説明

射撃訓練システム

【課題】 動きを伴う自由度の高い標的を画面表示することができ、容易に設置できる射撃訓練システムを提供する。
【解決手段】 標的画像を含む画像情報を生成する生成部と、生成部から供給される画像情報に基いて、標的画像を画面に表示する表示部と、表示部の画面にレーザを発射する発射部と、表示部の画面を撮像するカメラ部と、カメラ部からの画面の撮像情報の輝度分布に基き、画面上にレーザ発射部が発射したレーザの位置を検出して標的画像に命中したか否かを判定する判定部をもつ射撃訓練システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、標的に対し射撃を行い着弾状況を判定する射撃訓練システムに関し、特に標的画像を表示する画面にレーザを照射する射撃訓練システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、射撃のシミュレーションを行うための装置として、いくつかのタイプの射撃訓練装置が知られている。その一つとして、レーザ光を発射するレーザ銃を用いて射撃のシミュレーションを行うための装置がある。
特許文献1(特開2006−97942公報)は、レーザ光を発射するレーザ銃を用意し、レーザ光を検知する標的板を設け、その標的板にレーザ光線が命中すると、被弾状態を報告する標的装置を開示している。
【0003】
このような標的装置によれば、実弾の代わりにレーザ銃を利用することで、実弾を浪費することなく、しかもレーザ光は拡散が非常に少ないので、実弾を発砲した場合に近い射撃訓練を行うことができる。また、標的を自走する機構をもたせることで、可動物を標的にした射撃訓練を行うことができる。
【0004】
【特許文献1】特開2006−97942公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の従来技術では、標的を搬送台車を介してレールの上で自走させる等の、標的を自走させるために複雑な機械的構成をもつことになるため、コスト高、設置の労力、故障の原因ともなっている。
本発明は、容易に設置でき、動きや移動を伴う自由度の高い標的を対象に射撃訓練をすることができる射撃訓練システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
課題を解決するための一実施形態は、
標的画像を含む画像情報を生成する生成部(18)と、
前記生成部から供給される画像情報の輝度分布に基いて、前記標的画像を画面に表示する表示部(22)と、
前記表示部の画面にレーザを発射する発射部(30)と、
前記表示部の画面を撮像するカメラ部(17)と、
前記カメラ部からの前記画面の撮像情報の輝度分布に基き、前記画面上に前記レーザ発射部が発射したレーザの位置を検出して標的画像に命中したか否かを判定する判定部(11,14)と、を具備することを特徴とする射撃訓練システムである。
【発明の効果】
【0007】
画面に表示した標的にレーザ光を照射し、標的とレーザ光の両方を画面ごとカメラで撮像するので、標的にセンサを設ける必要が無い。このため、容易に設置でき、動きや移動を伴う自由度の高い標的を対象に射撃訓練を行うことができる射撃訓練システムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る射撃訓練システムの構成の一例を示す構成図、図2は、同じく射撃訓練システムの他の構成の一例を示す構成図、図3は、同じく射撃訓練システムに含まれる小銃装置の構成の一例を示す構成図である。
【0009】
本発明に係る射撃訓練システム10は、全体の動作を制御する制御部11と、標的の画像およびレーザ光を画面に表示する表示部12と、ユーザが射撃訓練システム10を操作するための操作部13と、標的画像等を記憶するメモリ部15と、操作情報や標的画像、背景画像等を形成する画像形成部18と、画像形成部18からの画像信号を受けこれを投影する投影部(プロジェクタ)20と、投影部20から投影された映像表示するスクリーン22を有している。また、操作部13はリモコンを伴うことも好適である。
【0010】
さらに、射撃訓練システム10は、スクリーン22の表示画面を撮像するカメラ部17と、カメラ部17からの映像信号をA/D変換するA/D変換部16と、撮像した表示画像に含まれる標的画像と、メモリに格納されている標的画像とのマッチング処理を行うマッチング部14と、レーザを照射する小銃装置30を有している。ここで、カメラ部17は、一例として、近赤外線感度をもつメガピクセル正素子カメラを用いることが好適である。また、カメラ部17はズームレンズやカメラ取り付け用のライトクレーンを付属させることも好適である。
【0011】
射撃訓練システム10は、このような構成により、ユーザの操作部13による操作に従って、メモリ部15に格納された標的画像等に応じた画像をスクリーン22に表示し、スクリーン22に表示した標的画像と小銃装置30が照射したレーザ光の両方の画像をカメラ部17で撮像する。そして、撮像した画像データをマッチング部14で解析し、解析結果を表示部12に表示する。
【0012】
また、射撃訓練システム10は、第2の実施形態として、図1に示した投影部20に代えて、図2に示すように、画像形成部から出された映像を直接、表示画面(ディスプレイ)23に表示してもよい。
【0013】
また、小銃装置30は、図3に示すように、射撃音等の音声信号を生成する発音部33と、発音部33からの音声信号に応じて射撃音等を出力するスピーカ32と、レーザを照射するレーザ素子34と、レーザ素子34がレーザを照射するためのタイミング(トリガー信号)を与える引金35と、トリガー信号を入力するとレーザ素子に対してレーザ照射指示信号を出力すると共に、当該トリガー信号を射撃訓練システム10の本体の制御部11に、有線でまたはワイヤレス信号で供給する制御部31を有する。
【0014】
