説明

導体トラックを印刷するための組成物、及び太陽電池の製造方法

本発明は、基板、特に太陽電池用基板に、導体トラックをレーザ印刷法で印刷するための組成物であって、当該組成物が、30〜90質量%の導電性粒子、0〜7質量%のガラスフリット、0〜8質量%の少なくとも1種のマトリックス材料、0〜8質量%の少なくとの1種の有機金属化合物、0〜5質量%の少なくとも1種の添加剤及び3〜69質量%の溶剤を含む組成物に関する。この組成物は、さらにレーザ光の吸収剤として0.5〜15質量%のナノ粒子を含み、このナノ粒子は、銀、金、白金、パラジウム、タングステン、ニッケル、スズ、ビスマス、鉄、インジウム・スズ酸化物、チタンカーバイド、酸化タングステン又は窒化チタンの粒子である。この組成物は1質量%以下の元素状炭素を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板、特に太陽電池用基板に、導体トラックをレーザ印刷法で印刷するための組成物であって、当該組成物が、30〜90質量%の導電性粒子、0〜7質量%のガラスフリット、0〜8質量%の少なくとも1種のマトリックス材料、0〜8質量%の少なくとの1種の有機金属化合物、0〜5質量%の少なくとも1種の添加剤及び3〜50質量%の溶剤を含む組成物に関する。さらに本発明は、対応する組成物をレーザの照射によりキャリヤーから半導体基板に転写する太陽電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
組成物をレーザ印刷法により基板に印刷することができるようにするために、組成物はレーザ光を吸収して熱に変えるレーザ光吸収剤を含まなければならない。
【0003】
最近において、レーザ印刷インキで使用される吸収剤としては、例えば、カーボンブラック又はカーボンナノチューブを挙げることができる。しかしながら、これらは、太陽電池の焼成中に反応して二酸化炭素が生じ、これが導体トラックにガス状で留まり、導体トラックに孔を生じさせ導電性を低下させるとの不利を有する。これを防止するために、最近では炭素非含有組成物を使用することが典型的であり、インクジェット法又はスクリーン印刷法により加工されている。
【0004】
太陽電池の受光表面電極を製造するために使用することができるペースト状の組成物が、例えば特許文献1(WO2007/089273)に記載されている。このペーストは0.2〜0.6m2/gの比表面積を有する銀粒子、ガラスフリット、樹脂バインダ及び希釈剤を含んでいる。
【0005】
二つの異なる平均粒径を有する銀粉末を含む組成物が特許文献2(EP−A1775759)に記載されている。銀粉末に加えて、この組成物は、ガラスフリット及び有機キャリヤーを含んでいる。電極材料中の銀の割合は75〜95質量%である。
【0006】
太陽電池の電極を製造するための他のペーストとして、85〜99質量%の導電性金属成分及び1〜15質量%のガラス成分(それぞれの量は固体材料に対するもの)及び有機成分を含むペーストが特許文献3(WO2006/132766)に記載されている。
【0007】
記載されたいずれの組成物も、レーザ印刷で印刷するためには使用することができない。しかしながら、レーザ印刷法の使用は、インクジェット法又はスクリーン印刷法に比較して、より細い線、従ってより細い電極を太陽電池に印刷することができるとの利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2007/089273
【特許文献2】EP−A1775759
【特許文献3】WO2006/132766
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、レーザ印刷で印刷することができ、そして公知の組成物に比較して焼結による導電性の低下をもたらさない、太陽電池の電極を印刷するための組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、基板、特に太陽電池用基板に、導体トラックをレーザ印刷法で印刷するための組成物であって、当該組成物が、30〜90質量%の導電性粒子、0〜7質量%のガラスフリット、0〜8質量%の少なくとも1種のマトリックス材料、0〜8質量%の少なくとの1種の有機金属化合物、0〜5質量%の少なくとも1種の添加剤及び3〜69質量%の溶剤を含み、さらにレーザ光の吸収剤として0.5〜15質量%のナノ粒子を含んでおり、該ナノ粒子は、銀、金、白金、パラジウム、タングステン、ニッケル、スズ、ビスマス、鉄、インジウム・スズ酸化物(ITO)、酸化タングステン、チタンカーバイド又は窒化チタンの粒子であり、そして当該組成物が1質量%未満の元素状炭素を含んでいることを特徴とする組成物により達成される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のナノ粒子は、1〜800nmの範囲の粒径を有する粒子を意味すると理解される。吸収剤に使用されるナノ粒子は典型的には3〜800nmの範囲の粒径を有する。
