説明

導光板、面光源装置、及び表示装置

【課題】複数個の点光源からなる光源を用いた場合に、入光面近傍における輝度ムラ(ホットスポット)および輝線の発生がほとんどなく、出光面のほぼ全域において均一な輝度分布を有する導光板を提供する。
【解決手段】出光面と、前記出光面と対向する対向面と、前記出光面と前記対向面との間に挟まれた少なくとも1つの入光面とを有する導光板であって、前記少なくとも1つの入光面が、該入光面の幅方向に略平行に2つ以上の領域に分割されており、前記2つ以上の領域は、少なくとも、異方性の拡散特性を有する領域を含む第一の部分領域と、等方性の拡散特性を有する第二の部分領域と、を含む導光板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導光部材に関し、例えば、いわゆるエッジライト方式の面光源装置や、各種照明装置に用いることのできる導光板に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置では、エッジライト方式の面光源装置が多く用いられている。このようなエッジライト方式の面光源装置は、一般的には、光源からの光を液晶表示パネル側に出射させる導光板と、その側部に配置されたLED(発光ダイオード)やCCFL(冷陰極管)等の光源と、導光板から出射した光を液晶表示パネル側の方向に向けるプリズムシート等から構成される。上記導光板は、一般に、出光面、該出光面と対向する対向面、前記出光面と前記対向面に挟まれた少なくとも1つの入光面を有し、その側部(入光面)から入射する光を板内部で繰り返し反射させて導光し、導光した光を対向面に設けた光出射機構によって出光面から液晶表示パネル側に出射させる。
【0003】
ところで、このような導光板を複数の点光源と組み合わせて用いた場合、出光面の中心部(光源からある程度離れた場所)では均一な輝度が得られるものの、光源に近い入光面近傍においては、光源間にあたる部分は暗い一方、光源直前部には極端に明るい所謂ホットスポットが出現し、輝度ムラが生じてしまうという欠点がある。
【0004】
そのため、光源として複数の点光源を用いた面光源装置においては、実質的に、導光板の出光面の中心部しか利用できないという問題がある。
【0005】
このような輝度ムラを防止する方法として、入光面に入射光を拡散させる光学構造(以下、「拡散構造」ともいう。)を設けることが検討されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、入光面に、対称性を有した三角形形状を貫欠した台形状の凹凸構造を設けた導光板が、特許文献2には、入光面に、開口部が略四角形で底部に円弧状の角部を有する窪みを設けた導光板がそれぞれ開示されている。
【0007】
さらに、特許文献3には、対向面にローレットカットを施すと共に、入光面にレンチキュラー形状等の周期的な微細なカットを施した導光板が開示され、特許文献4には、入光面に、粘着剤と針状フィラーとからなる異方性光拡散粘着層を設けた導光板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−169034号公報
【特許文献2】特開2003−215346号公報
【特許文献3】特開2006−49286号公報
【特許文献4】特開2008−34234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、入光面に拡散構造を設けることはホットスポットの低減には寄与するが、入光面から遠い側において、出光面からの出射光の強度の低下(以下「光到達度の低下」ともいう。)が大きくなる。また、当該拡散構造と導光板本体の別の光学構造との組み合わせによっては、LEDの光が入光する部分から相対的に輝度の高い部分が直線状に延びる、いわゆる輝線が発生することを、本発明者は見出した(図19参照)。
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであり、複数個の点光源からなる光源を用いた場合に、導光板の入光面近傍における輝度ムラ(ホットスポット)および輝線の発生がほとんどなく、出光面のほぼ全域において均一な輝度分布を有する導光板、及び該導光板を有する面光源装置、該面光源装置を有する表示装置、該表示装置を有するテレビ受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、導光板について鋭意検討した結果、拡散構造を入光面全体に設けることにかえて、導光板の厚み方向の一部のみに設けることで、光到達度の低下を少なくすると共に、前述したホットスポットや輝線が解消でき、出光面全体に亘って均一な輝度分布が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
出光面と、前記出光面と対向する対向面と、前記出光面と前記対向面との間に挟まれた少なくとも1つの入光面とを有する導光板であって、
前記少なくとも1つの入光面が、該入光面の幅方向に略平行に2つ以上の領域に分割されており、
前記2つ以上の領域は、少なくとも、
異方性の拡散特性を有する領域を含む第一の部分領域と、
等方性の拡散特性を有する第二の部分領域と、を含む導光板。
【発明の効果】
【0012】
本発明の導光板によって、複数個の点光源からなる光源を用いた場合に、導光板の入光面近傍における輝度ムラ(ホットスポット)および輝線の発生がほとんどなく、出光面のほぼ全域において均一な輝度分布を有する面光源装置、該面光源装置を有する表示装置、該表示装置を有するテレビ受信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の導光板の一例の斜視概略図である。
【図2】本発明の導光板の別の一例の断面概略図である。
【図3(a)】実施例の導光板において、入光部の第一の部分領域に形成した凹凸構造(くぼみ)の表面プロファイル図である。
【図3(b)】実施例の導光板において、入光部の第一の部分領域に形成した凹凸構造(くぼみ)の表面プロファイル図である。
【図3(c)】比較例の導光板の入光部の第一の部分領域に形成した凹凸構造(くぼみ)の一表面プロファイル図である。
【図3(d)】実施例の導光板において、入光部の第一の部分領域に形成した凹凸構造(プリズム列)の上面図である。
【図4】本発明の導光板の一例の第一の部分領域の断面模式図である。
【図5】凹凸構造を形成した導光板製造用多層フィルムの断面模式図である。
【図6】凹凸構造を形成した導光板製造用多層フィルム(シール)のシールシートの概略図である。
【図7】凹凸構造を形成した導光板製造用多層フィルム(テープ)の製造方法の具体例の説明図である。
【図8】拡散角度の説明図。
【図9】本発明の面光源装置の正面概略図である。
【図10】本発明の面光源装置に利用できる点光源(LED)の斜視概略図である。
【図11】本発明の導光板を用いた液晶表示パネルの正面概略図である。
【図12】本発明のテレビ受信装置の構成を示す図である。
【図13】本発明の導光板が入光面に有する凹部のピッチ及び深さの説明図である。
【図14】複数の凹部が形成された導光板製造用多層フィルム(シール)に、その法線方向から入射した光の、凹部の開口部の長軸の方向に垂直な方向の透過光強度の角度分布図である。
【図15】凹凸構造を形成した導光板製造用フィルム(テープ)の製造に使用できるリールの具体例の写真である。
【図16】本発明の導光板の対向面の光散乱パターンの好ましい形成領域の一例を示す図である。
【図17】導光板の厚みAと第一の部分領域の厚み方向の長さBを示す図である。
【図18】本発明の導光板の入光部に形成する凹凸構造(溝構造)に、その法線方向から入射した光の、凹部の開口部の長軸の方向に垂直な方向の透過光強度の角度分布図である。(a)拡散シート1の透過光強度の角度分布図(b)拡散シート2の透過光強度の角度分布図
【図19】導光板の入光面に拡散構造を形成した場合に出光面に発生する輝線の一例を示す図である。
【図20】本発明の導光板の出光面に形成できるレンチキュラーレンズ形状の一例を示す図である。
【図21】実施例の導光板の出光面に形成されたレンチキュラーレンズ形状を示す断面図である。
【図22】本発明の導光板の出光面に形成できるランダムな複数本の溝を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の導光板の実施形態について、以下に具体的に説明する。
[導光板]
本発明の導光板は、出光面と、前記出光面と対向する対向面と、前記出光面と前記対向面との間に挟まれた少なくとも1つの入光面とを有する導光板である。前記少なくとも1つの入光面は、該入光面の幅方向に略平行に2つ以上の領域に分割されており、前記2つ以上の領域は、少なくとも、異方性の拡散特性を有する領域を含む第一の部分領域と、等方性の拡散特性を有する第二の部分領域と、を含む。
【0015】
ここで、異方性の拡散特性を有するとは、該領域に法線方向から光線を入射させたときの出射光の拡散角度が拡散方向によって異なることをいい、等方性の拡散特性を有するとは、該領域に法線方向から光線を入射させたときの出射光の拡散角度が方向によらず等しいことをいう。
ここで、「拡散角度」とは、透過光強度がピーク強度の半分に減衰する角(半値角)の2倍の角度(FWHM:Full Width Half Maximum)をいう(図8参照)。ある拡散方向への拡散角度は、例えば、Photon Inc.製のPhotonや日本電色工業株式会社製のGC5000L等の変角色差計を用いて、入光面の法線方向から、入光面に入射した光のその拡散方向への透過光強度の角度分布(透過光の強度の出射角度に対する分布)を測定することによって求めることができる。ここで、入光面の法線方向とは、図1の16に示す方向を指す。
【0016】
導光板の一例を図1に示す。図1の導光板1、2は、出光面と対向面を主面とする平板状(直方体)の形状を有するものである。図1の導光板1においては、近傍に配置された光源の光を入光面12から導光板内に入射させ、内部で繰り返し反射させて導光し、導光した光を出光面11と対向する対向面(図示せず)によって出光面11に向け、出光面11から外部に出射させる。入光面には第一の部分領域13と第二の部分領域200が形成されている。
また、導光板の別の例を図2に示す。図2の導光板は、照明装置本体(具体的には車両用信号灯)の外形に沿った形状等を有し、入光面が出光面と対向するように配置されているものである。具体的には、図2の導光板は、出光面282側を凸とする湾曲板形状を有し、入光面は、出光面282に対向する対向面283上に設けられた、対向面の長手方向に垂直で断面が略コの字状の溝の側面281a,281bに位置している。図2の導光板28においては、入光面281a、281bから入射した光を出光面282と対向する対向面283の間で繰り返し反射させ、出光面282から外部に出射させる。
【0017】
導光板が図1に示したもののように平板状であって、略一定の厚みAを有している場合、導光板の厚みA(図17参照)と前記第一の部分領域の厚み方向の長さB(図17参照)は下記式を満たすことが好ましい。
0.2≦B/A≦0.7
より好ましくは、
0.3≦B/A≦0.7であり、
さらに好ましくは、
0.4≦B/A≦0.6である。
【0018】
A、Bの割合を上記のようにして、拡散特性の異なる第一の部分領域と第二の部分領域の割合を特定の範囲にすると、入光面に平行な方向への拡散の度合いが大きく異なる2種類の拡散光を混在させ相補性を持たせることができるため、より効果的にホットスポットを低減し、均一な発光を有する出光面を得ることが出来るようになる。
すなわち、上記式のB/Aが0.7以下であれば、光到達度の低下が少なく、かつ出光面の入光面に近い領域に輝線が発生しにくい。また、下記式のB/Aが0.2以上であれば、ホットスポットの抑制効果を有する。
【0019】
なお、導光板の厚みA(出光面と対向面との間の距離)は、例えば、2.0〜5.0mm程度とすることができる。
【0020】
本発明の導光板において、入光面は少なくとも1つあればよく、2つまたはそれ以上あってもよい。入光面を2つ有する場合、導光板の形状は出光面と対向面を主面とする平板状の直方体であることが好ましく、さらに、2つの入光面が対向していることが好ましい。この場合、対向する二つの入光面は長さが同じであるため、点光源の数や種類を同一にし、部品の共通化を図ることができるというメリットがある。
【0021】
[第一の部分領域]
本発明の導光板の入光面の第一の部分領域には、異方性の拡散特性を持たせるために、開口部又は底面が特定の一方向に長い異方性の形状を有する複数の凹部又は凸部を設けることが好ましい。
前記特定の一方向は、出光面と垂直な方向であることが好ましい。
【0022】
なお、凹部(凸部)の開口部(底面)の長径が特定の一方向となす角が40度以下である場合には(0度でなくても)、その凹部(凸部)の開口部(底面)は“特定の一方向に長い異方性形状を有している”ものとするが、凹部(凸部)の開口部(底面)の長径と特定の一方向のなす角は10度以下であることが好ましく、8度以下であることがより好ましく、6度以下であることがより好ましく、4度以下であることがより好ましく、最も好ましくは0度である。ここで、開口部(底面)の長径とは、開口部(底面)に外接する面積が最小となる外接長方形の長辺をいう。
【0023】
入光面に、開口部(底面)の形状が、特定の一方向に長い異方性形状以外の形状である凹部(凸部)(例えば、開口部(底面)が円等の等方形状であるものや、開口部(底面)は異方性形状であるが、その長径が特定の一方向と平行でないもの)が存在していても構わない。ただし、開口部(底面)が特定の一方向に長い異方性形状を有する凹部(凸部)の開口部(底面)の面積の合計が、それ以外の凹部(凸部)の開口部(底面)の面積の合計を上回っていることが好ましい。
【0024】
前記異方性形状の長径と短径の比(長径/短径)に限定はないが、好ましくは2以上であり、より好ましくは10以上である。ここで、短径、長径とは、それぞれ、外接する面積が最小となる外接長方形の短辺、長辺をいう。
【0025】
前記異方性形状に限定はなく、その具体例としては、例えば、図1に示すような直線(溝)や、図13に示すような略楕円形状が挙げられる。
【0026】
凹部(凸部)の開口部(底面)の形状は、入光面の任意の箇所を顕微鏡(走査型電子顕微鏡やレーザー共焦点顕微鏡等)により観察することによって決定することができる。
【0027】
凹部(凸部)の出光面に平行な方向のピッチに限定はないが、その平均ピッチは20μm以下であることが好ましく、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。また、平均ピッチは580nm(可視光の中心波長)以上であることが好ましく、より好ましくは780nm(可視光全域)以上である。
【0028】
一般に使用される点光源の発光面サイズ(幅)は数mm程度であるので、平均ピッチをこのような値に設定すれば、十分な数の凹部又は凸部を点光源の発光面に割り当てることができ、光源と導光板の位置あわせの精度を厳格に求める必要がなくなる。また、平均ピッチをこのような値に設定すれば、取り扱い時に凹部又は凸部に爪などが引掛かることも少なく、ハンドリング性が向上する。さらに、本発明の面光源装置に含まれる導光板によって拡散する光は可視光線(380nm〜780nmの電磁波)であるので、凹部又は凸部による拡散効果を十分に発揮するためには平均ピッチは上記のような値であることが好ましい。
【0029】
ここで、凹部(凸部)の出光面に平行な方向のピッチとは、入光面の出光面に平行な任意の断面における隣合う谷底(凹部の場合)又は山頂(凸部の場合)の間の水平距離(入光面に平行な方向の距離)をいう(図13参照)。なお、谷底(山頂)が平坦である場合には、その中心を谷底(山頂)としてピッチを決定する。
また、凹部又は凸部の出光面に平行な方向の平均ピッチとは、入光面の凹部(凸部)の形成された領域の出光面と平行な任意の垂直断面から任意に抽出した100μmに存在する凹部(凸部)のピッチの平均値とする。
【0030】
凹部(凸部)の出光面に平行な方向の(平均)ピッチは、入光面の凹部(凸部)の形成された領域の出光面に平行な任意の断面を顕微鏡(走査型電子顕微鏡やレーザー共焦点顕微鏡等)により観察・測定することによって決定することができる。
【0031】
各凹部(凸部)の大きさ(深さ・高さ)にも限定はない。
例えば、その開口部(底面)の短径は580nm〜50μmであってもよく、780nm〜20μmであってもよく、1〜10μmであってもよい。また、その開口部(底面)の長径は、例えば5μm以上2cm以下であってもよい。
また、深さ(高さ)は、例えば、500nm〜50μmであってもよく、700nm〜30μmであってもよく、5〜10μmであってもよい。凹部又は凸部の平均深さ(高さ)も、500nm〜50μmであることが好ましく、より好ましくは700nm〜30μm、更に好ましくは5〜10μmである。
【0032】
ここで、凹部(凸部)の深さ(高さ)は、入光面の凹部(凸部)の形成された領域の任意の断面における各凹部を構成する両側の山のうち高い方の山の山頂と凹部の谷底の間の(各凸部を構成する両側の谷のうち低い方の谷の谷底と凸部の山頂の間の)垂直距離(入光面に垂直な方向の距離)(山頂と谷底の標高差)をいう。(図13参照)また、凹部又は凸部の平均深さ(高さ)は、入光面の凹部(凸部)の形成された領域の任意の垂直断面から任意に抽出した100μmに存在する凹部(凸部)の深さ(高さ)の平均値とする。
凹部(凸部)の大きさは、入光面の任意の箇所を顕微鏡(走査型電子顕微鏡やレーザー共焦点顕微鏡等)により観察・測定することによって決定することができる。
【0033】
ただし、凹部(凸部)の形状が出光面に垂直な溝(畝)である場合、その長さは、点光源の発光面の導光板の厚み方向の長さよりも大きいことが好ましい。つまり、溝(畝)の長さは点光源の発光面の大きさ以上で、かつ、第一の部分領域の厚み方向の長さ以下であることが好ましい。なお、図1においては、溝は第一の部分領域を導光板の厚さ方向に横断する長さを有しているが、溝(畝)の長さは必ずしも第一の部分領域を横断するものでなくてもよい。
【0034】
複数の凹部(凸部)の形状、大きさ(深さ、高さ)及び出光面に平行な方向15のピッチのうち少なくとも1つがランダム(不規則)に異なっていると、輝度ムラ低減効果が向上するため好ましい。
ここで、大きさ、ピッチが異なっているとは、標準偏差を3倍した値(3シグマ)が平均値の10%を超えることをいう。
【0035】
なお、本発明の導光板が効果を奏するにあたって、第一の部分領域内においては、幅方向の全域にわたって凹部が形成されている必要はないが、全域にわたって形成されていることが好ましい。幅方向の全域にわたって凹部が形成されていれば後述する面光源装置において、点光源と導光板との位置あわせをする必要がない。幅方向の一部において凹部が形成されていない領域を有する場合は、後述する面光源装置において、導光板の当該領域が点光源と点光源との間になるように位置あわせをする必要が生じる。
【0036】
また、凹部又は凸部の密度には限定はないが、第一の部分領域のうち、光源の発光面に対向する領域については、凹部(凸部)の開口部(底面)の面積の合計がその領域の25%以上(より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上)を占めることが好ましい。
【0037】
本発明の導光板の入光面の第一の部分領域に、開口部又は底面が特定の一方向に長い異方形状を有する複数の凹部又は凸部(以下、「凹凸構造」ということがある。)を形成する方法に限定はない。例えば、(1)凹凸構造に対応する凹凸パターンを有する金型を用いて導光板を射出成型する方法、(2)凹凸構造に対応する凹凸パターンを有する転写型を用いて導光板の入光面上に凹凸構造を転写する方法、(3)凹凸構造を有するフィルムを透光性の粘着剤等からなる接着層を用いて導光板に貼り合せる方法、及び(4)透光性のフィルムを粘着剤等を用いて導光板に貼り合せる際に、フィルムあるいは粘着剤中に異方形状の拡散剤等をその長軸方向が特定の一方向に配向するように混入する方法等を用いることができる。
【0038】
(1)の方法として、例えば、導光板を成形する金型の入光面に相当する位置に凹凸構造に対応する凹凸パターンを有するスタンパーを配置し、当初から凹凸構造を有する導光板を射出成形することができる。この方法は、比較的小型(32型以下程度)の画像表示装置に用いる面光源装置用の導光板を製造するのに適している。
【0039】
(2)の方法として、例えば、凹凸構造を有していない導光板(導光板製造用原反シート)を押出成形やキャスト成形等により成形した後、入光面(入光面となる面)に凹凸構造に対応する凹凸パターンを有する転写型を用いて凹凸構造を転写することができる。
【0040】
例えば、所定のサイズにカットした透明基板を複数枚重ね、表面に凹凸構造に対応する凹凸パターンを有する転写ローラーを加熱しながら透明基板の入光面となる面に押し付けて凹凸構造を転写する。この方法によれば、複数枚の導光板にまとめて転写ができるので、大量生産が可能であり、品質も向上する。
【0041】
(3)の方法の具体例として、以下に説明するa.シール型、及び、b.テープ型の2種類の方法が挙げられる。
a.シール型
ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン等からなる透明なベースフィルム上に、例えば、光重合性樹脂組成物を塗布し、後述するスペックルパターンを用いた方法により光重合性樹脂組成物の層に凹凸構造を形成するなどして、凹凸構造を有する層を形成する。ベースフィルムの厚さに限定はないが、例えば、20〜250μm、好ましくは50〜125μmとすることができる。
【0042】
次いで、上記ベースフィルムの凹凸構造を形成した面とは反対側の面に、粘着剤を塗布すると共にその上にポリエチレンテレフタレート等からなる剥離フィルムを貼り合わせるか、又は、剥離フィルム付きの粘着フィルムの粘着層を貼り合わせる等して、粘着剤側が剥離フィルムでカバーされた多層フィルムを製造する。
このような多層フィルムの層構成の具体例を図5に示す。図5の5a、5bは、共に、剥離フィルムを片側に設けた多層フィルムである。多層フィルム5aにおいては、下から順に、剥離フィルム51、粘着層52、ベースフィルム53及び凹凸構造(ここでは溝構造)が形成された層54が積層されている。また、多層フィルム5bにおいては、凹凸構造が形成された層54の上にさらに、粘着層及び台紙フィルム層が設けられ、下から順に、剥離フィルム51、粘着層52、ベースフィルム53、凹凸構造が形成された層54、粘着層55及び台紙フィルム56が積層されている。なお、剥離フィルム51及び台紙フィルム56は、導光板の製造中、シール台紙又は保護フィルムの役割を果たすものであり、その厚みに限定はなく、例えば(その材質にもよるが)、20〜100μmとすることができる。ただし、ハーフカット処理の加工をより容易に行うためには、台紙フィルムは50μm以上が好ましく、75μm以上がさらに好ましい。また、粘着層の厚さは、例えば10〜100μmとすることができる。性能とコストのバランスを考慮した場合は、15〜50μm程度が好ましく、20〜25μm程度がさらに好ましい。
【0043】
次に、この多層フィルムを導光板の入光面の幅に合わせて切断し、次いで、多層フィルム5aの場合は剥離フィルム51のみを残して、多層フィルム5bの場合は台紙フィルム56と粘着層55を残して、残りの層を第一の部分領域の導光板の厚み方向の長さと同じ長さに切断する(ハーフカットする)ことによって、導光板の第一の部分領域と同じサイズを有する凹凸構造が形成されたフィルム(凹凸構造シール)を剥離フィルム51(多層フィルム5aの場合)又は台紙フィルム56(多層フィルム5bの場合)上に複数枚形成したシールシートを製造する。なお、以上のように、多層フィルム5aの場合は、ハーフカット処理の際、切断手段の刃が凹凸構造が形成された層の側から入るので、凹凸構造が壊れる危険が少ないという利点があり、一方、多層フィルム5bの場合は、ハーフカット処理の際、切断手段の刃が粘着層52の側から入るので、粘着層を確実に切断でき、粘着剤どうしが再度くっついてしまう所謂「糸引き」という不具合が発生しにくいという利点がある。ハーフカットの方法としては、例えば、トムソン刃を切断方向に入れる方法、ロール刃を切断方向に転がす方法、及び、レーザーを用いて所望の深さまで焼き切る方法等が挙げられるがこれらに限定されない。なお、レーザーを用いると切断屑が発生しないという利点がある。このようにして作製されたシールシートの正面概略図を図6に示す。図6において、各縦線は溝61を示す。
【0044】
そして、導光板の製造工程や導光板を有する面光源装置の組立工程において、多層フィルム5aの場合は上記凹凸構造が形成されたフィルム(凹凸構造シール)を剥離フィルム51から1枚ずつ剥がして粘着層52を介して導光板の入光面の第一の部分領域に貼り合せる。多層フィルム5bの場合は、上記凹凸構造が形成されたフィルム(凹凸構造シール)を粘着層55から1枚ずつ剥がし、次いで剥離フィルム51を剥がして粘着層52を介して入光面に貼り合わせる。最後に、必要に応じてフィルムと入光面との間の空気をローラー等により抜くことにより密着させてもよい。
【0045】
なお、貼り合わせに先立ち、粘着層52及び/又は入光面(第一の部分領域)にエキシマUV処理やコロナ処理等の表面処理を施すことによって表面の分子結合を切断した後、直ちに粘着層と入光面とを密着させることによって、貼り合わせ強度を向上させることもできる。さらに、このような表面処理を利用すれば、粘着剤を使用せずに凹凸構造を有するフィルムのベースフィルムと導光板とを貼り合せることも可能であり、低コスト化、信頼性向上を図ることができる。
【0046】
このシール型の方法によれば、入光面への貼り合わせ作業が容易になり、使用した(貼り合わせた)シールの枚数の管理も容易になるので、導光板の製造が容易になる。さらに導光板製造用材料の輸送も容易になる。
【0047】
なお、シールシートを製造する際、多層フィルム(5a、5b)を導光板の入光面の幅より短く切断し、面光源装置の組立の際、2枚以上の多層フィルム(シール)を第一の部分領域に貼り合わせてもよい。このとき、入光面の光源の発光面に対向する領域より(左右)2mm以上外側までが各多層フィルム(シール)によって覆われるよう(フィルムどうしの隙間や継ぎ目が発光面に対向する領域にかからないよう)、位置決めして貼り合わせることが好ましい。
【0048】
b.テープ型
b.テープ型の方法について、図7を用いて説明する。
a.シール型の場合と同様にして、凹凸構造が形成された層を有する多層フィルム71を製造する。次いで、これを第一の部分領域の厚み方向の長さと同じ幅に切断することによって複数本のテープ状にし、それぞれリール(図示せず)に捲回してロール72に加工する。リールの具体例を図15に示す。このとき図15のように、巻き取ったテープが軸ズレを起こさないように、二枚の円盤に挟まれるような構造のリールで巻き取ることが好ましい。また巻き取られたテープの径は円盤の外径より小さいことが好ましい。
