明する。第4の実施例では、金型が開いた状態において、キャビティ内にインサート部品、例えばフィルム状の表皮加飾成形材料や、金属製の取付部品などを予め挿入保持しておき、金型を閉じる。その後は実施例1と同じように成形することで、インサート部品と発泡性溶融樹脂とが一体で成形され、外観の優れた発泡成形品を得ることができ、あるいはインサート部品が一体化され後工程での組み付けが不要な成形品を得ることができるという効果がある。インサート部品は、キャビティBのみ、キャビティAのみ、または、両方のキャビティに挿入保持させておくことができる。
【0034】
以上説明したような、射出発泡成形装置を用いて射出発泡成形方法を行なうことにより、汎用の成形機を用いて、発泡成形品を効率よく安定的に成形することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
プラスチック製品を成形する製造工場において実用可能であり、発泡樹脂成形品の生産性の向上に貢献できる。
【符号の説明】
【0036】
1 固定盤
2 可動盤
3 マシンベース
4 固定金型
5 可動金型
6 ランナー
7 ゲート
8 キャビティ
11 バレル
12 ノズル
13 シャットオフバルブ
15 スクリュー
16 射出シリンダー
17 ヘッド側油室
18 ロッド側油室
19 軸受けボックス
21 計量用電気モータ
23 位置センサー
31 油圧供給源
32 射出前後進切替弁
33 サーボ弁
34 オイルタンクA
35 オイルタンクB
41 型締シリンダー
42 シリンダーロッド
43 リンクハウジング
44 リンク機構
45 タイバー
46 固定ナット
47 可動ナット
50 固定型
51 中間型
52 可動型
53 ロック装置
54 開き限装置
55 止めボルト
56 長穴
57 ピン
58 固定側ガイドロッド
59 可動側ガイドロッド
60 カプラー装置
61 ホットランナー
62 バルブゲートa
63 キャビティa
64 キャビティb
65 バルブゲートb
70 バルブ部材
71 ピストン
72 ヘッド室
73 ロッド室
74 ヘッド側流路
75 ロッド側流路
80 カプラー押さえ
81 取り付けボルト
82 突起部材
83 移動部材
84 ばね
85 穴状樹脂流路
86 シール材
90 ロックサポート
91 金型突起部
92 シリンダー
93 ロック部材
95 ロックヘッド
96 電磁石
97 ばね
100 型開き量保持装置
101 ラック
102 ラック取り付けボルト
103 保持装置ハウジング
104 ピニオン
105 ピニオン軸
106 電磁ブレーキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型を開閉動作し、型締力を負荷し、さらに微小な型開き量を制御可能な型締装置と、
前記型締装置の固定盤に取り付けられた固定型と、可動盤に取り付けられた可動型と、前記固定型と前記可動型の間に備え付けられた中間型と、からなる3枚構造の金型と、
前記固定型と前記中間型の間に形成されるキャビティ空間部A、および前記可動型と前記中間型の間に形成されるキャビティ空間部B、に連通するそれぞれの樹脂流路に設けられた樹脂流路遮断機構と、
発泡性ガス成分を含む発泡性溶融樹脂を可塑化計量し、前記金型のキャビティ空間部A内およびキャビティ空間部B内に射出充填することが可能な射出装置と、
を備えたことを特徴とする射出発泡成形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の射出発泡成形装置において、
前記金型には、前記固定型と前記中間型の間あるいは前記中間型と前記可動型の間のどちらか一方の間には、開きを抑制するロック装置と開き量を制限する開き量制限装置が設けれ、他の一方の間には開き量を任意の位置で保持できる型開き量保持装置が設けられている、
ことを特徴とする射出発泡成形装置。
【請求項3】
請求項1および2に記載の射出発泡成形装置を用いた射出発泡成形方法であって、
前記固定型と前記中間型と前記可動型とを閉じて型締力を負荷し、
双方の樹脂流路遮断機構を開き、
キャビティ空間部A及びキャビティ空間部Bに発泡性溶融樹脂を同時に射出充填し、
双方の樹脂流路遮断機構を閉じ、
型締力を下げた後、キャビティ空間部Aを開いて発泡性溶融樹脂を発泡膨張させ、
次にキャビティ空間部Aの開き量を保持しながらキャビティ空間部Bを開いて発泡性溶融樹脂を発泡膨張させる、
ことを特徴とする射出発泡成形方法。
【請求項4】
請求項1および2に記載の射出発泡成形装置を用いた射出発泡成形方法であって、
前記固定型と前記中間型と前記可動型とを閉じて型締力を負荷し、
キャビティ空間部Bに連通する樹脂流路遮断機構を開き、
キャビティ空間部Bに発泡性溶融樹脂を射出充填し、
キャビティ空間部Bに連通する樹脂流路遮断機構を閉じ、
次にキャビティ空間部Aに連通する樹脂流路遮断機構を開き、
キャビティ空間部Aに発泡性溶融樹脂を射出充填し、
キャビティ空間部Aに連通する樹脂流路遮断機構を閉じ、
型締力を下げた後、キャビティ空間部Aを開いて発泡性溶融樹脂を発泡膨張させ、
次にキャビティ空間部Aの開き量を保持しながらキャビティ空間部Bを開いて発泡性溶融樹脂を発泡膨張させる、
ことを特徴とする射出発泡成形方法。
【請求項5】
請求項1および2に記載の射出発泡成形装置を用いた射出発泡成形方法であって、
前記固定型と前記中間型と前記可動型とを閉じて型締力を負荷し、
双方の樹脂流路遮断機構を開き、
キャビティ空間部A及びキャビティ空間部Bに発泡性溶融樹脂を同時に射出充填し、
双方の樹脂流路遮断機構を閉じ、
型締力を下げた後、一方のキャビティ空間部を開いて発泡性溶融樹脂を発泡膨張させ、
他方のキャビティ空間部は発泡性溶融樹脂を発泡膨張させずに冷却固化し、
1回の成形動作で発泡成形品と未発泡成形品を同時に成形する、
ことを特徴とする射出発泡成形方法。
【請求項6】
請求項3から5に記載の射出発泡成形方法であって、
前記金型が開いた状態で、前記キャビティ空間部A又は前記キャビティ空間部Bのどちらか一方あるいは両方の内部に、インサート部品をインサート保持しておくことにより、
1回の成形動作で、複数のインサート一体発泡成形品、インサート一体発泡成形品と発泡成形品または未発泡成形品、を同時に成形する、
ことを特徴とする射出発泡成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−104834(P2011−104834A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260973(P2009−260973)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】