説明

導波路

【課題】低発散損の優れたEM波閉じ込めを有する、複合材料による導波路の作成を可能にする。
【解決手段】プリント基板組立体上の電子集積回路(IC)チップ間を接続する、薄いストライプをセラミック粉末と高分子バインダのスラリーから導波路501を形成し、熱硬化し、導波路501を製造する方法。そのような方法で作成された導波路501及びプリント基板組立体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、導波路に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型相互接続構造に関する研究は、プリント回路との競争を計るために、製造におけるコストの削減と複雑さの軽減を目指すものであった。高データ転送速度の薄型相互接続構造の開発は、特に、高周波数信号に関する問題により困難である。電子装置内で有効なデータ通信を確立するには、信号強度の一貫性だけでなく電磁(EM)伝搬の安定性が望ましいことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本明細書では、低発散損の優れたEM波閉じ込めを有する導波路の作成を可能にする複合材料が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、特にプリント基板組立体上の電子集積回路(IC)チップ間で薄いストライプを接続することによって電磁(EM)波の伝達を導く構造と方法に関する。本開示は、高周波相互接続に不可欠な高誘電率と低誘電損失を達成することを目標とする。
【0005】
この方法では、制御可能な誘電率と低損失正接を有する高分子セラミックス複合材料が提案される。この材料は、水に懸濁されたポリテトラフルオロエチレン粒子の分散溶液と混合された金属酸化物の微粉末を含む。完全な混合により、室内条件でスラリー混合物を生成することができる。
【0006】
詳細には、有機バインダとセラミック粉末を含む粘性ペーストを小出しする被覆法を使用する薄型誘電体シートの形成が提案される。薄型誘電体シートの誘電特性は、高誘電率を得るようにセラミック内容物の混合比によって調整される。この複合物を容易に圧縮または圧延して、所望のパターンにスライスすることができる均一で一貫した薄層を提供することができる。
【0007】
薄層のそのような構造により、平坦なプリント回路基板(PCB)上で共形の面接触が可能になる。この点で、EM波を薄層内に供給し、電子装置内の最小のEM放射及び吸収で様々な場所にあるIC構成要素間で伝搬させることができる。
【0008】
本開示は、高周波範囲で薄型導波路の誘電挙動を調整することによって、薄型導波路内でEM通信信号の集束と閉じ込めを行う方法を提供することを目標とする。
【0009】
一般論として、本開示は、IC構成要素間の相互接続を改善するために、PCB上に取り付ける特定パターンに切断し機械加工することができる均一に作り出される薄型シートを提案する。
【0010】
第2の態様では、本開示は、PCBの生産を修正することなく、IC構成要素間に適合する多数の曲がり部分を有する細いストライプを作成するための低コスト処理方法を可能にする方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】セラミック粉末と高分子バインダの提案された混合を示す図である。
【図2】薄型シートを構成する合成スラリーの提案された小出しを示す図である。
【図3】重合後の複合物シートの概略図である。
【図4】提案された複合物シート用カッター組立体を示す図である。
【図5】導波路の提案された切断プロセスを示す図である。
【図6】導波路を使用するPCB上の相互接続の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、以下の図を参照して、本開示の1つまたは複数の例示的な実施形態を説明する。
【0013】
高データ転送速度システムでは、相互接続用の材料は、安定し頑強な電磁(EM)伝搬を達成するのに重要な役割を果たす。電子組立体が、より小さく、より高密度になるとき、集積回路(IC)構成要素間の薄くて狭い相互接続の設計は、高データ量の場合に、より難しくなることがある。
【0014】
高分子は、通常、誘電率が低い。低い誘電率は、EM波伝搬の集束と閉じ込めの効果を低下させるので、導波路には望ましくないことがある。しかしながら、液体の形態では、高分子は、被覆および印刷工程を使用することにより生産を容易かつ安価にすることがある。
【0015】
高誘電率の媒体を形成するために、セラミック粒子は、複雑な加熱焼結工程で処理されることがある。しかしながら、この工程は高価なことがある。
【0016】
一実施形態では、セラミック粒子のバインダとして液状高分子が使用される。微細なセラミック粒子は、高分子を硬化させることによって接着されて、薄いシートが形成され、複雑な加熱焼結工程が回避される。
【0017】
液状高分子−セラミックは、金属酸化物粉末101(例えば、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)または二酸化チタン(TiO))を含んでもよく、金属酸化物粉末101は、液状高分子102(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP))に入れられ攪拌される。混合物103は、滑らかな質感を有し、塗料と類似し、均一に分散された粒子を保持し、所望の型に小出しまたは被覆することができる粘性スラリーである。
【0018】
前述の成分の電気的挙動は、以下の通りである。
【表1】