レーザ素子34は、一例として、輝度が高く、かつ平行光束を発光できる発光ダイオードを選択することが好適である。一例として、波長905nm程度のレーザ光が用いられるが、これに限定されるものではない。
【0015】
(評価処理)
次に、上述した構成をもつ射撃訓練システム10の評価処理を含む処理動作について、図4に示すフローチャート及び図5乃至図8の説明図を用いて詳細に説明する。図5は射撃訓練システムにおける標的画像の一例を示す図、図6は、同じく標的画像のX軸方向およびY軸方向の輝度信号の一例を示す図、図7は、同じく標的画像の領域分布の一例を示す説明図、図8は、同じく標的画像の一領域のレーザ照射ポイントの一例を示す説明図である。
【0016】
はじめに、制御部11は、ユーザの操作に応じた操作部13からの操作信号を検出することで処理を開始する(ステップS11)。制御部11は、操作信号を検出すると、メモリ部15から標的画像データや背景データを読み出し、画像形成部18で表示すべき画像データを生成し、これを投射部20からスクリーン22に投射し、図5に示すような標的画像等を表示する(ステップS12)。ここで、標的画像は、一例として、射撃対象物が障害物から出たり入ったりするという隠顕動作を行わせるものである。
【0017】
その後、制御部11は、小銃装置30から供給されるトリガー信号を有線でまたはワイヤレス信号として検出すると(ステップS13)、カメラ部17で撮像しA/D変換部16でデジタルデータに変換した撮像データと、メモリ部15から読み出した標的画像データとを比較して、マッチング部14でデータマッチング処理を行い、撮像データ中の標的画像データを検出する(ステップS14)。次に、制御部11は、撮像データを走査して図6に示すように、X軸方向の輝度値、Y軸方向の輝度値を検出し、検出値を閾値と比較して、閾値以上の値の箇所をレーザ照射ポイントPのX座標・Y座標として特定する(ステップS15)。この閾値は、背景画像や標的画像の最大輝度と、照射ポイントで発生する輝度との間の値に設定される。そして、制御部11は、標的画像とレーザ照射ポイントPのX座標・Y座標を比較して、レーザが標的画像に命中したかどうかについて採点を行う。(ステップS16)
【0018】
この時、制御部11は、レーザ照射ポイントPが標的画像の内側に存在するか否かを判断し(ステップS17)、内側に存在すると判断すれば、レーザ照射ポイントPは、図7の標的画像Hのどの部位(H1〜H7)に存在するかを特定する(ステップS18)。この特定は、標的画像内に輝度が低下する、あるいは、増加する境界線を設けておくことにより、画像処理によって可能である。図8は、レーザ照射ポイントPが第1部位H1に存在することを示している。その後、制御部11は、評価データを表示部12に表示し、メモリ部15等の記録領域に記録する(ステップS19)。また、制御部11は、レーザ照射ポイントPが標的画像の外側に存在すると判断すれば(ステップS17)、部位について判定せずに、そのまま評価データを表示部12に表示し、メモリ部15等の記録領域に記録する(ステップS19)。
【0019】
以上、本発明に係る射撃訓練システムによれば、機械的稼動部分がないため構造的に簡易となるので、容易に設置することができる。また、電子データで標的のバリエーションを容易に増加させることで変化に富む射撃訓練が可能となるため、訓練錬度が従来に比べて増加するので、射撃技術をより向上させることができる。また、射撃訓練の数値的、統計的処理が可能となるので、客観的評価度が向上する。
【0020】
以上記載した様々な実施形態により、当業者は本発明を実現することができるが、更にこれらの実施形態の様々な変形例を思いつくことが当業者によって容易であり、発明的な能力をもたなくとも様々な実施形態へと適用することが可能である。従って、本発明は、開示された原理と新規な特徴に矛盾しない広範な範囲に及ぶものであり、上述した実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る射撃訓練システムの構成の一例を示す構成図。
【図2】同じく射撃訓練システムの他の構成の一例を示す構成図。
【図3】同じく射撃訓練システムに含まれる小銃装置の構成の一例を示す構成図。
【図4】同じく射撃訓練システムの射撃処理の動作の一例を示すフローチャート。
【図5】同じく射撃訓練システムにおける標的画像の一例を示す図。
【図6】同じく射撃訓練システムにおける標的画像のX軸方向およびY軸方向の輝度信号の一例を示す図。
【図7】同じく射撃訓練システムにおける標的画像の領域分布の一例を示す説明図。
【図8】同じく射撃訓練システムにおける標的画像の一領域のレーザ照射ポイントの一例を示す説明図。
【符号の説明】
【0022】
10…射撃訓練システム、11…制御部、12…表示部、13…操作部、14…マッチング部、15…メモリ部、16…AD変換部、17…カメラ部、18…画像形成部、19…ライトユニット部、20…液晶部、22…スクリーン、23…表示部、30…小銃装置、31…制御部、32…スピーカ、33…発音部、34…レーザ素子、35…引き金。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的画像を含む画像情報を生成する生成部と、
前記生成部から供給される画像情報に基いて、前記標的画像を画面に表示する表示部と、
前記表示部の画面にレーザを発射する発射部と、
前記表示部の画面を撮像するカメラ部と、
前記カメラ部からの前記画面の撮像情報の輝度分布に基き、前記画面上に前記レーザ発射部が発射したレーザの位置を検出して標的画像に命中したか否かを判定する判定部と、
を具備することを特徴とする射撃訓練システム。
【請求項2】
前記表示部は、前記生成部から供給された画像情報に基いて映像光を照射する照射部と、
前記照射部からの映像光を受けて前記標的画像を表示するスクリーン部を含むことを特徴とする請求項1記載の前記射撃訓練システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate