説明

導管巡回評価システム

【課題】巡回監視すべき対象となる導管経路に対する巡回車両による導管巡回の評価を簡単に行うことができる導管巡回評価システムを提供する。
【解決手段】地下に埋設されている導管の周辺状況を監視する巡回車両に搭載されたカーナビゲーション装置と協働する導管巡回評価システム。導管の地図位置を含む導管情報に基づいて地図位置によって規定される導管経路を生成する導管情報処理手段と、カーナビゲーション装置から得られる自車位置に基づいて規定される巡回車両の走行経路と導管情報に含まれる導管経路とのマッチングを行う経路マッチング部と、走行経路と当該走行経路にマッチングした導管経路とをリンクさせた巡回記録情報に基づいて導管経路に対する巡回度を算定して巡回車両の巡回走行評価を行う導管巡回評価部とが備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下に埋設されている導管等地下埋設物の周辺状況を監視する巡回車両に搭載されたカーナビゲーション装置と協働する導管巡回評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水道管やガス管等の地下埋設物に対する保守管理業務として巡回監視を行う際に使用する巡回監視用ナビゲーション装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この巡回監視用ナビゲーション装置は、現在位置を検出する現在位置検出手段と、地図データを取得する地図データ取得手段と、前記地図データを地図画面として表示する表示手段と、地下埋設物に関する情報を記憶した可搬型記憶媒体と、前記表示手段に表示された前記地図画面上に前記可搬型記憶媒体から読み出した前記地下埋設物に関する情報と前記現在位置に関する情報とを重ねて表示する制御手段とを備えたものである。この構成により、夜間、積雪等においても、巡回監視作業者は管路およびそれに付随するマンホール等の施設を地図画面上で、現在位置に関する情報と対応させながら、保守管理を行うことができる。
【0003】
このような巡回監視用ナビゲーション装置は、自社が管理している水道管やガス管等の地下埋設物を定期的に順序よく巡回監視するためには便利である。しかしながら、ガス管などのように地域の道路網に沿って張りめぐらされている導管の巡回監視を、巡回監視専任者だけで行うことは無理があるので、他の種々の目的で道路網に沿って移動する車両(作業者)がその道路網に沿って埋設されている導管網をその移動機会を利用して監視するということも少なくない。そのような巡回では導管網はランダムに巡回監視されるに過ぎず、何度も巡回監視される導管区間や全く又はほとんど巡回監視されない導管区間が生じるが、それに対する対策は考慮されていない。
【0004】
ガスの幹線配管の点検・整備を行う業務に対する業務解析を効果的に行うために、作業車両の走行軌跡と本来の巡視経路との差を明確に把握することができる走行軌跡管理システムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。この走行軌跡管理システムは、センター装置と車載装置とからなり、前記車載装置は、地下に埋設した配管の状態を確認するための複数の点検ポイントを巡視するための登録済みコースを記憶する登録済みコース記憶手段と、測地衛星を利用して作業車両の位置を測定する位置測定手段と、前記位置測定手段で測定された位置から前記作業車両の走行軌跡を記憶する走行軌跡記憶手段とを備え、前記センター装置は、前記車載装置の前記登録済みコース記憶手段に記憶されている登録済みコースと前記走行軌跡記憶手段に記憶されている前記作業車両の走行軌跡とを比較して走行ズレ率を求める走行ズレ率算出手段を備えている。車載装置の登録済みコース記憶手段はメモリカードに保存された配管位置情報、配管状態点検ポイント情報、点検ポイント巡視経路情報を読み出して記憶する。この車載装置を用いた巡回終了後は、作業員によって巡回報告書が作成され、その情報や作業車両の走行軌跡の情報等がメモリカードに保存された後、センター装置にアップロードされる。センター装置で作業車両の走行軌跡と登録済みコースとのズレ率が判定されその結果がモニタに視覚表示される。この走行軌跡管理システムでは、作業車両の走行軌跡が本来の登録済みコースとしての巡回経路とどれだけ差があるかが把握されるだけであり、巡回すべき対象となる導管経路に対して実際に巡回監視された導管経路がどの程度であるかといった導管巡回の評価は行われない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−279172号公報(段落番号〔0006−0013〕、図1)