【0049】
そして、導光板の製造工程や導光板を有する面光源装置や照明装置の組立工程において、ロール72から、凹凸構造が形成された層を有するテープ(テープ状フィルム)を繰り出して、導光板の入光面の幅に切断した後入光面の第一の部分領域に貼り合せるか、第一の部分領域に貼り合わせた後入光面の幅に切断する。貼り合わせには、a.シール型の方法において述べたのと同様の方法が採用できる。
【0050】
この方法によれば、テープを切断する長さは導光板に貼り合わせる際に決定すればよいので、1種類のロール(凹凸構造が形成された層を有するテープ状フィルムのロール)を様々な大きさを有する導光板の製造に兼用することができ、ロールの汎用性が高い。
【0051】
(4)の方法は、透光性のフィルムを粘着剤等を用いて導光板に貼り合せる際に、フィルムあるいは粘着剤中に異方形状の拡散剤等をその長径の方向が特定の一方向に配向するように混入する方法である。例えば、長径10〜300μm、短径0.3〜5μmの針状フィラーであって、粘着剤と屈折率の異なる針状フィラーを結着剤に添加したものを、せん断力をかけながら塗工することによって、その長径の方向を塗工方向に沿うように配向させることで作製することができる(特開2008−34234号公報参照)。
【0052】
上述の(1)、(2)の方法で使用する金型(スタンパー)、転写型(転写ローラー)や(3)の方法で使用するフィルム等に、凹凸構造に対応する凹凸パターンや凹凸構造を形成する方法に限定はなく、例えば、切削、サンドブラスト等の機械加工によって形成してもよいし、ナノインプリント技術により形成してもよいし、レーザーのスペックルパターン露光により形成することもできる。スペックルパターン露光を利用する方法は、機械加工では困難な10μm程度以下の微細な3次元構造の形成に適しており、また適度な不規則性を得ることも容易であるので、第一の凹凸の形成に特に適している。また、第二の凹凸に対応する凹凸パターンとしては、市販されているモスアイのマスター(原型)を利用してもよい。
【0053】
スペックルパターン露光を利用する場合には、具体的には次のようにして凹凸構造を形成することができる。
例えば、レーザー光を用いた干渉露光によりラ斑点模様や縞模様のスペックルパターンを発生させ、これをフォトレジスト等の感光性材料に照射する。次いで、露光した感光性材料を公知の方法によって現像すると、感光性材料に上記スペックルパターンに対応した凹凸構造が形成される。
なお、ランダムな斑点模様や縞模様のスペックルパターンは、例えば、レーザー光を異方性の強い拡散部材で拡散させることによって発生させることができる。通常、レーザー光を拡散部材で拡散させて露光面に照射すると、スペックルは円形ムラとして発生するが、拡散部材を異方性の強いものとすると、スペックルを斑点模様や縞模様状にすることができる。さらに、レーザー光の波長やレーザー光を拡散させる条件等を適宜変更することにより、所望のランダム斑点/縞模様を得ることが可能となる。具体的には、特表2004−508585号公報の段落0047〜0057に開示される方法等によって発生させることができる。
【0054】
(1)、(2)の方法で使用する凹凸構造に対応する凹凸パターンを有する金型や転写型は、さらに、上記のようにして作製した凹凸構造をサブマスタ型とし、このサブマスタ型に電鋳等の方法で金属を被着してこの金属に上記凹凸構造に対応する凹凸パターンを転写すること等によって作製することができる。
【0055】
なお、干渉露光によるスペックルパターンを用いた微細な凹凸パターンの作製方法は周知であり、例えば、特許第3413519号、特表2003−525472号公報及び特表2004−508585号公報等に開示されている。
【0056】
本発明の導光板の入光面の第一の部分領域に設けた開口部又は底面が特定の一方向に長い異方形状を有する複数の凹部又は凸部は、その表面形状により、特定の一方向に垂直な方向への拡散角度が最大で、特定の一方向に平行な方向への拡散角度が最小である異方性の拡散特性を示す。
【0057】
第一の部分領域の拡散角度(入光面に垂直に光線を入射させたときの出射光の拡散角度(FWHM))の具体的な値に限定はないが、入光面(導光板)の幅方向への(出光面に平行な面における)拡散角度が5°〜60°であることが好ましく、より好ましくは7°〜40°、最も好ましくは10°〜30°である。一方、入光面の幅方向に垂直な方向(導光板の厚み方向)への(出光面に垂直な面における)拡散角度は、20°以下であることが好ましい。
また、拡散特性は入光面の第一の部分領域の全領域において略一定であることが好ましい。
【0058】
なお、異方性の拡散特性を、開口部又は底面が特定の一方向に長い異方形状を有する複数の凹部又は凸部によって出現させる場合、拡散角度は、共に、各凹部又は凸部の深さ及びピッチ等を適宜変更することによって調整することができ、スペックルパターンを利用してくぼみを形成する場合、これらはレーザー光を拡散させる条件等を適宜変更することによって調整できる。
【0059】
尚、拡散角度は理論(スネルの法則)上、基材が内部拡散性能を持たない場合であれば、基材の屈折率の影響は受けず、複数個の縦長のくぼみが形成された面を形成する材料の屈折率に依存する。このため、導光板の入光面の第一の部分領域に開口部又は底面が特定の一方向に長い異方形状を有する複数の凹部又は凸部を形成する方法として上記(3)の製法を採用する場合であれば、複数の凹部又は凸部を有するフィルム単独で拡散角度を測定しても、これを導光板に貼り合わせた最終形態の状態で拡散角度を測定しても、測定結果は変わらない。
なお、測定対象である面と対向する面が平滑でない場合には、その面を切断する等して平滑面とするか、測定対象である面の表面形状をその面を形成する材料と同じ屈折率を有する材料に転写しこれを用いることにより測定することができる(凹部又は凸部の凹凸が反転しても、透過光強度の角度分布は変化しないので、拡散角度も変化しない)。
【0060】
また、第一の部分領域に、その法線方向から、光線を入射したときに、出射角度=0°において、光の透過光強度がピーク強度の90%以上となることが好ましい。
具体的な例を図14(A)(B)に示す。図14(A)(B)は日本電色工業株式会社製のGC5000Lを用いて測定した、開口部が特定の一方向に長い異方形状を有する複数の凹部を表面に有するフィルム単独の透過光強度の角度分布である。
図中の◇(白抜き)部分の透過光強度は、ピーク強度の90%以上である。どちらの角度分布でも、出射角度=0°において透過光強度はピーク強度の90%以上である。
このように、第一の部分領域の拡散特性は、その法線方向から光線を入射したときの光の透過光強度の角度分布が、複数のピークを持たず、なだらかに変化するようなものであることが好ましい。
【0061】
第一の部分領域の存在位置に限定はないが、輝線をより効果的に抑制するためには、第一の部分領域は、出光面に近いところにおいて広く存在し、対向面に近いところにおいてはそれほど広く存在していないことが好ましい。
具体的には、入光面を出光面と対向面との間で略平行に2等分(換言すると、導光板の厚み方向に2等分)した際の出光面側の領域を領域X、反射面側の領域を領域Yとしてその厚さをC(C=A/2)としたときに、領域Xの範囲内に存在する第一の部分領域の導光板の厚み方向の長さB'が下記式(1)を満たし、領域Yに存在する第一の部分領域の導光板の厚み方向の長さB"が下記式(2)を満たすことが好ましい。
B'≧C/2 ・・・式(1)
C/2≧B" ・・・式(2)
より好ましい態様は、領域Xが第一の部分領域で、領域Yが第二の部分領域である態様である。
【0062】
[第二の部分領域]
第二の部分領域が等方性の拡散特性を有するようにするために、例えば、第二の部分領域を平滑にするか、もしくは開口部又は底面が等方性形状(すなわち、円)を有する凹部又は凸部(等方的な凹凸)を形成することができる。或は、第二の部分領域に、等方性の拡散特性を有する光拡散層を設けてもよい。
異方性の拡散特性を示す第一の部分領域との相補性をより良く発揮するためには、第二の部分領域は平滑に加工することが好ましい。
【0063】
第二の部分領域に開口部又は底面が等方性形状を有する凹部又は凸部を形成する場合、その形成方法に限定はなく、例えば、第一の部分領域に開口部又は底面が特定の一方向に長い異方性形状を有する凹部又は凸部を形成する方法として先に説明した(1)〜(3)と同様にして形成することができる。
【0064】
[接着層]
本発明の導光板においては、前述の(3)の凹凸構造を有するフィルムを透光性の粘着剤等を用いて導光板に貼り合せる方法のように、入光面の第一の部分領域、第二の部分領域に、異方性、等方性の拡散特性有する光拡散層を設けることにより、異方性、等方性の拡散特性を付与することができる。その際、光拡散層は、接着層を介して入光面に固定することができ、接着層を構成する材料としては、100℃における貯蔵弾性率G´が40,000〜100,000Paであるものを用いることが好ましい。
このような接着剤としては、例えば、ホットメルト型接着剤、熱硬化型接着剤、感圧型接着剤、エネルギー線硬化型接着剤、吸湿型接着剤、乾燥型接着剤、UV硬化型接着剤、重合型接着剤、2液反応型接着剤、嫌気型接着剤などが挙げられる。これらの中でも、作業性の観点から感圧型接着剤(粘着剤)が最も好ましい。
特に、本発明者らの研究によれば、100℃における貯蔵弾性率G´が40,000〜100,000Paである粘着剤を用いると、基材(導光板本体をいう)−接着層(硬化後の接着剤からなる層をいう)間、及び、接着層−光拡散層(前述のシールまたはテープにて上記第一の部分領域及び/又は第二の部分領域となる凹部を形成したものをいう)間の剥がれが起こりにくいことが判明した。したがって、接着層の材料としてはそのようなものを用いることが好ましい。
接着層の材料の100℃における貯蔵弾性率は、より好ましくは、40,000〜98,000Pa、更に好ましくは40,000〜95,000Paである。上記貯蔵弾性率が小さすぎると貼り付けた後でのハガレなどが起きやすく、大きすぎると接着性に劣るために好ましくない。また、貯蔵弾性率が小さすぎると、基材がアクリル系樹脂であった場合、貼り付け時に発泡が起きるため好ましくない。
100℃における貯蔵弾性率G´が40,000〜100,000Paであると剥がれが起こりにくい理由は明らかではないが、基材と光拡散層の間の熱膨張率差から生じる高温時のひずみを吸収できるためである、と推測される。ただし、機序はこれによらない。
【0065】
ここで、100℃における貯蔵弾性率は、例えば、以下のような条件で測定できる。得られた結果について、90℃以上110℃未満における貯蔵弾性率G'を平均し、100℃における貯蔵弾性率とする。
・測定装置:ティー・エイ・インスツルメント社製 ARES
・変形モード:ねじり
・測定周波数:一定周波数1Hz
・昇温速度:5℃/分
・ひずみ:0.2%
・測定温度:粘着剤のガラス転移温度付近から200℃でまで測定
・測定部形状:パラレルプレート 8mmφ
・試料厚さ:0.8〜1mm
・前処理:温度50℃、真空度−0.02MPaで30分真空乾燥
【0066】
また、光学特性の点では、接着層の材料は、接着層の全光線透過率が90%以上で、ヘーズが1.0以下となるようなものであることが好ましい。
さらに、接着層は、導光板が面光源装置や照明装置等に組み込まれた際には、光源近傍に配置されることになるので、光源による熱の影響に耐えうるものであることも好ましい。
【0067】
以上のような観点から、接着層の材料として好ましいものとしては、(メタ)アクリル系粘着剤(以下、単に「アクリル系粘着剤」という。)((メタ)アクリル系ポリマー(モノマー成分として(メタ)アクリル酸を含むポリマー)をベースポリマーとして含む(好ましくは30質量%、より好ましくは50質量%以上含有する)粘着剤)やウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等の粘着剤が挙げられる。
【0068】
ゴム系粘着剤としては、例えば、天然ゴム、天然ゴムとメチルメタクリレートなどのアクリル成分との共重合物、スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、ならびに、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、などが挙げられる。なかでも、天然ゴムとメチルメタクリレートなどのアクリル成分との共重合物が好ましい。
これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0069】
アクリル系粘着剤としては、後述の手法をもって製造したものや、市販のアクリル系粘着剤等が挙げられる。
市販のアクリル系粘着剤の例としては、例えば、MO−3006C(リンテック(株)製)、MO−3012C(リンテック(株)製)、8171JR(3M(株)製)、8172JR(3M(株)製)、パナクリーンPD−S1(パナック(株)製)、マスタックTR−1801(藤森工業(株)製)、マスタックTR−1802(藤森工業(株)製)、CCL/D2−L/T5T5(新タック化成(株)製)、CCL/D1/T3T3(新タック化成(株)製)、EXC10−076(東洋インキ(株)製)、LUCIACS CS9621T(日東電工(株)製)、LUCIACS HJ9150W(日東電工(株)製)、DH425A((株)サンエー化研製)等が挙げられるが、特にこれに限定されない。
