説明

導体パターンの形成方法、配線基板および液滴吐出装置

【課題】クラック、断線等の発生を防止し、信頼性の高い導体パターンを形成することができる導体パターンの形成方法、配線基板および液滴吐出装置を提供すること。
【解決手段】本発明の導体パターンの形成方法は、液滴吐出法により基材上に導体パターン形成用インクの液滴を吐出し、乾燥して該基材上にパッド部と該パッド部に接続する配線部とを有する導体パターンの前駆体を形成する導体パターン前駆体形成工程と、前記前駆体を焼成し、前記導体パターンを形成する焼成工程とを有し、前記導体パターン前駆体形成工程では、前記基材上の前記パッド部を形成するパッド部形成領域内に、前記導体パターン形成用インクの液滴を付着させる位置が複数の環状体85を同心的に配置してなる形状をなすように、前記導体パターン形成用インクの液滴を吐出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体パターンの形成方法、配線基板および液滴吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子回路または集積回路などに使われる配線の製造には、例えばフォトリソグラフィ法が用いられている。このフォトリソグラフィ法は、予め導電膜を塗布した基板上にレジストと呼ばれる感光材を塗布し、回路パターンを照射して現像し、レジストパターンに応じて導電膜をエッチングすることで導体パターンからなる配線を形成するものである。このフォトリソグラフィ法は真空装置などの大掛かりな設備と複雑な工程を必要とし、また材料使用効率も数%程度でそのほとんどを廃棄せざるを得ず、製造コストが高い。
【0003】
これに対して、液体吐出ヘッドから液体材料を液滴状に吐出する液滴吐出法、いわゆるインクジェット法を用いて導体パターン(配線)を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、導電性微粒子を分散させた導体パターン形成用インクを基板に直接パターン塗布し、その後、溶媒を除去して導体パターン前駆体を得、焼結させることにより導体パターンに変換する。この方法によれば、フォトリソグラフィが不要となり、プロセスが大幅に簡単なものになるとともに、原材料の使用量も少なくてすむというメリットがある。また、この方法によれば、従来の方法と比較して、微細な導体パターンを形成することが可能であり、回路密度の向上に有利である。
【0004】
しかしながら、従来、基板上に、1対のパッド部および各パッド部を接続する配線部を有する導体パターンを形成する場合は、インクジェット法を用いた方法では、形成された導体パターンにクラックや断線等が生じる虞がある。
その理由は、次の通りである。まず、比較的厚い導体パターン前駆体を形成する際には、基板上に、大量の導体パターン形成用インクを吐出しなければならず、このため、導体パターン形成用インクを基板上に連続的に重ねていく必要がある。この場合、表面張力や内圧に起因する描画時または描画後のインク流動により、基板上のインクに膜厚差が生じ易く、導体パターン前駆体のパッド部に対応する部位と配線部に対応する部位とでは、その厚さは、パッド部に対応する部位の方が厚くなってしまう。これは、パッド部の寸法(パッド部の形状が円形なら直径、四角形なら辺)が大きくなるほど、逆に配線部が細くなるほど、すなわちパッド部の寸法と配線部の幅の差が大きくなるほど顕著である。また、これは、ペースト等の高粘度のものでは発生しづらく、低粘度のインクならではの現象である。また、内圧の関係からパッド部間距離が短いほど、また、配線部の数が多いほど、それぞれ、膜厚差が大きくなる等のパターン依存性もあり、特にランダムパターンでは大きな課題であった。
【0005】
薄くなった導体パターン前駆体の配線部に対応する部位は、応力に弱くなり、その配線部に対応する部位に、焼成時の基板の熱膨張や収縮応力で容易にクラックが入り、導体パターンが断線してしまうことがある。また、セラミックス回路基板等を製造する際の高温焼成プロセスでは、金属のナノ粒子で形成される配線部は、一部蒸発し、その厚さが減少するので、配線部はさらに薄くなり、これにより、さらに断線し易くなり、また、抵抗が大きく上昇してしまう。このように、従来は、形成される導電パターン(配線基板)の信頼性、歩留まりを十分に高いものとすることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−84387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、クラック、断線等の発生を防止し、信頼性の高い導体パターンを形成することができる導体パターンの形成方法を提供すること、前記導体パターンを有する信頼性の高い配線基板を提供すること、および前記導体パターンの形成に好適に用いることができる液滴吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の導体パターンの形成方法は、液滴吐出法により基材上に導体パターン形成用インクの液滴を吐出し、乾燥して該基材上にパッド部と該パッド部に接続する配線部とを有する導体パターンの前駆体を形成する導体パターン前駆体形成工程と、
前記前駆体を焼成し、前記導体パターンを形成する焼成工程とを有し、
前記導体パターン前駆体形成工程では、前記基材上の前記パッド部を形成するパッド部形成領域内に、前記導体パターン形成用インクの液滴を付着させる位置が複数の環状体を同心的に配置してなる形状をなすように、前記導体パターン形成用インクの液滴を吐出することを特徴とする。
これにより、導体パターン前駆体(導体パターンの前駆体)のパッド部に対応する部位と配線部に対応する部位との厚さの差を低減することができ、導体パターン前駆体の表面を平坦にすることができ、これによって、クラック、断線等の発生が防止された信頼性の高い導体パターンを効率よく形成することができる。
【0009】
本発明の導体パターンの形成方法は、パッド部と該パッド部に接続する配線部とを有する導体パターンの設計データに基づいて、行列状に配置された複数のピクセルを有するビットマップを示すビットマップデータを作成するビットマップデータ作成工程と、
前記ビットマップデータに基づいて、液滴吐出法により基材上に導体パターン形成用インクの液滴を吐出し、乾燥して該基材上に前記導体パターンの前駆体を形成する導体パターン前駆体形成工程と、
前記前駆体を焼成し、前記導体パターンを形成する焼成工程とを有し、
前記ビットマップデータ作成工程では、前記ビットマップの前記パッド部に対応する部位において、前記導体パターン形成用インクの液滴を付着させる位置に対応した前記ピクセルの集合体が複数の環状体を同心的に配置してなる形状をなすように、該ピクセルを配置することを特徴とする。
これにより、導体パターン前駆体のパッド部に対応する部位と配線部に対応する部位との厚さの差を低減することができ、導体パターン前駆体の表面を平坦にすることができ、これによって、クラック、断線等の発生が防止された信頼性の高い導体パターンを効率よく形成することができる。
【0010】
本発明の導体パターンの形成方法では、前記ピクセルのピッチは、前記導体パターン形成用インクの液滴の前記基材への着弾後の直径の1/2以下(但し、0は含まない)であることが好ましい。
これにより、信頼性の高い導体パターンを形成することができる。
本発明の導体パターンの形成方法では、前記ビットマップの前記パッド部に対応する部位において、前記導体パターン形成用インクの液滴を付着させる位置に対応した前記ピクセルの占める面積の比率は、30%以上75%以下であることが好ましい。
これにより、導体パターン前駆体のパッド部に対応する部位と配線部に対応する部位との厚さの差をより低減することができる。
本発明の導体パターンの形成方法では、前記複数の環状体は、互いに離間していることが好ましい。
これにより、導体パターン前駆体のパッド部に対応する部位と配線部に対応する部位との厚さの差をより低減することができる。
【0011】
本発明の導体パターンの形成方法では、前記基材上に付着した前記導体パターン形成用インクの液滴のうち、前記環状体の径方向に沿って隣り合う2つの前記液滴の中心間距離は、前記環状体を構成する線の長手方向に沿って隣り合う2つの前記液滴の中心間距離よりも長いことが好ましい。
これにより、導体パターン前駆体のパッド部に対応する部位と配線部に対応する部位との厚さの差をより低減することができる。
【0012】
本発明の導体パターンの形成方法では、前記前駆体の前記パッド部に対応する部位は、連続的に形成されていることが好ましい。
これにより、信頼性の高い導体パターンを形成することができる。
本発明の導体パターンの形成方法では、前記前駆体の前記パッド部に対応する部位の厚さの最大値をa、前記前駆体の前記配線部に対応する部位の厚さの最大値をbとしたとき、|a−b|/aが、0.3以下(但し、0を含む)であることが好ましい。
これにより、導体パターンにおけるクラック、断線等の発生を防止することができ、信頼性の高い導体パターンを形成することができる。
【0013】
本発明の導体パターンの形成方法では、導体パターン前駆体形成工程では、前記導体パターン形成用インクの液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと前記基材とを相対的に移動させつつ前記液滴吐出ヘッドから前記基材上に前記導体パターン形成用インクの液滴を吐出し、
初回の走査において、前記導体パターン形成用インクの液滴が前記基材へ着弾した状態で、隣り合う2つの前記液滴同士が互いに離間するように、前記導体パターン形成用インクの液滴を吐出することが好ましい。
これにより、基材上の導体パターン形成用インクが局所的に集中してしまうことを防止することができ、これによって、導体パターン前駆体のパッド部に対応する部位と配線部に対応する部位との厚さの差をより低減することができる。
【0014】
本発明の導体パターンの形成方法では、前記導体パターン形成用インクは、金属粒子と該金属粒子が分散する分散媒とを含み、
前記導体パターン前駆体形成工程において、前記導体パターン形成用インクの吐出時の温度よりも高く、かつ前記分散媒の沸点未満の温度に前記基材を加熱することが好ましい。
これにより、基材上の導体パターン形成用インクを突沸させることなく迅速に乾燥させることができ、基材上の導体パターン形成用インクが局所的に集中してしまうことを防止することができ、これによって、導体パターン前駆体のパッド部に対応する部位と配線部に対応する部位との厚さの差をより低減することができる。
【0015】
本発明の導体パターンの形成方法では、前記基材は、セラミックス材料とバインダーとを含む材料で構成されたセラミックス成形体であり、
前記焼成工程において、前記セラミックス成形体および前記前駆体が焼成され、セラミックス基板上に前記導体パターンが形成されることが好ましい。