【特許文献2】特開2008−65421号公報(段落番号〔0005−0022〕、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記実情に鑑み、本発明の目的は、巡回監視すべき対象となる導管経路に対して実際に巡回車両によって巡回された導管経路がどの程度であるかといった導管巡回の評価を簡単に行うことができる導管巡回評価システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、地下に埋設されている導管の周辺状況を監視する巡回車両に搭載されたカーナビゲーション装置と協働する、本発明の導管巡回評価システムは、前記導管の地図位置を含む導管情報を格納したメモリデバイスと、前記メモリデバイスから読み出された前記導管情報に基づいて地図位置によって規定される導管経路を生成する導管情報処理手段と、前記カーナビゲーション装置から得られる自車位置に基づく車両の走行経路と前記導管情報に含まれる前記導管経路とのマッチングを行う経路マッチング部と、前記走行経路と当該走行経路にマッチングした導管経路とをリンクさせた巡回記録情報を生成する巡回記録情報生成部と、前記巡回記録情報に基づいて導管経路に対する巡回度を算定して巡回車両の巡回走行評価を行う導管巡回評価部とを備えている。
【0008】
この構成によると、実際に巡回車両が走行した走行経路は巡回監視すべき導管経路とマッチング処理され、このマッチング処理で走行経路にマッチングした導管経路を走行経路にリンクさせた巡回記録情報が生成される。したがって、この巡回記録情報から、巡回車両の実際の走行経路に対する、巡回車両が巡回監視できた導管経路及び巡回監視できなかった導管経路の関係である巡回度が算定でき、この巡回度から巡回車両の巡回走行評価を容易に行うことができる。
【0009】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記巡回度として、導管経路に対してリンクされる走行経路の割合又は部分的な導管経路に対してリンクされる走行経路の頻度あるいはその両方を採用している。つまり、前者では、巡回車両に割り当てられている地域ないしはこのシステムの管轄地域における巡回監視対象となる導管経路長さに対して、巡回監視しながら走行した走行経路の長さ、つまりマッチングできた走行経路の長さの割合を巡回度とする。後者では、巡回監視対象となる導管経路を複数部分に区分けし、この区分けされた導管経路部分が何回巡回車両によって巡回監視されたかを算定し、導管経路部単位の巡回監視頻度を巡回度とする。これにより、導管巡回の評価を簡単な統計処理で行うことができる。
【0010】
本発明における導管巡回評価は、評価対象となる地域が狭域の場合、巡回車両毎に導管巡回評価部を備えて、巡回車両毎に行うことも好適である。その巡回車両の巡回度を見て、運転者は、巡回が手薄になっているところを集中的に巡回するとよい。多少遠回りになっても巡回が手薄になっているところを走行すると巡回監視の点で効果的である。また、評価対象となる地域が広域の場合、多数の巡回車両から収集した巡回記録情報に基づいて巡回度を算定して、管轄地域全体の包括的な導管巡回評価を行うように導管巡回評価部をセンター側に備えると好適である。前者の目的を達成するための実施形態として、前記導管巡回評価部には、単一の前記巡回車両の巡回記録情報に基づいて前記巡回走行評価を算定する個別導管巡回評価部が含まれる構成が適している。また、後者の目的を達成するための実施形態として、前記導管巡回評価部には、センターに属する複数台の前記巡回車両の巡回記録情報に基づいて前記巡回走行評価を算定して全体走行評価を行うセンター側導管巡回評価部が含まれる構成が適している。
【0011】