例えば、光拡散層がポリエチレンテレフタレート、基材の材料がポリメチルメタクリレートで、85℃の環境下で使用する場合には、上述した粘着剤のうち、PD−S1、TR−1801A、CCL/D1/T3T3、MO−3006C、EXC10−076が好ましい。また、100℃の高温環境下でも耐える粘着剤は、PD−S1、TR−1801A、CCL/D1/T3T3である。
【0070】
アクリル系粘着剤のベースポリマーである(メタ)アクリル系ポリマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー0.1〜10質量%またはカルボキシキル基含有モノマー0.1〜10質量%を共重合してなる(メタ)アクリル系ポリマーが特に好ましい。
水酸基含有モノマーとして、具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。中でも、側鎖の炭素数が4以上の水酸基含有モノマーを用いると、耐熱性が向上するため好ましい。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
上記水酸基含有モノマーを使用する際の共重合割合は、0.1〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.3〜7質量%である。上記水酸基含有モノマーの含有量が少なすぎると長期の耐久性が低下する場合があり、多すぎると硬くなり耐久性に不具合が生じる場合がある。
【0071】
カルボキシル基含有モノマーとしては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などがあげられ、特にアクリル酸とメタクリル酸が好ましく用いられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。これらカルボキシル基含有モノマーは、接着性向上や凝集力増加による耐熱性という観点から効果的である。
上記カルボキシル基含有モノマーの共重合割合は、0.1〜5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜3質量%である。上記カルボキシル基含有モノマーが少なすぎると接着性に劣り、多すぎると硬くなり耐久性に不具合が生じる場合や、タッキファイヤーとの相溶性が大きく低下して粘着剤が白濁する場合があり好ましくない。
【0072】
これらの他に、(メタ)アクリル系ポリマーのモノマー成分としては、アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが使用できる。このようなアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、へプチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレートなどがあげられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。中でも、粘着剤に柔軟性を付与するという観点から、n−ブチル(メタ)アクリレートが好ましく用いられ、その際には(メタ)アクリル系ポリマー中に30〜99質量%使用されることが好ましく、より好ましくは50〜99質量%である。
【0073】
さらに、(メタ)アクリル系ポリマーには、共重合可能な他の単量体(モノマー成分)を適宜共重合してもよい。共重合可能な単量体としては、たとえば、酢酸ビニル、アクリルアミド、ジメチルアミノアルキルアミド、アクリロイルモルホリン、グリシジルアクリレート、スチレンやα−メチルスチレンなどのスチレン誘導体、ビニルトルエンやα−ビニルトルエンなどの誘導体などの高屈折率単量体、べンジル(メタ)アクリレートやナフチル(メク)アクリレート、フエノキシエチル(メタ)アクリレート、フエノキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0074】
また、(メタ)アクリル系ポリマーとしては、特に、カルボキシル基含有モノマー0.1〜30質量%、n−ブチル(メタ)アクリレート30〜99.9質量%を共重合成分として含む(メタ)アクリル系ポリマーが好ましく、さらにゲル分率を30〜90質量%に調整されたものが好ましい。このように(メタ)アクリル系ポリマーは、粘着層の内部凝集力向上と柔軟性向上を両立できるため、導光板の基材に貼合して使用した場合に、界面での発泡現象や基材からの剥がれが発生しない。
【0075】
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は通常60万以上であるが、好ましくは70万〜300万である。上記重量平均分子量が小さすぎると、耐久性に乏しくなり、大きすぎると、作業性が悪くなるために好ましくない。
【0076】
(メタ)アクリル系ポリマーの製造は、溶液重合、塊状重合、乳化重合などの公知の任意の製法を採用することができる。
たとえば、溶液重合では、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などの重合開始剤を、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.01〜0.2質量部使用することが好ましく、より好ましくは0.05〜0.15質量部使用する。酢酸エチルなどの重合溶媒を使用して、窒素気流下で50〜70℃で8〜30時間反応させることにより得られる。
【0077】
このようにして得られた(メタ)アクリル系ポリマーの屈折率を調節したり、内部凝集力を上げたり、耐熱性を上げる目的で、変性処理をすることもできる。
上記変性処理として、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部の存在下に、上記(メタ)アクリル系ポリマーのモノマー成分とは異なる単量体を10〜200質量部、好ましくは10〜100質量部加えて、必要に応じて媒体も調整して、過酸化物0.02〜5質量部、好ましくは0.04〜2質量部を使用して、グラフト重合反応を行うことが挙げられる。
ここで、(メタ)アクリル系ポリマーのモノマー成分とは異なる単量体というのは、特に限定されず、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、イソボルミル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマーや、スチレンやα−メチルスチレンなどのスチレン誘導体、ビニルトルエンやα−ビニルトルエンなどの誘導体などの高屈折率単量体があげられる。前記高屈折率単量体を使用することにより、(メタ)アクリル系ポリマーの屈折率を高めることができる。
【0078】
グラフト重合方法としては、溶液重合であれば、(メタ)アクリル系ポリマーの溶液に、必要な単量体と粘度調整される溶媒を加えて、窒素置換した後、過酸化物0.02〜5質量部、好ましくは0.04〜2質量部を加えて、50〜80℃で、4〜15時間加熱して、グラフト重合反応を行う。
乳化重合であれば、(メタ)アクリル系ポリマーの水分散液に、固形分量を調整する水を加えて、さらに必要な単量体を加えて、撹拌しながら窒素置換して(メタ)アクリル系ポリマー体粒子に単量体を吸収させた後に、水溶性の過酸化物水溶液を加えて、50〜80℃で、4〜15時間加熱して反応を終了させる。
このように、(メタ)アクリル系ポリマーの存在下に単量体を重合することで、この単量体のホモポリマーも生成するが、(メタ)アクリル系ポリマーへのグラフト重合も起こるので、他のホモポリマーからなる重合体がアクリル系共重合体中に均一に存在する状態になる。この際の開始剤として使用される過酸化物が少ないとグラフト重合反応の時間がかかりすぎ、多すぎると単量体のホモポリマーが多く生成するために好ましくない。
【0079】
粘着剤には、(メタ)アクリル系ポリマー等のベースポリマーの他に、タッキファイヤーなどの粘着付与剤を適宜添加してもよい。
上記タッキファイヤーとしては、特に限定されないが、無着色で透明のものが好ましい。その透明度は、50質量%トルエン溶液でのガードナー色相1以下であることが好ましい。
上記タッキファイヤーとして、たとえば、芳香族環を有するタッキファイヤーで、屈折率が1.51〜1.75の範囲のものが好ましく使用される。また、タッキファイヤーの重量平均分子量は、1000〜3000であることが好ましく、軟化点は90℃以下であることが好ましい。重量平均分子量が3000を超えたり、軟化点が90℃を超えると、(メタ)アクリル系ポリマーとの相溶性が低下する場合があり、重量平均分子量が1000未満であると、粘着剤の凝集力が低下する場合がある。
具体的には、スチレンオリゴマー、フエノキシエチルアクリレートオリゴマー、スチレンとα−メチルスチレンの共重合体、ビニルトルエンとα−メチルスチレンの共重合体、C9系石油樹脂の水添物、テルペンフエノールの水添物、ロジンおよぶその誘導体の水添物などがあげられる。この際、軟化点が40℃以下のタッキファイヤーは、その使用量を30質量部未満とし、軟化点が50℃以上のタッキファイヤーを20質量部以上併用して使用されるのが、耐熱性の面で好ましい。
これらのタッキファイヤーの配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー固形分100質量部に対して、10〜150質量部、好ましくは20〜100質量部用いられ、所定の屈折率に調整される。少なすぎると屈折率が十分に上がらず、多すぎると硬くなり接着性が低下するため好ましくない。
【0080】
粘着剤には架橋剤を適宜用いることができる。特に(メタ)アクリル系ポリマーをベースポリマーとして用いる際には、架橋することにより凝集力や耐久性が向上するため好ましい。
上記架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、過酸化物などがあげられる。
イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、へキサメチレンジイソシアネートなどのジイソシアネート類や、各種ポリオールで変性したジイソシアネート付加物、イソシアヌレート環やビューレット体やアロファネート体を形成させたポリイソシアネート化合物などがあげられる。特に、脂肪族や脂環族のイソシアネートが、架橋物が透明になるため好ましく用いられる。
また、乳化重合にて製造した変性(メタ)アクリル系ポリマーの水分散液では、イソシアネート系架橋剤を用いない場合が多いが、使用する場合には、イソシアネート基が水と反応しやすいため、ブロック化されたイソシアネート系架橋剤を用いても良い。
【0081】
過酸化物としては、加熱によりラジカルを発生して粘着剤のベースポリマーの架橋を進行させるものであれば使用可能である。たとえば、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ−n−オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサンなどがあげられる。なかでも特に架橋反応効率が優れることから、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジラウロイルパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシドなどが好ましく用いられる。
前記過酸化物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記ベースポリマー100質量部に対し、前記過酸化物0.03〜2質量部含有することが好ましく、0.04〜1.5質量部含有することがより好ましく、0.05〜1質量部含有することがさらに好ましい。0.03質量部未満では、凝集力が不足する場合があり、一方、2質量部を越えると、架橋形成が過多となり、接着性に劣る場合がある。
【0082】
ただし、架橋剤として、芳香族系のイソシアネート化合物を使用した場合には、硬化後の粘着剤が着色する場合があることがあるので、透明性が要求される本発明の用途(導光板)では脂肪族や脂環族系イソシアネートが好ましく用いられる。
【0083】
以上のような架橋剤の配合量としては、使用する(メタ)アクリル系ポリマーの種類によっても異なるが、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、通常0.03〜2質量部、好ましくは0.05〜1質量部の範囲で使用される。少なすぎると凝集力が不足し、多すぎると接着性が低下するために好ましくない。
【0084】
また、粘着剤にはシランカップリング剤を適宜添加することができる。
シランカップリング剤としては、たとえば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのインシアネート基含有シランカップリング剤などがあげられる。このようなシランカップリング剤を使用することは、粘着剤の耐久性の向上に好ましい。また、粘着剤のガラス基材に対する接着性も向上する。
