説明

導体接続方法及び導体接続構造体

【課題】圧着接続用の導体接続具を良好に導体に接続すること。
【解決手段】導体接続構造体100を形成する際に、圧着端子10の接続管部11の外側に装着可能な圧縮用カラー20を用いることで、接続管部11を導体30の周囲に均一に圧縮することができ、圧着端子10を導体30に良好に圧縮接続することを可能にした。特に、圧縮用カラー20の外径寸法を、圧着端子10の接続管部11の外径寸法の7/6倍(約1.17倍)以上にすることで、圧縮率6%以上を満足する強固な圧縮接続を成し、安定した長期通電特性を有し、4/3倍(約1.33倍)以下とすることでブスバーとの接続を容易にする導体接続構造体100を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体接続方法及び導体接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
電力ケーブルや電力用絶縁電線などの導体に、端子などの導体接続具を接続する技術として、圧縮接続による手法と圧着接続による手法とが知られている。
【0003】
圧縮接続は、導体接続具における厚肉・中空筒状の接続管部に導体を挿入した後、その接続管部を一対の六角ダイスで挟み込み、ダイス同士が接触するまで圧縮して接続管部を塑性加工する接続方法である。この圧縮接続によれば、六角ダイスで圧縮された接続管部には中心方向に向かう歪が発生し、内周面は円形を保ったまま相似的に収縮するので、接続管部が導体の周囲に均一に密着した状態で、導体接続具と導体とが固着される。圧縮接続については、例えばJIS規格などに規定されている(例えば、非特許文献1参照。)。
この圧縮接続であれば、導体接続具と導体との固着が均一で強固であるので、安定した通電性能を得ることができる。但し、ダイス同士が接触するまで接続管部を圧縮するには、例えば40MPaの圧縮力を要し、40〜200トンの油圧プレスが必要となるため、圧縮接続の施工は容易であるとは言い難い。
【0004】
圧着接続は、図8に示すように、導体接続具10における薄肉・中空筒状の接続管部11に導体30を挿入した後、ダイスで挟み、その接続管部11の一部を潰すように窪みをつける塑性加工を行い、接続管部11を導体30に食い込ませて圧着することによって、導体接続具10と導体30を固着する技術である。圧着接続については、例えばJIS規格などに規定されている(例えば、非特許文献2〜4参照。)。
この圧着接続では、ダイス同士が接触してこれ以上変形できない領域まで圧着接続部を塑性変形することまでは求められておらず、塑性変形途中で圧着加工を完了することが許容されている。例えば、導体サイズが60sqmm(mm)以上の電線では、圧着成形箇所の高さ(クリンプハイト)が、圧着成形箇所の反力と電線接続工具の油圧力制限値とから工具製造業者が決定する高さ以下になるように接続加工をする(例えば、非特許文献4参照)。
このような圧着接続の方法においては、クリンプハイトのバラツキが生じやすく、圧縮接続に比べて接続強度や通電性能の信頼性が劣ることがある。
また、圧着接続に関するJIS規格は、円形より線導体について定められているため、導体が円形圧縮より線である場合は、圧着接続すると導体素線切れが生じ易く、導体が可撓より線である場合は、素線間の密着が不足し易く、これらの面でも、圧着接続は圧縮接続に比べて接続強度や通電性能の信頼性が劣ることがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】JIS C2804「圧縮端子」
【非特許文献2】JIS C2805「銅線用圧着端子」
【非特許文献3】JIS C2806「銅線用裸圧着スリーブ」
【非特許文献4】JIS C9711「屋内配線用電線接続工具」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、電力設備も多様化し、電力会社以外で発電・変電・送電の運営を行う場合もある。その一例に自家用コージェネレーションやソーラシステム、風力発電、バイオマス発電などがある。いずれも民間の採算ベースで企業や地方公共団体がエネルギーを確保する設備である。
これまで電力会社が管理運営する設備では、安定した大電流の電力送電を実現するために、信頼性の高い圧縮接続の技術を採用してきたが、民間ベースの発想では機能を満足すれば少しでも経済的に優れた技術が優先される傾向がある。
