説明

導水材および導水材の設置方法

【課題】施工性の向上、環境負荷の低減、材料費の軽減を図り、工費、工期に優れ、土中の集められた水を導いて排出する。
【解決手段】土中の集められた水を導いて排出する導水材1であって、複数の中空の凸部が形成された芯材2を、少なくとも一部に透水性を有する袋状体3に収納した複数枚の板状導水材4からなり、複数枚の板状導水材4を、断面が一箇所から放射状になるように袋状体3の片側端部3a同士を屈曲可能に接続し、複数枚の板状導水材4同士を重ね合わせて、土中に設置されて水を集める排水材を挟み込み可能に形成した。この導水材を対象排水地盤面に設置し、また、導水材を盛土前の対象排水地盤面の壇部切付部に略水平方向に設置し、水を集める排水材40を挟み込み接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、盛土や軟弱地盤や擁壁の背面などに設置して土中の集められた水を導いて排出する導水材および導水材の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軟弱地盤改良工法として、例えば図18乃至図20に示すような載荷重工法を採用する場合があり、図18は載荷重工法の排水処理設備を示す断面図、図18は載荷重工法の排水処理設備を示す平面図、図20は排水処理設備の暗渠配水工の断面図である。
【0003】
この場合の載荷重工法は、軟弱地盤100の間隙水を鉛直方向に排水することを目的として、図18に示すように、軟弱地盤100内に例えば直径10〜60cm程度の砂杭または幅10cm程度のプラスティックボードドレーン(鉛直ドレーン)101を2.0〜2.5m程度の間隔で設置する。これによって、敷砂102の盛土荷重によって鉛直ドレーン101内を地表面まで間隙水が上昇し、この間隙水は、図19に示すように、サンドマット(水平排水工)によって暗渠排水路110まで導かれ、さらにこの暗渠排水路110によって縦排水井戸釜場111まで誘導される。
【0004】
この暗渠排水路110としては、図20に示すように、素掘りドレンチ110aによる排水(図20(a))、サンドマット110bの下に敷いた有孔管110cによる排水(図20(b))、サンドマット110bの下に敷いた砕石110dによる排水(図20(c))などが用いられている。
【0005】
また、切盛境の盛土・地山への貼付け盛土の排水処理設備として、例えば図21および図22に示すものがあり、図21は補強土壁背面排水断面図、図22は排水路の断面図である。例えば、切盛境200への貼付け盛土201は、盛土201内への水の浸入による盛土201の強度不足が原因となり、すべり破壊を生じることがある。このため、切盛境200には盛土201への雨水や湧水の浸入を防ぐ目的で、掘削面もしくは地山に沿って砕石等を用いた排水工210を設け、土中集水管211に導き排水する。また、盛土基底部201aには盛土201内の間隙水圧の上昇を防ぐため、排水層212を設け、さらに盛土201内余剰水の速やかな排水のため、盛土201内に適当な間隔(3m程度高さごと)で排水層213を設けている。
【0006】
また、土中の水分を排出する排水材としては、例えば両面に多数の突起が交互に突出する凹凸樹脂板を各筒状体に内装したものを横に連続して接続することにより面状排水材を構成し、筒状体を通して内部に流入した水を排水させるもの(特許文献1)、また従来のサンドマットに代わる水平ドレーンとして、導水・排水機能を有し、地盤の歪み変形にも追随可能である平板状の水平ドレーンを複数並べて一体に形成したもの(特許文献2)などが開示されている。
【特許文献1】特開平11−172666
【特許文献2】特開平8−189300
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の排水処理設備では、鉛直ドレーンの砂杭工、サンドマット工、暗渠排水工すべての工種において大型の重機が必要であることから手間がかかり、工期が長いこと、施工時の危険性が高いこと、工事費が高いことなどの問題点がある。
【0008】