*1〜10GHzで公開
【0019】
次に、図2に示されたように、混合物は、約0.5mm〜1.0mmの収容深さを有する平らなトレー201に小出しされる。トレーの深さは、誘電体シートの厚さを決定する。同様に、トレー201のサイズによって、所望のシートの表面積を調整することができる。注いだ混合物103の余分は、トレー201の外に溢れる。
【0020】
次に、トレー201内の小出しされた液体混合物103が、脱ガスのために低圧チャンバに移される。脱ガスするために、塗られた複合物層を、範囲50〜80kPaの低圧デシケータに少なくとも5時間入れてもよい。これは、混合工程により生成された小出し層中の空気泡を除去するのに役立つ。
【0021】
液体混合物103の熱硬化を使用して、バインダ中の有機含有物を乾燥させ重合させる。これは、約300〜350℃で約1時間行われる。次に、乾いた層を、冷却し次第すぐにトレー201から剥がすことができる。図3のように、複合材料で作成されたこのシート301は、低損失正接を有するセラミックの高誘電率がある程度継承されるはずである。
【0022】
所望の相互接続形状により、機械式切断組立体400をカスタマイズすることができる。図4に示されたように、「Z」形状を望む場合には、調整された切断ナイフ401は、鋼スロット付きダイ402,403と共に、所望の導波路の寸法と形状に従って設計される。複合物シート301は、2つの鋼ブロック402,403の間に留められ、位置決めされ、各ブロック403内の貫通パターン・スロット404が位置合わせされる。図5のように、複合物シート301を挟む2つの鋼ブロック402,403内のスロット404内でカッター・ナイフ401が下方に押され、カッター組立体400の基部のスロット404から導波路相互接続501が放出される。
【0023】
導波路相互接続501は、図6に示されたように、両端が集積回路チップや他の電子回路構成要素と接触された状態で、PCB上で接着されてもよい。複合物の材質特性は、データ伝達動作の際にEM波の集束と保持を支援しなければならない。付加的なインタフェースなしに導波路を集積回路チップに接触して配置させることができる。理想的には、導波路の端とIC構成要素の端の間のギャップが最小でなければならない。
【0024】
本開示の例示的な実施形態を詳細に述べたが、熟練した読者には明瞭なように、多くの変形が、本開示の範囲内で可能である。
【符号の説明】
【0025】
101 粉末(金属酸化物粉末)
102 バインダ(液状高分子)
103 混合物
201 トレー
301 複合物シート
400 機械式切断組立体(カッター組立体)
401 切断ナイフ(可動ナイフ)
402、403 鋼スロット付きダイ
404 スロット
501 導波路相互接続

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導波路を製造する方法であって、
セラミック粉末と高分子バインダのスラリーを提供する段階と、
前記スラリーから前記導波路を形成する段階とを含む方法。
【請求項2】
前記スラリーからフィルムを形成する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィルムを硬化させる段階を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記硬化されたフィルムから前記導波路を打ち抜く段階を更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記セラミック粉末が、チタン酸ストロンチウムまたは二酸化チタンであり、前記高分子バインダが、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレンまたはポリプロピレンである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項の方法によって生成された導波路。
【請求項7】
セラミック粉末と高分子バインダの複合物を含む相互接続導波路。
【請求項8】
前記複合物の誘電率が、10を超える、請求項7に記載の導波路。
【請求項9】
前記複合物の誘電体損失正接が、0.005未満である、請求項7または8に記載の導波路。
【請求項10】
前記セラミック粉末が、チタン酸ストロンチウムまたは二酸化チタンであり、前記高分子バインダが、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレンまたはポリプロピレンである、請求項7〜9のいずれか一項に記載の導波路。
【請求項11】
前記誘電率が、50〜300の範囲である、請求項8に記載のセラミック粉末。
【請求項12】
前記絶縁体損失正接が、0.001未満である、請求項9に記載の高分子バインダ。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項による1つまたは複数の導波路によって接続された複数のIC構成要素を含むPCB。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−27038(P2013−27038A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−125802(P2012−125802)
【出願日】平成24年6月1日(2012.6.1)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】