これにより、セラミックス基板上に、クラック、断線等の発生が防止された信頼性の高い導体パターンを形成することができる。
【0016】
本発明の配線基板は、本発明の導体パターンの形成方法を用いて形成された導体パターンを有することを特徴とする。
これにより、クラック、断線等の発生が防止された信頼性の高い導体パターンを有する信頼性の高い配線基板を提供することができる。
【0017】
本発明の液滴吐出装置は、基材を支持するテーブルと、
前記テーブルに支持された前記基材に対して導体パターン形成用インクの液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、
前記テーブルと前記液滴吐出ヘッドとを相対的に移動させる移動機構と、
前記液滴吐出ヘッドおよび前記移動機構の作動を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記基材上にパッド部と該パッド部に接続する配線部とを有する導体パターンを形成する際、前記液滴吐出ヘッドおよび前記移動機構の作動を制御し、前記移動機構により前記テーブルと前記液滴吐出ヘッドとを相対的に移動させつつ、前記基材上の前記パッド部を形成するパッド部形成領域内に、前記導体パターン形成用インクの液滴を付着させる位置が複数の環状体を同心的に配置してなる形状をなすように、前記液滴吐出ヘッドから前記導体パターン形成用インクの液滴を吐出するよう構成されていることを特徴とする。
これにより、クラック、断線等の発生が防止された信頼性の高い導体パターンの形成に好適に用いることができる液滴吐出装置を提供することができる。
【0018】
本発明の液滴吐出装置は、基材を支持するテーブルと、
前記テーブルに支持された前記基材に対して導体パターン形成用インクの液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、
前記テーブルと前記液滴吐出ヘッドとを相対的に移動させる移動機構と、
パッド部と該パッド部に接続する配線部とを有する導体パターンの設計データに基づいて、行列状に配置された複数のピクセルを有するビットマップを示すビットマップデータを作成するビットマップデータ作成手段と、
前記液滴吐出ヘッドおよび前記移動機構の作動を制御する制御手段とを備え、
前記ビットマップデータ作成手段は、前記ビットマップの前記パッド部に対応する部位において、前記導体パターン形成用インクの液滴を付着させる位置に対応した前記ピクセルの集合体が複数の環状体を同心的に配置してなる形状をなすように、該ピクセルを配置するよう構成され、
前記制御手段は、前記ビットマップデータに基づいて、前記液滴吐出ヘッドおよび前記移動機構の作動を制御し、前記移動機構により前記テーブルと前記液滴吐出ヘッドとを相対的に移動させつつ前記液滴吐出ヘッドから前記基材上に前記導体パターン形成用インクの液滴を吐出するよう構成されていることを特徴とする。
これにより、クラック、断線等の発生が防止された信頼性の高い導体パターンの形成に好適に用いることができる液滴吐出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の配線基板(セラミックス回路基板)の構成例を示す断面図である。
【図2】本発明のインクジェット装置(液滴吐出装置)の実施形態であって、その概略構成を示す斜視図である。
【図3】図2に示すインクジェット装置のインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)の概略構成を説明するための模式図である。
【図4】図1に示す配線基板(セラミックス回路基板)の製造方法の概略の工程を示す説明図である。
【図5】図1に示す配線基板(セラミックス回路基板)の製造工程説明図である。
【図6】本発明の導体パターンの形成方法の実施形態を説明するための(図2に示すインクジェット装置の制御動作を示す)フローチャートである。
【図7】導体パターンの構成例を示す図である。
【図8】導体パターン前駆体の構成例を示す図である。
【図9】ビットマップの構成例を模式的に示す図である。
【図10】分割描画を説明するための図である。
【図11】分割描画を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の配線基板(セラミックス回路基板)の構成例を示す断面図、図2は、本発明のインクジェット装置(液滴吐出装置)の実施形態であって、その概略構成を示す斜視図、図3は、図2に示すインクジェット装置のインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)の概略構成を説明するための模式図、図4は、図1に示す配線基板(セラミックス回路基板)の製造方法の概略の工程を示す説明図、図5は、図1に示す配線基板(セラミックス回路基板)の製造工程説明図、図6は、本発明の導体パターンの形成方法の実施形態を説明するための(図2に示すインクジェット装置の制御動作を示す)フローチャート、図7は、導体パターンの構成例を示す図、図8は、導体パターン前駆体の構成例を示す図、図9は、ビットマップの構成例を模式的に示す図、図10および図11は、それぞれ、分割描画を説明するための図である。
【0021】
本実施形態の導体パターンの形成方法および配線基板の製造方法は、導体パターン(配線パターン)の設計データに基づいて、ビットマップを示すビットマップデータを作成するビットマップデータ作成工程と、そのビットマップデータに基づいて、液滴吐出法により基材上に導体パターン形成用インクの液滴を吐出し、乾燥してその基材上に導体パターンの前駆体(導体パターン前駆体)を形成する導体パターン前駆体形成工程と、その導体パターンの前駆体を焼成し、導体パターンを形成する焼成工程とを有している。
まずは、導体パターン形成用インク(以下、単に「インク」ともいう)について説明する。
【0022】
<導体パターン形成用インク>
導体パターン形成用インクは、液滴吐出法によって導体パターンの前駆体(以下、「導体パターン前駆体」という)を形成するのに用いるインクである。
なお、本実施形態では、導体パターン形成用インク200として、金属粒子としての銀粒子が水系分散媒に分散した分散液を用いた場合について代表的に説明する。
【0023】
以下、導体パターン形成用インク200の各構成成分について詳細に説明する。
〔水系分散媒〕
本実施形態では、導体パターン形成用インク200として、水系分散媒を含むものを用いる。
本発明において、「水系分散媒」とは、水および/または水との相溶性に優れる液体(例えば、25℃における水100gに対する溶解度が30g以上の液体)で構成されたもののことを指す。このように、水系分散媒は、水および/または水との相溶性に優れる液体で構成されたものであるが、主として水で構成されたものであるのが好ましく、特に、水の含有率が70wt%以上のものであるのが好ましく、90wt%以上のものであるのがより好ましい。これにより、上述した効果がより顕著に発揮される。
【0024】
水系分散媒の具体例としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒、ピリジン、ピラジン、ピロール等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、アセトアルデヒド等のアルデヒド系溶媒等が挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、導体パターン形成用インク200中における水系分散媒の含有量は、25wt%以上70wt%以下であることが好ましく、30wt%以上60wt%以下であることがより好ましい。これにより、インク200の粘度を好適なものとしつつ、分散媒の揮発による粘度の変化を少ないものとすることができる。
【0025】
〔銀粒子〕
次に、銀粒子(金属粒子)について説明する。
銀粒子は、形成される導体パターン20の主成分であり、導体パターン20に導電性を付与する成分である。
また、銀粒子は、インク中において分散している。
【0026】
銀粒子の平均粒径は、1nm以上100nm以下であるのが好ましく、10nm以上30nm以下であるのがより好ましい。これにより、インクの吐出安定性をより高いものとすることができるとともに、微細な導体パターンを容易に形成することができる。なお、本明細書では、「平均粒径」とは、特に断りのない限り、体積基準の平均粒径のことを指すものとする。
【0027】
また、インク200中において、銀粒子の平均粒子間距離は、1.7nm以上380nm以下であるのが好ましく、1.75nm以上300nm以下であるのがより好ましい。これにより、導体パターン形成用インク200の粘度をより適度なものとすることができ、吐出安定性に特に優れたものとなる。
また、インク200中に含まれる銀粒子(分散剤が表面に吸着していない銀粒子(金属粒子))の含有量は、0.5wt%以上60wt%以下であるのが好ましく、10wt%以上45wt%以下であるのがより好ましい。これにより、導体パターン20の断線をより効果的に防止することができ、より信頼性の高い導体パターン20を提供することができる。
また、銀粒子(金属粒子)は、その表面に分散剤が付着した銀コロイド粒子(金属コロイド粒子)として、水系分散媒中に分散していることが好ましい。これにより、銀粒子の水系分散媒への分散性が特に優れたものとなり、インク200の吐出安定性が特に優れたものとなる。
【0028】
分散剤としては、特に限定されないが、COOH基とOH基とを合わせて3個以上有し、かつ、COOH基の数がOH基と同じか、それよりも多いヒドロキシ酸またはその塩を含むことが好ましい。これらの分散剤は、銀粒子の表面に吸着してコロイド粒子を形成し、分散剤中に存在するCOOH基の電気的反発力によって銀コロイド粒子を水溶液中に均一に分散させてコロイド液を安定化する働きを有する。このように、銀コロイド粒子が安定してインク200中に存在することにより、より容易に微細な導体パターン20を形成することができる。また、インク200によって形成されたパターン(導体パターン前駆体30)において銀粒子が均一に分布し、クラック、断線等が発生しにくいものとなる。これに対して、分散剤中のCOOH基とOH基の数が3個未満であったり、COOH基の数がOH基の数よりも少ないと、銀コロイド粒子の分散性が十分に得られない場合がある。
このような分散剤としては、例えば、クエン酸、りんご酸、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三リチウム、クエン酸三アンモニウム、りんご酸二ナトリウム、タンニン酸、ガロタンニン酸、五倍子タンニン等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