また、従来の排水処理設備で使用されている材料は、自然材料である砂や砕石が用いられていることから、これらを採取するために自然破壊の原因となっている。しかも、材料使用量が多量であるため、車両に積載して運搬する時に非常に多くの環境負荷を与えている。
【0009】
また、従来の排水処理設備で使用されている材料の砂や砕石は、目詰まりを起こしやすく、恒久的な効果が得られない場合ある。さらに、暗渠排水に用いる高強度有孔管では曲線施工は困難であり、使用場所が制限されることがある。
【0010】
さらに、特許文献1のものは、各筒状体の接合部で面状排水材は屈曲自在となっているが、横に並べて連続して接続したものであり、屈曲自在とすることで例えばトンネルのように裏面が湾曲していたり、敷設面に凹凸等があっても面状排水材を裏面や敷設面に沿って設置しやすいようにした構成であり、屈曲自在とすることが土中に設置されて水を集める排水材を挟み込み可能にするものではない。
【0011】
また、特許文献2のものは、各水平ドレーンが外被材の端辺部分を互いに縫い合わせて連結部として連結した水平ドレーン連結体であり、その輸送、保管の際には、連結部で曲げて折り畳んでおくことができるが、例えば軟弱地盤改良のため施工する場合には、粘性土表面に水平ドレーン連結体を複数組並べ、粘性土中の鉛直ドレーンの上端を折り曲げて水平ドレーンの下面に密着させ、また水平ドレーンの連結体を上下に重ね合わせて施工する場合には、各連結体における水平ドレーン連結部の位置を上下でずらせた状態で重ね合わせ、また広い範囲に水平ドレーンを敷設する場合には、水平ドレーンの連結体を互いに交差させて面状に敷設しており、連結部で曲げるようにしたことが、土中に設置されて水を集める排水材を挟み込み可能にするものではない。
【0012】
この発明は、以上の点を考慮してなされたもので、施工性の向上、環境負荷の低減、材料費の軽減を図り、工費、工期に優れ、土中の集められた水を導いて排出することが可能な導水材および導水材の設置方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成した。
【0014】
請求項1に記載の発明は、土中の集められた水を導いて排出する導水材であって、
複数の中空の凸部が形成された芯材を、少なくとも一部に透水性を有する袋状体に収納した複数枚の板状導水材からなり、
前記複数枚の板状導水材を、断面が一箇所から放射状になるように前記袋状体の片側端部同士を屈曲可能に接続し、
前記複数枚の板状導水材同士を重ね合わせて、土中に設置されて水を集める排水材を挟み込み可能に形成したことを特徴とする導水材である。
【0015】
請求項2に記載の発明は、前記2枚の板状導水材からなり、
前記2枚の板状導水材は、前記袋状体の片側端部同士を接続して開閉可能であり、
前記板状導水材同士を重ね合わせて前記排水材を挟み込み可能に形成したことを特徴とする請求項1に記載の導水材である。
【0016】
請求項3に記載の発明は、土中の集められた水を導水材により導いて排出する導水材の設置方法であり、
請求項1又は請求項2に記載の導水材を対象排水地盤面に設置し、
前記導水材の重ね合わせた前記板状導水材同士間に、土中に設置されて水を集める排水材を挟み込み接続することを特徴とする導水材の設置方法である。
【0017】
請求項4に記載の発明は、土中の集められた水を導水材により導いて排出する導水材の設置方法であり、
請求項1又は請求項2に記載の導水材を盛土前の対象排水地盤面の壇部切付部に略水平方向に設置し、
交差する、土中に設置されて水を集める排水材を、略上下方向および/または略水平方向に配置して端部を導水材位置近辺で切断し、
前記導水材の重ね合わせた板状導水材同士間に、前記土中に設置されて水を集める排水材を挟み込み接続することを特徴とする導水材の設置方法である。
【発明の効果】
【0018】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0019】