【0012】
組成物中の元素状炭素の割合は、1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下である。一実施態様においては、組成物中に元素状炭素が含まないことである。
【0013】
驚くべきことに、銀、金、白金、パラジウム、タングステン、ニッケル、スズ、ビスマス、鉄、インジウム・スズ酸化物(ITO)、酸化タングステン、チタンカーバイド又は窒化チタンのナノ粒子を、レーザ光吸収剤として使用することが可能であることが分かった。このようにして、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン又はグラファイト等の形態の元素状炭素を、レーザ光吸収剤として使用しないで済ませること、或いは公知の組成物に比べて要求される量を顕著に低下させることが可能である。
【0014】
銀、金、白金、パラジウム、タングステン、ニッケル、スズ、鉄、ビスマス、インジウム・スズ酸化物又はチタンカーバイドを使用することによる更なる利点は、これらの材料は導電性であるということである。このため、ナノ粒子の使用は印刷した導体トラックの導電性を極めて小さい程度低下させるか、或いは好ましくは全く低下させない。さらに、これらの材料は焼いている内に酸化されることはない;さらに特に、これらは導体トラックの空隙をもたらし得るガス状化合物を生じさせないので、導電性の低下をもたらさない。吸収剤としてのチタンカーバイドは燃えるが、放出される炭素量は、吸収剤としての元素状炭素の場合の放出量に比べて極めて小さい。
【0015】
ナノ粒子の特に好ましい材料は銀である。
【0016】
一実施態様において、粒子は球状粒子である。本発明の球状粒子は、球状粒子は実質的に球状であり、実際の粒子は理想の球状からズレがあっても良いことを意味する。例えば、実際の粒子は、例えば、切り取られていても、滴(液的)状でも良い。理想の球状から他のズレとしては、製造の結果起こるものが考えられる。
【0017】
ナノ粒子が球状である場合、それらは2〜100nmの直径を有することが好ましい。特に、赤外線レーザ、特に1050nmの波長のレーザを使用する場合、2〜50nmの粒径を有する球状ナノ粒子が特に好適であることが分かっている。球状粒子の直径は6nmの領域にあることがさらに好ましい。
【0018】
ナノ粒子を球状粒子の形態で使用した場合、組成物中のナノ粒子の割合が0.5〜12質量%の範囲にあることが特に好ましい。
【0019】
他の実施態様において、ナノ粒子は15〜1000nmの範囲の端部長(edge length)及び3〜100nmの高さを有している。プリズムの形状は変えることができる。例えば、その形状は、他のファクター相互に依存しており、使用されるレーザ光に依存して決まる。プリズムの基本は、例えば、多角形状で、例としては三角形、五角形である。ナノ粒子として使用されるプリズムは一般に、吸収挙動が使用されるレーザの波長に適合したプラズモン共鳴装置である。使用されるレーザへの適合は、例えば、プリズムの端部長及び断面積により達成される。例えば、異なる断面積及び異なる端部長は、それぞれ異なる吸収挙動を有する。プリズムの高さも吸収挙動に影響をもたらす。
【0020】
プリズムをナノ粒子として使用する場合、組成物中にプリズムとして存在するナノ粒子は3〜10質量%の範囲にあることが好ましい。
【0021】
レーザ光吸収剤として球状粒子又はプリズムの使用に加えて、もう一つの方法として、球状粒子とプリズムとの両方を使用することも可能である。プリズムに対する球状粒子の所望の比が可能である。プリズム状のナノ粒子が多くなればなる程、組成物中のナノ粒子の割合が低下しても良い。
【0022】
ナノ粒子は、一般に製造過程、特に移送中、適当な添加剤により、安定化される。導体トラックを印刷するための組成物の製造過程において、添加剤は、典型的には、除去されず、組成物に存在する。安定化のための添加剤の割合は、一般に、ナノ粒子の質量に対して15質量%以下である。ナノ粒子の安定化に使用される添加剤としては、例えば、長鎖アミン(例、ドデシルアミン)を用いることができる。ナノ粒子の安定化に好適な更なる添加剤としては、例えば、オクチルアミン、デシルアミン、オレイン酸、及びポリエチレンイミンを挙げることができる。
【0023】