また、分散剤は、COOH基とSH基とを合わせて2個以上有するメルカプト酸またはその塩を含んでいてもよい。これらの分散剤は、メルカプト基が銀微粒子の表面に吸着してコロイド粒子を形成し、分散剤中に存在するCOOH基の電気的反発力によってコロイド粒子を水溶液中に均一に分散させてコロイド液を安定化する働きを有する。このように、銀コロイド粒子が安定してインク200中に存在することにより、より容易に微細な導体パターン20を形成することができる。また、インク200によって形成されたパターン(導体パターン前駆体30)において銀粒子が均一に分布し、クラック、断線等が発生しにくいものとなる。これに対して、分散剤中のCOOH基とSH基の数が2個未満すなわち片方のみであると、銀コロイド粒子の分散性が十分に得られない場合がある。
【0030】
このような分散剤としては、例えば、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、チオジプロピオン酸、メルカプトコハク酸、チオ酢酸、メルカプト酢酸ナトリウム、メルカプトプロピオン酸ナトリウム、チオジプロピオン酸ナトリウム、メルカプトコハク酸二ナトリウム、メルカプト酢酸カリウム、メルカプトプロピオン酸カリウム、チオジプロピオン酸カリウム、メルカプトコハク酸二カリウム等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
インク200中における銀コロイド粒子の含有量は、1wt%以上60wt%以下であるのが好ましく、5wt%以上50wt%以下であるのがより好ましい。銀コロイド粒子の含有量が前記下限値未満であると、銀の含有量が少なく、導体パターン20を形成した際、比較的厚い膜を形成する場合に、複数回重ね塗りする必要が生じる。一方、銀コロイド粒子の含有量が前記上限値を超えると、銀の含有量が多くなり、分散性が低下し、これを防ぐためには攪拌の頻度が高くなる。
【0032】
また、銀コロイド粒子の熱重量分析における500℃までの加熱減量は、1wt%以上25wt%以下が好ましい。コロイド粒子(固形分)を500℃まで加熱すると、表面に付着した分散剤、後述する還元剤(残留還元剤)等が酸化分解され、大部分のものはガス化されて消失する。残留還元剤の量は、僅かであると考えられるので、500℃までの加熱による減量は、銀コロイド粒子中の分散剤の量にほぼ相当すると考えられる。加熱減量が1wt%未満であると、銀粒子に対する分散剤の量が少なく、銀粒子の充分な分散性が低下する。一方、25wt%を超えると、銀粒子に対する残留分散剤の量が多なり、導体パターンの比抵抗が高くなる。但し、比抵抗は、導体パターン20の形成後に加熱焼結して有機分を分解消失させることである程度改善することができる。そのため、より高温で焼結されるセラミックス基板等に有効である。
【0033】
〔有機バインダー〕
また、導体パターン形成用インク200は、有機バインダーを含んでいてもよい。有機バインダーは、導体パターン形成用インク200を用いて形成された導体パターン前駆体30において、銀粒子の凝集を防止するものである。すなわち、形成された導体パターン前駆体30において、有機バインダーは、銀粒子同士の間に存在することで銀粒子同士が凝集して、パターンの一部に亀裂(クラック)が生じることを防止できる。また、焼結時においては、有機バインダーは、分解されて除去されることができ、導体パターン前駆体30中の銀粒子同士は、結合して導体パターン20を形成する。
【0034】
また、導体パターン形成用インク200が有機バインダーを含むものであることにより、セラミックス成形体7に対する導体パターン前駆体30の密着性を特に優れたものとすることができ、導体パターン前駆体30を構成する金属粒子の不本意な部位への流れ出しがより確実に防止される。その結果、クラック、断線、短絡等の発生をより効果的に防止し、導体パターン20をより高い精度で形成することができる。すなわち、最終的に得られる導電パターン20の信頼性を特に高いものとすることができる。
【0035】
有機バインダーとしては、特には限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール#200(重量平均分子量200)、ポリエチレングリコール#300(重量平均分子量300)、ポリエチレングリコール#400(平均分子量400)、ポリエチレングリコール#600(重量平均分子量600)、ポリエチレングリコール#1000(重量平均分子量1000)、ポリエチレングリコール#1500(重量平均分子量1500)、ポリエチレングリコール#1540(重量平均分子量1540)、ポリエチレングリコール#2000(重量平均分子量2000)等のポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール#200(重量平均分子量:200)、ポリビニルアルコール#300(重量平均分子量:300)、ポリビニルアルコール#400(平均分子量:400)、ポリビニルアルコール#600(重量平均分子量:600)、ポリビニルアルコール#1000(重量平均分子量:1000)、ポリビニルアルコール#1500(重量平均分子量:1500)、ポリビニルアルコール#1540(重量平均分子量:1540)、ポリビニルアルコール#2000(重量平均分子量:2000)等のポリビニルアルコール、ポリグリセリン、ポリグリセリンエステル等のポリグリセリン骨格を有するポリグリセリン化合物が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ポリグリセリンエステルとしては、例えば、ポリグリセリンのモノステアレート、トリステアレート、テトラステアレート、モノオレエート、ペンタオレエート、モノラウレート、モノカプリレート、ポリシノレート、セスキステアレート、デカオレエート、セスキオレエート等が挙げられる。
【0036】
この中でも、有機バインダーとして、ポリグリセリン化合物を用いた場合、以下のような効果が得られる。
ポリグリセリン化合物は、導体パターン形成用インク200を用いて形成された導体パターン前駆体30を乾燥(脱分散媒)した際に、導体パターン前駆体30にクラックが発生するのを特に好適に防止することができる。これは、以下のように考えられる。導体パターン形成用インク200中にポリグリセリン化合物が含まれることにより、銀粒子(金属粒子)の間に高分子鎖が存在することとなり、ポリグリセリン化合物が銀粒子同士の距離を適度なものとすることができる。さらに、ポリグリセリン化合物は比較的沸点が高いため、水系分散媒の除去時においては除去されず、銀粒子の周囲に付着する。以上により、水系分散媒除去時において、ポリグリセリン化合物が銀粒子を包み込んだ状態が長く続き、水系分散媒の揮発による急激な体積収縮が避けられるとともに銀の粒成長(凝集)が妨げられる結果、導体パターン前駆体30中のクラックの発生が抑制されると考えられる。
【0037】
また、ポリグリセリン化合物は、導体パターン20を形成する際の焼結時において、断線が発生するのをより確実に防止することができる。これは、以下のように考えられる。ポリグリセリン化合物は、比較的沸点あるいは分解温度が高い。このため、導体パターン前駆体30から導体パターン20を形成する過程において、水系分散媒が蒸発した後、比較的高い温度まで、ポリグリセリン化合物を、蒸発或いは熱(酸化)分解せずに、導体パターン前駆体30中に存在させることができる。したがって、ポリグリセリン化合物が蒸発或いは熱(酸化)分解するまでは、銀粒子の周囲にポリグリセリン化合物が存在し、銀粒子同士の接近と凝集とを抑制することができ、ポリグリセリン化合物が分解した後には、より均一に銀粒子同士を接合させることができる。さらに、焼結時においてパターン中の銀粒子(金属粒子)の間に高分子鎖(ポリグリセリン化合物)が存在することとなり、ポリグリセリン化合物が銀粒子同士の距離を保つことができる。また、このポリグリセリン化合物は、適度な流動性を有している。このため、ポリグリセリン化合物を含むことにより、導体パターン前駆体30は、セラミックス成形体7の温度変化による膨張・収縮への追従性が優れたものとなる。
【0038】
以上より、形成された導体パターン20に断線が生じることをより確実に防止することができると考えられる。
また、このようなポリグリセリン化合物を含むことにより、インク200の粘度をより適度なものとすることができ、インクジェットヘッド110からの吐出安定性をより効果的に向上させることができる。また、成膜性も向上させることができる。
【0039】
ポリグリセリン化合物としては、上述した中でも、ポリグリセリンを用いるのが好ましい。ポリグリセリンは、セラミックス成形体7の温度変化による膨張・収縮への追従性が特に優れるとともに、セラミックス成形体7の焼結後には、導体パターン20中からより確実に除去することができる成分である。その結果、導体パターン20の電気的特性をより高いものとすることができる。さらに、ポリグリセリンは、水系分散媒への溶解度も高いので、好適に用いることができる。
【0040】
有機バインダーは、その重量平均分子量が300以上3000以下であるのが好ましく、400以上1000以下であるのがより好ましく、400以上600以下であるのがさらに好ましい。これにより、導体パターン形成用インク200を用いて形成されたパターンを乾燥した際に、クラックの発生をより確実に防止することができる。これに対し、有機バインダーの重量平均分子量が前記下限値未満であると、有機バインダーの組成によっては、水系分散媒を除去する際に有機バインダーが分解しやすい傾向があり、クラックの発生を防止する効果が小さくなる。また、有機バインダーの重量平均分子量が前記上限値を超えると、有機バインダーの組成によっては、排除体積効果等によりインク200中への溶解性、分散性が低下する場合がある。
【0041】
また、インク200中に有機バインダーの含有量は、1wt%以上30wt%以下であるのが好ましく、5wt%以上20wt%以下であるのがより好ましい。これにより、インク200の吐出安定性を特に優れたものとしつつ、クラック、断線の発生をより効果的に防止することができる。これに対して、有機バインダーの含有量が前記下限値未満であると、有機バインダーの組成によっては、クラックの発生を防止する効果が小さくなる場合がある。また、有機バインダーの含有量が前記上限値を超えると、有機バインダーの組成によっては、インク200の粘度を十分に低いものとすることが困難な場合がある。
【0042】
〔乾燥抑制剤〕
また、導体パターン形成用インク200は、乾燥抑制剤を含んでいてもよい。乾燥抑制剤は、インク200中の水系分散媒の不本意な揮発を防止するものである。その結果、インクジェット装置の吐出部付近において水系分散媒が揮発することを防止でき、インク200の粘度の上昇、乾燥が抑えられる。導体パターン形成用インク200は、このような乾燥抑制剤を含む結果、インク200の液滴の吐出安定性が特に優れたものとなる。すなわち、インク200の液滴の重量のばらつきが小さいものとなり、目詰まり、飛行曲がり等が少ないものとなる。また、特に、インクジェット装置に導体パターン形成用インク200を充填した後に、長期間(例えば、5日間)運転を行わずにインクジェット装置を待機状態とした場合であっても、導体パターン形成用インクを、均一な量で、目的とする位置に精度よく吐出することができる。