前記シランカップリング剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対し、前記シランカップリング剤0.01〜2質量部含有することが好ましく、0.02〜1質量部含有することがより好ましい。0.01質量部未満では、耐久性の向上効果に劣る場合があり、一方、2質量部を越えると、接着力が増大しすぎて再剥離性に劣る場合がある。
【0085】
粘着剤には、ごく少量であれば有機溶剤を含有していてもよく、たとえば、メタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチルエーテル、1,4−ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、クロロホルム、トルエン、m−キシレン、p−キシレン、o−キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル(酢酸アミル)、酢酸イソペンチル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が用いられるが、特に限定されない。
これら有機溶剤は(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対し0.001〜1質量部含有することが好ましく、0.001〜0.5質量部含有することがより好ましく、0.001〜0.1質量部含有することがより好ましい。1質量部より多く含有すると、粘着剤から発生した有機溶剤が基材や光拡散層を溶解する場合があるため好ましくない。一方、0.001質量部未満含有する場合、乾燥時間および乾燥コストがかかることがある。
【0086】
粘着剤には、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、たとえば、加硫剤、粘着付与剤、着色剤、顔料などの粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物などを使用する用途に応じて適宜添加することができる。また、制御できる範囲内で、還元剤を加えたレドックス系を採用してもよい。
【0087】
なお、粘着剤は、導光板の製造の際には、剥離処理した支持体の上に積層された形態で用意することができる。例えば、粘着剤を、剥離処理した支持体上に塗布乾燥、架橋処理して粘着剤層付きシートとすることができる。具体的には、剥離処理した支持体上に粘着剤を塗布乾燥し、その上に相対的に剥離強度の弱い剥離処理済みフィルムを貼合して粘着剤付きシートを作製する。あるいは、剥離処理した支持体上に粘着剤を塗布乾燥した後、すぐに基材に貼り合わせてもよい。
このような支持体材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂等の熱可塑性樹脂、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等のオリゴマー及び/又はアクリレート系のモノマー等からなる電離放射線硬化性樹脂を紫外線又は電子線等の電磁放射線で硬化させた樹脂、等で構成された透明性基材が挙げられるが、経済性の観点からポリエチレンテレフタレートが一般的に用いられる。また、剥離処理としては、シリコーン層を塗布するかまたはエンボス形状を付与するなどが挙げられる。
粘着剤の塗布の方法としては、リバースコーター、コンマコーターやリップコーター、ダイコーターなど任意の塗布方法で、通常乾燥後の粘着剤厚さが2〜500μm、好ましくは5〜100μmとなるように処理される。
【0088】
粘着剤が架橋剤を含有する場合には、剥離処理された支持体上に塗布乾燥した後に、架橋後の粘着剤のゲル分率が30〜90質量%、好ましくは40〜90質量%、より好ましくは45〜85質量%になるように架橋処理してもよい。
ゲル分率が小さすぎると凝集力に劣り、大きすぎると接着性に劣るため好ましくないが、この範囲にすることで、アクリル基材などに貼り合せた際には、基材からの水分や残存モノマーの発生があっても、基材と粘着剤の接着界面での発泡現象を抑制することができる。ここでの粘着剤のゲル分率とは、粘着剤のうち、酢酸エチルに溶解しないものの割合をいい、架橋したものの割合(質量%)を示す指標である。
(ゲル分率の測定)
ゲル分率の測定は以下のようにして測定することができる。
粘着剤をW1g取り出し、酢酸エチルに室温(約25℃)下で7日間浸漬した。その後、浸漬処理した粘着剤(不溶分)を酢酸エチル中から取り出し、130℃で2時間乾燥後の質量W2gを測定し。ゲル分率を
ゲル分率(質量%)=(W2/W1)×100
として計算した。
【0089】
接着層を構成する材料の、100℃でのTMA(熱機械分析)の変位は−1〜2μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは、0〜1μm、更に好ましくは0〜0.5μmである。上記TMAの変位が小さすぎると貼り付けた後でのハガレなどが起きやすく、大きすぎると熱によってうねりが生じるために好ましくない。
(熱機械分析(TMA)の変位の測定)
熱機械分析は以下の条件で行った。
・装置:セイコーインスツルメンツ社製TMA/SS120
・プローブ:針入プローブ(先端径:1mm)
・荷重:10mN(1.02g)
・雰囲気:空気
・温度範囲:30℃〜200℃
・昇温時間:5℃/分
・測定試料:25μm厚みの接着層を5mm角に切り取り、石英ディスク(10mmφ)に貼り付けた。
【0090】
接着層を構成する材料の100℃でのTG/DTA(重量減少率)は、0〜−0.4%の範囲であることが好ましく、より好ましくは、0〜−0.3%、更に好ましくは0〜−0.2%である。上記TGAが大きすぎると熱による接着層の劣化が生じるために好ましくない。
(熱重量分析の測定)
熱重量分析の測定は以下の条件で行った。
・装置:セイコーインスツルメンツ社製TG/DTA220
・雰囲気:窒素(流量:250ml/分)
・温度範囲:30℃〜200℃
・昇温時間:10℃/分
・試料作製:25μm厚みの接着層を全体の質量が10mgになるように折り重ね、試料容器にセットした。
【0091】
接着層を構成する材料の剥離強度は、0.3〜1.5N/mmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.4〜1.2N/mm、更に好ましくは0.5〜1.0N/mmである。上記剥離強度が小さすぎると貼り付けた後でのハガレなどが起きやすく、大きすぎるとリワーク性(貼り直し作業性)が低下し、且つ製造も困難なため好ましくない。
(剥離強度の測定)
剥離強度の測定は以下の条件で行った。
・装置:エー・アンド・デイ社製RTG−1210
・剥離角度:90°
・剥離速度:50mm/min
・測定距離:50mm
・試験環境:温度23℃、湿度50%
・粘着剤試料:ポリエチレンテレフタラートフィルム(東洋紡製コスモシャインA4300、75μm厚み)に接着層を貼り付けた後、幅を3.5mmにカットし、アクリル板(カナセ工業製、カナセライト1300、厚さ:2mm、サイズ25cm×3cm)に貼合し、温度23℃、湿度50%の環境下に1日放置後したものを測定試料とした。
【0092】
接着層を構成する材料の屈折率は、1.40〜1.70の範囲が好ましく、より好ましくは1.45〜1.65、更に好ましくは1.45〜1.60である。
(屈折率の測定)
屈折率の測定は以下の条件で行った。
25℃の雰囲気下で、ナトリウムD線(589nm)を照射し、アッベ屈折率計(ATAGO社製、DR=M4)を用いて屈折率の測定をおこなった。
【0093】
接着層の厚さに限定はなく、例えば、接着層の全光線透過率が90%以上、ヘーズが1.0以下となるように調整してもよいが、接着層の厚さが5〜200μmであると、基材−接着層間、及び、接着層−光拡散層間の剥がれが起こりにくいので好ましい。接着層の厚さは、10〜100μmであることがより好ましく、15〜50μmであることがさらに好ましく、20〜30μmであることがさらに好ましい。接着層の厚さが薄すぎると、基材に微細な凹凸が存在した場合、接着層がこの凹凸に追従できず(凹凸を吸収することができず)、貼合不良が発生する確率が増加する。一方、接着層の厚さが厚すぎると、その断面の面積が大きくなるので、導光板の製造中に、粘着剤のはみ出しやダマの発生という不具合が発生する確率が増加する。また、接着層の厚さが厚すぎると、製造工程において、接着層をロール状にして取り扱う際、同一ロール径に巻き取れる長さが短くなってしまうという不都合もある。
【0094】
接着層の基材と接する側の面には、導光板を高温多湿下で使用した場合等に基材−接着層間に発生する気泡を外部に逃すための、微細な溝が1本又は複数本形成されていてもよい。このような溝の幅、断面形状、深さ等に限定はないが、その幅は、0.5mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.3〜0.01mmである。また、深さは、例えば、0.5〜0.01mmとすることができる。溝の長さにも限定はないが、接着層を横断又は縦断するものであることが好ましい。
【0095】
[光拡散層]
次に、光拡散層について説明する。光拡散層は、本発明の導光板の第一の部分領域または第二の部分領域に、異方性または等方性の拡散特性を与える層であり、例えば、前述の(3)凹凸構造を有するフィルムを透光性の粘着剤等を用いて導光板に貼り合せる方法における、凹凸構造を有するフィルム、及び(4)フィルム中に異方形状の拡散剤を混入した透光性のフィルムを粘着剤等を用いて導光板に貼り合せる方法における、異方形状の拡散剤を混入した透光性のフィルムがこれにあたる。
光拡散層は、導光板に入射した光を異方に又は等方に拡散する機能を有する層であればよく、従来公知のものを使用することができ、その材料、形状等に限定はない。
図4に光拡散層43を接着層42を介して導光板41の入光面に設けた場合の断面図を示す。
光拡散層の厚さにも限定はないが、接着層との間の接着性の観点からは、25〜500μm程度であることが好ましい。薄すぎるとコシが足りず、基材上に貼合する際の作業性が低下し、一方、厚すぎても逆にコシが強くなりすぎて貼合の作業性が低下するので、50〜300μmであることがより好ましい。
【0096】
光拡散層は、前述の(3)の方法における凹凸構造を有するフィルムのように、表面に凹凸構造を有する層であってもよく、さらに、透明ベースフィルム層とその上に積層された表面に凹凸構造を有する透明樹脂層とを含む多層構造を有していてもよい。
この場合、光拡散層や表面に凹凸構造を有する透明樹脂層の材料も限定はなく、例えば、光重合性樹脂組成物の硬化物等が挙げられる。
また、透明ベースフィルム層の材料、厚さ等に限定はなく、材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン等の透明性の高い(例えば、全光線透過率が90%以上、ヘーズが1.0以下の)高分子材料が挙げられ、厚さは、例えば、20〜250μm、より好ましくは50〜125μmとすることができる。
【0097】
前記光重合性樹脂組成物としては、(A)少なくとも一つの末端エチレン性不飽和基を有する付加重合性モノマーを70〜99.9質量%、(B)光重合開始剤:0.1〜30質量%を含有するものが好ましい。
【0098】
(A)少なくとも一つの末端エチレン性不飽和基を有する付加重合性モノマーとしては、例えば、下記の一般式(I)で示される化合物を用いることができる。なお、一般式(I)において、Rは水素原子又はメチル基を、Aは各々独立して炭素数が1〜4のアルキレン基を、nは1〜3の整数を表す。
【化1】

【0099】
また、(A)少なくとも一つの末端エチレン性不飽和基を有する付加重合性モノマーとしては、上記の一般式(I)で示される化合物の他、公知の(メタ)アクリレート基又はアリル基を有する化合物を使用することもできる。
例えば、ノニルフェノールアクリレート、アルコキシ化(1)o−フェニルフェノールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、β−ヒドロキシプロピル−β’−(アクリロイルオキシ)プロピルフタレート、1,4−テトラメチレン
グリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オクタプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチルトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(トリエチレングリコールメタクリレート)ノナプロピレングリコール、ビス(テトラエチレングリコールメタクリレート)ポリプロピレングリコール、ビス(トリエチレングリコールメタクリレート)ポリプロピレングリコール、ビスアリールフルオレン誘導体、ビス(ジエチレングリコールアクリレート)ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA系(メタ)アクリル酸エステルモノマーの分子中にエチレンオキシド鎖とプロピレンオキシド鎖の双方を含む化合物等が挙げられる。これらの中でも、アルコキシ化(1)o−フェニルフェノールアクリレートが屈折率の観点から好ましく、エトキシ化(1)o−フェニルフェノールアクリレート(例えば、製品名A−LEN−10、新中村化学製)が特に好ましい。
また、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の多価イソシアネート化合物と、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアクリレート化合物とのウレタン化化合物も用いることができる。
