説明

射撃訓練システム

【課題】レーザ光を照射方向に効率的に反射する再帰性反射材を使用することにより、努めて軽量化、受光部分の電力消費の零化、操用性の向上、調達時の経済効果が格段に向上する射撃訓練システムを提供する。
【解決手段】レーザ光が送信されると共に前記レーザ光の反射光が受信され、情報が無線系を介して統制装置14に送信されるレーザ送受信装置15と、レーザ送受信装置15から送信されたレーザ光を照射方向に反射する再帰性反射材17が設けられると共に被弾したことを現示する表示手段が設けられ、情報が無線系を介して統制装置14に送信される人員受信装置16または訓練用標的装置13と、レーザ送受信装置15からの情報及び人員受信装置16または訓練用標的装置13からの情報が無線系を介して受信される統制装置14とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実弾を使用しない射撃訓練において、実弾を模擬したレーザ光を利用して射撃の命中判定をリアルタイムに収集・把握する射撃訓練システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、射撃訓練を行う場合は、人間または標的装置にレーザ光を検知する受光素子をレーザ光の広がりに応じて複数配置するのが一般的であった。従来の方法によれば、例えば、人間に受光素子を配置する場合、全周からの射撃訓練を可能とするために、頭部、胴体前部・後部、肩等の各部に配置する必要があった。
【0003】
このため、従来の方法では、受光素子の複数化に伴い、受光装置としての構成要素の増大化、消費電力の増加によるバッテリの大型化、質量増加に伴う操用性の悪化、劣悪な使用環境による耐久性の悪化、経済性(装置調達性)の悪化をもたらすこととなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−071897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、レーザ光を照射方向に効率的に反射する再帰性反射材を使用することにより、努めて軽量化、受光部分の電力消費の零化、操用性の向上、調達時の経済効果などが格段に向上する射撃訓練システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の射撃訓練システムは、レーザ光が送信されると共に前記レーザ光の反射光が受信され、情報が無線系を介して統制装置に送信されるレーザ送受信装置と、前記レーザ送受信装置から送信されたレーザ光を照射方向に反射する再帰性反射材が設けられると共に被弾したことを現示する表示手段が設けられ、情報が無線系を介して統制装置に送信される人員受信装置または訓練用標的装置と、前記レーザ送受信装置からの情報及び前記人員受信装置または訓練用標的装置からの情報が無線系を介して受信される統制装置とを具備することを特徴とするものである。
【0007】
また本発明は、前記射撃訓練システムにおいて、レーザ送受信装置として、模擬銃に設けられオン/オフ信号を出力する引金センサ、または実銃に設けられ空砲時の衝撃信号を出力する衝撃センサと、前記引金センサからのオン/オフ信号または前記衝撃センサからの衝撃信号が入力され、レーザ光を送信させるレーザ駆動回路と、前記レーザ光の反射光が受信され、電気信号に変換される受光回路と、前記受光回路からの電気信号が入力され、所定の閾値と比較され命中判定信号が出力される受信回路と、前記受光回路からの電気信号が基準パルスと比較され距離情報が出力される測距回路と、前記模擬銃または実銃の銃身方向を検知する角度信号が出力される火器方向検知センサと、前記模擬銃または実銃の位置情報を出力するGPS受信機と、前記命中判定信号、距離情報、角度信号、及び位置情報を統制装置に送信する無線機とを具備するレーザ送受信装置を用いることを特徴とするものである。
【0008】
また本発明は、前記射撃訓練システムにおいて、人員受信装置として、人員受信装置の外皮部に設けられ、レーザ光を照射方向に反射する再帰性反射材と、人員受信装置の位置情報を出力するGPS受信機と、前記GPS受信機から出力された位置情報を統制装置に送信すると共に統制装置からの命中情報を受信する無線機と、前記無線機で受信した命中情報に基づいて被弾したことを現示する表示手段とを具備する人員受信装置を用いることを特徴とするものである。