このような乾燥抑制剤としては、下記式(I)で示される化合物、アルカノールアミン、糖アルコール等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
【化1】

(ただし、R、R’は、それぞれ、Hまたはアルキル基である。)
【0044】
上記式(I)で表される化合物は、水素結合性の高い成分である。このため、水との親和性が高く、適度な水分を保持することができ、導体パターン形成用インク200の水系分散媒の不本意な揮発を防止することができる。
また、上記化合物は、比較的燃焼しやすく、導体パターン20を形成する際には導体パターン20内からより容易に除去(酸化分解)することができる。
また、上述したような化合物は、金属粒子(銀粒子)が前述したように表面に分散剤が付着したコロイド粒子である場合、表面の分散剤と水素結合により結合し、金属粒子の分散安定性を向上させる効果を有している。これにより、導体パターン形成用インク200の吐出安定性に優れるとともに、保存安定性にも優れたものとなる。
【0045】
上述したように、本発明で用いる上記式(I)で表される化合物中における、R、R’は、それぞれ、水素またはアルキル基であるが、R、R’は、ともに水素であるのが好ましい。すなわち、尿素であるのが好ましい。これにより、上述したような保湿性を特に高いものとすることができ、特に優れた吐出安定性を得ることができる。また、金属粒子が上述したようなコロイド粒子として存在する場合に、特に優れた分散安定性を示すものとなる。
【0046】
このような上記式(I)で表される化合物のインク中における含有量は、5wt%以上25wt%以下であるのが好ましく、8wt%以上20wt%以下であるのがより好ましく、10wt%以上18wt%以下であるのがさらに好ましい。これにより、導体パターン形成用インク200の不本意な乾燥をより効率よく防止することができる。その結果、インク200の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0047】
アルカノールアミンは、保湿性の高い成分であるとともに、金属粒子が前述したようなコロイド粒子である場合に、コロイド粒子表面の分散剤の官能基を活性化させることができ、金属粒子の分散安定性をより高いものとすることができる。
アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン等各種のものを挙げることができる。
【0048】
また、アルカノールアミンは、第3級アミンであるのが好ましい。第3級アミンは、アルカノールアミンの中でも、特に保湿性が高く、上記効果をより顕著なものとすることができる。
また、第3級アミンの中でも、取り扱いやすさや、保湿性の高さ等の観点から、特に、トリエタノールアミンを用いるのが好ましい。
導体パターン形成用インク200中におけるアルカノールアミンの含有量は、1wt%以上10wt%以下であるのが好ましく、3wt%以上7wt%以下であるのがより好ましい。これにより、導体パターン形成用インク200の吐出安定性をより効果的に優れたものとすることができる。
【0049】
糖アルコールは、糖類のアルデヒド基およびケトン基を還元して得られるものである。
また、糖アルコールは、高い保湿性を有する化合物である。また、糖アルコールは、分子量あたりの酸素数が多いため、雰囲気が糖アルコールの分解温度に達すると、容易に分解して除去される。このため、導体パターン20を形成する際には、導体パターン前駆体30の温度を糖アルコールの分解温度よりも高くすることで、形成される導体パターン20内から糖アルコールを確実に除去(酸化分解)することができる。
【0050】
糖アルコールとしては、例えば、トレイトール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、スレイトール、グリトール、タリトール、ガラクチトール、アリトール、アルトリトール、ドルシトール、イディトール、グリセリン(グリセロール)、イノシトール、マルチトール、イソマルチトール、ラクチトール、ツラニトール等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
上述したような糖アルコールの、導体パターン形成用インク200中における含有量は、3wt%以上20wt%以下であるのが好ましく、5wt%以上15wt%以下であるのがより好ましい。これにより、導体パターン形成用インク200の水系分散媒の揮発をより確実に抑制することができ、導体パターン形成用インク200は、より長期にわたって液滴の吐出安定性が特に優れたものとなる。
【0052】
〔表面張力調整剤〕
また、導体パターン形成用インク200は、表面張力調整剤を含んでいてもよい。
表面張力調整剤は、導体パターン形成用インク200とセラミックス成形体7との接触角を所定の角度に調整する機能を有している。
表面張力調整剤としては、各種界面活性剤を用いることができ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、アセチレングリコール系化合物を含むことが好ましい。
【0053】
アセチレングリコール系化合物は、少ない添加量で、導体パターン形成用インク200とセラミックス成形体7との接触角を所定の範囲に調整することができる。このように、導体パターン形成用インク200とセラミックス成形体7との接触角を所定の範囲に調整することにより、より微細な導体パターン20を形成することができる。また、吐出した液滴内に気泡が混入した場合であっても、速やかに気泡を除去することができる。その結果、形成される導体パターン20でのクラック、断線の発生をより効果的に防止することができる。
【0054】
アセチレングリコール系化合物としては、例えば、サーフィノール104シリーズ(104E、104H、104PG−50、104PA等)、サーフィノール400シリーズ(420、465、485等)、オルフィンシリーズ(EXP4036、EXP4001、E1010等)(「サーフィノール」および「オルフィン」は、日信化学工業株式会社の商品名)等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
また、インク200中には、HLB値が異なる2種以上のアセチレングリコール系化合物を含んでいるのが好ましい。導体パターン形成用インク200とセラミックス成形体7との接触角を所定の範囲により容易に調整することができる。
特に、インク200中に含まれる2種以上のアセチレングリコール系化合物のうち、最もHLB値が高いアセチレングリコール系化合物のHLB値と、最もHLB値が低いアセチレングリコール系化合物のHLB値との差が、4以上12以下であるのが好ましく、5以上10以下であるのがより好ましい。これにより、より少ないアセチレングリコール系化合物の添加量で、導体パターン形成用インク200とセラミックス成形体7との接触角を所定の範囲により容易に調整することができる。
【0056】
インク200中に2種以上のアセチレングリコール系化合物を含むものを用いる場合、最もHLB値の高いアセチレングリコール系化合物のHLB値は、8以上16以下であるのが好ましく、9以上14以下であるのがより好ましい。
また、インク200中に2種以上のアセチレングリコール系化合物を含むものを用いる場合、最もHLB値の低いアセチレングリコール系化合物のHLB値は、2以上7以下であるのが好ましく、3以上5以下であるのがより好ましい。
インク200中に含まれる表面張力調整剤の含有量は、0.001wt%以上1wt%以下であるのが好ましく、0.01wt%以上0.5wt%以下であるのがより好ましい。これにより、導体パターン形成用インク200とセラミックス成形体7との接触角をより効果的に所定の範囲に調整することができる。
【0057】
〔その他の成分〕
なお、導体パターン形成用インク200の構成成分は、上記成分に限定されず、上記以外の成分を含んでいてもよい。
このような成分としては、例えば、チオ尿素、トリメチロールプロパン、2−ピロリジノンなどの保湿剤、トリエチルアミン、トリメチルアミンなどのpH調整剤、その他防腐剤、防カビ剤等が挙げられる。
【0058】
また、導体パターン形成インク200の粘度は、特に限定されないが、1mPa・s以上25mPa・s以下であることが好ましく、3mPa・s以上25mPa・s以下であることがより好ましい。これにより、液滴の吐出安定性を優れたものとすることができるとともに、セラミックス成形体7に着弾したインク200の不本意な濡れ広がりをより確実に防止することができ、微細な線幅の導体パターン前駆体30を形成することができる。
【0059】
<インクジェット装置>
次に、本実施形態のインクジェット装置(液滴吐出装置)100について説明する。
本実施形態において、上述したような導体パターン形成用インク200の吐出は、例えば図2および図3に示すインクジェット装置(液滴吐出装置)100を用いることにより行うことができる。以下に、インクジェット装置100およびインクジェット装置100を用いた液滴吐出について説明する。
図2において、X軸方向はベース130の左右方向であり、Y軸方向は前後方向であり、Z軸方向は上下方向である。
【0060】
インクジェット装置100は、インクジェット方式でインクの液滴を吐出する装置である。このインクジェット装置100は、インク200の液滴を吐出する図3に示すインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド。以下、単に「ヘッド」ともいう)110と、ベース130と、テーブル140と、制御装置(制御手段)190と、テーブル位置決め手段170と、ヘッド位置決め手段180とを有している。なお、インクジェット装置100は、通常は、複数のインクジェットヘッド110を備えるヘッドユニットを有しているが、ここでは、代表的に、単一のインクジェットヘッド110を有する場合について説明する。
【0061】
ベース130は、テーブル140、テーブル位置決め手段170、およびヘッド位置決め手段180等の液滴吐出装置100の各構成部材を支持する台である。
テーブル140は、テーブル位置決め手段170を介してベース130に設置されている。また、テーブル140は、基材S(本実施形態ではセラミックスグリーンシート7)を載置(支持)するものである。
また、テーブル140の裏面には、セラミックスグリーンシート7を加熱するラバーヒーター(加熱手段)150が配設されている。テーブル140上に載置されたセラミックスグリーンシート7は、その上面全体がラバーヒーター150により所定の温度に加熱される。
