導光板及びそれを用いた面状発光体装置
【課題】導光板の両面を明るく発光させることができるエッジライト方式の面状発光体装置及びそれに用いる導光板を提供する。
【解決手段】透光性の基板の少なくとも一面側に光散乱層が設けられたエッジライト方式用の導光板であって、光散乱層には1次粒子径が300nm以下であり、壁厚が30nm以下であって、且つ空隙率が40%以上の中空粒子が含まれており、基板の端面から入射された光は、光散乱層で反射されて前記基板の他面から放出されるとともに、光散乱層を透過して前記基板の前記一面側からも放出される。
【解決手段】透光性の基板の少なくとも一面側に光散乱層が設けられたエッジライト方式用の導光板であって、光散乱層には1次粒子径が300nm以下であり、壁厚が30nm以下であって、且つ空隙率が40%以上の中空粒子が含まれており、基板の端面から入射された光は、光散乱層で反射されて前記基板の他面から放出されるとともに、光散乱層を透過して前記基板の前記一面側からも放出される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッジライト方式の面状発光体装置及びそれに用いられる導光板に関する。
【背景技術】
【0002】
看板などを面発光させる装置として、光源を導光板の端面に配置したエッジライト方式の面状発光体装置が知られている(例えば特許文献1)。この面状発光体装置に用いられる導光板は、アクリル板などの透光性の板材表面に光散乱層がパターン印刷されたものが用いられている。光散乱層用のインクには、透光性のバインダ中に光を散乱するための光散乱粒子が含まれており、導光板の端面から照射された光は、印刷面に存在する光散乱粒子によって散乱し、散乱光が導光板の一面側を発光させる仕組みとなっている。
【0003】
エッジライト方式の面状発光体装置では、導光板の端面に光源を配置させるため、導光板の裏側に光源を配置する直下型方式の面状発光体装置と比べ、厚さを薄くできるという利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−146772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のエッジライト方式の面状発光体装置では、導光板に印刷された光散乱層に含まれる光散乱粒子の光散乱現象によって光散乱層と反対側の面を発光させるものである。この面状発光体装置では、光散乱層を透過した光によって光散乱層の存在する側も発光するが、光散乱層を透過する際、光散乱粒子によって光の強度が大きく減衰するため、光散乱層と反対側の面よりも暗くなってしまうという欠点があった。このため、両面発光可能な導光板は実用化されていなかった。
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、導光板の表裏両面を明るく発光させることができるエッジライト方式の面状発光体装置、及びそれに用いる導光板を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の局面は、透光性の基板の少なくとも一面側に光散乱層が設けられたエッジライト方式用の導光板であって、前記光散乱層には1次粒子径が300nm以下であり、壁厚が30nm以下であって、且つ空隙率が40%以上の中空粒子が含まれており、前記基板の端面から入射された光は、前記光散乱層で反射されて前記基板の他面から放出されるとともに、前記光散乱層を透過して前記基板の一面側からも放出される導光板である。
【0007】
本発明の第1の局面の導光板では、透光性の基板の少なくとも一面側に設けられた光散乱層に中空粒子が含まれている。そして、この中空粒子の1次粒子径は300nm以下と小さく、その壁厚も30nm以下と極めて薄く、さらには中空粒子の空隙率が40%以上と高くされているため、優れた透光性を有する。また、中空粒子は中空構造を有することから、中実粒子に比べて粒子内部に進入した光のエネルギー減衰も少ない。このため、光散乱層に含まれる中空粒子の存在により、光散乱層の光透過性が向上することとなる。このため、導光板の光散乱層において発生した散乱光は、光散乱層の形成された側のみならず、光散乱層内を通過して反対側へも、それほどのエネルギー減衰をされることなく抜け易くなる。
【0008】
したがって、本発明の第1の局面の導光板では、導光板の他面側を明るく発光させるのみならず、光散乱層を透過する光によって一面側も明るく発光させることができる。
【0009】
なお、導光板を発光させるためには、光散乱層において散乱光を発生させる必要がある。前述したように、中空粒子の光透過性は優れたものであり、中空粒子の一次粒子径が光の波長よりも極端に小さい場合には、中空粒子による光散乱性は事実上生じえないとも考えられる。しかしながら、このような場合であっても、中空粒子が光散乱層で2次凝集している場合には、空気を内包した凝集粒子として、光を散乱させることができる。そして、さらには、2次凝集して重なり合った中空粒子の表面や内壁で屈折・反射を繰り返すことができる。このため、高透過率と高散乱とを両立させることができる(図1参照)。これに対して、中実粒子の場合には表面での散乱に限られるとともに、中実粒子の中を透過する光は中空粒子よりも減衰しやすいため、低透過率かつ低散乱となり易い(図2参照)。
【0010】
また、中空粒子だけでは光散乱層の光散乱性が足りない場合には、光散乱粒子の添加によって補うこともできる。このため、本発明の第2の局面の導光板では、光散乱層に、さらに光散乱粒子が含まれていることとした。
【0011】
また、本発明の第3の局面の導光板では、中空粒子をシリカ殻からなるものとした。本発明者らは、シリカ殻からなる中空粒子を含む光散乱層を設けた導光板が、導光板端面からの光照射により、確実に導光板の両面を明るく発光させることができることを確認している。
【0012】
また、本発明の第4の局面の導光板では、中空粒子は立方体様形状を有することとした。ここで、「立方体様状」とは、完全な立方体に限らず、立方体の角が面取りされて丸みを帯びた形状や、多くの立方体が集合した形状も含む意味である。こうであれば、球形粒子に比べて最密充填密度が高くなることから、光散乱層中に多くの中空粒子を含ませることができることとなり、ひいては光散乱層における中空粒子による光透過性の向上を大きくすることができる。
【0013】