【0009】
また本発明は、前記射撃訓練システムにおいて、訓練用標的装置として、訓練用標的装置の標的面に設けられ、レーザ光を照射方向に反射する再帰性反射材と、前記標的面を隠顕動作するための駆動機構と、訓練用標的装置の位置情報を出力するGPS受信機と、前記GPS受信機から出力された位置情報を統制装置に送信すると共に統制装置からの命中情報を受信する無線機と、前記無線機で受信した命中情報に基づいて被弾したことを現示する表示手段とを具備する訓練用標的装置を用いることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の射撃訓練システムは、人員受信装置または訓練用標的装置にレーザ光を照射方向に効率的に反射する再帰性反射材を設けることにより、従来からの複数受光素子による受信回路を必要とせず対抗訓練および標的装置を使用した射撃訓練を実施することが可能となり、レーザ受信回路に必要とされるコストを大幅に削減することが可能となり、経済性(装置調達性)の向上が期待できる。
【0011】
また、レーザ受信回路が削減されることにより、操用性の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る射撃訓練システムを示すシステム系統図である。
【図2】本発明の実施形態に係るレーザ送受信装置を示す構成説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係る人員受信装置を示す構成説明図である。
【図4】本発明の実施形態に係る訓練用標的装置を示す構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明の実施形態に係る射撃訓練システムを示すシステム系統図である。図1において、11は訓練者A、12は訓練者B、13は訓練用標的装置、14は統制装置、15はレーザ送受信装置、16は人員受信装置、17は再帰性反射材、18は実銃または模擬銃である。
【0015】
図1に示すように、11の訓練者Aは実銃または模擬銃18を携帯し、実銃または模擬銃18にはレーザ送受信装置15が設けられる。12の訓練者Bは人員受信装置16を装着し、人員受信装置16の外皮部及び訓練用標的装置13の標的面にはそれぞれレーザ光を照射方向に効率的に反射する再帰性反射材17が設けられる。再帰性反射材17はビーズタイプ、プリズムタイプなどが既に実用化されている。人員受信装置16に設けられる再帰性反射材17は人間の頭部、胴体部の形状に合わせて貼り付け、人間の全周、全方向をカバーする反射装置を構成する。また、訓練用標的装置13に設けられる再帰性反射材17は標的面部分の形状に合わせて貼り付ける。
【0016】
すなわち、11の訓練者Aが携帯する実銃または模擬銃18に設けられたレーザ送受信装置15から送信されるレーザ光は、12の訓練者Bの人員受信装置16又は訓練用標的装置13の再帰性反射材17で反射され、前記レーザ光の反射光が送信元のレーザ送受信装置15に戻って受信される。
【0017】
レーザ送受信装置15は受信したレーザ光に基づいて目標に命中したことを判定する処理をして命中判定信号を出力すると共に目標までの距離情報を算出し、命中判定信号及び距離情報を無線系を介して統制装置14に送信する。さらに、レーザ送受信装置15は銃の射撃方向である角度信号及び自身の位置情報を無線系を介して統制装置14に送信する。また、人員受信装置16及び訓練用標的装置13はそれぞれ自身の位置情報を無線系を介して統制装置14に送信する。
【0018】
統制装置14は、レーザ送受信装置15からの命中判定信号、距離情報、角度信号、位置情報と、人員受信装置16及び訓練用標的装置13からの位置情報を受信し、これらの情報から、11の訓練者Aが射撃し命中した目標を判定し、命中した12の訓練者B又は訓練用標的装置13に対して命中情報(被弾結果情報)を無線系を介して送信する。
【0019】
12の訓練者Bの人員受信装置16又は訓練用標的装置13には、被弾したことを現示する表示手段が設けられ、統制装置14からの命中情報をもとに、被弾したことを現示するためブザー鳴動、発光器による点灯動作を行う。
【0020】