【0062】
テーブル位置決め手段170は、第1移動手段171と、モーター174とを有している。テーブル位置決め手段170は、ベース130におけるテーブル140のY軸方向(X軸方向に垂直であって水平な方向)の位置およびθz方向(Z軸周りの方向)の回転位置を決定し、これにより、ベース130におけるセラミックスグリーンシート7のY軸方向の位置およびθz方向の回転位置を決定する。
【0063】
第1移動手段171は、Y軸方向に沿って設けられた2本のレール172と、当該レール172に沿って移動可能に設置された支持台173と、モーター(図示せず)とを有している。支持台173は、モーター174を介してテーブル140を支持している。
第1移動手段171のモーターの駆動により、支持台173がレール172に沿って移動し、基材Sを載置するテーブル140は、Y軸方向に移動および位置決めされる。
【0064】
モーター174は、テーブル140を支持しており、そのモーター174の駆動により、テーブル140がθz方向に揺動および位置決めされる。
ヘッド位置決め手段180は、第2移動手段181と、リニアモーター(第3移動手段)186と、モーター187、188および189とを有している。ヘッド位置決め手段180は、ヘッド110のY軸方向およびZ軸方向(X軸方向およびY軸方向に垂直な方向、すなわち、鉛直方向)の位置をそれぞれ決定する。
【0065】
第2移動手段181は、ベース130から立設する2本の支持柱182と、当該2つの支持柱182の間に支持され、X軸方向(水平な一方向))に沿って設けられた2本のレール184を有するレール台183と、レール184に沿って移動可能に設置された支持部材185と、モーター(図示せず)とを有している。支持部材185は、リニアモーター186を介してヘッド110を支持している。
【0066】
第2移動手段181のモーターの駆動により、支持部材185がレール184に沿って移動し、リニアモーター186およびヘッド110は、X軸方向に移動および位置決めされる。
リニアモーター186は、ヘッド110を支持しており、そのリニアモーター186の駆動により、ヘッド110がZ軸方向に移動および位置決めされる。
また、モーター187、188および189の駆動により、それぞれ、ヘッド110が、α方向(Z軸周りの方向)、β方向(Y軸周りの方向)およびγ方向(X軸周りの方向)に揺動および位置決めされる。
【0067】
以上のようなテーブル位置決め手段170およびヘッド位置決め手段180により、インクジェット装置100は、ヘッド110のインク吐出面115Pと、テーブル140上の基材Sとの相対的な位置および姿勢を、正確にコントロールできるようになっている。なお、第1移動手段171および第2移動手段181により、テーブル140とヘッド110とを相対的に移動させる移動機構(移動手段)が構成される。
【0068】
図3に示すように、ヘッド110は、インクジェット方式(液滴吐出方式)によってインク200をノズル(吐出部)118から吐出するものである。テーブル140に載置された基材Sに対し、このヘッド110のノズル118からインク200の液滴が吐出され、付着(着弾)する。本実施形態では、ヘッド110は、圧電体素子としてのピエゾ素子113を用いてインク200を吐出させるピエゾ方式を用いている。ピエゾ方式は、インク200に熱を加えないため、材料の組成に影響を与えないなどの利点を有する。
【0069】
ヘッド110は、ヘッド本体111と、振動板112と、ピエゾ素子113とを有している。
ヘッド本体111は、本体114と、その下端面にノズルプレート115とを有している。そして、本体114を板状のノズルプレート115と振動板112とが挟み込むことにより、空間としてのリザーバー116およびリザーバー116から分岐した複数のインク室117が形成されている。
【0070】
リザーバー116には、インクタンク(図示せず)よりインク200が供給される。そして、リザーバー116は、各インク室117にインク200を供給するための流路を形成している。
また、ノズルプレート115は、本体114の下端面に装着されており、インク吐出面115Pを構成している。このノズルプレート115には、インク200を吐出する複数のノズル118が、各インク室117に対応して形成されている。そして、各インク室117から対応するノズル118に向かって、インク流路が形成されている。
【0071】
振動板112は、ヘッド本体111の上端面に装着されており、各インク室117の壁面を構成している。振動板112は、ピエゾ素子113の振動に応じて振動可能となっている。
ピエゾ素子113は、その振動板112のヘッド本体111と反対側に、各インク室117に対応して設けられている。ピエゾ素子113は、水晶等の圧電材料を一対の電極(図示せず)で挟持したものである。その一対の電極は、駆動回路191に接続されている。
【0072】
そして、駆動回路191からピエゾ素子113に電気信号を入力すると、ピエゾ素子113が膨張変形または収縮変形する。ピエゾ素子113が収縮変形すると、インク室117の圧力が低下して、リザーバー116からインク室117にインク200が流入する。また、ピエゾ素子113が膨張変形すると、インク室117の圧力が増加して、ノズル118からインク200が吐出される。なお、印加電圧を変化させることにより、ピエゾ素子113の変形量を制御することができる。また、印加電圧の周波数を変化させることにより、ピエゾ素子113の変形速度を制御することができる。すなわち、ピエゾ素子113への印加電圧を制御することにより、インク200の吐出条件を制御し得るようになっている。
【0073】
制御装置190は、例えば、第1移動手段171のモーター、モーター174、第2移動手段181のモーター、リニアモーター186、モーター187、188、189、ラバーヒーター150、駆動回路191等、インクジェット装置100の各部位の作動を制御する。その一例としては、制御装置190は、例えば、駆動回路191で生成する印加電圧の波形を調節してインク200の吐出条件を制御したり、また、ヘッド位置決め手段170およびテーブル位置決め手段180の作動を制御することにより基材Sへのインク200の吐出位置を制御する。なお、制御装置190により、ビットマップデータ作成手段の主機能が達成成される。この制御装置190のビットマップデータ作成手段の機能等は、後で詳述する。
以上のようなインクジェット装置100を用いることにより、インク200を、セラミックスグリーンシート7(基材S)上の所望する場所に所望の量、精度良く吐出することができる。
【0074】
次に、導体パターン、導体パターンの形成方法、導体パターンを有するセラミックス回路基板(配線基板)およびセラミックス回路基板の製造方法について説明する。
図1に示すように、セラミックス回路基板(配線基板)1は、セラミックス基板2が多数(例えば10枚から20枚程度)積層されてなる積層基板3と、この積層基板3の最外層、すなわち一方または両方の側の表面に形成された、微細配線等からなる回路4とを有して形成されたものである。
【0075】
積層基板3は、積層されたセラミックス基板2、2間に、導体パターン形成用インクにより形成された回路(導体パターン)20を備えている。
また、これら回路20には、これに接続するコンタクト(ビア)6が形成されている。このような構成によって回路20は、上下に配置された回路20、20間が、コンタクト6によって導通したものとなっている。なお、回路4も、回路20と同様に、導体パターン形成用インクにより形成されたものとなっている。
【0076】
次に、セラミックス回路基板1の製造方法を、図4の概略工程図を参照して説明する。
まず、原料粉体として、平均粒径が1〜2μm程度のアルミナ(Al)や酸化チタン(TiO)等からなるセラミックス粉末と、平均粒径が1〜2μm程度のホウ珪酸ガラス等からなるガラス粉末とを用意し、これらを適宜な混合比、例えば1:1の重量比で混合する。
【0077】
次に、得られた混合粉末に適宜なバインダー(結合剤)や可塑剤、有機溶剤(分散剤)等を加え、混合・撹拌することにより、スラリーを得る。ここで、バインダーとしては、ポリビニルブチラールが好適に用いられるが、これは水に不溶であり、かつ、いわゆる油系の有機溶媒に溶解しあるいは膨潤し易いものである。
次に、得られたスラリーを、ドクターブレード、リバースコーター等を用いてPETフィルム上にシート状に形成し、製品の製造条件に応じて数μm〜数百μm厚のシートに成形し、その後、ロールに巻き取る。
続いて、製品の用途に合わせて切断し、さらに所定寸法のシートに裁断する。本実施形態では、例えば1辺の長さを200mmとする正方形状に裁断する。
【0078】
次に、必要に応じて所定の位置に、COレーザー、YAGレーザー、機械式パンチ等によって孔開けを行うことでスルーホールを形成する。そして、このスルーホールに、金属粒子が分散した厚膜導電ペーストを充填することにより、コンタクト6となるべき部位を形成する。さらに、厚膜導電ペーストをスクリーン印刷によって所定の位置に端子部(図示せず)を形成する。このようにしてコンタクト6、端子部までを形成することにより、セラミックグリーンシート(セラミックス成形体)7を得る。なお、厚膜導電ペーストとしては、前述した導体パターン形成用インクを用いることができる。
【0079】
以上のようにして得られたセラミックスグリーンシート(セラミックス成形体)7の一方の側の表面に、導体パターン(回路)20の前駆体(導体パターン前駆体)を、前記コンタクトに連続した状態に形成する。すなわち、図5(a)に示すようにセラミックスグリーンシート7上に、前述したような導体パターン形成用インク200を液滴吐出(インクジェット)法により付与し、乾燥して、前記回路20となる導体パターン前駆体30を形成する。
【0080】
ここで、図7に示すように、導体パターン(配線パターン)20は、少なくとも1つのパッド部およびそのパッド部に接続する少なくとも1つの配線部を有している。図示の構成では、導体パターン20は、パッド部21および22と、そのパッド部21とパッド部22とを接続する配線部23とを有している。なお、導体パターン20は、これに限定されず、例えば、1つのパッド部に、複数の配線部が接続されていてもよい。また、パッド部の数は、1つでもよく、また、3以上でもよい。
【0081】
また、各パッド部21、22は、それぞれ、平面視で円形をなしている。なお、各パッド部21、22の形状は、それぞれ、これに限定されず、この他、例えば、楕円形や、四角形等の多角形等が挙げられる。また、パッド部21の形状とパッド部22の形状とが異なっていてもよい。
また、配線部23は、平面視で直線状(帯状)をなしている。なお、配線部23の形状は、これに限定されず、この他、例えば、曲線状、折れ線状等が挙げられ、また、これらを組み合わせた形状であってもよい。
【0082】