本発明の好適な実施形態の1つとして、前記メモリデバイスには、前記導管の周辺で実施される他社工事の影響範囲である保安対象エリアに関する保安対象エリアデータと、前記他社工事によって影響を受けうる導管に関する保安対象導管データとを含む他社工事管理情報が格納されており、かつ前記メモリデバイスにアクセスして前記他社工事管理情報を読み込む他社工事管理情報処理部と、前記カーナビゲーション装置から得られる自車位置の周辺に位置する他社工事のエリアを保安対象エリアとして決定する保安対象エリア決定部とが備えられ、前記巡回記録情報生成部は前記巡回記録情報の生成時に前記走行経路にマッチングした保安対象エリアをさらに前記走行経路にリンクさせ、前記導管巡回評価部は前記巡回走行評価を算定する際に前記保安対象エリアに対する巡回度を加味するものが提案される。この構成によると、他社工事(例えば水道管工事)の影響範囲である保安対象エリア(例えば水道管工事がガス管などの他の地下埋設物に影響を与えるエリア)に関する保安対象エリアデータと、当該保安対象エリアに属する保安対象導管(例えばガス管)に関するデータがメモリデバイスに格納されているので、巡回車両が巡回監視しているのが保安対象導管であるかどうかの判定が可能となる。従って、走行経路に、特別な導管である保安対象導管を他の導管と区別してリンクした巡回記録情報を生成することが可能となる。その結果、他社工事(例えば水道管工事)によって影響を受ける可能性のある、巡回監視の重要度の高い自社の導管(例えばガス管)と一般の導管とを区別した巡回監視評価が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による導管巡回評価システムの基本的構成の一例を示す機能ブロック図である。
【図2】メモリカードに構築される情報格納部に格納される情報内容を示す模式図である。
【図3】本発明による1つの実施形態におけるデータの流れとモニタに表示される表示画像の構成を示す模式図である。
【図4】保安対象エリア画像と導管配置画像とナビゲーション地図画像とが合成されたモニタ画像における大縮尺画像と拡大画像とを示す模式的なモニタ画面図である。
【図5】走行経路と導管経路と保安対象エリア内導管経路との関係を説明する模式図である。
【図6】走行経路と導管経路と保安対象エリア内導管経路とのリンクの仕方を模式的に説明するための模式図である。
【図7】導管経路に対する巡回監視走行の頻度をグラフィカルに示しているモニタ画面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明による導管巡回評価システムの基本的構成の一例を示す機能ブロック図である。この実施形態における導管巡回評価システムはガス会社が運営している。また、他社工事とは、ガス管以外の地下埋設物に対する工事を意味している。図1から理解できるように、この導管巡回評価システムは、ガス会社の巡回車両に搭載されているカーナビゲーション装置と、このカーナビゲーション装置に着脱可能な着脱式メモリデバイスとしてSDカードのようなメモリカード3を備えている。
【0014】
カーナビゲーション装置は、よく知られているように、センサモジュール11、カーナビモジュール12、報知モジュール13などを備えている。センサモジュール11は、GPS測位によって自車両の位置を表す位置情報を取得するGPS(Global Positioning System)デバイス、方位センサ、距離センサなどからなり、その検出信号をカーナビモジュール12に転送する。カーナビモジュール12は、道路地図上での経路探索処理や道路地図上での自車位置を決定するマップマッチング処理などのナビゲーション処理を行う。特にマップマッチング処理では地図データベースから自車位置周辺の地図情報を取得し、それに基づいて公知のマップマッチングアルゴリズムを行い、自車両の現在位置から最短の、地図情報に示される道路上における位置を最終的な自車位置として決定する。カーナビモジュール12で生成された各種ナビゲーション情報を画像情報の形態や音声情報の形態で乗員に報知する。画像で情報報知するためにモニタ90が、音声で情報報知する91が用意されている。なお、モニタ90に装着されているタッチパネルを通じて各種操作入力信号がカーナビモジュール12に与えられる。
【0015】