本発明の第1〜第4の局面の導光板を用い、基板の端面に光源を配置させ、光源から端面に向けて光を入射することにより、光散乱層で反射されて基板の他面から放出されるとともに、光散乱層を透過して基板の一面側からも放出される面状発光体装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】凝集した中空粒子による屈折・反射を示す模式図である。
【図2】中実粒子による屈折・反射を示す模式図である。
【図3】実施形態1に係る面状発光体装置の模式斜視図である。
【図4】実施形態1に係る光散乱層の模式断面図である。
【図5】光散乱層に中空粒子が存在する場合のLEDから導光板に照射された光の光路を示した模式図である。
【図6】光散乱層に中空粒子が存在しない場合のLEDから導光板に照射された光の光路を示した模式図である。
【図7】実施例1に係る面状発光体装置の模式斜視図である。
【図8】ナノバルーンXP200の透過型電子顕微鏡写真である
【図9】実施例1に係る面状発光体装置の発光状態を示す模式図である。
【図10】実施例1に係る面状発光体装置の輝度測定箇所1〜7を示す模式図である。
【図11】実施例1に係る面状発光体装置のNormal sideの輝度面分析結果を示す図である。
【図12】実施例1に係る面状発光体装置のReverse sideの輝度面分析結果を示す図である。
【図13】他の実施例の面状発光体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の面状発光体装置は導光板と、導光板の端面に配置された光源とから構成される。
光源としては導光板の端面から光を入射することができるものであればよく、例えばLED発光装置やレーザ発光装置などが挙げられる。
【0016】
また、導光板の表面に形成される光散乱層は一面側のみに形成されていてもよいし、両面に形成されていてもよい。さらには、光散乱層は導光板の表面に均一にコーティングしてもよいが、ドット状に印刷し、位置による発光強度の違いを考慮し、ドットの密度やドットの大きさなどを制御してパターン印刷することが好ましい。こうであれば、光源からの距離の違いによる輝度の差を補正することが可能となるため、ひいては導光板の全面での均一な発光を行うことができる。
【0017】
光散乱層のマトリックス材料としては、光学的透明性を有するバインダ樹脂を用いることができる。このようなバインダ樹脂としては、例えば、透明樹脂や無機ガラス等が用いられる。透明樹脂としては、例えばポリカーボネート樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。
【0018】
光散乱層には中空粒子が含まれている。中空粒子の1次粒子径は300nm以下と小さく、且つその壁厚が30nm以下と薄くされているため、可視光や赤外線に対する透光性に優れている。さらには、中空粒子の空隙率が40%以上と高くされていることが、透光性をさらに高めることとなる。好ましくは1次粒子径が200nm以下であり、壁厚が25nm以下であり、空隙率が50%以上であり、さらに好ましくは1次粒子径が150nm以下であり、壁厚が20nm以下であり、空隙率が60%以上である。
【0019】
ただし、光散乱層に光散乱粒子を添加しない場合には、中空粒子に光散乱機能をも担わせる必要がある。中空粒子が光の波長よりも極端に小さな粒子径を有する場合には、光散乱性に劣るため、その粒子径の下限としては20nm以上、好ましくは40nm以上、最も好ましくは100nm以上である。もっとも、中空粒子同士が2次凝集する場合には凝集粒子として光散乱性を発揮できるため、マトリックス中の凝集状態等を勘案して適宜その粒子径や添加量を決定すればよい。
【0020】
また、中空粒子の1次粒子径と壁厚と空隙率のバランスについては、経験上1次粒子径が35nm以上50nm未満の場合、壁厚が3.5nm以上5.5nm以下であり、空隙率が40%以上50%以下が好ましく、1次粒子径が50nm以上80nm未満の場合、壁厚が4.5nm以上9nm以下であり、空隙率が40%以上60%以下が好ましく、1次粒子径が80nm以上140nm未満の場合、壁厚が5nm以上15nm以下であり、空隙率が40%以上70%以下が好ましく、1次粒子径が140nm以上300nm以下の場合、壁厚が16nm以上30nm以下であり空隙率が40%以上70%以下が好ましい。
【0021】
このような中空粒子は、例えば、特開2005−263550号公報に記載の方法によって製造することができる。すなわち、炭酸カルシウムを調製する第1工程、炭酸カルシウムにシリカをコーティングする第2工程、及び炭酸カルシウムを溶解させる第3工程により、シリカの殻からなる中空粒子を製造する方法において、
(1)第1工程において、透過型電子顕微鏡法による一次粒子径が20〜200nmの炭酸カルシウムを水系にて調製し、静的光散乱法による粒子径が20〜700nmになるように熟成させた後、脱水して含水ケーキの状態とし、
(2)第2工程において、(1)の含水ケーキをアルコール中に分散させ、アンモニア水、水、シリコンアルコキシドを、シリコンアルコキシド/アルコールの体積比を0.002〜0.1、アンモニア水に含有されるNH3を、シリコンアルコキシド1モルに対して、4〜15モル、水をシリコンアルコキシド1モルに対して、25〜200モルとなるように添加することにより、シリカでコーティングされた炭酸カルシウムを調製した後、アルコール及び水による洗浄を行い、再び含水ケーキとし、
(3)第3工程において、(2)の含水ケーキを水に分散させ、酸を添加して、液の酸濃度を0.1〜3モル/Lとすることにより炭酸カルシウムを溶解させることにより、緻密なシリカ殻からなる高分散の中空粒子である。
【0022】
この方法によれば、透過型電子顕微鏡法による一次粒子径が30〜300nm、静的光散乱法による粒子径が30〜800nm、壁厚5〜30nm、水銀圧入法により測定される細孔分布において2〜20nmの細孔が検出されない高分散中空シリカ粒子を製造することができる。また、上記第1工程において調製される炭酸カルシウムの結晶はカルサイトであり六方晶系であるが、合成条件を制御することにより、あたかも立方晶系であるかのような形状、即ち「立方体様形状」に成長させることができる。
【0023】
発明者らは、この方法に順じ、適宜薬剤濃度や撹拌方法や温度やアルカリの種類等を調整することにより、以下に示す様々な1次粒子径、壁厚、及び空隙率のナノバルーンシリカ粒子を製造できることを確認している。
【0024】
【表1】
【0025】
また、中空粒子を透明性バインダに分散し易くするために、表面処理剤で疎水性処理を施すことも好ましい。
【0026】
中空粒子以外に光散乱粒子を添加する場合の添加量は、導光板内に照射された光の散乱及び透過のバランスを考慮して適宜決定すればよい。中空粒子の量や割合を増やせば散乱光及び透過光の双方が増大するため、光散乱層を設けた側の面が明るくなる。一方光散乱粒子が光透過率の低い中実粒子の場合には、散乱光は増大するが透過光は減少するため、光散乱層を設けた側と反対側の面が明るくなる。さらには、中空粒子以外の光散乱粒子の成分や一次粒子の径を調整することによっても、透過及び散乱のバランスを調整することができる。
通常推奨されるのは以下の範囲である。
中空粒子:
10重量%〜 40重量%、好ましくは 15重量%〜 30重量%、さらに好ましくは 20重量%〜 25 重量%。
中空粒子以外の光散乱粒子:
20 重量%〜 80 重量%、好ましくは 30 重量%〜 60 重量%、さらに好ましくは 40 重量%〜 50 重量%。
【0027】
光散乱粒子を添加せず、全て中空粒子としてもよい。中空粒子の粒子径が光の波長よりも小さい場合においても光散乱層の中では凝集して大きな二次粒子を形成するため、空気を内包した凝集粒子としての特性では高透過と高散乱を両立させることができるからである。
【0028】
<実施形態1>
図3に実施形態1の面状発光体装置1を示す。この面状発光体装置1は、導光板2と導光板2の両端面に設置されたLED発光部材3、4とから構成されている。導光板2は無色透明のアクリル樹脂からなる導光板基材5の一面側に光散乱層6がドット状に印刷されている。光散乱層6は、図4に示すように、透光性バインダ7の中にナノバルーンシリカ粒子8及び光散乱粒子9が分散されている。また、発光部材3、4は図3に示すように多数のLED10が一列に等間隔で並んで取り付けられており、導光板2の一端面からの光照射を可能としている。
【0029】
透光性バインダ7としては、例えば溶剤型接着剤、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂などを使用できる。また透光性バインダ7として溶剤希釈中は密着せずに溶剤乾燥後に密着力を発現する樹脂成分、例えばアクリル系粘着剤を用いてもよい。
【0030】
また、ナノバルーンシリカ粒子8としては、1次粒子径が300nm以下であり、壁厚が30nm以下であり、空隙率が40%以上であるシリカ粒子を用いる。このようなナノバルーンシリカ粒子として、例えば、グランデックス株式会社製のナノバルーン(一次粒子径90〜110nm、壁厚8〜10nm、空隙率50〜60%、比表面積130〜150nm2/g、粒子密度0.6〜0.7、かさ密度0.06〜0.09g/ml)を用いることができる。また、このようなナノバルーンシリカ粒子の表面を表面処理剤によって処理して、疎水性としたり、官能基を修飾したりして、透光性バインダへの分散性を向上させることもできる。
【0031】
また、光散乱粒子9としては、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム等の無機系微粒子や、シリコーンビーズ、PMMAビーズ、MSビーズ、スチレンビーズ等の有機系微粒子を用いることができる。また、光散乱粒子9の形状は、真球状、球状、鱗片状、不定形状等であってよく、特に限定されるものではない。さらに、光散乱粒子9の平均粒径は、1μm以上50μm以下が好ましい。当該平均粒径が1μmより小さいと、光を拡散する能力が不足したり、拡散光が着色したりする恐れがある。また、平均粒径が50μmより大きいと、光散乱層6をスプレー塗布する場合、ノズルが目詰まりを起こし易い。
【0032】
また、透光性バインダ7、ナノバルーンシリカ粒子8及び光散乱粒子9の混合割合としては、光透過率、光散乱性率、導光板の形状や大きさ、LEDの輝度等を勘案して、適宜適切な割合を決定すればよい。
【0033】
光散乱層6をドット印刷するためには、透光性バインダ7、ナノバルーンシリカ粒子8及び光散乱粒子9の混合物を溶媒によって薄めて、スプレー法やスクリーン印刷法等によって導光板基材5上に印刷すればよい。スプレー塗布した導光板基材5は、溶剤を自然風乾や熱風などによって乾燥させる。透光性バインダ7が紫外線硬化樹脂からなる場合は、印刷後において紫外線を照射して硬化させる。
【0034】
以上のようにして構成された実施形態1の面状発光体装置1では、LED発光部材3、4に図示しない電源から通電して発光させると、導光板基材2の両端面から光照射され進行する。そして、光散乱層6に当たった光は透光性バインダ7を透過しナノバルーンシリカ粒子8や光散乱粒子9で散乱される。ここで、ナノバルーンシリカ粒子8に当たった光は粒子外表面のみならず、粒子内表面でも反射される。したがって、ナノバルーンシリカ粒子8による光の散乱の度合いは大きいものとなる。また、ナノバルーンシリカ粒子8は中空構造を有することから、中実粒子に比べて粒子内部に入る光のエネルギー減衰も少なく、散乱光の減衰率が小さい。しかも、ナノバルーンシリカ粒子8の1次粒子径は300nm以下と極めて小さく、且つその壁厚が30nm以下と極めて薄くされているため、可視光や赤外線に対する透光性に優れている。さらには、ナノバルーンシリカ粒子8の空隙率が40%以上と高くされていることが、透光性をさらに高めることとなる。
また、ナノバルーンシリカ粒子8どうしが凝集して500nmから10μm程度の空気を内包した2次粒子を形成し、この構造が高透過率を保持しつつ、散乱光も発生させることができる。
【0035】
こうして、導光板基材5の両端面から放射された光は、光散乱層6内の光散乱粒子9及びナノバルーンシリカ粒子8によって高度に散乱されるとともに、光散乱層6中の透光性バインダ7及びナノバルーンシリカ粒子8内を透過する。その結果、図5に示すように、光散乱層6がドット印刷されていない側のみならず、ドット印刷された側からも光が放射され、導光板基材2の両面ともに明るく発光することとなる。
【0036】
これに対して、図6に示すように、光散乱層11にナノバルーンシリカ粒子が含まれていない場合(その他の構成は図5に示す実施形態1の面状発光体装置と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。)は、光散乱層11がドット印刷されていない側が明るくなり、ドット印刷されている側は暗くなる。
【実施例】
【0037】
(実施例1)