なお、本実施形態では、代表的に、図示の導体パターン20を形成する場合について説明する。
本実施形態において、導体パターン形成用インクの吐出は、前述した図2に示すインクジェット装置(液滴吐出装置)100、および、図3に示すインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)110を用い、ビットマップデータに基づいて行う。
【0083】
(ビットマップデータ作成工程)
まずは、図6に示すように、導体パターン前駆体30の形成に先立って、インクジェット装置100に対し、導体パターン20のCADデータ等の設計データを入力する。これにより、インクジェット装置100の制御装置190において、前記設計データに基づいて、図9に示す行列状に配置された複数のピクセル81を有するビットマップ8を示すビットマップデータを作成する(ステップS101)。
なお、本実施形態では、ビットマップ8の各ピクセル81の形状は、それぞれ、正方形(四角形)をなしているが、その形状に限定されないことは、言うまでもない。
【0084】
ビットマップ8のピクセル81は、インクの液滴を付着(着弾)させる位置に対応した第1ピクセル811と、インクの液滴を付着(着弾)させない位置に対応した第2ピクセル812とで構成されている。「インクの液滴を付着させる位置に対応する」とは、インクが最終的に付着することではなく、インクの液滴を着弾させる際の目標位置になっていることをいう。以下、ピクセルについては、第1ピクセル811と第2ピクセル812とを区別していうときには、前記のように、「第1ピクセル811」、「第2ピクセル812」といい、また、区別しないで総称していうときには、「ピクセル81」という。
【0085】
ピクセル81のピッチ(中心間距離)は、基材であるセラミックスグリーンシート7へのインクの液滴の着弾後の直径よりも小さく(但し、0は含まない)、諸条件に応じて適宜設定される。具体的には、ピクセル81のピッチは、セラミックスグリーンシート7へのインクの液滴の着弾後の直径の1/2以下(但し、0は含まない)であることが好ましく、1/3以下であることがより好ましい。これにより、1回の吐出動作で吐出したインクの液滴が濡れ広がり、複数のピクセル81に対応する位置に付着し、これによって、インクを付着させたい部位にインクが付着しないことが防止され、信頼性の高い導体パターン20を形成することができる。
【0086】
ビットマップ8の配線部23に対応する配線部対応部位84においては、第1ピクセル811と第2ピクセル812とを如何なるパターンで配置してもよく、また、第1ピクセル811のみを配置してもよい。なお、配線部対応部位84における第1ピクセル811の占める面積と第2ピクセル812の占める面積との比率を調整することにより、配線部23の厚さ等を調整することができる。なお、第1ピクセル811の占める面積と第2ピクセル812の占める面積との比率は、第1ピクセル811の数と第2ピクセル812の数との比率と等しい。
一方、ビットマップ8のパッド部21、22のそれぞれに対応するパッド部対応部位82、83においては、第1ピクセル811の集合体が複数の環状体を同心的に配置してなる形状をなすように、その第1ピクセル811を配置する。本実施形態では、各環状体85の形状は、それぞれ、円形であり、各環状体85で同心円が構成される。
【0087】
これにより、導体パターン20の前駆体(導体パターン前駆体)30のパッド部21、22に対応する部位(以下、「パッド部前駆体」という)31、32と配線部23に対応する部位(以下、「配線部前駆体」という)33との厚さの差を低減することができ、導体パターン前駆体30の表面を平坦にすることができる(図8参照)。これによって、クラック、断線等の発生が防止された信頼性の高い導体パターン20を効率よく形成することができる。
特に、パッド部21、22の寸法が大きい場合と小さい場合のいずれにおいてもパッド部前駆体31、32と配線部前駆体33との厚さの差を小さくすることができ、また、再現性も非常に良好である。
【0088】
また、第1ピクセル811の集合体が同心円状に配置されているので、パッド部21、22の外周のいずれの位置に配線部23が接続される場合でも、確実に、パッド部前駆体31、32と配線部前駆体33との厚さの差を小さくすることができる。これにより、パッド部21、22に、複数の配線部23が接続される場合でも容易に対応することができる。
このような効果は、ビットマップ8のパッド部対応部位82、83において、第1ピクセル811を単に間引いただけ(例えば、千鳥配置等)では、得ることができない。
【0089】
なお、各環状体85の形状は、それぞれ、円形に限定されず、この他、例えば、楕円形や、四角形等の多角形等が挙げられる。
また、ビットマップ8における各環状体85は、互いに離間していることが好ましい。すなわち、隣り合う2つの環状体85は、互いに接続しておらず、隣り合う2つの環状体85を接続する部位も設けられていないことが好ましい。これにより、パッド部前駆体31、32と配線部前駆体33との厚さの差をより低減することができる。
【0090】
また、環状体85を形成する第1ピクセル811は、間欠的に配置されていてもよいが、連続的に配置されていることが好ましい。これにより、パッド部前駆体31、32と配線部前駆体33との厚さの差をより低減することができる。
また、ビットマップ8における環状体85のピッチは、8μm以上70μm以下であることが好ましく、25μm以上55μm以下であることがより好ましい。これにより、パッド部前駆体31、32と配線部前駆体33との厚さの差をより低減することができる。
【0091】
また、環状体85のピッチは、パッド部対応部位82の直径の10%以上45%以下であることが好ましく、15%以上30%以下であることがより好ましい。これにより、パッド部前駆体31、32と配線部前駆体33との厚さの差をより低減することができる。
また、ビットマップ8のパッド部対応部位82、83においては、それぞれ、第1ピクセル811の占める面積の比率は、30%以上75%以下であることが好ましく、40%以上60%以下であることがより好ましい。これにより、パッド部前駆体31、32と配線部前駆体33との厚さの差をより低減することができる。
【0092】
(導体パターン前駆体形成工程)
次に、インクジェット装置100を用い、ビットマップデータに基づいて、液滴吐出法によりセラミックスグリーンシート7上にインクの液滴を吐出し、乾燥して、そのセラミックスグリーンシート7上に図8に示す導体パターン前駆体30を形成する(ステップS102)。
この場合、インクジェット装置100の制御装置190は、ビットマップデータを含む各情報に基づいて、第1移動手段171、第2移動手段181、ヘッド110、ラバーヒーター150等のインクジェット装置100の各部の作動を制御する。
【0093】
そして、インクジェット装置100は、第1移動手段171の作動により、テーブル140上に載置されたセラミックスグリーンシート7をY軸方向に移動させ(ヘッド110とテーブル140とを相対的に移動させ)、ヘッド110の下を通過させつつ、ビットマップデータに基づいて、ヘッド110の所定のノズル118からインク200の液滴を吐出して、セラミックスグリーンシート7上の所定の位置に付着させる(着弾させる)ように作動する。以下、この動作を「ヘッド110とセラミックスグリーンシート7(基材S)との主走査」、または単に「主走査」ともいう。
【0094】
前記ヘッド110とセラミックスグリーンシート7との主走査と、第2移動手段181の作動によるヘッド110のX軸方向の移動(これを「副走査」と呼ぶ)とを交互に繰り返し行うことにより、セラミックスグリーンシート7上の導体パターン20(導体パターン前駆体30)を形成する導体パターン形成領域内に、インクの液滴を付着(着弾)させる。この際、セラミックスグリーンシート7上のパッド部21、22(パッド部前駆体31、32)を形成するパッド部形成領域内には、インクの液滴を付着(着弾)させる位置が複数の環状体を同心的に配置してなる形状をなすように、インクの液滴を吐出する。本実施形態では、インクの液滴を付着させる位置が同心円状をなすようにインクの液滴を吐出する。
これにより、前述したように、パッド部前駆体31、32と配線部前駆体33との厚さの差を低減することができ、導体パターン前駆体30の表面を平坦にすることができる。これによって、クラック、断線等の発生が防止された信頼性の高い導体パターン20を効率よく形成することができる。
【0095】
なお、インクの液滴を付着させる順番は、その円に沿っている必要はない。これについては、後で説明する。
なお、セラミックスグリーンシート7上に付着したインクの液滴のうち、環状体85の径方向に沿って隣り合う2つの液滴の中心間距離(図9に示す「L1」に対応する距離)は、環状体85を構成する線の長手方向に沿って隣り合う2つの液滴の中心間距離(図9に示す「L2」に対応する距離)よりも長い。これにより、パッド部前駆体31、32と配線部前駆体33との厚さの差をより低減することができる。
また、本実施形態では、ラバーヒーター150の作動により、テーブル140が加熱され、テーブル140を介して、セラミックスグリーンシート7の上面全体が所定の温度になるように、そのセラミックスグリーンシート7が加熱されている。
【0096】
セラミックスグリーンシート7に着弾したインク200は、その表面側から水系分散媒の少なくとも一部が蒸発する。このとき、セラミックスグリーンシート7は加熱されているので、水系分散媒の蒸発が促進され、金属粒子が濃縮された層(導体パターン前駆体30)中の水系分散媒の含有率は効果的に低減される。
セラミックスグリーンシート7の加熱温度としては、特に限定されず、諸条件に応じて適宜設定されるが、インク200の吐出時の温度よりも高く、かつインク200の水系分散媒の沸点未満(水系分散媒に複数の液体が含まれる場合は、沸点の最も低い温度未満)の温度であることが好ましい。具体的には、セラミックスグリーンシート7の加熱温度は、例えば、40℃以上100℃未満であることが好ましく、50℃以上70℃以下であることがより好ましい。これにより、水系分散媒を突沸(沸騰)させることなく、インク200を迅速に乾燥させることができる。
【0097】
なお、形成した導体パターン前駆体30について、さらに乾燥処理を行ってもよい。乾燥処理は、上記の液滴吐出時におけるセラミックスグリーンシート7の加熱温度と同様の条件で行うことができる。
このようにして、セラミックスグリーンシート7上に、導体パターン前駆体30が形成される。
【0098】
この導体パターン前駆体30のパッド部前駆体31、32は、それぞれ、連続的に形成されている。また、配線部前駆体33も連続的に形成されている。すなわち、導体パターン前駆体30全体が連続的に形成されている。これにより、信頼性の高い導体パターン20を形成することができる。
また、パッド部前駆体31、32の厚さの最大値をa、配線部前駆体33の厚さの最大値をbとしたとき、aとbとの差は、10μm以下(但し、0を含む)であることが好ましく、5μm以下(但し、0を含む)であることがより好ましい。これにより、導体パターン20におけるクラック、断線等の発生を防止することができ、信頼性の高い導体パターン20を形成することができる。
また、|a−b|/aは、0.3以下(但し、0を含む)であることが好ましく、0.2以下(但し、0を含む)であることがより好ましい。これにより、導体パターン20におけるクラック、断線等の発生を防止することができ、信頼性の高い導体パターン20を形成することができる。
【0099】
ここで、本実施形態では、図10に示すように、ビットマップ8の複数のピクセル81の集合体を1単位とする。図示の構成では、行方向に4個、列方向に4個の行列状に配置された16個のピクセル81を1単位とし、以下、代表的に、この16個のピクセル81を1単位とする場合について説明する。
この構成においては、16回の主走査で、ピクセル81の集合体の1単位に対応するセラミックスグリーンシート7上へのインクの付着が完了するように、図示される番号の順番に、インクの液滴を吐出する(分割描画を行う)。
すなわち、N(Nは、1〜16の整数)回目の主走査において、「N」の番号が付されているピクセル81にインクの液滴を吐出する。但し、ピクセル81がインクの液滴を付着させる位置に対応した第1ピクセル811の場合にのみ、インクを吐出し、インクの液滴を付着させない位置に対応した第2ピクセル812の場合は、インクを吐出しない。
【0100】
1単位分の16個のピクセル81がすべて第1ピクセル811の場合を例に挙げると、まず、図10に示すように、初回の主走査において、インクの液滴51は、その液滴51がセラミックスグリーンシート7上へ着弾した状態で、隣り合う2つの液滴51同士が互いに離間するように吐出される。これにより、セラミックスグリーンシート7上で、隣り合う2つの液滴51同士が表面張力等によって引き合うことによりインクが局所的に集中してしまうことを防止することができる。これによって、パッド部前駆体31、32と配線部前駆体33との厚さの差をより低減することができる。
【0101】
そして、図11に示すように、2回目の主走査においては、インクの液滴52は、初回の主走査においてセラミックスグリーンシート7上に付着した隣り合う2つの液滴51の間に位置するように吐出される。これにより、初回の主走査において付着した隣り合う2つの液滴51が2回目の主走査において付着した液滴52によって繋がる。この場合、液滴51は、着弾直後の状態に比べて乾燥しているので、液滴52と接触しても問題がなく、インクが局所的に集中してしまうことを防止することができる。なお、液滴52は、前記液滴51と同様に、その液滴52がセラミックスグリーンシート7上へ着弾した状態で、隣り合う2つの液滴52同士が互いに離間するように吐出される。以降の主走査における説明は省略する。
【0102】
導体パターン前駆体30の厚さの調整は、インク200の吐出条件を設定することにより行うことができる。すなわち、導体パターン前駆体30の厚さが大きい部位を形成する場合には、当該部位の面積当たりのインク200の吐出量(または液滴数)を大きいものとし、一方で、導体パターン前駆体30の厚さが小さい部位を形成する場合には、当該部位の面積当たりのインク200の吐出量(または液滴数)を小さいものとすることで行うことができる。
なお、分散媒を蒸発させた後のインク200に乾燥抑制剤が含まれる場合、形成された導体パターン前駆体30が完全に乾燥しない状態でもパターンが流失してしまうおそれがない。従って、一旦、インク200を付与して乾燥してから長時間放置し、その後、再度インク200を付与することが可能になる。
【0103】
また、上述したような有機バインダーをインク200が含む場合、有機バインダー(特に、ポリグリセリン化合物)は、化学的、物理的に安定な化合物であるので、インク200を付与して乾燥してから長時間放置してもインク200が変質するおそれがなく、再度インク200を付与することが可能になり、より均質なパターンを形成できる。これにより、導体パターン前駆体30自体が多層構造になるおそれがなく、この結果、層間同士の間の比抵抗が上昇して導体パターン20全体の比抵抗が増大するおそれがない。
【0104】
上記の工程を経ることによって、本実施形態の導体パターン20は、従来のインクによって形成された導体パターンに比べて厚く形成することができる。より具体的には5μm以上の厚みのものを形成することができる。
このようにして導体パターン前駆体30を形成したら、同様の工程により、導体パターン前駆体30を形成したセラミックスグリーンシート7を必要枚数、例えば10枚から20枚程度作製する。
【0105】
(積層工程)
次いで、これらセラミックスグリーンシート7からPETフィルムを剥がし、これらを積層することにより、積層体12を得る。
この際に、積層するセラミックスグリーンシート7については、上下に重ねられるセラミックスグリーンシート7間で、それぞれの導体パターン前駆体30が必要に応じてコンタクト6を介して接続するように配置する。
その後、セラミックスグリーンシート7を構成するバインダーのガラス転移点以上に加熱しつつ、各セラミックスグリーンシート7同士を圧着する。これにより、積層体12を得る。
【0106】
(焼成工程)
このようにして積層体12を形成したら、例えば、ベルト炉などによって加熱処理(焼成処理)する。これにより、各セラミックスグリーンシート7は焼結されることで、図5(b)に示すようにセラミックス基板2となり、また、導体パターン前駆体30は、これを構成する銀粒子(金属粒子)が焼結して配線パターンや電極パターンからなる回路(導体パターン)20となる(回路4も同様)。そして、このように積層体12が加熱処理されることで、この積層体12は積層基板3となる。
【0107】
ここで、積層体12の加熱温度(焼成温度)としては、セラミックスグリーンシート7中に含まれるガラスの軟化点以上とするのが好ましく、具体的には、600℃以上900℃以下とするのが好ましい。また、加熱条件としては、適宜な速度で温度を上昇させ、かつ下降させるようにし、さらに、最大加熱温度、すなわち前記の600℃以上900℃以下の温度では、その温度に応じて適宜な時間保持するようにする。
【0108】
このようにガラスの軟化点以上の温度、すなわち前記温度範囲にまで加熱温度を上げることにより、得られるセラミックス基板2のガラス成分を軟化させることができる。したがって、その後常温にまで冷却し、ガラス成分を硬化させることにより、積層基板3を構成する各セラミックス基板2と回路(導体パターン)20との間がより強固に固着するようになる。
特に、900℃以下の温度で加熱することにより、得られるセラミックス基板2は、低温焼成セラミックス(LTCC)となる。
ここで、セラミックスグリーンシート7上に設けられた導体パターン前駆体30を構成する金属粒子は、加熱処理によって互いに融着し、連続することによって導電性を示すようになる。
【0109】
このような加熱処理によって回路20は、セラミックス基板2中のコンタクト6に直接接続させられ、導通させられて形成されたものとなる。ここで、この回路20が単にセラミックス基板2上に載っているだけでは、セラミックス基板2に対する機械的な接続強度が確保されず、したがって衝撃等によって破損してしまうおそれがある。しかしながら、本実施形態では、前述したようにセラミックスグリーンシート7中のガラスを一旦軟化させ、その後硬化させることにより、回路20をセラミックス基板2に対し強固に固着させている。したがって、形成された回路20は、機械的にも高い強度を有するものとなる。
【0110】
このようなセラミックス回路基板1の製造方法にあっては、特に積層基板3を構成する各セラミックス基板2の製造に際して、上述したようなセラミックスグリーンシート7に対して前記の導体パターン形成用インク200を付与しているので、所望の形状の導電パターン20を高精度で確実に形成することができる。
よって、本発明によれば、電子機器の構成要素となる電子部品について、その小型化の要求に応えることができるのはもちろん、多品種少量生産についてのニーズにも十分に対応可能となる。
【0111】
また、セラミックスグリーンシート7を加熱処理する際の加熱温度を、セラミックスグリーンシート7中に含まれるガラスの軟化点以上としているので、加熱処理によってセラミックスグリーンシート7をセラミックス基板2にした際、形成した導体パターン20が軟化したガラスによってセラミックス基板2(セラミックスグリーンシート7)上に強固に固着するようになり、したがって導体パターン20の機械的強度を高めることができる。
上述したような方法を用いて得られたセラミックス回路基板1の導体パターン20においては、銀粒子が相互に結合されており、少なくとも導体パターン20表面において前記銀粒子同士が隙間なく結合している。
【0112】
導体パターン20の比抵抗は、20μΩcm未満であることが好ましく、15μΩcm以下であることがより好ましい。このときの比抵抗は、インクの付与後、160℃で加熱、乾燥した後の比抵抗をいう。上記比抵抗が20μΩcm以上になると、導電性が要求される用途、すなわち回路基板上に形成する電極等に用いることが困難となる。
なお、上記のような導体パターン20は、携帯電話やPDA等の移動通話機器の高周波モジュール、インターポーザー、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、加速度センサー、弾性表面波素子、アンテナや櫛歯電極等の異形電極、その他各種計測装置等の電子部品等に適用することができる。
また、上述したようなセラミックス回路基板1は、各種の電子機器に用いられる電子部品となるものであり、各種配線や電極等からなる回路パターン、積層セラミックスコンデンサー、積層インダクター、LCフィルタ、複合高周波部品等を基板に形成してなるものである。
【0113】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本発明に、他の任意の工程が付加されていてもよい。
例えば、前述した実施形態では、導体パターン形成用インクとして、コロイド液を用いる場合について代表的に説明したが、コロイド液でなくてもよい。
また、前述した実施形態では、導体パターン形成用インクは、銀粒子が分散したものとして説明したが、銀以外のものであってもよい。金属粒子を構成する金属としては、例えば、銀、銅、パラジウム、白金、金、または、これらの合金等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。金属粒子が合金である場合、前記金属が主とするもので、他の金属を含む合金であってもよい。また、上記金属同士が任意の割合で混ざった合金であってもよい。また、混合粒子(例えば、銀粒子と銅粒子とパラジウム粒子とが任意の比率で存在するもの)が液中に分散したものであってもよい。これら金属は、抵抗率が小さく、かつ、加熱処理によって酸化されない安定なものであるから、これらの金属を用いることにより、低抵抗で安定な導体パターンを形成することが可能になる。
