説明

導管過熱検出システム

【課題】患者を呼吸用加湿器に結合する加熱式呼吸導管に用いられている電熱線又は発熱体用の導管過熱状態検出システムを提供する。
【解決手段】本発明は、呼吸用加湿器(10)及び患者を呼吸用加湿器に結合する加熱式呼吸導管(14)に関する。電熱線又は発熱体(15)を有する導管(14)の導管過熱状態検出システムが提供される。過熱検出システムは、単枝型導管システム又は複枝型導管システムに利用できる。これらシステムの各々において、導管過熱検出システムは、発熱体中の電流をモニターし、発熱体への電力を変更して発熱体及び(又は)導管が過熱する事態を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸用加湿器、及び、患者を加湿器に結合するのに用いられる加熱式呼吸導管に関する。導管用電熱線又は発熱体のための導管過熱検出システムが開示される。
【背景技術】
【0002】
ガスを必要としている患者又は人員にガスを供給する際、まず、例えば呼吸用加湿器/ベンチレータシステムを用いてガスを加湿することが必要な場合がある。ガスを加湿し、水分を含ませると、導管を通して患者に運搬する間、その水蒸気の凝縮が生じることがある。この不都合を無くすため、電熱線又は発熱体を呼吸用加湿器の呼吸導管に連係させて凝縮を回避することが知られている。このような加熱式呼吸導管の例が、特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,537,996号明細書(マクフィー)
【特許文献2】米国特許第5,392,770号明細書(クローソン等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電熱線又は発熱体を収容し、温度プローブが組み込まれた導管の部分では、導管の温度を直接モニターして過熱状態を検出することが可能である。この過熱状態は、流れの無い状況下で、又は、過度の断熱材、例えばブランケットが導管に施されている場合に生じることがある。嵩張り具合、複雑さ及びコストを減少するために、温度プローブが組み込まれていない導管の部分では、装置又は患者の安全性が損なわれる場合がある。これは、導管温度をモニターする別の方法が行われない場合、導管材料が過熱して溶ける可能性が高いからである。さらに、導管中にセンサが設けられていないと、患者が高温のガスを吸入する可能性が高くなる。
複枝型呼吸回路が用いられる呼吸装置では、枝管のうちの一方だけが制御される場合が多く、他方の枝管は制御される枝管に単に追随し、又は、これに「隷属」して働くに過ぎない。したがって、「隷属」枝管のモニター又は制御が行われないと、この枝管が流れから切り離され、遮断され又は覆われたとき、ユーザが気づかないうちにこの枝管が過熱し又は溶ける場合がある。
本発明の目的は、上述の欠点を解決するよう構成された呼吸導管用発熱体のための導管過熱検出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明は、第1の特徴において、発熱体を有する呼吸導管の導管過熱検出システムであって、前記発熱体を流れる電流を検出する手段を含む検出手段と、電力供給手段を含む制御手段とを有し、前記制御手段は、該制御手段が、i)前記発熱体を流れる前記電流の入力を前記検出手段から受け取り、ii)前記電流が安全電流域の外にあれば、前記電力供給手段により前記発熱体に供給される電力を減少させて前記発熱体を流れる電流を前記安全電流域内に変更して前記導管及び前記発熱体の過熱の発生を防止し、iii)所定時間後、前記電力供給手段により前記発熱体に供給される前記電力を増大させるようにするアルゴリズムを実行することを特徴とする導管過熱検出システムから成る。
【0006】
本発明は、第2の特徴において、ガスを必要としている患者又は他の人に供給されるこのガスの流れを加湿する加湿装置であって、或る量の水を収容するように構成され、前記ガスの流れを通過させることができる入口及び出口を備えた加湿チャンバ手段と、前記加湿チャンバ手段に隣接して設けられていて、熱を前記加湿チャンバ内の前記水に与えて前記加湿チャンバ手段を通過している前記ガスの流れに水蒸気をもたらすように構成され、測定可能な量の電力を利用する加熱手段と、前記ガスを必要としている前記患者又は他の人に前記ガスの流れを運搬するよう前記加湿チャンバ手段の前記出口に連結されたガス運搬経路手段と、熱を前記ガス運搬経路手段の長さの少なくとも一部に沿って前記ガスの流れに供給するよう付勢可能なガス運搬経路加熱手段と、前記ガス運搬経路加熱手段を流れる電流を検出する手段を含む検出手段と、電力供給手段を含む制御手段とを有し、前記制御手段は、該制御手段が、i)前記検出手段から前記ガス運搬経路加熱手段中の電流の入力を受け取り、ii)前記電流が安全電流域の外にあれば、前記電力供給手段により前記ガス運搬経路加熱手段に供給される電力を減少させて前記ガス運搬経路加熱手段を流れる電流を前記安全電流域内に変更して前記ガス運搬経路手段及び前記ガス運搬経路加熱手段の過熱の発生を防止し、iii)所定時間後、前記電力供給手段により前記ガス運搬経路加熱手段に供給される前記電力を増大させるようにするアルゴリズムを実行することを特徴とする加湿装置から成る。