この場合のウレタン化化合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算数平均分子量で10,000未満のものが好ましい。
上述した(A)少なくとも一つの末端エチレン性不飽和基を有する付加重合性モノマーは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
前記光重合性樹脂組成物中における(A)付加重合性モノマーの含有量は、光重合性樹脂組成物の全質量基準で70質量%以上99.9質量%以下であることが好ましく、より好ましくは75質量%以上95質量%以下である。十分に硬化させるという観点から70質量%以上であることが好ましいが、開始剤成分やその他重合禁止剤、染料等を配合することを考慮すると99.9質量%以下であることが好ましい。
また、前記一般式(I)で表される化合物の含有割合は50〜95質量%であることが好ましい。樹脂層の屈折率を高くする観点から50質量%以上が好ましく、光硬化性の低下を防止する観点から95質量%以下とすることが好ましい。
【0101】
前記光重合性樹脂組成物中の(B)光重合開始剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルジプロピルケタール、ベンジルジフェニルケタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、チオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−フルオロチオキサントン、4−フルオロチオキサントン、2−クロロチオキサントン、4−クロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン[ミヒラーズケトン]、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等の芳香族ケトン類、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体等のビイミダゾール化合物、9−フェニルアクリジン等のアクリジン類、α、α−ジメトキシ−α−モルホリノ−メチルチオフェニルアセトフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、フェニルグリシン、N−フェニルグリシン、さらに、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−O−ベンゾイルオキシム、2,3−ジオキソ−3−フェニルプロピオン酸エチル−2−(O−ベンゾイルカルボニル)−オキシム等のオキシムエステル類、p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジエチルアミノ安息香酸、及びp−ジイソプロピルアミノ安息香酸、並びにこれらのアルコールとのエステル化物、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール類、テトラゾール類、N−フェニルグリシン、N−メチル−N−フェニルグリシン、N−エチル−N−フェニルグリシン等のN−フェニルグリシン類、及び、1−フェニル−3−スチリル−5−フェニル−ピラゾリン、1−(4−tert−ブチル−フェニル)−3−スチリル−5−フェニル−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン等のピラゾリン類が挙げられる。
これらの中でも、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(例えば、製品名DAROCURE1173、チバ・スペシャリティ・ケミカル製)が好ましい。
【0102】
前記光重合性樹脂組成物中における(B)光重合開始剤の含有量は、光重合性樹脂組成物の全質量基準で0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1質量%以上20質量%以下である。
(B)の含有量を0.1質量%以上とすると、十分な光硬化感度が得られ、30質量%以下とすると、光硬化前の液状樹脂としての保存安定性が得られる。
【0103】
熱安定性、保存安定性を向上させるために、前記光重合性樹脂組成物中に、ラジカル重合禁止剤を含有させることが好ましい。
このようなラジカル重合禁止剤としては、例えば、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ナフチルアミン、t−ブチルカテコール、塩化第一銅、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。
ラジカル重合禁止剤の含有量は、光重合性樹脂組成物の全質量基準で0.001質量%以上1質量%以下が好ましい。
上記光重合樹脂組成物には、少量であれば有機溶剤を含有していてもよく、たとえば、メタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチルエーテル、1,4−ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、クロロホルム、トルエン、m−キシレン、p−キシレン、o−キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル(酢酸アミル)、酢酸イソペンチル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が用いられるが、特に限定されない。これら有機溶剤は0.001〜1質量部含有することが好ましく、0.001〜0.5質量部含有することがより好ましく、0.001〜0.1質量部含有することがより好ましい。1質量部以上含有するすると、光重合樹脂組成物から発生した有機溶剤が接触している他の材料を溶解する場合があるため好ましくない。0.001質量部未満含有する場合、乾燥時間および乾燥コストがかかるので好ましくない。
【0104】
硬化後の光重合性樹脂組成物の屈折率としては、1.40〜1.70の範囲が好ましく、より好ましくは1.45〜1.65、更に好ましくは1.45〜1.60である。
屈折率が1.40より低いと、本発明の導光板を面光源装置として使用した場合に、光拡散層が光源由来の輝度ムラを均一化する能力が低下してしまう。屈折率が1.70より高いと製造が困難となる。
(屈折率の測定)
屈折率の測定は以下の条件で行った。
25℃の雰囲気下で、ナトリウムD線(589nm)を照射し、アッベ屈折率計(ATAGO社製、DR=M4)を用いて屈折率の測定をおこなった。
【0105】
また、表面に凹凸構造を有する透明樹脂層の厚さについては、薄すぎると凹凸構造を形成することができないが、厚すぎると層が脆くなりひび割れ等が発生するおそれがあり、また、高温下に長時間置いた場合の変色が許容範囲を越えるおそれもある。このような観点から、その厚さは2〜50μmとすることができる。
なお、表面に凹凸構造を有する透明樹脂層には、光学性能を上げるため、例えば平均粒径2μm程度のシリコン微粒子を混入し、内部拡散性能を付与することもできる。
【0106】
[対向面の光散乱パターン]
本発明の導光板の対向面には、出光面における出光分布を均一にするために、入光面(或は入光面に正対する位置)から遠ざかる方向に向かって密になるグラデーションを有する光散乱パターンを形成することができる。なお、表示装置用の面光源装置の場合、出光分布の均一性を高めつつも、画面中央の輝度が最も高い一様な山型の出光分布とすることが視認しやすく好ましいとされているので、対向面の中央部分の光散乱パターンの密度をより高くするようにしてもよい。
【0107】
光散乱パターンとしては、例えば、対向面に反射性あるいは拡散性の材料を積層(印刷)した部分や凹凸形状を形成した部分(以下まとめて「ドット」という。)を、入光面から離れるに従って徐々に面積が広くなるようなグラデーションパターン(印刷の場合は、徐々に濃くなるグラデーションパターンにしてもよい)にしたものや、同一大のドットや凹凸形状を入光面から離れるに従ってピッチが狭くなるようにしたグラデーションパターンが挙げられる。この場合のドットの形状には円形、四角形などが挙げられ、その大きさは例えば、0.1〜2.0mm程度とすることができる。
【0108】
本発明の導光板の対向面に上述のような光散乱パターンを設ける場合、輝度ムラをさらに低減するために、図16のように、入光面の近傍であって点光源と対面する位置においては、ドットを形成しないか、或は、ドットの密度を小さくしたり、各ドットを小さく(薄く)することが好ましい。このようにすることによって輝度ムラをさらに低減することができるため、後述のP/Gをさらに大きくすることができる。
【0109】
[導光板のその他の性質等について]
本発明の導光板の材質は、透光性のものであれば特に限定はなく、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、メチルメタクリレート−スチレン系共重合体等の光学部品の材料として一般に使用されている透明性の高い高分子材料やガラス等の無機材料を用いることができる。
また、本発明の導光板は、必要に応じて有機や無機の染料や顔料、艶消し剤、熱安定剤、難燃剤、帯電防止剤、消泡剤、整色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、不純物の捕捉剤、増粘剤、表面調整剤及び離型剤等の添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で含有していてもよい。
【0110】
また、ローカルディミング用途に使用するためなどの理由により入光面より入射した光の直進性を向上させるためには、導光板の出光面及び/又は対向面の少なくとも一部に、レンチキュラーレンズ形状を設ける、あるいは、入光面に垂直なランダムな複数本の溝を設けることが好ましい。
レンチキュラーレンズ形状又は複数本の溝は、出光面及びその対向面のいずれに設けても光の直進化の効果は得られる。したがって、どちらに設けるかは、製造のしやすさ、取り扱いのしやすさ等を考慮して適宜決定すればよい。例えば、導光板の対向面に前述のような光散乱パターンを設ける場合には、出光面の方に設けることが好ましい。また、レンチキュラーレンズ形状又は複数本の溝は、出光面及びその対向面の両方に設けてもよい。
さらに、入光部付近のホットスポットを軽減できるという観点から、上記レンチキュラーレンズ形状、あるいは、入光面に垂直なランダムな複数本の溝は、出光面及び/又は対向面の入光面側端部から1〜50mm内側の位置から開始し、入光面と反対方向に延びるように設けることが好ましい。
【0111】
レンチキュラーレンズ形状は、入光面に垂直な方向に延び、複数並列して設けられることが好ましい。レンチキュラーレンズ形状のピッチは20〜500μmが好ましく、深さは20〜500μmが好ましい(図20参照)。ピッチが小さすぎるとレンチキュラーレンズの精度の良い加工が困難となり、ピッチが大きすぎると液晶パネルの画素とのモアレが発生しやすくなる。深さが浅すぎると光の直進性が低下し、深さが深すぎると精度の良い加工が困難となったり傷付きやすくなったりする。
【0112】
次に、入光面に垂直なランダムな複数本の溝(以下、「溝構造」ということがある。)について説明する。
複数本の溝がランダムであるとは、複数本の溝の断面形状、ピッチ及び深さのうち少なくとも1つがランダム(不規則)に異なっていることをいう。
【0113】
図20に、入光面に垂直なランダムな複数本の溝を出光面に設けた例を示す。出光面は、入光面に垂直な(入光面の出光面と接する辺に垂直な)な複数本の溝を有している。
【0114】
各溝の断面形状に限定はなく、例えば、V字形状やU字形状とすることができる。
溝のピッチとは、隣り合う溝の谷底の間の水平距離(ランダムな複数本の溝を有する面に平行な方向の水平距離)をいう。なお、谷底が平坦である場合には、その中心を谷底としてピッチを決定する。溝の断面形状や幅は溝の延在方向に沿って変化していても良い。
また、溝の深さは、各溝を構成する両側の山のうち高い方の山の山頂と溝の谷底の間の垂直距離(ランダムな複数本の溝を有する面に垂直な方向の距離)(山頂と谷底の標高差)をいう。
溝の深さは延在方向に沿ってなだらかに又は急勾配で変化していてもよく、また、その結果、途中に溝が途切れる箇所があってもよいが、できれば変化しない方が好ましい。
本発明において好ましく利用できるランダムな複数本の溝の具体例を図22A及び22Bに示す。図22Aは溝に垂直な方向への拡散角度(後述)が30度、溝に水平な方向への拡散角度が1度の異方性の拡散特性を有するランダムな複数本の溝の具体例を示す表面プロファイル図である。図22Bは溝に垂直な方向への拡散角度が60度、溝に水平な方向への拡散角度が1度の異方性の拡散特性を有するランダムな複数本の溝の具体例を示す表面プロファイル図である。
【0115】
溝構造の平均ピッチに限定はないが、30μm以下であることが好ましく、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。また、溝構造の平均ピッチは580nm(可視光の中心波長)以上であることが好ましく、より好ましくは780nm(可視光全域)以上である。