実施例1では、図7に示すように、透明アクリル板12の一面側の片側半分に、下記組成のコーティング剤を用いてナノバルーン含有光散乱層13をドット印刷し、残りの片側半分に、下記組成からナノバルーンのみを除いた組成のコーティング剤を用いてナノバルーン非含有光散乱層14をドット印刷した。そして、赤色LED15が一列に並んだLED発光部材16を透明アクリル板12の下端面に配設して面状発光体装置17を組み立てた。
・コーティング剤組成
有機溶媒のキシレン80重量部にアクリル樹脂を11重量部溶解させて、アクリル樹脂溶液を調製した。このアクリル樹脂溶液中に、中空粒子としてグランデックス株式会社製のナノバルーンXP200を25重量部、中空粒子以外の光散乱粒子としてのアクリル製メジューム(例えばMBX5:積水化成品工業(株)製)を5重量部加え、攪拌してコーティング剤を得た。ナノバルーンXP200は図8に示すように、立方体様形状を有す中空粒子であり、一次粒子径150〜2000nm、壁厚10〜20nm、空隙率50〜70%、比表面積50〜150nm2/g、粒子密度0.5〜1.0である。
【0038】
<評 価>
上記実施例1の面状発光体装置17について、赤色LED15に通電して透光板12の下端面から光照射し、図9に示すように、ナノバルーン含有光散乱層13及びナノバルーン非含有光散乱層14がドット印刷されている側(Reverse side)及びされていない側(Normal side)の輝度をミノルタ製色彩色差計を用いて輝度を測定した。測定箇所は、ナノバルーン含有光散乱層13の印刷されている面及びナノバルーン非含有光散乱層14がドット印刷されている面のそれぞれの中央ラインに沿って8等分し、LED発光部材16が配置されていない側から順に測定箇所1,2,3,4,5,6,7とした(図10参照)。結果を表1に示す。
【0039】
また、透明アクリル板12のNormal sideの輝度の面分析及びReverse sideの輝度のビデオカメラによる輝度の面分析も行った。ビデオカメラの撮影場所は透明アクリル板12に対して垂直方向(すなわち視野角が0度となる方向)であって、レンズまでの距離が20cmとなる位置に設置した。結果を図11及び図12に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
表1から、中空粒子としてナノバルーンシリカ粒子8を含有した光散乱層をドット印刷した場合には、ナノバルーンシリカ粒子8を含有しない光散乱層をドット印刷した場合に比べて、Normal side及びReverse sideともに、いずれの測定箇所においても輝度が高いことが分かった。この理由は、光散乱層にナノバルーンシリカ粒子8が含まれていることにより、光散乱層の光透過性が向上したからである。
【0042】
また、下記計算式(1)で示される輝度向上率を比較した場合、Normal sideにおいては、光源から遠い位置において輝度向上率が大きくなり、光源から近い位置についてはそれほど輝度が向上していない。これに対して、Reverse sideにおいては、Normal sideのような顕著な傾向は認められなかった。
以上の結果は、ナノバルーンシリカ粒子8を含有した光散乱層による光散乱効果が大きく、光源から遠くなるにつれて、散乱によって光が減衰されることによるものであると説明される。
なお、ナノバルーンシリカ粒子8を含有していない光散乱層をドット印刷した場合において、Reverse sideの輝度がNormal sideの輝度とそれほど変わらない箇所も存在するが、実用的には、この比較例よりも光散乱粒子としてアクリル製メジュームをもっと大量に添加してNormal sideの輝度を上げることがなされており、Reverse sideの輝度はNormal sideの輝度よりも暗くなる。このため、Reverse sideは発光面として利用されていない。
【0043】
【数1】
【0044】
以上の結果は図11及び図12に示す輝度の面分析結果からも支持された。
【0045】
上記実施例では、中空粒子としてのナノバルーンXP200と、中空粒子以外の光散乱粒子としてのアクリル製メジュームとを含有するコーティング剤をドット印刷したが、ナノバルーンXP200のみを含有するコーティング剤を用いて光散乱層を形成してもよい。ナノバルーンXP200の粒子径は光の波長よりも小さいが、光散乱層の中では500nmから10μmに大きな凝集塊となり、空気を内包した凝集粒子としての特性では高透過と高散乱を両立させることができるからである。
【0046】
また、図13に示すように、透光性の板20の上に、さらに透光性の薄いシート21を重ね、そのシート21に光散乱層22をドット印刷した多層構造の導光板としてもよい。こうであれば、ドット印刷は薄いシート21に行うこととなるため、印刷がより容易になり、ひいては導光板の量産化及び生産コストの低廉化を図ることができる。
【0047】
この発明は上記発明の実施の態様及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
2…導光板
5,12,20,21…基板(5…導光板基材,12…透明アクリル板,20…板,21…シート)
8…中空粒子(ナノバルーンシリカ粒子)
9…光散乱粒子
6,13,22…光散乱層(6,22…光散乱層,13…ナノバルーン含有光散乱層)
1,17…面状発光体装置
3,4,10,15,16…光源(3,4…LED発光部材,10…LED,15…赤色LED,16…LED発光部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッジライト方式の面状発光体装置及びそれに用いられる導光板に関する。
【背景技術】
【0002】
看板などを面発光させる装置として、光源を導光板の端面に配置したエッジライト方式の面状発光体装置が知られている(例えば特許文献1)。この面状発光体装置に用いられる導光板は、アクリル板などの透光性の板材表面に光散乱層がパターン印刷されたものが用いられている。光散乱層用のインクには、透光性のバインダ中に光を散乱するための光散乱粒子が含まれており、導光板の端面から照射された光は、印刷面に存在する光散乱粒子によって散乱し、散乱光が導光板の一面側を発光させる仕組みとなっている。
【0003】
エッジライト方式の面状発光体装置では、導光板の端面に光源を配置させるため、導光板の裏側に光源を配置する直下型方式の面状発光体装置と比べ、厚さを薄くできるという利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−146772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のエッジライト方式の面状発光体装置では、導光板に印刷された光散乱層に含まれる光散乱粒子の光散乱現象によって光散乱層と反対側の面を発光させるものである。この面状発光体装置では、光散乱層を透過した光によって光散乱層の存在する側も発光するが、光散乱層を透過する際、光散乱粒子によって光の強度が大きく減衰するため、光散乱層と反対側の面よりも暗くなってしまうという欠点があった。このため、両面発光可能な導光板は実用化されていなかった。
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、導光板の表裏両面を明るく発光させることができるエッジライト方式の面状発光体装置、及びそれに用いる導光板を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の局面は、透光性の基板の少なくとも一面側に光散乱層が設けられたエッジライト方式用の導光板であって、前記光散乱層には1次粒子径が300nm以下であり、壁厚が30nm以下であって、且つ空隙率が40%以上の中空粒子が含まれており、前記基板の端面から入射された光は、前記光散乱層で反射されて前記基板の他面から放出されるとともに、前記光散乱層を透過して前記基板の一面側からも放出される導光板である。
【0007】
本発明の第1の局面の導光板では、透光性の基板の少なくとも一面側に設けられた光散乱層に中空粒子が含まれている。そして、この中空粒子の1次粒子径は300nm以下と小さく、その壁厚も30nm以下と極めて薄く、さらには中空粒子の空隙率が40%以上と高くされているため、優れた透光性を有する。また、中空粒子は中空構造を有することから、中実粒子に比べて粒子内部に進入した光のエネルギー減衰も少ない。このため、光散乱層に含まれる中空粒子の存在により、光散乱層の光透過性が向上することとなる。このため、導光板の光散乱層において発生した散乱光は、光散乱層の形成された側のみならず、光散乱層内を通過して反対側へも、それほどのエネルギー減衰をされることなく抜け易くなる。
【0008】
したがって、本発明の第1の局面の導光板では、導光板の他面側を明るく発光させるのみならず、光散乱層を透過する光によって一面側も明るく発光させることができる。
【0009】
なお、導光板を発光させるためには、光散乱層において散乱光を発生させる必要がある。前述したように、中空粒子の光透過性は優れたものであり、中空粒子の一次粒子径が光の波長よりも極端に小さい場合には、中空粒子による光散乱性は事実上生じえないとも考えられる。しかしながら、このような場合であっても、中空粒子が光散乱層で2次凝集している場合には、空気を内包した凝集粒子として、光を散乱させることができる。そして、さらには、2次凝集して重なり合った中空粒子の表面や内壁で屈折・反射を繰り返すことができる。このため、高透過率と高散乱とを両立させることができる(図1参照)。これに対して、中実粒子の場合には表面での散乱に限られるとともに、中実粒子の中を透過する光は中空粒子よりも減衰しやすいため、低透過率かつ低散乱となり易い(図2参照)。
【0010】
また、中空粒子だけでは光散乱層の光散乱性が足りない場合には、光散乱粒子の添加によって補うこともできる。このため、本発明の第2の局面の導光板では、光散乱層に、さらに光散乱粒子が含まれていることとした。
【0011】
また、本発明の第3の局面の導光板では、中空粒子をシリカ殻からなるものとした。本発明者らは、シリカ殻からなる中空粒子を含む光散乱層を設けた導光板が、導光板端面からの光照射により、確実に導光板の両面を明るく発光させることができることを確認している。
【0012】
また、本発明の第4の局面の導光板では、中空粒子は立方体様形状を有することとした。ここで、「立方体様状」とは、完全な立方体に限らず、立方体の角が面取りされて丸みを帯びた形状や、多くの立方体が集合した形状も含む意味である。こうであれば、球形粒子に比べて最密充填密度が高くなることから、光散乱層中に多くの中空粒子を含ませることができることとなり、ひいては光散乱層における中空粒子による光透過性の向上を大きくすることができる。
【0013】
本発明の第1〜第4の局面の導光板を用い、基板の端面に光源を配置させ、光源から端面に向けて光を入射することにより、光散乱層で反射されて基板の他面から放出されるとともに、光散乱層を透過して基板の一面側からも放出される面状発光体装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】凝集した中空粒子による屈折・反射を示す模式図である。
【図2】中実粒子による屈折・反射を示す模式図である。
【図3】実施形態1に係る面状発光体装置の模式斜視図である。
【図4】実施形態1に係る光散乱層の模式断面図である。
【図5】光散乱層に中空粒子が存在する場合のLEDから導光板に照射された光の光路を示した模式図である。
【図6】光散乱層に中空粒子が存在しない場合のLEDから導光板に照射された光の光路を示した模式図である。
【図7】実施例1に係る面状発光体装置の模式斜視図である。
【図8】ナノバルーンXP200の透過型電子顕微鏡写真である
【図9】実施例1に係る面状発光体装置の発光状態を示す模式図である。
【図10】実施例1に係る面状発光体装置の輝度測定箇所1〜7を示す模式図である。
【図11】実施例1に係る面状発光体装置のNormal sideの輝度面分析結果を示す図である。
【図12】実施例1に係る面状発光体装置のReverse sideの輝度面分析結果を示す図である。
【図13】他の実施例の面状発光体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の面状発光体装置は導光板と、導光板の端面に配置された光源とから構成される。
光源としては導光板の端面から光を入射することができるものであればよく、例えばLED発光装置やレーザ発光装置などが挙げられる。
【0016】
また、導光板の表面に形成される光散乱層は一面側のみに形成されていてもよいし、両面に形成されていてもよい。さらには、光散乱層は導光板の表面に均一にコーティングしてもよいが、ドット状に印刷し、位置による発光強度の違いを考慮し、ドットの密度やドットの大きさなどを制御してパターン印刷することが好ましい。こうであれば、光源からの距離の違いによる輝度の差を補正することが可能となるため、ひいては導光板の全面での均一な発光を行うことができる。