組成物中に存在する導電性粒子は、導電性材料から構成されるどのような形状の粒子でも良い。組成物中に存在する導電性粒子は、銀、金、アルミニウム、白金、パラジウム、スズ、ニッケル、カドミウム、ガリウム、インジウム、銅、亜鉛、鉄、ビスマス、コバルト、マンガン、クロム、バナジウム、チタン、又はその混合物若しくは合金を含むことが好ましい。
【0024】
使用される粒子の平均粒径は、100nm〜100μmの範囲にあることが好ましい。平均粒径は500nm〜50μmの範囲がさらに好ましく、500nm〜10μmの範囲が特に好ましい。使用される粒子は、当業者公知の所望の形状を有することができる。例えば、粒子はプレートレット(platelet)状或いは球状でも良い。球状粒子は、実際の球状が理想の球状からズレているものを意味すると理解される。例えば、球状粒子は、製造の結果として、例えば、滴(液滴)状でも、切り取られていても良い。組成物を製造するために使用され得る好適な粒子は、当業者に公知であり、市販されている。球状の銀粒子の使用が特に好ましい。例えば、球状粒子の利点は、プレートレット状粒子に比較してレオロジー挙動が改良されていることにある。さらに、球状粒子を含む組成物は、剪断時に粘度の顕著な低下を示す。このことは、約90%までの高い充填量(fill levels)を達成させることができ、その場合、組成物がなお印刷可能である。
【0025】
2種以上の異なる種類の導電性粒子を使用するべきである場合、それらの種類を混合することにより使用される。異なる種類の粒子は、材料において、形状において、及び/又はサイズにおいて、異なっていても良い。
【0026】
組成物中の導電性粒子の割合は、50〜90質量%の範囲である。その割合は70〜87質量%の範囲が好ましく、特に70〜85質量%の範囲が好ましい。
【0027】
100nm〜100mμのサイズを有する導電性粒子の使用に加えて、導電性粒子としてナノ粒子を使用することも可能である。使用する導電性粒子がナノ粒子の場合、それらは1〜500nmの範囲の平均直径を有することが好ましい。ナノ粒子は所望の形状でよい。例えば、ナノ粒子は、同様に、球状粒子であっても、プリズム形状であっても良い。特に、ナノ粒子を導電性粒子として使用する場合、ナノ粒子は、同時にレーザ光吸収剤としても機能する。
【0028】
印刷可能組成物を得るために、組成物が溶剤を含むことがさらに必要である。組成物における溶剤の割合は、一般に、3〜69質量%の範囲にある。溶剤の割合は、好ましくは5〜20質量%の範囲、特に好ましくは8〜15質量%の範囲である。
【0029】
使用される溶剤は、例えば有機溶剤である。好適な有機溶剤は当業者に公知の全ての溶剤である。テルピネオール、テキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール及びジプロピレングリコールが好ましい。
【0030】
有機溶剤の使用に加えて、溶剤として水を使用することも可能である。溶剤として水を使用する場合、水の割合は3〜40質量%の範囲が好ましく、さらに5〜15質量%の範囲、特に6〜12質量%の範囲が好ましい。
【0031】
水は、一般に、比較的速く蒸発するので、水を溶剤として使用する場合は、滞留補助剤、いわゆる遅延剤の添加が、蒸発を遅くするために必要である。滞留補助剤は、組成物中に、0.5〜50質量%の割合、好ましくは5〜40質量%の割合、特に好ましくは10〜30質量%の割合で存在している。
【0032】
適当な滞留補助剤は、水−結合性極性溶剤である。適当な水−結合性極性溶剤の例としては、グリセロール、グリコール類(例、エチレングリコール、プロピレングリコール、)、ポリグリコール類(例、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(例、PEG2000)、ポリプロピレングリコール)、アルカノール(例、メチルジエタノールアミン、エチルジエタノールアミン)、N−メチルピロリドン又はポリエチレンイミン、ポリビニルアミン又はポリビニルホルムアミドを挙げることができる。特に好ましい滞留補助剤は、グリセロール、ポリエチレングリコールである。これらは高い表面張力を有する。この高い表面張力は印刷される基板の表面上の組成物の活動を低下させることができる。その結果、より明確な構造を印刷することができる。
【0033】
太陽電池の製造において、半導体基板に組成物を印刷した電極構造の良好な結合を得るために、ウェハーと呼ばれる半導体基板は、その上に構造が印刷された状態で焼成される。焼成の前に組成物をウェハーに接着するために、マトリックス材料をさらに存在させることが好ましい。マトリックス材料を組成物中に存在させる場合、マトリックス材料の割合は、0.1〜8質量%が好ましく、さらに0.5〜5質量%、特に1〜3質量%が好ましい。