【0114】
また、前述した実施形態では、導体パターン形成用インクが、金属粒子を分散する分散媒として、水系分散媒を含む場合について代表的に説明したが、分散媒として、水および/または水との相溶性に劣る液体(例えば、25℃における水100gに対する溶解度が30g未満の液体)である非水系分散媒(油系分散媒)を含むものであってもよい。
また、前述した実施形態では、液滴吐出方式としてピエゾ方式を用いたが、これに限定されず、例えば、インクを加熱して発生した泡(バブル)によりインクを吐出させる方式、静電アクチュエータを用いる静電方式など、公知の種々の技術を適用することができる。
【0115】
また、前述した実施形態では、液滴吐出ヘッドがX軸方向に移動し、テーブル(基材)がY軸方向に移動するようになっているが、これに限定されず、液滴吐出ヘッドとテーブル(基材)とが、相対的に、X軸方向およびY軸方向に移動し得るようになっていればよい(液滴吐出ヘッドがテーブルに対して相対的にX軸方向およびY軸方向に移動し得るようになっていればよい)。他の構成例としては、例えば、液滴吐出ヘッドがY軸方向に移動し、テーブルがX軸方向に移動する構成、液滴吐出ヘッドがX軸方向およびY軸方向に移動する構成、テーブルがX軸方向およびY軸方向に移動する構成等が挙げられる。
【0116】
また、前述した実施形態では、配線基板は、多層基板であるが、これに限定されず、例えば、単層基板であってもよい。
また、基材(その前駆体も含む)としては、特に限定されず、例えば、アルミナ焼結体、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ガラスエポキシ樹脂、ガラス等からなる基板、セラミックスとバインダーとを含む材料で構成されたシート状のセラミックス成形体等が挙げられる。
【符号の説明】
【0117】
1…セラミックス回路基板(配線基板) 2…セラミックス基板 3…積層基板 4…回路(導体パターン) 6…コンタクト 7…セラミックスグリーンシート(セラミックス成形体) 8…ビットマップ 81…ピクセル 811…第1ピクセル 812…第2ピクセル 82、83…パッド部対応部位 84…配線部対応部位 85…環状体 12…積層体 20…回路(導体パターン) 21、22…パッド部 23…配線部 30…導体パターン前駆体 31、32…パッド部前駆体 33…配線部前駆体 51、52…液滴 100…インクジェット装置(液滴吐出装置) 110…インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド、ヘッド) 111…ヘッド本体 112…振動板 113…ピエゾ素子 114…本体 115…ノズルプレート 115P…インク吐出面 116…リザーバー 117…インク室 118…ノズル(吐出部) 130…ベース 140…テーブル 150…ラバーヒーター 170…テーブル位置決め手段 171…第1移動手段 172…レール 173…支持台 174…モーター 180…ヘッド位置決め手段 181…第2移動手段 182…支持柱 183…レール台 184…レール 185…支持部材 186…リニアモーター 187、188、189…モーター 190…制御装置 191…駆動回路 200…導体パターン形成用インク(インク) S…基材 S101、S102…ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴吐出法により基材上に導体パターン形成用インクの液滴を吐出し、乾燥して該基材上にパッド部と該パッド部に接続する配線部とを有する導体パターンの前駆体を形成する導体パターン前駆体形成工程と、
前記前駆体を焼成し、前記導体パターンを形成する焼成工程とを有し、
前記導体パターン前駆体形成工程では、前記基材上の前記パッド部を形成するパッド部形成領域内に、前記導体パターン形成用インクの液滴を付着させる位置が複数の環状体を同心的に配置してなる形状をなすように、前記導体パターン形成用インクの液滴を吐出することを特徴とする導体パターンの形成方法。
【請求項2】
パッド部と該パッド部に接続する配線部とを有する導体パターンの設計データに基づいて、行列状に配置された複数のピクセルを有するビットマップを示すビットマップデータを作成するビットマップデータ作成工程と、
前記ビットマップデータに基づいて、液滴吐出法により基材上に導体パターン形成用インクの液滴を吐出し、乾燥して該基材上に前記導体パターンの前駆体を形成する導体パターン前駆体形成工程と、
前記前駆体を焼成し、前記導体パターンを形成する焼成工程とを有し、
前記ビットマップデータ作成工程では、前記ビットマップの前記パッド部に対応する部位において、前記導体パターン形成用インクの液滴を付着させる位置に対応した前記ピクセルの集合体が複数の環状体を同心的に配置してなる形状をなすように、該ピクセルを配置することを特徴とする導体パターンの形成方法。
【請求項3】
前記ピクセルのピッチは、前記導体パターン形成用インクの液滴の前記基材への着弾後の直径の1/2以下(但し、0は含まない)である請求項2に記載の導体パターンの形成方法。
【請求項4】
前記ビットマップの前記パッド部に対応する部位において、前記導体パターン形成用インクの液滴を付着させる位置に対応した前記ピクセルの占める面積の比率は、30%以上75%以下である請求項2または3に記載の導体パターンの形成方法。
【請求項5】
前記複数の環状体は、互いに離間している請求項1ないし4のいずれかに記載の導体パターンの形成方法。
【請求項6】
前記基材上に付着した前記導体パターン形成用インクの液滴のうち、前記環状体の径方向に沿って隣り合う2つの前記液滴の中心間距離は、前記環状体を構成する線の長手方向に沿って隣り合う2つの前記液滴の中心間距離よりも長い請求項1ないし5のいずれかに記載の導体パターンの形成方法。
【請求項7】
前記前駆体の前記パッド部に対応する部位は、連続的に形成されている請求項1ないし6のいずれかに記載の導体パターンの形成方法。
【請求項8】
前記前駆体の前記パッド部に対応する部位の厚さの最大値をa、前記前駆体の前記配線部に対応する部位の厚さの最大値をbとしたとき、|a−b|/aが、0.3以下(但し、0を含む)である請求項1ないし7のいずれかに記載の導体パターンの形成方法。
【請求項9】
導体パターン前駆体形成工程では、前記導体パターン形成用インクの液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと前記基材とを相対的に移動させつつ前記液滴吐出ヘッドから前記基材上に前記導体パターン形成用インクの液滴を吐出し、
初回の走査において、前記導体パターン形成用インクの液滴が前記基材へ着弾した状態で、隣り合う2つの前記液滴同士が互いに離間するように、前記導体パターン形成用インクの液滴を吐出する請求項1ないし8のいずれかに記載の導体パターンの形成方法。
【請求項10】
前記導体パターン形成用インクは、金属粒子と該金属粒子が分散する分散媒とを含み、
前記導体パターン前駆体形成工程において、前記導体パターン形成用インクの吐出時の温度よりも高く、かつ前記分散媒の沸点未満の温度に前記基材を加熱する請求項1ないし9のいずれかに記載の導体パターンの形成方法。
【請求項11】
前記基材は、セラミックス材料とバインダーとを含む材料で構成されたセラミックス成形体であり、
前記焼成工程において、前記セラミックス成形体および前記前駆体が焼成され、セラミックス基板上に前記導体パターンが形成される請求項1ないし10のいずれかに記載の導体パターンの形成方法。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の導体パターンの形成方法を用いて形成された導体パターンを有することを特徴とする配線基板。
【請求項13】
基材を支持するテーブルと、
前記テーブルに支持された前記基材に対して導体パターン形成用インクの液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、
前記テーブルと前記液滴吐出ヘッドとを相対的に移動させる移動機構と、
前記液滴吐出ヘッドおよび前記移動機構の作動を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記基材上にパッド部と該パッド部に接続する配線部とを有する導体パターンを形成する際、前記液滴吐出ヘッドおよび前記移動機構の作動を制御し、前記移動機構により前記テーブルと前記液滴吐出ヘッドとを相対的に移動させつつ、前記基材上の前記パッド部を形成するパッド部形成領域内に、前記導体パターン形成用インクの液滴を付着させる位置が複数の環状体を同心的に配置してなる形状をなすように、前記液滴吐出ヘッドから前記導体パターン形成用インクの液滴を吐出するよう構成されていることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項14】
基材を支持するテーブルと、
前記テーブルに支持された前記基材に対して導体パターン形成用インクの液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、
前記テーブルと前記液滴吐出ヘッドとを相対的に移動させる移動機構と、
パッド部と該パッド部に接続する配線部とを有する導体パターンの設計データに基づいて、行列状に配置された複数のピクセルを有するビットマップを示すビットマップデータを作成するビットマップデータ作成手段と、
前記液滴吐出ヘッドおよび前記移動機構の作動を制御する制御手段とを備え、
前記ビットマップデータ作成手段は、前記ビットマップの前記パッド部に対応する部位において、前記導体パターン形成用インクの液滴を付着させる位置に対応した前記ピクセルの集合体が複数の環状体を同心的に配置してなる形状をなすように、該ピクセルを配置するよう構成され、
前記制御手段は、前記ビットマップデータに基づいて、前記液滴吐出ヘッドおよび前記移動機構の作動を制御し、前記移動機構により前記テーブルと前記液滴吐出ヘッドとを相対的に移動させつつ前記液滴吐出ヘッドから前記基材上に前記導体パターン形成用インクの液滴を吐出するよう構成されていることを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−146485(P2011−146485A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5343(P2010−5343)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】