説明

導光体、線状光源、および、画像読取装置

【課題】LEDからの光を、長手方向と直交する方向においてより広い範囲で好ましい照度を有する線状光として出射可能な導光体と、上記導光体を用いた線状光源と、上記線状光源を用いた画像読取装置と、を提供する。
【解決手段】導光体1は、全体として棒状に延びており、長手方向端部に設けられた光入射部と、上記長手方向に延びており、光入射部から入射した光を反射させる複数の光反射部14,15と、複数の光反射部14,15から進行してきた光を上記長手方向に延びる線状光として出射させる光出射部13と、を備えており、複数の光反射部14,15は、上記長手方向と直交する方向において、互いに離間するように設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導光体、線状光源、および、画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、従来の画像読取装置の一例を示している(たとえば特許文献1参照)。同図に示された画像読取装置Xは、線状光源91、反射鏡92,93,94、結像レンズ95、受光手段96、および、ガラスカバー97を備えた縮小光学系スキャナである。線状光源91は、たとえばハロゲンランプであり、読取対象Pに向けて主走査方向に延びる線状光を出射するように構成されている。読取対象Pで反射された線状光は、さらに反射鏡92,93,94によって反射され、結像レンズ95を経て受光手段96へ到達する。
【0003】
近年、ハロゲンランプや蛍光灯に替えて、消費電力がより少なく、かつより軽量なLEDを用いた光源を利用することが提案されている。LEDを光源とする線状光源は、LEDからの光を長尺の導光体内に導くことにより線状光を出射可能となっている。このような導光体は、長手方向に延びる1個の光反射部を有しており、この光反射部と直交する方向に向けて線状光を出射する。このため、LEDを光源とする線状光源による線状光は、長手方向と直交する方向における中心部が明るい一方でその周囲が暗くなる傾向があった。
【0004】
画像読取装置Xにおいては、反射鏡92,93,94、結像レンズ95、または、受光手段96の取り付け位置や取り付け角度の微妙なずれにより、読み取り位置が大きくばらつくことがあった。このため、線状光源は、副走査方向において余裕をもって読取対象Pを照明する必要があり、指向性が比較的高い、LEDを光源とする線状光源を採用する上で課題となっていた。
【0005】
【特許文献1】特開平7−23189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、LEDからの光を、長手方向と直交する方向においてより広い範囲で好ましい照度を有する線状光として出射可能な導光体と、上記導光体を用いた線状光源と、上記線状光源を用いた画像読取装置と、を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面によって提供される導光体は、全体として棒状に延びており、長手方向端部に設けられた光入射部と、上記長手方向に延びており、上記光入射部から入射した光を反射させる複数の光反射部と、上記複数の光反射部から進行してきた光を上記長手方向に延びる線状光として出射させる光出射部と、を備えており、上記複数の光反射部は、上記長手方向と直交する方向において、互いに離間するように設けられていることを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、上記光入射部から上記導光体内に入射した光は、上記複数の光反射部に反射されて上記光出射部から線状光として出射される。上記長手方向と直交する方向において互いに離間する上記複数の光反射部により反射された上記線状光は、上記光反射部が1つの場合に比べて、上記長手方向と直交する方向においてより広い範囲を明るく照明することが可能である。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記線状光の出射方向における上記光出射部の反対側に帯状部を有しており、上記帯状部の上記線状光の出射方向後方に突出するように上記複数の光反射部が形成されている。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記帯状部は平坦な面である。
【0011】
本発明の第2の側面によって提供される線状光源は、上記本発明の第1の側面によって提供される導光体と、上記光入射部に向けて光を出射する光源と、を備えていることを特徴とする。
【0012】
本発明の第3の側面によって提供される画像読取装置は、本発明の第2の側面によって提供される線状光源と、上記線状光源からの光のうち、読取対象によって反射された光を受光する受光手段と、上記読取対象から上記受光手段へ至る光路上に設置された縮小光学系の光学手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1および図2は、本発明にかかる画像読取装置の一例を示している。図1および図2に示す画像読取装置Aは、主走査方向に延びる線状光を出射する線状光源B、カメラC、反射鏡3、副走査方向に沿って読取対象Pを移動させるための送紙装置6、および、ケース7を備えている。なお、図1では、読取対象P、送紙装置6、および、ケース7を省略している。さらに、図3には、線状光源Bによる照明の様子を示しており、線状光源Bから出射される線状光の中心線Lを1点破線で示している。この中心線Lが延びる方向を主出射方向xとする。