その結果、従来民間では使用頻度が少なかった導体公称断面積325sqmm(mm)などの大電流ケーブルの接続に圧縮端子でなく圧着端子を使用する試みがあったり、圧着端子であっても圧縮接続並みに強固に接続する技術が要望されたりしている。
【0007】
本発明の目的は、圧着接続用の導体接続具を良好に導体に接続することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、本発明の一の態様は、
導体と、前記導体を挿入する接続管部を有する圧着接続用の導体接続具とを圧縮接続する導体接続方法であって、
前記接続管部の外側にその接続管部の外周を覆う圧縮接続用の管状部材を装着し、前記接続管部の内側に前記導体を挿入した後、前記管状部材を断面六角形に複数回圧縮する圧縮工程を備えることを特徴とする。
【0009】
圧着接続用の導体接続具の接続管部の外周に装着可能な圧縮接続用の管状部材を用い、これを複数回、断面六角形に圧縮することで、導体接続具の接続管部を導体の周囲に均一に圧縮することができ、その導体接続具を良好に導体に圧縮接続することができる。
なお、接続管部の外側に管状部材を装着することと、接続管部の内側に導体を挿入することの順は問わず、任意の順でよい。
【0010】
好ましくは、前記管状部材の外径は、前記接続管部の外径の4/3倍以下である。
【0011】
管状部材の外径寸法を4/3倍以下にすることで、少ない圧縮処理回数でブスバー等と接続し易い形状に加工することが可能になる。
【0012】
また、好ましくは、前記圧縮工程は、前記管状部材の外径を正六角形の対角寸法とする第1六角ダイスで前記管状部材を挟み込む第1の圧縮処理と、前記第1六角ダイスの対辺寸法を正六角形の対角寸法とする第2六角ダイスで前記管状部材を挟み込む第2の圧縮処理と、を含む。
【0013】
例えば、導体接続具の接続管部の外径寸法を「D」、管状部材の外径寸法を「(4/3)×D」に設計した場合、第1の圧縮処理と第2の圧縮処理とを行うことで、圧縮工程後の管状部材の外径寸法(対辺寸法)を「D」に減じることができ、圧縮接続部分をコンパクトに圧縮して良好な導体接続を成すことができる。
【0014】
また、好ましくは、前記導体接続具は、前記接続管部の外周面と連続する外周側平面を有する略平板状の端子部を備えており、
前記第1の圧縮処理は、前記外周側平面に対し60度傾いた方向に前記管状部材を前記第1六角ダイスで圧縮し、前記第2の圧縮処理は、前記外周側平面に対し垂直な方向に前記管状部材を前記第2六角ダイスで圧縮する。
【0015】
第1の圧縮処理で、導体接続具の端子部の外周側平面に対し60度傾いた方向に管状部材を第1六角ダイスで圧縮し、第2の圧縮処理で、その外周側平面に対し垂直な方向に管状部材を第2六角ダイスで圧縮することによれば、圧縮接続後の端子部の外周側平面と、管状部材の外周面における6面の内の1つの面とが略面一になる。
管状部材の外周面における6面の内の1つの面が圧縮接続後の端子部の外周側平面と略面一かそれより凹んだ状態であれば、例えばブスバーなどの外部導体に、端子部を配設して接続する際に、管状部材がブスバーに干渉することがなく、端子部の外周側平面をブスバーに密接させて良好な導体接続をすることができる。そして、ブスバーに対する端子部の接続部分をコンパクトにすることができる。
【0016】
また、好ましくは、前記管状部材は、前記導体接続具よりも熱膨張係数が大きい材料からなる。
【0017】
管状部材が導体接続具よりも熱膨張係数が大きい材料であれば、圧縮接続してなる管状部材と導体接続具が、通電に伴う発熱とその後の冷却とを繰り返した場合でも、管状部材と導体接続具との界面に隙間が生じてしまう不具合が生じ難く、製品安定性が維持される。
【0018】
また、本発明の他の態様は、
ケーブルの導体と、この導体を挿入した接続管部およびこの接続管部の外周面から連続する外周側平面を有する略平板状の端子部を有する圧着接続用の導体接続具と、前記接続管部の外側に装着した圧縮接続用の管状部材とからなり、前記管状部材および前記接続管部を周囲から圧縮から正六角形に圧縮し、当該正六角形の一つの面を前記端子部の外周側平面と同一かそれより凹ませてあることを特徴とする導体接続構造体である。
【0019】
この導体接続構造では、圧着接続用の導体接続具の接続管部の外周に圧縮接続用の管状部材を被せて圧縮しているので、圧着接続用の導体接続具を導体に電気的にも機械的にも良好に接続できる。