【0007】
本発明は、第3の特徴において、呼吸導管用発熱体の導管過熱検出システムであって、2本の枝管を備えた導管を有し、一方の枝管は、前記呼吸導管の吸気枝管であり、他方の枝管は、前記呼吸導管の呼気導管であり、前記導管内には発熱体が設けられ、使用中、前記第1の枝管内の前記発熱体の第1の部分を流れる電流は、前記第2の枝管内の発熱体の第2の部分を流れる電流とは大きさが異なり、前記導管過熱検出システムは、前記発熱体の前記第1の部分及び前記発熱体の前記第2の部分をそれぞれ流れる第1の電流及び第2の電流を検出する手段を含む検出手段と、制御手段とを有し、前記制御手段は、該制御手段が、i)前記検出手段から前記第1の電流及び前記第2の電流を受け取り、ii)前記第1の電流と前記第2の電流の差を求め、iii)前記電流が所定限度に近づけば、前記電力供給手段により前記発熱体に供給される電力を減少させて前記発熱体を流れる電流を変更して前記所定限度から引っ込め、前記導管及び前記発熱体の過熱の発生を防止し、iv)所定時間後、前記電力供給手段により前記発熱体に供給される前記電力を増大させるようにするアルゴリズムを実行することを特徴とする導管過熱検出システムから成る。
【0008】
当業者であれば、本発明の構成、種々の実施形態及び用途の多くの変更を特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく想到できよう。本明細書における開示内容は、単なる例示であり、いかなる意味においても本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の導管過熱システムの検出方法を組み込むことができる呼吸用加湿システムの略図である。
【図2】本発明の過熱検出システムを利用できる呼吸用加湿システムの略図である。
【図3】図2の呼吸用加湿システムの加湿器ベースの略図である。
【図4】電流が検出されない条件下における導管の検査中における発熱体の経時的な電流のグラフ図である。
【図5】電流検出方式を利用して導管が溶けず、しかも患者に提供されるガスが高温のものではないようにする発熱体中の経時的な電流のグラフ図である。
【図6】本発明の導管過熱システムの検出方法を組み込むことができる吸気導管及び呼気導管を有する呼吸用加湿システムの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好ましい一形態を添付図面を参照して以下に説明する。
図面し、特に図1を参照すると、本発明の好ましい実施形態を組み込んだ加湿装置又は呼吸用加湿システムの一例が示されている。呼吸用加湿システムには出口2を備えたガス供給手段1(例えば、ベンチレータ、注入器又はブロワ)が設けられており、このガス供給手段は、ガス(例えば、酸素、麻酔ガス又は空気)を導管6を介して加湿チャンバ手段4の入口3に供給する。加湿チャンバ手段4は例えば、金属ベース7がシールされたプラスチックの成形チャンバを備えているのがよい。加湿チャンバ4は、或る量の水8を収容するようになっており、この水は加湿装置又は加湿器10のコントローラ又は制御手段11の制御でヒータプレート手段9によって加熱される。
【0011】
チャンバ4内の水が加熱されると、水は、ゆっくりと蒸発し、水蒸気がベンチレータ1から加湿チャンバを通るガスの流れと混合する。したがって、加湿されたガスは、出口12を介して加湿チャンバ4から出て、ガス運搬経路又は呼吸導管14を通って、このガスを必要としている患者又は他の人13に導かれる。呼吸導管14内での凝縮を減少させると共に患者13に提供されるガスの温度を上昇させるため、制御手段11の制御下で付勢される発熱体手段15が設けられている。
【0012】