導光板と組み合せて使用される表示パネルの画素ピッチや光学シートの構造ピッチは、それぞれ、概ね100〜600μm、50〜150μmであるので、溝構造の平均ピッチをこのような値に設定すれば、導光板と組み合せて使用する表示パネルや光学シートとの空間干渉によるモアレの発生を防ぐことができる。さらに、平均ピッチをこのような値に設定すれば、取り扱い時に溝構造に爪などが引掛かることも少なく、ハンドリング性が向上する。さらに、本発明の導光板によって導光する光は可視光線(380nm〜780nmの電磁波)であるので、溝構造による光の直進化の効果を十分に発揮するためには平均ピッチの下限値は上記のような値であることが好ましい。
溝構造の平均深さにも限定はないが、1〜50μmであることが好ましく、より好ましくは5〜10μmである。
【0116】
溝の斜面角度は光の直進性へ大きな影響を与える。すなわち、出光面に溝構造を設けた場合、導光板中では、外側に広がろうとする光を溝の斜面で反射し、導光板中へ戻すことで光の直進性を上げると考えられる。したがって、各溝の斜面角度は、40度〜60度であることが好ましい。そこで、出光面に設けた溝構造においては、溝の斜面角度の、40度〜60度の範囲内にあるものの占める割合が5%以上であることが好ましい。さらに好ましくは10%以上である。また、その中でも45±5度であるものの占める割合が多いほうがより直進性向上に貢献する。
ここで、「斜面角度」とは、溝構造を有する面の溝に垂直な断面における各溝を構成する表面の接線と溝構造を有する面とがなす角の総称をいう。
そして、斜面角度が40度〜60度の範囲内にあるものの占める割合については、顕微鏡観察(走査型電子顕微鏡やレーザー共焦点顕微鏡等)により、溝構造を有する面の任意の垂直断面(溝構造に垂直な断面)から任意に300μmの距離の範囲を抽出し、さらに、その範囲の端から0.5μm毎の点を接点とする接線を抽出して、これらと溝構造を有する面とがなす角(鋭角)を測定することによって決定することとする。
【0117】
[面光源装置]
次に、本発明の面光源装置について説明する。
図9に本発明の面光源装置の一例の概略図を示す。
本発明の面光源装置9は、本発明の導光板91と、導光板の入光面の近傍に配置された複数の点光源92とを有する。
【0118】
導光板は、前述のとおり、図1に例示したもののように、その形状が出光面とこれに対向する対向面とを主面とする平板形状であって、入光面が出光面と対向面との間に挟まれた側面にあるものが好ましい。
【0119】
点光源に限定はないが、LED(発光ダイオード)を用いることが好ましい。LEDは低消費電力で高輝度の光が得られ、温度が低い場合でも明るく発光するので、点灯直後から十分な照度を有する面光源装置、照明装置を提供することができる。LEDの種類に限定はなく、例えば、青色LEDにより緑色、赤色蛍光体を励起するワンチップタイプの擬似白色LED、赤色/緑色/青色LEDを組み合わせて白色光を作るマルチチップタイプ、更には近紫外LEDと赤色/緑色/青色蛍光体を組み合わせたワンチップタイプの擬似白色LED等が挙げられる。
【0120】
図10に本発明で使用できる箱型のLED10の一例の概略図を示す。なお、LEDの外形や発光面のサイズに限定はないが、外形が5.6mm(幅)×3.0mm(高さ)×1.0mm(厚み)程度で、発光面101の横幅102が5mm以下のものが一般的に使用されている。
【0121】
点光源の発光面と導光板の入光面の距離は、0.1mm以上1.5mm以下であることが好ましい。より好ましくは0.3mm以上1.0mm以下である。発光面と入光面との距離を離すと、導光板に入射する光の量は、逆2乗の法則により減少し、結果的に出光面からでる光の総量も減少してしまう。従って、点光源の発光面と本発明の導光板の入光面の距離は近いことが好ましい。一方、点光源の周辺では熱が発生し、導光板が膨張するため、膨張に耐えうる隙間を残しておく必要がある。
【0122】
点光源の配置方法に限定はないが、導光板の入光面に沿って(出光面に平行に)一直線上に等間隔(「等間隔」には±10%の誤差を含むものとする)に配置することが好ましい。この場合、点光源の配列ピッチPは、例えば、点光源の幅(外形)〜200mm程度にするのが一般的である。輝度ムラ防止の観点からは、点光源はなるべく密に配置されている方がよく、基板上への実装制約の観点ではある程度距離が開いている方が良い。点光源の配列ピッチは、好ましくは5mm〜200mm、より好ましくは10〜100mmである。
【0123】
第一の部分領域が、出光面に平行な方向への拡散角度が出光面に垂直な方向への拡散角度に比べて大きい異方性の拡散特性を有する場合には、出光面における入光面近傍の輝度ムラが低減されるので、点光源の配列ピッチが多少大きくても、ホットスポットのない出光面を実現することができる。具体的には、例えば、10mm〜50mm、20mm〜50mm、又は30mm〜50mm程度であれば輝度ムラを許容できる範囲内に抑えることができる。
【0124】
本発明の面光源装置においては、導光板及び点光源に加え、拡散シートや反射シート等の、所謂エッジライト方式の面光源装置において一般に採用される光学要素をさらに含むことができる。具体的には、拡散シートを導光板の出光面上方に配置したり、反射シートを導光板の対向面下方に配置することができる。さらに、導光板の出光面上方には、拡散シート以外にも、プリズムシートや、レンチキュラーレンズシート、マイクロレンズシートなどの集光シートや、液晶パネルの偏光板での光学損失を回避するための偏光反射シートなどを配置することもできる。また、上記の点光源に電力を供給する電源を有し、電流量やオンオフをコントロールする制御回路を有していてもよい。
【0125】
[表示装置]
次に、本発明の表示装置について説明する。
本発明の表示装置は、面光源装置の光の透過を調整することによって表示をする表示エリアを有する表示パネルと、表示パネルの背面に配置された前述の面光源装置とを有する。
【0126】
導光板の入光面近傍では輝度ムラが発生し十分な表示品質を保証できないので、表示パネルの表示エリア(アクティブエリア)は、導光板の入光面よりも内側から始まるように設計されることが好ましい。
【0127】
すなわち、導光板91の入光面93と表示エリアとの間の水平距離G(導光板91上に表示エリアに相当する領域94を投影したときのその領域94と入光面93との距離(図9参照))を一定以上確保するように設計されることが好ましい。
【0128】
第一の部分領域が出光面に平行な方向への拡散角度が出光面に垂直な方向への拡散角度に比べて大きい異方性の拡散特性を有する場合には、入光部近傍の輝度ムラが低減されているので、従来の導光板を用いた場合ほど表示エリアを内側に形成する必要はない(Gを大きくする必要はない)。
【0129】
具体的には、本発明の表示装置においては、導光板の入光部と表示エリアとの間の水平距離Gを、点光源の配列ピッチPに対して、G<P(P/G>1)とすることができ、さらにはG<P/2(P/G>2)とすることもできる。
【0130】
PとGの関係を上記のように設計することができると、額縁と呼ばれる表示パネルに形成される表示エリアの外枠部が薄い、スタイリッシュな表示装置を実現することができ、また、使用する点光源の数を減らすこともできるので省電力化も図れる。なお、従来の表示装置におけるPとGの関係は、せいぜいP/G≦0.7程度である。なお、Gの大きさは、上述のとおりPとの兼ね合いで決まるが、例えば、0.1〜30mm、0.1〜20mm又は0.1〜10mmとすることができる。
【0131】
本発明の導光板が入光面を2つ有する場合、第一の入光面の近傍に配置された点光源の配列ピッチをP1、第二の入光面の近傍に配置された点光源の配列ピッチをP2、前記第一の入光面と前記表示エリアとの間の水平距離をG1、前記第二の入光面と前記表示エリアとの間の水平距離をG2としたときに、P1/G1:P2/G2=100:90〜100:110の範囲内であることが好ましく、P1/G1:P2/G2=100:95〜100:105の範囲内であることがより好ましい。
【0132】
また、G1とG2は必ずしも同一にする必要はない。例えば、表示装置の下辺部にはスピーカー等を設ける場合もあるので、スペース確保のために下辺部の方のみGを小さくするなどということも可能である。
【0133】
表示パネルは、液晶表示パネルであることが好ましい。液晶表示パネルとしては従来使用されているものを使用することができるが、その構成の一例の概略を図11に示すと共に、以下に説明する。
【0134】
図11は液晶表示パネル11の一例の正面概略図である。点線111の内側が表示エリア112であり、表示エリア112の外側には、光漏れ防止のブラックマトリックス113が設けられ、その裏側にパネル配線(図示せず)等が存在する。図11において、114、115は、それぞれ、ソースライン(後述、図示せず)に電圧を印加するためのドライバICであるソースチップ、ゲートライン(後述、図示せず)に電圧を印加するためのドライバICであるゲートチップである。
【0135】
透過型の液晶表示パネルでは、一般に、透明基板上にマトリクス状に配置された多数の画素電極が、透明基板上に配置されたアクティブマトリクス素子によって駆動される。透明基板上にアクティブマトリクス素子および画素電極が設けられたアクティブマトリクス基板には、液晶層が積層状態で設けられており、この液晶層を挟んでアクティブマトリクス基板と対向するように対向基板が配置されている。対向基板は、対向電極が設けられた透明基板であり、この対向電極が液晶層における表示領域に対向している。
【0136】
アクティブマトリクス基板に設けられたアクティブマトリクス素子には、各画素電極にそれぞれ接続されたアクティブ素子としてのTFT(薄膜トランジスタ)が設けられている。また、アクティブマトリクス素子には、行方向に沿って相互に平行に配置された複数のゲートラインと、各ゲートラインと直交する列方向に沿って相互に平行に配置された複数のソースラインとが設けられており、各ゲートラインと各ソースラインとの交差部近傍に各TFTがそれぞれが配置されている。そして、各TFTは、近接する交差部をそれぞれ形成するゲートラインおよびソースラインのそれぞれに接続されている。
【0137】
各TFTは、それぞれが接続されたゲートラインから供給されるゲート信号によってオンして、それぞれが接続されたソースラインから供給されるソース信号を、それぞれに接続された画素電極に供給するように構成されている。
【0138】
このような液晶表示パネルにおいては、通常、1フレーム毎に、アクティブマトリクス基板において行方向に沿って配置された各ゲートラインに対して、列方向に沿った順番に線順次にゲート信号(水平同期信号)が供給されるようになっており、列方向に隣接するゲートラインに対して連続してゲート信号が供給される。
【0139】
[テレビ受信装置]
また、本発明の表示装置121を、スピーカー1221の設けられた前キャビネット122;テレビチューナー回路基板123、電源回路基板124、制御回路基板125等の各種回路基板;裏キャビネット126及びスタンド127等と組み合せることにより、テレビ受信装置を製造することができる。図12にこのようなテレビ受信装置12の構成の一例を示す。
【実施例】
【0140】
まず、実施例及び比較例の評価方法について説明する。
1.評価系
(ホットスポットの評価)
導光板の入光面にそって5個のLEDを配列ピッチが18.8mmとなるように略均等に配置し(LEDと入光面との距離0.5mm)、導光板の出光面側に光学シート(後述)を積層して面光源装置を作製した。LEDの外形は幅5.6mm×高さ3.0mmである。 LEDを点灯し、導光板上に積層された光学シートの出光面の法線方向から0.5mの位置に、コニカミノルタ製 二次元色彩輝度計(CA−2000)を設置し、該出光面の輝度分布を測定した。二次元色彩輝度計(CA−2000)によって測定した該出光面の輝度データの中から、該出光面の入光面側端部からの距離が7.5mm、15mmのところの該入光面と平行な方向(図9の(A)方向)の輝度プロファイルL(X)(X軸:入光面と平行な方向の距離、Y軸:輝度L)を抽出した。
【0141】
上記各輝度プロファイルL(X)から、ホットスポットと無関係の輝度勾配をキャンセルするために、LEDのピッチP(この場合は約18.8mm)に相当する範囲の平均値を取ることでスムージングした値(移動平均値)
【数1】

【0142】
(輝線の評価)
輝線(図19参照)については、LEDを点灯し、導光板の出光面上に積層した光学シートを上から目視にて観察し、輝線の有無を判定した。
【0143】
なお、ホットスポットと輝線は、具体的には以下の判断基準に従って評価した。
実施例1〜8、及び比較例1〜13では表1の評価基準に従った。
実施例9〜12、及び比較例14〜21では表2の評価基準に従った。
【0144】
【表1】

【0145】
【表2】

【0146】
2.実施例及び比較例の導光板の作製方法
実施例1〜12の全ての実施例、及び比較例3,7,11の導光板は、後述する導光板基材の入光面の上側半分(入光面の幅方向(導光板の厚み方向と垂直な方向)に略平行に2つに分割した領域の出光面側(図1の1参照))に、接着層を介して光拡散層を貼り合わせて第一の部分領域を形成することにより作製した。
実施例13,14については、第一の部分領域は導光板基材の入光面の下側半分(入光面の幅方向(導光板の厚み方向と垂直な方向)に略平行に2つに分割した領域の対向面側(図1の2参照))に、接着層を介して光拡散層を貼り合わせて第一の部分領域を形成することにより作製した。