その上、管状部材の外周面における6面の内の1つの面が圧縮接続後の端子部の外周側平面と面一かより奥まらせてあるので、例えばブスバーなどの外部導体に、端子部を配設して接続する際に、管状部材がブスバーに干渉することがないので、端子部の外周側平面をブスバーに密接させて接続することができる。そして、ブスバーに対する端子部の接続部分をコンパクトにすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、圧着接続用の導体接続具の接続管部の外周に装着可能な圧縮接続用の管状部材を用いることで、導体接続具の接続管部を周方向全体に亘ってケーブルの導体に圧着(密着)することができ、導体接続具と導体を電気的にも機械的にも確りと接続することができる。
そして、例えば、管状部材の外径寸法を、接続管部の外径寸法の4/3倍以下にすることで、少ない圧縮処理回数でブスバー等と接続し易い形状に加工することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】導体接続構造体の一部を成す圧着端子と圧縮用カラーを示す平面図である。
【図2】圧着端子に圧縮用カラーを組み付けた状態を示す平面図(a)と、図2(a)のb−b線における断面図(b)と、図2(a)の矢印c方向からの矢視図(c)である。
【図3】導体接続構造体を構成する導体と圧着端子と圧縮用カラーを接続する配置を断面視して示す説明図である。
【図4】圧縮工程における第1の圧縮処理を示す説明図である。
【図5】圧縮工程における第2の圧縮処理を示す説明図である。
【図6】導体と圧着端子と圧縮用カラーとを圧縮接続してなる導体接続構造体を示す説明図である。
【図7】各種導体接続構造体における圧縮率の測定値(計算値)を示す表である。
【図8】従来の圧着接続を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0023】
図1は、導体接続構造体の一部を成す圧着端子と圧縮用カラーを示す平面図である。図2(a)(b)(c)は、圧着端子に圧縮用カラーを組み付けた状態を示す説明図である。図3は、導体接続構造体を構成する導体と圧着端子と圧縮用カラーを接続する配置を示す説明図である。
【0024】
圧着端子10は、図1から図3に示すように、導体30を挿入する接続管部11と、接続管部11と一体成型された端子部12とを備えている圧着接続用の導体接続具である。
接続管部11は、略円筒形状を呈しており、ケーブルや電線の導体30を内装する挿通穴11aを有している。
端子部12は、略平板形状を呈しており、接続管部11の外周面と連続する外周側平面13を有している。また、端子部12は、その略中央側に形成された円形の小孔14を有している。
【0025】
この圧着端子10は、JIS C2805「銅線用圧着端子」の規格に準じており、薄肉筒状の接続管部11は、例えば100〜325sqmm(mm)の比較的大きいサイズのものである。
また、圧着端子10は、例えば、JIS H3100 C1020Pの規格に準じた無酸素銅板を材料にしてなる。無酸素銅板は銅の中でも電気伝導率(導電率)に優れ、また加工のための展延性に優れているので、導体接続具(圧着端子10)の材料として適している。特に、銅板を成形して薄肉筒状の接続管部11を形作るにはろう付けを行うため、適度に焼鈍され展延性が増すので、圧着接続用の導体接続具の材料に極めて適している。
なお、圧着端子10は、市販の既製品であってよい。
【0026】
圧縮用カラー20は、図1から図3に示すように、略円筒形状を呈しており、圧着端子10の接続管部11を内装する挿通穴20aを有している圧縮接続用の管状部材である。また、圧縮用カラー20は、接続管部11と略同じ長さを有する厚肉筒状体
であり、その両端部に端部側ほど外径が小さくなるテーパ部21,21を有している。
この圧縮用カラー20の内径寸法は、接続管部11の外径寸法に対応しており、圧着端子10が既製品であるか否かを問わず、圧着端子10の接続管部11をなるべく隙間なくかつ確実に挿入でき、圧縮用カラー20を接続管部11の外周に適切に装着できるサイズである。
特に、圧縮用カラー20の外径は、圧着端子10の接続管部11の外径の7/6倍(約1.17倍)以上、4/3倍(約1.33倍)以下であることが好ましい。
本実施形態では、接続管部11の外径を「D」とした場合、圧縮用カラー20は、その4/3倍である「(4/3)×D」の外径を有している。なお、ここでいう圧縮用カラー20の外径とは、圧縮用カラー20の最も太い部分に対応する最大の外径寸法のことである。