カードドライバ14は、挿入されたメモリカード3とカーナビゲーション装置との間のデータ交換を行う。このメモリカード3は、本発明の導管巡回評価システムにおける情報格納部として機能し、ガス管情報である導管情報と他社工事管理情報と巡回記録情報とが格納可能である。ガス管情報には、道路地図データと照合可能にデータ化されたガス管配設データと、そのガス管サイズやその他の属性データなどが含まれており、これにより道路地図上にガス管を重ね合わせて表示可能である。このようなガス管情報は、よく知られているので、詳細な説明は省略する。他社工事管理情報には、各他社工事の工事種または重要度あるいはその両方を含む他社工事基本データと、各社工事の影響範囲である保安対象エリアに関する保安対象エリアデータと、各他社工事によって影響を受けるガス管に関する保安対象ガス管データとが含まれている。この、ガス管情報と他社工事管理情報とは、ガス管図面管理センターに設置されているサーバコンピュータとしてのセンターPCからダウンロードされ、メモリカード3に格納される。他社工事管理情報は、水道管、下水管、電気・通信導管などの地下埋設物の工事受付情報を管理している地下埋設物管理データベースに基づいて、データ入力される。ガス管情報は、ここでは図示されていないガス管理センターに設置されているガス管データベースからダウンロードされる。巡回記録情報は、走行経路と当該走行経路にマッチングした導管経路等とがリンクされたデータであり、後で詳しく説明される。
【0016】
不揮発性メモリやハードディスクなどによって構成される、不図示のプログラムメモリには、各種プログラムが記録されており、これらのプログラムモジュールがワーキングメモリに展開され、起動されることにより種々の機能部から構成される機能実現手段が構築される。本発明に特に関係する機能実現手段は、他社工事管理手段20、導管情報処理手段30、導管巡回情報記録手段40、セキュリティ管理手段50とである。
他社工事管理手段20には、他社工事管理情報処理部21と、保安対象エリア決定部22と、保安対象エリア画像生成部23とが含まれている。他社工事管理情報処理部21は、メモリカード3にアクセスして所望の他社工事管理情報を読み込み、適当な内部処理可能なフォーマットに変換する。保安対象エリア決定部22は、カーナビモジュール12から送られてくる自車位置の周辺に位置する他社工事のエリアを他社工事管理情報から保安対象エリアとして決定する。保安対象エリア画像生成部23は他社工事管理情報処理部21を通じて読み込まれた他社工事管理情報に含まれている保安対象エリアデータを用いて自車位置に隣接する保安対象エリアを示す保安対象エリア画像を生成する。
導管情報処理手段30は前記メモリデバイスから読み出された前記導管情報に基づいて地図位置によって規定される導管経路を生成する。このために、導管情報処理手段30には、導管画像生成部31と、導管属性データ処理部32とが含まれている。導管画像生成部31は、読み込まれた導管情報に含まれているガス管データに基づいて、自車位置周辺地域のガス管埋設画像や個別に指定された地図ポイントの周辺地域のガス管埋設画像を生成する。導管属性データ処理部32は、読み込まれた導管情報に含まれているガス管サイズなどのガス管種を特定する属性データを処理して、ガス管埋設画像とともにあるいは必要に応じて表示可能となるフォーマットに変換する。これらのガス管埋設画像処理事態は公知であるので、これ以上の説明は省略する。
【0017】
導管巡回情報記録手段40には、巡回走行経路設定部41と、経路マッチング部42と、巡回記録情報生成部43と、導管巡回評価部44とが含まれている。巡回走行経路設定部41は、常時使用されるわけではないが、巡回走行が手薄になっている導管経路が増加して巡回度の低下が認識された場合、カーナビモジュール12と協働して巡回度を上昇させる走行経路を設定する機能を有する。具体的には、巡回走行が手薄になっている導管経路を規定する地点を通過ポイントとする経路探索要求データを生成してカーナビモジュール12に転送する。経路マッチング部42は、前記カーナビゲーション装置から得られる自車位置に基づいて規定される前記巡回車両の走行経路と前記導管情報に含まれる前記導管経路とのマッチング処理を行う。この実施形態でのマッチング処理では、あとで詳しく説明するように、ノードによって微小に区分けられた走行経路部分と、この対応する走行経路部分に区分けられた導管経路部分とのマッチングが車両走行に伴って順次行われていく。