比較例1,4,5,8,9,12,14,16,18,20は、入光面に光拡散層を貼り合わせない導光板であり、導光板基材をそのまま使用した。また、比較例2,6,10,13,15,17,19,21は、入光面全体に光拡散層を貼り合わせた導光板である。
なお、光拡散層は次のようにして貼り合わせた。
後述する光拡散シート(ベースフィルム上に光拡散層を設けたもの)の光拡散層とは反対側の面に、剥離紙の上に積層されたアクリル系粘着剤フィルム(パナック株式会社製PD−S1、粘着剤フィルム厚さ:25μm、100℃での貯蔵弾性率G’:77,000Pa)をラミネートして、接着層付き多層フィルムを作製した。
次いで、接着層付き多層フィルムを所定の幅でスリットしたのち、接着層の剥離紙を剥離して導光板の入光面にローラーを用いて貼り合わせ、光拡散層を貼り合わせた。
【0147】
3.使用した部材の説明
次に、実施例および比較例に使用した各種部材について説明する。
A.光学シート
以下の光学シートを導光板と併用した。
(ア)拡散シート(DS)・・・東レセーハン製 TDF−187
(イ)プリズムシート(Prism)・・・LG電子製 SOS−07H
(ウ)反射型偏光シート(DBEF)・・・スリーエム製 DBEF−D400
これらの光学シートを測定時に導光板の出光面上に積層して用いた。 実施例1、9、及び比較例1、2、3、4、14、15では、導光板の出光面上に、光学シートとして上記DSを1枚積層した。 実施例4、5、6、10、及び比較例5、6、7、8、16、17では、導光板の出光面上にDS、Prism(LEDの配列方向に対してプリズム列が直交)の順に1枚ずつ積層した。 実施例7、11、及び比較例9、10、11、18、19では、導光板の出光面上にDS、Prism(LEDの配列方向に対してプリズム列が平行)、Prism(LEDの配列方向に対してプリズム列が直交)の順に1枚ずつ積層した。 実施例8、12、及び比較例12、13、20、21では、導光板の出光面上にDS、Prism(LEDの配列方向に対してプリズム列が直交)、DBEFの順に1枚ずつ積層した。
【0148】
B.導光板基材
実施例及び比較例においては、導光板基材として、以下のA〜Cを使用した。A〜Cは、全てPMMAからなる厚さ3mmの平板であり、A、Bの出光面には入光面に垂直な方向に延びるレンチキュラーレンズ形状が複数並列して設けられている。
・導光板−A
出光面に図21Aに示すようなレンチキュラーレンズを有し、レンチキュラーレンズの形状は高さ60μm、ピッチ290μmである。対向面には白色インキを印刷して設けられたドットパターンを有する。
・導光板−B
出光面に図21Bに示すようなレンチキュラーレンズを有し、レンチキュラーレンズの形状は高さ80μm、ピッチ290μmである。対向面にはレーザー彫刻によって設けられたドットパターンを有する。
・導光板−C
出光面が平滑である。対向面には白色インキを印刷して設けられたドットパターンを有する。
【0149】
C.光拡散シート
実施例及び一部の比較例の入光面の第一の部分領域に異方性の拡散特性を付与するために、以下の光拡散層つきフィルム(光拡散シート)を使用した。
・拡散シート1
ポリエチレンテレフタレートからなる厚み125μmの透明ベースフィルム(東洋紡株式会社製 A4300)上に、表面に、スペックルパターン露光により一方向に長い形状の開口部を有する複数のくぼみが形成された紫外線硬化樹脂硬化物からなる光拡散層(拡散角度は、15度(くぼみの開口部の長径に垂直な方向)×1度(くぼみの開口部の長径に平行な方向))を有する光拡散シート(図3(a))。
くぼみのピッチは6.1μmであり、くぼみの平均深さは1.3μmであり、くぼみの開口部の長径方向と導光板の厚み方向とのなす角が0度となるように導光板に貼り合わせる。拡散シート1のくぼみのある面の法線方向から入射した光の、くぼみの開口部の長径に垂直な方向の透過光強度の角度分布図を図18(a)に示す。該角度分布図において、出射角度=0°における透過光強度はピーク強度の90%以上である。
・拡散シート2
ポリエチレンテレフタレートからなる厚み125μmの透明ベースフィルム(東洋紡株式会社製 A4300)上に、表面に、スペックルパターン露光により一方向に長い形状の開口部を有する複数のくぼみが形成された紫外線硬化樹脂硬化物からなる光拡散層(拡散角度は、30度(くぼみの開口部の長径に垂直な方向)×1度(くぼみの開口部の長径に平行な方向))を有する光拡散シート(図3(b))。
くぼみのピッチは5.2μmであり、くぼみの平均深さは1.2μmであり、くぼみの開口部の長径方向と導光板の厚み方向とのなす角が0度となるように導光板に貼り合わせる。拡散シート2のくぼみのある面の法線方向から入射した光の、くぼみの開口部の長径に垂直な方向の透過光強度の角度分布図を図18(b)に示す。該角度分布図において、出射角度=0°における透過光強度はピーク強度の90%以上である。
・拡散シートA
透明ベースフィルム上に、表面に、図3(c)に示すような等方性の形状の開口部を有する複数のくぼみ(平均ピッチ16μm、平均深さ5μm)が形成された光拡散層を有する、東レセーハン製拡散シートTDF−187
・プリズムシート
透明ベースフィルム上に、表面に、図3(d)に示すような複数のプリズム列が並列した構造を持つ、スリーエム株式会社製プリズムシート BEFIII。なお、プリズム列に平
行な方向への拡散角度は0°であり、プリズム列と直交する方向への拡散角度は60°であった。
プリズムの平均ピッチは50μm、平均高さは25μm、プリズムと導光板の厚み方向とのなす角が0度となるように導光板に貼り合わせる。
実施例1、2、4、5、7、8、及び比較例2、6、10、13では光拡散層として拡散シート1を用いた。
実施例3、6では光拡散層として拡散シート2を用いた。
比較例3、7、11では光拡散層として拡散シートAを用いた。
実施例9、10、11、12、及び比較例15、17、19、21では光拡散層としてプリズムシートを用いた。
比較例1、5、8、9、12、14、16、18、20では、第一の部分領域を形成しなかった。
【0150】
全ての実施例及び比較例の結果を表3に示す。
表3から、異方性の拡散特性を有する領域を含む第一の部分領域を、入光面の一部(入光面の幅方向に略平行に分割された2つ以上の領域のうちの少なくとも1つ)に設けることによりホットスポットが効果的に(輝線を発生させることなく)低減できることが分かる。
また、導光板の厚みAと前記第一の部分領域の厚み方向の長さBとが下記式を満たす場合に、効果的に輝線を抑制できることが分かる。
0.2≦B/A≦0.7
【0151】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明の導光板及び面光源装置は、ノートPC、携帯情報端末、デスクトップPCモニタ、デジタルカメラ等の各種表示装置に使用することができる。
とりわけ、本発明の面光源装置は、光源として複数の点光源を用いながら、入光面近傍の輝度ムラ(ホットスポット)が少なく出光面全体に亘って均一な輝度が得られ、大型かつ薄型の液晶表示装置を低コスト且つ/或いは狭額縁に提供することができるので、液晶表示装置に使用するのに適している。
【符号の説明】
【0153】
1、2 導光板
11 出光面
12 入光面
13 第一の部分領域
200 第二の部分領域
14 導光板の厚さ方向
15 入光面の出光面の長軸方向に平行な方向
16 入光面の法線方向
41 光拡散層
42 接着層
43 導光板
5a 溝構造が形成された層を有する多層フィルム
5b 溝構造が形成された層を有する多層フィルム
51 剥離フィルム
52 粘着層
53 ベースフィルム
54 溝構造が形成された層
55 粘着層
56 台紙フィルム
61 溝
71 溝構造が形成された層を有する多層フィルム
72 ロール
9 面光源装置
91 導光板
92 点光源
93 入光面
94 表示エリアに相当する領域
10 LED
101 発光面
102 発光面の横幅
11 液晶表示パネル
112 表示エリア
113 ブラックマトリックス
114 ソースチップ
115 ゲートチップ
12 テレビ受信装置
121 表示装置
122 前キャビネット
1221スピーカー
123 テレビチューナー回路基板
124 電源回路基板
125 制御回路基板
126 裏キャビネット
127 スタンド
28 導光板
281a、b 入光面
282 出光面
283 対向面
G 導光板の入光面と表示エリアとの間の水平距離
P 点光源の配列ピッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出光面と、前記出光面と対向する対向面と、前記出光面と前記対向面との間に挟まれた少なくとも1つの入光面とを有する導光板であって、
前記少なくとも1つの入光面が、該入光面の幅方向に略平行に2つ以上の領域に分割されており、
前記2つ以上の領域は、少なくとも、
異方性の拡散特性を有する領域を含む第一の部分領域と、
等方性の拡散特性を有する第二の部分領域と、を含む導光板。
【請求項2】
前記導光板が略一定の厚みAを有しており、
該導光板の厚みAと、前記第一の部分領域の該導光板の厚み方向の長さBとが、下記式を満たす請求項1記載の導光板。
0.2≦B/A≦0.7
【請求項3】
前記第一の部分領域が、前記厚み方向に長い複数個のくぼみを有する請求項1又は2に記載の導光板。
【請求項4】
前記厚み方向に長い複数個のくぼみのピッチ及び深さのうち少なくとも1つが不規則に異なる、請求項3に記載の導光板。
【請求項5】
前記厚み方向と、前記厚み方向に長い複数個のくぼみの長径方向のなす角が、−10°〜10°である、請求項3又は4に記載の導光板。
【請求項6】
前記厚み方向に長い複数個のくぼみの平均ピッチが20μm以下である、請求項3〜5いずれか1項に記載の導光板。
【請求項7】
前記厚み方向に長い複数個のくぼみの平均深さが500nm〜50μmである、請求項3〜6いずれか1項に記載の導光板。
【請求項8】
前記厚み方向に長い複数個のくぼみが、スペックルパターン露光により形成されたものである、請求項3〜7いずれか1項に記載の導光板。
【請求項9】
前記第一の部分領域に、その法線方向から光線を入射させたときの透過光強度の出射角度に対する分布において、出射角度=0°における透過光強度がピーク強度の90%以上である、請求項1〜8いずれか一項に記載の導光板。
【請求項10】
前記入光面を出光面と対向面との間で略平行に2等分した際の前記出光面側の領域を領域X、前記対向面側の領域を領域Yとしてその厚さをCとしたときに、
前記領域Xの範囲内に存在する前記第一の部分領域の厚み方向の長さB’が下記式(1)を満たし、
前記領域Yの範囲内に存在する前記第一の部分領域の厚み方向の長さB"が下記式(2)を満たす、請求項1〜9いずれか一項に記載の導光板。
B'≧C/2 ・・・式(1)
C/2≧B" ・・・式(2)
【請求項11】
前記第一の部分領域が、入光面に積層された接着層と、前記接着層の上に積層された光拡散層とを含む、請求項1〜10いずれか一項に記載の導光板。
【請求項12】
前記接着層が、100℃における貯蔵弾性率G´が40,000〜1000,000Paである材料で構成されている、請求項11記載の導光板。
【請求項13】
前記出光面の少なくとも一部にレンチキュラーレンズ形状を有する請求項1〜12いずれか一項に記載の導光板。
【請求項14】
前記出光面上の前記レンチキュラーレンズ形状を有する範囲が、その入光面側端部から1〜50mm内側の位置から開始する請求項13に記載の導光板。
【請求項15】
前記出光面の少なくとも一部に、入光面に垂直なランダムな複数本の溝を有する、請求項1〜12いずれか一項に記載の導光板。
【請求項16】
前記複数本の溝の平均ピッチが30μm以下である、請求項15に記載の導光板。
【請求項17】
前記複数本の溝の平均深さが1〜50μmである、請求項15又は16に記載の導光板。
【請求項18】
前記出光面上の前記複数本の溝を有する範囲が、その入光面側端部から1〜50mm内側の位置から開始する請求項15〜17いずれか一項に記載の導光板。
【請求項19】
請求項1〜18いずれか1項に記載の導光板と、
該導光板の前記少なくとも1つの入光面の近傍に配置された複数の点光源と、
を有する面光源装置。
【請求項20】
光の透過を調整することによって表示をする表示エリアを有する表示パネルと、
該表示パネルの背面に配置された請求項19に記載の面光源装置と、
を有する表示装置。
【請求項21】
前記表示パネルが液晶表示パネルである、請求項20に記載の表示装置。
【請求項22】
請求項20又は21に記載の表示装置と、
放送映像信号を受信するチューナーと、
を有するテレビ受信装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3(a)】
image rotate

【図3(b)】
image rotate

【図3(c)】
image rotate

【図3(d)】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2012−230836(P2012−230836A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98792(P2011−98792)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】