【0015】
線状光源Bは、主走査方向に長く延びる導光体1と、導光体1の主走査方向における両端に設置され、導光体1内に向けて光を出射するLEDモジュール2と、を備えている。導光体1は、たとえば、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)などのアクリル樹脂からなる透明度が高い部材であり、全長にわたって断面略円形状を有する略円柱形状とされている。この導光体1は、両端に形成された光入射部11、主走査方向に延びる帯状部12、主出射方向xにおける帯状部12の反対側に設けられた光出射部13、および、帯状部12に形成された1対の光反射部14,15を備えている。
【0016】
帯状部12は、主出射方向xと直交する方向における中央部が、主出射方向xにおいて導光体1の内部に食い込むような緩やかな凹面に形成されている。1対の光反射部14,15は、主出射方向xと直交する方向において、中心線Lを挟んで離間するように配置されている。1対の光反射部14,15は、帯状部12から、主出射方向xにおいて線状光の進行方向と反対側(後方)に向けて突出する凸部の先端に白色塗装を施すことによって形成されている。なお、これらの凸部は、主走査方向に延びる断面略矩形の帯状とされている。
【0017】
図3では、光反射部14に反射された光の中心線L1と、光反射部15に反射された光の中心線L2を示している。さらに、図3では、中心線L1,L2と読取対象Pとの交点同士の間隔T1と、読取対象Pを好ましく読み取るために必要な均一照度必要領域T2を示している。均一照度必要領域T2は、線状光源B、カメラC、および反射鏡3の取り付け位置や取り付け角度の微妙なずれにより、読み取り位置がばらつくことがあることを考慮して設定された線状光の被照射領域である。本実施形態における均一照度必要領域T2は、副走査方向において中心線Lと読取対象Pとの交点を中心とする領域であり、その副走査方向における幅は4mmとなっている。
【0018】
間隔T1は、1対の光反射部14,15間の間隔および帯状部12の形状によって決定される。本実施形態では、間隔T1は、均一照度必要領域T2内に含まれており、なおかつ、間隔T1の長さが均一照度必要領域T2の長さの2分の1以上となっている。
【0019】
反射鏡3は、読取対象Pで反射された光を、カメラCへ向けて反射するように設置されている。カメラCは、受光手段5、および、反射鏡3からの光を受光手段5に結像させる結像レンズ4を備えている。
【0020】
反射鏡3および結像レンズ4は、本発明における縮小光学系の光学手段である。結像レンズ4によって受光手段5に形成される読取対象Pの像は、縮小された倒立像として形成される。
【0021】
次に、このような画像読取装置Aの作用について図4〜図7も参照しつつ説明する。
【0022】
図4〜図6は、中心線Lと読取対象Pとの交点からの副走査方向における距離と、線状光源Bによる照明の相対照度との関係を説明するための図ある。図4〜図6では、光反射部14からの線状光による照度分布を示すグラフG1、光反射部15からの線状光による照度分布を示すグラフG2、および、グラフG1とグラフG2とを合成して得られる線状光源Bによる照度分布を示すグラフG3を示している。図4ではT1の長さが2mmとなる場合を、図5ではT1の長さが3mmとなる場合を、図6ではT1の長さが4mmとなる場合を示している。さらに、図4〜図6との比較のために、図7には、光反射部が1個のみの場合の照度分布を示している。また、図4〜図7では、均一照度必要領域T2を示している。
【0023】
図7によると、光反射部が1個のみの場合には、均一照度必要領域T2の中央と両端とで、照明の相対照度の差が大きくなっていることが分かる。それに対して、図4〜図6におけるグラフG3は、均一照度必要領域T2の中央と両端とで、照明の相対照度の差が比較的小さくなっている。特に、図5および図6におけるグラフG3では、均一照度必要領域T2において、相対照度がほぼ一定となっている。このように線状光源Bは、均一照度必要領域T2の全域を比較的照度が均一な光で照明することができる。従って、画像読取装置Aでは、線状光源B、カメラC、および反射鏡3の取り付け位置や取り付け角度の微妙なずれにより、読み取り位置がずれても、好ましい照度の光で読取対象Pを照明することができる。
【0024】
さらに、本実施形態によれば、線状光源Bは、光源としてLEDモジュール2を採用しているため、軽量化および省エネ化を図ることが可能である。
【0025】
さらに、本実施形態によれば、線状光源B、カメラC、および反射鏡3の取り付け位置や取り付け角度の微調整を行う必要がないため、生産性の向上を図ることが容易となっている。