【0027】
また、圧縮用カラー20は、例えば、JIS H3250「銅及び銅合金棒」に規定されているC2600黄銅(7・3真鍮)を材料にしてなる。このように、圧縮用カラー20は、銅製の圧着端子10よりも熱膨張係数が大きい材料(真鍮)からなる。
【0028】
次に、圧縮用カラー20を利用して、導体30と圧着端子10を圧縮接続する導体接続方法について説明する。
【0029】
まず、図3に示すように、圧着端子10における接続管部11の内側に導体30を挿入し、その接続管部11の外側に圧縮用カラー20を装着する。
前述したように、圧着端子10の接続管部11の外径は「D」であり、圧縮用カラー20の外径は、「(4/3)×D」である。
なお、導体30は、ケーブルまたは電線の絶縁層を剥いで中心導体を露出させたものであり、この導体30は、複数の導体素線を撚り合わせてなる円形撚り導体である。
【0030】
次いで、図4に示すように、圧着端子10の接続管部11に装着した圧縮用カラー20を、その圧縮用カラー20の外径「(4/3)×D」を正六角形の対角寸法とする第1六角ダイス50で挟み込んで圧縮する第1の圧縮処理を施す。なお、第1六角ダイス50は、正六角形の角部で2分割した一対のダイス51,51からなる。
この第1の圧縮処理では、圧着端子10の端子部12の外周側平面13に対して60度傾いた方向から一対のダイス51,51で圧縮用カラー20を挟み込み、その60度傾いた方向に圧縮用カラー20を第1六角ダイス50で圧縮する。
なお、図4はダイス51,51を傾けて描いたが、端子部12の外周側平面13の方を傾け、ダイス51,51の圧縮方向を垂直にしても良い。
こうして、第1の圧縮処理によって、圧縮用カラー20は、対角寸法が「(4/3)×D」、対辺寸法が「(2/3)×√3×D」の断面正六角形に圧縮されている。
ここで、第1の圧縮処理後の圧縮用カラー20の対辺寸法「(2/3)×√3×D」は、対角寸法「(4/3)×D」の√3/2倍となっている。これは、外径が「(4/3)×D」である圧縮用カラー20を、「(4/3)×D」を対角寸法とする第1六角ダイス50で正六角形に圧縮変形したことによる。
【0031】
次いで、図5に示すように、第1の圧縮処理後の圧縮用カラー20部分を、第1六角ダイス50の対辺寸法「(2/3)×√3×D」を正六角形の対角寸法とする第2六角ダイス60で挟み込んで圧縮する第2の圧縮処理を施す。なお、第2六角ダイス60は、正六角形の角部で2分割した一対のダイス61,61からなる。
この第2の圧縮処理では、圧着端子10の端子部12の外周側平面13に対して垂直をなす方向に一対のダイス61,61で圧縮用カラー20を挟み込み、その垂直方向に圧縮用カラー20を第2六角ダイス60で圧縮する。
こうして、第2の圧縮処理によって、圧縮用カラー20は、対角寸法が「(2/3)×√3×D」、対辺寸法が「D」の断面正六角形に圧縮されている。
ここで、第2の圧縮処理後の圧縮用カラー20の対辺寸法「D」は、対角寸法「(2/3)×√3×D」の√3/2倍となっている。これは、正六角形の対辺寸法が「(2/3)×√3×D」である圧縮用カラー20を、「(2/3)×√3×D」を対角寸法とする第2六角ダイス60で正六角形に圧縮変形したことによる。
【0032】
そして、図5、図6に示すように、圧縮用カラー20に対し、第1の圧縮処理と第2の圧縮処理とを施した圧縮工程を経て、圧縮用カラー20を用いて導体30と圧着端子10を圧縮接続した導体接続構造体100を形成することができる。
このように、圧縮用カラー20を用いることで、圧着端子10の接続管部11を導体30の周囲に均一に圧縮することができ、圧着端子10を導体30に良好に圧縮接続することができる。
【0033】
図6に示すように、導体接続構造体100における圧縮用カラー20の外周面を成す6面の内の1つの面は、圧着端子10の端子部12の外周側平面13と一致する。
これは、図3に示す、外径寸法が「(4/3)×D」であった圧縮用カラー20に、2回の正六角形圧縮処理(第1の圧縮処理と第2の圧縮処理)を施して、その外径を2回、√3/2倍に圧縮し、(√3/2)×(√3/2)の3/4倍に減じて、圧縮用カラー20の対辺寸法を「D」に減じたことによる。