請求項1に記載の発明では、複数枚の板状導水材を、断面が一箇所から放射状になるように袋状体の片側端部同士を屈曲可能に接続し、複数枚の板状導水材同士を重ね合わせ可能に一体に形成した導水材であり、この導水材を盛土や軟弱地盤や擁壁の背面などに設置し、この導水材の複数枚の板状導水材同士を重ね合わせて、土中に設置されて水を集める排水材を挟み込み接続することで、土中に設置された排水材によって集めた水を導水材により導いて排出することができる。また、導水材には、複数の中空の凸部が形成された芯材を、少なくとも一部に透水性を有する袋状体に収納した複数枚の板状導水材を用いており、導水材の使用材料が全て非常に軽量な板状導水材であることから、広範囲の排水設備を人力で行うことができ、施工性が飛躍的に改善され、施工性の向上、環境負荷の低減、材料費の軽減を図り、工費、工期に優れた排水処理を可能とすることができる。また、導水材を暗渠排水材として用いる場合には、治具の使用や縫製により複数枚の板状導水材を使用できるため、大流量の排水が可能であり、かつ砕石や砂などの自然材料を使用する必要がないため、環境負荷が小さい。また、流入水や排水の方向や水量によって導水材の位置や方向を任意に設置でき、しかも導水材は、切断や継足し等の加工が容易であり、この導水材は容易に複数枚の板状導水材を一体化して設置することができ施工が非常に容易である。
【0020】
請求項2に記載の発明では、2枚の板状導水材は、袋状体の片側端部同士を接続して開閉可能であり、この導水材を盛土や軟弱地盤や擁壁の背面などに設置し、この導水材の2枚の板状導水材同士を重ね合わせて、土中に設置されて水を集める排水材を挟み込み接続することができる。このように、導水材は、2枚の板状導水材が片側端部同士を屈曲して開閉可能になっており、土中に設置されて水を集める排水材を挟み込み咥え込むようにして簡単かつ確実に接続することができる。
【0021】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は請求項2に記載の導水材を対象排水地盤面に設置し、導水材の重ね合わせた板状導水材同士間に、土中に設置されて水を集める排水材を挟み込み接続することで、盛土や軟弱地盤の背面などに設置し、排水材により土中の水を導水材に導き、この導水材により土中の水を導いて排出することができる。
【0022】
請求項4に記載の発明では、請求項1又は請求項2に記載の導水材を盛土前の対象排水地盤面の壇部切付部に略水平方向に設置し、交差する、土中に設置されて水を集める排水材を、略上下方向および/または略水平方向に配置して端部を導水材位置近辺で切断し、導水材の重ね合わせた板状導水材同士間に、土中に設置されて水を集める排水材を挟み込み接続することで、擁壁の背面などに設置し、排水材により盛土の土中の水を壇部切付部に設置した導水材に導き、この導水材により土中の水を導いて排出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、この発明の導水材および導水材の設置方法の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。
[導水材]
(第1の実施の形態)
この導水材の第1の実施の形態を、図1乃至図8に基づいて説明する。図1は導水材の斜視図、図2は導水材に土中に設置されて水を集める排水材を挟み込み接続して設置される状態を示す図、図3は導水材の作成を説明する図、図4は導水材の使用状態を説明する図、図5は板状導水材の断面図、図6は板状導水材の斜視図、図7は芯材の一部の平面図、図8は芯材の一部の側面図である。
【0024】
この導水材1は、図1および図2に示すように、複数の中空の凸部が形成された芯材2を、透水性を有する袋状体3に収納した2枚の板状導水材4からなっている。2枚の板状導水材4は、袋状体3の片側端部3a同士を接続して開閉可能であり、板状導水材4同士を重ね合わせて閉じ排水材40を挟み込み可能に一体に形成されている。
【0025】
この板状導水材4は、例えば厚さが5〜10mm程度、幅が10〜50cmm程度で、長さが2〜5m程度のものを用いるが、この厚さ、幅、長さは使用目的や場所などによって決まり特に限定されない。使用時に、板状導水材4の長さが足りない場合には接続し、また長くなる場合には切断して使用する。
【0026】