【0026】
図8には、本発明にかかる導光体の別の実施形態を示している。なお、図8において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付しており、適宜説明を省略する。図8に示す導光体1’は、導光体1と同様に線状光源Bに組み込まれて用いられる。
【0027】
導光体1’は、図8に示すように、主出射方向xを短軸方向とし、主出射方向xと直交する方向を長軸方向yとする断面形状を有している。この断面形状は、長軸方向yに長く延びる長方形の両端に半円を組み合わせた形状となっている。
【0028】
導光体1’の帯状部12は、長軸方向yに一定幅を有して主走査方向に長く延びるように形成された平坦な面であり、長軸方向yにおいて離間する1対の光反射部14,15を有している。本実施形態では、帯状部12が平坦な面であるため、光反射部14,15の長軸方向yにおける間隔は、間隔T1と等しくなっている。
【0029】
このような導光体1’を組み込んだ線状光源Bは、導光体1を組み込んだ線状光源Bと同様に、均一照度必要領域T2の全域を比較的照度が均一な光で照明することができる。
【0030】
本発明にかかる導光体、線状光源および画像読取装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明にかかる導光体、線状光源および画像読取装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。たとえば、上記実施形態では、読取対象Pと結像レンズ4との間の光路上に設置された反射鏡3は1個であるが、光路上に複数の反射鏡があっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明にかかる画像読取装置の実施形態の一例を示す平面図である。
【図2】図1のII-II線に沿う断面図である。
【図3】本発明にかかる導光体の実施形態の一例を示す要部断面図である。
【図4】本発明にかかる線状光源による照度分布の一例を示す図である。
【図5】本発明にかかる線状光源による照度分布の一例を示す図である。
【図6】本発明にかかる線状光源による照度分布の一例を示す図である。
【図7】従来のLEDを用いた線状光源による照度分布の一例を示す図である。
【図8】本発明にかかる導光体の別の実施形態の一例を示す要部断面図である。
【図9】従来の画像読取装置の一例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0032】
A 画像読取装置
B 線状光源
C カメラ
P 読取対象
L,L1,L2 中心線
T1 間隔
T2 均一照度必要領域
x 主出射方向
y 長軸方向
1,1’ 導光体
2 LEDモジュール
3 反射鏡
4 結像レンズ
5 受光手段
6 送紙装置
7 ケース
11 光入射部
12 帯状部
13 光出射部
14,15 光反射部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体として棒状に延びており、
長手方向端部に設けられた光入射部と、上記長手方向に延びており、上記光入射部から入射した光を反射させる複数の光反射部と、上記複数の光反射部から進行してきた光を上記長手方向に延びる線状光として出射させる光出射部と、
を備えており、
上記複数の光反射部は、上記長手方向と直交する方向において、互いに離間するように設けられていることを特徴とする導光体。
【請求項2】
上記線状光の出射方向における上記光出射部の反対側に上記長手方向に延びる帯状部を有しており、
上記帯状部の上記線状光の出射方向後方に突出するように上記複数の光反射部が形成されている、請求項1に記載の導光体。
【請求項3】
上記帯状部は平坦な面である、請求項2に記載の導光体。
【請求項4】
上記長手方向と直交する断面が、上記線状光の出射方向に沿う短軸と、上記短軸と直交する長軸と、を有する形状であり、上記複数の光反射部が、上記長軸方向において、互いに離間するように形成されている、請求項1ないし3のいずれかに記載の導光体。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の導光体と、
上記光入射部に向けて光を出射する光源と、
を備えていることを特徴とする、線状光源。
【請求項6】
請求項5に記載の線状光源と、
上記線状光源からの光のうち、読取対象によって反射された光を受光する受光手段と、
上記読取対象から上記受光手段へ至る光路上に設置された縮小光学系の光学手段と、
を備えることを特徴とする、画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−146868(P2010−146868A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323392(P2008−323392)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】