つまり、予め圧縮用カラー20の外径寸法を、接続管部11の外径寸法「D」の4/3倍に設計しておいたことにより、当初の接続管部11の外周面と連続する配置にあった端子部12の外周側平面13が、圧縮加工後の圧縮用カラー20の外周面の一部(6面の内の1つの面)と略面一となるのである。
このように、導体接続構造体100における端子部12の外周側平面13と、圧縮用カラー20の外周面(6面の内の1つの面)とが略面一であれば、導体接続構造体100の端子部12を、例えばブスバーに接続する際に、圧縮用カラー20部分がブスバーに干渉することなく、端子部12の外周側平面13をブスバーに密接させて螺子止め接続することが可能になる。
【0034】
また、圧縮工程における第1の圧縮処理に使用する第1六角ダイス50と、第2の圧縮処理に使用する第2六角ダイス60の、導体30の軸方向に沿う長さ寸法は、圧縮用カラー20の長さ寸法と同等あるいはそれ以上のサイズであり、圧縮用カラー20の外周全面に密着しての圧縮加工を行うことを可能にしている。
そして、圧縮用カラー20の両端部にはテーパ部21があるため、圧縮用カラー20の端部側ほど圧縮加工による接触圧力が弱まるので、圧縮用カラー20(接続管部11)の端部開口付近の導体30には僅かにしか圧力がかからず、導体30は殆ど圧縮されていない。
このようにテーパ部21を有する圧縮用カラー20は、比較的穏やかに接続管部11を導体30に対して圧縮しているので、圧縮用カラー20(接続管部11)の開口の縁が導体30に圧接することはない。そして、圧縮用カラー20の圧縮によって導体30の素線が切れてしまうようなことはなく、導体接続構造体100における導体30の断線を防止するようになっている。
【0035】
次に、導体30と圧着端子10を圧縮接続する際に用いる圧縮用カラー20の好ましい外径寸法について説明する。
【0036】
圧縮接続における圧縮程度の評価基準としては圧縮率が用いられ、導体断面積の圧縮率が6%以上であることが、強固な圧縮接続を成し、安定した長期通電特性を得る条件であることが知られている。例えば、JIS C2804「圧縮端子」は、圧縮率6%以上を満足するものである。
ここでの圧縮率は、圧縮加工前の接続管部11とその接続管部11に挿入される導体30の断面積の総和が、圧縮加工後に減じた断面積の変化率(減少率)のことである。なお、圧縮加工により導体30の導体素線間の隙間と、接続管部11の内径と導体30の外径との隙間は埋まり、導体30と接続管部11の断面積に変化が無い状態は圧縮率0%とされる。また、圧縮率が負の数値であれば、それらの隙間が埋まる前の状態といえる。
【0037】
図7に示す導体接続構造体に関する圧縮率表は、各種サイズの圧着端子10(接続管部11)と、各種サイズの導体30と、各種サイズの圧縮用カラー20との対応関係と、それら組み合わせて圧縮接続した導体接続構造体100における圧縮率との対応関係を調べた結果である。この表から、圧着端子10(接続管部11)の外径に対する圧縮用カラー20の外径倍率が、7/6倍(約1.17倍)以上であれば、いずれのサイズにおいても圧縮率6%を満足することがわかる。
また、圧縮加工における第2の圧縮処理後の圧縮用カラー20の対辺寸法が、圧着端子10の外径寸法を超える値であると、導体接続構造体100における端子部12の外周側平面13と、圧縮用カラー20の外周面(6面の内の1つの面)とが略面一にならない不具合が生じる。そこで、端子部12の外周側平面13より、圧縮用カラー20の外周面(6面の内の1つの面)が突出しないように、第2の圧縮処理後の圧縮用カラー20の対辺寸法が、圧着端子10の外径寸法より小さいことを満足するためには、前述したように、圧着端子10(接続管部11)の外径に対する圧縮用カラー20の外径倍率は、4/3倍(約1.33倍)以下でなければならない。図7に示す導体接続構造体に関する圧縮率表から分かるように、外径倍率4/3倍(約1.33倍)までの圧縮用カラー20は、第2の圧縮処理後の圧縮率が良好な値を示している。
【0038】
こうして、圧縮用カラー20の外径寸法を、圧着端子10の接続管部11の外径寸法の7/6倍(約1.17倍)以上、4/3倍(約1.33倍)以下であるようにすることで、圧縮率6%以上を満足する強固な圧縮接続を成し、安定した長期通電特性を有する導体接続構造体100を形成することができる。
【0039】
次に、材質について考察する。導体接続構造体100に用いる圧着端子10の材料を無酸素銅またはタフピッチ銅とした場合、圧縮用カラー20の材料は真鍮であることが望ましい。以下、その理由について説明する。
【0040】
導体接続構造体100を形成する際、圧縮用カラー20を接続管部11に装着して、2回の正六角形圧縮処理を行うことで、圧縮用カラー20と圧着端子10(接続管部11)とは一体化するが、単に圧縮しただけで金属原子間結合はできていないので、解体すれば分離可能な密着状態にある。
【0041】
この導体接続構造体100を外部導体(例えばブスバー)に繋いで電流通電を行うと、電流は導体30から接続管部11、端子部12へ流れ、さらに端子部12が接続している外部導体(ブスパー)へと流れる。このとき、圧縮用カラー20にも多少分流するが極めて微小な電流であり、圧縮用カラー20が通電に伴い発熱することはない。むしろ圧縮用カラー20は熱放散素子として有効に機能するようになる。こうした状況から圧縮用カラー20の温度は接続管部11よりも低いことになる。
そして、通電に伴い発熱した接続管部11が熱膨張すると、圧縮用カラー20に対する密着力が高まる。この接続管部11の熱膨張が圧縮用カラー20により制限されることで、外径方向に膨張できない分、軸方向に膨張することになる。一見不都合がないように見えるが、軸方向に伸びて細くなった接続管部11の外径は、温度降下した後もそのまま維持されてしまい、冷却後に接続管部11と圧縮用カラー20の界面に隙間が生じやすくなる。
こうして、温度上昇と降下が繰り返されると、密着していた接続管部11と圧縮用カラー20の界面に隙間が生じるようになり、その隙間に湿気が浸入することによる腐食などの弊害が憂慮される。
これが、圧縮用カラー20の材料に真鍮を選択することになる1つ目の事情(熱膨張に関する事情)である。
【0042】
また、圧縮用カラー20は非磁性材料からなることが好ましい。
圧縮用カラー20は円形に導体30を包み込んでいるので、圧縮用カラー20が磁性材料であると電流通電による誘導によって発熱が生じてしまう。圧縮用カラー20の発熱が圧着端子10の温度上昇を招くと電力ロスの原因となる。
例えば、オーステナイト系ステンレスは磁性の極めて弱い材料であるので、誘導が起きうるところに使用する実績があるが、オーステナイト系ステンレスは圧縮加工における冷間塑性加工により磁性が高まることがあり、圧縮用カラー20の材料には適さない。
これが、圧縮用カラー20の材料に真鍮を選択することになる2つ目の事情(非磁性材料としての事情)である。
【0043】
こうした事情などを踏まえ、圧縮用カラー20の材料として、JIS H3250「銅及び銅合金棒」に規定されているC2600黄銅(7・3真鍮)を用いる。
圧縮用カラー20の材料を真鍮とした場合、以下のメリットがある。
(1)真鍮の熱膨張係数は20×10−6/℃であり、圧着端子10の無酸素銅やタフピッチ銅より大きいので、熱膨張によって接続管部11と圧縮用カラー20の界面に隙間が発生する恐れがない。
(2)真鍮は、銅を70%含有する合金であり、圧着端子10の無酸素銅やタフピッチ銅との電位傾度は略同一であるので、接続管部11と圧縮用カラー20に水分が付着した際に電蝕が起こる恐れがない。
(3)真鍮は冷間加工性(展延性)に優れるので、圧縮加工時に割れなどの破損が生じる恐れがない。
(4)真鍮は汎用銅合金であるので、入手が容易で価格は銅より安価である。
(5)真鍮の電気伝導率(導電率)は、銅を100としての28と極めて低いが、圧縮用カラー20は通電機能を負担していないので問題視する必要はない。
(6)真鍮は、完全な非磁性体である。
これら8項目が、圧縮用カラー20の材料に真鍮を選定する理由である。
【0044】
以上のように、導体接続構造体100に圧縮用カラー20を用いることで、圧着端子10の接続管部11を導体30の周囲に均一に圧縮することができ、圧着端子10を導体30に良好に圧縮接続することができる。
特に、圧縮用カラー20の外径寸法を、圧着端子10の接続管部11の外径寸法の7/6倍(約1.17倍)以上、4/3倍(約1.33倍)以下にすることで、圧縮率6%以上を満足する強固な圧縮接続を成し、安定した長期通電特性を有する導体接続構造体100を形成することができると共に、少ない圧縮処理回数で接続し易い形状、すなわちブスバー等と螺子で接続できるような形状に加工することが可能になる。すなわち、この範囲の外径寸法の圧縮用カラー20を用いることにより、電気的にも機械的にも接続性が良い接続構造体を得ることができる。
【0045】