図2は本発明の実施形態に係るレーザ送受信装置を示す構成説明図である。図2において、21は無線機、22はGPS受信機、23は火器方向検知センサ、24は制御回路、25は引金センサ、26は衝撃センサ、27はレーザ駆動回路、28は光学系、29は受光回路、30は受信回路、31は測距回路、32はバッテリである。
【0021】
図2に示すように、引金センサ25は模擬銃18に設けられ、模擬銃18の引金を引くとオン、放すとオフのオン/オフ信号を制御回路24に出力する。また、衝撃センサ26は実銃18に設けられ、実銃18を使用した空砲訓練の空砲時の衝撃を検知して衝撃信号を制御回路24に出力する。
【0022】
制御回路24は、引金センサ25からのオン/オフ信号または衝撃センサ26からの衝撃信号をもとにレーザ出力パルス信号を生成してレーザ駆動回路27に出力する。レーザ駆動回路27は制御回路24からのレーザ出力パルス信号が入力され、光学系28に内蔵されたレーザダイオードを駆動するための信号を生成し光学系28に出力する。光学系28はレーザ駆動回路27からの駆動信号が入力され、レーザダイオードからレーザ光を発生し、発生させたレーザ光を一定幅に集光し外部に出力する。
【0023】
レーザ光の目標(11の訓練者Bに装着された人員受信装置16又は訓練用標的装置13の再帰性反射材17)からの反射光は受光回路29で受信され、電気信号に変換されて受信回路30に出力される。受信回路30に入力された電気信号は所定の閾値と比較され命中判定信号として制御回路24に出力されると共に、受信回路30に入力された電気信号は測距回路31に出力され、測距回路31において、受信回路30から入力された電気信号が制御回路24から入力された基準パルス(引金センサ25がオン又は衝撃センサ26がオンの時に発生するパルス)と比較され、距離情報が生成されて制御回路24に出力される。
【0024】
GPS受信機22はレーザ送受信装置15が設けられた実銃または模擬銃18(11の訓練者A)の位置情報をリアルタイムに制御回路24に出力する。
【0025】
火器方向検知センサ23は方位センサ、ジャイロ等から構成され、レーザ送受信装置15が設けられた実銃または模擬銃18の銃身方向を検知する角度信号を生成して制御回路24に出力する。
【0026】
制御回路24は前記命中判定信号、距離情報、位置情報、及び角度信号を無線機21を介して統制装置14に送信すると共に、無線機21と統制装置14の間で情報の交換が行われる。レーザ送受信装置15はバッテリ32を電源として動作可能である。
【0027】
図3は本発明の実施形態に係る人員受信装置を示す構成説明図である。図3において、41は無線機、42はGPS受信機、43は制御回路、44はブザー、45は発光器、46はバッテリである。
【0028】
図3に示すように、レーザ光を照射方向に効率的に反射する再帰性反射材17は人員受信装置16の外皮部に設けられる。
【0029】
GPS受信機42は人員受信装置16(12の訓練者B)の位置情報をリアルタイムに制御回路43に出力する。制御回路43は位置情報を無線機41を介して統制装置14に送信すると共に、無線機41と統制装置14の間で情報の交換が行われる。
【0030】
無線機41は統制装置14から命中情報を受信して制御回路43に出力する。制御回路43は命中情報に基づいて被弾したことを現示する表示手段、例えば発光器45による点灯、ブザー44による鳴動を行う。人員受信装置16はバッテリ46を電源として動作可能である。
【0031】
図4は本発明の実施形態に係る訓練用標的装置を示す構成説明図である。図4において、51は無線機、52はGPS受信機、53は制御回路、54はブザー、55は発光器、56は駆動機構、57はバッテリである。
【0032】
図4において、レーザ光を照射方向に効率的に反射する再帰性反射材17は訓練用標的装置13の標的面に設けられる。
【0033】
GPS受信機52は訓練用標的装置13の位置情報をリアルタイムに制御回路53に出力する。制御回路53は位置情報を無線機51を介して統制装置14に送信すると共に、無線機51と統制装置14の間で情報の交換が行われる。
【0034】
無線機51は統制装置14から命中情報を受信して制御回路53に出力する。制御回路53は命中情報に基づいて被弾したことを現示する表示手段、例えば発光器55による点灯、ブザー54による鳴動を行う。
【0035】