巡回記録情報生成部43は、経路マッチング部42で行われたマッチング結果を巡回記録情報として演算処理可能なフォーマットで生成する。この巡回記録情報は、走行経路と当該走行経路にマッチングした導管経路とがリンクされたデータ構造である。導管巡回評価部44は、巡回記録情報に基づいて導管経路に対する巡回度を算定して巡回車両の巡回走行評価を行う。この導管巡回評価部44は、単一の巡回車両の巡回記録情報に基づいて前記巡回走行評価を算定するものであり、個々の巡回車両に構築されるものである。これに対して、センターに属する複数台の巡回車両の巡回記録情報に基づいて巡回走行評価を行うためにセンターPCにも、巡回記録処理部51とセンター側導管巡回評価部52が構築されている。巡回記録処理部51は各巡回車両の巡回記録情報を収集して、個々の巡回記録情報を一体化する。センター側導管巡回評価部52は一体化された巡回記録情報に基づいて巡回度を算定して全巡回車両による巡回走行の評価を行う。
なお、ここで採用されている好適な巡回度は統計値であり、導管経路に対してリンクされる走行経路の割合と、部分的な導管経路に対してリンクされる走行経路の頻度である。いずれか一方の巡回度を採用してもよいし、両方を採用して選択的に使用してもよい。
セキュリティ管理手段50は、不正なメモリカード3の使用を禁止するため、及び、メモリカード3がこの導管巡回評価システムでのみ利用可能とするため、鍵システムまたはパスワードシステムあるいはその両方を用いたセキュリティ処理を行う。
【0018】
次に、情報格納部として機能するメモリカード3に含まれている導管情報、他社工事管理情報、巡回記録情報の内容を図2に模式的に示されたデータ構造を用いて説明する。
導管情報は、巡回車両が巡回する地域のガス管情報をガス管データベースから抽出したものである。このガス管情報には、地図画像上に重ね合わされるべきガス管経路を示すガス管画像を生成するために必要なデータが含まれている。ここでは、ガス管ID、ノードID、ノード座標、ノード間長さ、ガス管属性値の1つであるガス管種などが含まれている。
巡回記録情報は、日時、走行経路、導管経路、他社工事エリアが互いにリンクするデータ構造となっているが、後でその記録手順ともに後で詳しく説明される。
【0019】
次に、他社工事管理情報格納部として機能するメモリカード3に含まれている他社工事管理情報に含まれている他社工事基本データ、保安対象エリアデータ、保安対象ガス管データの内容を図2に模式的に示されたデータ構造を用いて説明する。他社工事基本データは、記録項目として、他社工事ID、工事種、重要度などを有している。従って、この基本データが報知されることにより、他社工事がどのような地下埋設物に対する工事がどのような企業体によって行われているかといった情報を乗員が把握することができる。また、ここでの重要度は、その工事がもたらすガス管に対する損傷のリスクの大きさを示しており、例えば、工事における掘削規模が大きい場合は重要度は高くなる。保安対象エリアデータは、ガス管に対して何らかの影響が及ぼされる可能性がある他社工事のエリアを示すもので、言い換えると他社工事のために保安対象となるガス管が存在するエリア(保安対象エリア)をモニタに表示するためのデータである。この実施形態では、保安対象エリアを特定するために付与されている保安対象エリアIDにリンクされた保安対象エリア座標に加えて、その保安対象エリアの重心位置を示すデータもリンクされている。保安対象エリア座標は、保安対象エリアを予め定められた多角形によって規定するための当該多角形のコーナ座標のセットであり、複数種類の多角形を用いる場合は多角形の種別を示すコードもリンクされる。このコーナ座標は地図上の座標値またはそれに簡単に変換できる値であり、このコーナ座標セットを用いて地図画像上に保安対象エリアを示すイメージを重ね合わせることができる。エリア重心は、保安対象エリアをシンボル記号のようなもので表す場合など、その保安対象エリアの代表位置を示すものとして利用される。なお、この他社工事基本データや保安対象エリアデータは、センターPCに対して所定の入力デバイスを用いてデータ入力され、そのセンターPCからメモリカード3にダウンロードされる。