図1では、ガスマスク16は、患者の鼻及び口を覆った状態で(「無傷式気道(Intact Airways)」ガス投与形態と呼ばれている)示されているが、多くのガス投与形態、例えば、投与チューブが患者の気管内に配置されて患者の気道をバイパスする(「挿管式気道(Intubated Airways )」ガス投与形態と呼ばれている)挿管法があることは理解されるべきである。また、患者の呼息ガスをベンチレータ1に戻す戻り経路を設けることが可能である。この場合、適当な継手、例えば、「Yピース」36(図6参照)を、患者40への吸気導管31とベンチレータ33の入口42に連結された呼気導管32との間に取り付けるのがよい。
【0013】
制御手段11は例えば、ソフトウェアプログラムを記憶した関連のメモリ又は記憶手段を搭載しているマイクロプロセッサ又は論理回路を備えているのがよく、このソフトウェアプログラムは、制御手段11によって実行されると、ソフトウェア中に設定された命令に従って、更に外部入力に応答して加湿システムの動作を制御する。例えば、制御手段11にヒータパネル9からの入力を与えて制御手段11がヒータパネル9の温度及び(又は)電力使用量に関する情報を得るようにするのがよい。更に、流量検出手段又はフロープローブ17を呼吸回路中のどこかに設けるのがよい(「呼吸回路」は、ガスの流れを通す加湿装置の部分を構成する)。図1に示すフロープローブ17を加湿器の出口12のところ又はその近くに設けて出口ガス流量を制御手段11に提示するようにするのがよい。また、この装置内において、加湿器の出口のところに温度プローブを設け、加湿器の入口のところに周囲温度プローブを設けるのがよい。これらプローブからの出力の各々は制御手段11の入力であるのがよい。
【0014】
制御手段11への更に別の入力は、ユーザ入力手段又はスイッチ18であるのがよく、スイッチ18を用いてユーザ(例えば、健康管理専門家又は患者自身)が、送り出されるガスの所望ガス温度を設定し、又は、送り出される所望ガス湿度レベルを設定できるようにするのがよく、或いは、変形例として、他の機能、例えば、発熱体15によって提供される加熱の制御又は多くの自動ガス投与形態からの選択をスイッチ18によって制御してもよい。
【0015】
加湿装置20の詳細が示された図2及び図3を参照すると、加湿器20は、加湿器20に設けられたカラー22と係合する縁部を備えた加湿チャンバ21を有する。加湿されるべきガスは、例えば空気と酸素と麻酔薬の混合物であり、このガスは、ガス入口23を通って加湿チャンバに供給される。これをベンチレータ、加圧酸素源、流れ発生器又は空気圧縮機に連結してもよい。ガス出口24も又設けられ、このガス出口24は、導管25に連結され、この導管25は、加湿されたガスを導管の端部26のところで患者に運搬する。導管の端部26は、加湿ガスを患者に供給できるように患者の鼻、鼻マスク又は患者の顔面に連結されたフェイスマスクに連結されたカニューレを有するのがよい。加湿器のヒータプレート27は、温度変換器28を有し、この温度変換器は、制御手段がヒータプレートの温度をモニターできるように装置の本体29内に設けられた電子制御回路と電気的接続状態にある。
【0016】
導管25内での加湿ガスの凝縮の防止を助けるために発熱体手段15が導管25内に設けられている。このような凝縮は、導管の壁の温度が、通常は導管内の加湿ガスの温度よりも低い周囲温度(周囲大気の温度である)に近いことに起因している。発熱体15は、導管を通っている間に熱伝導及び熱対流によりガスから失われたエネルギーを効果的に補う。このようにして、導管発熱体15は、送られるガスが最適な温度及び湿度の状態であるようにする。
【0017】
通常は銅フィラメントである発熱体15は、銅フィラメントの温度が変化すると、電気抵抗の(通常かなり大きい)変化を生じさせる材料特性を有している。したがって、電力を発熱体15に供給しているとき、発熱体15によって消費される電流をモニターすることにより電気抵抗をモニターすることができ、間接的に、発熱体15の温度をモニターすることができる。発熱体15のこのモニターは、発熱体15に接続された制御手段11を直接用いることにより、或いは、制御手段11に接続された外部検出手段、例えば、センサ30(図1参照)により行うことができる。発熱体15を通る電流が低い場合、発熱体15の抵抗が高いので発熱体の温度が高く、導管は高温である。この場合、発熱体15によって消費される電流が所定限度を超え、又は安全電流域から外れている場合、呼吸用加湿器10及び導管14を制御手段11によって安全モードに切り換え、次に、発熱体15の温度がいったん安全レベルに下がると、動作モードに戻すのがよい。
【0018】
導管発熱体に関する所定の電流限度が上限であるか下限であるかは、発熱体の構成材料の比抵抗−温度特性で決まる。図4は、発熱体が代表的な銅フィラメントである場合の発熱体付き導管についての電流(単位:アンペア)と時間の関係を表すグラフ図である。導管の温度の増加をシミュレートするため、時刻をt=55分のところでブランケットを導管に配置し、導管の過熱の検出を行わない試験を行った。
【0019】
図4から理解できるように、0〜4分の間では、導管発熱体は、その始動期間にあり、加湿ガスを加熱させるほどは電力は供給されていない。4〜55分では、導管発熱体に供給される電力は、定デューティサイクル(この場合、デューティサイクルは、95%であったが、任意適当なレベルで十分である)に設定されており、発熱体の電流は安定動作レベルに設定され、この場合、動作レベルは、約1.65アンペアであるが、発熱体に適した他の動作レベルを用いてもよい。電流動作レベルは最終的には、流量、周囲温度及び導管の動的条件(即ち、発熱体の寸法形状、材質、抵抗及びワイヤ長さ)で決まる。しかしながら、試験結果の示すところによれば、特定の導管の設計に関し、導管が安全上危険なレベルに達する程度まで加熱されなければ、導管の発熱体を流れる電流が(いずれの流量又は周囲温度でも)それよりは下がることはない電流安全限度を決定できる。
【0020】
図4では、試験中、時刻t=55分のところでブランケットを導管に配置し、この追加の断熱材により、導管内の温度の増加につれて発熱体内の電流が減少している。t=55分とt=100分との間で、発熱体を流れる電流は所定の電流安全限度を下回って減少し続けることがわかる。最終的に、時刻t=100分のところの導管温度は、プラスチック材料で作られている導管が溶け始めるようになる温度である。また、もし、発熱体中の電流の大きさが電流安全限度の電流の大きさよりも低い状態で、この呼吸システムを用いた場合、患者には高温のガスが供給される恐れがあり、患者が不快感を生じると共に潜在的に患者に害を及ぼす可能性がある。
【0021】
導管14内の発熱体15の過熱を検出する方法は、上述したように発熱体15中を流れる電流をモニターするものである。危険な導管温度にならないようにすると共に最終的に導管が溶けることがないようにするため、マニュアル方式の試験等を行って発熱体の電流限度を求め、これを制御手段11にプログラムするのがよい。発熱体15中の電流が電流安全限度を超えると、加湿器10は制御手段11によって安全モードに切り換えられ、所定の期間にわたって発熱体への電力を所定安全レベルに減少させ、次に、発熱体への電力を通常動作モード又はレベルに増大させる。
【0022】
本発明では、安全モードは、発熱体15へのデューティサイクル電力を動作値から減少させたモードである。図5に示されているように、発熱体中の電流が電流安全限度を下回ると、これが、検出手段、例えばセンサ30によって検出され、電流の減少により、制御手段11は発熱体に印加される電圧のデューティサイクルを制限し、この場合、デューティサイクルを約30%に減少させたが、他の適当な値を用いてもよい。デューティサイクルを減少させると、その効果として、発熱体を流れる電流が増大する。制御手段11は、マイクロコントローラに記憶されたソフトウェアプログラムであってもよく、比較器及び限流回路によって電子的に構成されるものであってもよい。
【0023】
図5は、電流が電流安全限度を4回下回り、その度ごとに検出器及びコントローラがデューティサイクルを変更し、この結果、発熱体電流を安全レベルに至らせるよう動作する電流及びデューティサイクルの波形を示している。好ましくは、発熱体は、通常動作モードに戻る前に約15分間30%のデューティサイクルで動作する(但し、他の適当な値を用いてもよい)。さらに、電流限度に再び達すると、本発明は、装置が安全モード動作に移り、デューティサイクルを減少させ、発熱体中の電流を増大させるよう作用することになる。
【0024】
本発明の過熱検出システムを組み込んだ呼吸装置が2本の導管(例えば、図6に示す導管)を有し、一方の導管が吸気導管であり、他方が呼気導管であるような第2の実施形態では、本発明は、上記とは異なる形態になっている。次に、図6を参照すると、吸気回路31が、ベンチレータ及び(又は)加湿器に連結されている。図6では、吸気導管31は、その近位端部37がベンチレータ33に連結されているに過ぎないが、最も好ましい実施形態では、加湿器(例えば、図1〜図3を参照して説明した加湿器)が、ベンチレータの出口ポート34と吸気導管31の入口との間に配置される。吸気導管31の遠位端部35は、3つの入口/出口ポートを備えた“Y”形コネクタ36に連結されている。“Y”形コネクタ36の1つのポート38は、吸気導管31を通って流れる吸息ガスを患者のインタフェース39及び患者40に差し向け、更に患者40から呼息された空気又はガスを受け入れる。呼息空気は、“Y”形コネクタ36によってその第3のポート41を経て呼気導管32に導かれて呼息ガスを呼気導管31の端部42からベンチレータ33に戻すことができるようになっている。好ましい形態では、吸気導管31及び呼気導管32はそれぞれ、その導管内に位置し、或いは、その導管全体を通じ、又はその導管の周りに位置する発熱体(それぞれ、31,32)を有している。これら発熱体は、図1を参照して上述したタイプのものである。共通のベンチレータシステムでは、導管31,32内の発熱体43,44に印加される電圧のデューティサイクルは通常、入力、例えば、吸気導管からの導管温度を用いて制御され、呼気導管はスレーブとして(隷属して)作用する。したがって、呼気導管32の過熱を検出して制御するためには、吸気導管31及び呼気導管32のそれぞれに流れる電流を検出する必要がある。通常、これら導管内の発熱体43,44の各々の電気抵抗は、動作中、互いに異なる発熱レベルを達成できるよう互いに異なっており、このために、互いに異なる電流が各導管を通って流れる。このため、検出手段、例えば、センサ(図示せず)又は制御手段45は、両方の導管31,32中を流れる電流を検出できなければならない。この実施形態では、発熱体43,44中の電流を制御手段45によって検出することが好ましく、制御手段45は、これら電流をそれぞれ互いに比較する。発熱体43,44中の検出電流相互の差が所定限度に近づき始めると、制御手段45は、発熱体43,44を上述したのと(図1の第1の実施形態を参照して説明したのと)同一の仕方で安全動作モードに切り換える。このように、導管31,32のうちいずれかが使用中に覆われると、或いは、ガスが一方の導管中を流れないでその導管を過熱させると、過熱状態が検出され、発熱体43,44に印加される電圧のデューティサイクルが、発熱体43,44中を流れる電流を安全レベルに戻すよう制御手段45によって変更され、それにより、導管31,32の損傷又は患者40への危害が阻止される。
【0025】
導管31,32相互間の電流の差の所定の限度は、発熱体の構成材料の比抵抗−温度特性及び吸気導管31と呼気導管32の相対的な電気抵抗で決まる。例えば、吸気導管の発熱体43の抵抗が18オームであり、呼気導管の発熱体44の抵抗が12オームであり、発熱体が代表的な銅フィラメントである場合、導管31,32相互間の動作電流の差は約0.4アンペアである。呼気導管32が過熱すると、呼気導管の発熱体44中を流れる電流は、吸気導管の発熱体43中を流れる電流は影響を受けないままの状態で減少することになる。したがって、発熱体43,44相互間の電流の差が減少することになる。上述の例における所定の限度は、0.3アンペアの導管相互間の電流の差である。
【符号の説明】
【0026】
1 ガス供給手段
4 加湿チャンバ
8 水
10 呼吸用加湿器
11 制御手段
13 患者
14 呼吸導管又はガス運搬経路
15 発熱体
16 ガスマスク
17 流量検出手段
30 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの発熱体(15、43、44)を有する少なくとも1つの呼吸導管(14、31、32)の導管過熱検出システムであって、
前記少なくとも1つの発熱体(15、43、44)を流れる少なくとも1つの電流を、使用中の前記発熱体の温度の表示として検出する手段を含む検出手段(11、30、45)と、
電力供給手段を含む制御手段(11、45)とを有し、
前記制御手段(11、45)は、該制御手段(11、45)が、
i)前記少なくとも1つの発熱体(15、43、44)を流れる前記少なくとも1つの電流の入力信号を前記検出手段(11、30、45)から受け、
ii)前記少なくとも1つの電流が、前記発熱体の温度が所定の閾値温度よりも高いことを示す安全電流域の外にあれば、前記電力供給手段により前記少なくとも1つの発熱体(15、43、44)に供給される電力を減少させて前記少なくとも1つの発熱体(15、43、44)を流れる電流を前記安全電流域内に変更して前記少なくとも1つの呼吸導管(14、31、32)及び前記少なくとも1つの発熱体(15、43、44)の過熱の発生を防止し、
iii)所定時間後、前記電力供給手段により前記少なくとも1つの発熱体(15、43、44)に供給される前記電力を増大させるようにするアルゴリズムを実行する、
ことを特徴とする導管過熱検出システム。
【請求項2】
前記安全電流域は、事前の試験に基づいた所定の電流限界であり、前記事前の試験は、前記発熱体と前記安全電流域の電流と温度の関係を決定し、前記安全電流域は、前記発熱体の温度が安全に対する危険に近づいていることを示す電流限界によって規定される、
ことを特徴とする請求項1に記載の導管過熱検出システム。
【請求項3】
前記電流限界は、増大する発熱体の温度を示す、前記電力供給手段によって前記発熱体に供給される所定の電力に対する減少する電流の下限である、
ことを特徴とする請求項2に記載の導管過熱検出システム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの呼吸導管は、2つの導管を有し、一方の導管は、吸気導管(31)であり、他方の導管は、呼気導管(32)であり、前記少なくとも1つの発熱体(15、43、44)は、前記吸気導管(31)に設けられた第1発熱体(43)および前記呼気導管(32)に設けられた第2発熱体(44)である、
ことを特徴とする請求項1に記載の導管過熱検出システム。
【請求項5】
前記アルゴリズムは、さらに前記制御手段に、
前記検出手段から前記第1発熱体および前記第2発熱体の各々における前記電流の入力を受け入れさせ、
前記第1電流と前記第2電流との差を測定させ、次いで、該差が、前記安全電流域の外にある場合には、前記第1発熱体(43)および前記第2発熱体(44)に前記電力供給手段によって供給される電力を減少させ、前記第1発熱体(43)および前記第2発熱体(44)における電流を安全電流域内に変更させる、
ことを特徴とする請求項3に記載の導管過熱検出システム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの呼吸導管は、医療用又は呼吸用装置と前記患者との間に設けられた単一の導管(14)であることを特徴とする請求項1または2に記載の導管過熱検出システム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの呼吸導管は、医療用又は呼吸用装置と前記患者との間に設けられた少なくとも1本の吸気導管(31)及び少なくとも1本の呼気導管(32)である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の導管過熱検出システム。
【請求項8】
前記医療用又は呼吸用装置は、ベンチレータ(33)であり、
加湿手段(10)が、前記ベンチレータから前記吸気導管を通って流れているガスを加熱して加湿するよう前記ベンチレータ(33)と前記吸気導管(31)との間に連結されている、
ことを特徴とする請求項7に記載の導管過熱検出システム。
【請求項9】
前記検出手段(11、45)は、前記制御手段(11、45)に含まれ、前記少なくとも1つの発熱体(15、43、44)は前記制御手段(11、45)に接続されている、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の導管過熱検出システム。
【請求項10】
前記アルゴリズムは、ソフトウェアプログラムである、
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の導管過熱検出システム。
【請求項11】
前記アルゴリズムは、電子的に構成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の導管過熱検出システム。
【請求項12】
請求項1に記載の導管過熱検出システムを含むガスを必要としている患者又は他の人に供給されるガス流れを加湿する加湿装置であって、該加湿装置は、
或る量の水を収容するように構成され、前記ガス流れを通過させることができる入口(3)及び出口(12)を備えた加湿チャンバ手段(4)と、
前記加湿チャンバ手段(4)に隣接して設けられ、熱を前記加湿チャンバ(4)内の前記水に与えて前記加湿チャンバ手段(4)を通過している前記ガス流れに水蒸気をもたらすように構成され、測定可能な量の電力を利用する加熱手段(9)と、を備え、
前記少なくとも1つの呼吸導管(14、31、32)は、前記ガスを必要としている前記患者又は他の人に前記ガス流れを運搬するよう前記加湿チャンバ手段(4)の前記出口(12)に連結されている、
ことを特徴とする加湿装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−88934(P2010−88934A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5012(P2010−5012)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【分割の表示】特願2003−42299(P2003−42299)の分割
【原出願日】平成15年2月20日(2003.2.20)
【出願人】(504298349)フィッシャー アンド ペイケル ヘルスケア リミテッド (41)