【0034】
水を溶剤として使用する場合、使用されるマトリックス材料は水溶性又は水分散性ポリマー又はポリマー混合物が好ましい。
【0035】
これらのポリマー又はポリマー混合物は、低粘度水溶液を形成するので好ましい。このことは、低粘度で導電性粒子の高充填量を可能にする。さらに、使用されるポリマーは、例えば、使用される太陽ウェハーの表面を有する太陽電池の製造において、印刷される基板表面と良好な接着性を有する必要がある。ポリマーは、印刷された導体トラックの十分なインテグリティ(完全性)をもたらさなければならない。
【0036】
マトリックス材料として使用することができる好適なポリマーとしては、例えば、アクリレート(アクリル樹脂)分散体及びアクリレート共重合体(例、スチレン・アクリレート共重合体(styrene acrylates)、アルカリ可溶アクリレート樹脂、及びこれらの共重合体)、無水マレイン酸共重合体(例、スチレン−マレイン酸分散体(分散液))、アルキド樹脂分散体、スチレン−ブタジエン分散体、セルロース誘導体(特に、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース)、ポリエステル分散体、ポリビニルアルコール(特に、部分又は完全加水分解ポリビニルアルコール)、加水分解酢酸ビニル共重合体(例、グラフト化ポリエチレングリコール−酢酸ビニル共重合体)、ポリビニルピロリドン及びビニルピロリドン共重合体、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリビニルホルムアミド、超分岐ポリカーボネート、ポリグリコール、ポリウレタン分散体、タンパク質(例、カゼイン)を挙げることができる。上記2種以上のポリマーの混合物でマトリックス材料を形成することも可能である。
【0037】
使用される溶剤が有機溶剤のみの場合、好適なマトリックス材料の例としては、例えば、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン);ASA(アクリロニトリル−スチレン−アクリレート);アクリレート化アクリレート(acrylated acrylates)、アルキド樹脂;酢酸アルキルビニル;アルキレン−酢酸ビニル共重合体、特にメチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ブチレン−酢酸ビニル共重合体;アルキレン−塩化ビニル共重合体;アミノ樹脂;アルデヒド及びケトン樹脂;セルロース及びセルロース誘導体、特にヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエステル(例、アセテート、プロピオネート、ブチレート)、カルボキシアルキルセルロース、セルロースニトレート;エポキシアクリレート;エポキシ樹脂;変性エポキシ樹脂(例、二官能又は多官能ビスフェノールA又はビスフェノールF樹脂、多官能エポキシノボラック樹脂、臭素化エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂);脂肪族エポキシ樹脂、グリジルエーテル、ビニルエーテル、エチレン−アクリル酸共重合体;炭化水素樹脂;MABS(アクリレート単位を含む透明ABS)、メラミン樹脂、無水マレイン酸共重合体;メタクリレート;天然ゴム;合成ゴム;クロロゴム;天然樹脂;ロジン;シェラック;フェノール樹脂;フェノキシ樹脂、ポリエステル;ポリエステル樹脂(例、フェニルエステル樹脂);ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリアミド;ポリイミド;ポリアニリン;ポリピロール;ポリブチレンテレフタレート(PBT);ポリカーボネート(例えば、Makrolon(登録商標)、Bayer社製);ポリエステルアクリレート;ポリエーテルアクリレート;ポリエチレン;ポリエチレンチオフェン;ポリエチレンナフタレート;ポリエチレンフタレート(PET);ポリエチレンフタレートグリコール(PETG);ポリプロピレン;ポリメチルメタクリレート(PMMA);ポリフェニレンオキシド(PPO);ポリスチレン(PS);ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);ポリテトラヒドロフラン;ポリエーテル(例、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール);ポリビニル化合物、特にポリ塩化ビニル(PVC)、PVC共重合体、PVdC、ポリ酢酸ビニル及びその共重合体、所望の部分加水分解ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリビニルアクリレート及びメタクリレートの溶液または分散体及びその共重合体、そしてポリアクリルエステル(polyacrylic