保安対象ガス管データは、先に説明した導管情報のガス管データのうち、保安対象エリアを含む保安対象エリア付近に属するものであり、実質的なデータ内容は導管情報のものを利用するので、ここでは単にリンクデータだけが含まれる。ただし、保安対象エリアとのリンクを容易にするために付与された保安対象ガス管IDと、その保安対象ガス管IDで特定される保安対象エリア内での保安対象ガス管を地図画像上で表すことができる座標セットである保安対象ガス管座標がガス管データにリンクしている。
【0020】
ここで、他社工事管理情報に基づく保安対象エリアの巡回監視を説明する。
まずは、ナビゲーション装置による走行経路画像の生成手順と他社工事管理情報に含まれているデータに用いた保安対象エリアの表示画像の生成手順をその模式図である図3を用いて説明する。巡回車両が巡回走行を開始し、カーナビモジュール12が動作を開始すると、自車位置データから自車位置レイヤが生成される。さらにこの自車位置データに基づく地図座標から対応する道路データ及び建物データが抽出され、それぞれ道路レイヤと建物レイヤが生成される。この自車位置レイヤと道路レイヤと建物レイヤとが重ね合わされることで、一般的なカーナビゲーションにおける基本的な走行位置を示す地図画像が作成される。このような地図画像の作成は種々の方法で可能であるがよく知られているので、ここではその説明は省略する。
【0021】
他社工事管理手段20では、自車位置を表す自車位置データが保安対象エリア決定部22に与えられると、例えば、予め保安対象エリアデータに基づいて作成したインデックスデータからその自車位置付近の保安対象エリアを決定する。その決定された保安対象エリアに対応する保安対象エリアデータ、当該保安対象エリアデータにリンクする他社工事基本データや保安対象ガス管データがメモリカード3から読み出され、他社工事管理情報処理部21で前処理される。保安対象エリアデータは保安対象エリア画像生成部23で他社工事レイヤとして用いられる保安対象エリア画像として画像化される。その際、他社工事レイヤでの保安対象エリアの任意のポイントに他社工事基本データを呼び出すためのアンカが付与される。これによりモニタ90に表示された保安対象エリアから他社工事基本データの情報を呼び出して表示させることができる。保安対象ガス管データは導管画像生成部32でガス管レイヤとして用いられる保安対象ガス管画像として画像化される。ここでも、保安対象ガス管データにガス管属性データが含まれている場合には、ガス管レイヤでのガス管経路の任意のポイントにガス管属性データを呼び出すためのアンカが付与される。これによりモニタ90に表示された保安対象ガス管経路からガス管属性データの情報を呼び出して表示させることができる。
【0022】
なお、図3を用いた、各種データの流れとモニタ表示画像であるナビゲーション画像の構成は、説明目的であり、本発明がこの形態に限定されるわけではない。例えば、保安対象エリアデータや保安対象ガス管データなどの抽出のタイミングやそれらのデータに基づく画像生成のタイミングは自由に行うことができる。また、レイヤの使用方法、他社工事基本データやガス管属性データの表示方法なども仕様に応じて自在に選択することができる。
【0023】
生成された自車位置レイヤ、道路レイヤ、建物レイヤ、他社工事レイヤ、ガス管レイヤが重ね合わせ合成され、報知モジュール13に転送されることで、モニタ90に図4に例示するようなナビゲーション画像が表示される。図4では、大きな縮尺での広域ナビゲーション画像と、その広域のナビゲーション画像の一部の領域である保安対象エリアを画面一杯に拡大させた拡大ナビゲーション画像が示されている。広域のナビゲーション画像では自車位置を示す三角状のシンボルと、保安対象エリアの重心を示すシンボル「×」(図番Gが付与されている)が表示されている。さらにガス管経路が太い点線で示されており、保安対象エリアにおける他社工事の対象となっている導管(水道管)が二点鎖線で示されている。なお、ガス管経路が保安対象エリア外でも表示されているのは、この実施の形態では、巡回地域全体のガス管情報が情報格納部に格納され、ガス管画像生成部24によってガス管経路画像化されているからである。
【0024】