また、無線機51は統制装置14から駆動情報を受信して制御回路53に出力する。制御回路53は駆動情報に基づいて駆動信号を生成して駆動機構56に出力し、駆動機構56は駆動信号に基づいて訓練用標的装置13の標的面を駆動して隠顕動作を行う。
【0036】
訓練用標的装置13は、バッテリ57又はAC100Vの何れの電源でも動作可能である。
【0037】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0038】
11…訓練者A、12…訓練者B、13…訓練用標的装置、14…統制装置、15…レーザ送受信装置、16…人員受信装置、17…再帰性反射材、18…実銃または模擬銃、21…無線機、22…GPS受信機、23…火器方向検知センサ、24…制御回路、25…引金センサ、26…衝撃センサ、27…レーザ駆動回路、28…光学系、29…受光回路、30…受信回路、31…測距回路、32…バッテリ、41…無線機、42…GPS受信機、43…制御回路、44…ブザー、45…発光器、46…バッテリ、51…無線機、52…GPS受信機、53…制御回路、54…ブザー、55…発光器、56…駆動機構、57…バッテリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光が送信されると共に前記レーザ光の反射光が受信され、情報が無線系を介して統制装置に送信されるレーザ送受信装置と、
前記レーザ送受信装置から送信されたレーザ光を照射方向に反射する再帰性反射材が設けられると共に被弾したことを現示する表示手段が設けられ、情報が無線系を介して統制装置に送信される人員受信装置または訓練用標的装置と、
前記レーザ送受信装置からの情報及び前記人員受信装置または訓練用標的装置からの情報が無線系を介して受信される統制装置と
を具備することを特徴とする射撃訓練システム。
【請求項2】
レーザ送受信装置として、
模擬銃に設けられオン/オフ信号を出力する引金センサ、または実銃に設けられ空砲時の衝撃信号を出力する衝撃センサと、
前記引金センサからのオン/オフ信号または前記衝撃センサからの衝撃信号が入力され、レーザ光を送信させるレーザ駆動回路と、
前記レーザ光の反射光が受信され、電気信号に変換される受光回路と、
前記受光回路からの電気信号が入力され、所定の閾値と比較され命中判定信号が出力される受信回路と、
前記受光回路からの電気信号が基準パルスと比較され距離情報が出力される測距回路と、
前記模擬銃または実銃の銃身方向を検知する角度信号が出力される火器方向検知センサと、
前記模擬銃または実銃の位置情報を出力するGPS受信機と、
前記命中判定信号、距離情報、角度信号、及び位置情報を統制装置に送信する無線機と
を具備するレーザ送受信装置を用いることを特徴とする請求項1に記載の射撃訓練システム。
【請求項3】
人員受信装置として、
人員受信装置の外皮部に設けられ、レーザ光を照射方向に反射する再帰性反射材と、
人員受信装置の位置情報を出力するGPS受信機と、
前記GPS受信機から出力された位置情報を統制装置に送信すると共に統制装置からの命中情報を受信する無線機と、
前記無線機で受信した命中情報に基づいて被弾したことを現示する表示手段と
を具備する人員受信装置を用いることを特徴とする請求項1に記載の射撃訓練システム。
【請求項4】
訓練用標的装置として、
訓練用標的装置の標的面に設けられ、レーザ光を照射方向に反射する再帰性反射材と、
前記標的面を隠顕動作するための駆動機構と、
訓練用標的装置の位置情報を出力するGPS受信機と、
前記GPS受信機から出力された位置情報を統制装置に送信すると共に統制装置からの命中情報を受信する無線機と、
前記無線機で受信した命中情報に基づいて被弾したことを現示する表示手段と
を具備する訓練用標的装置を用いることを特徴とする請求項1に記載の射撃訓練システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−175114(P2010−175114A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16883(P2009−16883)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000221155)東芝電波プロダクツ株式会社 (62)
【Fターム(参考)】