ester)及びポリスチレン共重合体(例、ポリスチレン−無水マレイン酸共重合体);ポリスチレン(耐衝撃性変性又は耐衝撃性未変性);未架橋又架橋されたポリウレタン;ポリウレタンアクリレート;スチレン−アクリル共重合体;スチレン−ブタジエンブロック共重合体(例えば、Styroflex(登録商標)又はStyrolux(登録商標)、BASF AG社製;K−resin(登録商標)、CPC社製);タンパク質(例、カゼイン);スチレン−イソプレンブロック共重合体;トリアジン樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂(BT)、シアネートエステル樹脂(CE)、アルキル化ポリフェニレンエーテル(APPE)を挙げることができる。さらに、2種以上のポリマーの混合物はマトリックス材料を形成しても良い。
【0038】
太陽電池の製造において、基板として使用される半導体材料への組成物の良好な接着性を得るために、ガラスフリットが組成物中に0.5〜6質量%の割合で存在している。ガラスフリットの割合は1.5〜4質量%の範囲、特に2〜3.5質量%の範囲が好ましい。
【0039】
特に鉛非含有ガラスフリットを用いることが好ましい。このようなガラスフリットは、例えば、酸化ビスマス・ベース(主成分とする)ガラスである。組成物に好適なガラスフリットは、特に酸化ビスマス、酸化珪素及び/又は酸化テルルを含む。
【0040】
酸化テルルの割合は、0.01〜10質量%の範囲が好ましい。酸化ビスマスの割合は、40〜95質量%の範囲が好ましい。酸化ビスマスの割合は、さらに50〜80質量%の範囲が好ましく、特に60〜75質量%の範囲が好ましい。酸化珪素の割合は、0〜30質量%の範囲が好ましく、さらに1〜4質量%の範囲が好ましい。
【0041】
酸化ビスマス、酸化珪素、酸化テルルに加えて、ガラスフリットはさらに酸化ホウ素を含んでも良い。酸化ホウ素の割合は、0.1〜10質量%の範囲、さらに0.5〜8質量%の範囲1〜4質量%の範囲が好ましい。
【0042】
上述の酸化物に加えて、ガラスフリットは、酸化亜鉛及び/又は酸化アルミニウムを含んでも良い。酸化亜鉛の割合は、0〜15質量%の範囲、そして酸化アルミニウムの割合は、0〜3質量%の範囲が一般的である。
【0043】
ガラスフリットに含まれても良い更なる金属酸化物は、例えば、酸化銀(Ag2O)、酸化アンチモン(Sb23)、酸化ゲルマニウム(Ge2O)、酸化インジウム(In23)、五酸化リン(P25)、五酸化バナジウム(V25)、五酸化ニオブ(Nb25)及び五酸化タンタル(Ta25)である。ガラスフリットに存在しても良いAg2O、P25、V25、Nb25及び/又はTa25の割合は、それぞれ0〜8質量%の範囲が一般的である。ガラスフリットに存在しても良いIn23及び/又はSb23の割合は、それぞれ0〜5質量%の範囲が好ましい。さらに、ガラスフリット中に一種以上のアルカリ金属酸化物、典型的にはNa2O、Li2O及び/又はK2Oを含んでいても良い。ガラスフリット中のアルカリ金属酸化物の割合は、それぞれ0〜3質量%の範囲が一般的である。さらに、ガラスフリット中にアルカリ土類金属酸化物が存在しても良い。アルカリ土類金属酸化物は典型的にはBaO、CaO、MgO及び/又はSrOである。ガラスフリット中のアルカリ金属酸化物の割合は、それぞれ0〜8質量%の範囲が一般的である。
【0044】
本発明の実質的に鉛非含有とは、ガラスフリットに鉛が添加されていないこと、及びガラスフリット中の鉛の割合が1000ppm未満であることを意味する。
【0045】
好ましい実施態様において、(多数の)ナノ粒子の少なくとも一部がガラスフリットのガラスに含まれている。この場合、ナノ粒子の材料はビスマスの場合が好ましい。ナノ粒子の一部のみがガラスフリットのガラスに含まれている場合、含まれるナノ粒子の材料は、含まれていないナノ粒子の材料と同じでも良い。しかしながら、異なる材料のナノ粒子を使用することも可能である。即ち、例えば、ガラスフリットのガラスに含まれるナノ粒子は、含まれていないナノ粒子以外の材料から構成されている。さらに、異なる材料から得られたナノ粒子がガラスフリットのガラスに含まれることが可能である。
【0046】
本発明の組成物はさらに少なくとも1種の有機金属化合物を含んでいる。組成物中の有機金属化合物の割合は0〜5質量%の範囲、好ましくは1〜3質量%の範囲、特に好ましくは1.5〜2.5質量%の範囲である。
【0047】