【0017】
光散乱層のマトリックス材料としては、光学的透明性を有するバインダ樹脂を用いることができる。このようなバインダ樹脂としては、例えば、透明樹脂や無機ガラス等が用いられる。透明樹脂としては、例えばポリカーボネート樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。
【0018】
光散乱層には中空粒子が含まれている。中空粒子の1次粒子径は300nm以下と小さく、且つその壁厚が30nm以下と薄くされているため、可視光や赤外線に対する透光性に優れている。さらには、中空粒子の空隙率が40%以上と高くされていることが、透光性をさらに高めることとなる。好ましくは1次粒子径が200nm以下であり、壁厚が25nm以下であり、空隙率が50%以上であり、さらに好ましくは1次粒子径が150nm以下であり、壁厚が20nm以下であり、空隙率が60%以上である。
【0019】
ただし、光散乱層に光散乱粒子を添加しない場合には、中空粒子に光散乱機能をも担わせる必要がある。中空粒子が光の波長よりも極端に小さな粒子径を有する場合には、光散乱性に劣るため、その粒子径の下限としては20nm以上、好ましくは40nm以上、最も好ましくは100nm以上である。もっとも、中空粒子同士が2次凝集する場合には凝集粒子として光散乱性を発揮できるため、マトリックス中の凝集状態等を勘案して適宜その粒子径や添加量を決定すればよい。
【0020】
また、中空粒子の1次粒子径と壁厚と空隙率のバランスについては、経験上1次粒子径が35nm以上50nm未満の場合、壁厚が3.5nm以上5.5nm以下であり、空隙率が40%以上50%以下が好ましく、1次粒子径が50nm以上80nm未満の場合、壁厚が4.5nm以上9nm以下であり、空隙率が40%以上60%以下が好ましく、1次粒子径が80nm以上140nm未満の場合、壁厚が5nm以上15nm以下であり、空隙率が40%以上70%以下が好ましく、1次粒子径が140nm以上300nm以下の場合、壁厚が16nm以上30nm以下であり空隙率が40%以上70%以下が好ましい。
【0021】
このような中空粒子は、例えば、特開2005−263550号公報に記載の方法によって製造することができる。すなわち、炭酸カルシウムを調製する第1工程、炭酸カルシウムにシリカをコーティングする第2工程、及び炭酸カルシウムを溶解させる第3工程により、シリカの殻からなる中空粒子を製造する方法において、
(1)第1工程において、透過型電子顕微鏡法による一次粒子径が20〜200nmの炭酸カルシウムを水系にて調製し、静的光散乱法による粒子径が20〜700nmになるように熟成させた後、脱水して含水ケーキの状態とし、
(2)第2工程において、(1)の含水ケーキをアルコール中に分散させ、アンモニア水、水、シリコンアルコキシドを、シリコンアルコキシド/アルコールの体積比を0.002〜0.1、アンモニア水に含有されるNH3を、シリコンアルコキシド1モルに対して、4〜15モル、水をシリコンアルコキシド1モルに対して、25〜200モルとなるように添加することにより、シリカでコーティングされた炭酸カルシウムを調製した後、アルコール及び水による洗浄を行い、再び含水ケーキとし、
(3)第3工程において、(2)の含水ケーキを水に分散させ、酸を添加して、液の酸濃度を0.1〜3モル/Lとすることにより炭酸カルシウムを溶解させることにより、緻密なシリカ殻からなる高分散の中空粒子である。
【0022】
この方法によれば、透過型電子顕微鏡法による一次粒子径が30〜300nm、静的光散乱法による粒子径が30〜800nm、壁厚5〜30nm、水銀圧入法により測定される細孔分布において2〜20nmの細孔が検出されない高分散中空シリカ粒子を製造することができる。また、上記第1工程において調製される炭酸カルシウムの結晶はカルサイトであり六方晶系であるが、合成条件を制御することにより、あたかも立方晶系であるかのような形状、即ち「立方体様形状」に成長させることができる。
【0023】
発明者らは、この方法に順じ、適宜薬剤濃度や撹拌方法や温度やアルカリの種類等を調整することにより、以下に示す様々な1次粒子径、壁厚、及び空隙率のナノバルーンシリカ粒子を製造できることを確認している。
【0024】
【表1】
【0025】
また、中空粒子を透明性バインダに分散し易くするために、表面処理剤で疎水性処理を施すことも好ましい。
【0026】
中空粒子以外に光散乱粒子を添加する場合の添加量は、導光板内に照射された光の散乱及び透過のバランスを考慮して適宜決定すればよい。中空粒子の量や割合を増やせば散乱光及び透過光の双方が増大するため、光散乱層を設けた側の面が明るくなる。一方光散乱粒子が光透過率の低い中実粒子の場合には、散乱光は増大するが透過光は減少するため、光散乱層を設けた側と反対側の面が明るくなる。さらには、中空粒子以外の光散乱粒子の成分や一次粒子の径を調整することによっても、透過及び散乱のバランスを調整することができる。
通常推奨されるのは以下の範囲である。
中空粒子:
10重量%〜 40重量%、好ましくは 15重量%〜 30重量%、さらに好ましくは 20重量%〜 25 重量%。
中空粒子以外の光散乱粒子:
20 重量%〜 80 重量%、好ましくは 30 重量%〜 60 重量%、さらに好ましくは 40 重量%〜 50 重量%。
【0027】
光散乱粒子を添加せず、全て中空粒子としてもよい。中空粒子の粒子径が光の波長よりも小さい場合においても光散乱層の中では凝集して大きな二次粒子を形成するため、空気を内包した凝集粒子としての特性では高透過と高散乱を両立させることができるからである。
【0028】
<実施形態1>
図3に実施形態1の面状発光体装置1を示す。この面状発光体装置1は、導光板2と導光板2の両端面に設置されたLED発光部材3、4とから構成されている。導光板2は無色透明のアクリル樹脂からなる導光板基材5の一面側に光散乱層6がドット状に印刷されている。光散乱層6は、図4に示すように、透光性バインダ7の中にナノバルーンシリカ粒子8及び光散乱粒子9が分散されている。また、発光部材3、4は図3に示すように多数のLED10が一列に等間隔で並んで取り付けられており、導光板2の一端面からの光照射を可能としている。
【0029】