この導水材1の作成は、図3に示すように、2枚の板状導水材4を重ねて、それぞれの袋状体3の長手方向の片側端部3a同士を重ね合わせ縫製接合や治具10によって接続しており、2枚の板状導水材4は片側端部3a同士が屈曲して開閉可能である。また、2枚の板状導水材4を横に並べ、それぞれの袋状体3の長手方向の片側端部3a同士を重ね合わせ縫製接合や治具10によって接続し、2枚の板状導水材4の片側端部3a同士を屈曲して重ね合わせてた状態にし、2枚の板状導水材4を開閉可能にしてもよい。
【0027】
導水材1は、図3に示すように、2枚の板状導水材4が閉じた状態であり、図4に示すように、盛土や軟弱地盤や擁壁の背面などに設置し、上側の1枚の板状導水材4の片側端部3aに対して他方側を持ち上げて片側端部3aを屈曲させて開き、下側の1枚の板状導水材4の上に土中に設置されて水を集める排水材40の端部を置き、上側の1枚の板状導水材4を下げて閉じ土中に設置されて水を集める排水材40を挟み込み接続する。
【0028】
この導水材1は、袋状体3の片側端部3a同士を屈曲可能に接続することで、2枚の板状導水材4が片側端部3a同士を屈曲して開閉可能になっている。したがって、この導水材の2枚の板状導水材4同士を重ね合わせて閉じることで、片側端部3aに対して他方側から土中に設置されて水を集める排水材40を咥え込むようにして簡単かつ確実に接続することが可能であり、土中に設置された排水材40によって集めた水を導水材1により確実に導いて排出することができる。
【0029】
2枚の板状導水材4は、図5乃至図8に示すように同様に構成され、芯材2は帯状に長く形成され、袋状体3は筒状に形成され、袋状体3は芯材2の長手方向の外周側部を囲むように覆い、袋状体3の両端部3aは開口している。この袋状体3の両端部3aは、開口しないように閉じ、芯材2全体を収納するようにしても良い。
【0030】
芯材2は、中空の凹部2a及び中空の凸部2bが交互に連続したシート断面を有する。中空の凹部2a及び中空の凸部2bの製造は、一つ置きに配置した丸型(円柱形)の棒を、暖めて柔らかくした樹脂板に、裏表の配置をずらして両面から押し付けて成形し、裏と表は全く同じ中空の凹部2a及び中空の凸部2bであり、芯材2は裏表の区別はない。
【0031】
即ち、載頭錘形状の中空の凹部2a及び中空の凸部2bが、表裏面に交互に縦横の並びが揃った配置に設けられており、表面又は裏面からみれば、中空の凹部2aまたは中空
の凸部2bは千鳥格子状配置となる。中空の凹部2aまたは中空の凸部2bは、中空によって導水路5が形成される。
【0032】
芯材2は、中空の凹部2a及び中空の凸部2bを千鳥格子状に配置することにより、図7に示すように、隙間2cも千鳥格子状に配置され、隙間2cが導水路5を形成するので、流れる水は常にニ方向に向かうことができ、流れやすい。更には、芯材2は、可撓性を付与することで、折り曲げたり、丸めて巻き取ることができ、取扱い性の点において有効である。
【0033】
芯材2は、中空の凹部2a及び中空の凸部2bを含めた形態、寸法、位置関係については特に制限されず、特に、中空の凹部2a及び中空の凸部2bの形状、配置形態、寸法等を特に限定するものではない。
【0034】
例えば、中空の凹部2a及び中空の凸部2bの形状は円錘台、楕円錘台、多角錘台等でもよく、また底部2a1及び頂部2b1は図面に示した平坦なものに限らず曲面、角面等であってもよい。また中空の凹部2a及び中空の凸部2bの配置形態、寸法等も自由に選定できる。
【0035】
芯材2の材料としては、硬質塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、ABS等の硬質の熱可塑性樹脂等を使用することができ、曲げなどで変形できれば等特に限定するものではない。使用する芯材2の厚さは、強度、可撓性の点から、0.1〜3mmのものが好ましく、ロール可能な厚みとし、同じくロール可能な袋状体3と組み合わせる。
【0036】
一方、袋状体3は、少なくとも一部に透水性を有し、例えば親水性布帛を用いる。疎水性布帛では、水に対する濡れが極めて悪いため、表面張力により水の浸透を妨げ、布帛内にエアーを満留せしめ、透水性不良をおこす。従って、疎水性繊維材料を使用の場合は、予め糸段階あるいは布帛段階で、高級脂肪酸アルカリ塩類、第4級アンモニウム塩類、ホポリエチレングリコールアルキルエーテル、高級アミンハロゲン酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸エステル塩等の界面活性剤で処理して、親水性を付与して用いる。
【0037】
従って、使用する繊維材料としては、親水性繊維、疎水性繊維に限定するものではなく、綿、麻、羊、毛等の天然繊維、金属、ガラス、炭素系等の無機繊維、セルロース、タンパク質系等の再成繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリル、ポリヒ゛ニルアルコール系等の合成繊維等を単独、あるいは複合して用いることができる。好ましくは、長期使用に耐えるために合成繊維等の耐久生繊維材料を用いる。また、これらの繊維としては、長繊維糸、紡績糸、単繊維糸等があり、形状も通常の円形断面糸、異型断面糸、発泡糸、コンジュゲート糸等があり、使用上、特に限定するものではなく、それらの繊維を単独あるいは複合して使用でき、又、物理加工、化学加工を施した加工糸として使用してもよい。
(第2の実施の形態)
この導水材の第2の実施の形態を、図9乃至図11に基づいて説明する。図9は導水材の斜視図、図10は導水材に土中に設置されて水を集める排水材を挟み込み接続して設置される状態を示す図、図11は導水材の作成を説明する図である。
【0038】
この導水材200は、第1の実施と同じように構成した導水材1を2組用いている。すなわち、この導水材200は、袋状体3の片側端部3a同士を接続して開閉可能になした導水材1を2組用い、この2組のそれぞれの導水材1を背中合わせに重ねて接続している。このようにして、この導水材200は、複数枚の板状導水材4を、断面が一箇所から放射状になるように袋状体3の片側端部3a同士を屈曲可能に接続し、複数枚の板状導水材4同士を重ね合わせて土中に設置されて水を集める排水材40を挟み込み可能に一体に形成している。
【0039】
この導水材200の作成は、図11(a)に示すように、第1の実施の形態のように構成した導水材1を2組用いる。そして、図11(b)に示すように、2組の導水材1を背中合わせに重ね、それぞれの導水材1の袋状体3の長手方向の片側端部3a同士を重ね合わせ縫製接合や治具11によって接続する。
【0040】
この導水材200は、それぞれの導水材1の板状導水材4同士が片側端部3a同士を屈曲して開閉可能になっており、図10(a)に示すように、導水材200を略水平な盛土や軟弱地盤や擁壁の背面などに沿わせて設置し、それぞれの導水材1の板状導水材4同士の間に、土中に設置されて水を集める排水材40の端部を咥え込むようにして簡単かつ確実に接続することができる。また、図10(b)に示すように、導水材200を盛土前の対象排水地盤面の壇部切付部などに沿わせて設置し、それぞれの導水材1の板状導水材4同士の間に、略水平な土中に設置されて水を集める排水材40の端部を咥え込むようにして簡単かつ確実に接続することができ、傾斜して土中に設置されて水を集める排水材40の端部を咥え込むようにして簡単かつ確実に接続することができる。
(第3の実施の形態)
この導水材の第3の実施の形態を、図12乃至図14に基づいて説明する。図12は導水材の斜視図、図13は導水材に土中に設置されて水を集める排水材を挟み込み接続して設置される状態を示す図、図14は導水材の作成を説明する図である。
【0041】
この導水材300は、第1の実施の形態のように構成した導水材1を3組用いる。すなわち、この導水材300は、袋状体3の片側端部3a同士を接続して開閉可能になした導水材1を3組用い、この3組のそれぞれの導水材1を背中合わせに重ねて接続している。このようにして、この導水材300は、複数枚の板状導水材4を、断面が一箇所から放射状になるように袋状体3の片側端部3a同士を屈曲可能に接続し、複数枚の板状導水材4同士を重ね合わせて土中に設置されて水を集める排水材40を挟み込み可能に一体に形成している。
【0042】
この導水材300の作成は、図14(a)に示すように、第1の実施の形態のように構成した導水材1を3組用いる。そして、図14(b)に示すように、2組の導水材1を横に並べて背中合わせに重ね、それぞれの導水材1の一方側の袋状体3の長手方向の片側端部3a同士を重ね合わせ縫製接合や治具13によって接続する。そして、図14(c)に示すように、残りの1組の導水材1を、接続した2組の導水材1に対して背中合わせになるようにして袋状体3の長手方向の片側端部3a同士を重ね合わせ縫製接合や治具14によって接続する。
【0043】
この導水材300は、それぞれの導水材1の板状導水材4同士が片側端部同士を屈曲して開閉可能になっており、図13(a)に示すように、導水材300を盛土前の水平の地山への貼付け盛土などに沿わせて設置し、それぞれの導水材1の板状導水材4同士を開閉して板状導水材4同士の間に、土中に設置されて水を集める排水材40の端部を咥え込むようにして簡単かつ確実に接続することができる。また、図13(b)に示すように、導水材200を盛土前の対象排水地盤面の傾斜などに沿わせて設置し、それぞれの導水材1の板状導水材4同士の間に、略水平な土中に設置されて水を集める排水材40の端部を咥え込むようにして簡単かつ確実に接続することができ、また傾斜して土中に設置されて水を集める排水材40の端部を咥え込むようにして簡単かつ確実に接続することができる。
【0044】
この第1の実施の形態の導水材1は、板状導水材4を2枚用い、第2の実施の形態の導水材200は、第1の実施の形態の導水材1を2組用い、第3の実施の形態の導水材300は、第1の実施の形態の導水材1を3組用いているが、これに限らず使用目的に応じて第1の実施の形態の導水材1を複数組用いることができる。
[導水材の設置方法]
(第1の実施の形態)
この導水材の設置方法の第1の実施の形態を、図15に基づいて説明する。図15は軟弱地盤対策として盛土荷重や大気圧によって圧密促進工法を行う場合の実施の形態を示す図である。
【0045】
この実施の形態では、軟弱地盤30の水平の対象排水地盤面30a上に第2の実施の形態の導水材200を設置する。この導水材200は、図9乃至図11に示すものであり、重ね合わせた板状導水材4同士間に、土中に設置されて水を集める水平の排水材40の端部を挟み込み接続する。この水平の排水材40は、水平の対象排水地盤面30a上に所定間隔で設置される。
【0046】
水平の排水材40の端部は、導水材200の長手方向に沿って所定間隔で両側に重ね合わせた板状導水材4同士間に挟み込み接続され、この水平の排水材40に沿って所定間隔で軟弱地盤30内に複数の鉛直排水材41を打設する。この鉛直排水材41は、例えば直径5cmのサンドレーンと同等以上の能力を有する板状のドレーン材料(プラスティックボードドレーン等)を使用する。この鉛直排水材41の上端部41aを、水平の排水材40に接続し、水平の対象排水地盤面30a上に盛土45を設置し、軟弱地盤30に盛土荷重や大気圧によって圧密促進工法を行う。これによって、鉛直排水材41を上昇してくる間隙水は、水平の排水材40を通して導水材200へ流入して集められ、土中の水は導水材200を用いて導いて盛土45の範囲外へ排出される。
【0047】
また、軟弱地盤30の端部において水平の対象排水地盤面30a上に第1の実施の形態の導水材1を設置することができる。この導水材1は、図1乃至図8に示すものであり、重ね合わせた板状導水材4同士間に、水平の排水材40の端部を挟み込み接続する。この導水材1では、一方側から水平の排水材40によって土中の水が集められ、この水は導水材1によって導いて盛土45の範囲外へ排出される。
(第2の実施の形態)
この導水材の設置方法の第2の実施の形態を、図16に基づいて説明する。図16は盛土前の対象排水地盤面に設置する場合の実施の形態を示す図である。
【0048】
この実施の形態では、盛土前の水平の地山への貼付け盛土に適用する場合であり、盛土前の地山50の対象排水地盤面50aに、第3の実施の形態の導水材300を設置する。すなわち、導水材300は、図12乃至図14に示すものであり、水平の2組の導水材1を水平の対象排水地盤面50a上に設置し、重ね合わせた板状導水材4同士間に、土中に設置されて水を集める水平の排水材40の端部を挟み込み接続する。
【0049】
そして、残りの導水材1の板状導水材4同士を鉛直方向に曲げて重ね合わせ、この重ね合わせた板状導水材4同士間に、鉛直の排水材40を挟み込み接続する。このように、盛土前の地山50の対象排水地盤面50aに導水材300を設置し、対象排水地盤面50a上に盛土55を行う。
【0050】
これによって、盛土55中の鉛直の排水材40を下降してくる間隙水は、鉛直の排水材40を通して導水材300へ流入して集められる。同様に、盛土55中の下降してくる間隙水は、水平の排水材40を通して導水材300へ流入して集められ、土中の水は導水材300により導かれて盛土55の範囲外へ排出できる。
【0051】
この導水材の設置方法の第1および第2の実施の形態では、導水材1,200,300を盛土や軟弱地盤の背面などに設置し、排水材40により集めた土中の水を導いて排出することができ、例えば、弱地盤対策として、盛土荷重や大気圧によって圧密促進工法を行う場合、また、プレロード工法に採用する場合に、地盤の沈下量が大きく、塩ヒ゛管等では破損や接続部抜け落ちの恐れがある場合などに用いることができる。
(第3の実施の形態)
この導水材の設置方法の第3の実施の形態を、図17に基づいて説明する。図17は盛土前の対象排水地盤面に設置する場合の実施の形態を示す図である。
【0052】
この導水材の設置方法の第3の実施の形態は、地山や切土への貼付け盛土等に適用する場合であり、第2の実施の形態の導水材200を盛土前の対象排水地盤面70の壇部切付部71に略水平方向に設置する。この導水材200は、図9乃至図11に示すものを用い、2組の導水材1の重ね合わせた板状導水材4を壇部切付部71に沿わせて屈曲して設置し、この板状導水材4と交差する排水材40を対象排水地盤面70に沿って略上下方向に配置する。
【0053】
この交差する排水材40の端部を導水材位置近辺で切断し、重ね合わせた板状導水材4同士の間に、排水材40の端部を挟み込み接続し、対象排水地盤面70に盛土90を行う。この盛土90を行うときに、盛土90が壇部切付部71と水平な地盤となるときに、水平な地盤上に排水材42を設置し、この排水材42の端部を、重ね合わせた板状導水材4同士の間に挟み込み接続する。
【0054】
この実施の形態では、導水材200を盛土前の対象排水地盤面70の壇部切付部71に略水平方向に設置することで、排水材40,42により盛土90の土中の水を壇部切付部71に設置した導水材200に集め、この土中の水を導水材200により導いて排出することができる。例えば、地山や切土への貼付け盛土等に適用する場合、盛土90内に進入する水によって安定性低下が問題となる盛土90を行う場合などに用いることができる。
【0055】
この導水材の設置方法では、導水材は、複数の中空の凸部が形成された芯材2を、少なくとも一部に透水性を有する袋状体3に収納した複数枚の板状導水材4を用いたものであり、使用材料が全て非常に軽量な板状導水材4であることから、広範囲の排水設備を人力で行うことができ、施工性が飛躍的に改善され、施工性の向上、環境負荷の低減、材料費の軽減を図り、工費、工期に優れた排水処理を可能とすることができる。
【0056】
また、導水材を暗渠排水材として用いる場合には、治具の使用や縫製により複数枚の板状導水材4を複合的に使用できるため、大流量の排水が可能であり、かつ砕石や砂などの自然材料を使用する必要がないため、環境負荷が小さい。また、流入水や排水の方向や水量によって導水材の位置や方向を任意に設置でき、しかも導水材は、切断や継足し等の加工が容易であり、この導水材は容易に複数枚の板状導水材4を一体化して設置することができ、施工が非常に容易である。また、導水材は、芯材2を、袋状体3に収納した複数枚の板状導水材4を用い、フレキシフ゛ルな材料から構成されており、地盤の不陸や沈下等の変形に容易に追随でき、恒久的に有効な排水能力を有する。
【産業上の利用可能性】
【0057】
この発明は、盛土や軟弱地盤や擁壁の背面などに設置して土中の集められた水を導いて排出する導水材および導水材の設置方法に適用可能であり、施工性の向上、環境負荷の低減、材料費の軽減を図り、工費、工期に優れ、土中の集められた水を導いて排出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】第1の実施の形態の導水材の斜視図である。
【図2】導水材に土中に設置されて水を集める排水材を挟み込み接続して設置される状態を示す図である。
【図3】導水材の作成を説明する図である。
【図4】導水材の使用状態を説明する図である。
【図5】板状導水材の断面図である。
【図6】板状導水材の斜視図である。
【図7】芯材の一部の平面図である。
【図8】芯材の一部の側面図である。
【図9】第2の実施の形態の導水材の斜視図である。
【図10】導水材に土中に設置されて水を集める排水材を挟み込み接続して設置される状態を示す図である。
【図11】導水材の作成を説明する図である。
【図12】第3の実施の形態の導水材の斜視図である。
【図13】導水材に土中に設置されて水を集める排水材を挟み込み接続して設置される状態を示す図である。
【図14】導水材の作成を説明する図である。
【図15】軟弱地盤対策として盛土荷重や大気圧によって圧密促進工法を行う場合の実施の形態を示す図である。
【図16】盛土前の対象排水地盤面に設置する場合の実施の形態を示す図である。
【図17】盛土前の対象排水地盤面に設置する場合の実施の形態を示す図である。
【図18】載荷重工法の排水処理設備を示す断面図である。
【図19】載荷重工法の排水処理設備を示す平面図である。
【図20】排水処理設備の暗渠配水工の断面図である。
【図21】補強土壁背面排水断面図である。
【図22】排水路の断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1,200,300 導水材
2 芯材
2a 凹部
2b 凸部
3 袋状体
3a 袋状体3の片側端部
4 板状導水材
5 導水路
10,11,13,14 縫製接合や治具
30 軟弱地盤
30a,50a,70 対象排水地盤面
40、42 排水材
41 鉛直排水材
45、55,90 盛土
50 地山

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土中の集められた水を導いて排出する導水材であって、
複数の中空の凸部が形成された芯材を、少なくとも一部に透水性を有する袋状体に収納した複数枚の板状導水材からなり、
前記複数枚の板状導水材を、断面が一箇所から放射状になるように前記袋状体の片側端部同士を屈曲可能に接続し、
前記複数枚の板状導水材同士を重ね合わせて、土中に設置されて水を集める排水材を挟み込み可能に形成したことを特徴とする導水材。
【請求項2】
前記2枚の板状導水材からなり、
前記2枚の板状導水材は、前記袋状体の片側端部同士を接続して開閉可能であり、
前記板状導水材同士を重ね合わせて前記排水材を挟み込み可能に形成したことを特徴とする請求項1に記載の導水材。
【請求項3】
土中の集められた水を導水材により導いて排出する導水材の設置方法であり、
請求項1又は請求項2に記載の導水材を対象排水地盤面に設置し、
前記導水材の重ね合わせた前記板状導水材同士間に、土中に設置されて水を集める排水材を挟み込み接続することを特徴とする導水材の設置方法。
【請求項4】
土中の集められた水を導水材により導いて排出する導水材の設置方法であり、
請求項1又は請求項2に記載の導水材を盛土前の対象排水地盤面の壇部切付部に略水平方向に設置し、
交差する、土中に設置されて水を集める排水材を、略上下方向および/または略水平方向に配置して端部を導水材位置近辺で切断し、
前記導水材の重ね合わせた板状導水材同士間に、前記土中に設置されて水を集める排水材を挟み込み接続することを特徴とする導水材の設置方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2009−209571(P2009−209571A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52940(P2008−52940)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(303056368)東急建設株式会社 (225)
【出願人】(500131985)サントップエンジニア株式会社 (5)
【Fターム(参考)】