導波路層を備えるマイクロ音響デバイス
【課題】周波数の温度係数および/または導波路特性に関して改良された、導波路層およびこれに隣接する外套層を有するマイクロ音響デバイスを提供する。
【解決手段】第1の音響波速度VLをもつ導波路層WLと、該導波路層に直接隣接し、第2の音響波速度VM1を有する第1の外套層M1とを有しており、導波路で音響波を励起するために電極E1を備えており、波速度について式VL<VM1が成り立っており、導波路層は異常熱機械挙動をもつ成分を含むガラスであり、導波路層WLは二酸化ゲルマニウム、カルコゲナイドガラス、またはメタリン酸亜鉛を成分として有している。
【解決手段】第1の音響波速度VLをもつ導波路層WLと、該導波路層に直接隣接し、第2の音響波速度VM1を有する第1の外套層M1とを有しており、導波路で音響波を励起するために電極E1を備えており、波速度について式VL<VM1が成り立っており、導波路層は異常熱機械挙動をもつ成分を含むガラスであり、導波路層WLは二酸化ゲルマニウム、カルコゲナイドガラス、またはメタリン酸亜鉛を成分として有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導波路層およびこれに隣接する外套層を有するマイクロ音響デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえばSAWデバイス(SAW=surface acoustic wave)のように音響波により作動するデバイスの周波数規定特性は、多くの場合、温度に対する依存性を示す。たとえばSAWデバイスの中心周波数の温度係数(TCF)は、典型的にはたとえば40ppm/Kである。その理由は、温度が上昇すると通常は基板の熱膨張が起こり、それがインターディジタル式のコンバータ構造で電極間隔の拡大につながることにある。この間隔は、コンバータおよびこれに伴ってSAWデバイスの中心周波数を規定するので、それによって波長も長くなり、中心周波数が下がっていく。しかし熱膨張とは音速の変化も結びついている。温度につれて圧電材料の特性も変化するからである。これに加えて、通常用いられる大半の圧電性ウェーハ材料は強い異方性を示すとともに、その特性の結晶軸依存的な温度応答性を有している。
【0003】
特許文献1には、特に共振周波数の温度応答性を低減するため(TK補償)のさまざまな方策を組み合わせた、音響波により作動するデバイスが提案されている。このデバイスは上面に導電性のデバイス構造を有するとともに、下面に補償層を有しており、この補償層は、機械的な張力が発生するように、または温度変化が生じたときに生成されるように、基板と結合されている。デバイス構造の上には、比較的厚いSiO2層が配置されている。この解決法の欠点は、必要な電極の反射率が重い電極によってしか得られないことにある。温度応答性補償をする方策をこのように組み合わせた場合でさえ、完全なTK補償は実現することができない。
【0004】
マイクロ音響デバイスでは、厚い電極または重い電極によって、たとえばアルミニウムよりも重い金属によって、改善された音波の導波を実現することができる。しかしそれに適した金属は、中心周波数の温度係数(TCF)を上昇させ、そのようにして全体的にTCFを上昇させるという欠点を有している。厚い電極を製造するときには、特性の広いばらつきが生じる。しかもこのような電極は高い反射性を示し、被覆層でコーティングするのが困難であり、その場合、被覆層がキャビティを内包する傾向があり(空孔形成)、平坦化するのも難しい。これまでに知られている構造では、重い電極は圧電材料との境界面に音響波エネルギーを結合する。それによって著しく高い割合の音響エネルギーがこの電極内に存在し、このことは出力適合性における問題につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7589452号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、周波数の温度係数および/または導波路特性に関して改良された、導波路層およびこれに隣接する外套層を有するマイクロ音響デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1の構成要件を備えるマイクロ音響デバイスによって解決される。本発明の好ましい実施形態は、その他の請求項から明らかとなる。
【0008】
このマイクロ音響デバイスは、第1の音響波速度VLをもつ導波路層を含む導波路を有している。導波路層に直接隣接して、第2の音響波速度VM1を有する第1の外套層が配置されている。導波路層で音響波を励起するために、電極が設けられている。音響波を導波路層の内部で導波するために、波速度について式VL<VM1が成り立つ。導波路層は、異常熱機械挙動を有する材料を成分の1つとして有するガラスを含んでいる。
【0009】
異常熱機械挙動をもつ一連の材料が知られているが、そのうち、これまでは結晶質の、非晶質の、またはガラス状のSiO2だけがマイクロ音響デバイスで適用されている。そこで、異常熱機械特性を有し、ガラス状の態種で使用することができる、または導波路の導波路層としての役目をするガラスに埋設することができる、新たな材料が提案される。このような材料により、温度に起因する周波数シフトが部分的または全面的に補償されるマイクロ音響デバイスを得ることができる。
【0010】
二酸化ゲルマニウム、カルコゲナイドガラス、またはメタリン酸亜鉛を成分として含む導波路層が提案される。このような新規の材料は、導波路層の導波路特性を改変し、特に最適化することを可能にする。温度補償と改善された導波路特性とを有する導波路層は、導波路層の熱機械挙動に関わりなく、中心周波数の温度係数が改善されたマイクロ音響デバイスをもたらす。改善された導波路では高い波割合が導波路の内部で伝搬し、その結果、その熱機械特性が、劣った導波路の場合よりも強く音響波に影響を及ぼすからである。
【0011】
第1の外套層は、圧電層または圧電基板であるのが好ましい。圧電層は非圧電基板の上に、特に結晶質の基板の上に、特に半導体基板の上に塗布されていてよい。圧電基板は圧電結晶であるのが好ましく、ないしは、圧電単結晶から断裁されたウェーハであるのが好ましい。
【0012】
中心周波数の温度定数の補償効果が改善された導波路層は、たとえば二酸化ゲルマニウムを主成分として含んでいる。二酸化ゲルマニウムをベースとするガラスは、これまで補償層として知られてきた二酸化ケイ素層よりも高い密度を有しており、したがって、外套層ないし圧電基板における高い質量負荷につながる。高い質量負荷は、圧電基板または圧電層の上の導波路の導波路特性にとって、高い質量負荷が圧電基板または圧電層の表面で音響波の、特に音響せん断波の、改善された導波を引き起こし、せん断波が基板の容積部へ潜るのを防止するという意味で好ましい。導波路層が公知の導波路よりも高い質量負荷を生成する導波路は、波が伝搬するときの低い損失につながる。これに加えて材料内での音響波速度も、高い質量負荷によって低減される。外套層が変わらないとき、ないしは所与の外套層のとき、導波路および外套層の内部での音響波速度に関する高い差異は、改善された導波路特性につながる。
【0013】
二酸化ゲルマニウム含有ガラスの薄い層により、SiO2からなる導波路層と同じ導波路特性を具体化することができる。薄い層は製造のときに短いプロセス時間しか必要とせず、したがって、特に層厚均等性や層厚管理に関して少ない生産変動を示す。
【0014】
改善された導波路特性により、薄くて軽い電極の使用も有意義に可能となる。それにより、厚い電極および/または重い電極によって従来は甘受せざるを得なかったあらゆる問題が回避される。改善された導波により、およびゲルマニウム含有のガラス層を厚く構成することが可能なことにより、SiO2導波路層で従来実現されてきたTK補償よりも明らかに良好である強力なTK補償が可能である。1つの実施形態では、導波路層は酸化ゲルマニウム含有のガラスを含んでいる。二酸化ゲルマニウムは優れたガラス形成剤であり、ガラスの状態を構成するためにいかなる添加物も必要としない。しかしながら、特にガラスの流動特性および溶融特性を規定ないし改質するガラス形成剤および/またはその他の通常のガラス添加物を含んでいるガラスを、導波路層が含んでいることも可能である。二酸化ゲルマニウム含有のガラスまたは主成分が正常熱機械挙動をもつ材料を含んでいるその他のガラスのための、このようなガラス形成剤および/またはガラス添加物は、たとえば、B2O3,SiO2,P2O5,As2O3,Sb2O3,In2O3,Sn2O3,PbO2、Li2O,CaO,Na2O,K2O,MgO,Rb2O,Cs2O,SrO,TeO2,SeO2,MoO2,WO3,BiO3,Al2O3,BaO,V2OおよびSO3から選択される。
【0015】
1つの実施形態では、導波路層は主成分としてカルコゲナイドまたはメタリン酸亜鉛を含んでいる。これら両方の材料により、導波路層として使用したときにSiO2に比べて高い質量負荷を生起するガラスを得ることができる。それと同時に、カルコゲナイドガラスやメタリン酸亜鉛ガラスは異常熱機械挙動をもつ材料である。このことは、それがマイクロ音響デバイスで使用されたときに中心周波数の正の温度係数を有しており、そのようにして、マイクロ音響デバイスの温度に起因する周波数ドリフトの補償を惹起することを意味している。
【0016】
デバイスの別の実施形態では、導波路層が第1の外套層と第2の外套層の間に埋設されることによって導波路が改良される。第2の外套層の波速度VM2については、第1の外套層内部における波速度についてと同様に、導波路層における波速度VLよりも早い。このように両側で外套層により仕切られた導波路では、改善された導波が行われる。導波路層が(第1の)外套層に対して1つの境界面しか有しておらず、他方の境界面が空気または真空を有している導波路に比べて、このような3つの層を含むサンドイッチ状の導波路は、導波路に作用する外部要因に対して低い感度を有している。導波路層そのものに対する機械的な作用は、導波の変化や導波路の漏れにつながる可能性がある。このことは、導波路層を両側で仕切る2つの外套層によって防止される。
【0017】
改善された導波により、薄いことによって軽い電極をマイクロ音響デバイスで使用することが可能である。このような電極は、通常、圧電基板ないし圧電層に直接的に接触するように配置され、すなわち第1の外套層と導波路層との間にある。
【0018】
本発明による3層の導波路層を備えるデバイスは、導波路の特性を損なうことなく、限定されない数の別の層を導波路に配置することを可能にする。特に、別の導波路を第1の導波路の上に配置して、別のフィルタを構成するためにこれを利用することが可能である。それにより、両方の個別フィルタがそれぞれ温度補償される積層フィルタが得られる。
【0019】
第2の外套層については、これに適した材料の選択肢は第1の外套層についてよりも広いので、マイクロ音響デバイスの特性をいっそう改善する別の任意の誘電体を適用することができる。このような別の誘電体を備える構造は、改善されたトリミング可能性を有することができる。導波路層の導波に基づき、導波路層と第2の外套層の間の境界層にいっそう多くの波エネルギーが存在するからである。このことは特に、第1の外套層との導波路層の境界層へ、重い電極を用いて波結合をすることとの主要な相違点である。それにより、いっそう正確なトリミングプロセスが可能であり、これを利用して、周波数を特定の値に合わせてより良好に調節することができる。第2の外套層の材料は、導波路層と第2の外套層との間の音響波の速度飛躍が、第1の外套層と導波路層との間よりも大きくなるように選択することができる。しかしながらこの状況が逆になっていてもよい。
【0020】
第2の外套層は、DLC(Diamond Like Carbon),SiOxNy,BN,a−CH,Ge,Si,TiO2,WC,AlN,ZnO,SiN,Al2O3、およびSiO2から選択された材料を主成分として含むことができる。
【0021】
このような選択の自由度により、第2の外套層に幅広い範囲の特性を与え、ないしは、希望する特性に応じて外套層を選択することが可能である。
【0022】
1つの好ましい実施形態では、第1の外套層は、LiNbO3,KNbO3,NaNbO3,LiTaO3,石英、ZnO,AlN,ScAlN,LiB4O7,GaPO4,ランガサイト、ランガナイト、ランガテイトPZT(ジルコン酸チタン酸鉛)、およびRECOB(REのオキソホウ酸カルシウム)から選択された圧電材料であり、このときREは希土類の1つの元素または複数の元素からなる混合物である。
【0023】
ランガサイト(LGS=La3Ga5SiO14)、ランガナイト(LGN=La3Ga5.5Nb0.5O14)、ランガテイト(LGT=La3Ga5.5Ta0.5O14)の系統の他、これら3つの系統からなる混合結晶も適している。その例は、CNGS(=Ca3NbGa3Si2O14)、CTGS(=Ca3TaGa3Si2O14)、SNGS(=Sr3NbGa3Si2O14)、STGS(=Sr3TaGa3Si2O14)、NGS(=Nd3Ga5SiO14)、LGAS(=La3AlxGa5−xSiO14)このとき1≦x≦0、SGG(=Sr3Ga2GeO14)、NCG(=Na2CaGe6O14)、REGS(このときREは希土類の元素であり、たとえばPGS=Pr3Ga5SiO14ではPr)、およびBTGS(Ba3TaGa3Si2O14)などである。PZTについても、鉛、ジルコニウム、またはチタンが相応の置換元素で置き換えられた、置換された同系統の化合物が適している。
【0024】
圧電層を含んでいる第2の外套層は、支持基板の上に塗布されていてよい。この支持基板と圧電層の間に1つまたは複数の中間層を配置することも可能である。このような中間層は特に誘電性層であり、圧電層と支持基板の間のより良い付着のため、圧電層のより良い成長のため、または拡散遮蔽層としてのバリア作用のために利用される。
【0025】
マイクロ音響デバイスの電極は、特に、BAWデバイス用として適用されているような平坦な電極であってよい。あるいは電極は、SAWデバイスやGBAWデバイスで用いることができるインターディジタル電極であってもよい。
【0026】
電極は少なくとも1つの導電性材料を含んでおり、特に金属または合金を含んでおり、その成分はたとえばAl,Cu,Au,Ag,Pt,Pd,W,Ni,Mo,Nb,V,Ti,Cr,Mg,Fe,Ir,Ru,Ra,Os,および特にポリSiやポリGeのような高ドーピング半導体から選択されていてよい。
【0027】
電極は統一された層で構成することができる。電極を多層で製作することも可能であり、このとき異なる層は、異なる導電性材料と異なる層厚を有することができる。
【0028】
テクノロジー(SAW,BAW,GBAW)には関わりなく、提案されるデバイスはフィルタ、デュプレクサ、共振器、センサ、共振器フィルタ、モジュール、帯域消去フィルタ、またはノッチフィルタとして構成されていてよい。
【0029】
このデバイスは、圧電材料をベースとするのではない、あるいはそのようなものを含むのではない、マイクロ音響デバイスであってもよい。マイクロ音響デバイスは、たとえばシリコンマイクロ共振器であってもよく、すなわち誘電性の共振器であってもよい。このような誘電性の共振器は、たとえば電極でコーティングされた誘電性材料、特に結晶でできている。半導体も誘電性の共振器に適している。
【0030】
導波路層を備えるマイクロ音響デバイスは、インターディジタル電極が少なくとも部分的に導波路層に埋設されたSAWデバイスであってもよい。この場合、インターディジタル電極の表面が導波路層とともに平坦な表面を形成することが可能である。
【0031】
電極は、下に配置された外套層に構成されたメサ構造の上に配置されていてもよい。このときインターディジタル電極のそれぞれの電極フィンガの間では、圧電材料ないし第1の外套層の材料が所与の深さまで除去される。このときインターディジタル電極の電極フィンガとメサ構造は、共通のエッジを形成する。そして導波路層は外套層の上で、電極が少なくとも部分的に埋設される程度の高さを有している。このような構成により、インターディジタル電極の反射性を、たとえば上記の深さを通じて特定の値に調整し、導波路層の全体的特性を最適化することが可能である。
【0032】
インターディジタル電極を第1の外套層の中に沈降させ、たとえば第1の外套層の溝の底面に配置することも可能である。第1の外套層とインターディジタル電極は共同で平坦な表面を生じさせ、その上に導波路層が配置される。あるいは、電極の上の残りの溝が導波路層で充填されており、これがさらに追加的に外套層の表面全体を覆っていることも考えられる。さらに、インターディジタル電極がたとえば部分的にのみ第1の外套層に沈降している、これらの実施形態の混合形態も可能である。
【0033】
さらに別の選択肢の要諦は、電極を第1の外套層の表面の上で間隔をおいて配置し、これをすべての側で導波路層により取り囲んで、全面的にその中に埋設されるようにすることにある。
【0034】
デバイスはBAW共振器として構成されていてよい。その場合、1つの実施形態では導波路層は、BAW共振器の基板と共振器の底面電極との間に配置される。そして底面電極は、導波路の第2の外套層を形成することができる。
【0035】
導波路は、第1の外套層と、導波路層と、第2の外套層とからなるサンドイッチとして構成されていてよく、基板とBAW共振器の底面電極との間に配置される音響ミラーの一部を形成する。音響ミラーは、通常、相対的に高い音響インピーダンスと相対的に低い音響インピーダンスとを交互に有する層を含んでいる。このようにして、インピーダンス飛躍を有する境界面がリフレクタとして機能し、その結果、層厚が適当に選択されていれば、反射されるさまざまな波割合の干渉によって、特定の周波数の消去を行うことができる。音響ミラーの部分層は、消去されるべき波の波長のおよそ4分の1の厚みを有しているのが好ましい。
【0036】
音響ミラーに一体化可能な導波路では、インピーダンス差が大きいことを踏まえた上で、外套層と導波路層とが選択される。
【0037】
1つの好ましい構造では、導波路層はGBAWデバイスの一部である。ガイド音響体積波により作動するこのようなデバイスは、少なくとも一番上の層として圧電層を有している第1の基板の上に構成される。第1の基板は圧電結晶であってもよい。圧電層または圧電結晶は、第1の外套層としての役目を果たすことができる。第1の外套層の上には、平坦に構成されていてよい、またはSAWデバイスの場合と同様にインターディジタル電極であってよい、電極が配置されている。
【0038】
電極の上には、異常熱機械挙動を有する主成分をもつガラスを本発明に基づいて含む導波路層が配置されている。導波路層の層厚は、中心周波数で導波路の中を伝搬可能な波の波長の1−100%、好ましくは5−50%に相当していてよい。
【0039】
ガラスを含む導波路層の上には、第2の外套層が配置されている。この第2の外套層は別の薄層であってよい。しかしながら、第2の基板を第2の外套層として利用することも可能である。この第2の基板は、適当な結合方法によって導波路層の上に装着され、これと結合されていてよい。しかしながら、少なくとも導波路層を含む層析出を、第2の基板の上で製作のために実施することも可能である。
【0040】
GBAWデバイスでは、第2の基板の上方に第2の導波路層、その上に別の電極、およびその上に第2の基板を装着することが可能であり、それにより、音響波により作動する第2のデバイスが具体化される。第2の音響デバイスの導波路と、第1のマイクロ音響デバイスの導波路は、第2の外套層を共通の外套層として利用する。このような実施形態は、時間と材料とコストを節減する。このようにして、スペースと容積の所要量が削減される、高度に一体化されたデバイスを得ることができる。
【0041】
このような2つの積層型のデバイスについて、両方の導波路で異なる導波路層を使用することが可能である。このことはたとえば、第1のデバイスには過剰補償される温度応答性TKをもたせるとともに、第2のデバイスには補償されないTKをもたせることを可能にし、その場合、第2のデバイスは中心周波数TCFの負の温度係数を有することになる。導波路と電極を最適化することで、両方のデバイスで温度に起因して生じる差異を、ゼロ値を中心として対称に調整することが可能であり、その結果、両方のデバイスが適当に配線されていれば、完全に補償がなされる複合型デバイスが得られる。
【0042】
次に、実施例およびこれに対応する図面を参照しながら、本発明について詳しく説明する。各図面は模式的なものであり、寸法に忠実に作成されてはおらず、したがって実際の大きさの関係を反映するものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1A】インターディジタル電極ないし平坦な電極を備えるマイクロ音響デバイスの単純な実施形態を示す断面図である。
【図1B】インターディジタル電極ないし平坦な電極を備えるマイクロ音響デバイスの単純な実施形態を示す断面図である。
【図2】圧電層の上に装着されたインターディジタル電極と、第2の外套層を含む導波路とを備えるデバイスを示す断面図である。
【図3】図2に類似するデバイスを示す断面図であるが、インターディジタル電極は基板に沈降している。
【図4】電極が基板へ部分的に沈降している態様である。
【図5】導波路層が電極の輪郭に追随しているデバイスを示す断面図である。
【図6】第2の外套層を共同で利用する2つのGBAWデバイスからなる積層型デバイスを示す断面図である。
【図7】導波路が共振器と基板の間の音響ミラーの一部であるBAW共振器を示す断面図である。
【図8】対照構造と、5つの異なる実施例とについてシミュレーションされたTCFである。
【図9】さらに別の5つのシミュレーションされた実施例についてのTCFである。
【図10】対照例に基づく導波路への波のシミュレーションされた浸透深さである。
【図11】実施例V6に基づく導波路への波のシミュレーションされた浸透深さである。
【図12】実施例VEに基づく導波路への波のシミュレーションされた浸透深さである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1Aは、単純に構成された導波路を備えるマイクロ音響デバイスの模式的な断面図を部分的に示している。この導波路は、第1の外套層M1と、その上に配置された導波路層WLとを含んでいる。第1の外套層は圧電層または圧電基板である。音響波を励起するために、第1の外套層M1と導波路層WLとの間には、インターディジタル式に製作された電極E1が配置されている。このマイクロ音響デバイスは、たとえばニオブ酸リチウム基板またはタンタル酸リチウム基板の上のSAWデバイスである。導波路層WLは、主成分が中心周波数の負の温度係数をもつ材料である、ガラス状の材料を含んでいる。
【0045】
図1Bは、導波路を備えた別のマイクロ音響デバイスを、模式的な断面図として部分的に示している。このデバイスは、第1の外套層M1と、導波路層WLと、導波路層WLの上に平坦に塗布(形成)された第1の電極E1とを含んでいる。音響波の生成は、図1Bには示さない共振器によって可能となり、その第1の電極が電極E1である。このような共振器は、圧電材料またはその他の誘電性結晶をベースとして構成されていてよい。
【0046】
図2は、導波路WLが第2の外套層M2で追加的に覆われている、図1Aに対応するマイクロ音響デバイスを模式的な断面図として部分的に示している。第1の電極E1はインターディジタル式に構成されており、圧電層または圧電基板として構成された第1の外套層M1の上に配置されている。第2の外套層M2の材料は、通常、第1の外套層M1の材料とは相違しているが、第2の外套層の内部での音響速度が導波路層WLよりも高いという条件にしたがうにすぎない。図1から図3に示す実施例の第1の外套層M1の内部でも、第1の外套層の内部での音響波の速度は導波路層WLよりも高い。
【0047】
図3は、図2に示すものに類似して構成されているが、第1の電極E1が第1の外套層M1に沈降しており、その結果、インターディジタル式の第1の電極E1と第1の外套層M1とが共通の平坦な平面を形成し、その上に導波路層WLが配置されている、別のマイクロ音響デバイスの模式的な断面図を部分的に示している。
【0048】
図4は、インターディジタル式に構成された第1の電極層E1が部分的にのみ第1の外套層M1に埋め込まれた、上記のようなマイクロ音響デバイスの実施形態の別の変形例を示している。
【0049】
図5は、SAWデバイスの模式的な断面図を部分的に示している。ここではインターディジタル式の第1の電極E1は、圧電基板である外套層M1の上に配置されている。導波路層WLは等方性の方法により表面適合的に析出されており、したがって、インターディジタル式の第1の電極E1の輪郭に追随している。このような導波路層WLの構成は、インターディジタル式の第1の電極E1の電極フィンガの上に、側方エッジのところで反射を行うことができる導波路層WLからなるメサ構造が形成されるという利点がある。このことは、導波路層WLの塗布によって低減された、第1の電極E1の反射性を高める。このように、第1の電極E1の電極フィンガでの反射と、導波路層WLのメサ状の構造のエッジでの反射とが一緒に作用して、音響波の全体的反射を生成する。導波路層WLの内部での第1の電極E1の反射は、導波路層を備えていない電極に比べて低減される。一方の電極と、他方の導波路層WLないし空気もしくは真空との間の波の速度差が、前述した第1のケースについては大幅に高いからである。
【0050】
構造化された図5の導波路層WLの上に、第2の外套層を析出することができる。
【0051】
しかしながら、導波路層WLを機械式の研削または平坦化エッチングプロセスによって剥離し、一方では導波路層の平坦な表面が生じ、また他方では当該表面で第1の電極層E1の上面が露出して、これらの上面が残りの導波路層WLとともに共通の平坦な表面を形成するようにすることも可能である。
【0052】
本発明の別の実施形態では、導波路層WLの表面のトポグラフィを事後的な構造化およびその他の方策によって構成することができる。その場合、導波路層WLの表面における隆起部の周期、相対的なフィンガ幅、エッジ角ないしエッジ形状がさまざまに変えられる。
【0053】
さらに、金属被覆層すなわち電極フィンガそのもののエッジ角を変えることで、導波路層WLの改善された層析出および特により良いエッジ被覆が可能であることが見出されている。公知の導波路層では、一定の層厚を超えると亀裂を生じる傾向が著しく強まるのに対し、90°とは異なる金属被覆のエッジ角により、およびこれに伴う当該エッジ角にしたがう導波路層WLのトポグラフィにより対処が行われ、そのようにして亀裂が回避される。たとえば75°傾いて傾斜したエッジ角をもつ電極構造の上の導波路層WLは、通常の90°のエッジ角をもつ同じ厚みの層よりも明らかに少ない亀裂を示す。別案として、90°よりも小さい電極フィンガのエッジ角により、導波路層WLの層厚を高めてTCFの補償を改善することができ、その際にいっそう多くの亀裂を生じることがない。
【0054】
図6は、積層型のGBAWデバイスの模式的な断面図を部分的に示している。そのひとつは、たとえば図2に準じて構成され、第1の外套層M1と、外套層の上の第1の電極層E1と、導波路層WL1と、第2の外套層M2とを有し、これらが共同で導波路WG1を形成する第1のGBAWデバイスである。第1の外套層M1は、GBAWデバイスの圧電基板ないし圧電層によって構成される。第2の外套層M2の上に、第2の導波路層WL2が構成されており、その上に第3の外套層M3が配置されている。第2の導波路層WL2と第3の外套層M3との間には、好ましくは第3の外套層M3の平坦な表面に、第2の電極E2が配置されている。
【0055】
そして第2のGBAWデバイスは、第2の外套層M2を第1の導波路WG1と共同で利用する、第2の導波路WG2を含んでいる。このデバイスは、第2の外套層M2に対して対称に構成されていてよい。しかしながら、両方の導波路をそれぞれ異なる材料または異なる特性で構成することも可能である。特に第1および第2のGBAWデバイスは、中心周波数、導波路層WLの材料、ならびに層厚もしくは電極材料に関して相違していてよい。特に、第2の導波路層WL2を、第1の導波路層WL1とは異なる中心周波数の温度係数で構成することが可能である。第1および第2のデバイスを相互に配線することも可能である。
【0056】
図7は、BAW共振器として構成されたマイクロ音響デバイスを模式的な断面図として部分的に示している。このデバイスは、支持体としての役目をする基板SUの上に配置されている。この基板は、機械的に強固な好ましくは結晶として構成された材料を含んでおり、特に、結晶シリコンのような半導体を含んでいる。しかしながら、これ以外の基板材料も可能である。
【0057】
基板SUの上には、まず最初に、音響インピーダンスが比較的高い層と比較的低い層とを交互に含む音響ミラーASが構成されている。ミラー作用のためには、少なくとも1組のこのような高インピーダンス層と低インピーダンス層が必要であり、その厚みは、通常、反射されるべき波長のおよそ4分の1である。本例では音響ミラーASは、第2の外套層M2と、導波路層WL1と、第1の外套層M1とで構成された導波路を含んでいる。第1の導波路層WL1はガラスとして構成されており、デバイスの周波数の温度係数(TCF)を改善する材料を主成分として含んでいる。両方の外套層M1およびM2は、導波路層WL1に比べて、音響波の高い波速度を有している。導波路の直接上に、平坦に構成された第1の電極E1と、圧電層PLと、平坦に構成された第2の電極E2とを含む共振器そのものが配置されている。
【0058】
圧電層PLの層厚は波長のほぼ半分であり、もしくはその奇数倍である。
【0059】
基板と第2の外套層M2の間には、比較的高い音響インピーダンスと比較的低い音響インピーダンスをもつ別の組のミラー層を形成して音響ミラーASを完全なものにする、別の層が配置されていてよい。音響ミラーASの反射作用は、層を追加するごとに改善されていく。しかしながらそれと同時に、音響ミラーにより反射される波の帯域幅は縮まっていく。
【0060】
次に、酸化ゲルマニウム含有の導波路層を含む導波路の補償作用について、GBAWデバイスのさまざまな実施形態についてのシミュレーション計算を用いて検討する。前提とするのは、追加的に第2の外套層M2として誘電体層が配置されている図2のGBAW構造である。実施例V1からV6のための第1の外套層M1としては、X伝播と15°のカット角とを有し、以下においてLN15と呼ぶ、Y回転形ニオブ酸リチウム基板からなる圧電性のLN15rotYX基板を用いている。すべての実施例V1からV6は、第1の電極E1として、1.64μmのピッチと0.6の金属被覆比率ηで装着されたインターディジタル電極を含んでいる。ここで実施例V1は対照としての役目を果たすものであり、電極金属として厚さ230nmの金を含んでおり、これは約7%の相対的な金属被覆高さにほぼ相当する。対照例V1にはないが、その代わりに以後のすべての実施例において導波路層WLに相当する重い電極を取り囲む層は、PVD二酸化ケイ素として構成されており、800nmの厚みを有している。その上に、4.5μmのPECVD−SiO2で形成された第2の外套層M2が設けられている。
【0061】
実施例V2が対照実験V1と相違するのは、PVD二酸化ケイ素を二酸化ゲルマニウムガラスで置き換えることで、導波路層WLが実際に構成されていることによる。それにより、数多くの利点をもたらす全面的に新規の特性が得られる。公知のPVDSiO2を使用したケースでは、波は圧電誘電体との境界面のところに局在化され、これは重い電極の使用時には不可避であり、このことは、たとえば上に述べたような欠点を引き起こす。それに対して二酸化ゲルマニウム含有のガラスを使用すると、波はこの層によってのみ伝播される。その結果として、特に改善されたトリミング可能性、温度補償、より良い出力適合性といった利点が得られる。
【0062】
導波の役目ないし境界面に波を結合する役目を電極が担わなくてよくなるので、電極をこれに関わりなく他の特性に関して、たとえば導電率や出力適合性に関して、最適化することができる。V2に比べて実験V3では、第1の電極E1の金属が銅で置き換えられている。実施例V4では、第1の電極層E1の厚みが115nmに減らされている。実施例V5では、銅電極の厚みが330nmに増やされている。二酸化ゲルマニウムガラスからなる導波路層WLの厚みは、1000nmに増やされている。V6の実施例では、第1の電極層(Cu)の厚みが300nmに減らされている。各実験V(x)のその他のすべてのパラメータは、それぞれ先行する実験V(x−1)のパラメータと同じに選択されている。
【0063】
図8は、このようなGBAWデバイスについてシミュレーションないし算出された中心周波数の温度係数TCFを示しており、実験V1からV6についてプロットされている。実験V4を除き、本発明に基づくすべての実施例(V2,V3,V5およびV6)が、SiO2からなる公知の導波路を備えるGBAWデバイスに比べて相応に改善された、好ましく小さいTCFを有していることが明らかである。V4は、特定の回路では利点となり得る過剰補償の可能性さえ示している。V3,V5およびV6の実施例はゼロに近いTCFを有している。それにより、ほぼゼロのTCFを高い帯域幅と組み合わせる構造が初めて見出されている。
【0064】
図9は、5つの別の実施例VA,VB,VC,VDおよびVEについてシミュレーションされたTCFをグラフ図として示している。VAでは、LN15基板の上に金からなる第1の電極層が230nmの厚で塗布(形成)されており、これは相対的な金属被覆高さの約7%に相当している。導波路層としては、厚さ1300nmの二酸化ゲルマニウムガラス層が用いられている。第2の外套層として、4.5μmのPECVD二酸化ケイ素が塗布(形成)されている。実験VBでは、金電極の厚みが115nmに減らされる。二酸化ゲルマニウムガラスからなる導波路層の厚みも、800nmに減らされる。
【0065】
実施例VCでは、0°のカット角をもつニオブ酸リチウム基板が使用され、以下においてはこれをLN0と表記する。その他のパラメータは、実施例VBと同じに選択されている。
【0066】
実施例VDでは、実施例VCに比べて、電極材料としてアルミニウムが選択されるとともに、第1の電極が230nmの厚みで塗布(形成)される。導波路層としては、800nmの厚みの二酸化ゲルマニウムガラスが用いられる。
【0067】
実施例VEでは、電極材料として厚さ100nmのアルミニウムが選択され、これはAl2O3からなる薄いパッシベーション層を備えている。それと同時に、導波路層WLの厚みが875nmに増やされ、金属被覆の厚みηが0.3に減らされる。
【0068】
実験VAからVEにおいても、二酸化ゲルマニウム含有の導波路により、TCFの非常に良好な補償がGBAWデバイスで得られることが明らかである。実験VDを例外として、TCF値のシミュレーションはゼロの近傍を表しており、このことはほぼ完全に補償されたTCFに相当している。実験VEは、軽い電極によって良好なTK補償を実現でき、TK過剰補償でさえも実現できることを示している。
【0069】
本発明による導波路構造の良好な導波路特性は、導波路の個々の原子の偏位の強さを導波路の深さに対してプロットしたシミュレーションから明らかとなる。ここで深さゼロとしては圧電基板の表面が選択され、ないしは、第2の外套層と電極層との間の境界面が選択される。このとき偏位の最大値は波の中心に相当しており、それぞれの導波路内での波の相対的な局在化を表している。
【0070】
図10は、対照実験V1に基づく導波路への波の浸透深さを示している。導波路の個々の層の間の境界面が明記されている。上側の第1の外套層の上方には、真空が想定されている。ここで波は重いAu電極の上側領域に局在化しており、電極よりも上方の層では導波路特性がほぼ存在していないことが明らかである。
【0071】
それに対して図11は、実験V6に基づく導波路への波の浸透深さを示している。ここでは波は導波路層の中央部に局在化していることが明らかである。V6では、電極は比較的重いCuでできている。それにより、酸化ゲルマニウムを含む導波路の改善された導波が表れている。波が導波路層の中へ明らかに引き込まれているからである。
【0072】
図12は、実験VEに基づく導波路への波の浸透深さを示している。ここでは比較的軽くて比較的薄いAl電極が使用されているが、この場合にも最大の偏位は、事実上、酸化ゲルマニウムを含む導波路層の中央部で起こっている。第1の外套層としては酸化アルミニウムが選択されている。
【0073】
改善された導波との関連における改善されたTCF補償は、GBAWデバイスについては、各実施例および図8から図12に示すように証明される。二酸化ゲルマニウムガラスと適当な導波路層とを備えるSAWデバイス、BAW共振器、およびその他のマイクロ音響デバイスについても、これに準ずる結果が予想される。したがって本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、ガラス状の導波路層を含み、特に二酸化ゲルマニウムガラス含有のガラス、またはメタリン酸亜鉛もしくはカルコゲナイドからなるガラスでできた導波路を備える、あらゆるデバイスを包含するものである。
【符号の説明】
【0074】
WL,WL1,WL2 導波路層
VL 導波路層における波速度
M1 第1の外套層
VM1 第1の外套層における波速度
PS 圧電層または圧電基板
M2 第2の外套層
VM2 波速度
AS 音響ミラー
PL 圧電層
WG1,WG2 導波路
ML3 第3の外套層
SU 基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、導波路層およびこれに隣接する外套層を有するマイクロ音響デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえばSAWデバイス(SAW=surface acoustic wave)のように音響波により作動するデバイスの周波数規定特性は、多くの場合、温度に対する依存性を示す。たとえばSAWデバイスの中心周波数の温度係数(TCF)は、典型的にはたとえば40ppm/Kである。その理由は、温度が上昇すると通常は基板の熱膨張が起こり、それがインターディジタル式のコンバータ構造で電極間隔の拡大につながることにある。この間隔は、コンバータおよびこれに伴ってSAWデバイスの中心周波数を規定するので、それによって波長も長くなり、中心周波数が下がっていく。しかし熱膨張とは音速の変化も結びついている。温度につれて圧電材料の特性も変化するからである。これに加えて、通常用いられる大半の圧電性ウェーハ材料は強い異方性を示すとともに、その特性の結晶軸依存的な温度応答性を有している。
【0003】
特許文献1には、特に共振周波数の温度応答性を低減するため(TK補償)のさまざまな方策を組み合わせた、音響波により作動するデバイスが提案されている。このデバイスは上面に導電性のデバイス構造を有するとともに、下面に補償層を有しており、この補償層は、機械的な張力が発生するように、または温度変化が生じたときに生成されるように、基板と結合されている。デバイス構造の上には、比較的厚いSiO2層が配置されている。この解決法の欠点は、必要な電極の反射率が重い電極によってしか得られないことにある。温度応答性補償をする方策をこのように組み合わせた場合でさえ、完全なTK補償は実現することができない。
【0004】
マイクロ音響デバイスでは、厚い電極または重い電極によって、たとえばアルミニウムよりも重い金属によって、改善された音波の導波を実現することができる。しかしそれに適した金属は、中心周波数の温度係数(TCF)を上昇させ、そのようにして全体的にTCFを上昇させるという欠点を有している。厚い電極を製造するときには、特性の広いばらつきが生じる。しかもこのような電極は高い反射性を示し、被覆層でコーティングするのが困難であり、その場合、被覆層がキャビティを内包する傾向があり(空孔形成)、平坦化するのも難しい。これまでに知られている構造では、重い電極は圧電材料との境界面に音響波エネルギーを結合する。それによって著しく高い割合の音響エネルギーがこの電極内に存在し、このことは出力適合性における問題につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7589452号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、周波数の温度係数および/または導波路特性に関して改良された、導波路層およびこれに隣接する外套層を有するマイクロ音響デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1の構成要件を備えるマイクロ音響デバイスによって解決される。本発明の好ましい実施形態は、その他の請求項から明らかとなる。
【0008】
このマイクロ音響デバイスは、第1の音響波速度VLをもつ導波路層を含む導波路を有している。導波路層に直接隣接して、第2の音響波速度VM1を有する第1の外套層が配置されている。導波路層で音響波を励起するために、電極が設けられている。音響波を導波路層の内部で導波するために、波速度について式VL<VM1が成り立つ。導波路層は、異常熱機械挙動を有する材料を成分の1つとして有するガラスを含んでいる。
【0009】
異常熱機械挙動をもつ一連の材料が知られているが、そのうち、これまでは結晶質の、非晶質の、またはガラス状のSiO2だけがマイクロ音響デバイスで適用されている。そこで、異常熱機械特性を有し、ガラス状の態種で使用することができる、または導波路の導波路層としての役目をするガラスに埋設することができる、新たな材料が提案される。このような材料により、温度に起因する周波数シフトが部分的または全面的に補償されるマイクロ音響デバイスを得ることができる。
【0010】
二酸化ゲルマニウム、カルコゲナイドガラス、またはメタリン酸亜鉛を成分として含む導波路層が提案される。このような新規の材料は、導波路層の導波路特性を改変し、特に最適化することを可能にする。温度補償と改善された導波路特性とを有する導波路層は、導波路層の熱機械挙動に関わりなく、中心周波数の温度係数が改善されたマイクロ音響デバイスをもたらす。改善された導波路では高い波割合が導波路の内部で伝搬し、その結果、その熱機械特性が、劣った導波路の場合よりも強く音響波に影響を及ぼすからである。
【0011】
第1の外套層は、圧電層または圧電基板であるのが好ましい。圧電層は非圧電基板の上に、特に結晶質の基板の上に、特に半導体基板の上に塗布されていてよい。圧電基板は圧電結晶であるのが好ましく、ないしは、圧電単結晶から断裁されたウェーハであるのが好ましい。
【0012】
中心周波数の温度定数の補償効果が改善された導波路層は、たとえば二酸化ゲルマニウムを主成分として含んでいる。二酸化ゲルマニウムをベースとするガラスは、これまで補償層として知られてきた二酸化ケイ素層よりも高い密度を有しており、したがって、外套層ないし圧電基板における高い質量負荷につながる。高い質量負荷は、圧電基板または圧電層の上の導波路の導波路特性にとって、高い質量負荷が圧電基板または圧電層の表面で音響波の、特に音響せん断波の、改善された導波を引き起こし、せん断波が基板の容積部へ潜るのを防止するという意味で好ましい。導波路層が公知の導波路よりも高い質量負荷を生成する導波路は、波が伝搬するときの低い損失につながる。これに加えて材料内での音響波速度も、高い質量負荷によって低減される。外套層が変わらないとき、ないしは所与の外套層のとき、導波路および外套層の内部での音響波速度に関する高い差異は、改善された導波路特性につながる。
【0013】
二酸化ゲルマニウム含有ガラスの薄い層により、SiO2からなる導波路層と同じ導波路特性を具体化することができる。薄い層は製造のときに短いプロセス時間しか必要とせず、したがって、特に層厚均等性や層厚管理に関して少ない生産変動を示す。
【0014】
改善された導波路特性により、薄くて軽い電極の使用も有意義に可能となる。それにより、厚い電極および/または重い電極によって従来は甘受せざるを得なかったあらゆる問題が回避される。改善された導波により、およびゲルマニウム含有のガラス層を厚く構成することが可能なことにより、SiO2導波路層で従来実現されてきたTK補償よりも明らかに良好である強力なTK補償が可能である。1つの実施形態では、導波路層は酸化ゲルマニウム含有のガラスを含んでいる。二酸化ゲルマニウムは優れたガラス形成剤であり、ガラスの状態を構成するためにいかなる添加物も必要としない。しかしながら、特にガラスの流動特性および溶融特性を規定ないし改質するガラス形成剤および/またはその他の通常のガラス添加物を含んでいるガラスを、導波路層が含んでいることも可能である。二酸化ゲルマニウム含有のガラスまたは主成分が正常熱機械挙動をもつ材料を含んでいるその他のガラスのための、このようなガラス形成剤および/またはガラス添加物は、たとえば、B2O3,SiO2,P2O5,As2O3,Sb2O3,In2O3,Sn2O3,PbO2、Li2O,CaO,Na2O,K2O,MgO,Rb2O,Cs2O,SrO,TeO2,SeO2,MoO2,WO3,BiO3,Al2O3,BaO,V2OおよびSO3から選択される。
【0015】
1つの実施形態では、導波路層は主成分としてカルコゲナイドまたはメタリン酸亜鉛を含んでいる。これら両方の材料により、導波路層として使用したときにSiO2に比べて高い質量負荷を生起するガラスを得ることができる。それと同時に、カルコゲナイドガラスやメタリン酸亜鉛ガラスは異常熱機械挙動をもつ材料である。このことは、それがマイクロ音響デバイスで使用されたときに中心周波数の正の温度係数を有しており、そのようにして、マイクロ音響デバイスの温度に起因する周波数ドリフトの補償を惹起することを意味している。
【0016】
デバイスの別の実施形態では、導波路層が第1の外套層と第2の外套層の間に埋設されることによって導波路が改良される。第2の外套層の波速度VM2については、第1の外套層内部における波速度についてと同様に、導波路層における波速度VLよりも早い。このように両側で外套層により仕切られた導波路では、改善された導波が行われる。導波路層が(第1の)外套層に対して1つの境界面しか有しておらず、他方の境界面が空気または真空を有している導波路に比べて、このような3つの層を含むサンドイッチ状の導波路は、導波路に作用する外部要因に対して低い感度を有している。導波路層そのものに対する機械的な作用は、導波の変化や導波路の漏れにつながる可能性がある。このことは、導波路層を両側で仕切る2つの外套層によって防止される。
【0017】
改善された導波により、薄いことによって軽い電極をマイクロ音響デバイスで使用することが可能である。このような電極は、通常、圧電基板ないし圧電層に直接的に接触するように配置され、すなわち第1の外套層と導波路層との間にある。
【0018】
本発明による3層の導波路層を備えるデバイスは、導波路の特性を損なうことなく、限定されない数の別の層を導波路に配置することを可能にする。特に、別の導波路を第1の導波路の上に配置して、別のフィルタを構成するためにこれを利用することが可能である。それにより、両方の個別フィルタがそれぞれ温度補償される積層フィルタが得られる。
【0019】
第2の外套層については、これに適した材料の選択肢は第1の外套層についてよりも広いので、マイクロ音響デバイスの特性をいっそう改善する別の任意の誘電体を適用することができる。このような別の誘電体を備える構造は、改善されたトリミング可能性を有することができる。導波路層の導波に基づき、導波路層と第2の外套層の間の境界層にいっそう多くの波エネルギーが存在するからである。このことは特に、第1の外套層との導波路層の境界層へ、重い電極を用いて波結合をすることとの主要な相違点である。それにより、いっそう正確なトリミングプロセスが可能であり、これを利用して、周波数を特定の値に合わせてより良好に調節することができる。第2の外套層の材料は、導波路層と第2の外套層との間の音響波の速度飛躍が、第1の外套層と導波路層との間よりも大きくなるように選択することができる。しかしながらこの状況が逆になっていてもよい。
【0020】
第2の外套層は、DLC(Diamond Like Carbon),SiOxNy,BN,a−CH,Ge,Si,TiO2,WC,AlN,ZnO,SiN,Al2O3、およびSiO2から選択された材料を主成分として含むことができる。
【0021】
このような選択の自由度により、第2の外套層に幅広い範囲の特性を与え、ないしは、希望する特性に応じて外套層を選択することが可能である。
【0022】
1つの好ましい実施形態では、第1の外套層は、LiNbO3,KNbO3,NaNbO3,LiTaO3,石英、ZnO,AlN,ScAlN,LiB4O7,GaPO4,ランガサイト、ランガナイト、ランガテイトPZT(ジルコン酸チタン酸鉛)、およびRECOB(REのオキソホウ酸カルシウム)から選択された圧電材料であり、このときREは希土類の1つの元素または複数の元素からなる混合物である。
【0023】
ランガサイト(LGS=La3Ga5SiO14)、ランガナイト(LGN=La3Ga5.5Nb0.5O14)、ランガテイト(LGT=La3Ga5.5Ta0.5O14)の系統の他、これら3つの系統からなる混合結晶も適している。その例は、CNGS(=Ca3NbGa3Si2O14)、CTGS(=Ca3TaGa3Si2O14)、SNGS(=Sr3NbGa3Si2O14)、STGS(=Sr3TaGa3Si2O14)、NGS(=Nd3Ga5SiO14)、LGAS(=La3AlxGa5−xSiO14)このとき1≦x≦0、SGG(=Sr3Ga2GeO14)、NCG(=Na2CaGe6O14)、REGS(このときREは希土類の元素であり、たとえばPGS=Pr3Ga5SiO14ではPr)、およびBTGS(Ba3TaGa3Si2O14)などである。PZTについても、鉛、ジルコニウム、またはチタンが相応の置換元素で置き換えられた、置換された同系統の化合物が適している。
【0024】
圧電層を含んでいる第2の外套層は、支持基板の上に塗布されていてよい。この支持基板と圧電層の間に1つまたは複数の中間層を配置することも可能である。このような中間層は特に誘電性層であり、圧電層と支持基板の間のより良い付着のため、圧電層のより良い成長のため、または拡散遮蔽層としてのバリア作用のために利用される。
【0025】
マイクロ音響デバイスの電極は、特に、BAWデバイス用として適用されているような平坦な電極であってよい。あるいは電極は、SAWデバイスやGBAWデバイスで用いることができるインターディジタル電極であってもよい。
【0026】
電極は少なくとも1つの導電性材料を含んでおり、特に金属または合金を含んでおり、その成分はたとえばAl,Cu,Au,Ag,Pt,Pd,W,Ni,Mo,Nb,V,Ti,Cr,Mg,Fe,Ir,Ru,Ra,Os,および特にポリSiやポリGeのような高ドーピング半導体から選択されていてよい。
【0027】
電極は統一された層で構成することができる。電極を多層で製作することも可能であり、このとき異なる層は、異なる導電性材料と異なる層厚を有することができる。
【0028】
テクノロジー(SAW,BAW,GBAW)には関わりなく、提案されるデバイスはフィルタ、デュプレクサ、共振器、センサ、共振器フィルタ、モジュール、帯域消去フィルタ、またはノッチフィルタとして構成されていてよい。
【0029】
このデバイスは、圧電材料をベースとするのではない、あるいはそのようなものを含むのではない、マイクロ音響デバイスであってもよい。マイクロ音響デバイスは、たとえばシリコンマイクロ共振器であってもよく、すなわち誘電性の共振器であってもよい。このような誘電性の共振器は、たとえば電極でコーティングされた誘電性材料、特に結晶でできている。半導体も誘電性の共振器に適している。
【0030】
導波路層を備えるマイクロ音響デバイスは、インターディジタル電極が少なくとも部分的に導波路層に埋設されたSAWデバイスであってもよい。この場合、インターディジタル電極の表面が導波路層とともに平坦な表面を形成することが可能である。
【0031】
電極は、下に配置された外套層に構成されたメサ構造の上に配置されていてもよい。このときインターディジタル電極のそれぞれの電極フィンガの間では、圧電材料ないし第1の外套層の材料が所与の深さまで除去される。このときインターディジタル電極の電極フィンガとメサ構造は、共通のエッジを形成する。そして導波路層は外套層の上で、電極が少なくとも部分的に埋設される程度の高さを有している。このような構成により、インターディジタル電極の反射性を、たとえば上記の深さを通じて特定の値に調整し、導波路層の全体的特性を最適化することが可能である。
【0032】
インターディジタル電極を第1の外套層の中に沈降させ、たとえば第1の外套層の溝の底面に配置することも可能である。第1の外套層とインターディジタル電極は共同で平坦な表面を生じさせ、その上に導波路層が配置される。あるいは、電極の上の残りの溝が導波路層で充填されており、これがさらに追加的に外套層の表面全体を覆っていることも考えられる。さらに、インターディジタル電極がたとえば部分的にのみ第1の外套層に沈降している、これらの実施形態の混合形態も可能である。
【0033】
さらに別の選択肢の要諦は、電極を第1の外套層の表面の上で間隔をおいて配置し、これをすべての側で導波路層により取り囲んで、全面的にその中に埋設されるようにすることにある。
【0034】
デバイスはBAW共振器として構成されていてよい。その場合、1つの実施形態では導波路層は、BAW共振器の基板と共振器の底面電極との間に配置される。そして底面電極は、導波路の第2の外套層を形成することができる。
【0035】
導波路は、第1の外套層と、導波路層と、第2の外套層とからなるサンドイッチとして構成されていてよく、基板とBAW共振器の底面電極との間に配置される音響ミラーの一部を形成する。音響ミラーは、通常、相対的に高い音響インピーダンスと相対的に低い音響インピーダンスとを交互に有する層を含んでいる。このようにして、インピーダンス飛躍を有する境界面がリフレクタとして機能し、その結果、層厚が適当に選択されていれば、反射されるさまざまな波割合の干渉によって、特定の周波数の消去を行うことができる。音響ミラーの部分層は、消去されるべき波の波長のおよそ4分の1の厚みを有しているのが好ましい。
【0036】
音響ミラーに一体化可能な導波路では、インピーダンス差が大きいことを踏まえた上で、外套層と導波路層とが選択される。
【0037】
1つの好ましい構造では、導波路層はGBAWデバイスの一部である。ガイド音響体積波により作動するこのようなデバイスは、少なくとも一番上の層として圧電層を有している第1の基板の上に構成される。第1の基板は圧電結晶であってもよい。圧電層または圧電結晶は、第1の外套層としての役目を果たすことができる。第1の外套層の上には、平坦に構成されていてよい、またはSAWデバイスの場合と同様にインターディジタル電極であってよい、電極が配置されている。
【0038】
電極の上には、異常熱機械挙動を有する主成分をもつガラスを本発明に基づいて含む導波路層が配置されている。導波路層の層厚は、中心周波数で導波路の中を伝搬可能な波の波長の1−100%、好ましくは5−50%に相当していてよい。
【0039】
ガラスを含む導波路層の上には、第2の外套層が配置されている。この第2の外套層は別の薄層であってよい。しかしながら、第2の基板を第2の外套層として利用することも可能である。この第2の基板は、適当な結合方法によって導波路層の上に装着され、これと結合されていてよい。しかしながら、少なくとも導波路層を含む層析出を、第2の基板の上で製作のために実施することも可能である。
【0040】
GBAWデバイスでは、第2の基板の上方に第2の導波路層、その上に別の電極、およびその上に第2の基板を装着することが可能であり、それにより、音響波により作動する第2のデバイスが具体化される。第2の音響デバイスの導波路と、第1のマイクロ音響デバイスの導波路は、第2の外套層を共通の外套層として利用する。このような実施形態は、時間と材料とコストを節減する。このようにして、スペースと容積の所要量が削減される、高度に一体化されたデバイスを得ることができる。
【0041】
このような2つの積層型のデバイスについて、両方の導波路で異なる導波路層を使用することが可能である。このことはたとえば、第1のデバイスには過剰補償される温度応答性TKをもたせるとともに、第2のデバイスには補償されないTKをもたせることを可能にし、その場合、第2のデバイスは中心周波数TCFの負の温度係数を有することになる。導波路と電極を最適化することで、両方のデバイスで温度に起因して生じる差異を、ゼロ値を中心として対称に調整することが可能であり、その結果、両方のデバイスが適当に配線されていれば、完全に補償がなされる複合型デバイスが得られる。
【0042】
次に、実施例およびこれに対応する図面を参照しながら、本発明について詳しく説明する。各図面は模式的なものであり、寸法に忠実に作成されてはおらず、したがって実際の大きさの関係を反映するものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1A】インターディジタル電極ないし平坦な電極を備えるマイクロ音響デバイスの単純な実施形態を示す断面図である。
【図1B】インターディジタル電極ないし平坦な電極を備えるマイクロ音響デバイスの単純な実施形態を示す断面図である。
【図2】圧電層の上に装着されたインターディジタル電極と、第2の外套層を含む導波路とを備えるデバイスを示す断面図である。
【図3】図2に類似するデバイスを示す断面図であるが、インターディジタル電極は基板に沈降している。
【図4】電極が基板へ部分的に沈降している態様である。
【図5】導波路層が電極の輪郭に追随しているデバイスを示す断面図である。
【図6】第2の外套層を共同で利用する2つのGBAWデバイスからなる積層型デバイスを示す断面図である。
【図7】導波路が共振器と基板の間の音響ミラーの一部であるBAW共振器を示す断面図である。
【図8】対照構造と、5つの異なる実施例とについてシミュレーションされたTCFである。
【図9】さらに別の5つのシミュレーションされた実施例についてのTCFである。
【図10】対照例に基づく導波路への波のシミュレーションされた浸透深さである。
【図11】実施例V6に基づく導波路への波のシミュレーションされた浸透深さである。
【図12】実施例VEに基づく導波路への波のシミュレーションされた浸透深さである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1Aは、単純に構成された導波路を備えるマイクロ音響デバイスの模式的な断面図を部分的に示している。この導波路は、第1の外套層M1と、その上に配置された導波路層WLとを含んでいる。第1の外套層は圧電層または圧電基板である。音響波を励起するために、第1の外套層M1と導波路層WLとの間には、インターディジタル式に製作された電極E1が配置されている。このマイクロ音響デバイスは、たとえばニオブ酸リチウム基板またはタンタル酸リチウム基板の上のSAWデバイスである。導波路層WLは、主成分が中心周波数の負の温度係数をもつ材料である、ガラス状の材料を含んでいる。
【0045】
図1Bは、導波路を備えた別のマイクロ音響デバイスを、模式的な断面図として部分的に示している。このデバイスは、第1の外套層M1と、導波路層WLと、導波路層WLの上に平坦に塗布(形成)された第1の電極E1とを含んでいる。音響波の生成は、図1Bには示さない共振器によって可能となり、その第1の電極が電極E1である。このような共振器は、圧電材料またはその他の誘電性結晶をベースとして構成されていてよい。
【0046】
図2は、導波路WLが第2の外套層M2で追加的に覆われている、図1Aに対応するマイクロ音響デバイスを模式的な断面図として部分的に示している。第1の電極E1はインターディジタル式に構成されており、圧電層または圧電基板として構成された第1の外套層M1の上に配置されている。第2の外套層M2の材料は、通常、第1の外套層M1の材料とは相違しているが、第2の外套層の内部での音響速度が導波路層WLよりも高いという条件にしたがうにすぎない。図1から図3に示す実施例の第1の外套層M1の内部でも、第1の外套層の内部での音響波の速度は導波路層WLよりも高い。
【0047】
図3は、図2に示すものに類似して構成されているが、第1の電極E1が第1の外套層M1に沈降しており、その結果、インターディジタル式の第1の電極E1と第1の外套層M1とが共通の平坦な平面を形成し、その上に導波路層WLが配置されている、別のマイクロ音響デバイスの模式的な断面図を部分的に示している。
【0048】
図4は、インターディジタル式に構成された第1の電極層E1が部分的にのみ第1の外套層M1に埋め込まれた、上記のようなマイクロ音響デバイスの実施形態の別の変形例を示している。
【0049】
図5は、SAWデバイスの模式的な断面図を部分的に示している。ここではインターディジタル式の第1の電極E1は、圧電基板である外套層M1の上に配置されている。導波路層WLは等方性の方法により表面適合的に析出されており、したがって、インターディジタル式の第1の電極E1の輪郭に追随している。このような導波路層WLの構成は、インターディジタル式の第1の電極E1の電極フィンガの上に、側方エッジのところで反射を行うことができる導波路層WLからなるメサ構造が形成されるという利点がある。このことは、導波路層WLの塗布によって低減された、第1の電極E1の反射性を高める。このように、第1の電極E1の電極フィンガでの反射と、導波路層WLのメサ状の構造のエッジでの反射とが一緒に作用して、音響波の全体的反射を生成する。導波路層WLの内部での第1の電極E1の反射は、導波路層を備えていない電極に比べて低減される。一方の電極と、他方の導波路層WLないし空気もしくは真空との間の波の速度差が、前述した第1のケースについては大幅に高いからである。
【0050】
構造化された図5の導波路層WLの上に、第2の外套層を析出することができる。
【0051】
しかしながら、導波路層WLを機械式の研削または平坦化エッチングプロセスによって剥離し、一方では導波路層の平坦な表面が生じ、また他方では当該表面で第1の電極層E1の上面が露出して、これらの上面が残りの導波路層WLとともに共通の平坦な表面を形成するようにすることも可能である。
【0052】
本発明の別の実施形態では、導波路層WLの表面のトポグラフィを事後的な構造化およびその他の方策によって構成することができる。その場合、導波路層WLの表面における隆起部の周期、相対的なフィンガ幅、エッジ角ないしエッジ形状がさまざまに変えられる。
【0053】
さらに、金属被覆層すなわち電極フィンガそのもののエッジ角を変えることで、導波路層WLの改善された層析出および特により良いエッジ被覆が可能であることが見出されている。公知の導波路層では、一定の層厚を超えると亀裂を生じる傾向が著しく強まるのに対し、90°とは異なる金属被覆のエッジ角により、およびこれに伴う当該エッジ角にしたがう導波路層WLのトポグラフィにより対処が行われ、そのようにして亀裂が回避される。たとえば75°傾いて傾斜したエッジ角をもつ電極構造の上の導波路層WLは、通常の90°のエッジ角をもつ同じ厚みの層よりも明らかに少ない亀裂を示す。別案として、90°よりも小さい電極フィンガのエッジ角により、導波路層WLの層厚を高めてTCFの補償を改善することができ、その際にいっそう多くの亀裂を生じることがない。
【0054】
図6は、積層型のGBAWデバイスの模式的な断面図を部分的に示している。そのひとつは、たとえば図2に準じて構成され、第1の外套層M1と、外套層の上の第1の電極層E1と、導波路層WL1と、第2の外套層M2とを有し、これらが共同で導波路WG1を形成する第1のGBAWデバイスである。第1の外套層M1は、GBAWデバイスの圧電基板ないし圧電層によって構成される。第2の外套層M2の上に、第2の導波路層WL2が構成されており、その上に第3の外套層M3が配置されている。第2の導波路層WL2と第3の外套層M3との間には、好ましくは第3の外套層M3の平坦な表面に、第2の電極E2が配置されている。
【0055】
そして第2のGBAWデバイスは、第2の外套層M2を第1の導波路WG1と共同で利用する、第2の導波路WG2を含んでいる。このデバイスは、第2の外套層M2に対して対称に構成されていてよい。しかしながら、両方の導波路をそれぞれ異なる材料または異なる特性で構成することも可能である。特に第1および第2のGBAWデバイスは、中心周波数、導波路層WLの材料、ならびに層厚もしくは電極材料に関して相違していてよい。特に、第2の導波路層WL2を、第1の導波路層WL1とは異なる中心周波数の温度係数で構成することが可能である。第1および第2のデバイスを相互に配線することも可能である。
【0056】
図7は、BAW共振器として構成されたマイクロ音響デバイスを模式的な断面図として部分的に示している。このデバイスは、支持体としての役目をする基板SUの上に配置されている。この基板は、機械的に強固な好ましくは結晶として構成された材料を含んでおり、特に、結晶シリコンのような半導体を含んでいる。しかしながら、これ以外の基板材料も可能である。
【0057】
基板SUの上には、まず最初に、音響インピーダンスが比較的高い層と比較的低い層とを交互に含む音響ミラーASが構成されている。ミラー作用のためには、少なくとも1組のこのような高インピーダンス層と低インピーダンス層が必要であり、その厚みは、通常、反射されるべき波長のおよそ4分の1である。本例では音響ミラーASは、第2の外套層M2と、導波路層WL1と、第1の外套層M1とで構成された導波路を含んでいる。第1の導波路層WL1はガラスとして構成されており、デバイスの周波数の温度係数(TCF)を改善する材料を主成分として含んでいる。両方の外套層M1およびM2は、導波路層WL1に比べて、音響波の高い波速度を有している。導波路の直接上に、平坦に構成された第1の電極E1と、圧電層PLと、平坦に構成された第2の電極E2とを含む共振器そのものが配置されている。
【0058】
圧電層PLの層厚は波長のほぼ半分であり、もしくはその奇数倍である。
【0059】
基板と第2の外套層M2の間には、比較的高い音響インピーダンスと比較的低い音響インピーダンスをもつ別の組のミラー層を形成して音響ミラーASを完全なものにする、別の層が配置されていてよい。音響ミラーASの反射作用は、層を追加するごとに改善されていく。しかしながらそれと同時に、音響ミラーにより反射される波の帯域幅は縮まっていく。
【0060】
次に、酸化ゲルマニウム含有の導波路層を含む導波路の補償作用について、GBAWデバイスのさまざまな実施形態についてのシミュレーション計算を用いて検討する。前提とするのは、追加的に第2の外套層M2として誘電体層が配置されている図2のGBAW構造である。実施例V1からV6のための第1の外套層M1としては、X伝播と15°のカット角とを有し、以下においてLN15と呼ぶ、Y回転形ニオブ酸リチウム基板からなる圧電性のLN15rotYX基板を用いている。すべての実施例V1からV6は、第1の電極E1として、1.64μmのピッチと0.6の金属被覆比率ηで装着されたインターディジタル電極を含んでいる。ここで実施例V1は対照としての役目を果たすものであり、電極金属として厚さ230nmの金を含んでおり、これは約7%の相対的な金属被覆高さにほぼ相当する。対照例V1にはないが、その代わりに以後のすべての実施例において導波路層WLに相当する重い電極を取り囲む層は、PVD二酸化ケイ素として構成されており、800nmの厚みを有している。その上に、4.5μmのPECVD−SiO2で形成された第2の外套層M2が設けられている。
【0061】
実施例V2が対照実験V1と相違するのは、PVD二酸化ケイ素を二酸化ゲルマニウムガラスで置き換えることで、導波路層WLが実際に構成されていることによる。それにより、数多くの利点をもたらす全面的に新規の特性が得られる。公知のPVDSiO2を使用したケースでは、波は圧電誘電体との境界面のところに局在化され、これは重い電極の使用時には不可避であり、このことは、たとえば上に述べたような欠点を引き起こす。それに対して二酸化ゲルマニウム含有のガラスを使用すると、波はこの層によってのみ伝播される。その結果として、特に改善されたトリミング可能性、温度補償、より良い出力適合性といった利点が得られる。
【0062】
導波の役目ないし境界面に波を結合する役目を電極が担わなくてよくなるので、電極をこれに関わりなく他の特性に関して、たとえば導電率や出力適合性に関して、最適化することができる。V2に比べて実験V3では、第1の電極E1の金属が銅で置き換えられている。実施例V4では、第1の電極層E1の厚みが115nmに減らされている。実施例V5では、銅電極の厚みが330nmに増やされている。二酸化ゲルマニウムガラスからなる導波路層WLの厚みは、1000nmに増やされている。V6の実施例では、第1の電極層(Cu)の厚みが300nmに減らされている。各実験V(x)のその他のすべてのパラメータは、それぞれ先行する実験V(x−1)のパラメータと同じに選択されている。
【0063】
図8は、このようなGBAWデバイスについてシミュレーションないし算出された中心周波数の温度係数TCFを示しており、実験V1からV6についてプロットされている。実験V4を除き、本発明に基づくすべての実施例(V2,V3,V5およびV6)が、SiO2からなる公知の導波路を備えるGBAWデバイスに比べて相応に改善された、好ましく小さいTCFを有していることが明らかである。V4は、特定の回路では利点となり得る過剰補償の可能性さえ示している。V3,V5およびV6の実施例はゼロに近いTCFを有している。それにより、ほぼゼロのTCFを高い帯域幅と組み合わせる構造が初めて見出されている。
【0064】
図9は、5つの別の実施例VA,VB,VC,VDおよびVEについてシミュレーションされたTCFをグラフ図として示している。VAでは、LN15基板の上に金からなる第1の電極層が230nmの厚で塗布(形成)されており、これは相対的な金属被覆高さの約7%に相当している。導波路層としては、厚さ1300nmの二酸化ゲルマニウムガラス層が用いられている。第2の外套層として、4.5μmのPECVD二酸化ケイ素が塗布(形成)されている。実験VBでは、金電極の厚みが115nmに減らされる。二酸化ゲルマニウムガラスからなる導波路層の厚みも、800nmに減らされる。
【0065】
実施例VCでは、0°のカット角をもつニオブ酸リチウム基板が使用され、以下においてはこれをLN0と表記する。その他のパラメータは、実施例VBと同じに選択されている。
【0066】
実施例VDでは、実施例VCに比べて、電極材料としてアルミニウムが選択されるとともに、第1の電極が230nmの厚みで塗布(形成)される。導波路層としては、800nmの厚みの二酸化ゲルマニウムガラスが用いられる。
【0067】
実施例VEでは、電極材料として厚さ100nmのアルミニウムが選択され、これはAl2O3からなる薄いパッシベーション層を備えている。それと同時に、導波路層WLの厚みが875nmに増やされ、金属被覆の厚みηが0.3に減らされる。
【0068】
実験VAからVEにおいても、二酸化ゲルマニウム含有の導波路により、TCFの非常に良好な補償がGBAWデバイスで得られることが明らかである。実験VDを例外として、TCF値のシミュレーションはゼロの近傍を表しており、このことはほぼ完全に補償されたTCFに相当している。実験VEは、軽い電極によって良好なTK補償を実現でき、TK過剰補償でさえも実現できることを示している。
【0069】
本発明による導波路構造の良好な導波路特性は、導波路の個々の原子の偏位の強さを導波路の深さに対してプロットしたシミュレーションから明らかとなる。ここで深さゼロとしては圧電基板の表面が選択され、ないしは、第2の外套層と電極層との間の境界面が選択される。このとき偏位の最大値は波の中心に相当しており、それぞれの導波路内での波の相対的な局在化を表している。
【0070】
図10は、対照実験V1に基づく導波路への波の浸透深さを示している。導波路の個々の層の間の境界面が明記されている。上側の第1の外套層の上方には、真空が想定されている。ここで波は重いAu電極の上側領域に局在化しており、電極よりも上方の層では導波路特性がほぼ存在していないことが明らかである。
【0071】
それに対して図11は、実験V6に基づく導波路への波の浸透深さを示している。ここでは波は導波路層の中央部に局在化していることが明らかである。V6では、電極は比較的重いCuでできている。それにより、酸化ゲルマニウムを含む導波路の改善された導波が表れている。波が導波路層の中へ明らかに引き込まれているからである。
【0072】
図12は、実験VEに基づく導波路への波の浸透深さを示している。ここでは比較的軽くて比較的薄いAl電極が使用されているが、この場合にも最大の偏位は、事実上、酸化ゲルマニウムを含む導波路層の中央部で起こっている。第1の外套層としては酸化アルミニウムが選択されている。
【0073】
改善された導波との関連における改善されたTCF補償は、GBAWデバイスについては、各実施例および図8から図12に示すように証明される。二酸化ゲルマニウムガラスと適当な導波路層とを備えるSAWデバイス、BAW共振器、およびその他のマイクロ音響デバイスについても、これに準ずる結果が予想される。したがって本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、ガラス状の導波路層を含み、特に二酸化ゲルマニウムガラス含有のガラス、またはメタリン酸亜鉛もしくはカルコゲナイドからなるガラスでできた導波路を備える、あらゆるデバイスを包含するものである。
【符号の説明】
【0074】
WL,WL1,WL2 導波路層
VL 導波路層における波速度
M1 第1の外套層
VM1 第1の外套層における波速度
PS 圧電層または圧電基板
M2 第2の外套層
VM2 波速度
AS 音響ミラー
PL 圧電層
WG1,WG2 導波路
ML3 第3の外套層
SU 基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導波路(WG)を備えるマイクロ音響デバイスにおいて、
第1の音響波速度VLをもつ導波路層(WL)と、該導波路層に直接隣接し、第2の音響波速度VM1を有する第1の外套層(M1)とを有しており、
前記導波路で音響波を励起するために電極(E1)を備えており、
波速度について式VL<VM1が成り立っており、
前記導波路層は異常熱機械挙動をもつ成分を含むガラスであり、
前記導波路層(WL)は二酸化ゲルマニウム、カルコゲナイドガラス、またはメタリン酸亜鉛を成分として有しているマイクロ音響デバイス。
【請求項2】
前記第1の外套層(M1)は圧電層(PL)または圧電基板である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記導波路層(WL)は二酸化ゲルマニウムを主成分として有するガラスである、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記導波路層(WL)は二酸化ゲルマニウムを55から100重量%の割合で有している、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記導波路層(WL)の別の成分としてガラス形成剤、ガラス改質剤、および/またはガラス安定剤が含まれている、請求項3または4に記載のデバイス。
【請求項6】
ガラス形成剤、ガラス改質剤、および/またはガラス安定剤はB2O3,SiO2,P2O5,As2O3,Sb2O3,In2O3,Sn2O3,PbO2、Li2O,CaO,Na2O,K2O,MgO,Rb2O,Cs2O,SrO,TeO2,SeO2,MoO2,WO3,BiO3,Al2O3,BaO,V2OおよびSO3から選択されている、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記導波路層(WL)はカルコゲナイドガラスまたはメタリン酸亜鉛を主成分として含んでいる、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項8】
前記導波路層は前記第1の外套層と第2の外套層の間に埋設されており、前記第2の外套層は第3の音響波速度VM2を有しており、該音響波速度については式VM2>VLが成り立つ、請求項1から7のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記第2の外套層はDLC,SiOxNy,BN,a−CH,Ge,Si,TiO2,WC,AlN,ZnO,SiN,Al2O3、およびSiO2から選択された材料を主成分として含んでいる、請求項1から8のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記第1の外套層はLiNbO3,KNbO3,NaNbO3,LiTaO3,石英、ZnO,AlN,ScAlN,LiB4O7,GaPO4,ランガサイト、ランガナイト、ランガテイトPZT、およびRECOBから選択された圧電材料であり、このときREは希土類の1つの元素または複数の元素からなる混合物であり、COBはオキソホウ酸カルシウムである、請求項2から9のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記第1の外套層はSAWデバイスのための圧電層または圧電基板であり、該デバイスでは電極が前記圧電層または前記圧電基板の上に配置されてインターディジタル電極として構成されるとともに、前記導波路層が前記基板の上で前記電極の電極フィンガの間に配置されており、または前記基板の上で前記電極を覆うように配置されている、請求項1から10のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記デバイスは基板の上に配置されたBAW共振器であり、該共振器では前記導波路層が前記基板と前記共振器の底面電極との間に配置されている、請求項1から10のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記第1の外套層、前記導波路層、および前記第2の外套層からなる組み合わせがサンドイッチを形成しており、該サンドイッチは音響ミラーの一部を形成するとともに、前記基板と前記BAW共振器の底面電極との間に配置されている、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記導波路層はGBAWデバイスの一部であり、前記電極を備える基板が上に配置されている、請求項1から13のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記第2の外套層は前記導波路層の上に配置された第2の基板によって形成されている、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
中心周波数の温度応答性が相応に調整された導波路層によって正である、すなわち過剰補償される第1のフィルタと、
前記第1のフィルタと電気的に配線された第2のフィルタとを含んでおり、
前記第2のフィルタは中心周波数の負の温度応答性を有しており、
前記第1のフィルタと前記第2のフィルタの配線は、前記デバイスが全体として中心周波数の温度応答性の完全な補償を示すように行われている、請求項1から15のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項1】
導波路(WG)を備えるマイクロ音響デバイスにおいて、
第1の音響波速度VLをもつ導波路層(WL)と、該導波路層に直接隣接し、第2の音響波速度VM1を有する第1の外套層(M1)とを有しており、
前記導波路で音響波を励起するために電極(E1)を備えており、
波速度について式VL<VM1が成り立っており、
前記導波路層は異常熱機械挙動をもつ成分を含むガラスであり、
前記導波路層(WL)は二酸化ゲルマニウム、カルコゲナイドガラス、またはメタリン酸亜鉛を成分として有しているマイクロ音響デバイス。
【請求項2】
前記第1の外套層(M1)は圧電層(PL)または圧電基板である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記導波路層(WL)は二酸化ゲルマニウムを主成分として有するガラスである、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記導波路層(WL)は二酸化ゲルマニウムを55から100重量%の割合で有している、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記導波路層(WL)の別の成分としてガラス形成剤、ガラス改質剤、および/またはガラス安定剤が含まれている、請求項3または4に記載のデバイス。
【請求項6】
ガラス形成剤、ガラス改質剤、および/またはガラス安定剤はB2O3,SiO2,P2O5,As2O3,Sb2O3,In2O3,Sn2O3,PbO2、Li2O,CaO,Na2O,K2O,MgO,Rb2O,Cs2O,SrO,TeO2,SeO2,MoO2,WO3,BiO3,Al2O3,BaO,V2OおよびSO3から選択されている、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記導波路層(WL)はカルコゲナイドガラスまたはメタリン酸亜鉛を主成分として含んでいる、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項8】
前記導波路層は前記第1の外套層と第2の外套層の間に埋設されており、前記第2の外套層は第3の音響波速度VM2を有しており、該音響波速度については式VM2>VLが成り立つ、請求項1から7のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記第2の外套層はDLC,SiOxNy,BN,a−CH,Ge,Si,TiO2,WC,AlN,ZnO,SiN,Al2O3、およびSiO2から選択された材料を主成分として含んでいる、請求項1から8のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記第1の外套層はLiNbO3,KNbO3,NaNbO3,LiTaO3,石英、ZnO,AlN,ScAlN,LiB4O7,GaPO4,ランガサイト、ランガナイト、ランガテイトPZT、およびRECOBから選択された圧電材料であり、このときREは希土類の1つの元素または複数の元素からなる混合物であり、COBはオキソホウ酸カルシウムである、請求項2から9のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記第1の外套層はSAWデバイスのための圧電層または圧電基板であり、該デバイスでは電極が前記圧電層または前記圧電基板の上に配置されてインターディジタル電極として構成されるとともに、前記導波路層が前記基板の上で前記電極の電極フィンガの間に配置されており、または前記基板の上で前記電極を覆うように配置されている、請求項1から10のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記デバイスは基板の上に配置されたBAW共振器であり、該共振器では前記導波路層が前記基板と前記共振器の底面電極との間に配置されている、請求項1から10のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記第1の外套層、前記導波路層、および前記第2の外套層からなる組み合わせがサンドイッチを形成しており、該サンドイッチは音響ミラーの一部を形成するとともに、前記基板と前記BAW共振器の底面電極との間に配置されている、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記導波路層はGBAWデバイスの一部であり、前記電極を備える基板が上に配置されている、請求項1から13のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記第2の外套層は前記導波路層の上に配置された第2の基板によって形成されている、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
中心周波数の温度応答性が相応に調整された導波路層によって正である、すなわち過剰補償される第1のフィルタと、
前記第1のフィルタと電気的に配線された第2のフィルタとを含んでおり、
前記第2のフィルタは中心周波数の負の温度応答性を有しており、
前記第1のフィルタと前記第2のフィルタの配線は、前記デバイスが全体として中心周波数の温度応答性の完全な補償を示すように行われている、請求項1から15のいずれか1項に記載のデバイス。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−115826(P2013−115826A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−261741(P2012−261741)
【出願日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【出願人】(300002160)エプコス アクチエンゲゼルシャフト (318)
【氏名又は名称原語表記】EPCOS AG
【住所又は居所原語表記】St.−Martin−Strasse 53, D−81669 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【出願人】(300002160)エプコス アクチエンゲゼルシャフト (318)
【氏名又は名称原語表記】EPCOS AG
【住所又は居所原語表記】St.−Martin−Strasse 53, D−81669 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】
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