透光性バインダ7としては、例えば溶剤型接着剤、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂などを使用できる。また透光性バインダ7として溶剤希釈中は密着せずに溶剤乾燥後に密着力を発現する樹脂成分、例えばアクリル系粘着剤を用いてもよい。
【0030】
また、ナノバルーンシリカ粒子8としては、1次粒子径が300nm以下であり、壁厚が30nm以下であり、空隙率が40%以上であるシリカ粒子を用いる。このようなナノバルーンシリカ粒子として、例えば、グランデックス株式会社製のナノバルーン(一次粒子径90〜110nm、壁厚8〜10nm、空隙率50〜60%、比表面積130〜150nm2/g、粒子密度0.6〜0.7、かさ密度0.06〜0.09g/ml)を用いることができる。また、このようなナノバルーンシリカ粒子の表面を表面処理剤によって処理して、疎水性としたり、官能基を修飾したりして、透光性バインダへの分散性を向上させることもできる。
【0031】
また、光散乱粒子9としては、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム等の無機系微粒子や、シリコーンビーズ、PMMAビーズ、MSビーズ、スチレンビーズ等の有機系微粒子を用いることができる。また、光散乱粒子9の形状は、真球状、球状、鱗片状、不定形状等であってよく、特に限定されるものではない。さらに、光散乱粒子9の平均粒径は、1μm以上50μm以下が好ましい。当該平均粒径が1μmより小さいと、光を拡散する能力が不足したり、拡散光が着色したりする恐れがある。また、平均粒径が50μmより大きいと、光散乱層6をスプレー塗布する場合、ノズルが目詰まりを起こし易い。
【0032】
また、透光性バインダ7、ナノバルーンシリカ粒子8及び光散乱粒子9の混合割合としては、光透過率、光散乱性率、導光板の形状や大きさ、LEDの輝度等を勘案して、適宜適切な割合を決定すればよい。
【0033】
光散乱層6をドット印刷するためには、透光性バインダ7、ナノバルーンシリカ粒子8及び光散乱粒子9の混合物を溶媒によって薄めて、スプレー法やスクリーン印刷法等によって導光板基材5上に印刷すればよい。スプレー塗布した導光板基材5は、溶剤を自然風乾や熱風などによって乾燥させる。透光性バインダ7が紫外線硬化樹脂からなる場合は、印刷後において紫外線を照射して硬化させる。
【0034】
以上のようにして構成された実施形態1の面状発光体装置1では、LED発光部材3、4に図示しない電源から通電して発光させると、導光板基材2の両端面から光照射され進行する。そして、光散乱層6に当たった光は透光性バインダ7を透過しナノバルーンシリカ粒子8や光散乱粒子9で散乱される。ここで、ナノバルーンシリカ粒子8に当たった光は粒子外表面のみならず、粒子内表面でも反射される。したがって、ナノバルーンシリカ粒子8による光の散乱の度合いは大きいものとなる。また、ナノバルーンシリカ粒子8は中空構造を有することから、中実粒子に比べて粒子内部に入る光のエネルギー減衰も少なく、散乱光の減衰率が小さい。しかも、ナノバルーンシリカ粒子8の1次粒子径は300nm以下と極めて小さく、且つその壁厚が30nm以下と極めて薄くされているため、可視光や赤外線に対する透光性に優れている。さらには、ナノバルーンシリカ粒子8の空隙率が40%以上と高くされていることが、透光性をさらに高めることとなる。
また、ナノバルーンシリカ粒子8どうしが凝集して500nmから10μm程度の空気を内包した2次粒子を形成し、この構造が高透過率を保持しつつ、散乱光も発生させることができる。
【0035】
こうして、導光板基材5の両端面から放射された光は、光散乱層6内の光散乱粒子9及びナノバルーンシリカ粒子8によって高度に散乱されるとともに、光散乱層6中の透光性バインダ7及びナノバルーンシリカ粒子8内を透過する。その結果、図5に示すように、光散乱層6がドット印刷されていない側のみならず、ドット印刷された側からも光が放射され、導光板基材2の両面ともに明るく発光することとなる。
【0036】
これに対して、図6に示すように、光散乱層11にナノバルーンシリカ粒子が含まれていない場合(その他の構成は図5に示す実施形態1の面状発光体装置と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。)は、光散乱層11がドット印刷されていない側が明るくなり、ドット印刷されている側は暗くなる。
【実施例】
【0037】
(実施例1)
実施例1では、図7に示すように、透明アクリル板12の一面側の片側半分に、下記組成のコーティング剤を用いてナノバルーン含有光散乱層13をドット印刷し、残りの片側半分に、下記組成からナノバルーンのみを除いた組成のコーティング剤を用いてナノバルーン非含有光散乱層14をドット印刷した。そして、赤色LED15が一列に並んだLED発光部材16を透明アクリル板12の下端面に配設して面状発光体装置17を組み立てた。
・コーティング剤組成
有機溶媒のキシレン80重量部にアクリル樹脂を11重量部溶解させて、アクリル樹脂溶液を調製した。このアクリル樹脂溶液中に、中空粒子としてグランデックス株式会社製のナノバルーンXP200を25重量部、中空粒子以外の光散乱粒子としてのアクリル製メジューム(例えばMBX5:積水化成品工業(株)製)を5重量部加え、攪拌してコーティング剤を得た。ナノバルーンXP200は図8に示すように、立方体様形状を有す中空粒子であり、一次粒子径150〜2000nm、壁厚10〜20nm、空隙率50〜70%、比表面積50〜150nm2/g、粒子密度0.5〜1.0である。
【0038】
<評 価>
上記実施例1の面状発光体装置17について、赤色LED15に通電して透光板12の下端面から光照射し、図9に示すように、ナノバルーン含有光散乱層13及びナノバルーン非含有光散乱層14がドット印刷されている側(Reverse side)及びされていない側(Normal side)の輝度をミノルタ製色彩色差計を用いて輝度を測定した。測定箇所は、ナノバルーン含有光散乱層13の印刷されている面及びナノバルーン非含有光散乱層14がドット印刷されている面のそれぞれの中央ラインに沿って8等分し、LED発光部材16が配置されていない側から順に測定箇所1,2,3,4,5,6,7とした(図10参照)。結果を表1に示す。
【0039】
また、透明アクリル板12のNormal sideの輝度の面分析及びReverse sideの輝度のビデオカメラによる輝度の面分析も行った。ビデオカメラの撮影場所は透明アクリル板12に対して垂直方向(すなわち視野角が0度となる方向)であって、レンズまでの距離が20cmとなる位置に設置した。結果を図11及び図12に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