以上のようにして、JIS C2805「銅線用圧着端子」、JIS C2806「銅線用裸圧着スリーブ」で規定される圧着端子10の接続管部11に、厚肉筒状の圧縮用カラー20を装着して、JIS C2804「圧縮端子」に規定されている六角圧縮接続と同等の導体接続を可能にした。
例えば100sqmm(mm)、特に150sqmm(mm)を超える大導体に対して、従来の圧着接続の手法で圧着接続を行った場合、導体素線切れ、接触圧力不足、圧着工具誤差の影響などの問題が生じないように慎重な作業が求められたが、圧縮用カラー20を応用することによって、圧着接続用の圧着端子10を用いても、圧縮接続で得られる高信頼性を有する導体接続を可能にした。
本発明にかかる導体接続方法は、100sqmm(mm)を超える大導体に対して特に有効な導体接続に関する技術であるといえる。
【0046】
なお、以上の実施の形態においては、圧着端子10に圧縮用カラー20を装着し、それらを圧縮接続するようにしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、予め圧縮用カラーを圧着端子に装着した形状の導体接続具を、鍛造又は鋳造などで成形したものであってもよい。こうすることで、圧縮用カラーの装着の手間が省けるとともに、圧縮用カラーと圧着端子の間の隙間をなくして接続性の向上を図ることができる。
【0047】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
10 圧着端子(導体接続具)
11 接続管部
11a 挿通穴
12 端子部
13 外周側平面
20 圧縮用カラー(管状部材)
20a 挿通穴
21 テーパ部
30 導体
50 第1六角ダイス
60 第2六角ダイス
100 導体接続構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と、前記導体を挿入する接続管部を有する圧着接続用の導体接続具とを圧縮接続する導体接続方法であって、
前記接続管部の外側にその接続管部の外周を覆う圧縮接続用の管状部材を装着し、前記接続管部の内側に前記導体を挿入した後、前記管状部材を断面六角形に複数回圧縮する圧縮工程を備えることを特徴とする導体接続方法。
【請求項2】
前記管状部材の外径は、前記接続管部の外径の4/3倍以下であることを特徴とする請求項1に記載の導体接続方法。
【請求項3】
前記圧縮工程は、前記管状部材の外径を正六角形の対角寸法とする第1六角ダイスで前記管状部材を挟み込む第1の圧縮処理と、前記第1六角ダイスの対辺寸法を正六角形の対角寸法とする第2六角ダイスで前記管状部材を挟み込む第2の圧縮処理と、を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の導体接続方法。
【請求項4】
前記導体接続具は、前記接続管部の外周面と連続する外周側平面を有する略平板状の端子部を備えており、
前記第1の圧縮処理は、前記外周側平面に対し60度傾いた方向に前記管状部材を前記第1六角ダイスで圧縮し、前記第2の圧縮処理は、前記外周側平面に対し垂直な方向に前記管状部材を前記第2六角ダイスで圧縮することを特徴とする請求項3に記載の導体接続方法。
【請求項5】
前記管状部材は、前記導体接続具よりも熱膨張係数が大きい材料からなることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の導体接続方法。
【請求項6】
ケーブルの導体と、この導体を挿入した接続管部およびこの接続管部の外周面から連続する外周側平面を有する略平板状の端子部を有する圧着接続用の導体接続具と、前記接続管部の外側に装着した圧縮接続用の管状部材とからなり、前記管状部材および前記接続管部を周囲から圧縮から正六角形に圧縮し、当該正六角形の一つの面を前記端子部の外周側平面と同一かそれより凹ませてあることを特徴とする導体接続構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−243467(P2011−243467A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115862(P2010−115862)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(591086843)古河電工産業電線株式会社 (40)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】