基板とその上に印刷された組成物の焼成(firing)の過程において、有機金属化合物の有機成分は分解し、組成物から除去される。存在する金属は組成物中に残る。
【0048】
使用することができる適当な有機金属化合物としては、カルボン酸金属塩、プロピオン酸金属塩、金属アルコキシド、金属の錯体、又はこれらの混合物を挙げることができる。有機金属化合物は芳香族基又は脂肪族基を含んでいても良い。
【0049】
適当なカルボン酸塩の例としては、ギ酸塩、酢酸塩、又はプロピオン酸塩を挙げることができる。好適なアルコキシドの例としては、メトキシド、プロポキシド、ブトキシド、ペントキシド、ヘキソキシド、ヘプトキシド、オクトキシド、ノノキシド、デコキシド、ウンデコキシド、及びドデコキシドを挙げることができる。
【0050】
有機金属化合物の金属は、アルミニウム、ビスマス、亜鉛及びバナジウムから選択されることが好ましい。
【0051】
さらに、有機金属化合物はホウ素又はケイ素を含んでいても良い。
【0052】
使用することができる好適な有機金属化合物の例としては、酢酸ビスマス(III)、トリフェニルビスマス、ヘキサフルオロペンタン二酸ビスマス(III)、テトラメチルヘプタン二酸ビスマス(III)、ネオデカン酸ビスマス、2−エチルヘキサン酸ビスマス(III)、炭酸ビスマスオキシド、次没食子酸ビスマス水和物、没食子酸ビスマス塩基性水和物、次サリチル酸ビスマス(III)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタン二酸)ビスマス(III)、炭酸トリフェニルビスマス(III)、トリス(2−メトキシフェニル)ビスムチンを挙げることができる。
【0053】
特に好ましい有機金属化合物は、酢酸ビスマス(III)、2−エチルヘキサン酸ビスマス(III)、炭酸ビスマスオキシド、次没食子酸ビスマス水和物、没食子酸ビスマス塩基性水和物、次サリチル酸ビスマス(III)である。
【0054】
さらに、組成物は、他の添加剤を含んでいても良い。組成物に存在していても良い添加剤の例としては、分散剤、チキソトロピー剤、可塑剤、消泡剤、乾燥剤、架橋剤、錯化剤、及び/又は導電性ポリマー粒子を挙げることができる。添加剤は、それぞれ個々に使用しても良いし、二種以上の添加剤の混合物を使用しても良い。
【0055】
組成物中の添加剤の割合は、一般に0〜5質量%の範囲、好ましくは0.1〜3質量%の範囲、特に0.1〜2質量%の範囲である。
【0056】
分散剤を添加剤として使用する場合、ただ一種の分散剤又は二種以上の分散剤を使用することができる。
【0057】
原則として、分散に使用される当業者に公知で、従来技術に記載されている、全ての分散剤を使用することができる。好ましい分散剤は、界面活性剤又は界面活性剤混合物であり、例えば、アニオン性、カチオン性、両性、又は非イオン性の界面活性剤である。好適なカチオン性及びアニオン性の界面活性剤は、例えば、“Encyclopedia of Polymer Science and Technology”, J. Wiley & Sons (1966), 第5卷, 816-818頁、及び“Emulsion Polymerisation and Emulsion Polymers”, P. Lovell及びM. El-Asser編集, Wiley & Sons 刊行 (1977), 224-226頁に記載されている。しかしながら、分散剤として当業者に公知の、顔料親和性アンカー基を有するポリマーを使用することも可能である。
【0058】
チキソトロピー剤を添加剤として使用する場合、例えば有機チキソトロピー剤を使用することが可能である。使用することができる増粘剤(チキソトロピー剤)としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリウレタン、又は水素化ひまし油を挙げることができる。
【0059】
使用することができる、可塑剤、湿潤剤、消泡剤、乾燥剤、架橋剤、錯化剤、及び導電ポリマー粒子は、分散に典型的に使用され、当業者に公知のものである。
【0060】
本発明の組成物は、例えば、当業者に公知の装置で激しく攪拌、分散することにより製造することができる。例えば、組成物をディゾルバー、又は匹敵する強度で分散させる装置で混合することであり、大量製造における、攪拌ボールミル又は粉末流動化装置での分散である。
【0061】
本発明の組成物は基板にレーザ印刷法で印刷するのに特に好適である。
【0062】
特に、組成物は太陽電池を製造するのに好適である。
【0063】
この目的を達成するため、組成物は、この組成物をレーザ照射によりキャリヤーから半導体基板に転写することにより、半導体基板に印刷される。そのときのレーザのエネルギーはナノ粒子に吸収されて熱に変換され、その熱が溶剤を蒸発させ、組成物の滴をキャリヤーから半導体基板に移動する。