表1から、中空粒子としてナノバルーンシリカ粒子8を含有した光散乱層をドット印刷した場合には、ナノバルーンシリカ粒子8を含有しない光散乱層をドット印刷した場合に比べて、Normal side及びReverse sideともに、いずれの測定箇所においても輝度が高いことが分かった。この理由は、光散乱層にナノバルーンシリカ粒子8が含まれていることにより、光散乱層の光透過性が向上したからである。
【0042】
また、下記計算式(1)で示される輝度向上率を比較した場合、Normal sideにおいては、光源から遠い位置において輝度向上率が大きくなり、光源から近い位置についてはそれほど輝度が向上していない。これに対して、Reverse sideにおいては、Normal sideのような顕著な傾向は認められなかった。
以上の結果は、ナノバルーンシリカ粒子8を含有した光散乱層による光散乱効果が大きく、光源から遠くなるにつれて、散乱によって光が減衰されることによるものであると説明される。
なお、ナノバルーンシリカ粒子8を含有していない光散乱層をドット印刷した場合において、Reverse sideの輝度がNormal sideの輝度とそれほど変わらない箇所も存在するが、実用的には、この比較例よりも光散乱粒子としてアクリル製メジュームをもっと大量に添加してNormal sideの輝度を上げることがなされており、Reverse sideの輝度はNormal sideの輝度よりも暗くなる。このため、Reverse sideは発光面として利用されていない。
【0043】
【数1】
【0044】
以上の結果は図11及び図12に示す輝度の面分析結果からも支持された。
【0045】
上記実施例では、中空粒子としてのナノバルーンXP200と、中空粒子以外の光散乱粒子としてのアクリル製メジュームとを含有するコーティング剤をドット印刷したが、ナノバルーンXP200のみを含有するコーティング剤を用いて光散乱層を形成してもよい。ナノバルーンXP200の粒子径は光の波長よりも小さいが、光散乱層の中では500nmから10μmに大きな凝集塊となり、空気を内包した凝集粒子としての特性では高透過と高散乱を両立させることができるからである。
【0046】
また、図13に示すように、透光性の板20の上に、さらに透光性の薄いシート21を重ね、そのシート21に光散乱層22をドット印刷した多層構造の導光板としてもよい。こうであれば、ドット印刷は薄いシート21に行うこととなるため、印刷がより容易になり、ひいては導光板の量産化及び生産コストの低廉化を図ることができる。
【0047】
この発明は上記発明の実施の態様及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
2…導光板
5,12,20,21…基板(5…導光板基材,12…透明アクリル板,20…板,21…シート)
8…中空粒子(ナノバルーンシリカ粒子)
9…光散乱粒子
6,13,22…光散乱層(6,22…光散乱層,13…ナノバルーン含有光散乱層)
1,17…面状発光体装置
3,4,10,15,16…光源(3,4…LED発光部材,10…LED,15…赤色LED,16…LED発光部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性の基板の少なくとも一面側に光散乱層が設けられたエッジライト方式用の導光板であって、
前記光散乱層には1次粒子径が300nm以下であり、壁厚が30nm以下であって、且つ空隙率が40%以上の中空粒子が含まれており、
前記基板の端面から入射された光は、前記光散乱層で反射されて前記基板の他面から放出されるとともに、前記光散乱層を透過して前記基板の前記一面側からも放出される、
導光板。
【請求項2】
前記光散乱層には、さらに光散乱粒子が含まれている導光板。
【請求項3】
前記中空粒子はシリカ殻からなる請求項1又は2記載の導光板。
【請求項4】
前記中空粒子は立方体様形状を有する請求項1乃至3のいずれか1項記載の導光板。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の導光板の端面に光源が配置されている面状発光体装置。
【請求項1】
透光性の基板の少なくとも一面側に光散乱層が設けられたエッジライト方式用の導光板であって、
前記光散乱層には1次粒子径が300nm以下であり、壁厚が30nm以下であって、且つ空隙率が40%以上の中空粒子が含まれており、
前記基板の端面から入射された光は、前記光散乱層で反射されて前記基板の他面から放出されるとともに、前記光散乱層を透過して前記基板の前記一面側からも放出される、
導光板。
【請求項2】
前記光散乱層には、さらに光散乱粒子が含まれている導光板。
【請求項3】
前記中空粒子はシリカ殻からなる請求項1又は2記載の導光板。
【請求項4】
前記中空粒子は立方体様形状を有する請求項1乃至3のいずれか1項記載の導光板。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の導光板の端面に光源が配置されている面状発光体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図13】
【図8】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図13】
【図8】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−89543(P2013−89543A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231324(P2011−231324)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000241485)豊田通商株式会社 (73)
【出願人】(504067365)グランデックス株式会社 (37)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000241485)豊田通商株式会社 (73)
【出願人】(504067365)グランデックス株式会社 (37)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]