図4の拡大ナビゲーション画像を用いて、保安対象エリアのデータ構造を具体的に説明する。ここでは、説明目的のために、全ての構成が簡単化されているので、実際の形態とは異なっている。まず、保安対象エリアは四角形で示されている。ここでは、2つの保安対象エリアがSID(n)とSID(n+1)で示されたIDで特定されている。さらに各保安対象エリア内に配置されているガス管経路は、それぞれ始端座標:Ps(x,y)と終端座標:Pe(x,y)によって規定されている。この始端座標や終端座標は保安対象ガス管データの保安対象ガス座標として格納されている。
【0025】
図4の拡大ナビゲーション画像では2つの保安対象エリアが表示されているが、これらの保安対象エリアに巡回車両が接近した場合、例えば、保安対象エリアに対して100m以内に接近した場合にスピーカ(ブザー)91から注意音が鳴らされる。あるいは、重心Gを点滅させてもよい。保安対象エリアが作り出される他社工事は、水道管のみならず、下水管、電気・通信導管など種々のものがあるので、その工事種に応じて、注意音を変更することや、重心Gや保安対象エリアの表示色を変更することも好適である。このようなナビゲーション画像をモニタに表示することで、巡回車両の乗員は、巡回車両に搭載したカーナビゲーション装置を通じて、自社の導管であるガス管が影響を受ける可能性のある水道管工事などの他社工事を容易に確認することができる。
【0026】
次に、巡回記録情報生成部43による巡回記録情報の模式的な生成手順を図5と図6を用いて説明する。図5の上側領域には、行番号と列番号で規定されているマス目状の道路を走行した巡回車両の軌跡が太線で示されており、この実施形態ではガス管である導管の埋設状態を示す導管経路が点線で示されている。前述した他社工事に基づく保安対象エリアは斜線で示されている。図5の下側領域には、日時を示すタイムスタンプ、マス目単位(自然数mとnで規定されている)で部分化された走行経路:Tmn−Tmn、同じくマス目単位で部分化された導管経路:Pmn−Pmn及び保安対象エリア:Wmn−Wmnがリスト表示されている。このリスト表示でキーとなっているのは、巡回車両の走行に伴って経時的にリスト化されている走行経路:Tmn−Tmnであり、経路マッチング部42によるマッチング処理を通じてこの各走行経路:Tmn−Tmnとマッチングした導管経路:Pmn−Pmnと保安対象エリア:Wmn−Wmnが、マッチング先の走行経路の横に示されている。この走行経路Tmn−Tmnと導管経路:Pmn−Pmnと保安対象エリア:Wmn−Wmnのデータ構造上のリンク状態が図6に模式的に示されている。この図6から、巡回記録情報は、走行経路:Tmn−Tmn、導管経路:Pmn−Pmn、他社工事エリアが互いにリンクするデータ構造となっていることが理解できる。走行経路:Tmn−Tmnは、道路データである始点ノードと終点ノードとによって規定される微小道路部分に対応させながら生成されていく。このように生成された巡回車両の走行軌跡としての各走行経路(走行経路部分):Tmn−Tmnにもし導管経路:Pmn−Pmnがマッチングしておれば、その導管経路:Pmn−Pmnを示すデータがリンクする。導管経路:Pmn−Pmnのうち、保安対象エリア:Wmn−Wmnに属している導管経路:Pmn−Pmnは、当該導管経路:Pmn−Pmnに保安対象エリア:Wmn−Wmnを示すデータがリンクする。この図6に示されたデータ構造をもつ巡回記録情報を走行経路:Tmn−Tmnを基準にして評価すれば、巡回車両の全走行経路のうち導管経路:Pmn−Pmnに沿って走った割合及び保安対象エリア:Wmn−Wmnに沿って走行した割合が算出される。また、導管経路:Pmn−Pmnを基準にして評価すれば、特定地域における全導管経路にうち、走行経路:Tmn−Tmnがリンクする割合、つまり全導管経路のうちで巡回車両が巡回走行した割合が算出される。また、同じ導管経路:Pmn−Pmnに複数の走行経路:Tmn−Tmnがリンクしている数を計数することで、特定導管経路:Pmn−Pmnに対する巡回車両の巡回頻度が算出される。
【0027】
上述したような巡回記録情報を集計して求められた、所定地域における所定期間での導管巡回評価結果が図7に示されている。図7は、導管経路に対する巡回監視走行の頻度をグラフィカルに表した画像であり、これをモニタ画面に表示することで、導管巡回評価を視覚的に把握することが可能となる。この例では、頻度を異なる線パターンで区別しているが、線色や線太さなどによって区別してもよい。また、このような評価画像をモニタ90に表示することで、巡回車両の乗員は、効果的な巡回経路を容易に決定することができる。
