説明

導光素子並びにそれを用いた面光源装置および液晶ディスプレイ

【課題】本発明は、光の伝播方向に対して垂直に光を出射できる導光素子を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、基材の少なくとも1つの端部から光を入射し、該基材の側面から光を出射する導光素子において、該基材中に金属ナノワイヤが分散していることを特徴とする導光素子および該導光素子を用いた光源装置である。前記金属ナノワイヤは、銀ナノワイヤであるのが好ましい。また、前記基材は光硬化性樹脂からなるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点状光源から面状または線状に発光させるときに用いられる導光素子に関しており、金属ナノワイヤを用いて光の方向を偏向させて出射する導光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光源装置の一類型として、光散乱導光体の端面部から光供給を行い、光散乱導光体の側部から照明光を放出する光源装置が知られている。光散乱導光体の形状としては、例えば楔板状若しくは平板状などの板状またはロッド状のものなどが採用されている。光散乱導光体としては透明樹脂中に光散乱材を添加したものが知られている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−153963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にあるように、散乱光は光の伝播方向に対して垂直には出射できず、光の利用効率が低下する欠点があった(図1)。
【0005】
従って本発明の課題は、図2に示すように光の伝播方向に対して垂直に光を出射できる導光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、発明者は光散乱材ではなく光反射材を用い得ることを見出し、上記発明を完成させた。
即ち上記課題は、光反射材が金属ナノワイヤであることを特徴とする導光素子によって解決される。本発明において、金属ナノワイヤとは短軸方向の長さが1μm以下であり、かつ、長軸方向の長さが短軸方向の長さの10倍以上であるワイヤ状の金属粒子をいう。
さらに、本発明は前記金属ナノワイヤが銀ナノワイヤであってもよい。
さらに、本発明は前記基材が光硬化性樹脂であってもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によって得られる金属ナノワイヤを用いた導光素子は、光の伝播方向に対して垂直に光を出射できる導光体となるので、従来の光散乱材を用いた拡散導光体に比べ効率良く光を利用することができる。
【0008】
また、アスペクト比の高い金属ナノワイヤは真球状の反射剤に比べ効率良く光を出射することができるので、効率良く光を利用することができる。
したがって、本発明の導光素子を用いた光源装置は照明や液晶ディスプレイのバックライトユニットとして有利に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、光反射材が金属ナノワイヤであることを特徴とする導光素子である。導光素子の形状としては、例えば楔板状、平板状、ロッド状のものなど用途に応じて公知の形状のものを適用することができる。
本発明の導光素子は金属ナノワイヤである光反射材を必須成分とする。本発明において光反射材とは可視光を反射することのできる材料のことである。
【0010】
本発明において用いる金属ナノワイヤは短軸方向の長さが1μm以下であり、かつ、長軸方向の長さが短軸方向の長さの10倍以上であるワイヤ形状を呈するものであれば特に制限は無いが、分岐している形状や、粒子を数珠上に繋げた形状よりも直線状金属ナノワイヤであることが好ましい。直線状の形状のものが最も効率的に光を反射できるからである。ただし金属ナノワイヤの剛性が低く、バナナ状に湾曲していたり、折れ曲がったりしているものも直線状金属ナノワイヤに含むものとする。
【0011】
上記金属ナノワイヤの材質は金属である。金属の酸化物や窒化物等のセラミックは含まない。可視光の反射性が劣るからである。金属ナノワイヤとなる金属として、具体的にはアルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、オスミウム、イリジウム、白金、金が挙げられ、可視光反射率の波長依存性の少ないアルミニウム、亜鉛、銀、白金が好ましく、銀がより好ましい。
【0012】
上記直線状金属ナノワイヤの短軸方向の長さは1nm以上1μm以下が好ましく、10nm以上500nm以下がより好ましい。短軸方向の長さが大きすぎると反射効率が低下し、小さすぎると反射しなくなるからである。長軸方向の長さは短軸方向の長さの10倍以上であることが必要であり、1μm以上1mm以下であることが好ましく、10μm以上100μm以下であることがより好ましい。長軸方向の長さが短すぎると反射効率が低下し、長すぎると取扱が困難となるからである。
金属ナノワイヤの形状や大きさは走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡によって確認することができる。
【0013】
上記金属ナノワイヤは公知の方法によって合成することができる。例えば溶液中で硝酸銀を還元する方法や、前駆体表面にプローブの先端部から印加電圧又は電流を作用させプローブ先端部で金属ナノワイヤをひき出し、該金属ナノワイヤを連続的に形成する方法(特開2004−223693号公報)等が挙げられる。溶液中で硝酸銀を還元する方法としては具体的には金属複合化ペプチド脂質から成るナノファイバーを還元する方法(特開2002−266007号公報)や、エチレングリコール中で過熱しながら還元する方法(米国特許出願公開2005−056118号公報)、クエン酸ナトリウム中で還元する方法(Nano Letters 2003 Vol.3,No.5 667−669)等が挙げられる。中でも、エチレングリコール中で加熱しながら還元する方法が最も容易に直線状金属ナノワイヤを入手できるので好ましい。
【0014】
本発明において用いる導光素子の基材は可視光を透過するものであれば特に制限はないが、例えば、ポリメチルメタアクリレート、ポリアクリル酸エステル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ABS樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、ビニルアルコール樹脂、ビニル樹脂、シクロオレフィン系樹脂、天然高分子等の熱可塑性樹脂、オキセタン樹脂、エポキシ樹脂やメラミン樹脂、シリコン樹脂及びこれらの共重合体などが挙げられる。特に透過率の高いポリメチルメタアクリレート、ポリアクリル酸エステル、ポリカーボネートが好ましく、ポリメチルメタアクリレート、ポリアクリル酸エステルがより好ましい。
【0015】
本発明の導光素子は、公知の重合方法、成形方法によって作製することができる。例えば、反射材と重合単量体を含む液体を型に入れてキャスト重合したり、光硬化(光重合)したりする方法が挙げられる。あるいは反射材と基材樹脂を混練してペレット状にした後、押出成形法や射出成形法によって成形する方法が挙げられる。
反射材に大きなせん断力がかかると反射材が変形する可能性があるので、せん断力のかからないキャスト重合法や、光重合法で成形するのが好ましい。
【0016】
本発明において基材樹脂と反射材の比率に特に制限はないが、例えば、導光距離が長いときや、導光素子の端部から再反射させたい場合には反射材の比率を小さくすることが好ましく、導光距離が短いときや、導光体端部から再反射させることなく導光対外に出射したい場合には反射材の比率を大きくすることが好ましい。具体的には、基材樹脂の質量を100質量%とすると、反射材の質量は0.001質量%以上1質量%以下が好ましく、0.01質量%以上0.1質量%以下がより好ましい。
【0017】
本発明の導光素子には光反射材のほかに、本発明の効果を損なわない範囲で顔料などの添加剤を加えることができる。
【0018】
本発明のロッド状の導光素子は、蛍光灯の代わりに線光源装置として使用することができる。また、板状の導光素子を用いたり、ロッド状の導光素子と板状の光反射材を含まない公知の導光板とを組み合わせて用いたりすることにより、面光源装置として使用することができる。
上記面光源装置は液晶ディスプレイのバックライトユニットとして利用することが可能である。
【実施例】
【0019】
<実施例1>
[銀ナノワイヤの調製]
1L3口フラスコにエチレングリコール(和光純薬工業社製)333.9g、塩化ナトリウム(和光純薬工業社製)48ng、トリス(2,4−ペンタンジオネート)鉄(III)(アルドリッチ社製)41ngを投入し160℃に加熱した。
上記混合溶液中にエチレングリコール(和光純薬工業社製)200g、塩化ナトリウム(和光純薬工業社製)29ng、トリス(2,4−ペンタンジオネート)鉄(III)(アルドリッチ社製)25ng、硝酸銀(和光純薬工業社製)2.88gからなる混合溶液とエチレングリコール(和光純薬工業社製)200g、塩化ナトリウム(和光純薬工業社製)2.1mg、トリス(2,4−ペンタンジオネート)鉄(III)(アルドリッチ社製)128ng、ポリビニルピロリドン(Mw.55000 アルドリッチ社製)3.1gからなる溶液を6分間で滴下し3時間攪拌し銀ナノワイヤの分散液を得た。
得られた銀ナノワイヤを走査型電子顕微鏡にて観察した結果を図3および図4に記す。この結果より本実施例に用いた銀ナノワイヤの長軸方向の長さが3μm以上20μm以下であり、短軸方向の長さが100nm以上300nm以下であることが分かった。
【0020】
[導光素子の作製]
得られた銀ナノワイヤ2mg、多官能アクリレート(商品名:KAYARAD DPCA−60 日本化薬株式会社製)10g、光重合開始剤(商品名:DAROCUR(登録商標)1173 チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)50mgを均一になるまで混合し、内径6mmφのガラスピペットに長さ50mmになるよう充填し、充填した状態でガラスピペットの外側から紫外線照射装置(商品名 トスキュア401 ハリソン東芝ライティング社製)を用いて1分間紫外線照射を行った。
冷却後、ガラスピペットを割ってロッド状の導光素子を取り出した。