【0064】
この方法は、導体トラックの半導体基板での精確な製造を可能にする。太陽電池の製造において、半導体基板は一般にシリコン半導体である。これはまたソーラーウェハーと呼ばれる。
【0065】
組成物を半導体基板に印刷するために使用されるレーザは赤外線レーザが好ましい。特に、1050nmの波長の赤外線レーザが好ましい。ここでは、当業者に公知の所望の赤外線レーザを使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板、特に太陽電池用基板に、導体トラックをレーザ印刷法で印刷するための組成物であって、当該組成物が、30〜90質量%の導電性粒子、0〜7質量%のガラスフリット、0〜8質量%の少なくとも1種のマトリックス材料、0〜8質量%の少なくとの1種の有機金属化合物、0〜5質量%の少なくとも1種の添加剤及び3〜69質量%の溶剤を含み、さらにレーザ光の吸収剤として0.5〜15質量%のナノ粒子を含んでおり、該ナノ粒子は、銀、金、白金、パラジウム、タングステン、ニッケル、スズ、ビスマス、鉄、インジウム・スズ酸化物、チタンカーバイド、酸化タングステン又は窒化チタンの粒子であり、さらに当該組成物が1質量%未満の元素状炭素を含んでいることを特徴とする組成物。
【請求項2】
ナノ粒子が球状粒子である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
球状ナノ粒子の直径が2〜100nmである請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
球状粒子の形のナノ粒子の割合が0.5〜12質量%である請求項2又は3に記載の組成物。
【請求項5】
ナノ粒子が、15〜1000nmの端部長及び3〜100nmの高さを有するプリズムである請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
ナノ粒子として使用されるプリズムが、使用されるレーザの波長に適合した吸収挙動を有するプラズモン共鳴装置である請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
プリズムとして存在するナノ粒子の割合が3〜10質量%である請求項5又は6に記載の組成物。
【請求項8】
ナノ粒子が長鎖アミンにより安定化されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
ナノ粒子の少なくとも一部が、ガラスフリットのガラス中に包含されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
導電性粒子が、銀、金、アルミニウム、白金、パラジウム、スズ、ニッケル、カドミウム、ガリウム、インジウム、銅、鉄、ビスマス、コバルト、マンガン、クロム、バナジウム、チタン、又はこれらの混合物若しくは合金を含み、そしてその平均粒径が好ましくは1nm〜100μmである請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
使用されるガラスフリットが、酸化ビスマスを主成分とする鉛非含有ガラスであり、好ましくは0.01〜10質量%の酸化テルルを含んでいる請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物をレーザの照射によりキャリヤーから半導体基板に転写することにより、該組成物を該基板に印刷し、且つレーザのエネルギーがナノ粒子により吸収されて、熱に変換され、その熱により溶剤を蒸発させ及び組成物の滴をキャリヤーから半導体基板に移動させることを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項13】
レーザが赤外線レーザである請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
半導体基板がシリコン半導体である請求項12又は13に記載の製造方法。

【公表番号】特表2013−504191(P2013−504191A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527283(P2012−527283)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062404
【国際公開番号】WO2011/026769
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】