【0028】
なお、導管巡回評価の対象となる導管は、例えばガス管の場合、中径管と呼ばれる比較的管径が大きく、車両交通の多い道路沿いに埋設されているものが中心であることから、本発明のようにカーナビゲーション装置と協働するシステムへの利用に適している。
また、上述した実施の形態では、この導管巡回評価システムはガス会社が運営しており、他社工事とはガス管以外の地下埋設物に対する工事であり、その工事から保安されるべき対象はガス管であったが、これは本発明で限定されているわけではない。本発明に適用可能なあらゆる組み合わせが本発明の対象となる。
【符号の説明】
【0029】
3:メモリカード(メモリデバイス)
12:カーナビモジュール(カーナビゲーション装置)
13:報知モジュール
90:モニタ
20:他社工事管理手段
21:他社工事管理情報処理部
22:保安対象エリア決定部
23:保安対象エリア画像生成部
30:導管情報処理手段
31:ガス管画像生成部
40:導管巡回情報記録手段
41:巡回走行経路設定部
42:経路マッチング部
43:巡回記録情報生成部
44:導管巡回評価部
51:巡回記録情報処理部
52:センター側導管巡回評価部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下に埋設されている導管の周辺状況を監視する巡回車両に搭載されたカーナビゲーション装置と協働する導管巡回評価システムにおいて、
前記導管の地図位置を含む導管情報を格納したメモリデバイスと、
前記メモリデバイスから読み出された前記導管情報に基づいて地図位置によって規定される導管経路を生成する導管情報処理手段と、
前記カーナビゲーション装置から得られる自車位置に基づいて規定される前記巡回車両の走行経路と前記導管情報に含まれる前記導管経路とのマッチングを行う経路マッチング部と、
前記走行経路と当該走行経路にマッチングした導管経路とをリンクさせた巡回記録情報を生成する巡回記録情報生成部と、
前記巡回記録情報に基づいて導管経路に対する巡回度を算定して巡回車両の巡回走行評価を行う導管巡回評価部と、
を備えた導管巡回評価システム。
【請求項2】
前記巡回度は、導管経路に対してリンクされる走行経路の割合又は部分的な導管経路に対してリンクされる走行経路の頻度あるいはその両方である請求項1に記載の導管巡回評価システム。
【請求項3】
前記導管巡回評価部には、単一の前記巡回車両の巡回記録情報に基づいて前記巡回走行評価を算定する個別導管巡回評価部が含まれている請求項1または2に記載の導管巡回評価システム。
【請求項4】
前記導管巡回評価部には、センターに属する複数台の前記巡回車両の巡回記録情報に基づいて前記巡回走行評価を算定して全体走行評価を行うセンター側導管巡回評価部が含まれている請求項1から3のいずれか一項に記載の導管巡回評価システム。
【請求項5】
前記メモリデバイスには、前記導管の周辺で実施される他社工事の影響範囲である保安対象エリアに関する保安対象エリアデータと、前記他社工事によって影響を受けうる導管に関する保安対象導管データとを含む他社工事管理情報が格納されており、かつ
前記メモリデバイスにアクセスして前記他社工事管理情報を読み込む他社工事管理情報処理部と、前記カーナビゲーション装置から得られる自車位置の周辺に位置する他社工事のエリアを保安対象エリアとして決定する保安対象エリア決定部とが備えられ、前記巡回記録情報生成部は前記巡回記録情報の生成時に前記走行経路にマッチングした保安対象エリアをさらに前記走行経路にリンクさせ、前記導管巡回評価部は前記巡回走行評価を算定する際に前記保安対象エリアに対する巡回度を加味する請求項1から4のいずれか一項に記載の導管巡回評価システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−210173(P2011−210173A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79595(P2010−79595)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】