得られた導光素子にLED(商品名Luxeon(登録商標)III LXHL−DM09 波長:530nm Philips社製)を用いて緑色光を入光させ輝度を測定した(装置名 2次元色分布測定装置 コニカミノルタ センシング株式会社製)。
LEDを発光させた状態で、短軸方向から観察した結果を図5に記す。このとき、この導光素子は長軸方向に垂直な方向から観察したとき最も明るかった。
【0021】
<実施例2>
銀ナノワイヤを20mgにした以外は実施例1と同様の操作を行った。
LEDを発光させた状態で観察した結果、実施例1より入射端面側で明るくなっていたが、この場合も長軸方向に垂直な方向から観察したとき最も明るかった。
【0022】
<比較例1>
反射材の代わりに、光散乱材としてガラス微粒子(平均粒径7μm 商品名:FB−3SDC 電気化学工業株式会社製)を10mg使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。
LEDを発光させた状態で観察した結果、長軸方向に垂直な方向より出射側に傾いた方向から観察したとき最も明るかった。
【0023】
<比較例2>
反射材の代わりに光散乱材としてガラス微粒子(平均粒径7μm 商品名:FB−3SDC 電気化学工業株式会社製)を100mg使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。
LEDを発光させた状態で、短軸方向から観察した結果を図6に示す。このときも、長軸方向に垂直な方向より出射側に傾いた方向から観察したとき最も明るかった。
【0024】
<比較例3>
光反射材を入れなかった以外は実施例1と同様の操作を行った。
LEDを発光させた状態で観察した結果、短軸方向へはほとんど光が出射しなかった。
【0025】
短軸方向への出射性を表1に示す。
長軸方向に対して垂直に光を出射できる場合を○、それ以外の場合を×とした。
【0026】
【表1】

【0027】
実施例1(図5)と比較例2(図6)とを比べると、実施例1では導光素子全面から出射しているが、比較例2では外側からの出射が多いことが判る。この現象は比較例1でも観察された。即ちこの現象は、光散乱材を用いることによって広範囲への散乱が生じることで起こる現象であり濃度によるものではないことが判る。また、実施例1と2においては、いずれも長軸方向に対して垂直に光を出射できており、この現象も用いる光反射材の濃度によらないことが判る。
実施例1と2を比べると実施例2では導光体端部までLED光源の光が到達していなかったが、到達範囲では実施例1より明るかった。このことから、使用する導光体の長さや、端部で再反射させる場合には、最適の光反射材濃度が存在することが判る。
【0028】
実施例1と比較例3を比べると、比較例3ではほとんど光が拡散せず、導光素子の基材に由来して光が反射しているわけではないことが判る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】従来の導光体の出射方向を表す。
【図2】目標とする導光体の出射方向を表す。
【図3】実施例1で得られた銀ナノワイヤの走査型顕微鏡観察結果である。
【図4】実施例1で得られた銀ナノワイヤの走査型顕微鏡観察結果である。
【図5】実施例1の輝度測定結果を表す。数字は輝度(カンデラ)の10倍の値を表す。
【図6】比較例2の輝度測定結果を表す。数字は輝度(カンデラ)の10倍の値を表す。
【符号の説明】
【0030】
1・・・点光源
2・・・導光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも1つの端部から光を入射し、該基材の側面から光を出射する導光素子において、該基材中に金属ナノワイヤが分散していることを特徴とする導光素子。
【請求項2】
金属ナノワイヤが銀ナノワイヤであることを特徴とする導光素子。
【請求項3】
基材が光硬化性樹脂からなることを特徴とする請求項1または2に記載の導光素子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の導光素子と前記導光素子の端部に入射する光を発生する一次光源とを備えた光源装置において、該導光素子がロッド状である線光源装置。
【請求項5】
請求項4に記載の線光源装置を少なくとも一つ備えることを特徴とする面光源装置。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の導光素子と前記導光素子の端部に入射する光を発生する一次光源とを備えた光源装置において、前記導光素子が板状である面光源装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の面光源装置を用いた液晶ディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−277452(P2009−277452A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126565(P2008−126565)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】